説明

界面活性剤濃度が低く、糖濃度が高い固形製品を製造する方法

本発明の組成物は、少量の界面活性剤および多量の糖を有する固形製品を含み、この固形製品は良好な消耗速度および十分な発泡を維持している。糖は、予想外に、不溶性脂肪酸をたとえわずかしか使用しないか、または使用しない場合でも、固形製品の特性を劣化することなく、固形製品を構造化することが見出された。さらに、本発明は、白色で消費者が望ましいこうした固形製品を製造する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低濃度の界面活性剤および高濃度の糖を含む、固形製品組成物(たとえば、美容用または化粧用固形製品組成物)、好ましくは固形石鹸組成物に関する。本発明はさらに、「より白色の」固形製品を得るための、こうした固形製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形石鹸は、伝統的に、可溶性脂肪酸石鹸(これは泡立ち効果をもたらす)と不溶性脂肪酸石鹸(これは固形構造を付与する)の混合物からなる。種々の理由で、固形製品組成物中のその成分が可溶性および不溶性の脂肪酸石鹸であろうと、または可溶性および不溶性の合成界面活性剤であろうと、可溶性および不溶性界面活性剤成分の濃度を減少させることが望ましい。高濃度の界面活性剤、特に、界面活性剤が、たとえば脂肪酸石鹸の場合は、低刺激性が損なわれる。
【0003】
しかし、界面活性剤濃度の減少は他の面に影響を与える。たとえば、不溶性界面活性剤(たとえば、不溶性脂肪酸)が減少すると、充填剤またはその他の成分の濃度の増加を伴うことになり、これがより速い消耗速度を引き起こし得る。また、たとえば、可溶性界面活性剤の濃度を減少させると、消費者にとって良好な洗浄の望ましい手がかりとなる泡立ちが減少するであろうことが予想される。
【0004】
上記のように、界面活性剤の濃度を減少させて、(たとえば、低刺激性を向上させるために)界面活性剤の代わりに充填剤で置き換えると、固形製品の消耗速度が速く、および発泡特性が不十分になるはずであることが予想される(たとえば、Saxenaらの米国特許第6462002号を参照されたい)。
【0005】
しかし、本出願人らは予想外に、最初に高濃度(たとえば、約40%を超える)の糖を有する固形製品を使用することにより、不溶性脂肪酸(これは、構造を強化するが、発泡を抑制する)の使用を回避するまたは最小限に抑えることが可能であることを見出した。高濃度の糖は、不溶性脂肪酸がわずかしか存在しない、または存在しなくても構造体を付与し、同時に、不溶性脂肪酸の発泡を抑制する作用を回避することを見出した。さらに、界面活性剤濃度が低いので、この固形製品は一層の低刺激性をもたらす。さらに、糖(たとえば、スクロースおよび二糖類)は、安価であり、固形石鹸中に容易に取り込むことができる。
【0006】
当技術分野で開示されている固形製品は、典型的には、比較的高濃度の界面活性剤および比較的低濃度の親水性皮膚軟化剤を有する。たとえば、WO 02/50226(Unilever)には、15重量%〜60重量%の界面活性剤、および5〜20%の濃度の親水性皮膚軟化剤(これには、グリセリンおよびプロピレングリコールなどの多価アルコール、およびポリエチレングリコールなどのポリオールが含まれる)を含む低含水量のクレンジング固形製品が開示されている。
【0007】
同様に、Rossらの米国特許第6376441 B1号には、実施例によれば、石鹸が約40重量%で存在し、糖の濃度が約16.8%(70%スクロース水溶液として供給される)である多相溶融注型固形製品が開示されている。
【0008】
注目すべきその他の文献としては、Abbasらの米国特許第6458751号、McFannらの米国特許第6384000号、Coyleらの米国特許第6383999号、Allanらの米国特許第6224812号、Rattingerらの米国特許第6174845号、AbbasらのWO 2002/061030、およびCoyleらのWO 01/58422がある。
【0009】
