説明

疎水性に変性されたカチオン性ポリマー及び洗浄補助剤としてのそれらの使用。

【課題】疎水性に変性されたカチオン性ポリマー及び洗浄補助剤としてのそれらの使用の提供。
【解決手段】硬い表面のための洗浄組成物であって、
少なくとも以下のモノマー成分:
(I)20ないし99.9質量%の、式(1)
【化1】


(式中、
1及びR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし;
3及びR4は、互いに独立して、水素原子、又は1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシルアルキル基、カルボキシアミドアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表わし;及び
-はアニオンを表わす。)に従う少なくとも1種のカチオン性モノマー;及び、
(II)0.1ないし80質量%の、開始剤の存在下で重合する疎水性不飽和非イオン性モノマー;
所望により、60質量%までの、モノマー(I)及びモノマー(II)と異なる水溶性モノマー(III);及び、
所望により、0ないし10質量%の量の架橋剤である反応成分(IV)、
から誘導される主鎖を含むポリマー状化合物を含む洗浄組成物は、改善された汚れ除去性、抗菌性及び生物膜抑制性並びに再汚れ及びしみに対する耐性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性基、特にジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)及び同様の部分から誘導されたものを含む疎水性に変性されたポリマーの製造、及び、前記ポリマーで処理した表面上に改善された汚れ除去性、後の汚れ及びしみに対する耐性及び細菌成長の抑制を与える硬い表面用洗浄配合物における該ポリマーの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内の硬い表面からの除去が困難な汚れに対する効果的な洗浄物に関して、強い消費者ニーズがある。これらの汚れは、風呂垢、頑固な水垢、さび、油汚れ、泥、台所の汚れ、トイレのしみ、多くの他の汚れを含み得る。
【0003】
更に、抗菌性を与える物質、即ち、特に病原性のグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して、及びまた、酵母及びかびに対して顕著な抗菌作用を示す物質に関する強いニーズがある。このような抗菌剤は、表面材料に抗菌性を与えるために又は使用前に硬い表面を殺菌するために使用され得る。
【0004】
消費者製品において使用される抗菌性物質は、毒性学的に許容可能であり、かつ肌に刺激及び感作を生じさせない物質であることが重要である。それらはまた、環境に優しく、かつ使用後に容易に生物分解する必要がある。細菌の致死又は成長抑制において使用される抗菌剤は抗生物質に対する細菌の耐性を誘発すべきではないという意識も高まっている。
【0005】
より効果的な洗浄剤を製造する一つの試みは、表面吸着によって、洗浄プロセス中に基材の表面を変性し得る物質中にポリマーを配合することである。後の変性された表面上に付着する汚れは、該表面の変性された性質のためにより除去し易い。汚れの除去を強化する実際の機構は、一般に、1)変性された表面性質により減少した汚れの付着性;2)汚れが膜と伴に洗い流されるところの犠牲膜型の機構;又は3)汚れを乾燥させず、それらの除去をより容易にする表面上の吸水率の増加によってもたらされると考えられている。他の機構も存在し得る。
【0006】
欧州特許出願公開第467,472A2号明細書は、固体表面を変性してより容易な洗浄性を与えるための、四級化アンモニウムアルキルメタクリレートポリマー及びそのコポリマーの使用を開示する。米国特許第6,025,314号明細書は、改善されたタンパク性の汚れ除去特性を与えるアンモニウムアルキルアクリルアミドポリマー又はコポリマーからなる食器洗い用リンス補助組成物を記載する。
【0007】
米国特許第6,664,218号明細書は、両性イオン性界面活性剤及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸コポリマーを含む硬い表面用洗浄組成物を開示する。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0203825号明細書は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド/アクリル酸コポリマーも含む洗浄又はすすぎ用組成物を使用した自動食器洗い機における汚れの再付着を減少又は防止するための方法を記載する。
【0009】
国際公開第03/070866号パンフレットは、様々なカチオン性物質、好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリドからなるモノマー単位を有するポリマーを含む硬い表面のための防汚洗剤を請求する。米国特許出願公開第2003/0216281号明細書は、カチオン性モノマーとアニオン性の親水性基又は非荷電の親水性基の両方を有するコポリマーを含む硬い表面のための液体洗浄組成物を記載する。
【0010】
国際公開第04/056888号パンフレットは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと疎水性コモノマーのコポリマーの合成、及び繊維からの色流れ及び/又は染料移動を防止するための洗濯用添加剤としてのそれらの使用を記載する。前記コポリマーは、汚れを防止するために、家庭内又は他の屋内の硬い表面、例えば、食器洗い用途において食器を処理するために使用される配合物中においても使用され得ると考えられるが、これは例示されていない。
【0011】
これらの刊行物はいずれも、本願明細書に記載するような硬い表面の洗浄用途における使用のための、ジアリルジメチルアンモニウムと疎水性コモノマーのコポリマーの使用を記載していない。しかしながら、このような物質は、それらのカチオン電荷及び疎水性の組み合わせにより、硬い表面に結合し、該表面を変性させる珍しい能力を有することが発見された。洗浄配合物中に配合された場合、これらの性質は、該配合物に独特の汚れ除去性を与える。
【特許文献1】欧州特許出願公開第467,472A2号明細書
【特許文献2】米国特許第6,025,314号明細書
【特許文献3】米国特許第6,664,218号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0203825号明細書
【特許文献5】国際公開第03/070866号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0216281号明細書
【特許文献7】国際公開第04/056888号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一つの目的は、カチオン性基、特にDADMAC部分を含む疎水性に変性されたポリマーを含む硬い表面用の洗浄配合物を提供することにある。他の目的は、改善された汚れ除去性並びに汚れ及びしみに対する耐性を与える硬い表面用の洗浄配合物における該ポリマーの使用方法を提供することにある。このような表面の例は、セラミックタイル、石材、ガラス、セメント、コンクリート、レンガ、石膏(例えば、壁)、大理石及び石造様物;石、大理石又はプラスチック製調理台、及び木材、積層板又は有機又は無機材料製の他の種類の床を含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
疎水性基及びカチオン性基を有するポリマーは、基材に対するポリマーの本質性を強化し、それによって表面の変性性能及び後の汚れ除去性能を改善することができると考えられている。同時に、これらのポリマーは、適度な水溶性/分散性を有し、そのため、液体の硬い表面用洗浄配合物中に容易に配合され得る。
【0014】
本発明の他の目的は、微生物の成長及び増殖及び/又は生物膜(biofilm)の形成(後者は、しばしば、ヒトに関係のある基材上に、一般の抗菌物質の使用によって抑制できない多量の微生物の蓄積からもたらされる。)の防止に役立ち得る洗浄製品又は物質を提供することにある。このような生物の耐性膜は、ポリマー状物質が基材上に病原菌耐性膜をつくることによって基材に所望の抗菌性を与え得るような、ポリマー状物質であり得ることが予想され得る。このような効果の作用機構は、慣用的に記載される抑制、致死、排除、即ち、慣用の抗菌物質によってもたらされるような静菌効果又は殺菌効果よりむ
しろ、関係のある微生物の付着、接着、成長、蓄積及び増殖に適さない表面をつくることによってもたらされ得る。ポリマー状膜はまた、肌、つめ及び毛髪等の生体基質に対するバイオ浸透性に関して、及びまた、しばしば、水中環境で見られる微生物に対して対象物質の望ましくない抗菌効果がもたらす、環境に対する生態毒性に関してわずかな危険性しか有さない。更に、このようなポリマー状物質は、あらゆる有害な物質の放出制限に関して、優れ得ることが予想され得る。
【0015】
それ故、本願明細書で弱抗菌性微生物抑制剤として記載されるこのような物質は、多くの用途並びに環境に優しい解決法の提供に関して有意義なものであり得る。
【0016】
本発明は、硬い表面のための表面保護剤及び洗浄組成物であって、
少なくとも以下のモノマー成分:
(I)20ないし99.9質量%、好ましくは50ないし99質量%の、式(1)
【化1】

