説明

異脂肪血症並びに異脂肪血症および/または肥満症に関連する疾患の予防および治療において有用である医用製品の調製へのピラゾール誘導体の使用

本発明はカンナビノイド受容体CBの拮抗性化合物の、異脂肪血症並びに異脂肪血症および/または肥満に関連する疾患、例えば、メタボリック・シンドローム、心血管性の危険性および肝疾患の予防および治療のための医薬品の調製への使用に関し、該化合物はピラゾールから誘導され、単独で、または他の活性成分と一体に用いられる。
マーからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストであるピラゾール誘導化合物の、異脂肪血症並びに異脂肪血症および/または肥満症に関連する疾患、例えば、特に、メタボリック・シンドローム、並びにさらに、心血管性の危険性および肝臓性の危険性の予防および治療において有用である医用製品の調製への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
異脂肪血症は、トリグリセリドおよびLDL−c(低密度リポタンパク質コレステロール)レベルの上昇、低濃度のHDL−c(高密度リポタンパク質コレステロール)、総コレステロール/HDL−c比の増加、およびLDLの小粒子の存在によって定義される。しばしば肥満個体に存在するこの異脂肪血症は、アテローム生成性プロフィール、すなわちアテローム性疾患の危険性を高めるプロフィールを有することも認められている。
【0003】
肥満は、今日、主要な公衆衛生上の問題の1つであることが認識されている。これは多数の心血管性疾患、特に、動脈硬化、糖尿病、もしくは肝疾患、特に、非アルコール性脂肪肝炎(steatohepatitis)、癌および呼吸器障害と相関し、死亡率の増加に関連する。肥満の体性合併症によって生じる年間コストは、世界保険機構(WHO)により、世界の保健予算の1/3と見積もられている。
【0004】
メタボリック・シンドロームは、異脂肪血症(低HDL−cレベル、高トリグリセリドレベル)、腹囲の増加/肥満を含み、インシュリン耐性(空腹時高血糖)および動脈性高血圧をも含む一組の危険因子を指す。この症候群は全世界を通して数百万の個人を冒し、糖尿病をこの合併症の腎不全および網膜症と共に発症するか、または心血管性疾患、例えば、冠動脈疾患、冠不全、心筋梗塞、狭心症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、脳卒中、血栓症、アテローム性血栓症もしくは緑内障、さもなければ肝疾患、例えば、脂肪変性、非アルコール性脂肪肝炎、もしくは非アルコール性脂肪肝疾患を生じる高い危険性に彼らを晒す。メタボリック・シンドロームのパラメータの各々を改善することにより、特に、異脂肪血症および肥満を構成する要素を予防および治療することにより、危険性のある患者におけるメタボリック・シンドロームの予防および治療は心血管性疾患および2型糖尿病、さもなければ、肝疾患の発生の減少に貢献することができる。
【0005】
メタボリック・シンドロームの統合された世界的な定義は存在せず、これは全米コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program)(NCEP、USA)によってもたらされたものであり、ATP III(成人治療パネルIII(Adult Treatment Panel III))の流れの中で専門家のグループが下記表に列挙される基準を選択している。患者は、彼らが指示される5つの基準:腹囲の増加/肥満、異脂肪血症、動脈性高血圧、高血糖のうちの少なくとも3つを満たすとき、メタボリック・シンドロームを患う。
【0006】
【表1】

【0007】
本発明によると、「カンナビノイド受容体のピラゾール誘導アンタゴニスト」という表現は、欧州特許第656354号に記載されるN−ピペリジノ−5−(4−クロロフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−メチルピラゾール−3−カルボキサミド(この国際共通名はリモナバントである)および欧州特許第1150961号に記載されるN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される化合物を意味しようとするものである。
【0008】
リモナバントを用いて実施された臨床研究は、これが定量的および定性的な観点から食物摂取に対して作用し、肥満患者の体重を低下させることを示している(G. Le Fur, 2003, 35, First European Workshop on Cannabinoid Research, Madrid, Spain, 4−5 April 2003 and Heshmati H.M.ら, Obesity Research, 2001, 9 (suppl. 3), 70)。
【発明の開示】
【0009】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のピラゾール誘導アンタゴニストが(異脂肪血症個体における)血中脂質低下特性を示し、これがメタボリック・シンドロームをこの症候群を示す患者において減少させ、肥満および/または異脂肪血症に関連する心血管性疾患および肝疾患の危険性を低下させることが今や見出されている。
【0010】
したがって、本発明によると、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストであるピラゾール誘導化合物を、異脂肪血症およびメタボリック・シンドロームの予防および治療に有用である医用製品の調製に用いることができ、特に、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストであるこのような化合物を肥満および/または異脂肪血症に関連する心血管性疾患および肝疾患の危険性の治療および予防に用いることができる。