可溶性脂肪酸石鹸および洗剤、および少量(5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満および最も好ましくは1%未満)または0の不溶性脂肪酸石鹸を含む、比較的低濃度(たとえば、約25重量%未満)の界面活性剤を、すべて高濃度(約40%を超え、好ましくは約50%を超える)の糖と組み合わせて有する固形製品は、当技術分野には開示されていないと考えられる。さらに、こうした組成の固形製品が、製造されたと仮定しても、特定の方法で加工する場合にのみ褐色の着色が回避できることは開示されていない。
【発明の開示】
【0010】
これに関しては、本発明の第2実施形態は、上記の糖固形製品を製造する方法、詳細には、組成物中に使用されるガラス転移調整剤を脂肪酸を中和した後で添加することを確保することによって、より白色の固形製品を製造する方法に関する。
【0011】
本発明は、
(1)約25重量%未満、好ましくは約20重量%未満の界面活性剤(可溶性脂肪酸石鹸および洗剤と、約5%未満の不溶性脂肪酸石鹸を含む)、
(2)約40重量%を超える、好ましくは約50重量%を超えて約80重量%まで、好ましくは約70重量%までの糖または糖の組合せ、
(3)約5重量%〜25重量%のガラス転移温度調整剤;ならびに
(4)約1%〜約30%、好ましくは5〜30%の水
を含む固形製品組成物、好ましくは、界面活性剤固形製品組成物、より好ましくは、
脂肪酸石鹸および場合によって合成洗剤組成物を含む。
【0012】
本発明の第2実施形態は、上記のより白色の糖固形製品を製造する方法に関し、この方法は、先ず水および糖または複数の糖を混合すること、約60〜90℃、好ましくは約70〜85℃に加熱すること、均質になった後、界面活性剤を添加すること(たとえば、ラウリン酸またはその他の脂肪酸)、温度を維持すること、たとえば、脂肪酸を中和すること(たとえば、NaOHにより)、次いでようやく、ガラス転移調整剤(および場合により副成分)を添加すること、および、流し込みかつ固形石鹸を注型することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、約25%未満の界面活性剤、約40%を超える糖および約5%〜25%のガラス転移温度調整剤を有する固形製品組成物に関する。さらに、この界面活性剤は、主として可溶性脂肪酸石鹸および洗剤を含み、不溶性脂肪酸石鹸の量は、固形製品組成物の約5%未満である。
【0014】
以前は、比較的界面活性剤濃度が低く、糖濃度が高い固形製品の調製は検討されていない。なぜなら、不溶性脂肪酸石鹸を除去すると(および充填剤により置き換えると)、速い消耗速度または速いマッシュ化速度(不溶性脂肪酸石鹸または合成品の充填剤による置換えの増加により生じる)、および/または発泡レベルの低下(発泡を助ける可溶性脂肪酸石鹸を減少することにより生じる)を引き起こすことになると考えられていたからである。
【0015】
本発明では、可溶性脂肪酸石鹸とは、35℃で少なくとも2%が水中に可溶な石鹸と定義され、不溶性石鹸とは、この基準に当てはまらないものである。
【0016】
より具体的には、本発明の固形製品組成物は、
(1)総組成物の25重量%未満、好ましくは総組成物の20重量%未満の界面活性剤(好ましくは界面活性剤は可溶性脂肪酸石鹸であるか又は、大部分(たとえば、総界面活性剤の75%を超える、好ましくは90%を超える)が可溶性脂肪酸石鹸であり、;また、組成物の5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満の不溶性脂肪酸を含む)、
(2)約40重量%を超える、好ましくは50重量%を超える、より好ましくは55重量%を超える糖または複数の糖、
(3)約5〜25重量%、好ましくは5〜20重量%のガラス転移温度調整剤、および
(4)約1%〜30%の水
を含む。
【0017】
本発明の固形製品組成物は、これらが低濃度の総界面活性剤(少量または0の不溶性脂肪酸を含めて、25%未満)、および高濃度の糖を含み、かつそれでも良好な発泡性(たとえば、糖は発泡を抑制しない)、および低マッシュ化(たとえば、不溶性界面活性剤の代わりに使用される糖「充填剤」は、構造体を提供し、マッシュ化を高めない)を維持するという点で特有である。
【0018】
さらに、他の実施形態では、本出願人らは、固形製品を製造するために使用されるガラス転移調整剤を、中和の後に添加する場合に限り、固形製品はより白色のよりきれいな外観を有することを見出した。
【0019】
