説明

異常診断装置および異常診断方法

【課題】車両のカーブ走行に起因する加速度の影響を排除し車輪のフラット等の誤検知を抑制して、信頼性の高い異常診断を行う。
【解決手段】車両において、地面に対して垂直方向の振動を複数の振動センサで検出し、当該振動センサからの信号の周波数と異常を示す周波数との比較に基づいて軸受と車輪の異常診断を行う際、1つの振動センサとして、互いに直交する2方向の加速度を同時に検出可能な2軸のMEMS式加速度センサを使用して、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度と同時に地面に対して水平で且つ鉄道車両の進行方向に直交する方向の加速度も検出し、その加速度センサからの信号のうち地面に対して水平で且つ鉄道車両の進行方向に直交する方向の加速度の値Grmsが閾値以下であれば、前記比較の結果を無効にすることにより、車両のカーブ走行に起因する振動の影響を排除し、誤検知を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等に用いられる回転或いは摺動する部品の異常診断装置に関し、特に、当該部品の異常の有無や前兆、或いはその異常部位を特定する異常診断装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の回転部品は、一定期間使用した後に、車軸軸受やその他の回転部品について、損傷や摩耗等の異常の有無が定期的に検査される。この定期的な検査は、回転部品が組み込まれた機械装置を分解することにより行なわれ、回転部品に発生した損傷や摩耗は、作業者が目視による検査により発見するようにしている。そして、検査で発見される主な欠陥としては、軸受の場合、異物の噛み込み等によって生ずる圧痕、転がり疲れによる剥離、その他の摩耗等、歯車の場合には、歯部の欠損や摩耗等、車輪の場合には、フラット等の摩耗があり、いずれの場合も新品にはない凹凸や摩耗等が発見されれば、新品に交換される。
【0003】
しかし、機械設備全体を分解して、作業者が目視で検査する方法では、装置から回転体や摺動部材を取り外す分解作業や、検査済みの回転体や摺動部材を再度装置に組込み直す組込み作業に多大な労力がかかり、装置の保守コストに大幅な増大を招くという問題があった。
【0004】
また、組立て直す際に検査前にはなかった打痕を回転体や摺動部材につけてしまう等、検査自体が回転体や摺動部材の欠陥を生む原因となる可能性があった。また、限られた時間内で多数の軸受を目視で検査するため、欠陥を見落とす可能性が残るという問題もあった。さらに、この欠陥の程度の判断も個人差があり実質的には欠陥がなくても部品交換が行なわれるため、無駄なコストがかかることにもなる。
【0005】
そこで、回転部品が組み込まれた機械装置を分解することなく、実稼動状態で回転部品の異常診断を行なう様々な方法が提案された(例えば、特許文献1〜3参照)。最も、一般的なものとしては、特許文献1に記載されるように、軸受部に加速度計を設置し、軸受部の振動加速度を計測し、更に、この信号にFFT(高速フーリエ変換)処理を行なって振動発生周波数成分の信号を抽出して診断を行なう方法が知られている。
【0006】
また、鉄道車両の車輪の転動面において、ブレーキの誤動作等による車輪のロックや滑走によるレールとの摩擦・摩耗によって生じるフラットと呼ぶ平坦部の検出方法としても種々提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。特に特許文献4では、振動センサや回転測定装置等により鉄道車両車輪、および列車が通過する線路の欠陥状態を検出する装置について提案している。
【0007】
また、回転部品の2軸方向の振動を検出するセンサを備えた車輪用回転検出装置(例えば、特許文献7)、地面に垂直方向の振動の分力として発生する転がり軸受の軸方向の振動を検出するセンサを備えたセンサ付軸受装置(例えば、特許文献8)、鉄道車両の車輪及び当該車両が通過する線路の異常を検出する装置(例えば、特許文献9)なども提案されている。
【特許文献1】特開2002−22617号公報
【特許文献2】特開2003−202276号公報
【特許文献3】特開2004−257836号公報
【特許文献4】特表平9−500452号公報
【特許文献5】特開平4−148839号公報
【特許文献6】特表2003−535755号公報
【特許文献7】特開2002−340922号公報
【特許文献8】特開2005−20516号公報
【特許文献9】米国特許第5433111号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4、9に記載の欠陥状態の検出装置では、異常振動が車輪のフラットによるものか、車軸軸受によるのか、あるいは線路または他の異常によるものなのかを識別できないという問題がある。また、特許文献7に記載の車輪用回転検出装置では、回転部品の2軸方向の振動をセンサで検出しているが、車輪の振動と車軸軸受の振動とを区別して検出していないため、異常発生部位を識別することはできない。また、特許文献8に記載のセンサ付軸受装置では、FFTによって処理された振動発生周波数成分の帯域の違いにより、振動発生周波数成分の車輪の振動と車軸軸受の振動とを区別して検出しているが、車両のカーブ走行に起因する振動の影響により検知精度が左右されやすい。
【0009】
