説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】効果的に装置本体内の光学手段の結露を抑制する。
【解決手段】装置本体4内には、外気を導入するための開口部302が形成されている。ミラー103,104,105の近傍には、ヒータ110が配置されている。装置本体4には、開閉部材501が開口部302を閉鎖する閉鎖位置と開口部302を開放する開放位置との間で移動可能に設けられている。ヒータ110近傍には、熱に応じて伸縮変形するアクチュエータ502が配置されている。そして、ヒータ110の加熱によりアクチュエータ502を変形させて、開閉部材501を開放位置から閉鎖位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCR(光学的文字認識装置)やスキャナ装置等の画像読取装置及び画像読取装置を備えた複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿に光を照射するランプ等の光源と、光源による原稿からの反射光を結像させる光学手段してのミラー及びレンズと、ミラー及びレンズによって結像された光像を光電変換する光電変換手段としてのCCDを備えた画像読取装置が知られている。
【0003】
近時、画像読取の高速化及び高画質化に伴い、光源の光量を上げる必要に迫られ、光源による装置本体内の温度上昇や画像読取装置の高速化によるCCD等の電気部品の温度上昇が問題となっていた。そこで、画像読取装置の装置本体内に外気(室内の空気)を導入するファンを設け、装置本体内の温度上昇を抑制するものが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
また、寒冷地などの低温環境下に置かれる画像読取装置では、夜間において主電源の通電がオフされると、装置本体が冷え切った状態となる。そして、冷えた装置本体内の各部に結露が生じてしまうことがあった。特に、ミラーやレンズの表面に結露が生じてしまった場合には、原稿を読み取った際に画像不良が発生してしまうことがあった。そして、この読み取った画像データに基づいてシートに画像形成する画像形成装置においては、シートに形成される画像が劣化してしまっていた。
【0005】
そこで、従来、ミラーやレンズの結露対策を施した寒冷地仕様の画像読取装置が提案されている。具体的には、ミラーやレンズの近傍にヒータを配置して、主電源がオフになったときにヒータを動作させてミラーやレンズの結露を抑制しているものが提案されている(特許文献3〜5参照)。更に、光源を熱源として利用することで、ミラーやレンズの結露を抑制するものや(特許文献6、7参照)、発生した結露に対しても光源等の熱を利用して結露除去を行うものも提案されている(特許文献8参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−179676号公報
【特許文献2】特開2004−045506号公報
【特許文献3】特開平10−210220号公報
【特許文献4】特開平11−184022号公報
【特許文献5】特開2003−18340号公報
【特許文献6】特開2003−322918号公報
【特許文献7】特開平10−308853号公報
【特許文献8】特開平11−127304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記結露対策を施した画像読取装置においても、画像読取の高速化及び高画質化に伴い、装置本体内の光源を冷却する必要性が生じてきた。
【0008】
しかし、装置本体内の光源を冷却するためには、装置本体に開口部を設けて、積極的に外気を装置本体内に導入するようにしなければならない。そして、強制空冷が必要な場合には、開口部にファンを設ける必要があるが、この開口部は、装置本体内に外気を導入するためのものなので、光源の冷却が必要ではない場合にも開口部を通じて外気が装置本体内に侵入し易くなっている。
【0009】
このため、装置本体よりも高い温度に室温を急激に上昇させた場合などには、装置本体は室温よりも温度が低い状態であるが、温度及び湿度の高い室内空気が開口部を通じて装置本体内に侵入してしまう。そして、例えば数十W程度のヒータでミラーやレンズを加熱しても、ミラーやレンズよりも高い温度の室内空気が開口部を通じて装置本体内に侵入してしまい、ヒータで加熱しているにも拘らず、ミラーやレンズに結露が発生してしまうことがあった。
【0010】
図7は、温度に対する飽和水蒸気圧を示す図であり、この図7を参照しながら、具体例を挙げて説明する。
