説明

画像読取装置

【課題】流し読み用とブック読み用にそれぞれ独立した原稿台ガラスを備え、密着型イメージセンサによる原稿読取精度を高めて良質の画像が得られ、装置大型化も抑えられる画像読取装置を提供する。
【解決手段】静止原稿プラテンガラス6と搬送原稿プラテンガラス18はガラス間段差があるように設けられ、静止原稿プラテンガラス6と搬送原稿プラテンガラス18との間を、読取手段である密着型イメージセンサ16が移動する際には、搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6のそれぞれに対応する面位置まで高分子アクチュエータ21で密着型イメージセンサ16を上下動させる。搬送原稿プラテンガラス18上での搬送原稿の読取後、高分子アクチュエータを伸長動作させて密着型イメージセンサ16を押し下げ、静止原稿プラテンガラス6上の静止原稿を読み取るべく密着型イメージセンサ16を移動できる状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタおよび複合機などの画像形成装置に装備される画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の画像読取装置は、原稿台上に載置した静止原稿を読み取るブック読み機構と、原稿トレイにセットした複数枚の搬送原稿を一枚ずつ分離して搬送しつつ読み取る流し読み機構の両方を備えたものが主流となってきている。後者の流し読み機構ではADF(Auto Document Feeder)を搭載して構成される。
【0003】
先に、本出願人らはブック読み機構用の原稿台ガラスと流し読み機構用の原稿台ガラスをそれぞれ独立して設けた構造の画像読取装置を提案している。それらの提案のうち、両機構用の原稿台ガラスを面一に並置してCCD(Charge Coupled Device)などを備えた密着型イメージセンサを移動させて原稿を走査して読み取るようにしたものがある(たとえば、特許文献1参照)。その場合、ブック読み用原稿台ガラスと流し読み用原稿台ガラスとの間の境目には、搬送原稿のガイド部材であるジャンプ台が搬送方向に直交して設けられ、読込終了した搬送原稿がブック読み用原稿台ガラスに流れてしまわないようにジャンプ台がすくい取るように搬送原稿をガイドする。すなわち、ADFから流し読み用原稿台ガラス上に送って画像が読み込まれた搬送原稿はジャンプ台ですくい取られ、上り斜面のガイド部材で案内して排紙される。
【0004】
密着型イメージセンサが流し読みされる搬送原稿を読み取る場合には、密着型イメージセンサは、流し読み用の原稿台ガラスの下面に位置する。静止状態の静止原稿を読み取る場合には、密着型イメージセンサはブック読み用の原稿台ガラスの下面に位置する。よって、搬送原稿を読み取りと静止原稿の読み取りとを切り替える場合には、流し読み用の原稿台ガラスとブック読み用の原稿台ガラスとの間を移動する。
【0005】
上記特許文献1に開示されている構成は、流し読み用の原稿台ガラスとブック読み用の原稿台ガラスとの間のガラス間段差がない構成である。そして流し読み用の原稿台ガラスと、ブック読み用の原稿台ガラスと、ジャンプ台が形成された部材と、をステンレス鋼材などにより断面コ字形レール状に加工したガラスホルダで挟持させている。そして、密着型イメージセンサの移動用のレールとして、ガラスホルダホルダを用いている。このように構成することでガラス間段差を無くしている。
【0006】
なお、上記ジャンプ台は、ADFからの搬送原稿を流し読み用の原稿台ガラス上で読み取った後にすくい取るほか、流し読み用の原稿台ガラスからブック読み用の原稿台ガラスに跨って両ガラスの背面から担持し、両ガラスの撓みを吸収する機能を有している。
【0007】
特許文献2には、流し読み用の原稿台ガラスとブック読み用の原稿台ガラスとの間のガラス間段差がある場合の構成を開示している。特許文献2では、両原稿台ガラス間、即ち両原稿台ガラス間にある搬送ガイドを、密着型イメージセンサが通過する時に、密着型イメージセンサに形成された被ガイド部材が潜行ガイドに突き当たり、密着型イメージセンサの被ガイド部材が潜行ガイドの下面に摺接しながら移動する。潜行ガイドには傾斜面が形成されている。そして、両原稿台ガラス間の段差部や両原稿台ガラス間にある搬送ガイドと当たらないように、密着型イメージセンサは、潜行ガイドの傾斜面によって自身の移動に伴って原稿台ガラスから離れて、下方へ潜り込みながら移動する。