【0011】
「異脂肪血症および/または肥満に関連する心血管性の危険性」という表現は、心血管性疾患、例えば:冠動脈疾患、冠不全、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、狭心症、血栓症、アテローム性血栓症または緑内障を意味することが意図される。
【0012】
「異脂肪血症および/または肥満に関連する肝疾患」という表現は、肝脂肪変性、非アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患を意味することが意図される。
【0013】
本発明による医薬組成物は、有効用量の、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストであるピラゾール誘導化合物、およびさらに、少なくとも1種類の医薬適合性の賦形剤を含有する。
【0014】
該賦形剤は、この医薬形態および所望の投与様式に従い、当業者に公知である通常の賦形剤から選択される。
【0015】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、局部、気管内、鼻内、経皮または直腸投与用の本発明の医薬組成物において、活性主成分は、単位投与形態で、通常の医薬賦形剤との混合物として、動物またはヒトに上記障害または疾患の予防または治療のために投与することができる。
【0016】
適切な単位投与形態には、経口投与用の形態、例えば、錠剤、ソフトもしくはハードゼラチンカプセル、粉末、顆粒および経口溶液もしくは懸濁液、舌下、頬、気管内、眼内もしくは鼻内投与用および吸入による投与用の形態、局所、経皮、皮下、筋肉内もしくは静脈内投与用の形態、直腸投与用の形態、並びに移植片が含まれる。局所塗布については、本発明による化合物をクリーム、ゲル、軟膏またはローションにおいて用いることができる。
【0017】
経口投与用の形態、例えば、ゼラチンカプセルまたは錠剤が好ましい。
【0018】
特に、リモナバントを5から50mg、とりわけ、5から20mgの用量で含有するゼラチンカプセルまたは錠剤が好ましい。
【0019】
本発明による使用には、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイド受容体のピラゾール誘導アンタゴニストを以下の治療薬クラスのうちの1つから選択される他の活性主成分と組み合わせることができる:
−単独または利尿薬と組み合わせた、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、変換酵素阻害剤;
−カルシウムアンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、ベータ−ブロッカー;
−血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤;
−抗糖尿病薬;
−他の抗肥満薬。
【0020】
したがって、本発明の主題は、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のピラゾール誘導アンタゴニスト、並びに以下の治療薬クラス:
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト;
−単独または利尿薬と組み合わせた、変換酵素阻害剤;
−カルシウムアンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、ベータ−ブロッカー;
−血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤;
−抗糖尿病薬;
−他の抗肥満薬。
のうちの1つから選択される他の活性主成分を組み合わせて含有する医薬組成物でもある。
【0021】
「アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト」という表現は、カンデサルタンシレキシチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタンカリウム、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタンまたはバルサルタンのような化合物を意味することが意図され、これらの化合物の各々がこれ自体利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジドと組み合わされることが可能である。
【0022】
「変換酵素阻害剤」という表現は、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリルまたはゾフェノプリルのような化合物を意味することが意図され、これらの化合物の各々がこれ自体利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジドもしくはインダパミド、またはカルシウムアンタゴニスト、例えば、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピンもしくはベラパミルと組み合わされることが可能である。
【0023】
「カルシウムアンタゴニスト」という用語は、アムロジピン、アラニジピン、ベニジピン、ベプリジル、クリニジピン、ジルチアゼム、塩酸エフォニジピンエタノール、ファスジル、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、塩酸レルカニジピン、マニジピン、塩酸ミベフラジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、テロジピンまたはベラパミルのような化合物を意味することが意図される。
【0024】