【0011】
例えば、暖房器具により急激に昇温させたときの室温を25℃、そのときの湿度を50%とした場合、室内の空気中には、図7を参照すると、25℃における飽和水蒸気圧約24mmHgの50%にあたる12mmHgに相当する水分が含まれることになる。従って、この空気(温度25℃/湿度50%)における露点温度は、約12.5℃であり、これよりも低い温度の部品に空気が接すると結露が発生する。なお、露点温度とは、ある温度と湿度の飽和水蒸気の限界となる温度のことであり、その温度より下がると結露が発生する。
【0012】
そして、夜間や朝の室温が5℃であり、ヒータ自体の表面温度が100℃程度であるとすると、ヒータ近傍の温度上昇は約5℃程度となり、ヒータ近傍のミラーやレンズの温度は10℃程度となる。
【0013】
つまり、装置本体内の10℃程度のミラーやレンズに、温度25℃/湿度50%の空気が接した場合には、温度10℃における飽和水蒸気圧約10mmHgとの差分である2(=12−10)mmHgに相当する水分が部品の表面に結露として凝縮(液化)する。
【0014】
ちなみに、ヒータを動作させなかった場合には、装置本体内のミラーやレンズは、5℃である。従って、温度25℃/湿度50%の空気が接した場合には、温度5℃における飽和水蒸気圧約7mmHgとの差分である5(=12−7)mmHgに相当する水分が部品の表面に結露として凝縮(液化)する。
【0015】
このように、装置本体に開口部を形成した場合、例えば数十W程度のセメントヒータ等のヒータでは、ミラーやレンズに結露が発生するのを抑制する効果が不十分であった。
【0016】
この問題を解決するために、ヒータを大型化したり、ヒータの温度を上げたりすることで結露を抑制することも考えられるが、消費電力が大きくなってしまう。また、ヒータの温度を上げる場合には、局所的に温度が上がり過ぎてしまうため、ヒータ近傍の各部に熱の影響が出てしまうおそれがある。
【0017】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、効果的に装置本体内の光学手段の結露を抑制することができる画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、装置本体内に配置され、原稿に光を照射する光源と、前記装置本体内に配置され、前記光源による原稿からの反射光を結像させる光学手段と、を備え、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取装置において、前記装置本体内に外気を導入するための開口部と、前記装置本体内に配置され、前記光学手段を加熱するための加熱手段と、前記開口部を閉鎖する閉鎖位置と前記開口部を開放する開放位置との間で移動可能に設けられた開閉部材と、前記加熱手段の加熱動作と連動して作動し、前記開閉部材を前記開放位置から前記閉鎖位置に移動させる作動手段と、を備えた、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、光学手段を加熱する際に開閉部材を閉鎖位置に移動させて開口部を閉鎖することができるので、装置本体に外気が侵入するのを抑制することができる。そして、光学手段と温度差のある外気が装置本体内に侵入を抑制できるので、光学手段における結露を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の一例としての複写機の概略構成を示す説明図である。
【0022】
図1において、画像形成装置としての複写機1は、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取装置2と、複写機本体3とを備えており、画像読取装置2は、複写機本体3の上方に配置されている。
【0023】
まず、画像読取装置2の概略構成について説明する。画像読取装置2は、原稿の画像を読み取る装置本体4と、装置本体4の上部に配置され、原稿トレイ5aに載置された原稿を装置本体4に搬送する原稿フィーダ5とを備えている。
【0024】
また、画像読取装置2は、装置本体4の上面に配置された原稿台としてのプラテンガラス101を備えている。また、画像読取装置2は、プラテンガラス101に搬入された原稿に光を照射する光源としての露光ランプ102と、その反射光を結像させる光学手段としてのミラー103,104,105及びレンズ106と、を備えている。更に、画像読取装置2は、ミラー103,104,105及びレンズ106によって結像された光像を光電変換する光電変換手段としてのCCD107を備えている。そして、露光ランプ102、ミラー103,104,105、レンズ106及びCCD107が装置本体内の同一空間に配置されている。
