説明

異方性導電接続用導電性粒子

本発明の実施形態には、リン含量が約1.5重量%未満の導電性ニッケル/金(Ni/Au)複合金属層が高分子樹脂粒子の表面上に形成されてなる導電性粒子が含まれる。その形成方法もまた含まれる。リン含量が約1.5重量%未満のNi/Au複合金属層を有する導電性粒子は、相対的に高い導電性を有しつつ、高分子樹脂粒子へのNi/Au金属層の接着性が相対的に優れる。本発明の他の実施形態によれば、本発明の実施形態による導電性粒子を含む異方性接着剤組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、異方性導電接続材料と組み合わせた際に電気的な接続性を発現しうる導電性粒子に関する。より詳細には、本発明は、高分子樹脂粒子上に複合金属層をめっきすることにより作製される導電性粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
現在、導電性金属粒子や金属めっき樹脂粒子などの導電性材料は、電子デバイスの微小電極間(例えば、ITO電極と駆動IC回路との間、駆動ICチップと回路基板との間、および液晶ディスプレイ(LCD)パネルの微小パターン電極端子)の電気的接続に用いられている。特に、変形可能で再生可能な高分子樹脂粒子上に金属が被覆されてなる導電性粒子が、電気的接続に用いられて長期にわたって信頼性の高い相互接続を提供しうる。近年、回路のピッチがより微細になりバンプ電極の面積がより小さくなるにつれて、導電性粒子の導電性および電気的信頼性は、適当な電気的接続を得るのにさらに重要でありうる。
【0003】
複合導電性粒子は、導電性の金属(例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、およびインジウム(In))を、めっきにより高分子樹脂粒子の非導電性表面上にコーティングすることにより、作製されうる。最終的に得られた粒子の電子的特性や物理化学的特性は、導入される金属の種類や数に応じて変動しうる。異方性導電フィルムに用いられる導電性粒子における金属層としては、従来、Ni/Au複合金属層が用いられている(例えば、特開平11−329060号公報および特開2000−243132号公報を参照)。ニッケルは無電解めっきによって容易に金属薄膜として形成されうるのに対し、Auは粒子に対して優れた導電性を付与しうることから、Ni/Au複合金属層は好ましい。このように、Ni/Au複合金属層を有する導電性粒子は、半導体または他の実装デバイスの接続部位において安定した電気的接続を構成しうる。
【0004】
特開2000−243132号公報には、高分子樹脂粒子上に実質的に連続したNi層を無電解めっきし、次いで置換めっきにより当該Ni層上にAu層を形成することにより作製されたNi/Au複合めっき層が記載されている。当該公報で用いられる場合、「実質的に連続したNi層」とは、めっき中のNi粒子の蒸着により形成される5nm以上の厚さを有するめっき層を意味する。基材粒子へのめっきの接着を考慮すると、当該Ni層は通常、約50nm〜約70nmの厚さを有する。この実質的に連続したNi層は、上記Au層の導入を促進しうる。しかしながら、上述の厚さのNiめっき層を有する導電性粒子が電極間に介在して圧力を受けて変形すると、Ni層と高分子樹脂粒子との間で剥離が生じうる。加圧変形が続くと、剥離によりNi層の破断が引き起こされる可能性があり、これにより電気的な接続性は低下してしまう。これは、Ni層が高分子粒子よりも硬くて柔軟性に劣るために生じうる。
【0005】
高分子樹脂粒子上に形成されたNi層の特性を改善すべく、様々な努力がなされている。例えば、特許第2507381号公報には、樹脂粒子上にNi層が被覆されてなり、当該Ni層のリン含量が1.5〜4重量%である導電性粒子が記載されている。かような粒子は、リンが低濃度の場合と比較して柔軟性および接着性を改善し、より高濃度のリンを含むNiめっき層と比較して高温高湿条件下での導電性を向上させ、耐食性を改善するものとして記載されている。しかしながら、かような導電性粒子は、その低いリン含量に起因して生じる磁力によって凝集しうる。さらに、凝集した粒子を分散させるための崩壊時には、めっき層の剥離・破断が生じうる。
【0006】
特開平7−118866号公報には、7〜15重量%のリンを含むニッケル−リン合金層が、無電解めっきにより球状コア材料の表面上にめっきされてなる導電性粒子が記載されている。7〜15重量%のリンを配合することで、めっき中の凝集や分散時の再凝集が低減され、これにより導電性粒子の分散性が改善されうる。しかしながら、めっき層のリン含量が多いため、粒子の導電性は低下しうる。
【0007】
このように、特定量のリンによって、導電性粒子の好ましい接着性および好ましい導電性の双方を保証することはできない。さらに、ニッケル−リンめっき層の柔軟性は、無電解めっきの条件にある程度依存しうる。また、ニッケル−リン合金や他の金属を含む導電性粒子の特性に対するリン含量の影響について、明確な傾向は見られない。しかしながら、導電性粒子の電気抵抗は一般的に、ニッケル−リン層におけるリンの量が増加するにつれて増加する。
【0008】
従って、リン含量が調整されたNi/Au複合めっき層が高分子樹脂粒子の表面上に形成されてなる、異方性相互接続用の信頼性の高い導電性粒子を得ることが好ましいであろう。さらに、当該高分子樹脂粒子はサイズが相対的に均一であり、Ni/Au複合金属めっきは高分子樹脂粒子の表面に十分に接着し、そして当該粒子は好ましい導電性を有することが好ましいであろう。
【特許文献1】特開平11−329060号公報
【特許文献2】特開2000−243132号公報
【特許文献3】特許第2507381号公報
【特許文献4】特開平7−118866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
技術的課題