「ベータ−ブロッカー」という用語は、アセブトロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブニトロロール、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、クロラノロール、エパノロール、エスモロール、インデノロール、ラベタロール、ランジオロール、レボブノロール、レボモプロロール、メピンドロール、メトリプラノール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、ニフェナロール、ニプラジロール、オキシプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、サルメテロール、ソタロール、タリノロール、テルタトロール、チリソロール、チモロール、キサモテロールまたはキシベノロールのような化合物を意味することが意図される。
【0025】
「血中脂質減少剤」または「血中コレステロール減少剤」という表現は、フィブレート、例えば、アルフィブレート、ベクロブレート、ベザフィブレート、シプロフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブレート、エトフィブレート、フェノフィブレート;スタチン(HMG−CoAレダクターゼ阻害剤)、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチンナトリウム、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンもしくはシムバスタチン、またはアシピモクス、ニコチン酸アルミニウム、アザコステロール、コレスチラミン、デクストロチロキシン、メグルトール、ニセリトロール、ニコクロネート、ニコチン酸、ベータ−シトステリンもしくはチアデノールのような化合物から選択される化合物を意味することが意図される。特に、本発明の主題は、リモナバントおよびアトルバスタチンもしくはプラバスタチン、または、好ましくは、リモナバントおよびシムバスタチンを組み合わせて含有する医薬組成物である。
【0026】
「抗糖尿病薬」という用語は、以下のクラスのうちの1つに属する化合物を意味することが意図される:スルホニル尿素、ビグアニジン、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メチグリニド、例えば、アカルボース、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グルボルヌリド、グリシアジド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリブゾール、グリミジン、メタヘキサミド、メトホルミン、ミグリトール、ナテグリニド、ピオグリタゾン、レパグリニド、ロシグリタゾン、トラザミド、トルブタミド、トログリタゾンまたはボグリボース。
【0027】
「他の抗肥満薬」という用語は、アムフェプラモン、ベンフルオレクス、ベンズフェタミン、インダノレクス、マジンドール、メフェノレクス、メタンフェタミン、D−ノルシュードエフェドリンまたはカンナビノイドCB受容体の他のアンタゴニストのような化合物を意味することが意図される。
【0028】
とりわけ、本発明の主題は、リモナバントおよびアンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト、特に、イルベサルタン、ロサルタンまたはバルサルタンを組み合わせて含有する医薬組成物である。特に、本発明の主題は、リモナバントおよびイルベサルタン、またはN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドおよびイルベサルタンを組み合わせて含有する医薬組成物、並びにさらに、リモナバント、イルベサルタンおよびヒドロクロロチアジド、またはN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミド、イルベサルタンおよびヒドロクロロチアジドを組み合わせて含有する医薬組成物である。
【0029】
別の特定の態様によると、本発明の主題は、リモナバントおよびシムバスタチンを組み合わせて含有する医薬組成物である。
【0030】
本発明の別の側面によると、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイド受容体のピラゾール誘導アンタゴニスト、並びに他の組み合わされた活性主成分を、同時に、別々に、または時間軸に沿って展開する様式で投与することができる。
【0031】
「別々の使用」という用語は、各々が別の医薬形態に含まれる、本発明による組成物の2つの化合物の同時投与を意味することが意図される。
【0032】
「時間軸に沿って展開する使用」という表現は、一医薬形態に含まれる本発明による組成物の第1化合物、次いで別の医薬形態に含まれる本発明による組成物の第2化合物の連続投与を意味することが意図される。
【0033】
この「時間軸に沿って展開する使用」の場合、本発明による組成物の第1化合物の投与と本発明による同じ組成物の第2化合物の投与との間で経過する期間は一般には24時間を超えることがない。一方もしくは他方の化合物が、例えば、毎週の投与を許容する医薬形態で提供される場合には、より長くてもよい。
【0034】
本発明による組成物を構成する化合物のうちの1種類のみ、または2種類もしくは、適切であるならば、3種類の化合物の組み合わせのいずれかを含み、上述の様々なタイプの使用において用いることができる医薬形態は、例えば、経口、経鼻、非経口または経皮投与に適するものであり得る。
【0035】
したがって、「別々の使用」および「時間軸に沿って展開する使用」の場合、2つの異なる医薬形態は同じ投与経路を目的とするものであっても異なる投与経路(経口および経皮もしくは経口および経鼻もしくは非経口および経皮等)を目的とするものであってもよい。
【0036】