【0025】
原稿フィーダ5は、不図示の操作部のコピーボタンが操作された場合に、原稿トレイ5aに積載された原稿を、装置本体4のプラテンガラス101に搬送する。そして、原稿を読み取る際には、プラテンガラス101の上に載置された原稿に露光ランプ102によって光を照射することにより読み取るようにしている。
【0026】
次に、複写機本体3について説明する。複写機本体3は、画像読取装置2により読み取られた画像データに基づいてシートSに画像を形成する画像形成部6と、画像形成部6のシート搬送方向下流側に配置される定着部25とを備えている。
【0027】
画像形成部6は、像担持体として、アルミニウム等からなる導電性のドラム基体とその外周面上に形成される感光体層とを有するドラム形の電子写真感光体(以下、感光体ドラムという)10を備えている。また、画像形成部6は、一次帯電器13、露光部としてのレーザスキャナ部38、現像器11、ポスト帯電器14、転写帯電器15及び分離帯電器16を備え、これらが感光体ドラム10の回転方向に沿って感光体ドラム10の周りに順次配設されている。また、画像形成部6は、クリーナ12を備えており、感光体ドラム10の表面に残ったトナーが除去される。
【0028】
画像形成部6は、シート供給部8に装填した給紙カセット9a,9bから、給送ローラ19a,19b、搬送ローラ対20a,20bによって搬送された紙或いは合成樹脂等のシートSに対して電子写真方式によってトナー像を形成するようになっている。
【0029】
詳述すると、図1の矢印方向へ回転する感光体ドラム10の表面は、一次帯電器13によって一様に帯電される。そして、レーザスキャナ部38は、画像読取装置2或いは不図示のコンピュータ等から伝送された画像データに基づいて帯電された感光体ドラム10の表面に光照射して露光することにより、感光体ドラム10の表面に静電潜像を形成する。この感光体ドラム10の表面に形成された潜像は、現像器11でトナー現像されて、可視像化される。そして、感光体ドラム10上のトナー像の帯電量を均一にするポスト帯電器14によって、感光体ドラム10上に形成されたトナー像がシートSに転写されやすい状態となる。この感光体ドラム10上のトナー像は、搬送されてくるシートSに転写帯電器15によって転写される。トナー像が転写されたシートSは、分離帯電器16によって感光体ドラム10表面から剥離される。
【0030】
分離帯電器16のシート搬送方向の下流側には、搬送部17が配置されている。搬送部17は、搬送ローラ17a,17bと、搬送ローラ17a,17b間に巻き掛けられた搬送ベルト17cとを有している。この搬送部17のシート搬送方向の下流側に配置されている定着部25は、加熱ローラ25aと、この加熱ローラ25aに圧接する加圧ローラ25bとを有している。
【0031】
分離帯電器16によって剥離されたシートSは、搬送部17により搬送されて定着部25に導かれ、定着部25で加熱・加圧され、トナー像が定着される。最後にシートSは、排出ローラ対26によって複写機本体3の外部に排出される。
【0032】
次に、画像読取装置2の詳細について説明する。図2は、画像読取装置2の装置本体4を示す図であり、図2(a)は、画像読取装置2の装置本体4の内部を示す平面図であり、図2(b)は、画像読取装置2の装置本体4の内部を示す正面図である。
【0033】
画像読取装置2は、原稿を露光ランプ102により照明し、その反射光をミラー103,104,105によりレンズ106に導き、更に光電変換手段としてのCCD107に結像させる構成となっている。露光ランプ102としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、キセノン管等が用いられる。
【0034】
また、露光ランプ102とミラー103によって第1ミラー台51が構成され、ミラー104,105によって第2ミラー台52が構成される。原稿を読み取る際には、第1ミラー台51と第2ミラー台52とが、2:1の速度比で原稿に対して相対的な速度で副走査方向(矢印A方向)への原稿走査を行う。
【0035】
そして、第1ミラー台51と第2ミラー台52とを駆動制御する駆動源が光学モータ114であり、モータ駆動軸と光学駆動軸108の間に架け渡された駆動ベルト115を介してワイヤー116,117の駆動制御を行う。第1ミラー台51と第2ミラー台52は共にワイヤー116,117に固定されており、ワイヤー駆動に伴って原稿走査を行うことになる。