本発明の目的の1つは、導電性ニッケル/金(Ni/Au)複合めっき層が高分子樹脂粒子の表面上に形成されてなり、当該複合めっき層が調整されたリン(P)含量を有し、当該高分子樹脂粒子が均一なサイズを有する、異方性導電相互接続用の信頼性の高い導電性粒子を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、高分子樹脂粒子の表面上に形成された導電性ニッケル/金(Ni/Au)金属層を含み、当該金属層が当該高分子樹脂粒子の表面に対して優れた接着性を示す、導電性粒子を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、優れた導電性を有する導電性粒子を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、優れた接着性および優れた導電性を有する導電性粒子を含む異方性導電接着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
技術的解決
本発明の実施形態としては、高分子樹脂粒子の表面上に形成された、リン含量が約1.5重量%未満の導電性ニッケル/金(Ni/Au)複合金属層を含む導電性粒子が挙げられる。リン含量が約1.5重量%未満のNi/Au複合金属層を有する導電性粒子は、相対的に高い導電性を有するが、高分子樹脂粒子に対するNi/Au金属層の接着性も相対的に優れる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、Ni/Au複合金属層は、実質的にNiからなる第1の層と、当該第1の層を包囲する実質的にAuからなる第2の層とを含みうる。ある実施形態では、Auめっき層は約0.01〜約0.5μmの範囲の厚さを有する。ある実施形態では、Ni/Au複合金属層はAu勾配を有し、前記Ni/Au複合金属層が、前記高分子樹脂粒子の表面では実質的にNiからなり、導電性粒子の外表面では実質的にAuからなる。
【0015】
本発明のある実施形態では、高分子樹脂粒子の10%圧縮硬さ(10%K)の値と導電性粒子の10%K値との差が約100kgf/mm以下である。このように、導電性粒子と高分子樹脂粒子とが相対的に類似した10%K値を有すると、高分子樹脂粒子に対するNi/Au複合金属層の接着性が好ましいものとなりうる。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態は、本発明の実施形態による導電性粒子を含む異方性接着剤組成物を提供する。
【0017】
導電性粒子の製造方法も提供され、ここである実施形態によれば、高分子樹脂粒子の無電解Niめっきを行なった後に当該高分子樹脂粒子の金めっきを行なって、本発明の実施形態による導電性粒子を製造することにより、導電性粒子が製造されうる。他の実施形態では、高分子樹脂粒子の無電解Niめっき中に金めっきを行なって、本発明の実施形態による導電性粒子を製造することにより、導電性粒子が製造されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明を実質するための最良の形態
以下、本発明をより十分に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具体化可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本明細書の開示が十分な完全なものとなるように提供され、これらの実施形態によれば本発明の範囲は当業者に十分に理解される。
【0019】
ある要素または層が他の要素または層の「上に」あると称される場合には、他の要素または層の直上にあっても、直接接続されても、直接連結されてもよいし、介在する要素や層が存在してもよい。一方、ある要素が他の要素または層の「直上にある」、他の要素または層と「直接接続される」、または他の要素または層と「直接連結される」と称される場合には、介在する要素や層は存在しない。本明細書中、同一の符号は同一の要素を意味する。本明細書で用いられる場合、「および/または」との語は、関連する列挙された項目の1つ以上の任意の全ての組み合わせを含む。
【0020】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のものであり、本発明を限定する意図ではない。本明細書で用いられる場合、「a」、「an」、および「the」といった単数形は、文脈が明らかに逆を示していない限り、複数形をも含む趣旨である。さらに、本明細書で用いられる場合、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」との語は、規定された特徴、整数、段階、操作、要素、および/または構成成分が存在することを示すが、1以上の他の特徴、整数、段階、操作、要素、構成成分および/またはこれらの組み合わせが存在しまたは追加されることを排除するものではないと理解されるであろう。
【0021】
そうでないと定義されない限り、本明細書で用いられる全ての語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野における当業者が一般的に理解するのと同一の意味を有する。さらに、一般的に用いられる辞書において定義されるもののような語は、関連する分野の文脈におけるその意味と整合する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示をもって定義されない限り、理想的なまたは過度に形式的な意味に解釈されるべきではないことも理解されるであろう。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、リン含量が1.5重量%未満のニッケル/金(Ni/Au)複合金属層が高分子樹脂粒子の表面上に形成されてなる導電性粒子が提供される。いくつかの実施形態では、Ni/Au複合金属層は0.3〜1.5重量%のリン含量を有する。