したがって、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の振動を検出する振動センサの出力信号から車軸軸受や車輪などの異常振動を検出して、その異常振動が車軸軸受によるものか、車輪のフラットによるものかを特定して異常診断を行う際、車両のカーブ走行に起因する振動の影響を排除し誤検知などを抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる異常診断装置および異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記の構成により達成される。
(1) 車両の振動を検出する1つまたは複数の振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサは、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサであり、
前記診断処理部は、
前記多軸加速度センサからの信号のうち特定の方向の加速度を示す信号と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
(2) (1)に記載の異常診断装置において、前記複数方向のうち、少なくとも1方向は地面に対して垂直方向であり、少なくとも1方向は地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向であることを特徴とする異常診断装置。
(3) 車両の振動を検出する1つまたは複数の振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサは、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、当該加速度に応じた信号を出力する加速度センサであり、
前記診断処理部は、
前記加速度センサにより車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、前記比較の結果に基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の異常診断装置において、前記加速度センサはMEMS式加速度センサであることを特徴とする異常診断装置。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の異常診断装置において、前記車両は鉄道車両であることを特徴とする異常診断装置。
(6) 車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断方法において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサを使用して、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度と
地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度に基づいて車軸軸受の異常を検知するとともに、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度と地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度に基づいて車輪の異常を検知することを特徴とする異常診断方法。
(7) 車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断方法において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出するMEMS式加速度センサを使用して、車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、当該加速度と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断方法。
(8) (7)に記載の異常診断方法において、前記車両は軸受装置によって支持されており、当該軸受装置は少なくとも1つ以上の接触角を有する転がり軸受を有し、当該軸受装置に起因する振動と車輪に起因する振動を前記MEMS式加速度センサで同時に検出することを特徴とする異常診断方法。
(9) (6)〜(8)のいずれかに記載の異常診断方法において、前記車両は鉄道車両であることを特徴とする異常診断方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異常診断装置によれば、下記(I)〜(IV)の効果が得られる。
(I)車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断を行うにあたり、前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサを使用し、前記加速度センサからの信号のうち特定の方向の加速度を示す信号と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うので、車両のカーブ走行に起因する振動の影響を排除し車軸軸受の剥離や車輪のフラットの誤検知を抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。
(II)車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断を行うにあたり、前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、当該加速度に応じた信号を出力する加速度センサを使用して、車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、当該加速度と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うので、車両のカーブ走行に起因する影響を排除し車軸軸受の剥離や車輪のフラットの誤検知を抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。
