説明

異味成分を含有する速崩壊性顆粒の製造方法

【課題】 異味成分を含有する顆粒製剤において、飲用時の飲み心地かつ風味に優れ、かつハンドリング性に優れている顆粒及びその製造方法を提供する。特に、異味成分として、グルコサミン、コンドロイチン又はケルセチン配糖体の少なくとも一種類以上を含有する顆粒及びその造粒方法を提供する。
【解決手段】
グルコサミン、コンドロイチン又はケルセチン配糖体を含む粉末を押出造粒法によって成型することにより、ハンドリング性に優れており、さらに飲用時の飲み心地かつ風味に優れた顆粒を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異味成分を含有する速崩壊性顆粒及びその製造方法に関し、更に詳細には、異味成分を含有するにもかかわらず、飲用時の飲み心地と風味に優れ、かつハンドリング性にも優れた速崩壊性顆粒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国民の健康に対する関心の高まりから、毎日摂取する食物(健康食品を含む)を通して健康を維持する試みが注目を集めている。なかでも、生体内機能性成分を含む種々の粉末状の経口素材の開発は目覚しく、それらは種々の剤形の製品として提供されている。なかでも、錠剤タイプに比べて摂取しやすい顆粒タイプの食品の人気が、特に、嚥下力の低下した高齢者の間で年々高まっている。
【0003】
しかしながら、顆粒タイプの食品はハンドリング性に劣っていることが多い。例えば、1回摂取量を小袋に充填した個包装タイプの顆粒の場合、静電気によって包材の内表面に顆粒の一部が付着し、内容物の一部を摂取できなくなることがしばしばある。このようにハンドリング性が劣っていると、顆粒状食品の一部が摂取されないことになり、飲用者にとって極めて不都合であり、また不利益である。
【0004】
また、錠剤タイプの食品と違い、顆粒タイプの食品は素材固有の風味が舌に直接感じられやすい。従って、苦味、渋味などヒトにとって好ましくない風味を有する素材を含有する顆粒については、摂取の際に不快感を伴うため毎日の摂取を継続することが困難となることがしばしばある。
【0005】
変形性膝関節症や変形性股関節症等のいわゆる変形性関節症は、老化、スポーツや肥満による関節の酷使等によって、関節の軟骨が擦り減り、骨の末端どうしが擦り合わされてしまう疾患であり、症状の進行と共に疼痛の増強、歩行障害、日常生活動作の制限等が顕著となる。従来、変形性関節症の治療薬としては、ステロイドや非ステロイド系抗炎症剤が一般的に用いられているが、免疫障害や胃腸障害等の重篤な副作用があることから、より安全性の高い治療法や予防法が望まれている。安全性の高い天然物由来の成分を用いたものとして、例えば、グルコサミンやコンドロイチン(例えば、サメ軟骨粉末)、酵素処理ルチン(例えば、ケルセチン配糖体)などの摂取により治療・予防を図ることが望ましい。
【0006】
ところで、グルコサミンやコンドロイチンを有効成分とする健康食品は知られている。
特許文献1には、グルコサミン及び/又はイソフラボンを有効成分とし、常温で固体の硬化油脂及びコラーゲンを含有する原料粉体混合物から製造される錠剤が開示されている。この原料粉体混合物は打錠性にすぐれ、滑沢剤として他の食品添加剤を含有することなく良好な錠剤を製造できると記載されている。しかしながら、グルコサミンを有効成分とする顆粒剤、特に、グルコサミンの異味を減じた顆粒剤は開示されていない。
【0007】
特許文献2には、粉末状に調製したグルコサミン及び/又はその塩類に対して、糖類を含有する溶液を噴霧して造粒加工することによって、打錠加工に適したグルコサミン顆粒を得ることが開示されている。このグルコサミン顆粒は圧縮成形することにより、グルコサミンを高濃度に含有し、形状安定性の錠剤を得ることができると記載されている。この顆粒は、錠剤を造るための打錠加工に適した特性を持つ顆粒である。
【0008】
特許文献3には、β−1,4−ポリ−グルコサミンより構成される高分子化合物であるキトサンを含む、水溶性粒体及びその製造方法が開示されている。このキトサン含有粒体は、次のように製造される。すなわち、第1の液体の存在下に、固体有機酸(リンゴ酸、クエン酸、コハク酸等)を振とうして固体有機酸を造粒し、この固体有機酸粒体とキトサンとの混合物を第2の液体の存在下において振とうすることにより、保存安定性に優れた水溶性キトサン含有粒体が調製できることが開示されている。しかしながら、特許文献3には、キトサン含有粒体が水溶性であり、かつ保存安定性が優れていることは開示されているが、その粒体の飲み心地や風味については記載されておらず、かつハンドリング性についても全く触れていない。
【特許文献1】特開2001−288073号公報
【特許文献2】特開2006−36644号公報
【特許文献3】特開2000−53704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