【0008】
【特許文献1】特開2003-283767号公報
【特許文献2】特開2002−218176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1の構成のように、ガラスホルダによって原稿台ガラス間段差をなくして面一に並べて固定する構造にあっては、ガラスホルダを密着型イメージセンサのレールとして用いている。したがって、ガラスホルダ自身に加工精度や組立誤差があると、密着型イメージセンサによる読取精度を低下させるといった新たな問題点がある。
【0010】
すなわち、断面コ字形にレール加工されるガラスホルダ自身、その板厚に許容公差内での寸法誤差があったり、平滑性でいうホルダ平面精度が低い場合、そして組み付ける際の組立誤差がある。そのようなガラスホルダ自身の精度のために、密着型イメージセンサとして焦点深度の浅いものを用いた場合はその焦点距離にずれを生じて読取精度が低下し、画像不良の原因となるのである。
【0011】
ガラス板間段差があって、潜行ガイドによって密着型イメージセンサを潜行ガイドの傾斜面によって潜り込ませながら移動させる特許文献2の構成では、潜行ガイドの傾斜面の分、密着型イメージセンサの移動領域を確保しなければならない。したがって、密着型イメージセンサの移動方向に装置が大きくせざるを得ない。
【0012】
なお、別の問題点の1つに、ADFから送り込まれた搬送原稿を流し読み用の原稿台ガラスからすくい上げるジャンプ台を2つの原稿台ガラス間に設けると、そのジャンプ台の幅や長さの寸法分だけ画像読取装置が大型化し、それが画像形成装置の大きさにも反映してしまう。
【0013】
以上から、本発明の目的は、流し読み用とブック読み用にそれぞれ独立した原稿台ガラスを備えたタイプにあって、密着型イメージセンサによる原稿読取精度を高めて良質の画像が得られ、装置大型化も抑えられる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、読取手段によって、静止原稿プラテンガラスの上に載置された静止原稿を、前記静止原稿プラテンガラスを介して読み取るとともに、搬送原稿プラテンガラスの上に搬送されてきた搬送原稿を、前記搬送原稿プラテンガラスを介して読み取る画像読取装置であって、前記静止原稿プラテンガラスと前記搬送原稿プラテンガラスとは厚さ方向で位置が異なるように隣接して設けられ、前記読取手段が前記搬送原稿プラテンガラスと前記静止原稿プラテンガラスとの間を移動する際に前記読取手段を前記搬送原稿プラテンガラスおよび前記静止原稿プラテンガラスの厚さ方向に移動させる移動手段が設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像読取装置によれば、静止原稿プラテンガラスと搬送原稿プラテンガラスがガラス間段差を設けて配置されている。ガラス間段差が有る静止原稿プラテンガラスと搬送原稿プラテンガラスとの間を読取手段が移動する際、移動手段を駆動させて読取手段をプラテンガラスの厚さ方向方向に移動させる。よって、搬送原稿プラテンガラスと静止原稿プラテンガラスとが隣接して設けることができるので、画像読取装置本体の大型化を抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像読取装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1および図2に外観を示すように、本実施形態の画像読取装置は大別して下部側の本体Hと上部側の圧板ユニット1からなり、本体の上面に圧板ユニット1が開閉方向にヒンジ3で回動可能に連結されている。圧板ユニット1はADF機能によって複数枚重ねした搬送原稿D1を連続して流して一枚ずつ記録情報を読み取る搬送原稿読取部5を有している。また、圧板ユニット1の内側には、載置した状態でブック読みされる静止原稿D2を上から押さえて静止画像として読み取るための白地板2が取り付けられている。
【0018】