(III)車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断を行うあたり、1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサを使用して、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度と地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度に基づいて車軸軸受の異常を検知するとともに、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度に基づいて車輪の異常を検知するので、車両のカーブ走行に起因する影響を排除し車軸軸受の剥離や車輪のフラットの誤検知を抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。
(IV)車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断を行うにあたり、1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出するMEMS式加速度センサを使用して、車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、当該加速度と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うので、車両のカーブ走行に起因する影響を排除し車軸軸受の剥離や車輪のフラットの誤検知を抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る異常診断装置の第1実施形態、第2実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、第1実施形態の異常診断装置について説明する。
図1(a)は本発明の異常診断装置を搭載した鉄道車両の概略平面図、図1(b)は同鉄道車両の概略側面図である。図2は、本発明に係る異常診断装置の構成要素の一つである振動センサを備えたセンサ付軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。図3は本発明に係る異常診断装置の構成を例示するブロック図である。図4は車輪のフラットの異常診断の場合の図3の診断処理部による第1実施形態の異常判定処理の内容を例示するフローチャートである。図5は図4のフロー中の定義済みステップの内容を例示するフローチャートである。図6は、診断処理部による第1実施形態における別の異常判定処理の内容を例示するフローチャートである。
【0014】
図1に示すように、一両の鉄道車両100は前後2つの車台によって支持され、各車台には4個の車輪101が取り付けられている。各車輪101の軸受箱110には、軸受箱110の振動を検出する振動センサ26(図2参照)を内蔵したセンサ本体111が取り付けられている。
【0015】
鉄道車両100の制御盤115には、複数チャネルのセンサ信号を同時(ほぼ同時)に取り込んで診断処理を実施する異常診断回路150が2つ搭載されている。即ち、各車台に設けられている4つの振動センサ26の出力信号が各々センサケーブル116を介して車台毎に別の異常診断回路150に入力される。
【0016】
図2に示されるように、車軸1は、車輪101を支持固定した状態で、軸受箱110の内径側で、複列円錐ころ軸受である軸受3により、回転自在に支持されている。
軸受3は、内周面に外輪軌道7,7を有する外輪4と、外周面に内輪軌道8を有し、小径側の端面同士を、間座9を介して互いに突き合わされる一対の内輪5,5と、外輪軌道7,7と内輪軌道8,8との間に配置され、保持器10,10により転動自在に保持されている円錐ころ6,6とを備えている。外輪4は、軸受箱110に内嵌保持されており、内輪5は、間座9と共に、車軸1の外端(図2の左端)寄り部分に外嵌されている。
【0017】
車軸1の外端部で軸方向外側の内輪5よりも突出した部分には、油切りと称される環状部材11,11aが外嵌されている。内側の内輪5の内端面は、別の環状部材を介して、車軸1の中間部に形成された段差面12に突き当てられている。従って、一対の内輪5,5が車軸1の中央寄り(図2中右寄り)に変位することはない。
車軸1の外端部に外嵌した有底円筒状の押さえブラケット13は、環状部材11,11aを外側の内輪5の外端面に向けて押し付けている。この押さえブラケット13は、車軸1の外端面に複数本のボルト14,14により固定され、各ボルト14の締付け力に基づき、外側の内輪5を軸方向内方に押圧している。
【0018】
外輪4の両端部は、軟鋼板等の金属板を断面クランク形で円筒状に形成されたシールケース15,15の基端部を内嵌固定している。このシールケース15,15の内周面と各環状部材11,11aの外周面との間には、シールリング16,16が設けられており、複数個の円錐ころ6,6を設置した空間17の両端開口部を塞いでいる。
従って、空間17の内外を遮断して、空間17内に密封した潤滑用のグリースが外部に漏洩するのを防止すると共に、外部から空間17内に雨水や塵埃等の異物が侵入するのを防いでいる。
【0019】