【0036】
本実施の形態では、画像読取装置2は、光学手段としてのミラー103,104,105を加熱するための加熱手段としてのヒータ110と、光学手段としてのレンズ106を加熱するための加熱手段としてのヒータ109とを備えている。
【0037】
ヒータ109は、装置本体4内であって、レンズ106近傍に配置されている。また、ヒータ110は、装置本体4内であって、ミラー103,104,105の近傍に配置すべく、第1ミラー台51及び第2ミラー台52のホームポジション近傍に配置されている。
【0038】
このように、ヒータ109,110を二箇所に配置している理由としては、結露の発生によって読み取り画像に不具合が発生するおそれのある個所がミラー103,104,105及び、レンズ106であることによる。
【0039】
ここで、ミラー103,104,105は、副走査方向(原稿の送り方向)と直交する主走査方向である矢印B方向(幅方向)に亘って延びている。そして、ミラー103,104,105は、原稿の主走査方向の長さよりも主走査方向に長く設定されている。
【0040】
ヒータ110は、主走査方向の長さがミラー103,104,105の主走査方向の長さと略同じ長さに設定されている長尺のセメントヒータである。また、ヒータ109は、装置本体内に固定されているレンズ106の近傍に配置されており、レンズ106を加熱するのに必要な長さの短尺のセメントヒータである。
【0041】
画像読取装置2の装置本体4の背面には、装置本体内に外気(複写機1が設置されている室内の空気)を導入するための開口部302が形成されている。この開口部302は、露光ランプ102を効率的に冷却するために、露光ランプ102近傍に設けられている。具体的には、開口部302は、第1ミラー台52のホームポジション近傍に設けられている。そして、開口部302を通じて装置本体4内に導入された外気は、効率よく露光ランプ102に導かれるようになっている。
【0042】
画像読取装置2は、この開口部302に配置され、露光ランプ102を冷却するためのファン301を備えている。このファン301を動作させると、開口部302を通じて外気が装置本体内に吸引され、露光ランプ102が冷却される。ここで、本実施の形態では、ファン301を動作させることにより、露光ランプ102のみならず、CCD107や不図示のリーダコントローラ基板等の電気部品を冷却することが可能である。なお、ファン301は、吸気ファンであるが、排気ファンとしてもよい。
【0043】
ファン301は、露光ランプ102の動作に基づいて駆動される。具体的には、露光ランプ102は点灯しているとき発熱しているものであり、露光ランプ102の点灯後にファン301が動作する。
【0044】
図3は、画像読取装置2の構成を示すブロック図である。
【0045】
画像読取装置2は、画像読取装置全体を制御する制御手段としてのリーダコントローラ404と、露光ランプ102の点灯・消灯の制御及び点灯周期を制御するインバータ402とを備えている。また、画像読取装置2は、プリンタI/F406と、電源装置407と、結露防止制御基板417とを備えている。
【0046】
インバータ402は、露光ランプ102に対する光源用電源であり、リーダコントローラ404から送られてくる不図示のランプ制御信号に同期して露光ランプ102を制御している。また、露光ランプ102を高周波点灯制御する必要がある場合には、CCD107に対する光源照度が変動する要因となるため、CCD107と同期をとった光源点灯制御を行う必要がある。従って、この場合には、リーダコントローラ404からインバータ402に送られるCCD駆動制御水平同期信号であるHSYNCに同期した点灯制御を行うこととなる。
【0047】
光学モータ114は、リーダコントローラ404の制御によって、露光ランプ102を点灯させた状態で第1ミラー台51と第2ミラー台52を走査させる。このようにプラテンガラス101上の原稿を走査して得られた光像は、ミラー103,104,105及びレンズ106によりCCD107に結像される。
【0048】
プリンタI/F406は、複写機本体3に読み取った画像データを送信するためのインタフェースであると共に、複写機本体3側に搭載されている不図示のコントローラからの制御信号を受信するためのインタフェースである。プリンタI/F406は、基本的な構成は機種間で統一されており、不図示のコントローラからの制御信号によって画像読取装置2の電源装置407のオンオフ制御を行える構成を備えている。