したがって、本発明は、リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のピラゾール誘導アンタゴニスト、並びに他の活性主成分または、適切であるならば、2種類の組み合わされた活性主成分を含むキットに関し、該キットにおいて、該カンナビノイドCB受容体のピラゾール誘導アンタゴニストおよび該活性主成分または、適切であるならば、2種類の組み合わされた活性主成分は別々の区画内に類似の、または異なる包装で存在し、同時に、別々に、または時間軸に沿って展開する様式で投与しようとするものである。
【実施例1】
【0037】
肥満マウスにおける血中脂質レベルに対するリモナバントの作用
リモナバントでの長期(2ヶ月)処置の効果を肥満が確立されているマウスにおいて研究した。
【0038】
この研究は、正常食または脂肪食のいずれかを与えられているマウスにおいて行った。肥満が脂肪食を与えられているマウスにおいて発症し、5ヶ月後には安定化した。次に、これらのマウスを3群に分割した:
第1群:脂肪食の維持および0.1%のTween 80を含有する水(ビヒクル)中の、10mg/kg/日のリモナバントでの2ヶ月間の経口処置;
第2群:脂肪食の維持およびビヒクル(水+0.1%のTween 80)の投与;
第3群:正常食への復帰およびビヒクル(水+0.1%のTween 80)の投与;
第4群は、開始から正常食およびビヒクルを与えられているマウスからなる。
【0039】
脂肪食の5ヶ月後、マウスは46%の体重増加並びに血中レプチン、インシュリン、グルコースおよび総コレステロールレベルの顕著な増加を示した。
【0040】
これらの肥満マウスについてHDLc(高密度リポタンパク質コレステロール)およびLDLc(低密度脂質コレステロール)レベルを測定したところ、HDLc/LDLc比の減少を伴う、これらのレベルの増加が観察された。
【0041】
リモナバントでの処置の2ヶ月後、第1群におけるマウスの体重は34.5±0.8g、すなわち、正常食に復帰した第3群におけるマウス(33.7±0.6g)と同じ割合で減少した。
【0042】
同様に、リモナバントでの処置の2ヶ月後、第1群におけるマウスはレプチン、インシュリンおよびグルコース血中レベルの減少を示した。同様に、これらのレベルは第3群におけるマウスでも減少した。
【0043】
トリグリセリドおよびコレステロールリポタンパク質についてのアッセイにおいて測定されたデータを下記表に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

表2および3によると、第1群における動物に施されるようなリモナバントでの処置が脂肪食を施された動物(第2群)において観察される高トリグリセリド血症を修正することがわかる。
【0046】
表2および3によると、リモナバントでの処置は総コレステロールレベルを低下させることが可能であるがこれを正常化はしないことがわかる。この同じ処置はLDLcレベルを正常化することが可能であり、この結果はHDLc/LDLc比の増加である。
【0047】
リモナバントでの処置が、マウスが脂肪食を続けながらも、血漿脂質プロフィールの好都合な改変を生じるものと結論付けることができる。具体的には、総コレステロールレベルの低下は緩慢であるものの、この処置は、「保護的」レベルのHDLcを同時に高く維持しながら、トリグリセリドおよびLDLcレベルを正常化し、したがって、HDLc/LDLc比は、これらが脂肪食を施されようと正常食を施されようと、ビヒクル単独で処置された肥満マウスよりもリモナバントでの処置が続く肥満マウスにおいて高い。
【実施例2】
【0048】
処置の4週間後の、脂質パラメータに対するリモナバントの臨床作用
肥満度指数(BMI)が30から40である287名の肥満患者に対して臨床試験を4週間行った。プラセボを2週間与えた後、5、10もしくは20mg/日のリモナバントまたはプラセボが与えられるように患者を無作為化した。
【0049】
処置終了の4週間後に検査来院した。
【0050】
研究の持続期間中、患者は低カロリー食(500kcal/日の不足)に従うように求められた。
【0051】
処置の終了時点で観察された結果を下記表に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
リモナバントで処置された個人における体重の減少に、トリグリセリドの減少、HDLcの増加の傾向が伴うことがわかる。並行して、リモナバントで処置した群内の患者においては個々に血中グルコースレベルが安定したままであるか、または低下するのに対して、プラセボ群内の患者においては血中グルコースレベルが増加する。
【0054】
ATP IIIによって定義されるようにメタボリック・シンドロームの評価において考慮される、肥満患者における、様々な生物学的プラメータに対するリモナバントでの処置の影響を観察した。これは、リモナバントで処置された患者においてメタボリック・シンドロームが改善される傾向を生じる。
【実施例3】
【0055】
処置の12ヶ月後に脂質パラメータおよびメタボリック・シンドロームの罹患率に対するリモナバントの臨床作用
異脂肪血症を患う1036名の肥満個体において12ヶ月間実施されるRio脂質臨床試験は、体重減少、脂質パラメータの改善およびメタボリック・シンドロームの罹患率において、プラセボ製品に対する20mgの用量でのリモナバントの効果を比較する。処置群およびプラセボ群には低カロリー食を施す。
【0056】
20mgの用量のリモナバントで12時間処置された個体は、プラセボ群において観察されるものよりも6.3±0.5kg大きい体重減少を示す(p<0.001)。
【0057】
これと同じ集団において、HDLcレベルの増加はプラセボ群において観察されるものを11.3±1.7%上回る。
【0058】
処置群におけるトリグリセリドレベルの減少はプラセボ群のものを12.2±3.7上回る(p<0.001)。