本明細書で用いられる場合、「複合金属層」との句は、例えばNi層上に直接めっきされたAu層を有する複合金属層や、NiおよびAuが完全に混合された複合金属層のような、高分子樹脂粒子上に被覆されたNiおよびAuの任意の組み合わせを意味するものとする。さらに、本明細書で用いられる場合、高分子樹脂粒子は基材粒子とも称される。Ni/Au複合金属層は、無電解めっきにより形成されうる。無電解めっきは、化学的還元剤を含有する水溶液中でのニッケルイオンの触媒的還元プロセス、およびこれに続く電気的エネルギーを用いないニッケル金属の蒸着に依存する化学的還元プロセスである。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、高分子樹脂粒子上に無電解Niめっきを行ない、続いてAuめっきを行なうことにより、Ni/Au複合金属層が形成される。かような実施形態では、導電性粒子の調製は3段階:1)例えば脱脂、エッチング、増感、触媒作用および/または還元剤を用いた処理による、基材粒子の前処理;2)無電解Niめっきおよび洗浄;並びに、3)Auの置換めっきまたは無電解めっき、で行なわれうる。
【0024】
無電解Niめっきおよびこれに続く金めっきにより導電性粒子が形成される場合には、高分子樹脂粒子上に実質的にNiからなる第1の層が形成され、これが実質的にAuからなる第2の層により包囲されてもよい。このように、いくつかの実施形態では、第1の層はAuを含まないように形成されたNi層に実質的に近似されうる。このNi層は無電解めっきにより形成されるNi層に典型的な組成を有することができ、よってリンなどの不純物を含みうる。さらに、いくつかの実施形態では、第2の層はNiを含まないようにめっき(例えば、無電解めっきまたは置換めっき)により形成されたAu層に実質的に近似され、不純物をも含みうる。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、高分子樹脂粒子の無電解Niめっきおよびこれに続く金めっきを行なって本発明の実施形態に係る導電性粒子を製造することを含む、導電性粒子の製造方法が提供される。
【0025】
他の実施形態によれば、無電解Niめっき中にAuめっきをおこなうことにより、Ni/Au複合金属層が形成されうる。これにより、密度勾配を有するNi/Au複合めっき層が得られうる。例えばかような密度勾配を有するめっき層においては、導電性粒子の表面が主としてAuとなるように、高分子樹脂粒子の表面から金属粒子の最外表面まで、金属層のNi濃度が減少してAu濃度が増加しうる。このように、本発明の一実施形態による導電性粒子は、Au密度勾配を有し、高分子樹脂粒子の表面では実質的にNiからなり、導電性粒子の外表面では実質的にAuからなるNi/Au複合金属層を含みうる。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、高分子樹脂粒子の無電解Niめっき中に金めっきを行なって本発明の実施形態に係る導電性粒子を製造することを含む、導電性粒子の製造方法が提供される。
【0026】
無電解めっきは、以下の方法により実施されうる。初めに、高分子樹脂粒子を当該粒子表面の洗浄および脱脂に適した界面活性剤溶液に浸漬させうる。その後、クロム酸および硫酸の混合溶液を用いてエッチングを行ない、基材樹脂粒子の表面上にアンカーを形成してもよい。次いで、表面処理したこの基材樹脂粒子を塩化スズおよび塩化パラジウムの溶液中に浸漬させて、粒子の表面を触媒および活性化してもよい。その結果、基材粒子の表面上にパラジウム触媒の微小な核が形成されうる。次いで、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンなどを用いて還元反応を行ない、均一なパラジウム核を樹脂粒子上に形成してもよい。次いで、得られた基材粒子を無電解Niめっき溶液中に分散させてもよく、その後、次亜リン酸ナトリウムを用いてNi塩を還元すると基材粒子上に無電解Niめっき層が形成されうる。いくつかの実施形態では、Niめっきされた粒子は次いで、置換めっきまたは無電解Auめっき反応を引き起こすのに十分なAuめっき溶液中に添加されてもよく、これによりAu蒸着めっき層が粒子の最外層上に形成される。
【0027】
無電解Niめっき溶液は、Niイオンおよび還元剤を含みうる。還元剤(次亜リン酸ナトリウムなど)は、無電解ニッケル−リンめっき層を形成するのに用いられうる。一般的に受け入れられている、次亜リン酸ナトリウムを用いた無電解ニッケル−リンめっき層の蒸着メカニズムは、以下の通りである:
【0028】
【化1】

【0029】
このメカニズムによれば、反応(1)が進行するにつれて、反応物が消費されて硫酸が生成し、その結果としてめっき溶液のpHは低下する。続いて、反応(2)によって当該めっき層にリンが導入される。蒸着速度が増加するにつれて、当該めっき層のリン含量は減少する。めっき蒸着速度は、めっき溶液の組成の影響を受けうる。例えば、Niイオンおよび還元剤の濃度、添加される錯化剤の錯化の強度、添加される促進剤の濃度、pHなどが、蒸着速度に影響を及ぼしうる因子である。
【0030】
ニッケル−リン無電解めっき層のリン含量は、当該層の物理的特性および電気的特性(これらは導電性粒子の物理的特性に影響しうる)に影響する可能性がある。無電解Niめっき層のリン含量が減少するにつれて、生成するNi結晶の量は増加し、これにより密度および硬度が上昇し、磁性が生じて抵抗が減少しうる。さらに、リンが少ないニッケル−リンめっき層の硬度が大きくなって柔軟性が低下すると、当該めっき層の高分子樹脂粒子に対する接着性が低下しうる。
【0031】
しかしながら、本発明者等は、予期せぬことに、無電解Niめっきの最中またはその後にAuめっきを行なってNi/Au複合層を形成すると、Ni層のリン含量が低下するにつれてめっき層の硬度および電気抵抗もともに低下することを見出したのである。このようにして、めっき層の接着性が相対的に優れ、相対的に低い抵抗を有する導電性粒子が形成されうる。
【0032】