軸受箱110の外端開口は、軸受箱110の一端部に固定したカバー18により塞がれている。カバー18は、合成樹脂若しくは金属材料により有底円筒状に形成されている。カバー18は、カバー18の開口側を軸受箱110の一端に突き当てた状態で、図示しないボルトにより軸受箱110に固定され、軸受箱110の外端開口を塞いでいる。
【0020】
車軸1の外端面に固定された押さえブラケット13の外周面には、被検出部としての速度検出用歯車20が、車軸1と共に回転可能に設けられている。速度検出用歯車20は、鋼材等の磁性金属材料からなり、その外周縁部における磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等間隔で変化させている。
なお、被検出部は、速度検出用歯車20の代わりに、S極、N極が互い違いに着磁された磁極部がその外周面に形成された速度検出用エンコーダを採用することもできる。
【0021】
また、軸受箱110の外周部には、速度検出用歯車20の外周縁と径方向に関して対向する位置に、センサ本体111が挿入される取付け孔22が設けられている。センサ本体111は、その取付けフランジ21aを軸受箱110の外面に突き当て、ボルト23,23により軸受箱110に固定されている。これにより、センサ本体111の先端面に設けた回転速度センサ24は、速度検出用歯車20と微少隙間を介して対向している。また、センサ本体111内部には、車輪101の回転速度を検出する回転速度センサ24に加え、軸受3の温度を検出する温度センサ25と、軸受3の振動や車輪101のフラット等を検出する振動センサ26とが備えられている。
【0022】
上述の鉄道車両用センサ付軸受装置において、運転時、車輪101を支持固定した車軸1と共に速度検出用歯車20が回転すると、回転速度センサ24が速度検出用歯車20の磁気特性の変化を検知する。回転速度センサ24の出力もセンサケーブル116を介して異常診断回路150に送られ、車輪101の回転速度が検出される。
また、軸受3の回転抵抗が空間17内に封入したグリースの劣化等の原因で異常に上昇し、軸受3内の温度が上昇すると温度センサ25がこの温度を検出する。
さらに、振動センサ26は、軸受3の剥離や車輪101のフラットの異常を検出している。振動センサ26の出力信号も、センサケーブル116を介して異常診断回路150に送られる。
【0023】
前記異常診断装置では、4つの振動センサ26のうち3つは1軸の加速度センサを使用し、1つは2軸のMEMS式加速度センサを使用している。以下、1軸の加速度センサを用いたものを1軸振動センサ26aとし、2軸のMEMS式加速度センサを用いたものを2軸振動センサ26bと記す。
1軸振動センサ26aの検出方向は、地面に対して垂直な方向(即ち、鉄道車両100に対して重力方向)である。地面に対して垂直な方向の振動を加速度として検出することにより軸受3の剥離や車輪101のフラットの異常を検知できる。
一方、2軸振動センサ26bの検出方向は、地面に対して垂直な方向(即ち、鉄道車両100に対して重力方向)並びに、地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向である。これにより、2軸振動センサ26bで、地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向の加速度の検出により当該鉄道車両100の横方向に発生する加速度を検知できる。
【0024】
また、鉄道車両100がカーブを走行する場合、当該鉄道車両100の横方向に遠心力が働き、加速度が発生する。この場合の当該加速度は遠心力が大きいほど大きな値となる。一方、MEMS式加速度センサは、加速度に応じたアナログ電圧などの信号を出力するので、圧電式加速度センサに比べて、方向性に対する検出精度が高い。したがって、2軸振動センサ26bに2軸のMEMS式加速度センサを用いることにより、鉄道車両100がカーブ走行中に当該鉄道車両100の横方向に発生する加速度を正確に測定することができ、当該鉄道車両100がカーブを進行しているか否かを判定することができる。
【0025】
図3に示すように、異常診断回路150は、センサ信号処理部150Aと、診断処理部(MPU)150Bとを有する。センサ信号処理部150Aは、5つの増幅器(Amp)151a〜151eと5つのローパスフィルタ(LPF)152a〜152eとを備えている。5つの増幅器(Amp)151a〜151eのうち2つの増幅器(Amp)151a、151bには、2軸振動センサ26bからの2チャネルの出力信号が各々1チャネルずつ入力される。残りの3つの増幅器(Amp)151c〜151eには、1軸振動センサ26aからの出力信号が各々入力される。そして、各増幅器(Amp)151a〜151eで増幅された信号が各々ローパスフィルタ(LPF)152a〜152eを経て診断処理部(MPU)150Bに取り込まれる。
【0026】
診断処理部(MPU)150Bは、2軸振動センサ26b用のマルチプレクサ(MUX0)153およびAD変換器(ADC0)155と、1軸振動センサ26a用のマルチプレクサ(MUX1)154およびAD変換器(ADC1)156とを備えている。2軸振動センサ26bの2チャネルからの信号は、マルチプレクサ(MUX0)153にて1チャネルごとの信号に切換えられて、AD変換器(ADC)155にてデジタル信号に変換される。同様にして、3つの1軸振動センサ26aからの信号も、マルチプレクサ(MUX1)154にて1チャネルごとの信号に切換えられて、AD変換器(ADC)156にてデジタル信号に変換される。
【0027】