本発明の主要な界面活性剤(この界面活性剤は、固形製品組成物の約25%未満を構成する)は、技術的にはC〜C22脂肪酸の塩と称される石鹸である。これらの脂肪酸は、天然または合成の脂肪族(アルカンまたはアルケンの)酸塩であり得る。ヤシ油の脂肪酸分布を有する石鹸は、上記の広い分子量範囲の下方を提供することができ、一般に、上記に定義された「可溶性」脂肪酸石鹸と称される。ピーナッツ、獣脂またはナタネ油、あるいはこれらの硬化油誘導体(たとえば、C14またはC16以上)の脂肪酸分布を有する石鹸は、分子量範囲の上方を提供することができ、一般に不溶性脂肪酸石鹸として参照される。
【0020】
一般の石鹸の製造では、ヤシ油または獣脂、あるいはこれらの混合物の脂肪酸分布を有する石鹸を使用することが好ましい。なぜなら、これらは中でも容易に入手可能な脂肪だからである。ヤシ油石鹸中の少なくとも12個の炭素原子を有する脂肪酸の比率は約85%である。ヤシ油と、獣脂などの脂肪、パーム油、または非熱帯性ナッツ油との混合物、あるいは脂肪が使用される場合は、主要な鎖長はC16以上であり、この比率がより大きくなる。本発明では、不溶性脂肪酸の濃度が低いかまたはむしろ0であり、主として、ヤシ油石鹸およびヤシ油石鹸と合成洗剤の混合物を使用することが好ましい。具体的には、不溶性脂肪酸石鹸は、固形製品組成物の5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満および最も好ましくは1%未満を含む。
【0021】
この石鹸は、商業的に受け入れられる基準に従って不飽和を含んでいてもよい。普通は、過剰な不飽和は回避される。
【0022】
脂肪酸に対する塩の対イオンは、アルカリ、アンモニウムまたはアルカノールアンモニウムイオンから選択されるものでもよい。アルカノールアンモニウムという用語は、窒素カチオン上に置換された、1つ、2つまたは3つのC〜Cヒドロキシアルキル基を意味し、トリエタノールアンモニウムカチオンが選択される種である。適当なアルカリ金属カチオンは、カリウムおよびナトリウムのものであり、後者が好ましい。
【0023】
上記のように、総界面活性剤の濃度は、総固形製品組成物の約25重量%未満、好ましくは20重量%未満であるべきである。石鹸それ自体(たとえば、C〜C22脂肪酸塩、しかし好ましくはC〜C12脂肪酸塩)が、界面活性剤系の75%を超え、好ましくは90%を超えて含まれており、合成界面活性剤または洗剤からの残りと共に含まれる。
【0024】
これに関しては、固形製品は、少量の石鹸以外の界面活性剤(すなわち、合成洗剤)を許容することができるが、上記のように総界面活性剤(石鹸を含めた)は、固形製品組成物の約25重量%未満である。
【0025】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤であり得る。
【0026】
アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤としては、勿論これに限定されることなく、脂肪族サルフェート、脂肪族スルホネート(たとえば、C〜C22スルホネートまたはジスルホネート)、芳香族スルホネート(たとえば、アルキルベンゼンスルホネート)、アルキルスルホッシネート、アルキルおよびアシルタウリン、アルキルおよびアシルサルコシン、スルホアセテート、アルキルホスフェート、カルボキシレート、イセチオネート、等がある。
【0027】
双性イオンおよび両性界面活性剤
双性イオン界面活性剤は、脂肪族の4級アンモニウム、ホスホニウム、およびスルホニウム化合物の誘導体として、広範に記述することができるものにより例示され、脂肪族基は、直鎖または分枝鎖でもよく、1つの脂肪族置換基は約8〜約18個の炭素原子を含み、かつ1つは、アニオン性基、たとえば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、またはホスホネートを含む。これらの化合物に対する一般式は、
【0028】
【化1】