よって、本発明の実施形態の導電性粒子のNi/Au無電解めっき層のリン含量が約1.5重量%より多いと、導電性粒子の圧縮硬さが高くなり、高分子樹脂粒子の圧縮硬さよりもずっと大きくなりうる。このように基材高分子樹脂粒子とNi/Auめっき層との間で硬さが異なると、圧縮変形能や弾性も異なる可能性がある。その結果、当該導電性粒子に力(圧力)が加わると、Ni/Au金属層が樹脂粒子から剥離したり破断したりして、めっき層の樹脂粒子に対する接着性が低下してしまう。
【0033】
従って、本発明のいくつかの実施形態では、無電解めっきにより基材粒子上に形成されるNi/Au複合めっき層のリン含量は1.5重量%未満であり、さらにいくつかの実施形態では0.3〜1.5重量%である。かような場合には、導電性粒子は高分子樹脂粒子よりもわずかに大きい圧縮硬さを有しうる。Ni/Au複合金属層と高分子樹脂粒子との硬さの不均一性が低下すると、Ni/Au複合金属層の高分子樹脂粒子表面への接着性が改善されうる。このように接着性が改善すると、加圧下においてさえも導電特性が向上した導電性粒子が提供されうる。さらに、リン含量が1.5重量%未満のNi/Au無電解めっき層は、リン含量の多いめっき層と比べて相対的に小さい抵抗を示しうるため、導電性粒子は優れた導電特性を発現しうる。
【0034】
導電性粒子の硬さに対するめっき層のリン含量の影響は以下の通りである。一般的に、粒子に加えられる圧縮力と粒子の圧縮変形量との間の関係は、式1で近似される:
【0035】
【数1】

【0036】
式中、Fはx%圧縮変形時の荷重値(kg)であり、Sはx%圧縮変形時の圧縮変位(mm)であり、Eは粒子の圧縮弾性係数(kgf/mm)であり、Rは粒子の半径(mm)であり、sは粒子のポアソン比である。
【0037】
Kは、圧縮硬さであり:
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、K値は、式3によって算出されうる:
【0040】
【数3】

【0041】
このK値は、微小圧縮試験機(MCT−Wシリーズ、株式会社島津製作所、日本)により測定されうる。具体的には、当該K値は、平滑な上部圧子(直径:50μm)と下部加圧板との間に単一粒子を固定し、圧縮速度0.2275gf/秒、最大試験荷重5gfで当該単一粒子を圧縮して荷重値および圧縮変位を得て、得られた値を上記式に代入することにより、測定されうる。粒子の硬さを表すK値を普遍的かつ定量的に比較するため、本明細書では10%変形時のK値(10%K値)を用いる。
【0042】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態による導電性粒子はリン含量が1.5重量%未満であるため、めっき層は所望の導電性を維持しつつ、所望の接着性を有しうる。このようにするためには、高分子樹脂粒子と導電性粒子(Ni/Au複合金属層でのめっき後の粒子)との間の10%K値の差は相対的に小さいとよい。よって、本発明のいくつかの実施形態では、高分子樹脂粒子と導電性粒子との間の10%K値の差が100kgf/mm以下である。
【0043】
めっき層のリン含量が1.5重量%を超えると、高分子樹脂粒子と導電性粒子との間の10%K値の差が100kgf/mmよりもずっと大きくなる可能性がある。また、上述したように、Ni/Au複合めっき層が相対的に硬いことによって、接着性および電気的信頼性が低下しうる。この違いは、柔らかい高分子樹脂粒子が用いられる場合に特に顕著である。従って、リン含量が約1.5重量%超のNi/Au複合金属層を有する導電性粒子は、接着性および電気接続の信頼性に劣る可能性がある。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、基材粒子は、約200〜約700kgf/mmの範囲の10%K値を有する高分子樹脂粒子である。10%K値がこの範囲の高分子樹脂粒子が一定のギャップサイズを有する表面電極間に介在すると、電極を損傷することなく接続を改善することが可能となる。高分子樹脂粒子の10%K値が約200kgf/mmを下回ると、加えられた圧力によって、接続時に過剰に変位する場合があり、その結果、金属層が破断したり基材粒子から剥離したりして、電気的な接続や信頼性が低下する可能性がある。一方、高分子樹脂粒子の10%K値が約700kgf/mmを超えると、電極間に介在する導電性粒子が十分に変位せず、その結果電極表面と導電性粒子との接触面積が十分に増加せず、接続抵抗を低下させることが困難となる可能性がある。さらに、約700kgf/mmを超える10%K値を有する高分子樹脂粒子は硬すぎて、相対的に大きい圧縮力が加わった際に電極表面を傷つけ、これにより電気的接続が劣化したり接続の信頼性が低下したりする可能性もある。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、導電性粒子の無電解Ni/Au複合金属層は約0.01〜約1μmの範囲の厚さを有しうる。当該金属層の厚さが約0.01μm未満であると、所望の導電性を確保することが困難となる。一方、当該金属層の厚さが約1μmを超えると、所望の粒子の変形能、柔軟性、復元能が得られなくなり、電極包装材料中に用いられた場合には粒子が他の粒子と凝集して所望の電気的特性を得ることが困難となる可能性がある。いくつかの実施形態では、当該金属層は約0.05〜約0.5μmの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、Ni/Au複合金属層は約0.01〜約0.5μmの範囲の厚さを有するAuめっき層を含む。Niめっき層のリン含量が減少すると、Ni結晶の量が増加してNiめっき層が磁性を示し、導電性粒子の凝集を引き起こす可能性がある。しかしながら、当該Niめっき層の表面上にはAuめっき層が形成されうるため、Auめっき層の厚さを制御することで、磁性Ni層の存在によって実質的に導電性粒子の凝集を抑制することができ、あるいはたとえ凝集しても、弱い攪拌、剪断力または圧力で導電性粒子を分散させることが可能となる。Auめっき層の厚さが約0.01μm未満であると、Niめっき層の磁性が導電性粒子の凝集に大きく影響し、所望の特性を達成することが困難となる場合がある。一方、Auめっき層の厚さが約0.5μmを超えると、導電性粒子の比重が高くなりすぎ、バインダ樹脂中に分散した際に沈殿や凝集が引き起こされる可能性がある。さらに、大量のAuを用いることは経済的にも不利でありうる。
