説明

異物検出装置、異物検出方法、液滴吐出装置、および液滴吐出方法

【課題】本発明の実施形態は、異物の検出精度を向上させることができる異物検出装置、異物検出方法、液滴吐出装置、および液滴吐出方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る異物検出装置は、電気信号を発生させる信号発生部と、前記電気信号を変換して液体中に圧力波を発生させる発信部と、前記液体からの反射波を受信して電気信号に変換する受信部と、前記液体に異物が含まれていない状態に関する情報を格納する格納部と、前記反射波を変換した電気信号と、前記格納された情報に基づく電気信号と、の差に基づいて前記異物の有無および前記異物の大きさの少なくともいずれかを検出する検出部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、異物検出装置、異物検出方法、液滴吐出装置、および液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中にある異物を検出する技術が知られている。
例えば、液滴吐出装置において、吐出させる液体中に気泡などの異物が有るか否かを検出する技術が提案されている。
このような技術においては、例えば、気泡が存在することによる振動レベルの減衰や、残留振動波形から気泡の有無を判別するようにしている。
しかしながら、このような技術においては、細い管路中などのような小さな領域にある気泡などの異物を検出することが困難であった。そのため、細い管路中などのような小さな領域にある気泡などの異物を精度良く検出することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、異物を精度良く検出することができる異物検出装置、異物検出方法、液滴吐出装置、および液滴吐出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る異物検出装置は、電気信号を発生させる信号発生部と、前記電気信号を変換して液体中に圧力波を発生させる発信部と、前記液体からの反射波を受信して電気信号に変換する受信部と、前記液体に異物が含まれていない状態に関する情報を格納する格納部と、前記反射波を変換した電気信号と、前記格納された情報に基づく電気信号と、の差に基づいて前記異物の有無および前記異物の大きさの少なくともいずれかを検出する検出部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る異物検出装置および液滴吐出装置を例示するための模式図である。
【図2】検出のタイミングを例示するための模式グラフ図である。
【図3】気泡Bに関する情報の抽出を例示するための模式グラフ図である。(a)は気泡Bがある場合の反射波に基づく電気信号S1と、気泡Bがない場合の電気信号S2とを例示するための模式グラフ図、(b)は気泡Bに関する情報が含まれた電気信号を例示するための模式グラフ図である。
【図4】気泡Bの直径寸法と散乱断面積の関係を例示するためのグラフ図である。
【図5】第2の実施形態に係る異物検出装置および液滴吐出装置を例示するための模式図である。
【図6】第3の実施形態に係る異物検出方法を例示するためのフローチャートである。
【図7】第4の実施形態に係る液滴吐出方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
なお、以下においては、一例として、異物検出装置を液滴吐出装置に設けた場合、異物検出方法を液滴吐出方法に適用した場合を例示する。ただし、異物検出装置や異物検出方法の適用対象はこれに限定されるわけではなく、液体に含まれた気泡などの異物の検出に広く適用することができる。
【0008】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る異物検出装置および液滴吐出装置を例示するための模式図である。
液滴吐出装置の駆動方式には、加熱により気泡を発生させ膜沸騰現象を利用して液体を吐出させる「サーマル型」と、圧電素子の屈曲変位を利用して液体を吐出させる「圧電型」と、があるが、一例として、ここでは圧電型を例に挙げて説明する。
【0009】
液滴吐出装置100には、圧電部101、ノズル本体102、可撓性膜103、ノズル部104、減衰部105、カバー106、異物検出装置1が設けられている。
【0010】
圧電部101は、例えば、駆動電極101a、部材101b、駆動電極101c、部材101d、駆動電極101eを順に積層した後、一体焼成したものとすることができる。一体焼成された圧電部101は、強度が高く取扱も容易である。