[式中、Rは、約8〜約18個の炭素原子からのアルキル、アルケニル、またはヒドロキシアルキル基、0〜約10のエチレンオキシド部分および0〜約1のグリセリル部分を含み、Yは、窒素、リン、および硫黄原子からなる群から選択され、Rは、約1〜約3炭素原子を含むアルキルまたはモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子の場合は1であり、Yが窒素またはリン原子の場合は2であり、Rは、約1〜約4個の炭素原子のアルキレンまたはヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、およびホスフェート基からなる群から選択される基である]である。
【0029】
本発明に使用し得る両性洗剤は、少なくとも1つの酸基を含む。これは、カルボン酸またはスルホン酸基であり得る。これらは、4級窒素を含み、したがって4級アミド酸である。これらは、一般に7〜18個の炭素原子のアルキルまたはアルケニル基を含む。これらは、通常、一般的な構造式に従う。
【0030】
【化2】

式中、Rは、7〜18個の炭素原子のアルキルまたはアルケニルであり、
およびRは、それぞれ独立に、1〜3個の炭素原子のアルキル、ヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルであり、
nは2〜4であり、
mは0〜1であり、
Xは、ヒドロキシルで場合により置換された、1〜3個の炭素原子のアルキレンであり、
Yは、−CO−または−SO−である。
【0031】
非イオン性界面活性剤
使用し得る非イオン性としては、特に、疎水性基および反応性水素原子を有する化合物たとえば、脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノールと、アルキレンオキシド(特に、エチレンオキシド単独であるいはプロピレンオキシドと共に)との反応生成物がある。具体的な非イオン性洗剤化合物には、アルキル(C〜C22)フェノール−エチレンオキシド縮合物、脂肪族(C〜C18)第1級または第2級直鎖または分枝のアルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、およびエチレンオキシドと、プロピレンオキシドとエチレンジアミンの反応生成物との縮合により製造された生成物がある。その他のいわゆる非イオン性洗剤化合物としては、長鎖の第3級アミンオキシド、長鎖の第3級ホスフィンオキシドおよびジアルキルスルホオキシドがある。
【0032】
非イオン性は、多糖アミドなどの糖アミドでもよい。特に、界面活性剤は、参照により本明細書に組み込まれている、Auらの米国特許第5389279号に記載のラクトビオンアミドの1つでもよく、あるいは、参照により本出願に組み込まれている、Kelkenbergの特許第5009814号に記載の糖アミドの1つでもよい。
【0033】
使用し得るその他の界面活性剤が、Parran Jrの米国特許第3723325号に記載されており、Llenadoの米国特許第4565647号に開示されたアルキル多糖類非イオン性界面活性剤があり、これら両方は参照により本出願に組み込まれている。
【0034】

一般的に存在する結晶性の糖は、単糖類および二糖類のクラスに属する(Food Theory and Applications、Pauline C.PaulおよびHelen H.Palmer編、Wiley、ニューヨーク、1972、ISBN 0−471−67250−5)。単糖類のクラスとしては、デキストロース、フルクトース、およびガラクトースがある。二糖類のクラスとしては、スクロース(菓子工業において最も一般的に使用される甘味料であり、「糖」という用語を使用する場合は通常暗に含まれている成分)がある。スクロースは、α,β−グリコシド結合により結合されたグルコース残基およびフルクトース残基からなる二糖類である。その他の一般的な二糖類としては、ラクトース、マルトース、パラチノース、およびロイクロースがある。
【0035】
ガラス転移温度調整剤