(式中、
1及びR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし;
3及びR4は、互いに独立して、水素原子、又は1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシルアルキル基、カルボキシアミドアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表わし;及び
-はアニオンを表わす。)に従う少なくとも1種のカチオン性モノマー;及び、
(II)0.1ないし80質量%の、開始剤の存在下で重合する疎水性不飽和非イオン性モノマー;
所望により、60質量%までの、モノマー(I)及びモノマー(II)と異なる水溶性モノマー(III);及び、
所望により、0ないし10質量%の量の架橋剤である反応成分(IV)、
から誘導される主鎖を含むポリマー状化合物を含む表面保護剤及び洗浄組成物に向けられる。
【0017】
本発明はまた、後の汚れ又は細菌汚染から硬い表面を洗浄及び保護するための方法であって、表面を有効洗浄量の、上記で定義した式(I)で表わされるポリマー状化合物を含む硬い表面用洗浄配合物と接触させることからなる方法に向けられる。
【0018】
疎水性基及びカチオン性基を有する本発明において有用なポリマーは、活性剤の存在下において、(I)20ないし99.9質量%、好ましくは50ないし99質量%、特に80ないし96質量%の、式(1)
【化2】

(式中、
1及びR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表
わし;
3及びR4は、互いに独立して、水素原子、又は1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシルアルキル基、カルボキシアミドアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表わし;及び
-はアニオンを表わす。)に従う少なくとも1種のカチオン性モノマー、
(II)0.1ないし80質量%、好ましくは1ないし50質量%、特に4ないし20質量%の、開始剤の存在下で重合する疎水性不飽和非イオン性モノマー、
所望により、60質量%までの、好ましくは20質量%までのモノマー(I)及びモノマー(II)と異なる水溶性モノマー(III);及び、
所望により、0ないし10質量%、好ましくは0ないし2質量%の量の架橋剤である反応成分(IV)を含む重合混合物から製造され得る。このような化合物のいくつかは、国際公開第2004/056888A2号パンフレットから既知である。
【0019】
疎水性モノマー(II)は、室温かつpH7において、好ましくは約50g/水100g未満、より好ましくは5g/水100g未満の水溶性の値を有する。
【0020】
好ましいカチオン性モノマー(I)の例は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムスルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムホスフェート、ジメタリルジメチルアンモニウムクロリド、ジエチルアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジ(β−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、及びジアリルジ(β−エトキシエチル)アンモニウムクロリドを含む。最も好ましいカチオン性モノマーはDADMACである。好ましくは、重合混合物は、50ないし99質量%、特に80ないし98質量%の式(I)に従う少なくとも1種のカチオン性モノマーを含む。
【0021】
疎水性モノマー(II)の例は、制限なしに、選択されたビニル化合物及び(メタ)アクリレートベースの化合物、及び(メタ)アクリルニトリル及び不飽和多官能価酸のエステルのような他の不飽和化合物を含む。
【0022】
モノマー(II)のための適当なビニル化合物の例は、これに限定されないが、スチレン;ビニルアセテート及びビニルブチレートのような炭素原子数2ないし18のカルボン酸のビニルエステル;N−ビニルアセトアミドのような炭素原子数2ないし18のカルボン酸のN−ビニルアミド等を含む。
【0023】
モノマー(II)として適当な(メタ)アクリレートベースの化合物は、これに限定されないが、(メタ)アクリル酸のエステル、及び(メタ)アクリル酸のアミドを含む。
【0024】
(メタ)アクリル酸のエステル又は(メタ)アクリレートは、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレートのような長鎖−及び短鎖のアルキル(メタ)アクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、特に、ブトキシエチルアクリレート及びエトキシエトキシエチルアクリレートのような炭素原子数1ないし4のアルコキシ炭素原子数1ないし4のアルキル(メタ)アク
リレート;アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、特に、フェノキシエチルアクリレート(例えばアゲフレックス(登録商標:Ageflex)、チバ スペシャルティ
ケミカルズ社))のようなアリールオキシ炭素原子数1ないし4のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ボルニルアクリレート、イソボルニルアクリレート(例えばアゲフレックス(登録商標:Ageflex)IBOA、チバ スペシャルティ ケミカルズ社)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えばSR285、サートマーカンパニー社(Sartmer Company Inc.)、カプロラクトンアクリレート(例えばSR495、サートマーカンパニー社)及びアクリロイルモルホリンのような単環及び多環の芳香族又は非芳香族アクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレートのようなアルコールベースの(メタ)アクリレート、及びエトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレートのような様々なアルコキシル化アルキルフェノールアクリレート(例えば、フォトマー(Photomer)4003、ヘンケル社(Henkel Corp.);ジアセトンアクリルアミド、イソブトキシメチルアクリルアミド及び第三オクチルアクリルアミドのような(メタ)アクリル酸のアミド;及びマレイン酸エステル及びフマル酸エステルのような多官能不飽和酸のエステルを含む。
【0025】
上記の長鎖及び短鎖アルキルアクリレートに関して、短鎖のアルキルアクリレートは、6個又はそれ以下の炭素原子数を有するアルキル基であり、そして長鎖のアルキルアクリレートは、7個又はそれ以上の炭素原子数を有するアルキル基である。最も適当なモノマーは、商業上入手可能であるか、又は当業者に既知である反応スキームを使用して容易に合成される。例えば、上記モノマーの殆どは、適当なアルコール又はアミドをアクリル酸又はアクリロイルクロリドと反応させることにより合成され得る。
【0026】
モノマー(II)としての使用のための好ましい化合物の特別な例は、式(B)
【化3】

[式中、
5はH又はCH3を表わし、
6は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数1ないし12のアルキル基又は炭素原子数1ないし12のアルコキシ基によって1回ないし3回置換され得る炭素原子数1ないし6のアルキルフェニル基、酸素原子によって1回以上中断された炭素原子数1ないし6のアルキルフェニル基(ここで、フェニル基は、炭素原子数1ないし12のアルキル基又は炭素原子数1ないし12のアルコキシ基によって1ないし3回置換され得る。)又は炭素原子数1ないし6のアルキルヒドロキシ基を表わし;
Xは、−O−、−NH−及び−NR−(式中、Rは炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択される二価の基を表わす。]によって例示される。
【0027】
特に好ましい化合物は、
【化4】