顆粒タイプの食品は錠剤、粉剤に比べて、飲み易く、ハンドリング性に優れているものの、素材固有の風味が舌に直接感じられ易いため、異味成分を含む顆粒剤は製造しにくかった。本発明では、顆粒剤であっても、異味成分の苦み、渋みなどの不快な風味をマスクして飲用時の飲み心地と風味に優れた顆粒を得ることができる異味成分含有顆粒製剤及びその製造方法を提供することを目的としている。また、異味成分としては、グルコサミン、コンドロイチン又は酵素処理ルチンの1種以上を有効成分として含有するハンドリング性に優れており、さらに飲用時の飲み心地と風味に優れた顆粒及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
グルコサミン、コンドロイチン含有サメ軟骨粉末、酵素処理ルチンはいずれも人にとって好ましくない苦み、渋み、などの不快の風味(異味)を有するため、顆粒タイプの食品に加工する場合、風味及びハンドリング特性の改善が課題となっている。また、賦形剤を大量に配合しそれぞれの異味成分の濃度を薄めることで風味を改善することができるが、その場合、一度に摂取する顆粒剤の量が多くなってしまい、飲用者にとっては非常に不便となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、グルコサミン、コンドロイチン含有サメ軟骨粉末、酵素処理ルチンを含む粉末を押出造粒法によって特定の粒径の顆粒を成形することにより、ハンドリング性に優れており、さらに飲用時の飲み心地かつ風味に優れた顆粒を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0012】
異味を有する生理活性成分である、グルコサミン、コンドロイチン含有サメ軟骨粉末、及び酵素処理ルチンであるケルセチン配糖体の1種又は2種以上を含む粉末を、本発明による成型方法にて造粒加工することにより、袋に充填して包装しても包材の内表面に付着することなく完全に摂取することができ、かつ、異味成分の苦み、渋みなどの不快な風味がマスクされて飲用時の飲み心地に優れた顆粒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の内容は次の通りである。
1. 生理活性を有する異味成分を有効成分として含有する、押出造粒法で得られる速崩壊性の顆粒。
2. 前記異味成分が、グルコサミン、コンドロイチン及び酵素処理ルチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである上記1に記載の速崩壊性の顆粒。
3. 前記コンドロイチンがサメ軟骨粉末(コンドロイチン含有)であり、酵素処理ルチンがケルセチン配糖体である上記1又は2に記載の速崩壊性の顆粒。
4. 前記異味成分として、グルコサミン、サメ軟骨粉末及びケルセチン配糖体を含有する上記1、2又は3に記載の速崩壊性の顆粒。
5. 前記異味成分の合計重量が顆粒重量に基づいて1〜95重量%である上記1〜4のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
6. 顆粒が平均粒径0.3〜3.0mmである上記1〜5のいずれかの項に記載の顆粒。
7. 顆粒が、150μmのメッシュを通過する顆粒の割合が5%以下である上記1〜6のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
8. さらに、香料を含有する上記1〜7のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
9. 前記顆粒が分包されていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒剤。
10. 生理活性を有する異味成分にバインダー液を混合する工程、及び混合物を押出造粒機により造粒する工程、を含む速崩壊性の顆粒の製造方法。
11. 前記異味成分が、グルコサミン、コンドロイチン及び酵素処理ルチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである上記10に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
12. 目開き0.5〜3.0mmのスクリーンメッシュを用いる押出造粒機を使用する上記10又は11に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
13. 前記バインダー液が、エタノール濃度が10〜70重量%のエタノール水溶液である上記10、11又は13に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
14. さらに、香料をバインダー液中に配合する工程、を含む上記10〜13のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
15. さらに、前記顆粒を分包する工程、を含む上記10〜14のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒剤の製造方法。