過飽和の糖溶液をこれらのガラス転移温度(Tg)未満に冷却すると、ガラス状の相をその温度で形成し、非昌質砂糖または氷砂糖が形成される。所与の単糖類または二糖類溶液のガラス転移温度は、単糖類または二糖類それ自体、その水中の濃度、および存在するガラス転移調整剤により決まる(H.LevineおよびL.Slade、「Cryostabilization Technology:Thermoanalytical Evaluation of Food Ingredients and Systems」、Thermal Analysis of Foods、V.R. HarwalkarおよびC.Y. Ma,Elsevier編、1990、221〜305頁)。理論により縛られることは好まないが、本発明におけるガラス転移温度調整剤の役割は、固形製品の糖成分のガラス転移温度を上昇させて、それで固形製品の硬度を増大させるものと考えられる。本発明では、ガラス転移調整剤は、3種の異なるクラスの化合物、トウモロコシ甘味料、水溶性ビニルポリマー、および変性された水溶性セルロースおよびデンプンから選択される。
【0036】
トウモロコシ甘味料
トウモロコシ甘味料は、コーンスターチポリマーを種々の長さのポリデキストロース単位に加水分解することによりトウモロコシから誘導された甘味料のクラスである。デンプン分子の転化度は、デキストロース当量、D.E.により測定され、これは乾燥重量ベースでのデキストロースとして計算された還元糖のパーセントを意味する。より高いD.E.のトウモロコシ甘味料は、より高度に転化されており、より低い分子量を有する。トウモロコシ甘味料は、デンプン分子の転化度に応じて以下の通り分類される。
【0037】
非常に低い転化度:20D.E.以下、
低い転化度:20〜38D.E.、
標準の転化度:38〜48D.E.、
中間の転化度:48〜58D.E.、
高い転化度:58〜68D.E.、
特別高い転化度:68D.E.以上。
【0038】
この転化度は、トウモロコシ甘味料の官能性に影響を与え、より低いDEのトウモロコシ甘味料は、これらの糖との混合物のガラス転移温度を増加させることに大きな効果を有する。これに関して重要なクラスのトウモロコシ甘味料は、デンプンから20未満のD.E.に加水分解されるマルトデキストリンである。マルトデキストリンの包括的な系列が、Grain Processing Corporationにより商品名Maltrinとして製造されている。
【0039】
他の例には、約32のDEを有する低転化度のトウモロコシ甘味料である、Karo syropがある。
【0040】
水溶性ビニルポリマー
上記のLevineおよびSladeの参考文献において論じられているように、種々の水溶性ビニルポリマーが、ガラス転移調整剤として有用であり得る。この参考文献のコピーは参照により本出願に組み込まれている。これらには、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ガラス転移温度調整剤として有用であると見出されたさらなる水溶性ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリ酢酸ビニルPVAc)がある。
【0041】
変性された水溶性セルロースおよびデンプン
水溶解性を高めるために変性されたセルロースおよびデンプン誘導体も、効率的なガラス転移調整剤としての機能を果たすことができる。ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルエーテルデンプンなどのデンプンエーテルを含めた、種々の変性されたまたは誘導されたデンプンを利用することができる。セルロースのアルキル化により形成された、セルロースエーテルとして知られているポリマーのクラスもガラス転移調整剤として有効である。セルロースは、これらの1,4位を介してβ−アノマー立体配置により結合したグルコピラノース単糖類単位からなる線状の非分岐多糖類である(Kirk−Othmer Encyclopedia、5巻、4版、ISBN:0−471−52695−3)。グルコピラノース残基当たり3つのヒドロキシル単位は、それぞれがエーテル形成のための活性部位としての機能を果たして、最大置換度(DS)3を得ることができる。水への溶解性のためには、0.4〜2のDS値が一般に必要となる。有用なセルロースエーテルとしては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースがある。HECの市販品の例としては、Dow Chemical Company製Cellosize系統の製品がある。メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの例としては、Dow Chemical Companyにより商品名Methocelとして市販されている。