一方、回転速度センサ24からの回転速度パルス信号は、波形整形回路(RECT)157によって整形された後、診断処理部(MPU)150Bに取り込まれ、診断処理部(MPU)150B内のタイマカウンタ(TCNT)158により単位時間当りのパルス数がカウントされ、その値が鉄道車両100の車軸1の回転速度信号として処理されるようになっている。当該回転速度信号の処理は、ノイズの影響を抑えるために、例えば3回計測して相互差が5%以内の速度データが2回以上得られたときに、その平均値を出力するようになっている。診断処理部(MPU)150Bは、振動センサ26により検出された振動波形と回転速度センサ24により検出された回転速度信号とをもとに異常診断を実行する。診断処理部(MPU)150Bによる診断結果はラインドライバ(LD)159を介して通信回線120(図1参照)に出力される。通信回線120は警報機に接続されており、軸受3の剥離や車輪101のフラットの異常発生時には然るべき警報動作がなされるようになっている。
【0028】
図4および図5のフローに従って診断処理部(MPU)150Bの動作を説明する。なお、図4は車輪101のフラットの異常診断の場合の処理フローである。
診断処理部(MPU)150B内では、1軸振動センサ26aおよび2軸振動センサ26bにより検出された信号が、AD変換器(ADC)155,156からDMA(Direct Memory Access)方式でCPUに取り込まれる。DMAの完了後(即ち、S101)、次回診断のためのDMAを開始するとともに(即ち、S110)、回転速度の検出を行う(即ち、S102)。回転速度は、DMAにより取り込んだAD変換器(ADC)155,156の出力値から算出或いは回転速度パルス信号の単位時間当りのパルス数を計測することにより検出できる。次に、2軸振動センサ26bからの信号に基づいて、地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向、即ち鉄道車両100の横方向に発生する加速度の値Grmsを算出する(即ち、S103)。ただし、値Grmsの算出にあたってはRMS値(2乗平均平方根)を求める。
【0029】
そして、軸受3と車輪101における異常診断演算処理(即ち、S104)を実行する。診断演算処理(即ち、S104)では、1軸振動センサ26aおよび2軸振動センサ26bにより検出された信号、即ち地面に対して垂直方向の振動に関する検出信号を解析することにより、軸受3の剥離と車輪101のフラットの異常診断を行う。その際、DMAにより新たに取得したデータ(例えば、整数10ビットのデータ)をバッファに入れ替える処理を行う(即ち、S201)。次に、当該データを共通に用いて、軸受3のスペクトル診断用と車輪101のスペクトル診断用とに別々に処理を実行(即ち、S211、S221)する。このことにより、各々の部位における異常診断を行う。また、CPUには内部バスがハーバードアーキテクチャのものを使用することにより、サンプリング時間に対する計算時間に十分余裕を持たせる。
【0030】
また、軸受3の剥離による異常を示す周波数と車輪101のフラットによる異常を示す周波数とでは、周波数帯域が10倍程度異なり、後者の周波数帯域が低い。したがって、診断演算処理(即ち、S104)では、車輪101のスペクトル診断のためのデジタルフィルタ処置(即ち、S211、S221)やFFT処理(即ち、S212、S222)の分解能を軸受3よりも分解能を上げてスペクトル診断を実施している。例えば、軸受3のスペクトル診断のためのデジタルフィルタ処理やFFT処理の分解能を1Hzと設定した場合、車輪101のスペクトル診断では分解能を0.25Hzと設定する。
【0031】
また、診断演算処理(即ち、S104)では、固定小数点演算におけるFFTの点数を抑えるため、軸受3と車輪101の両信号を絶対値化した後、デジタルフィルタ(例えば、ソフトウエアによるローパスフィルタ(LPF))を施し、デシメーション処理と、必要であれば補間処理を行う(即ち、S211,S221)。この一連の処理により、周波数帯域とサンプリング周波数を最適化してFFTを行うことができる。このFFTの結果より得られたスペクトルのピーク検出結果と、軸受3或いは車輪101による異常を示す周波数との一致を基本波(1次)から高次成分(例えば4次成分)まで比較し、その比較の結果に基づいて1区間における各々の一致度として軸受異常診断点と車輪異常診断点を算出する(即ち、S214、S224)。ここで、1区間のサンプリング時間を、例えば0.5秒間単位とする場合、軸受3の剥離異常診断に関するデータは2区間連結され補間されて生成される。車輪101のフラット異常診断に関するデータは3区間連結され補間されて生成される。この補間はデータの後ろに値ゼロ(0)を詰めることによって行っており、この補間によってFFTの分解能を向上させることができる。
【0032】
さらに、車輪101の異常診断において(図4参照)、診断演算処理(即ち、S104)により算出された前記車輪101の異常診断点を一定期間累積計算し(即ち、S106)、その累積値Spが基準値を超えたか否かを判定する(即ち、S107)。
ただし、地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向、即ち鉄道車両100の横方向に発生する加速度の値Grms(ここでは、RMS値(2乗平均平方根))が閾値以下であれば(即ち、S105)、診断演算処理(即ち、S104)により算出された前記異常診断点を強制的に無効にする(即ち、S109)。そして、異常診断点の累積処理(即ち、S106)には進まず、次のDMA完了を待つ(即ち、S111)。
【0033】
即ち、累積値Spと基準値との比較判定(即ち、S107)の結果、累積値Spが基準値より小さければ(即ち、S107でFALSE)、そのまま次のDMA完了を待ち(即ち、S111)、累積値Spが基準値より大きい場合には(即ち、S107でTRUE)、車輪101のフラットの発生と診断し警報動作を行う(即ち、S108)。そして次のDMA完了を待つ(即ち、S111)。