(異味成分)
異味を有する生理活性成分としては、異味成分の苦み、渋みなどの不快な風味を有し、未製剤化の形態では服用し難いが、製剤化することで服用の困難性が解消するものに好適に用いることができる。製剤化しても服用が困難な苦味の強い成分には適用できない場合もある。
【0014】
本発明で用いることができる異味成分としては、例えばグルコサミン、コンドロイチン、酵素処理ルチン、アスタキサンチン、コエンザイムQ10等を挙げることができるが、本発明では、顆粒を成形することのできる、固体粉末状の異味を有する生理活性物質を原料成分として使用するのに適している。以下に、グルコサミン、コンドロイチン及び酵素処理ルチンの三成分を含有する顆粒について説明するが、本発明はこれら成分の1種又は2種以上、又はそれらと他の異味成分を有効成分として含む顆粒にも適用できる。
(グルコサミン)
グルコサミンはグルコースの2位の水酸基がアミノ基に置換した2−アミノグルコースであり、生体成分である糖蛋白質、糖脂質、ムコ多糖などの構成糖分子として自然界に幅広く分布する天然アミノ糖である。工業的にはカニ、エビ、オキアミなどの甲殻類やイカの軟骨などに含まれるキチンを酸又は酵素により加水分解し、分離、精製することによって得ることができる。近年、グルコサミンの生体成分の基本構成分子としての重要性のみならずその摂取による様々な有効性が確認され、変形性関節症の治療・予防、美容等の効果を目的とした健康食品に利用されている。
【0015】
本発明に使用できるグルコサミンは、その由来、製法等について特に制限はない。また、グルコサミンを、塩や種々の誘導体として使用することもでき、それら種類についても特に制限はない。例えば、グルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、グルコサミン乳酸塩、N-アセチルグルコサミン等が挙げられる。グルコサミンの顆粒への配合量は、グルコサミンの摂取量が大人1人あたり、1日100mg〜5000mg、好ましくは300mg〜2000mgとなることを目安として、決めることができる。したがって、顆粒の重量に基づいて、1〜95重量%、好ましくは10〜80重量%である。
(コンドロイチン)
コンドロイチンは、コンドロイチン硫酸として人体にも広く分布しており、特に、関節部の軟骨や皮膚に多く含まれることから、変形性関節症の改善や皮膚の美容等の効果を目的とした健康食品に利用されている。コンドロイチン硫酸は軟骨や皮膚に含まれているが、特に、軟骨には高濃度で含まれている。サメ軟骨粉末は、コンドロイチンを高濃度で含む健康食品素材として広く利用されており、その主要成分は分子量10万から数10万程度の多糖類であるコンドロイチン硫酸ナトリウムである。しかしながら、サメ軟骨以外の原料、例えば、イカ、サケなどから製造したコンドロイチンも本発明では使用できる。
【0016】
本発明において使用できるサメ軟骨粉末は、由来のサメの種類について制限はなく、例えばアブラツノザメ、ヨシキリザメが挙げられる。さらに軟骨の由来部位についても制限はなく、例えば頭部、ヒレなどが挙げられる。また、サメ軟骨を直接粉砕したサメ軟骨粉砕物でもよく、多糖類を効率よく抽出するために処理されたサメ軟骨抽出物でもよい。サメ軟骨抽出物とは、例えばサメ軟骨を細断し、水などの溶剤中で蛋白分解酵素で処理して抽出し、吸着や濾過などの方法で精製し、デキストリン等の賦形剤を加えてスプレー乾燥などの方法により粉末状としたものである。
【0017】
サメ軟骨粉末の顆粒への配合量は、サメ軟骨粉末の摂取量が大人1人あたり、1日10mg〜3000mg、好ましくは50mg〜1000mgとなることを目安として決めることができる。したがって、顆粒の重量に基づいて、1〜95重量%、好ましくは5〜80重量%である。
(酵素処理ルチン)
酵素処理ルチンとは、ルチンおよびルチンの類縁体を酵素処理によって配糖体化したものであり、ルチン類縁体としてケルセチン、イソクエルシトリン、モリン、ミリシトリン、ミリセチン等を挙げることができる。酵素処理ルチンは強力な抗酸化活性の他、血小板の凝集抑制および接着抑制作用、血管拡張作用、抗ガン作用等、多彩な生理機能をもつことが知られており、炎症の改善や血液循環促進等の効果を目的とした健康食品に利用されている。
【0018】
本発明において使用できる酵素処理ルチンは、その由来、製法については特に制限はない。酵素処理ルチンは、例えば、エンジュ、ソバなどの抽出物を糖転移酵素で処理することで得ることができる。詳細には特開平7-10898、特開2003-33164に記載の方法で得ることができ、酵素処理ルチンだけでなく製剤学的に許容される添加物を含んでもよい。
【0019】
酵素処理ルチンの顆粒への配合量は、酵素処理ルチンの摂取量が大人1人あたり、1日1mg〜500mg、好ましくは5mg〜300mgとなることを目安として、決めることができる。したがって、顆粒の重量に基づいて、1〜95重量%、好ましくは1.3〜80重量%である。
(その他の成分)