【0047】
多くの材料が基材である高分子樹脂粒子として好適に用いられうるが、高分子樹脂粒子としては、以下に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびメラミン樹脂の1種または2種以上が挙げられる。上述した材料の共重合体、ブレンドおよび混合物が用いられてもよい。
【0048】
異方性導電相互接続には圧縮変形能および圧縮復元能が要求されるため、本発明のいくつかの実施形態では、スチレン系樹脂および(メタ)アクリル樹脂が好ましい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋重合性単量体を含む架橋高分子樹脂が好ましい。好適な架橋重合性単量体としては、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、およびトリアリルトリメリテートなどのアリル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;(ポリ)ジメチルシロキサンジ(メタ)アクリレート;(ポリ)ジメチルシロキサンジビニル;(ポリ)ウレタンジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート;テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;並びにグリセロールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。当該架橋重合性単量体は、単独でまたは任意の組み合わせで用いられうる。
【0049】
単独でまたは上記架橋重合性単量体と組み合わせて用いられうる他の単量体としては、以下に限定されないが、スチレン、エチルビニルベンゼン、α−メチルスチレンおよびm−クロロメチルスチレンなどのスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、およびグリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類;塩化ビニル;アクリル酸エステル類;アクリロニトリル;酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル;酪酸ビニル;ビニルエーテル;アリルブチルエーテル;ブタジエン、並びにイソプレンが挙げられる。当該単量体は、単独でまたは任意の組み合わせで用いられうる。
【0050】
高分子樹脂粒子は、以下に限定されないが、懸濁重合、分散重合、シード重合、および界面活性剤を使用しない乳化重合などの任意の好適な重合法によって調製されうる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、シード重合を採用して、いかなる追加の分級プロセスも必要とせずに均一な粒子径分布を有する高分子樹脂粒子を調製する。代表的な手法は以下の通りである。まず、粒径が小さく径分布が狭い高分子シード粒子が水溶液中に分散されうる。この分散液に、油溶性開始剤が溶解した(架橋)重合性不飽和単量体の水性エマルジョンを添加してもよい。この添加により、単量体はシード粒子中に吸収されうる。その後、(架橋)重合性不飽和単量体が重合されて高分子樹脂粒子が調製されうる。高分子シード粒子の分子量は、シード重合により調製される高分子樹脂粒子の層分離および機械的特性に非常に影響しうる。よって、いくつかの実施形態では、高分子シード粒子の分子量は好ましくは約1000〜約30000g/モルの範囲であり、いくつかの実施形態では、約3000〜約20000g/モルの範囲である。また、(架橋)重合性不飽和単量体の含有量は、高分子シード粒子1重量部に対して好ましくは約20〜約300重量部である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、高分子樹脂粒子を調製するのに用いられる開始剤は、以下に限定されないが、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、o−クロロベンゾイルペルオキシド、o−メトキシベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジオクタノイルペルオキシドおよびジデカノイルペルオキシド等のペルオキシド系化合物;並びに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などの油溶性ラジカル開始剤である。いくつかの実施形態では、単量体の合計重量に対して、開始剤が約0.5〜約15重量%の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0053】
高分子樹脂粒子の重合の過程で、必要であれば、ラテックスの安定性を確保するために、界面活性剤および分散安定化剤を用いてもよい。好適な界面活性剤の例としては、アニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤などの本技術分野において一般的に用いられている界面活性剤が挙げられる。
【0054】