【0049】
電源装置407は、画像読取装置2の装置本体4を動作させるための主電源としての画像読取装置電源408と、ヒータ109,110を動作させるための副電源としてのヒータ制御電源410とを備えている。また、電源装置407は、24時間数ミリワット程度の小消費電力で常時動作する常夜電源409を備えており、画像読取装置電源408及びヒータ制御電源410が個別に制御可能となっている。露光ランプ102、インバータ402、リーダコントローラ404、CCD107及び光学モータ114は、画像読取装置電源408により給電されて動作する。そして、ヒータ109,110は、ヒータ制御電源410により給電されて動作する。
【0050】
画像読取装置電源408のオンオフは、複写機本体3に設けられた電源スイッチ30(図1)がユーザによって操作されることにより行われる。即ち、電源スイッチ30がユーザによってオフ操作されると、画像読取装置電源408がオフ(給電停止状態)となり、電源スイッチ30がオン操作されると、画像読取装置電源408がオン(給電可能状態)となる。なお、複写機本体3にも複写機電源70(図1)が搭載されており、電源スイッチ30のオンオフ操作により、複写機電源70もオンオフするようになっている。
【0051】
そして、画像読取装置電源408がオフとなると、露光ランプ102、インバータ402、リーダコントローラ404、CCD107及び光学モータ114への給電が停止される。
【0052】
画像読取装置電源408がオフ状態のとき、装置本体4の各部に対して給電を停止することとなるので、各部は発熱しない。従って、装置本体4内の空気の温度は低下することとなる。そして、温度低下が激しい朝晩などにミラー103〜105及びレンズ106が露点温度に到達してミラー103〜105及びレンズ106に結露が発生する可能性がある。
【0053】
そこで、本実施の形態では、常夜電源409は、画像読取装置電源408がオフされたとき、ヒータ制御電源410をオンする制御をしている。このように画像読取装置電源408がオフされると、ヒータ制御電源410がオンし、結露防止制御基板417への給電が開始される。逆に、画像読取装置電源408がオンされたときは、常夜電源409は、ヒータ制御電源410をオフする制御をしている。
【0054】
結露防止制御基板417への給電が開始されると、結露防止制御基板417のCPU414は、ヒータ制御部416を介してヒータ109,110への通電制御を行う。
【0055】
そして、CPU414は、ヒータ109,110を連続的又は間欠的に加熱を行うように通電制御し、画像読取装置電源408がオフのときに、ミラー103,104,105及びレンズ106を加熱して結露を抑制するようにしている。
【0056】
図4は、開口部302及びヒータ110近傍を示す説明図であり、図5は、開口部302近傍を示す説明図である。
【0057】
ところで、装置本体4には、読み取り動作中に装置本体内(特に、露光ランプ102)を冷却するために、装置本体内に外気を導入するための開口部302が形成されているので、開口部302を通じて外気が侵入し易くなっている。また、開口部302は、露光ランプ102のホームポジション(第1ミラー台51のホームポジション)近傍に形成されているため、開口部302を通じて侵入した外気は、露光ランプ102近傍の光学手段としてのミラー103〜105にも導かれ易くなっている。
【0058】
そして、仮に開口部302を通じて装置本体4内に外気が侵入してしまうと、ヒータ109,110でミラー103〜105及びレンズ106を加熱していても、ミラー103〜105やレンズ106に結露が生じてしまうことがある。特に、開口部302近傍のミラー103〜105は結露しやすい。
【0059】
具体的には、ミラー103〜105やレンズ106の温度が、露点温度よりも低い場合に、ミラー103〜105やレンズ106に結露が生じてしまう。そして、外気の温度や湿度が高くなるほど露点温度は高くなるので、そのような外気が装置本体4内に侵入してしまうと、結露が生じ易くなってしまう。
【0060】
そこで、画像読取装置2は、開口部302を閉鎖する閉鎖位置(図4)と開口部302を開放する開放位置(図5)との間で移動可能に設けられた開閉部材501を備えている。また、画像読取装置2は、ヒータ110の加熱動作と連動して作動し、開閉部材501を操作する作動手段としてのアクチュエータ502を備えている。
【0061】