図3を参照して、上記搬送原稿読取部5は、圧板ユニット1内に設けられたUターンパス7を有し、このUターンパス7は以下の各部材で構成されている。Uターンパス7は、分離ローラ8、分離パット9、分離ローラ8に当接している予備搬送部材10、そして搬送原稿D1の有無を検出する原稿検出センサ11を有する。さらに、Uターンパス7は搬送原稿D1を搬送する搬送ローラ13、排紙ローラ対14、そして搬送原稿D1の先端部と後端部を検出する原稿エッジセンサ15などを有して構成されている。したがって、この搬送原稿読取部5では、原稿エッジセンサ15が搬送原稿D1の先端部を検出すると、その検出位置からさらに所定距離だけその搬送原稿D1が搬送された地点でCCDなどの密着型イメージセンサ(読取手段)16が読取開始する。
【0019】
密着型イメージセンサ16は、図3中の符号Xで示す要部を拡大して図4に示すように、光源となるLEDアレイから搬送原稿D1の読取面に光を照射し、読取面で反射した反射光をたとえばセルフォックレンズ(商標)でセンサ素子に結像して画像情報を読み取る。
【0020】
密着型イメージセンサ16の上方部には後述する静止原稿プラテンガラス6よりも上位に段差をもって搬送原稿プラテンガラス18が設けられている。搬送原稿D1を搬送原稿プラテンガラス18に押し付けて読取補助するための押圧部材20が圧板ユニット1側に設けられている。搬送原稿プラテンガラス18の下流側には読取後の搬送原稿D1を排紙方向に受け渡す案内をする上り斜面のガイド部材19が、圧板ユニット1を閉じた状態で静止原稿プラテンガラス6に隣接するように、圧板ユニット1に配置されている。搬送原稿プラテンガラス18を静止原稿プラテンガラス6よりも高く段差を設けることで、搬送原稿プラテンガラス18上で読取終了した搬送原稿D1が静止原稿プラテンガラス6の方へと流れてしまわないよう、上り斜面のガイド部材19で案内して排紙する。なお、搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6の両ガラスの境目から画像読取装置の本体内に塵埃や異物が侵入するのを防ぐスポンジ部材25が設けられている。
【0021】
したがって、搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6との間に敢えてガラス間段差を設けることで前述の従来構造のように、搬送原稿D1をすくい取るための「ジャンプ台」は、本体H側であって搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6との間には不要である。それにより部材点数が省けるほか、ジャンプ台を設ける構成と比較して画像読取装置が大型化しないで済む。
【0022】
ところで、搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6との間に敢えて段差を設けたことで、密着型イメージセンサ16が両ガラスの一方から他方に、他方から一方へと移動する際に密着型イメージセンサ16を上下方向に段差を解消すべく微動調整する。密着型イメージセンサ16は静止原稿プラテンガラス6および搬送原稿プラテンガラス18における原稿と反対側の面に当接する。そうした密着型イメージセンサ16の上下微動調整が本実施形態の主旨である。以下、それについて説明する。
【0023】
密着型イメージセンサ16は、下方から付勢ばね22を介してセンサホルダ17に保持され、付勢ばね22によってセンサ上部に設けたスペーサ23を介して搬送原稿プラテンガラス18の下面に下方から押し付ける方向に付勢されている。スペーサ23には摺動性樹脂材が用いられ、密着型イメージセンサ16を搬送原稿D1の読取開始位置Zから静止原稿D2の読取開始位置Wへ移動させる際、その摺動抵抗を軽減するようセンサ両端に取り付けられている。密着型イメージセンサ16に設けられたスペーサ23が搬送原稿プラテンガラス18と直接、接することで、搬送原稿プラテンガラス18に対する密着型イメージセンサ16の位置が決められる。よって、搬送原稿プラテンガラス18の上面を搬送される原稿を密着型イメージセンサ16の読取焦点距離内に確保することができる。なお、搬送原稿D1から静止原稿D2への読取切替時に密着型イメージセンサ16を搬送原稿プラテンガラス18や静止原稿プラテンガラス6と平行な方向に移動させるセンサ移動機構については、機能を果たせるならば特別な限定はない。本実施形態では、センサホルダ17を不図示のモータによって移動させて密着型イメージセンサ16を搬送原稿プラテンガラス18や静止原稿プラテンガラス6と平行な方向に移動させている。
【0024】
(センサ上下動構成:第1実施形態)