(式中、R5及びXは上記で定義した通りであり、nは1ないし5、好ましくは2又は3の数を表わす。)によって例示される。
【0028】
重合混合物は、所望によりモノマー(I)及びモノマー(II)と異なる重合性モノマーである水溶性モノマー(III)を更に含む。水溶性モノマー(III)は、室温かつpH7において好ましくは50g/水100gより大きい水溶性の値を有する。
【0029】
水溶性モノマー(III)は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性であり得る。モノマー(III)の例は、ビニルアミン、ビニルホルムアミド、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ジメチルシクロキサンのビニル誘導体、アミノシクロキサン及び他の誘導体、種々のビニルフルオロカーボン、2−ヒドロキシエチル−アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−アクリレート及び2−ヒドロキシブチル−アクリレートのようなヒドロキシアルキルアクリレート;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート及び7−アミノー3,7−ジメチルオクチルアクリレートのようなアミノアルキルアクリレート、及びそれらのアルキル及びベンジル四級化塩を含むそれらの塩;(メタ)アクリル酸及びその塩;及び、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩を含む。
【0030】
重合混合物は、0ないし10質量%の量で、架橋剤である反応成分(IV)を更に所望により含む。適当な架橋剤の好ましい例は、メチレンビスアクリルアミド、ペンタエリトリトールジ−、トリ−、及びテトラ−アクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレートを含む。
【0031】
より一般的には、適当な架橋剤は多官能性エチレン性不飽和モノマーである。該モノマーは、制限なく、2以上の、好ましくは2ないし約30の範囲でエトキシ化されたエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート[例えば、サートーマー カンパニー社(Sartomer Company,Inc.)(West Chester,Pa)から入手可能なSR349及びSR601、及び、ヘンケル社(Henkel Corp.),Ambler,Pa.から入手可能なフォトマー(Photomer)4025及びフォトマー4028]、及び、2以上、好ましくは2ないし約30の範囲でプロポキシ化されたプロポキシ化ビスフェノールAジアクリレートのようなアルコキシ化ビスフェノールAジアクリレート;
3以上、好ましくは3ないし約30の範囲でエトキシ化されたエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、フォトマー4149,ヘンケル社,及びSR499、サートマー カンパニー社)、3以上、好ましくは3ないし30の範囲でプロポキシ化されたプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、フォトマー4072,ヘンケル社、及びSR492,サートマー社)、及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、フォトマー4355,ヘンケル社)のような、アルコキシ化されたか又はされていないトリメチロールプロパンポリアクリレート;
3以上でプロポキシ化されたプロポキシ化グリセリルトリアクリレートのようなアルコキシ化グリセリルトリアクリレート(例えば、フォトマー4096,ヘンケル社、及びSR9020、サートマー社);ペンタエリトリトールテトラアクリレート(例えば、サートマー カンパニー社(West Chester,Pa.)から入手可能なSR295)、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラアクリレート(例えば、SR494,サートマー カンパニー社)、及びジペンタエリトリトールペンタアクリレート(例えば、フォトマー4399,ヘンケル社、及びSR399, サートマー カンパニー社)のようなアルコキシ化されたか又はされていないペンタエリトリトールポリアクリレート;
トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(例えば、SR368,サートマー カンパニー社)及びトリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレートのような、適当な官能性イソシアヌレートをアクリル酸又はアクリロイルクロリドと反応させることにより形成されるイソシアヌレートポリアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例えば、CD406, サートマー カンパニー社)及び
2以上、好ましくは約2ないし30の範囲でエトキシ化されたエトキシ化ポリエチレングリコールジアクリレートのような、アルコキシ化されたか又はされていないポリオールポリアクリレート;アクリレートをビスフェノールAジグリシジルエーテル等に添加することにより形成されるヒドロキシアクリレート(例えば、フォトマー3016,ヘンケル社);及びジシクロペンタジエンジアクリレート及びジシクロペンタンジアクリレートのような単一及び多環式芳香族又は非芳香族ポリアクリレート、を含む。