【0042】
加工
本発明の固形製品は、注型溶融法により製造され、これによりすべての材料を溶融し、型中に流し込む。固形製品材料を型中で固める。
【0043】
しかし、本発明の方法に対する鍵は、本出願人らは、添加順序が固形製品の最終外観に決定的であることを見出したことである。すなわち、ガラス転移温度調整剤を中和の前に添加しようと、後に添加しようと適合する固形製品を製造することはできるが、調整剤(ならびに副成分)を中和(すなわち、脂肪酸の)後に添加すると、より白色の、より望ましい固形製品となる。
【0044】
より具体的には、本発明の方法は、以下の
(1)水と糖(または複数)を混合し、混合物を約60〜90℃、好ましくは70〜85℃に加熱すること、
(2)均質になった後、脂肪酸(たとえば、ラウリン酸)を添加し、温度を維持すること、
(3)脂肪酸を中和すること(たとえば、NaOHまたはその他のアルカリ金属源を用いて)、
(4)次いでようやく(中和の後)Tg調整剤および副成分を添加すること、および
(5)流し込んで固形製品を注型すること
を含む。
【0045】
実施例および比較例では、または明確に別段の指示がある場合を除いて、材料または反応条件の量または比率、材料の物理的性質および/または使用を示すこの説明中のすべての数値は、「約」という単語により修飾されているものと理解されたい。
【0046】
「含む」という用語は、本明細書中で使用される場合は、提示された特徴、整数、ステップ、成分の存在を含むが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、成分またはこれらの群の存在または追加を排除しないものとする。
【実施例】
【0047】
以下の実施例は、さらに本発明を例示するものとし、決して本発明を限定するものではない。
【0048】
別段の指示がなければ、すべてのパーセントは、重量パーセントとし、すべての範囲は、範囲の両端のみならず、両端の間に包含される範囲すべても同様に含まれるものとする。
【0049】
本発明で使用されるプロトコル
固形製品から泡立たせる手順:
1.90°Fの水中で固形製品を20回転がす。固形製品を10分間わきに置く。
2.90°Fの水中で固形製品を10回転がす。
3.固形製品を水の外に取り出し、両手(プラス固形製品)を3回緩やかに振って、過剰な水を切る。この手順により、泡立たせるのに一定量の水が使用されることを多少とも確実にする。
4.一方の手で固形製品を保持し、他方の掌でその上を10回こする。
5.固形製品を下に置き、すべての泡を掌の中心に集める。
6.この泡をさらに10回緩やかにこする。
【0050】
泡体積比重を決定する手順:
1.ペトリ皿の底を天秤上に置き、天秤を0の目盛りに合わせる。
2.35×10mmペトリ皿のふたを含む黒色のふたを天秤に置き、重量を記録する。
3.第2ペトリ皿の底にその後発生した泡を収集する。
4.皿プラス泡を秤量し、発生した泡の総重量として重量を記録する。
5.少量の泡を注意深く取り出し、35×10mmペトリ皿のふたの中に置く。
6.へらの平らな縁を用いて、ペトリ皿の頂部の両端間でへらを水平にならすことにより過剰の泡を除去する。
7.このふたを広口ビンの黒色のふたの上に逆さまに置き、泡が広口ビンのふたに接触するようにする。
8.泡を含む、黒色のふたおよびペトリ皿のふたを再秤量する。
9.35×10mmペトリ皿のふたの体積は5.2mlである。
10.35×10mmペトリ皿のふた中の泡の重量を、ステップ8で得られる重量からステップ2で得られる重量を減算することにより計算する。
11.35×10mmペトリ皿のふた中の泡重量(ステップ10)を5.2ml(ふたの体積)で除算することにより、泡の比重を計算する。これは泡の湿り度の測度である。より数値が高いほど、泡はより湿っている。
12.総泡体積は、発生した泡の総重量(ステップ4)を比重(ステップ11)で除算することにより計算する。
【0051】
消耗速度を決定する手順
1.固形石鹸の最初の重量を計る。
2.洗濯ボウルに所望の温度(40℃)の5リットルの水を満たす。
3.防水手袋を着用し、固形石鹸を水中に浸し、水から取り出し、水の上で手の中で15回転がす。
4.ステップ3を繰り返す。
5.固形石鹸を水中に浸して泡を洗い流し、固形石鹸をトレー中に置く。