【0059】
20mgの用量のリモナバントでの処置の年度末での5.8±2.7μg/mlから8.2±4.2μg/mlへのアジポネクチンの増加も注目された。
【0060】
アジポネクチンはインシュリン耐性状態を反映する。このレベルの変動はインシュリン耐性のレベルに反比例する。したがって、本件の場合、アジポネクチンレベルの増加はインシュリン耐性のレベルの低下を示す。
【0061】
最後に、リモナバントで処理した群においては60.2%の患者がメタボリック・シンドロームの特徴を示さなくなったのに対して、プラセボ群においてはこの割合は40.4%であった(p<0.001)。
【0062】
したがって、プラセボ群には処置群と同じ低カロリー食が施されていたため、リモナバントはメタボリック・シンドロームの減少に対する特定の効果を有するものと思われる。
【0063】
したがって、1年間継続する臨床試験において、異脂肪血症のパラメータ、メタボリック・シンドロームを構成する幾つかの因子およびメタボリック・シンドロームこれ自体に対するリモナバントの作用が観察される。
【実施例4】
【0064】
肥満ラットにおける脂肪変性および脂肪肝炎に対するリモナバントの効果
脂肪変性および脂肪肝炎に対するリモナバントの効果を肥満fa/fa Zuckerラットにおいて研究した。
【0065】
レプチン受容体が機能的に不完全である肥満fa/fa Zuckerラットは、高レプチン血症、高インシュリン血症および異脂肪血症に関連する肥満を示し、脂肪肝炎を示す。
【0066】
研究のため、3群を形成する:
−痩身ラット/ビヒクル群:ビヒクル(水および0.1%Tween 80)で処置される痩身Zuckerラット;
−肥満ラット/ビヒクル群:ビヒクル(水および0.1%Tween 80)で処置される肥満fa/fa Zuckerラット;
−肥満ラット/リモナバント群:ビヒクル(水および0.1%Tween 80)中の、30mg/kg/日のリモナバントで2ヶ月間経口処置される肥満fa/fa Zuckerラット。
【0067】
2ヶ月の処置の後、各々のラットについて体重および肝臓の重量を測定し、肝臓中に詰積された脂肪の組織病理学的分析を行う。
【0068】
これらの結果は、肝臓重量/体重比が痩身ラット/ビヒクル群と比較して肥満ラット/ビヒクル群において41%高いことを示す。
【0069】
リモナバントでの肥満fa/faラットの処置は、肥満/ビヒクル群のラットにおいて観察される肝臓重量/体重比の増加を80%低下させ、痩身ラット/ビヒクル群において観察されるものに匹敵する値を有する比に到達させる(表5)。
【0070】
【表5】

【0071】
肝臓内の脂肪過負荷の組織病理学的分析は、肥満ラット/ビヒクル群の肝臓が実質的な脂肪過負荷を見せることを示す。これらのラットのリモナバントでの処置はこの脂肪過負荷の消失を誘導する。肥満ラット/リモナバント群からの脂肪の切片は痩身ラット/ビヒクル群からの肝臓の切片に匹敵する組織学的プロフィールを示す。これらのデータは、リモナバントでの処置が肥満fa/faラットの肝臓における脂肪過負荷、すなわち、肝脂肪変性を大きく減少させることを示す。
【実施例5】
【0072】
肥満ラットにおける血漿脂質レベルに対するリモナバントおよびイルベサルタンの作用
単独の、またはイルベサルタンと組み合わせられているリモナバントの効果を肥満fa/fa Zuckerラットにおいて研究した。この研究のため、7群を形成した:
第1群:ビヒクルで処置される痩身Zuckerラット、
第2群:ビヒクルで処置される肥満fa/fa Zuckerラット、
第3群:1mg/kg/日のリモナバントで処置される肥満fa/fa Zuckerラット、
第4群:経口による3mg/kg/日のリモナバントで処置される肥満fa/fa Zuckerラット、
第5群:経口による3mg/kg/日のイルベサルタンで処置される肥満fa/fa Zuckerラット、
第6群:経口による1mg/kg/日のリモナバントおよび経口による3mg/kg/日のイルベサルタンで処理される肥満fa/fa Zuckerラット、
第7群:経口による3mg/kg/日のリモナバントおよび経口による3mg/kg/日のイルベサルタンで処理される肥満fa/fa Zuckerラット。
【0073】
3ヶ月の処置の後、リモナバント+イルベサルタンの組み合わせは肥満fa/fa Zucker ratsにおける血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルを有意に低下させる。
【0074】
リモナバントとイルベサルタンとの相乗効果が注目される。この組み合わされた2種類の化合物の投与は処置された動物のHDLc/LDLc比を改善する。
【実施例6】
【0075】
医薬組成物
患者に投与するため、リモナバントを医薬組成物中に配合し、これを湿式造粒によって調製する。
【0076】
【表6】

【0077】
これらの錠剤は、好ましくは、適切な賦形剤を用いてコートする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストである化合物の、メタボリック・シンドローム、心血管性の危険性および肝疾患から選択される、肥満および/または異脂肪血症に関連する疾患の治療および予防において有用である医用製品の調製への使用。
【請求項2】
異脂肪血症の予防および治療への、請求項1の使用。
【請求項3】
メタボリック・シンドロームの予防および治療への、請求項1の使用。
【請求項4】
肥満および/または異脂肪血症に関連する心血管性の危険性の予防および治療への、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項5】
肥満および/または異脂肪血症に関連する肝疾患の予防および治療への、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