本発明においては、グルコサミン、サメ軟骨粉末、酵素処理ルチンに加えて、その他の生体内機能性を有する素材、例えばコラーゲン、ヒアルロン酸、ビタミン等を含んでもよい。さらに、食品に一般に使用される添加剤もしくは補助成分を含んでもよく、例えば甘味料、酸味料、デンプン、デキストリン等を含んでもよい。更に、本発明では、速崩壊性顆粒の製造が目的であるから、適量の崩壊剤、例えば、寒天、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、クロスカルメロースナトリウムなどを適量添加することができる。
(香料)
本発明の顆粒は異味成分を含有することから、香料を配合することが好ましい。例えば、レモン、ウメ、バナナ、オレンジ、グレープフルーツ、リンゴ、モモ、ヨーグルト、バニラなどが好ましい。なかでも、レモン、ウメが望ましい。これらの香料の添加方法としては特に限定されないが、例えば、粉末香料を後添加する方法、アルコールなどの溶媒に溶解した香料をスプレー添加する方法、あるいは、バインダー液中に含有されて練り込む方法とすることができる。中でも、顆粒への負荷が少なく、工程数の増加が少なく、速崩壊性の顆粒の口腔内での香味の改善効果に優れていることから、バインダー液中に含有されて練り込む方法が好ましい。
(押出造粒法)
造粒とは、上記の異味成分を含有する原料から顆粒を造る操作をいい、より詳しくは、粉状、粒状、塊状、溶液状あるいは溶融液状などの原料から、ほぼ均一な形状と大きさをもつ顆粒を造る操作をいう。種々の造粒法、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、押出造粒法などが挙げられるが、加熱を必要としない押出造粒法が本発明に適している。
【0020】
本発明における押出造粒とは、押出造粒機を用いて顆粒を造る操作をいう。より詳しくは、粉状、粒状、塊状、溶液状あるいは溶融液状などの異味成分含有原料にバインダー液を均一に混合した後、目開き0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.8〜2.0mmのスクリーンから押し出すことによって顆粒を造る操作である。
【0021】
使用できる押出造粒機の種類は特に限定されない。押出造粒機の例としては、株式会社畑鐵工所製押出造粒機HG−300V−IIなどのバケット式造粒機、株式会社ダルトン社製ドームグランDG−L1型などのスクリュー式押出造粒機などが挙げられる。
【0022】
押出造粒を行う際に使用するバインダー液はエタノール水溶液であることが望ましい。水溶液のエタノール濃度は10%以上で99%未満、好ましくは70%未満、更に好ましくは30〜60%である。また、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、プルラン、デンプン、デキストリン、グアガムなどを配合してもよい。これらの結合剤はバインダー液中に配合して溶解または懸濁してもよいし、粉末などの原料中に配合してもよい。
【0023】
得られた顆粒を篩に通すことにより、更に均質な粒径を持つ顆粒が得られる。押出造粒によって得られる顆粒状食品は、造粒工程では加熱を必要としない製造方法であるため、香り、風味の熱による損失が少ない。
(包装形態)
本発明で製造される顆粒剤は、慣用の方法により、適量ずつ包装して製品とする。包装容器としては、プラスチック容器やガラス瓶でも良いが、適量ずつ小袋に充填することが消費者の使用に便利である。
【0024】
したがって、包装形態としては、ガラスやプラスチックの瓶包装、アルミパウチ包装、分包などを用いることができる。中でも微粉が少なく粒子径が揃って取扱性に優れた本発明の顆粒の特徴が活きる分包包装を好適に用いることができる。分包の包装資材としては、アルミ箔、合成樹脂、ラミネート紙などを必要により組み合わせた包材を用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、これらの実施例は本発明を限定するためのものではない。
<実施例1>
[試料の調製]
粉末経口素材として、カニ甲殻由来のグルコサミン塩酸塩、コンドロイチン成分としてのサメ軟骨粉末、酵素処理ルチン(豆科植物エンジュ由来のケルセチン配糖体)、デンプン、デキストリンを用い、表1に示す混合粉末約300gを調製した。
【0026】
試料1は造粒操作を施さない粉体混合物とした。試料2として押出造粒法にて造粒を行い、口腔内難崩壊性顆粒剤を作成した。試料3として流動層造粒法にて造粒を行い、口腔内崩壊性顆粒剤を作成した。試料4として押出造粒法にて造粒を行い、口腔内崩壊性顆粒剤を作成した。
【0027】
押出造粒法についてはバインダーとして60%エタノール水溶液を60g加えて練合を行なった後、押出造粒機(KAR-130形 筒井理化学器械(株)製)にて造粒した。スクリーンは目開き1.0mmのものを用いた。造粒物を乾燥機(MOV-112F 三洋電機(株)製)にて60℃にて30分間乾燥後、16号(目開き1000μm)の篩にて篩過して顆粒剤を得た。また、流動層造粒法については、流動層造粒機(FD-LAB-1 (株)パウレック製)にて、噴霧液として水を60g用いて造粒した。混合粉末を投入して3分間混合した後、噴霧液を1.0〜1.5ml/分の速度で噴霧しながら10〜20分間造粒した(排気温度:35〜40℃、吸気温度:50〜60℃)。同装置で15〜20分乾燥後、造粒物を取り出して16号(目開き1000μm)の篩にて篩過して顆粒剤を得た。