6.全洗浄手順(ステップ1〜5)を、1日当たり6回連続4日間、各日のうち等間隔で実施する(たとえば、9:00、10:00、11:00、12:00、13:00、14:00)。
7.消耗速度=(最初の重量−最終重量)を計算する。
【0052】
(比較例1および実施例1から10)
以下の各実施例において、固形製品を、糖、ガラス転移調整剤(Tg調整剤)、界面活性剤および水を加熱および混合し、型に流し込み、冷却して固めることにより調製した。
【0053】
上記の方法を用いて、以下の固形製品を調製した。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例から分かるように、本出願人らは、糖が構造化剤として有効に機能を果たす(ガラス調整剤の存在のために)固形製品を調製することが可能であり、したがって、界面活性剤の濃度が低く(大部分が可溶性脂肪酸石鹸)、不溶性脂肪酸石鹸がきわめて低濃度であるか存在しない固形製品を調製することが可能であった。比較例1から、Tg調整剤が使用されない場合は、糖が再結晶し、生成物が不安定であることが分かる。
【0056】
いくつかのポイントに留意するべきである:
(1)種々のTg調整剤を使用することができる。
(2)使用される界面活性剤は、石鹸、石鹸のブレンドまたは合成品(たとえば、ココイルイセチオン酸ナトリウム)でもよい。
【0057】
(実施例11から12および比較例2から3)
糖で構造化された固形製品の調製は、固形製品の特性に負の影響を及ぼさない(予想されたように)ことを示すために、本出願人らは、(上記実施例に対して示したのと同様の方法で)実施例11から12を調製し、比較例2および3(糖で構造化されていない)と以下に示すように比較した。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例11および12は、固形製品が、合成品(ドデシル硫酸ナトリウム)と通常の石鹸のブレンドを用いて調製することができることを示す。さらに、2種の異なる調整剤の固形製品特性への影響を観察することができる。
【0060】
実施例において、本発明の生成物の性能を2種の市販品、Dove(登録商標)およびLux(登録商標)と比較することができる。
【0061】
示されているように、本発明の糖で構造化された生成物は、Lux(登録商標)に比較して泡立ちが向上した。さらに、糖で構造化された固形製品は、Dove(登録商標)に比較して消耗が向上した。(より低い値)。
【0062】
要するに、全く予想外に、糖で構造化された固形製品の製造が可能であることが分かるのみならず、これらは、ユーザ特性を犠牲にすることなく製造することができることも分かる。
【0063】
(実施例13)
本発明の方法により製造された固形製品(中和後にTg調整剤)と、中和の前にガラス調整剤が添加されること以外は、同じ方法により製造された固形製品との間の劇的な違いを示すために、本出願人らは、下記の実験を実施した。
【0064】
糖固形製品を製造する方法
(1)中和前のTg調整剤の添加
(a)ほぼ17.58gの水、50.0gの糖、10.0gのTg調整剤(たとえば、マルトデキストラン)を混合し、次いでほぼ85℃に加熱した。
(b)均質になった後、12.5gの界面活性剤(たとえば、ラウリン酸)を添加し、加工温度を維持した。
(c)5.OgのNaOHを用いて界面活性剤を中和した。
(d)副成分(たとえば、SDS、防腐剤、香料、TiO)を添加した。かつ
(e)固形石鹸を流し込み、注型した。
【0065】
結果を図1に示す。
【0066】
(2)中和後のTg調整剤の添加
(a)17.58gの水および50.0gの糖を混合し、85℃に加熱した。
(b)均質になった後、12.5gの界面活性剤(たとえば、ラウリン酸)を添加し、加工温度を維持した。
(c)5.OgのNaOHを用いて脂肪酸(たとえば、ラウリン酸)を中和した。
(d)次いで、10.0gのTg調整剤および4.92gの副成分(たとえば、SDS、防腐剤、香料、TiO)を添加した。
(e)固形石鹸を流し込み、注型した。
【0067】
結果を図2に示す。
【0068】
この2つの直接の横並びにより、Tg調整剤を中和後に添加した場合は、固形製品は、はるかにより白かった(図3の右側)ことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】Tg調整剤を中和の前に添加した場合に製造された固形製品の写真である。