さらに、分散安定化剤が用いられてもよい。分散安定化剤は、重合媒体中に溶解または分散しうる物質であり、その具体例としては、以下に限定されないが、ゼラチン、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドおよびポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;硫酸バリウム;硫酸カルシウム;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;硫酸アルミニウム;クレイ;珪藻土;並びに金属酸化物粉末が挙げられる。これらの材料は、単独でまたは任意の組み合わせで用いられうる。分散安定化剤は、重合中に生成する高分子樹脂粒子が重力や粒子の凝集によって沈降するのを阻害するのに十分な量で用いられうる。いくつかの実施形態では、分散安定化剤は、全ての反応物100重量部に対して好ましくは約0.01〜約15重量部の範囲の量で用いられる。
【0055】
導電性粒子の基材粒子として用いられる高分子樹脂粒子は、本発明のいくつかの実施形態によれば球状であってもよいし、いくつかの実施形態では好ましくは約1〜約20μmの範囲の平均粒子径を有する。いくつかの実施形態では、高分子樹脂粒子は好ましくは約2〜約10μmの範囲の平均粒子径を有する。基材粒子の粒子系が約1μm未満であると、導電性粒子が他の導電性粒子と凝集しやすくなる可能性がある。一方、20μmを超える粒子径を有する基材粒子は、マイクロパッケージの材料に用いられる導電性粒子としては一般的には用いられない。
【0056】
導電性粒子は、本発明のいくつかの実施形態によれば、その粒子径の変動係数(CV)が約10%以下である。CV値(粒子径の均一性(単分散)を表す)は、粒子径の標準偏差を平均粒子径で除することにより得られる百分率である。いくつかの実施形態では、導電性粒子は約5%以下のCV値を有することが好ましい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、導電性粒子は約1.3以下のアスペクト比を有する。このアスペクト比は、単一粒子の最短軸の径に対する、単一粒子の最長軸の径の比である。いくつかの実施形態では、導電性粒子は1.2以下のアスペクト比を有することが好ましい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態による導電性粒子は、所望の異方性導電相互接続性能を有する導電性フィラーとして用いられてもよいし、改善された相互接続および相互接続の信頼性を有しうる異方性導電接着剤組成物を調製するのに用いられてもよい。よって、いくつかの実施形態では、本発明の実施形態による導電性粒子を含む異方性接着剤組成物が提供される。
【実施例】
【0059】
発明の形態
以下の実施例を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は例示のためのものであり、本発明の技術的範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0060】
実施例
実施例1
シード粒子の調製
スチレン単量体30重量部、開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6重量部、ポリビニルピロリドン(分子量:40000g/モル)6.5重量部、および反応媒体としての、メタノール190重量部と超純水15重量部との混合溶液を、反応液に添加した。その後、反応混合物を窒素雰囲気下、70℃にて24時間重合に供して、シード粒子を調製した。このシード粒子を超純水およびメタノールで数回洗浄し、真空凍結乾燥機中で乾燥して、粉末を得た。シード粒子の粒子径を、コールターカウンター(マルチサイザーHI、ベックマンコールター)を用いて測定した。その結果、シード粒子の平均粒子径は1.05μmであり、CV値は3.5%であった。シード粒子の分子量をGPC分析により測定した。その結果、シード粒子の分子量は10500g/モルであった。
【0061】
高分子樹脂粒子の調製および評価
シード粒子1.25重量部をラウリル硫酸ナトリウム(SLS)水溶液(0.2重量%)350重量部に均一に分散させた。別途、開始剤としてのベンゾイペルオキシド1.5重量部が溶解した、ジビニルベンゼン(DVB)100重量部の単量体混合物をSLS水溶液(0.2重量%)400重量部に添加した。得られた混合物を、ホモジナイザーを用いて10分間乳化した。この単量体エマルジョンをシード粒子分散液に添加し、室温にて単量体を膨潤させた。膨潤が完了した後、ケン化度が約88%のポリビニルアルコール水溶液(5重量%)500重量部を添加した。反応器の温度が80℃まで上昇した後に重合が開始した。こうして得られた架橋ポリマージビニルベンゼン(PDVB)粒子を、超純水およびエタノールで数回洗浄し、室温にて真空下で乾燥した。この高分子樹脂粒子の平均粒子径は4.0μmであり、CV値は3.7%であり、粒子径分布が均一であることが示された。微小圧縮試験機(MCT−Wシリーズ、株式会社島津製作所、日本)により高分子樹脂粒子のK値を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0062】
導電性粒子の調製
高分子樹脂粒子(20g)を、10g/Lのクロム酸および400g/Lの硫酸を含有する混合溶液中に10分間浸漬することにより当該基材粒子をエッチングして、当該基材粒子の表面上にアンカーを形成した。次いで、当該粒子を塩化スズ(II)水溶液(1g/L)中に3分間浸漬させ、濾過し、洗浄して、基材粒子の表面を感作した。基材粒子を回収し、塩化パラジウム水溶液(0.1g/L)中に3分間浸漬させ、濾過し、洗浄した。洗浄した基材粒子を10%塩酸中に3分間浸漬させた後、基材粒子の表面を還元処理して、当該表面上に微細なパラジウム核を形成した。
【0063】