開閉部材501は、板状に形成されおり、開口部302近傍に装置本体4に設けられた軸501aによって回動可能に支持されており、ねじりコイルばね506によって開放位置(図5中時計回り方向)に常時付勢されている。
【0062】
アクチュエータ502は、熱に応じて伸縮するように変形するTi−Ni材やTi−Ni−Cu系の形状記憶合金の線材からなる熱変形部材であり、装置本体内におけるヒータ110に近接して配置されている。つまり、アクチュエータ502は、加熱によって収縮し、冷やされることによって伸張する。そして、アクチュエータ502は、弛みがないように、直線状に張設されている。
【0063】
開閉部材501における開口部302側とは反対側の端部には、引張りコイルばね505の一端が接続されており、引張りコイルばね505の他端には、アクチュエータ502の一端502aが接続されている。即ち、アクチュエータ502の一端502aには、引張りコイルばね505を介して開閉部材501が接続されている。
【0064】
そして、アクチュエータ502は、伸縮しても常時ヒータ110に近接するように、その一端502a近傍が装置本体4に回動自在に設けられた滑車504に引っ掛けられており、他端502bが装置本体4に固定されている。
【0065】
ここで、図6は、アクチュエータ502の温度に対する収縮ひずみを示す図である。本実施の形態におけるアクチュエータ502の最大収縮量は、全長の10%程度である。このアクチュエータ502は、加熱による収縮時と冷却による伸張時とで収縮ひずみの異なるヒステリシスを有している。
【0066】
具体的には、アクチュエータ502は、温度上昇に伴い、下限温度約40℃から収縮し始め(図6中、点X)、約50℃辺りから急激に収縮し、上限温度約70℃(図6中、点Y)で最大収縮量となる。そして、約70℃から冷却するときは、緩やかに伸張し、約40℃で元の長さに戻る。つまり、アクチュエータ502は、下限温度と上限温度との間で伸縮する。ヒータ110の発熱温度は約100℃であり、アクチュエータ502は、ヒータ110が発熱した場合には、十分に収縮反応できるものである。なお、アクチュエータ502は、70℃を超えてもほとんど収縮しない。従って、開閉部材501が過剰に引っ張られることもない。本実施の形態では、アクチュエータ502の常温での長さを200mmと設定しており、ヒータ110の加熱により約20mm収縮することとなる。
【0067】
従って、ヒータ110により加熱された状態では、アクチュエータ502は全長が約20mm収縮する。このアクチュエータ502の収縮により、開閉部材501は、ねじりコイルばね506の付勢力に抗して反時計回り方向に回動し、開放位置(図5)から閉鎖位置(図4)に移動こととなる。そして、開閉部材501が閉鎖位置に移動することで、開口部302が閉鎖され、装置本体内への外気の導入が阻止される。
【0068】
また、ヒータ110による加熱が停止してアクチュエータ502が冷却したときには、アクチュエータ502は徐々に伸張して初期の長さに戻る。このアクチュエータ502の伸張により、開閉部材501は、ねじりコイルばね506の付勢力により時計回り方向に回動し、閉鎖位置(図4)から開放位置(図5)に移動することとなる。そして、開閉部材501が開放位置に移動することで、開口部302が開放され、装置本体4内には開口部302を通じて外気が導入可能となる。
【0069】
次に、画像読取装置電源408がオンオフされたときの動作について説明する。
【0070】
まず、電源スイッチ30(図1)がオフ操作されると、画像読取装置電源408がオフされ、ヒータ制御電源410がオンされる。
【0071】
これにより、冷えた状態であるヒータ109,110は、通電により発熱し始め、昇温していく。そして、ヒータ110が40℃近辺に昇温してからアクチュエータ502がヒータ110の加熱により収縮するよう変形し始め、開閉部材501が図5に示す開放位置から反時計回り方向に回動する。ヒータ110の温度が70℃に達すると、アクチュエータ502が最大収縮量で収縮し、開閉部材501は、図4に示す閉鎖位置に移動する。
【0072】
そして、ヒータ109,110は、約100℃にまで達し、ミラー103〜105及びレンズ106を加熱することによって、ミラー103〜105及びレンズ106が結露を抑制している。
【0073】