部材101b、部材101dは、圧電材料から形成されたものとすることができる。圧電材料としては、圧電セラミックス(例えば、ジルコンチタン酸鉛)などを例示することができる。駆動電極101a、駆動電極101c、駆動電極101eは銅合金などから形成されたものとすることができる。
後述するように、圧電部101は液体を吐出させるための加圧源となるが、異物検出装置1の発信部および受信部としての機能をも有している。なお、異物検出装置1に設けられた信号発生部2は、圧電部101を加圧源として駆動するための電気信号を出力する機能をも有している。
【0011】
ノズル本体102には、吐出させる液体を収納する液室102aが設けられている。液室102aは、ノズル本体102の両端部間を貫通するようにして設けられている。液室102aは、例えば、等価直径寸法がdとなる断面を有したものとすることができる。
ここで、等価直径寸法dは、液室102aの断面形状が円形の場合にはその直径寸法であり、例えば、液室102aの断面形状が多角形などの場合には同じ断面積を有する円形断面に変換した場合の直径寸法である。
なお、等価直径寸法dに関する詳細は後述する。
また、液室102aには図示しない流路が連通され、図示しない流路を介して液室102a内に液体が供給されるようになっている。
ノズル本体102は、例えば、ステンレスやニッケル合金などから形成されたものとすることができる。
【0012】
可撓性膜103は、ノズル本体102の一方の端部に設けられている。可撓性膜103は、液室102aの開口部を覆うように設けられている。
また、可撓性膜103のノズル本体102に設けられた側とは反対側の面には、圧電部101が設けられている。この場合、圧電部101の屈曲変位による圧力波が液室102a内の液体に伝わりやすくなるように、液室102aの開口部と対向させるようにして圧電部101を設けるようにすることができる。なお、本実施の形態においては、圧電部101がノズル本体102の一方の端部側に設けられた液室102a内の液体に圧力を加える加圧部となる。
可撓性膜103は、例えば、ステンレスなどから形成されたものとすることができる。
【0013】
ノズル部104は、ノズル本体102の他方の端部に設けられている。ノズル部104は、板状を呈し、厚み方向を貫通するノズル孔104aが設けられている。ノズル孔104aの一端は液室102aに開口し、他端は液滴吐出装置100の外部に開口している。
【0014】
ノズル部104は、例えば、ステンレスやニッケル合金などから形成されたものとすることができる。
【0015】
減衰部105は、圧電部101の周囲を囲うようにして可撓性膜103に設けられている。圧電部101においてはいわゆるメイン振動が発生するが、これと同時にスプリアス振動などの不要な振動も発生する。そのため、減衰部105を設けることでスプリアス振動などを減衰させ、スプリアス振動などがメイン振動に及ぼす悪影響を低減させるようにしている。
減衰部105は、例えば、シリコーンゴムなどから形成されたものとすることができる。
【0016】
カバー106は、一端が開口された収納部106aを備えている。そして、収納部106aの内部に圧電部101、減衰部105を収納するようにして可撓性膜103に設けられている。また、カバー106には、圧電部101の配線を通すための図示しない孔などが適宜設けられている。
カバー106は、例えば、樹脂や金属などから形成されたものとすることができる。
【0017】
異物検出装置1には、信号発生部2、切換部3、格納部4、検出部5が設けられている。
前述したように、本実施の形態においては、圧電部101が電気信号を変換して液体中に圧力波を発生させる発信部、および、反射波を受信して電気信号に変換する受信部としての機能を果たす。
なお、反射波には、後述する機械系振動に基づくもの、「気泡による圧力波」、液室102aの壁面やノズル部104などに当たることで生じた圧力波が含まれることになるが、これらの詳細は後述する。
【0018】
信号発生部2は、気泡Bなどの異物を検出するための電気信号を発生させる。すなわち、所定の周波数を有する圧力波を圧電部101により発生させるための電気信号を発生させる。この場合、信号発生部2は、後述する(3)式や(4)式を満足する周波数fを有した電気信号を発生させるようにすることができる。
なお、周波数のレンジに応じて複数の信号発生部と、周波数レンジの切換部とを設けるようにしてもよい。
なお、前述したように、信号発生部2は、圧電部101を加圧源として駆動するための電気信号を出力する機能をも有している。
【0019】