【0032】
本発明のポリマーの製造は、溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、逆エマルジョン、及び/又はバルク重合のような種々の重合技術、並びに当業者に利用可能な他の技術を使用して行われ得る。重合は明らかに種々の濃度の種々の開始剤を使用して又は使用せずに行われ得る。コポリマー又はターポリマーはまた、ニトロキシルエーテル又は他の種類のニトロキシルラジカルのような重合調節剤の使用により又は使用せずに、ポリマーの構造がブロック、交互又はコアシェルとなるような方法で調製され得る。
【0033】
本発明のポリマーを製造するための好ましい方法は、水溶性開始剤を使用した水性重合によるものである。適当な開始剤の例は、アンモニウムパースルフェート(APS)のようなパースルフェート;過酸化水素、第三ブチルヒドロパーオキシド、及び第三ブチルパーオキシピバレートのようなパーオキシド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ基開始剤;及び第三ブチルヒドロパーオキシド/Fe(II)及びアンモニウムパースルフェート/ビスルファイトのような酸化還元開始剤系を含む。
【0034】
アンモニウムパースルフェート(APS)を使用した水性溶液重合は、好ましいカチオン性DADMACモノマーを有するポリマーを調製するための好ましい方法である。重合プロセスにおいて使用される遊離ラジカル開始剤の量は、総モノマー濃度及び使用されたモノマーの型に依存し、そして99%以上の総モノマー転換率を達成するためには総モノマー使用量の約0.2ないし約5.0質量%の範囲であり得る。
【0035】
疎水性モノマー(II)は、少なくとも部分的に、水相で溶解し、及びカチオン性基及び疎水性基を有するポリマーを形成するために好ましいカチオンモノマーDADMACと共重合される。疎水性のモノマー(II)が、その水溶性より高い量で前記重合系に添加される場合、その過剰量は、十分に攪拌が与えられる場合に微細な液滴の第二相を形成し得る。この重合機構に拘束されずに、前記モノマー(II)の液滴は、モノマー(II)を水相に与えるためのモノマー貯蔵所として役立ち得る。
【0036】
水溶性開始剤が使用される場合、モノマー(I)と疎水性のモノマー(II)の溶解部分の共重合は、水相において開始される。こうして形成された疎水的に変性されたポリマーは、疎水性又は水溶性及び使用されたモノマー(II)の濃度に依存して水に溶解性であってもなくてもよい。生じたポリマーは、界面活性剤特性を有し得、及び半透明の外観を与えるコロイド状態において生じ得る。
【0037】
所要量のモノマー(II)は、初めに徐々に全て添加され得るか、又は反応物に継続的に供給することにより添加され得る。疎水性モノマー(II)の水性反応溶媒体への継続的供給は、ホモポリマー又は巨大ホモポリマー状セグメントのより少ない形成にて疎水的に変性されたコポリマーを製造する利点を有し得る。
【0038】
酸素の不在下で重合を実行することが好ましい。酸素は、攪拌しながら真空を適用することにより、或いは窒素又はアルゴンのような不活性ガスを用いてパージすることにより、反応媒体から除去され得る。重合はその後、不活性ガスの雰囲気下で行われ得る。
【0039】
製造されたポリマーの分子量は、千から数百万までの範囲であり得る。例えばそれらは、GPCで測定すると1000ないし5百万ダルトンの範囲の平均分子量を有する。
【0040】
ポリマーは種々の形態、すなわち溶液、分散液、懸濁液、顆粒、粉体、ビーズ、ブロック等の形態で生じ得る。溶液、分散液、懸濁液等のような液体形態の場合、液体相は、水性及び/又は大豆油、エステル及び鉱油のような非水性であり得る。
【0041】
本発明に使用されるポリマーは、当業者に既知のあらゆる種類の洗浄配合物中に配合され得る。ポリマーは、0.01質量%ないし20質量%、好ましくは0.05質量%ないし5質量%、より好ましくは0.1質量%ないし2質量%の範囲の量で洗浄配合物中に存在し得る。洗浄配合物はまた、水、界面活性剤、溶媒、ビルダー、増粘剤、染料、香料、塩、ヒドロトロープ、殺生物剤、殺菌剤等も含み得る。洗浄配合物はまた、他の種類の汚れ除去ポリマー、着色剤、防腐剤、抗菌剤、蛍光増白剤、UV吸収剤、光制御剤、イオン化剤、消泡剤、酵素、漂白剤、酸化触媒、ゼオライト、及び/又はシクロデキストリン及びその誘導体を含むがそれらに限定されない臭気抑制剤、又はこれらの混合物も含み得る。
【0042】
表面洗浄配合物に使用される界面活性剤は、典型的には水溶性又は水分散性である。界面活性剤は従来技術でよく知られている。
【0043】
本発明において使用される界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性又は両性イオン性界面活性剤であり得る1種以上の界面活性剤から選択され得る。本発明において最も好ましいものは、カチオン性のポリマーが特定のアニオン性界面活性剤と非相溶性であり得るため、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤である。
【0044】
本発明において使用され得る非イオン性の界面活性剤は、エトキシ化及びプロポキシ化アルコール並びにエトキシ化及びプロポキシ化アルキルフェノールを含むアルコキシ化アルコールを含むが、これに限定されない。他の種類は、ソルビタン脂肪エステル及び不飽