【図2】Tg調整剤を中和の後に添加した場合に製造された固形製品の写真である(本発明の方法)。
【図3】右側の固形製品が本発明の方法により製造された、横並びの比較写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)約25重量%未満の界面活性剤、
(2)約40重量%を超える糖または糖の混合物、
(3)約5重量%から25重量%のガラス転移温度調整剤、および
(4)1%から30%の水
を含む固形製品組成物。
【請求項2】
約20%未満の界面活性剤を含む請求項1に記載の固形製品組成物。
【請求項3】
25%の界面活性剤が全体で、5%未満の不溶性脂肪酸石鹸および/または不溶性合成洗剤を含み、前記パーセントが、総組成物の重量パーセントである請求項1に記載の固形製品組成物。
【請求項4】
25%の界面活性剤が全体で、3%未満の不溶性脂肪酸石鹸および/または不溶性合成洗剤を含み、前記パーセントが、総組成物の重量パーセントである請求項3に記載の固形製品。
【請求項5】
2%未満の不溶性脂肪酸石鹸および/または不溶性合成洗剤を含み、前記パーセントが、総組成物の重量パーセントである請求項4に記載の固形製品。
【請求項6】
界面活性剤が、総界面活性剤の約75%を超える可溶性脂肪酸石鹸を含む請求項1に記載の固形製品。
【請求項7】
約50%を超える糖、または糖の混合物を含む請求項1に記載の固形製品組成物。
【請求項8】
ガラス転移調整剤が、トウモロコシ甘味料、水溶性ビニルポリマー、および変性された水溶性セルロースおよびデンプンからなる群から選択される請求項1に記載の固形製品。
【請求項9】
前記糖または複数の糖が、スクロースを含む請求項1に記載の固形製品組成物。
【請求項10】
(1)約25重量%未満の界面活性剤、
(2)約40重量%を超える糖または糖の混合物、
(3)約5重量%〜25重量%のガラス転移調整剤;および
(4)1%〜30%の水を含み、
(a)約60℃を超え約90℃までの温度で、水、糖および界面活性剤を合わせること、
(b)ガラス転移調整剤の添加に先立って、界面活性剤を中和すること、
(c)続いてガラス転移調整剤を添加すること、および
(d)冷却して固形製品を形成すること
を含む、固形製品組成物を製造する方法。
【請求項11】
前記固形製品組成物が、約20%未満の界面活性剤を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
25%の界面活性剤が全体で、5%未満の不溶性脂肪酸石鹸および/または不溶性合成洗剤を含み、前記パーセントが総組成物の重量パーセントである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
界面活性剤が、総界面活性剤の約75%を超える可溶性脂肪酸石鹸を含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
約50%を超える糖、または糖の混合物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ガラス転移調整剤が、トウモロコシ甘味料、水溶性ビニルポリマー、および変性された水溶性セルロースおよびデンプンからなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記糖または複数の糖が、スクロースを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
温度が約70℃約85℃である請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508403(P2007−508403A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530087(P2006−530087)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011084
【国際公開番号】WO2005/040322
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】