切換部3は、電気信号の切り替えを行う。例えば、信号発生部2からの電気信号が圧電部101に送られる際には、検出部5側にその電気信号が送られないようにする。一方、圧電部101からの電気信号が検出部5側に送られる際には、信号発生部2側にその電気信号が送られないようにする。
【0020】
格納部4は、基準となる情報を格納する。例えば、液体に気泡Bなどの異物が含まれていない状態に関する情報を格納するようにすることができる。気泡Bなどの異物が含まれていない状態に関する情報は、予め収集されたものを格納するようにすることができる。また、吐出状態などから判断して気泡Bなどの異物がない状態であると推定された情報を逐次格納するようにすることもできる。
【0021】
検出部5は、圧電部101により収集された情報、すなわち、後述する反射波に関する情報と、格納部4からの情報とに基づいて気泡Bなどの異物の有無および気泡Bなどの異物の大きさの少なくともいずれかを検出する。つまり、検出部5は、反射波を変換した電気信号と、格納された情報に基づく電気信号と、の差に基づいて気泡Bなどの異物の有無および気泡Bなどの異物の大きさの少なくともいずれかを検出する。
この場合、後述するように、検出部5は、反射波を変換した電気信号と、格納部4に格納された情報に基づく電気信号と、の差の2乗に基づいて異物の大きさを検出するようにすることができる。
また、検出部5は、反射波を変換した電気信号と、格納部4に格納された情報に基づく電気信号と、の差に基づいて散乱断面積σscを求め、予め求められた気泡Bなどの異物の大きさと散乱断面積σscとの関係から気泡Bなどの異物の大きさを検出するようにすることができる。
また、検出部5は、気泡Bなどの異物の有無に関する検出結果や、気泡Bなどの異物の大きさの検出結果を、外部の機器などに向けて出力するようにすることができる。なお、気泡Bなどの異物の有無の検出や気泡Bなどの大きさの検出に関する詳細は後述する。
【0022】
次に、異物検出装置1の作用について例示する。
ここでは、一例として、異物が気泡Bである場合を例に挙げて説明する。
図2は、検出のタイミングを例示するための模式グラフ図である。
図2に示すように、圧電部101に所定の電気信号Aを印加すると、液体中に圧力波が生じる。
そして、電気信号Aの印加後においては、可撓性膜103などによる機械系振動、後述する「気泡による圧力波」、液室102aの壁面やノズル部104などに当たることで生じた圧力波などにより、図2中のSに示すような電気信号が受信部でもある圧電部101により検出される。
そのため、気泡Bの有無の検出や気泡Bの大きさの検出は、電気信号Sに基づいて行われることになる。
なお、電気信号Sには「気泡による圧力波」以外の情報も含まれているが、検出部5において、気泡Bが含まれていない場合の電気信号との差を求めることで「気泡による圧力波」以外の情報を除くことができる。
【0023】
まず、気泡Bに関する検出のために、信号発生部2において所定の周波数fを有する電気信号を発生させる。この電気信号は、圧電部101により所定の周波数を有する圧力波を発生させるためのものである。
また、周波数のレンジに応じて複数の信号発生部と、周波数レンジの切換部とが設けられている場合には、適切な周波数を有する電気信号を発生させることができるように周波数レンジの切り換えが行われる。
なお、周波数fに関する詳細は後述する。
【0024】
信号発生部2から出力された電気信号は、切換部3を介して圧電部101に入力される。異物検出装置1の発信部でもある圧電部101は、入力された電気信号を屈曲変位に変換することで圧力波を発生させる。
【0025】
発生した圧力波は、可撓性膜103を介して液室102a内の液体中を伝播し、液室102aの壁面やノズル部104などに当たることで散乱(反射)による圧力波が生じる。 また、気泡Bがある場合には圧力波が気泡Bに当たることで散乱(反射)による圧力波が生じる。さらに、圧力波が気泡Bに当たることで気泡Bに体積変化が生じ、この体積変化に起因する圧力波が生じる。なお、気泡Bに係る散乱による圧力波と、体積変化に起因する圧力波とでは、体積変化に起因する圧力波の方が圧力が桁違いに大きい。
本明細書においては、気泡Bに当たることで生じた散乱による圧力波と、気泡Bの体積変化に起因する圧力波とを併せたものを「気泡による圧力波」と称することにする。
また、「気泡による圧力波」と、液室102aの壁面やノズル部104などに当たることで生じた圧力波と、前述した可撓性膜103などの機械系振動に関するものとを併せたものを「反射波」と称することにする。
そのため、反射波には気泡Bの有無や大きさなどの気泡Bに関する情報が含まれることになる。