なお、軸受3の異常診断の場合での異常診断点の累積値Spと基準値との比較をして行う警報動作について説明を省略したが、そのフローは車輪101と同様である。
【0034】
本実施例では、2軸のMEMS式加速度センサを用いているが、少なくとも地面に水平で進行方向に直交する方向の加速を検出する加速度センサとしてMEMS式加速度センサを用いればよく、地面に垂直方向の振動に起因する加速度を測定する加速度センサについては従来通り圧電型加速度センサを別に設けてもよい。
ただし、1箇所に2軸以上の加速度センサを取り付ける場合は、加工性及び組立性から同一の原理及び特性を有しているセンサを用いるのがよく、当該加速度センサをMEMS式加速度センサで統一することが望ましい。
【0035】
本実施形態によれば、地面に対して垂直方向の振動を複数(上記の例では4個)の振動センサ26で検出し、当該振動センサ26からの信号の周波数と異常を示す周波数との比較に基づいて軸受3と車輪101の異常診断を行う際、1つの振動センサ26として、互いに直交する2方向の加速度を同時に検出可能な2軸のMEMS式加速度センサ26bを使用して、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度と同時に地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向の加速度も検出し、前記加速度センサ26(b)からの信号のうち地面に対して水平で且つ鉄道車両100の進行方向に直交する方向の加速度の値Grmsが閾値以下であれば、前記比較の結果を無効にすることができる。
【0036】
したがって、本実施形態では、結果的に異常診断に影響を与える鉄道車両100の横方向の加速度が発生しない、例えば直線走行部のみでの演算結果で診断が可能であるので、極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。鉄道車両100が新幹線車両の場合、直線走行部が多い分、診断できる区間は十分長くなる。
【0037】
なお、本実施形態では、鉄道車両100の横方向の加速度の値Grmsが閾値以下の場合に、異常診断点を無効にする(即ち、S109)こととしたが、図6に示すように、鉄道車両100の横方向の加速度の値Grms(t)の算出(即ち、S103)とともに、垂直方向すなわち鉄道車両100に対して重力方向の加速度の値Grms(v)の算出(即ち、S112)も実施し、両者の比Grms(t)/Grms(v)が一定値以下の場合に、異常診断点を無効にする(即ち、S109)ようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では軸受として複列円錐ころ軸受を用いたが、複列円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、単列の円錐ころ軸受などの転がり軸受およびそれらの転がり軸受を複数組合せた組合せ軸受の場合にも適用できる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る異常診断装置の第2実施形態について説明する。図7は本発明に係る異常診断装置の構成要素の一つである振動センサを備えたセンサ付軸受装置の別の実施形態を示す縦断面図である。
【0040】
図7に示すセンサ付軸受装置80は、鉄道車両用センサ付軸受装置であり、車軸1が、車輪101を支持固定した状態で、軸受箱110の内径側で、複列円錐ころ軸受けである軸受3により、回転自在に支持されている。
【0041】
軸受3は、単一の外輪4、一対の内輪5、円錐ころ6及び打ち抜き保持器10、内輪間座である間座9を有している。外輪4は、軸受箱110にねじ込まれた回り止めねじ部材81によって回り止めされている。回り止めねじ部材81は、外輪4に設けた有底穴82に対して、軸受箱101にねじ止めして挿入している。なお、回り止めねじ部材81の先端は、回り止めねじ部材81のねじ部よりも小径(先細)としてねじ山を無くしているので、外輪4がクリープなどで回転してもねじ山がつぶれることが無い。
【0042】
また、外輪4の端部には、軸受構成部品である鉄製のシール部材83が組付けられている。シール部材83には、径方向内方に延びるフランジ部84の先端部に、フランジ部84に対してほぼ90度に折曲されたシール板部85が形成されている。また、内輪5の軸端部に設けられた間座9の外周面には、所定の隙間をもってシール板部85を囲むように形成されたシール凹部86が設けられている。従って、シール板部85を有するシール部材83とシール凹部86を有する間座9は、軸受3内部への異物侵入を防止するためのシール手段であるラビリンスシール87を構成する。
【0043】
シール部材83は、フランジ部84にフランジ側挿通孔88(片方のフランジ側挿通孔は図示しない。)が形成されており、フランジ側挿通孔88から軸方向に延びるフランジ部84の軸受3側に、センサ本体111を固定するための一対の雌ねじ部材90(片方の雌ねじ部材は図示しない。)が配されている。雌ねじ部材90には、フランジ側挿通孔88に連通する雌ねじ91(片方の雌ねじは図示しない。)がそれぞれ形成されている。
【0044】
そして、シール部材83のフランジ部84にはセンサ本体111が固定されている。センサ本体111は、底部93にセンサ孔94が形成され、カバー95により密閉されている。センサ本体111は、シール部材83のフランジ部84側の側板96に、フランジ側挿通孔88と雌ねじ部材90の雌ねじ91とに連通したセンサ側挿通孔97が形成されている。