和アルコールの脂肪酸を含む。
【0045】
他の種類の非イオン性界面活性剤は、約6ないし30個の炭素原子、好ましくは約10ないし16個の炭素原子を含む疎水性基並びにポリグリコシド等のポリサッカリド、親水性基を有する米国特許第4,565,647号明細書に開示されたアルキルポリサッカリドを含む。
【0046】
他の種類の適当な界面活性剤は、本発明に従う硬い表面用洗浄組成物中における使用のための特定のモノ−長鎖−アルキルカチオン性界面活性剤を含む。この種のカチオン性界面活性剤は、一般式R10203040+-(式中、R基は長鎖又は短鎖炭化水素鎖、典型的にはアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はエトキシ化アルキル基を表わし、Xは対イオンを表わす。)で表される四級アンモニウム塩(例えば、R10が炭素原子数8ないし22のアルキル基、好ましくは炭素原子数8ないし10又は炭素原子数12ないし14のアルキル基を表わし、R20がメチル基を表わし、及び同じであるか又は異なっていてもよいR30及びR40がメチル基又はヒドロキシエチル基を表わすところの化合物。);及びカチオンエステル(例えば、コリンエステル)を含む。Xは、好ましくは、ハロゲン化物対イオン、例えばクロリド又はブロミドを表わす。
【0047】
洗浄配合物は、すぐに使用可能な(ready−to−use)スプレー、液体又はペーストとして、表面上に直接適用され得、その後、ペーパータオル、スポンジ、布、モップ又は他の適当なふき取り用具を使用してふかれる。さもなくば、組成物はまず、ふき取り用具に適用され、その後、表面に適用され得る。組成物はまた、水で希釈して、最終洗浄組成物とし得る固体又は液体濃縮物である希釈可能な形態においても供給され得る。例えば、それは希釈可能な粉末状又は粒状配合物、又は錠剤、ポーチ又はサシェットの形態であり得る。
【0048】
組成物は、再利用可能な又は使い捨てのふき取り繊維(wipe)又はパッドに添加され得、その後、表面をふくことによって処理するために使用される。組成物は、ふき取り繊維又はパッド中、又は、ふき取り繊維又はパッド上に吸着させられる、即ち、ふき取り繊維又はパッドは水性の洗浄組成物を含浸させられる。該ふき取り繊維は、天然又は合成繊維、例えばセルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、織布又は不織布繊維、又は当業者に既知のふき取り布を製造するために適当なあらゆる他の材料又は材料の組み合わせから構成され得る。該ふき取り布は、典型的には、不織布の材料から構成される。
【0049】
ポリオレフィンは、例えばポリプロピレン又はポリプロピレンコポリマー又はブレンドである。セルロースは、セルロースベースのものを意味する。
【0050】
洗浄配合物中にポリマーを含む組成物は、典型的には、3ないし12、好ましくは4ないし11のpHを示し得る。
【0051】
本発明は、更に、硬い表面を洗浄するための方法であって、表面を有効量の本発明に従う洗浄配合物と接触させることからなる方法に関する。前記の硬い表面を洗浄するための方法は、改善された汚れ除去性並びに汚れ、しみ及び細菌汚染に対する耐性を与える。
【0052】
該方法の一つにおいて、本発明に従う洗浄配合物は、汚れた硬い表面上に噴霧される。その後、ぬれた表面をペーパータオル又は他の適当な適用用具を使用して、きれいにふき取る。この最初の洗浄プロセスは、本発明のポリマーが硬い表面上に付着し、目に見えない膜の形成をもたらし得る。後の表面の再汚れ後、汚れは、本発明に従った洗浄配合物を最初の洗浄工程において使用しなかった場合よりも、より容易に除去され得る。表面はまた、本発明に従った洗浄配合物によってもたらされたより簡単な洗浄性が、一般に、汚れ
が表面に付着するのを防止する傾向にあり得るため、未処理の表面よりもより長くきれいなままである。このような処理した表面はまた、ポリマー組成物で処理されなかった同様の表面と比べて細菌の成長に対して耐性を有し得る。
【0053】
別の適用方法において、本発明の洗浄配合物は、目に見えない膜として、ポリマーを表面に付着する前処理段階として、きれいな表面に適用され得る。表面はまた、本発明の洗浄組成物で処理しなかった同様の表面と比べて、汚れ及び細菌汚染に対して耐性を有し得、かつ後の段階において、より容易に洗浄され得る。それ故、本発明は、更に、汚れに対する耐性及び後の汚れ除去の容易さが改善されるところの、硬い表面を処理する方法であって、前記硬い表面を有効量の本発明に従った配合物と接触させることからなる方法に関する。
【0054】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。開示された態様に対する多くの変更が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本願明細書の開示に従って為され得ることが理解されるべきである。それ故、これらの実施例は、本発明の範囲を制限することを意味していない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらと同様のものによってのみ決定されるべきである。これらの実施例において、特に記載がない限りは、全ての部は質量部である。
【0055】