発生した反射波は、異物検出装置1の受信部でもある圧電部101に入射し、圧電部101の屈曲変位に応じた電気信号に変換される。
【0026】
反射波に基づく電気信号は、切換部3を介して検出部5に入力する。一方、格納部4からは気泡Bが含まれていない状態に関する情報が電気信号に変換されて提供される。そして、検出部5において反射波に基づく電気信号と、気泡Bが含まれていない場合の電気信号との差を求めることで気泡Bに関する情報が抽出される。
【0027】
検出部5は、抽出された気泡Bに関する情報に基づいて気泡Bの有無を検出する。気泡Bの有無の検出は、例えば、予め定められた閾値などに基づいて行うようにすることができる。また、検出部5は、抽出された気泡Bに関する情報に基づいて気泡Bの大きさを検出することもできる。
【0028】
次に、気泡Bの有無の検出や気泡Bの大きさの検出についてさらに例示をする。
図3は、気泡Bに関する情報の抽出を例示するための模式グラフ図である。
図3(a)は気泡Bがある場合の反射波に基づく電気信号S1と、気泡Bがない場合の反射波に基づく電気信号S2とを例示するための模式グラフ図、図3(b)は気泡Bに関する情報が含まれた電気信号を例示するための模式グラフ図である。
図3(a)に示すように、気泡Bがある場合の反射波に基づく電気信号S1と、気泡Bが含まれていない場合の電気信号S2とでは波形が異なるものとなる。
そのため、気泡Bがある場合の反射波に基づく電気信号S1と気泡Bが含まれていない場合の電気信号S2との差を求めることで、図3(b)に示すように気泡Bに関する情報が含まれた電気信号を抽出することができる。なお、気泡Bが含まれていない場合の反射波に基づく電気信号と、気泡Bが含まれていない場合の電気信号S2とでは波形が同様のものとなるので、両者の差を求めるとほぼ0(零)となる。
このようにして抽出された気泡Bに関する情報と予め定められた閾値などを用いて気泡Bの有無を検出するようにすることができる。
【0029】
図4は、気泡Bの半径寸法と散乱断面積の関係を例示するためのグラフ図である。
横軸は気泡Bの半径寸法、縦軸は散乱断面積σscであり、図中のd1〜d5は液室102aの等価直径寸法を表している。なお、d1は10mm、d2は4mm、d3は3mm、d4は2mm、d5は1mmの場合である。
ここで、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係において、散乱断面積σscが一定の場合であっても、散乱断面積σscに対応する気泡Bの半径寸法が複数存在する場合がある。
例えば、図4に示すように、等価直径寸法がd1の場合に散乱断面積σscを「α」とすると、これに対応する気泡Bの半径寸法が3つ存在することになる。
そのため、この様な場合には、気泡Bの大きさの特定が困難となる。
この場合、気泡Bの大きさを知ることができないので、吐出異常(不吐出の発生、液量の均一性の悪化、着弾精度の悪化など)が発生する大きさに気泡Bが成長する前に、排出動作などを行わせるなどの対処が行えなかった。そのため、吐出異常の発生を未然に防止することができなかった。
【0030】
しかしながら、図4に示すように、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係が線形になる部分においては、散乱断面積σscから気泡Bの半径寸法を求めることができる。 ここで、散乱断面積σscは以下の(1)式により求めることができる。
【数1】


なお、Wscは散乱パワー、Iincは入射強度である。
【0031】
また、散乱パワーWscは以下の(2)式により求めることができる。
【数2】


ここで、ρは液体の密度、cは音速、rは気泡Bまでの距離、Ps(r、t)は気泡Bから放射される圧力である。この場合、Ps(r、t)は空間依存と時間依存とを含むものである。また、〈 〉は、時間平均であることを表している。なお、小さい領域においてはrを液体が収納される要素の圧力伝播方向の寸法とすることができる。例えば、液室102aにおいてはrを液室102aの軸方向寸法(吐出方向の寸法)とすることができる。
【0032】
そして、Ps(r、t)は気泡Bから放射される圧力であるため、図3(b)に例示をした波形がPs(r、t)となる。
すなわち、図3(b)に例示をしたような気泡Bに関する情報が含まれた電気信号を抽出することで、散乱断面積σscを求めて気泡Bの大きさを検出するようにすることができる。
なお、気泡Bに関する情報が含まれた電気信号から散乱断面積σscを演算し、演算された散乱断面積σscから気泡Bの半径寸法を演算することは、検出部5において行うようにすることができる。