また、開閉部材501により開口部302が閉鎖されているので、装置本体4内には外気が侵入し難く、外気の温度や湿度が急激に変動しても、装置本体4内の空気の温度及び湿度はほとんど変動しない。例えば室内の暖房器具を動作させて、急激に室内温度を上昇させても、開閉部材501により開口部302が閉鎖されているので、装置本体4内には、ミラー103〜105やレンズ106に結露を生じさせるような外気が侵入するのを抑制することができる。従って、装置本体4内への外気の侵入を抑制できるので、ミラー103〜105及びレンズ106が結露するのを効果的に抑制することができる。
【0074】
そして、画像読取装置2を有する複写機1は、室内暖房器具によって徐々に室内空気の温度に近づいていくこととなる。
【0075】
次に、電源スイッチ30(図1)がオン操作されると、画像読取装置電源408がオンされ、ヒータ制御電源410がオフされる。
【0076】
これにより、ヒータ109,110への通電は停止されることとなるが、ヒータ109,110は急激に冷却することはなく、徐々に冷却していくものである。従って、ヒータ110への給電が停止したからといって、開閉部材501が直ちに開放位置に移動するものではない。
【0077】
つまり、アクチュエータ502は、ヒータ110の加熱温度(100℃)よりも低い上限温度(70℃)以下で伸張し始めるので、ヒータ110が70℃まで低下しない限りはヒータ110への給電を停止しても開閉部材501が開くことはない。
【0078】
その後、アクチュエータ502は、ヒータ110が70℃以下となった場合は、徐々に伸張していくこととなる。しかも、アクチュエータ502には、ヒステリシスがあるので、伸張するときは収縮するときほど速くはない。そして、開閉部材501は少しずつ開いていくこととなり、外気が少しずつ装置本体4内に導入されることとなる。従って、装置本体4内の空気の温度が急激に変化することはなく、少しずつ導入された外気によりミラー103〜105及びレンズ106が昇温し、装置本体内のミラー103〜105及びレンズ106の温度と、装置本体内の空気の温度との温度差はほとんどない。
【0079】
その後、アクチュエータ502は、元の長さに戻り、開閉部材501は開放位置へ移動し、開口部302が開放される。
【0080】
そして、装置本体4は、電源スイッチ30を投入直後にウォーミングアップ動作を実施するので、装置本体4の各部の温度が上昇し、ヒータ109,110を動作させなくてもミラー103〜105及びレンズ106に結露が生じることはない。
【0081】
ここで、電源スイッチ30を投入直後に画像読取装置2が読み取り動作を行うように操作された場合、開閉部材501が閉鎖位置にある状態で露光ランプ102等により装置本体4内は昇温することとなる。しかし、開口部302を閉鎖している僅かな時間だけであるので、僅かな時間の装置本体4内の昇温は問題とならない程度である。
【0082】
以上、本実施の形態によれば、結露を抑制するためにヒータ110を加熱するだけで、開閉部材501を閉鎖位置に移動させることができ、また、ヒータ110の加熱を停止するだけで開閉部材501を開放位置に移動させることができる。このように、ヒータ110の熱で変形するアクチュエータ502により開閉部材501を開閉するようにしたので、開閉部材501を開閉動作させる制御装置を設ける必要がなく、また、開閉部材501を動作させる電動モータを設ける必要がない。これにより、簡単な構造で開閉部材501を開閉させて、効果的にミラー103〜105及びレンズ106の結露を抑制することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
上記実施の形態では、作動手段が熱変形部材としてのアクチュエータ502である場合について説明したが、これに限るものではなく、加熱手段としてのヒータが加熱動作しているときに連動して作動するようにしたソレノイドやモータ等でもよい。
【0085】
作動手段がソレノイドの場合、ソレノイドを開放位置にある開閉部材近傍に配置しておき、ヒータが加熱動作したときにソレノイドを作動させて開閉部材を押圧し、開閉部材を開放位置から閉鎖位置に移動させるようにすればよい。そして、ヒータの加熱を停止させた後に、ソレノイドによる開閉部材の押圧を停止させればよい。
【0086】
作動手段がモータの場合は、モータ軸やモータと連動する歯車機構を開閉部材に接続させておき、ヒータが加熱動作したときに開閉部材を回動させて開放位置から閉鎖位置に移動させればよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、加熱手段としてのヒータ110を装置本体4に固定した場合について説明したが、これに限定するものではなく、ヒータを移動可能とし、熱変形部材としてのアクチュエータ近傍に移動させるようにしてもよい。このとき、加熱手段としてヒータの代わりに光源としての露光ランプを用いてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、開口部302にファン301を配置した場合について説明したが、これに限るものではなく、ファン301が必要なければ省略可能である。