生物膜抑制及び以下の実施例7及び8で使用した抗付着性試験方法に関する全ての記載は、Bechert T,et al,Nature Medicine(2000),Vol.6,No.9,1053−6頁中に見られ得る。
【実施例】
【0056】
実施例1
コンデンサー、温度計、窒素注入口、及びオーバーヘッド攪拌器付きの1リトットル反応器に、水中の66%モノマーDADMAC453.8g、メチルメタアクリレート(MMA)15.8g、脱イオン水57.40g及び20%Na4EDTA溶液0.15gを
入れた。重合混合物を窒素によりパージし、及び90℃の温度にまで攪拌しながら加熱した。アンモニウムパースルフェート(APS)5.1gを含む水性溶液を、190分かけて反応器にゆっくりと供給した。反応温度を100℃より高い温度にまで上げ、そしてその後、APS供給時間の間、還流温度(100ないし110℃)にて維持した。APS供給後、反応温度を95℃まで低下させ、及び約30分間保持した。その後ナトリウムメタビスルフィット(MBS)5.6gを含む水性溶液を30分間かけて添加した。反応器の内容物をさらに30分間95℃にて保持して、重合を完了させた(99%以上の転換率)。ポリマー溶液を、約35%固形分まで十分な水を用いて希釈し、及び室温まで冷却した。総モノマー転換率は99.5%超と測定された。最終生成物は、25℃にて23,400cpsのブルックフィールド粘度(12rpmでブルックフィールドLV4スピンドルを使用)及び33.7%のポリマー固形分を有していた。
【0057】
実施例2
コンデンサー、温度計、窒素注入口、及びオーバーヘッド攪拌器付きの1リトットル反応器に、66%モノマーDADMAC453.8g、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート(ENPA)15.8g、脱イオン水57.40g及び20%Na4EDTA溶液0.15gを入れた。重合混合物を窒素によりパージし、及び90℃の温度にまで攪拌しながら加熱した。アンモニウムパースルフェート(APS)5.1gを含む水性溶液を、190分かけて反応器にゆっくりと供給した。反応温度を100℃より高い温度にまで上げ、そしてその後、APS供給時間の間、還流温度(100ないし110℃)にて維持した。APS供給後、反応温度を95℃まで低下させ、及び約30分間保持した。その後ナトリウムメタビスルフィット(MBS)5.6gを含む水性溶液を30分間かけて添加し
た。反応器の内容物をさらに30分間95℃にて保持して、重合を完了させた(99%以上の転換率)。ポリマー溶液を、約35%固形分まで十分な水を用いて希釈し、及び室温まで冷却した。総モノマー転換率は99.5%超と測定された。最終生成物は、25℃にて15,700cpsのブルックフィールド粘度(12rpmでブルックフィールドLV4スピンドルを使用)及び33.7%のポリマー固形分を有していた。
【0058】
実施例3
この実施例は、連続供給による疎水性モノマーIIの添加を示す。重合手順は、APS開始剤供給を開始したときに15.8gの量のメチルメタアクリレートを約45分間かけて反応器に供給したことを除き、実施例1と同様である。ポリマー溶液を、約35%固形分まで十分な水を用いて希釈し、及び室温まで冷却した。総モノマー転換率は99.5%超と測定された。最終生成物は、25℃にて19,500cpsのブルックフィールド粘度(12rpmでブルックフィールドLV4スピンドルを使用)及び35%のポリマー固形分を有していた。最終ポリマー生成物は、実施例1の生成物のエマルジョンの外観と比較して透明であった。
以下で試験した全てのポリマーは、特に記載がない限りは、実施例1及び2に記載した製造方法と同様の方法を用いて製造した。
【0059】
実施例4:適用
以下の表に記載された各ポリマーにおいて、0.5質量%のポリマー溶液を、脱イオン水を用いて製造した。ポリマー溶液2mLを折り畳んだペーパータオルに添加した;その後、処理したタオルで8×8(インチ)のセラミックタイルの半面を30秒間ふき、該セラミックタイル表面部分を完全に湿潤させた。タイルのもう半面は対照として未処理のままとした。その後、セラミックタイルを、脱イオン水の流水下で30秒間すすぎ;その後、空気乾燥させた。
その後、全てのタイルを、プレバルスプレイーヤー(Preval Sprayer)を使用してタイル面上に2つの溶液を順次噴霧することによって製造した模擬風呂あかで汚した。1つ目の溶液は脱イオン水中塩化カルシウム2.5%の溶液であり、2つ目の溶液は脱イオン水中にオレイン酸カリウム4%、ステアリン酸ナトリウム0.5%及びメチレンブルー0.1%を含む溶液である。15分間の空気乾燥後、噴霧したタイルを85℃において1時間焼付けた。
その後、汚れたタイルを、脱イオン水で湿潤させ、少しの湿り気まで圧縮乾燥させた2つのスポンジを備えたガードナー ウォッシュビリティー アンド ウェアーテスター(D10V型)を使用して洗浄した。汚れがタイルの少なくとも1面から実質的に除去されるまで、タイルを並列洗浄方式において洗浄した。汚れの除去を視覚により評価し、対照とタイルのポリマー処理面上に残った汚れの割合を測定した。その後、対照面上の割合からポリマー処理面上に残った割合を引き、評価を‘‘0’’ないし‘‘+++++’’のスケールで正規化した(ここで、0は対照と処理面は汚れ除去において差がないことを示し、+++++は処理面からは汚れが完全に除去され、かつ対照面からは汚れが除去されなかったことを示す。)。
本発明の3種類のポリマーにおける結果を以下の表1に示す:
表1
【表1】