密着型イメージセンサ16を搬送原稿プラテンガラス18から静止原稿プラテンガラス6へと移動させるために、密着型イメージセンサ16を、静止原稿プラテンガラス6との対応レベルにまで下げるように移動させるべく作動する高分子アクチュエータ(移動手段)21が備わっている。
【0025】
この高分子アクチュエータ21は、高分子の単体、または高分子と金属との複合体でなっていて、電圧を印加すると伸縮動作するという特性を利用する。本実施形態では正(+)電圧の印加によって伸びる方向に動作し、負(−)電圧の印加によって縮む方向に動作する特性が利用され、読取手段である上記密着型イメージセンサ16が押し下げられて、静止原稿プラテンガラス6における走査移動が可能となる。図5中の符号Bで示す方向からみた図6において、高分子アクチュエータ21はフレーム部材24に取り付けられている。密着型イメージセンサ16との間に介在させてスペーサ23が設けられ、搬送原稿プラテンガラス18に接触する当接面23aと高分子アクチュエータ21に接触する当接面23bを有している。
【0026】
ここで、静止原稿プラテンガラス6については、そのガラス上面に載置してセットされた単葉紙などブック読み対象となる静止原稿D2を上から圧板ユニット1で押さえて密着させることによって、その静止原稿D2の画像情報をブック読みするようになっている。
【0027】
したがって、この第1実施形態の画像読取装置における密着型イメージセンサ16はつぎのように作動する。
【0028】
(搬送原稿D1の読取時)
まず、ADFによって送られる複数枚の搬送原稿D1を読み取るとき、それら複数枚の搬送原稿D1が読取面を上にして原稿トレイ4にセットされ、そのセットされた搬送原稿D1を原稿検出センサ11が検出する。
【0029】
ユーザは操作部12にて入力操作して読取開始の作動オンを指示する。搬送原稿読取部5が作動し、予備搬送部材10によって搬送原稿D1が分離ローラ8と分離パット9との分離部まで搬送され、搬送原稿D1を一枚ずつ分離して最上位のものを搬送する。分離された最上位の搬送原稿D1は搬送ローラ13によってUターンパス7に沿って搬送され、密着型イメージセンサ16による読取部へと向かう。
【0030】
原稿エッジセンサ15によって搬送原稿D1の先端部が検出されると、その先端部検出位置からさらに所定距離だけ搬送された地点、図4中符号Z位置から密着型イメージセンサ16によって搬送原稿D1に対する読取走査が開始される。搬送原稿D1は排紙ローラ対14(図3参照)に向かい、搬送原稿D1の後端を原稿エッジセンサ15が検出すると、その後端検出位置から所定距離だけ搬送された地点で密着型イメージセンサ16による搬送原稿D1の読み取りが終了する。読取終了した搬送原稿D1はガイド部材19から排紙ローラ対14によって装置外へと排出される。搬送原稿読取部5ではそのようにして最後の搬送原稿D1の読み取りが終了するまで、原稿検出センサ11によって原稿無しが検出されるまで同様な読取動作を繰り返す。
【0031】
(静止原稿D2の読取時)
密着型イメージセンサ16は、静止原稿プラテンガラス6に載置セットされた静止原稿D2を読み取るために、搬送原稿D1の読取開始位置Zから静止原稿D2の読取開始位置Wまで移動しなければならない。そこでまず、密着型イメージセンサ16を静止原稿プラテンガラス6や搬送原稿プラテンガラス18の厚さ方向に移動させる。即ち、静止原稿の読取開始位置Wに移動するには密着型イメージセンサ16を静止原稿プラテンガラス6に対応する高さレベルにまで下げるように位置調整する。図4〜図7を参照してセンサ高さレベル調整の作用について説明する。
【0032】
静止原稿プラテンガラス6上の静止原稿D2を読み取るために、密着型イメージセンサ16をそれまでの搬送原稿プラテンガラス18の高さレベルから静止原稿プラテンガラス6の高さレベルまで下げるように移動させる。その高さ調整を終えてから静止原稿D2を読み取るために密着型イメージセンサ16が、静止原稿プラテンガラス6と平行な方向へ移動できる状態になる。
【0033】