【0089】
また、上記実施の形態では、アクチュエータ502が形状記憶合金としての線材を直線状とした場合について説明したが、これに限定するものではなく、アクチュエータが形状記憶合金の線材をコイル状にして形成される場合でもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、複写機本体3と装置本体4とが別体である場合について説明したが、一体のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施の形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の一例としての複写機の概略構成を示す説明図である。
【図2】画像読取装置の装置本体を示す図であり、(a)は、画像読取装置の装置本体の内部を示す平面図であり、(b)は、画像読取装置の装置本体の内部を示す正面図である。
【図3】画像読取装置の構成を示すブロック図である。
【図4】開口部及びヒータ近傍を示す説明図である。
【図5】開口部近傍を示す説明図である。
【図6】アクチュエータの温度に対する収縮ひずみを示す図である。
【図7】温度に対する飽和水蒸気圧を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置(複写機)
2 画像読取装置
4 装置本体
6 画像形成部
102 光源(露光ランプ)
103,104,105 光学手段(ミラー)
106 光学手段(レンズ)
109,110 加熱手段(ヒータ)
301 ファン
302 開口部
408 主電源(画像読取装置電源)
410 副電源(ヒータ制御電源)
501 開閉部材
502 作動手段、熱変形部材(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に配置され、原稿に光を照射する光源と、前記装置本体内に配置され、前記光源による原稿からの反射光を結像させる光学手段と、を備え、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取装置において、
前記装置本体内に外気を導入するための開口部と、
前記装置本体内に配置され、前記光学手段を加熱するための加熱手段と、
前記開口部を閉鎖する閉鎖位置と前記開口部を開放する開放位置との間で移動可能に設けられた開閉部材と、
前記加熱手段の加熱動作と連動して作動し、前記開閉部材を前記開放位置から前記閉鎖位置に移動させる作動手段と、を備えた、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記作動手段は、加熱によって変形する熱変形部材であり、
前記加熱手段の加熱により前記熱変形部材が変形して前記開閉部材を前記開放位置から前記閉鎖位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記熱変形部材は、加熱によって収縮する形状記憶合金である、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記装置本体を動作させる主電源と、前記加熱手段を動作させる副電源と、を備え、
前記主電源がオフされたときに、前記副電源をオンして、前記加熱手段により前記光学手段を加熱すると共に、前記開閉部材を前記開放位置から前記閉鎖位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記開口部に配置され、前記光源を冷却するファンを備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取装置と、前記画像読取装置により読み取った画像データに基づいてシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−4095(P2010−4095A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158700(P2008−158700)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】