【0033】
ここで、散乱断面積σscから気泡Bの半径寸法を演算する場合を例示したがこれに限定されるわけではない。
気泡Bに関する情報が含まれたPs(r、t)を知ることができれば、散乱断面積σscの演算までを行わなくても気泡Bの半径寸法を演算することができる。
すなわち、(2)式の内、気泡Bに関する情報が含まれた部分はPs(r、t)であるため、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係と同様に、気泡Bの半径寸法とPs(r、t)との関係を求めることができる。
そのため、気泡Bに関する情報が含まれた電気信号と、気泡Bが含まれていない状態に関する情報に基づく電気信号と、の差の2乗に基づいて気泡Bの大きさを検出することができることになる。
【0034】
ここで、図4に示すように、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係が線形になる部分と非線形になる部分とが生じる。
また、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係が線形になる部分においては、液室102aの等価直径寸法d1〜d5による影響が小さいことが分かる。
そのため、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係が線形となるように圧電部101を駆動するようにすることが好ましい。
【0035】
この場合、圧電部101の駆動周波数、すなわち、信号発生部2において発生させる電気信号の周波数fを以下の(3)式のようにすれば、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係が線形となるようにすることができる。
【0036】
【数3】


ここで、Roは最大気泡サイズ、Poは液室102a内の液体の平衡圧力、ρは液体の密度、γは比熱比である。
なお、最大気泡サイズRoとは、検出対象とする気泡のうち最も大きさが大きい気泡の半径寸法である。例えば、後述する吐出異常の判定に用いられる閾値に対応する気泡の半径寸法などである。
【0037】
この場合、平衡圧力Poや最大気泡サイズRoは、異物検出装置1が設けられる対象に応じて適宜設定することができる。
そして、例えば、予め実験やシミュレーションなどにより求められた平衡圧力Poや最大気泡サイズRoを用いて、信号発生部2において発生させる電気信号の周波数fを求める。そして、求められた周波数fにより圧電部101を駆動するようにすれば、気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscとの関係を線形とすることができる。そのため、前述した(1)式、(2)式を用いて演算された散乱断面積σscから気泡Bの半径寸法を求めることが容易となる。
すなわち、この様にして求められた周波数fにより圧電部101を駆動するようにすれば、最大気泡サイズRo以下の大きさの気泡Bの半径寸法を求めることができるようになる。
【0038】
また、液室102aの等価直径寸法dを考慮するようにすれば、散乱断面積σscに対応する気泡Bの半径寸法が複数存在しないようにすることができる。
すなわち、散乱断面積σscに対応する気泡Bの半径寸法を1つとすることができるので、誤検出をなくすことができる。
この場合、本発明者の得た知見によれば、以下の(4)式を満足するような周波数fを有する電気信号を信号発生部2において発生させるようにすれば、誤検出の発生をなくすことができる。
【0039】
【数4】


ここで、dは液室102aの等価直径寸法である。
【0040】
なお、以下の(5)式を満足するような等価直径寸法dを有する液室102aが設けられるようにすることもできる。
この場合、液室102aは、異常検出装置1に設けられた液体を収納する収納部の一例に相当することになる。
【数5】


ここで、fは信号発生部2において発生させる周波数である。
【0041】
(3)式や(4)式に示した周波数fに関する情報は信号発生部2に入力され、信号発生部2は入力された周波数fに関する情報に基づいて電気信号を発生させる。
なお、入力された最大気泡サイズRo、液室102a内の液体の平衡圧力Po、液体の密度ρ、比熱比γ、液室102aの等価直径寸法dなどに基づいて周波数fに関する情報を演算する図示しない演算部を設け、演算された周波数fに関する情報を図示しない演算部から信号発生部2に提供させるようにすることもできる。
【0042】