図5に示すように、高分子アクチュエータ21に正電圧を印加して伸長方向に動作させる。正電圧の印加によって高分子アクチュエータ21が伸長動作すると、その高分子アクチュエータ21がスペーサ23の当接面23bに当接して密着型イメージセンサ16をスペーサ23と共に下方へ押し下げるように移動する(図5、図6参照)。そのようにして密着型イメージセンサ16が押し下げられると、密着型イメージセンサ16がスペーサ23と共に高さレベルを下げる方向に微調整され、図5中符号Vで示す方向に移動可能となる。図7に示すように、密着型イメージセンサ16が静止原稿D2の読取開始位置Wまで移動した段階で、密着型イメージセンサ16は図中V方向に移動しながら静止原稿プラテンガラス6上に載置された静止原稿D2を走査して読み取る。その間、静止原稿D2としては搬送原稿プラテンガラス18の一面18aに突き当てて位置決めされている。密着型イメージセンサ16に設けられたスペーサ23は、静止原稿プラテンガラス6の下面と直接、接することで、静止原稿プラテンガラス6に対する密着型イメージセンサ16の位置が決められる。静止原稿プラテンガラス6の上面に載置された原稿は、密着型イメージセンサ16の読取焦点距離内となる。
【0034】
逆に、高分子アクチュエータ21に負電圧を印加すれば、図6中符号Uで示す点線部まで高分子アクチュエータ21が収縮動作する。その動作によって、図4に示すように、スペーサ23の当接面23aが搬送原稿プラテンガラス18に当接し、高分子アクチュエータ21と当接面23bが離れて密着型イメージセンサ16が再び搬送原稿D1を読み取る高さレベルに戻る。すなわち、高分子アクチュエータに正(+)電圧の印加して伸びる高分子アクチュエータを伸ばした状態で、静止原稿D2の読取開始位置Wから搬送原稿D1の読取位置Zへ密着型イメージセンサ16を後戻りして移動させる。その後、高分子アクチュエータ21を縮ませて密着型イメージセンサ16の高さレベルを微調整して上げる。そのようにして搬送原稿D1の読取開始位置Zへと円滑に受渡しを行う。スペーサ23が静止原稿プラテンガラス6から高分子アクチュエータ21への受渡しが終了した後、さらに高分子アクチュエータ21を図6の点線Uの位置まで縮ませ、搬送原稿D1の読取状態とする(図4参照)。
【0035】
なお、搬送原稿プラテンガラス18の下面には図中符号Yで示す幅を有する静止原稿D2の指標シート26が貼着されている。指標シート26の長手方向の長さ寸法はスペーサ23が搬送原稿プラテンガラス18に当接しても、スペーサ23に干渉しないような長さに設定されている。
【0036】
以上から、第1実施形態によれば、搬送原稿D1から静止原稿D2に、またはその逆に読み取りを切り替えるとき、搬送原稿プラテンガラス18の高さレベルから静止原稿プラテンガラス6の高さレベルまで密着型イメージセンサ16を微調整して下げる。それによって静止原稿プラテンガラス6と搬送原稿プラテンガラス18間の密着型イメージセンサ16の受渡しがスムーズとなる。すなわち、敢えて設けた搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6との間のガラス間段差に対応して、高分子アクチュエータ21によって密着型イメージセンサ16を微調整して上下動させる。そのようにして搬送原稿プラテンガラス18の高さレベルで搬送原稿D1の読取焦点距離を合わせ、かつ静止原稿プラテンガラスの高さレベルで静止原稿D2の読取焦点距離を合わせることによって、高精度の読取走査で高品質画像を得ることができる。また、搬送原稿プラテンガラス18と静止原稿プラテンガラス6のガラス間段差を利用して、搬送される原稿を、圧板ユニット1に設けられたガイド部材19によって圧板ユニット1内へガイドしている。したがって、装置本体H側であって静止原稿プラテンガラス6と搬送原稿プラテンガラス18間に、従来のジャンプ台は不要となり、その分だけ装置の小型化が実現できる。
【0037】
(センサ上下微動調整:第2実施形態)
つぎに、図8は、本発明による第2実施形態を示す。第1実施形態では高分子アクチュエータ21を用いて密着型イメージセンサ16を上下方向に微動調整した。本実施形態ではその高分子アクチュエータ21に代えて揺動部材27を設け、この揺動部材27に設けたボス部27a,27bを読取フレーム部材24に設けた係合凹部24a,24bに挿し込んで係合させる。そうした係合によって揺動部材27が上下方向に揺動可能であり、ばね部材29の弾性力でもって図でいう上方向に押圧付勢されている。
【0038】