[試料の評価試験]
(ハンドリング性の評価)
上記の[試料の調製]において製造した粉体混合物及び顆粒剤を、それぞれ10gずつポリエチレン製袋(サイズ100mm×70mm)に入れ、再び取り出した後の粉体混合物または顆粒剤の回収量を測定し、欠減率を算出した。結果を表1に示した。
【0028】
欠減率の低い試料は摂取時に損失が少なく、ハンドリング性が高いと評価された。
(飲用時の飲み心地の評価)
上記の[試料の調製]において製造した顆粒剤を6名の被験者に水とともに経口摂取してもらい、口内感(喉通りのよさ)について評価してもらった。評価にあたっては、3点:口内感が非常に悪い、2点:口内感が悪い、1点:口内感がやや良い、0点:口内感が良い、として、6名の評価合計を集計し、平均が3点以下2点超を×、2点以下1点超を△、1点以下0点を○として、結果を表1に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1においては試料1、試料3の結果が示すように、粉体混合物あるいは流動層造粒法にて造粒した顆粒剤は、欠減率が高く、ハンドリング性に劣っていた。また、試料2の結果が示すように、押出造粒法にて造粒した口腔内難崩壊性顆粒剤では口内感に劣っていた。一方、試料4に示される押出造粒法にて造粒した口腔内崩壊性顆粒剤ではハンドリング性及び口内感の両方に優れていた。
<実施例2>
[試料の調製]
実施例1と同様の成分配合、及び製剤操作にて、試料1〜4を調製した。
[試料の評価試験]
(飲用時の風味の評価)
実施例2において製造した顆粒剤(試料1〜4)を6名の被験者に水とともに経口摂取してもらい、風味について評価してもらった。評価にあたっては、3点:風味が非常に悪い、2点:風味が悪い、1点:風味がやや良い、0点:風味が良い、として、6名の評価合計を集計し、平均が3点以下2点超を×、2点以下1点超を△、1点以下0点を○として、結果を表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2の結果が示すように、粉体混合物である試料1は風味に劣っていた。一方、造粒を施した顆粒剤である試料2、試料3、及び試料4は、風味に優れていることが示された。
<実施例3>
[試料の調製]
粉末経口素材として、実施例1と同じグルコサミン塩酸塩、サメ軟骨粉末、酵素処理ルチン、デンプンを用い、表3に示す混合粉末を作成した。混合末300gにバインダーとして表4に示すように水あるいは10〜99%エタノール水溶液を60g加えて練合を行なった後、押出造粒機(KAR-130形 筒井理化学器械(株)製)にて造粒した。スクリーンは目開き1.0mmのものを用いた。造粒物を乾燥機(MOV-112F 三洋電機(株)製)にて60℃にて30分間乾燥後、16号(目開き1000μm)の篩にて篩過して顆粒剤を得た。
[試料の評価試験]
(製剤性の評価)
実施例3の顆粒剤の製剤適性について評価を行った。評価にあたっては、製造不可のものを×、製造困難のものを△、製造可能のものを○として、表4に示した。
(ハンドリング性の評価)
顆粒硬度の評価を行った。実施例3において製造した顆粒剤を、それぞれ10gずつ取り出し、80号(目開き177μm)の篩に乗せた。顆粒を乗せた篩に、篩振とう機(VSS-50形 筒井理化学器械(株)製)にて5分間振動を与えた後、篩を通過した微粉の量を測定した。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
試験例3においては試料1の結果が示すように、バインダーとして水を用いると、顆粒を製造することができなかった(試料1)。エタノール水溶液濃度を10%の時には、製造できるものの、長時間連続の押出性にやや困難であった(試料2)。一方、試料7、試料8の結果が示すように、エタノール水溶液濃度を70%(試料7)とすると、ハンドリング性がやや悪化し、さらにエタノール水溶液濃度を99%(試料8)とすると、ハンドリング性が著しく悪化した。試料3〜6の結果が示すように、エタノール水溶液濃度を30〜60%とすることで、製剤適性かつハンドリング性に優れた顆粒を得ることができた。
<実施例4>
[試料の調製]
本発明の技術を用いて、顆粒剤を製造した。造粒工程の仕込み量を3000gとして表5に示す各成分について混合を行なった。バインダーとして60%エタノール水溶液600gにレモン香料6gを加えた溶液を調製し、混合末に加えて練合機(HU-N (株)畑鐵工所製)にて練合を行なった後、押出造粒機(HU-G (株)畑鐵工所製)にて造粒した。スクリーンは目開き1.0mmのものを用いた。造粒物を乾燥機(MOV-112F 三洋電機(株)製)にて60℃にて30分間乾燥後、16号(目開き1000μm)の篩で篩過した。さらに80号(目開き177μm)の篩で篩過を行い、篩を通過した微粉を取り除き、顆粒剤を得た。