本実施の形態に係る異物検出装置1によれば、気泡Bなどの異物の有無のみならず、高い精度で気泡Bなどの異物の大きさをも検出することができる。
そのため、不具合の未然防止や生産性の向上をさらに高い確度で実現することができる。
【0043】
以上、気泡Bの有無を検出する場合を例示したが、ゴミなどの固体の異物の有無も検出することができる。また、気泡Bの大きさを検出する場合を例示したが、圧力変化により体積変化が生じるような異物の大きさを検出することができる。
【0044】
次に、液滴吐出装置100の作用について例示をする。
信号発生部2において圧電部101により圧力波を発生させるための電気信号を発生させる。この場合、圧電部101に印加する電圧を制御すれば圧電部101の屈曲変位、ひいては吐出量を制御することができる。そのため、信号発生部2において発生させる電気信号は吐出量に応じた電圧変化を有している。
【0045】
信号発生部2から出力された電気信号は、切換部3を介して圧電部101に入力する。圧電部101は、入力された電気信号を屈曲変位に変換することで圧力波を発生させる。発生した圧力波は、可撓性膜103を介して液室102a内の液体に伝えられ、液室102a内の液体がノズル孔104aの方向に向かって加圧される。ノズル孔104aの方向に向かって加圧された液体は、ノズル孔104aから液滴として吐出される。吐出により減少した分の液体は、図示しない流路を介して液室102a内に補充される。
【0046】
そして、例えば、逐次または定期的に前述した気泡Bの有無の検出や大きさの検出が行われる。
また、検出された気泡Bの大きさに基づいて、吐出異常の発生に関する判定が行われる。
この場合、所定の閾値より大きな気泡Bが有る場合には、吐出作業を中断して液室102aから気泡Bを排出させるメンテナンス作業を行うようにすることができる。
また、例えば、気泡Bの大きさが所定の閾値未満の場合には吐出作業を続行し、気泡Bの大きさが所定の閾値以上の場合には吐出作業を中断して液室102aから気泡Bを排出させるメンテナンス作業を行うようにすることができる。
【0047】
本実施の形態に係る液滴吐出装置100によれば、不具合の発生を未然に防止したり、生産性を向上させたりすることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る異物検出装置および液滴吐出装置を例示するための模式図である。
図5に例示をした液滴吐出装置100aも圧電型の液滴吐出装置である。
液滴吐出装置100aには、圧電部101、ノズル本体102、可撓性膜103、ノズル部104、減衰部105、カバー106、異物検出装置1aが設けられている。
本実施の形態においては、圧電部101は液体を吐出させるための加圧源となるが、異物検出装置1aの発信部としての機能をも有している。ただし、前述した液滴吐出装置100とは異なり、異物検出装置1aの受信部としての機能は有していない。
【0049】
異物検出装置1aには、信号発生部2、格納部4、検出部5、受信部6が設けられている。
前述した異物検出装置1の場合には、圧電部101を異物検出装置1の発信部および受信部とし、切換部3により電気信号の切り替えを行うようにしている。
これに対して、異物検出装置1aの場合には、受信部6を別途設けるようにしているので切換部3が不要となる。
【0050】
受信部6は、例えば、圧電部101と同様に圧電材料から形成された部材と駆動電極とを有するものとすることができる。ただし、これに限定されるわけではなく機械的な変位に応じた電気信号を発生させることができるものを適宜選択することができる。
【0051】
異物検出装置1aにおいては、発生した反射波を受信部6により受信し、受信部6により電気信号に変換する。
この反射波に基づく電気信号は、検出部5に入力され、前述したものと同様にして気泡Bの有無や気泡Bの大きさが検出される。
なお、気泡Bの有無の検出や気泡Bの大きさの検出は前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施の形態に係る異物検出装置1aによれば、前述した異物検出装置1と同様の効果を享受することができる。また、切換部3を省略できる点に関して構成の簡素化を図ることができる。
なお、液滴吐出装置100aの作用は、前述した液滴吐出装置100の場合と同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0053】