また、上記ボス部27cには読取フレーム部材24に取り付けたワイヤ状の形状記憶部材28が掛けられている。この形状記憶部材28は、それ自身に電流を通電させると収縮動作をする特性を有するものである。そこで、形状記憶部材28への通電によって収縮させて揺動部材27を下方向に移動させることにより、図8に示すように、密着型イメージセンサ16を押し下げる。また、通電を停止すると、形状記憶部材28は、図中点線部28aに示すように伸びて元の状態に戻る。それに連動して揺動部材27はボス部27cが点線部28aに掛かるまでばね部材29による上方向への付勢で上部に移動し、密着型イメージセンサ16もまた上部に微動して調整される。
【0039】
以上、本発明について数例の実施形態が説明されたが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施形態、応用例、変形例およびそれらの組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る画像読取装置を示す斜視図。
【図2】同画像読取装置において圧板ユニットを開いて静止原稿D2をセットした態を示す斜視図。
【図3】ADFを含む第1実施形態の画像読取装置の要部を示す断面図。
【図4】第1実施形態において密着型イメージセンサが搬送原稿プラテンガラスにて搬送原稿D1を読み取る状態を拡大して示す図。
【図5】第1実施形態において高分子アクチュエータによって密着型イメージセンサを微調整で下げて静止原稿プラテンガラスにおける静止原稿D2の読取開始状態を拡大して示す図。
【図6】図5を搬送方向からみて示す図。
【図7】第1実施形態において静止原稿D2の読取開始状態を示す図。
【図8】本発明に係る第2実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1 ・・・圧板ユニット
2 ・・・白地板
5 ・・・搬送原稿読取部
6 ・・・静止原稿プラテンガラス
16 ・・・密着型イメージセンサ(読取手段)
17 ・・・密着型イメージセンサのセンサホルダ
18 ・・・搬送原稿プラテンガラス
20 ・・・押圧部材
21 ・・・高分子アクチュエータ(上下動手段)
23 ・・・スペーサ
24 ・・・読取フレーム部材
25 ・・・スポンジ部材
26 ・・・指標シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取手段によって、静止原稿プラテンガラスの上に載置された静止原稿を、前記静止原稿プラテンガラスを介して読み取るとともに、搬送原稿プラテンガラスの上に搬送されてきた搬送原稿を、前記搬送原稿プラテンガラスを介して読み取る画像読取装置であって、
前記静止原稿プラテンガラスと前記搬送原稿プラテンガラスとは厚さ方向で位置が異なるように隣接して設けられ、前記読取手段が前記搬送原稿プラテンガラスと前記静止原稿プラテンガラスとの間を移動する際に前記読取手段を前記搬送原稿プラテンガラスおよび前記静止原稿プラテンガラスの厚さ方向に移動させる移動手段が設けられたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記移動手段が、電圧の印加によって伸縮動作して前記読取手段を厚み方向に動かす高分子アクチュエータでなっていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記高分子アクチュエータが高分子の単体、または高分子と金属との複合体でなっていることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記高分子アクチュエータに正電圧を印加して伸長動作させることによって前記読取手段が押し下げられて、前記静止原稿プラテンガラスにおける走査移動が可能となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記読取手段がCCDを含む密着型イメージセンサであって、前記静止原稿プラテンガラスおよび前記搬送原稿プラテンガラスにおける原稿と反対側の面と当接することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−301313(P2008−301313A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146463(P2007−146463)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】