【0045】
センサ本体111は、側板96のセンサ側挿通孔97から、フランジ側挿通孔88を通じてボルト99(片方のボルトは図示しない。)が挿通され、雌ねじ部材90の雌ねじ91にねじ込まれることで、雌ねじ部材90とセンサ本体111とによりシール部材83のフランジ部84を挟み込むようにしてセンサ本体111をシール部材83に固定している。
【0046】
センサ本体111内には、回転速度センサ24と、温度センサ25と、振動センサ26とが基板103に固定されている。
【0047】
回転速度センサ24は、速度検出用歯車20に非接触にして、センサ本体111のセンサ孔94内に配置されており、車軸1に固定された速度検出用歯車20の回転を検出することによって車軸1の回転を計測しており、例えばパルス状の電気信号を発生し、発生した電気信号を異常診断回路150により監視している。
【0048】
温度センサ25は、センサ本体111の軸受3に近い、シール部材83側に配されており、シール部材83を介して伝達される軸受3内部の雰囲気温度を常時測定して異常診断回路150に与える。
【0049】
振動センサ26は、地面に水平で鉄道車両100の進行方向に垂直な方向、すなわち車軸1の軸方向の加速度に応じたアナログ電圧などの信号を出力することのできるMEMS式加速度センサであり、円錐ころ6、外輪4、内輪5に与えられた振動成分および車輪101に与えられた振動成分を電気信号に変換して異常診断回路150に送る。振動センサ26は、軸方向の振動を測定するように設置されているので、軸受3の剥離等の異常振動を精度良く測定できるとともに、車軸1の偏摩耗及び車輪101のフラット等も精度良く測定することができる。また、取付け位置(位相)は円周上の任意の場所に設定することができる。
【0050】
なお、地面に対して垂直方向の振動を測定して剥離等の軸受3の異常や車輪101のフラット等を正確に検知するには、振動センサ26を異常発生部位の近傍や車軸1の上下に配置する必要がある。そのため、地面に対して垂直方向の振動を検出する場合には、軸受3の剥離や車輪101のフラットが最も発生しやすい負荷圏近傍に振動センサ27を配置する必要がある。しかしながら、鉄道車両用車軸軸受の場合は、負荷圏が軸受の上側(台車側)にあるため、台車等が妨げとなり、センサを配置するスペースが取れない場合がある。また、振動センサ26を取り付けた場所から離れた部位に軸受3の剥離や車輪101のフラット等の異常が発生した場合は、その異常振動を正確に測定することができない。
【0051】
この対策として、本実施形態では、接触角を有する軸受3において、振動センサ26により、地面に対して垂直方向の振動の発生に伴って発生する車軸1の軸方向の振動成分を測定する。この軸方向成分は、前記接触角の分力による成分であり、外輪4端面の円周方向のどの部位でも地面に対して垂直方向の振動とほぼ等しい値となる。このため、振動センサ26をどの位置に配置しても、異常振動を正確に検出することができる。また、軸受3の剥離や車輪101のフラット等の異常が軸受3のいずれの場所に発生したとしても、その異常振動を正確に測定することができる。
【0052】
即ち、軸受3は接触角を有するので、地面に対して垂直方向の振動が発生すると、その接触角の分力によって軸方向の振動が発生する。この軸方向の振動は、円周方向全面でほぼ同じ値となるため、センサ本体111をのどの円周方向位置に配置しても、軸受3の剥離や、車軸1の偏摩耗や車輪101のフラットを正確に測定することができる。なお、軸受3の代わりに、予圧を与えた組み合わせ転がり軸受でも同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、振動センサ26として、加速度に応じたアナログ電圧などの信号を出力することができるMEMS式加速度センサを用いているので、前記分力による軸方向の振動とともに、鉄道車両100がカーブ走行中に当該鉄道車両100の横方向に発生する加速度も同時に測定することができる。
【0054】
第2実施形態によれば、振動センサ26として、地面に水平で鉄道車両100の進行方向に垂直な方向、すなわち車軸1の軸方向の加速度に応じたアナログ電圧などの信号を出力するMEMS式加速度センサを用いることにより、カーブに起因する加速度を検出することができる。さらに、接触角を有する軸受3を用いているので、接触角の分力によって発生する車軸1の軸方向の振動を検出することにより、車輪101のフラットに起因する振動を検出することができる。また、軸受3の剥離に起因する振動は車輪101のフラットよりも高い振動周波数として検出される。このように、振動センサ26としてMEMS式加速度センサを用いることにより、上述した3つの異なる現象に起因する振動を同一のセンサで検出することができる。
【0055】
したがって、接触角を有する転がり軸受を有する鉄道車両用軸受装置の異常診断においても、前記MEMS式加速度センサを使用して、軸受3の剥離に起因する振動、車輪101に起因する信号、及び鉄道車両100のカーブ走行に起因する加速度も併せて検出することにより、当該加速度と両周波数の一致度の演算結果とに基づいて異常診断を行う際、車両100のカーブ走行に起因する加速度の影響を排除して誤検知を抑制して極めて信頼性の高い異常診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は本発明の異常診断装置を搭載した鉄道車両の概略平面図、そして(b)は同鉄道車両の概略側面図である。