【0060】
実施例5:適用
各ポリマーの0.5%溶液を、以下の表2に記載したような、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤、溶媒及びキレート剤を含む典型的な硬い表面用の洗浄配合物中に配合した。
表2
【表2】

対照面を、ポリマーを添加しなかった硬い表面用の洗浄配合物で処理したこと以外は、実施例4に記載したのと同じ方法で、汚れ除去ポリマーを含む硬い表面用の洗浄溶液を用いて、セラミックタイルの半面を処理した。
実施例4に記載したように模擬風呂あかで汚し、洗浄した後、タイルの汚れ除去を評価した。3つの異なるポリマーにおいて試験を3回行った結果を、以下の表3にまとめる。表3
【表3】

1.実施例3と同様に製造。
【0061】
実施例6:適用
セラミックタイルの半面を、実施例5に記載したような硬い表面用の洗浄配合物中にDADMAC/ブチルメタクリレート(95/5)ポリマーを含む溶液で処理した。その後、トウモロコシ油39.55g、オレイン酸2.5g、オイル ブルー N(Oil Blue N)0.04g及びカオリンクレー7.9gから製造した模擬油微粒子汚れスラリー1.5gをブラシでタイル上に塗ることによって、タイルを処理した。その後、青い
汚れがピンク色に変わるまで、汚れたタイルを85℃において約24時間焼付けた。冷却後、タイルを、まず脱イオン水で湿潤させ、その後、ポリマーを添加しなかった実施例5に記載の洗浄配合物10mLで湿潤させたスポンジを有するガードナー ウォッシュビリティー テスター上で洗浄した。試験を、実施例4及び5と同様の方法で評価した(以下の表4参照)。
表4
【表4】

【0062】
実施例7
DADMACコポリマーの生物膜増殖抑制
DADMACコポリマーを、適当な試験濃度で脱イオン水中に原液として準備した。
試験法:
ポリメチルメタクリレート(PMMA)からつくられた標準ピン(小さな円筒、2mm×8−9mm)をDADMACコポリマー原液中で20分間インキュベートし、乾燥させた。コーティングしたピンを試験生物の懸濁液と接触させ、有機ピンの表面に試験生物を付着させた。その後、ピンを成長培地に移し、成長倍地中への娘細胞の放出を可能とした。その後、ピンを、適当な培養時間の後、取り除いた。その後、娘細胞の成長を、578nmにおいて通常の光度計を用い、マイクロプレートリーダーで成長培地の光学密度を観測することによって測定した。
試験生物 :表皮ブドウ球菌
試験濃度 :0.5%(ポリマーの質量%)
コーティング時間:20分
乾燥時間 :30分
接触時間(細胞):1時間
娘細胞の放出 :24時間
培養時間 :48時間
表5は、生物膜増殖抑制試験の結果を示す。
結果は、生物膜生物の成長が抑制された時間で示される。48時間の結果は、生物膜増殖が48時間、完全に抑制されることを示した。
表5
【表5】