[試料の評価試験]
実施例4において製造した顆粒剤を6名の被験者に水とともに経口摂取してもらい、口内感(喉通りのよさ)と風味について評価してもらった。口内感の評価にあたっては、3点:口内感が非常に悪い、2点:口内感が悪い、1点:口内感がやや良い、0点:口内感が良い、として、6名の評価合計を集計し、平均が3点以下2点超を×、2点以下1点超を△、1点以下0点を○として、結果を表5に示した。さらに風味の評価にあたっては、3点:風味が非常に悪い、2点:風味が悪い、1点:風味がやや良い、0点:風味が良い、として、6名の評価合計を集計し、平均が3点以下2点超を×、2点以下1点超を△、1点以下0点を○として、結果を表5に示した。
【0036】
【表5】

【0037】
表5から明らかなように、実施例4で得られた顆粒剤は口内感、風味ともに良好であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により製造される、異味成分を有効成分として含有する経口摂取のための顆粒剤は、飲用時の飲み心地と風味に優れ、かつハンドリング性に優れているため、食品、医薬品、特に健康食品として広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性を有する異味成分を有効成分として含有する、押出造粒法で得られる速崩壊性の顆粒。
【請求項2】
前記異味成分が、グルコサミン、コンドロイチン及び酵素処理ルチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである請求項1に記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項3】
前記コンドロイチンがサメ軟骨粉末(コンドロイチン含有)であり、酵素処理ルチンがケルセチン配糖体である請求項1又は2に記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項4】
前記異味成分として、グルコサミン、サメ軟骨粉末及びケルセチン配糖体を含有する請求項1、2又は3に記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項5】
前記異味成分の合計重量が顆粒重量に基づいて1〜95重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項6】
顆粒が平均粒径0.3〜3.0mmである請求項1〜5のいずれかの項に記載の顆粒。
【請求項7】
顆粒が、150μmのメッシュを通過する顆粒の割合が5%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項8】
さらに、香料を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒。
【請求項9】
前記顆粒が分包されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒剤。
【請求項10】
生理活性を有する異味成分にバインダー液を混合する工程、及び混合物を押出造粒機により造粒する工程、を含む速崩壊性の顆粒の製造方法。
【請求項11】
前記異味成分が、グルコサミン、コンドロイチン及び酵素処理ルチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである請求項10に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
【請求項12】
目開き0.5〜3.0mmのスクリーンメッシュを用いる押出造粒機を使用する請求項10又は11に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
【請求項13】
前記バインダー液が、エタノール濃度が10〜70重量%のエタノール水溶液である請求項10、11又は13に記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
【請求項14】
さらに、香料をバインダー液中に配合する工程、を含む請求項10〜13のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒の製造方法。
【請求項15】
さらに、前記顆粒を分包する工程、を含む請求項10〜14のいずれかに記載の速崩壊性の顆粒剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−84234(P2009−84234A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257980(P2007−257980)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】