【図2】本発明に係る異常診断装置の構成要素の一つである振動センサを備えたセンサ付軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る異常診断装置の構成を例示するブロック図である。
【図4】車輪のフラットの異常診断の場合の図3の診断処理部による第1実施形態の異常判定処理の内容を例示するフローチャートである。
【図5】図4のフロー中の定義済みステップの内容を例示するフローチャートである。
【図6】診断処理部による第1実施形態における別の異常判定処理の内容を例示するフローチャートである。
【図7】本発明に係る異常診断装置の構成要素の一つである振動センサを備えたセンサ付軸受装置の別の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 車軸
3 軸受
26 振動センサ
26a 1軸振動センサ
26b 2軸振動センサ(MEMS式加速度センサ)
100 鉄道車両
101 車輪
150 異常診断回路
150A センサ信号処理部
150B 診断処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の振動を検出する1つまたは複数の振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサは、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサであり、
前記診断処理部は、
前記多軸加速度センサからの信号のうち特定の方向の加速度を示す信号と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常診断装置において、前記複数方向のうち、少なくとも1方向は地面に対して垂直方向であり、少なくとも1方向は地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向であることを特徴とする異常診断装置。
【請求項3】
車両の振動を検出する1つまたは複数の振動センサと、
前記振動センサからの信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う診断処理部とを備えた異常診断装置において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサは、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、当該加速度に応じた信号を出力する加速度センサであり、
前記診断処理部は、
前記加速度センサにより車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、前記比較の結果に基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の異常診断装置において、前記加速度センサはMEMS式加速度センサであることを特徴とする異常診断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の異常診断装置において、前記車両は鉄道車両であることを特徴とする異常診断装置。
【請求項6】
車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断方法において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、互いに直交する複数方向の加速度を同時に検出可能な多軸加速度センサを使用して、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度と地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出し、地面に対して垂直方向の振動に起因する加速度に基づいて車軸軸受の異常を検知するとともに、
地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度と地面に対し垂直方向の振動に起因する加速度に基づいて車輪の異常を検知することを特徴とする異常診断方法。
【請求項7】
車両の振動を1つまたは複数の振動センサで検出し、当該振動センサから信号の周波数分布を求め、当該周波数分布に含まれるピーク値を示す周波数と異常を示す周波数との比較を行い、当該比較の結果に基づいて異常診断を行う異常診断方法において、
前記1つまたは複数の振動センサのうち少なくとも1つの振動センサとして、地面に対して水平で且つ車両の進行方向に直交する方向の加速度を検出するMEMS式加速度センサを使用して、車両のカーブ走行に起因する加速度を検出し、当該加速度と前記比較の結果とに基づいて異常診断を行うことを特徴とする異常診断方法。
【請求項8】
請求項7に記載の異常診断方法において、前記車両は軸受装置によって支持されており、当該軸受装置は少なくとも1つ以上の接触角を有する転がり軸受を有し、当該軸受装置に起因する振動と車輪に起因する振動を前記MEMS式加速度センサで同時に検出することを特徴とする異常診断方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の異常診断方法において、前記車両は鉄道車両であることを特徴とする異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−278895(P2007−278895A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106585(P2006−106585)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】