触媒された基材粒子を種々の速度で攪拌して、めっき中の粒子の凝集、接着、沈降の発生に起因した不均一なめっきの形成を防止した。前処理した基材粒子20gをめっき浴中に入れ、錯化剤を含有する攪拌めっき浴中に十分に分散させた。次いで、めっき浴に無電解Niめっき溶液を添加して、基材粒子上にNiめっき層を形成した。Ni無電解めっき溶液は、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、および水酸化カリウム(1:1:2の当量比)から構成されていた。無電解Niめっきは60℃にて30分間行なった。めっき反応初期段階のpHは11.1であり、めっき反応最終段階のpHは6.0に調節した。Niめっき層の形成後、無電解Auめっき溶液をめっき溶液中に供給して、Ni/Au複合めっき層を形成した。無電解Auめっき溶液は実質的に、Au前駆体としてのシアン化第一金カリウム(KAu(CN))、シアン化カリウム(KCN)、水酸化カリウム(KOH)および炭酸カリウム(KCO)から構成されていた。かようなAuめっき溶液の調製は当業者に周知である。無電解Auめっきの後、複合金属層を洗浄し、濾過して、基材粒子上にNi/Au複合めっき層がめっきされてなる導電性粒子を得た。最後に、導電性粒子をアルコールで十分に洗浄し、真空下で乾燥した。
【0064】
実施例2
ジビニルベンゼン100重量部に代えてジビニルベンゼン60重量部およびスチレン40重量部の単量体混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により高分子樹脂粒子を調製した。この高分子樹脂粒子について測定を行なったところ、平均粒子径は4.0μmであり、CV値は3.6%であった。この高分子樹脂粒子を用い、実施例1に記載の手法で導電性粒子を調製した。
【0065】
実施例3
実施例2の高分子樹脂粒子を用いて、無電解Ni/Auめっきにより導電性粒子を調製した。無電解Niめっきの開始の20分後に無電解Auめっき溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性粒子を調製した。
【0066】
比較例1
実施例1の高分子樹脂粒子を用いて、無電解Ni/Auめっきにより導電性粒子を調製した。硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、および水酸化ナトリウム(1:2:2の当量比)の混合溶液を無電解Niめっき溶液として用いて無電解めっきを行ない、溶液のpHをアンモニアを用いて7.4に調整することによりNi/Au複合金属めっき層を導入したこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性粒子を調製した。
【0067】
比較例2
実施例2の高分子樹脂粒子を用いて、無電解Ni/Auめっきにより導電性粒子を調製した。無電解Niめっき溶液中の水酸化カリウムに代えてアンモニアを用いて溶液のpHを8.5に調整することによりNi/Au複合金属めっき層を導入したこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性粒子を調製した。
【0068】
比較例3
実施例2の高分子樹脂粒子を用いて、無電解Ni/Auめっきにより導電性粒子を調製した。硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、および水酸化ナトリウム(1:2:2の当量比)の混合溶液を無電解Niめっき溶液として用いて無電解めっきを行ない、溶液のpHをアンモニアを用いて8.0に調整することによりNi/Au複合金属めっき層を導入したこと以外は、実施例1と同様の手法により導電性粒子を調製した。
【0069】
導電性粒子の評価
実施例1〜3および比較例1〜3で調製した導電性粒子のめっき層の厚さを、誘導結合プラズマ(ICP)分光計を用い以下の手法に従って測定した。まず、それぞれのNi/Auめっき導電性粒子を王水(硝酸および塩酸(3:1(v/v)))に添加して、Niめっき層およびAuめっき層を完全に溶解させた。得られた溶液をICP分光計により分析して、Ni、Auおよびリンの含量(重量%)を定量した。この含量(重量%)と各金属成分の比重、並びに各高分子樹脂粒子の比重および平均径を用いて、Ni層およびAu層の厚さを算出した。
【0070】
微小圧縮試験機を用いて導電性粒子のK値を測定し、その結果を表1に示す。
【0071】
各サンプル中の20個の粒子の電気抵抗値を測定し、得られた値を平均することにより、導電性粒子の圧縮抵抗を測定した。この際、圧縮抵抗は微小圧縮試験機を用いて測定し、加えられた力によって粒子が10%変形したときの抵抗(10%圧縮抵抗)として表した。導電性粒子のバルク凝集体の電気抵抗値として、導電性粒子の体積抵抗を測定し、その結果を表1に示す。
【0072】
また、導電性粒子の50%圧縮変形時の抵抗値(50%圧縮抵抗)を測定し、抵抗値の変化からめっき層が剥離・破断しているか否かを決定できた。導電性粒子が変形すると、導電性粒子と上部・下部圧縮電極との接触面積が増加する。この際、抵抗は徐々に低下するか、または一定のままである。めっき層の接着性が低く、圧縮変形時に剥離・破断が起これば、導電性粒子の抵抗は初期の抵抗と比較して増加する傾向にある。よって、50%圧縮抵抗値を観察することで、高分子樹脂粒子への導電性金属層の接着が決定されうるのである。
【0073】
異方性導電接着フィルムの製造および評価
エポキシ当量6000のビスフェノールAエポキシ樹脂15重量部、および硬化剤としての2−メチルイミダゾール7重量部を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒に溶解させ、次いで各導電性粒子5重量部およびシラン系カップリング剤を当該溶液中に分散させた。得られた分散液をPET剥離紙上にコーティングし、乾燥させて、18μm厚さの異方性導電接着フィルムを製造した。
【0074】
異方性導電接着フィルム中の導電性粒子の凝集および分散能を、光学顕微鏡で100〜500×の倍率で当該フィルム(面積:1mm)を観察することにより評価した。導電性粒子の平均径の5倍以上のサイズを有する凝集体の数が導電性粒子の総個数の0.1%以上の場合に、導電性粒子の凝集および分散能について「劣る」と判断した。よって、導電性粒子の平均径が4μmで、導電性粒子の凝集体のサイズが20μm以上の場合、当該凝集体の数が導電性粒子の総個数の0.1%未満のときには、導電性粒子の凝集および分散能は「優れる」と判断され、当該凝集体の数が導電性粒子の総個数の0.1%以上のときには、「劣る」と判断される。