以上に例示をしたものは、圧電部101と異物検出装置1の発信部および受信部とを兼用とした場合、圧電部101と異物検出装置1aの発信部とを兼用とした場合であるがこれに限定されるわけではない。例えば、圧電部101と異物検出装置の受信部とを兼用とすることもできる。また、圧電部101と異物検出装置の発信部および受信部とをそれぞれ別個に設けるようにすることもできる。なお、サーマル型の液滴吐出装置の場合は、異物検出装置の受信部を設けるようにするだけでもよい。この場合、受信部としては前述したもののような圧電部とすることが好ましい。
【0054】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る異物検出方法について例示する。
図6は、第3の実施形態に係る異物検出方法を例示するためのフローチャートである。 ここでは、一例として、異物が気泡Bである場合を例に挙げて説明する。
まず、所定の周波数fを有する圧力波を液体に導入する(ステップS1)。
この場合、周波数fは(3)式を満足するものとすることができる。またさらに、(4)式をも満足するものとすることができる。
また、周波数のレンジに応じて複数の信号発生部と、周波数レンジの切換部とが設けられている場合には、適切な周波数fを有する電気信号を発生させることができるように周波数レンジの切り換えが行われる。
【0055】
次に、液体からの反射波を電気信号に変換する(ステップS2)。
次に、反射波を変換した電気信号と、気泡Bが含まれていない場合の電気信号との差を求めることで気泡Bに関する情報を抽出する(ステップS3)。
次に、抽出された気泡Bに関する情報に基づいて気泡Bの有無および気泡Bの大きさの少なくともいずれかを求める(ステップS4)。
この際、気泡Bの大きさは前述したものと同様にして求めるようにすることができる。例えば、気泡Bに関する情報が含まれた電気信号と、気泡Bが含まれていない状態に関する情報と、の差の2乗に基づいて異物の大きさを検出するようにすることができる。
また、例えば、(1)式、(2)式により散乱断面積σscを求め、予め求められた気泡Bの半径寸法と散乱断面積σscの関係(例えば、図4を参照)から気泡Bの半径寸法を求めるようにすることができる。
なお、各ステップにおける内容は、前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
また、気泡Bの有無を求める場合を例示したが、ゴミなどの固体の異物の有無も求めることができる。
また、気泡Bの大きさを求める場合を例示したが、圧力変化により体積変化が生じるような異物の大きさを求めることができる。
【0056】
本実施の形態に係る異物検出方法によれば、液室102aなどのような小さな領域であっても気泡Bなどの異物を精度良く検出することができる。また、高い精度で気泡Bなどの異物の大きさを求めることができるので、不具合の未然防止や生産性の向上をさらに高い確度で実現することができる。
【0057】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る液滴吐出方法について例示する。
図6は、第4の実施形態に係る液滴吐出方法を例示するためのフローチャートである。 ここでは、一例として、異物が気泡Bである場合を例に挙げて説明する。
まず、所定の圧力を液体に加え、ノズル孔から液体を液滴として吐出させる(ステップS11)。
次に、前述した異物検出方法を用いて気泡Bの有無および気泡Bの大きさの少なくともいずれかを求める(ステップS12)。
この場合、例えば、逐次または定期的に異物検出方法を実行することができる。
【0058】
所定の閾値より大きな気泡Bが有る場合には、吐出作業を中断して液体中から気泡Bを排出させるメンテナンス作業を行うようにすることができる。
この場合、気泡Bの大きさが所定の閾値未満の場合には吐出作業を続行し、気泡Bの大きさが所定の閾値以上の場合には吐出作業を中断して液体中から気泡Bを排出させるメンテナンス作業を行うようにすることもできる。
本実施の形態に係る液滴吐出方法によれば、不具合の発生を未然に防止したり、生産性を向上させたりすることができる。
【0059】
以上に例示をした実施形態によれば、異物を精度良く検出することができる異物検出装置、異物検出方法、液滴吐出装置、および液滴吐出方法を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0060】
例えば、異物検出装置1、異物検出装置1a、液滴吐出装置100、液滴吐出装置100aなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 異物検出装置、1a 異物検出装置、2 信号発生部、3 切換部、4 格納部、5 検出部、6 受信部、100 液滴吐出装置、100a 液滴吐出装置、101 圧電部、102 ノズル本体、102a 液室、103 可撓性膜、104 ノズル部、B 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を発生させる信号発生部と、