脂肪変性および/または非アルコール性脂肪肝炎の予防および治療への、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
CB受容体のアンタゴニストを以下の治療薬クラスのうちの1つから選択される他の活性主成分と組み合わせる、請求項1に記載の使用:
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト;
−単独または利尿薬と組み合わせた、変換酵素阻害剤;
−カルシウムアンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、ベータ−ブロッカー;
−血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤;
−抗糖尿病薬;
−他の抗肥満薬。
【請求項8】
カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストがリモナバントである、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
リモナバントを5mgから50mgの用量で用いる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストである化合物、および以下の治療薬クラスのうちの1つから選択される他の活性主成分を組み合わせて含有する医薬組成物:
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト;
−単独または利尿薬と組み合わせた、変換酵素阻害剤;
−カルシウムアンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、ベータ−ブロッカー;
−血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤;
−抗糖尿病薬;
−他の抗肥満薬。
【請求項11】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のアンタゴニストである化合物、および、単独の、または利尿薬と組み合わされている、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニストを組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
リモナバントおよびイルベサルタンを組み合わせて含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
リモナバント、イルベサルタンおよびヒドロクロロチアジドを組み合わせて含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、および、単独の、または利尿薬と組み合わされている、変換酵素阻害剤を組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、およびカルシウムアンタゴニストを組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、および、単独の、または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わされているベータ−ブロッカーを組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項17】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、および血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤を組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項18】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、および抗糖尿病薬を組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項19】
リモナバントおよびシムバスタチンを組み合わせて含有する、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択されるカンナビノイドCB受容体のアンタゴニスト、および他の抗肥満薬を組み合わせて含有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項21】
リモナバントおよびN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミドから選択される、カンナビノイドCB受容体のピラゾール誘導アンタゴニスト、および以下の治療薬クラスのうちの1つ活性主成分から選択される他の活性主成分を含むキット:
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、アンジオテンシンII AT受容体アンタゴニスト;
−単独または利尿薬と組み合わせた、変換酵素阻害剤;
−カルシウムアンタゴニスト;
−単独または利尿薬もしくはカルシウムアンタゴニストと組み合わせた、ベータ−ブロッカー;
−血中脂質減少剤または血中コレステロール減少剤;
−抗糖尿病薬;
−他の抗肥満薬。

【公表番号】特表2007−509113(P2007−509113A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536128(P2006−536128)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002715
【国際公開番号】WO2005/046689
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】