【0075】
まず、室温(25℃)にて1時間の乾燥条件下で、フィルムをデシケータ中に放置した。このフィルムを、ITOパターンガラス基板(リード幅:30μm、ピッチ:65μm、厚さ:5000Å)と、金めっき銅回路を備えたチップオンフィルム(COF)(リード幅:25μm、ピッチ:65μm、厚さ:9μm)との間に介在させ、次いで180℃にて10秒間加熱しながら4mPaで加圧して、電気接続構造を作製した。
【0076】
当該接続サンプルの20箇所の隣接する上部・下部電極間の電気抵抗値を測定し、平均した。その結果を表1に示す。この接続サンプルを85℃の温度および85%の相対湿度(RH)で1000時間エージングし、接続抵抗を測定することにより、接続サンプルの接続の信頼性を評価した。この試験では、下記の基準に基づいて導電性粒子の接続の信頼性を評価した:
・優れる(Good):高温高湿条件後の抵抗の増加≦1Ω
・平均:1Ω<抵抗の増加≦2.0Ω
・劣る:2.0Ω<抵抗の増加。
【0077】
高温高湿条件下での信頼性試験の結果から、圧縮変形により電極を接続する導電性粒子のめっき層は、周囲の条件の変化にもかかわらず長期間にわたって安定に維持されたことが示される。
【0078】
【表1】

【0079】
表紙に示すデータからわかるように、本発明のいくつかの実施形態では、導電性粒子はとても柔軟で、単一粒子の圧縮抵抗および体積抵抗が低く、異方性導電接着樹脂中では良好な分散能を示し、よって、異方性導電相互接続時に優れた電気接続および高い接続信頼性を達成しうる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態を記載してきたが、上記の教示を考慮して当業者によって修飾および変更がなされうることに留意すべきである。よって、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲および思想に含まれる、開示された本発明の特定の実施形態における変更がなされうるということは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂粒子の表面上に形成された、リン含量が約1.5重量%未満の導電性ニッケル/金(Ni/Au)複合金属層を有する、導電性粒子。
【請求項2】
前記リン含量が約0.3〜約1.5重量%の範囲である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記Ni/Au複合金属層が、実質的にNiからなる第1の層と、当該第1の層を包囲する実質的にAuからなる第2の層とを有する、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記Ni/Au複合金属層が、Au密度勾配を有し、前記Ni/Au複合金属層が、前記高分子樹脂粒子の表面では実質的にNiからなり、導電性粒子の外表面では実質的にAuからなる、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記Ni/Au複合金属層が、約0.01〜約0.5μmの範囲の厚さの金めっき層を含む、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記高分子樹脂粒子の10%K値と導電性粒子の10%K値との差が約100kgf/mm以下である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記高分子樹脂粒子が、約200〜約700kgf/mmの範囲の10%K値を有する、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項8】
前記高分子樹脂粒子が、約1〜約20μmの平均直径、約10%以下のCV値、および約1.3以下のアスペクト比を有する、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項9】
前記高分子樹脂粒子が、アリル化合物、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート、ポリジメチルシロキサンジアクリレート、ポリジメチルシロキサンジメタクリレート、ポリジメチルシロキサンジビニル、ウレタンジアクリレート、ウレタンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、およびグリセロールトリメタクリレートからなる群から選択される単量体を含む架橋高分子樹脂を含む、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項10】
請求項1に記載の導電性粒子を含む、異方性接着剤組成物。
【請求項11】
高分子樹脂粒子の無電解Niめっきを行なった後に前記高分子樹脂粒子の金めっきを行なって導電性粒子を製造する導電性粒子の製造方法であって、前記導電性粒子が、リン含量が約1.5重量%未満のNi/Au複合金属層を有する、導電性粒子の製造方法。
【請求項12】
高分子樹脂粒子の無電解Niめっき中に金めっきを行なって導電性粒子を製造する導電性粒子の製造方法であって、前記導電性粒子が、リン含量が約1.5重量%未満のNi/Au複合金属層を有する、導電性粒子の製造方法。

【公表番号】特表2009−522716(P2009−522716A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548370(P2008−548370)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003488
【国際公開番号】WO2007/074962
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】