前記電気信号を変換して液体中に圧力波を発生させる発信部と、
前記液体からの反射波を受信して電気信号に変換する受信部と、
前記液体に異物が含まれていない状態に関する情報を格納する格納部と、
前記反射波を変換した電気信号と、前記格納された情報に基づく電気信号と、の差に基づいて前記異物の有無および前記異物の大きさの少なくともいずれかを検出する検出部と、
を備えたことを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記反射波を変換した電気信号と、前記格納された情報に基づく電気信号と、の差の2乗に基づいて前記異物の大きさを検出することを特徴とする請求項1記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記信号発生部は、下記の式を満足する周波数を有した前記電気信号を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載の異物検出装置。
【数6】


ここで、fは周波数、Roは最大気泡サイズ、Poは液体の平衡圧力、ρは液体の密度、γは比熱比である。
【請求項4】
前記液体を収納する収納部をさらに備え、
前記収納部の等価直径寸法が以下の式を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の異物検出装置。
【数7】


ここで、fは周波数、dは収納部の等価直径寸法である。
【請求項5】
液室を有するノズル本体と、
前記ノズル本体に設けられた前記液室内の液体に圧力を加える加圧部と、
前記ノズル本体に設けられたノズル孔を有したノズル部と、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の異物検出装置と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
前記加圧部は、圧電材料を含み、前記異物検出装置に設けられた発信部および受信部の少なくともいずれかと兼用されたことを特徴とする請求項5記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液室の等価直径寸法が以下の式を満足することを特徴とする請求項5または6に記載の液滴吐出装置。
【数8】


ここで、dは液室の等価直径寸法、fは周波数である。
【請求項8】
所定の周波数を有する圧力波を液体に導入する工程と、
前記液体からの反射波を電気信号に変換する工程と、
前記反射波を変換した電気信号と、異物が含まれていない場合の電気信号と、の差を求めることで異物に関する情報を抽出する工程と、
前記抽出された異物に関する情報に基づいて、前記異物の有無および前記異物の大きさの少なくともいずれかを求める工程と、
を備えたことを特徴とする異物検出方法。
【請求項9】
前記異物の大きさを求める場合に、前記反射波を変換した電気信号と、前記異物がない場合の電気信号と、の差の2乗に基づいて前記異物の大きさを求めることを特徴とする請求項8記載の異物検出方法。
【請求項10】
前記圧力波を液体に導入する工程において、下記の式を満足する周波数を有した前記圧力波を液体に導入することを特徴とする請求項8または9に記載の異物検出方法。
【数9】


ここで、fは周波数、Roは最大気泡サイズ、Poは液体の平衡圧力、ρは液体の密度、γは比熱比である。
【請求項11】
前記圧力波を液体に導入する工程において、下記の式を満足する周波数を有した前記圧力波を液体に導入することを特徴とする請求項10記載の異物検出方法。
【数10】


ここで、fは周波数、dは液体が収納された要素の等価直径寸法である。
【請求項12】
所定の圧力を液体に加え、ノズル孔から液体を液滴として吐出させる工程と、
請求項8〜11のいずれか1つに記載の異物検出方法を用いて、異物の有無および異物の大きさの少なくともいずれかを求める工程と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137468(P2012−137468A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39540(P2011−39540)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】