【0063】
実施例8
DADMACコポリマーによる微生物細胞の初期の粘着及び付着の抑制を以下に示す。
試験方式:
PMMAからつくられた標準ピンをコポリマーの原液中で20分間インキュベートし、
乾燥させた。コーティングしたピンを試験生物の懸濁液と接触させ、1時間、ピンの表面に試験生物を付着させた。洗浄し、ブロッキング溶液に移した後、ピンを表皮ブドウ球菌抗体で一晩処理し、更なる洗浄工程後、酵素(アルカリホスファターゼ)が結合した2次抗体で1時間処理した。最後の洗浄工程後、ピンを酵素基質溶液に移し、色の変化を405nmにおいてマイクロプレートリーダーで観察した。
試験生物 :表皮ブドウ球菌
試験濃度 :原液中に0.5%(ポリマーの質量%)
コーティング時間 :20分
乾燥時間 :15分
接触時間(細胞) :1時間
接触時間(1次抗体):24時間
接触時間(2次抗体):1時間
表6は実施例8で行った付着試験の結果を示す。
結果は、未処理のピンと比較した細胞の付着(%)で示した。コポリマー溶液は細菌の付着において顕著な減少を示した。
表6
【表6】

【0064】
実施例9
様々なDADMACコポリマーの殺菌活性の決定
試験方式:
適当な濃度の試験物を有する原液1gを水8gと混合し、その後、選択した試験生物1mLを植菌した。下記した接触時間後、一定分量を採取し、不活性化し、希釈した。培養試料1mL当りに生存する細菌の数を平板菌数によって決定した。
希釈剤 :微生物のためにトリプトン水(トリプトン(オキソイド)0.1
質量%、NaCl 0.85%、脱イオン水)。
DADMACポリマー溶液のために脱イオン水。
生存する微生物の検出のために不活性溶剤。
媒体 :カゼインソイビーンペプトン寒天。
不活性媒体:トリプトシンソイブロススペシャル(トゥイーン80 10%、レシチン
3%、L−ヒスチジン 0.1%、チオ硫酸ナトリウム 0.055%)。
試験生物 :S.アウレウス ATCC 6538。
大腸菌 ATCC 10536。
試験濃度 :100−120ppm(DADMACポリマー濃度)。
接触時間 :22℃において5ないし30分間。
培養 :37℃において24時間。
結果を、最初の総数の対数減少として表7に示す。試験した全てのDADMACポリマーは大腸菌に対して良好な殺菌活性を示し、S.アウレウスに対してある程度の殺菌活性を示した。
表7
【表7】

1.実施例2と同様に製造。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬い表面のための表面保護剤及び洗浄組成物であって、
少なくとも以下のモノマー成分:
(I)20ないし99.9質量%の、式(1)
【化1】

(式中、
1及びR2は、互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わし;
3及びR4は、互いに独立して、水素原子、又は1ないし18個の炭素原子を有するアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシルアルキル基、カルボキシアミドアルキル基もしくはアルコキシアルキル基を表わし;及び
-はアニオンを表わす。)に従う少なくとも1種のカチオン性モノマー;及び、
(II)0.1ないし80質量%の、開始剤の存在下で重合する疎水性不飽和非イオン性モノマー;
所望により、60質量%までの、モノマー(I)及びモノマー(II)と異なる水溶性モノマー(III);及び、
所望により、0ないし10質量%の量の架橋剤である反応成分(IV)、
から誘導される主鎖を含むポリマー状化合物を含む表面保護剤及び洗浄組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のカチオン性モノマー(I)が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムスルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムホスフェート、ジメタリルジメチルアンモニウムクロリド、ジエチルアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジ(β−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、及びジアリルジ(β−エトキシエチル)アンモニウムクロリドからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のカチオン性モノマーが、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性モノマー(II)が、室温かつpH7において、約50g/水100g未満の水溶性の値を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の疎水性モノマー(II)が、ビニル化合物及び(メタ)アクリレートベースの化合物及び(メタ)アクリロニトリル及び不飽和多官能価酸のエステルからなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の疎水性モノマー(II)が、スチレン;炭素原子数2ないし18のカルボン酸のビニルエステル及び炭素原子数2ないし18のカルボン酸のN−ビニルアミドからなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の疎水性モノマー(II)が、式(B)
【化2】

[式中、
5はH又はCH3を表わし、
6は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数1ないし12のアルコキシ基、炭素原子数1ないし12のアルキル基又は炭素原子数1ないし12のアルコキシル基によって1回ないし3回置換され得る炭素原子数1ないし6のアルキルフェニル基、酸素原子によって1回以上中断された炭素原子数1ないし6のアルキルフェニル基(ここで、フェニル基は、炭素原子数1ないし12のアルキル基又は炭素原子数1ないし12のアルコキシ基によって1ないし3回置換され得る。)又は炭素原子数1ないし6のアルキルヒドロキシ基を表わし;
Xは、−O−、−NH−及び−NR−(式中、Rは炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択される二価の基を表わす。]で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記疎水性モノマー(II)が
【化3】

(式中、R5は上記で定義した通りであり、nは1ないし5の数を表わす。)からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記水溶性モノマー(III)が、室温かつpH7において50g/水100gより大きい水溶性の値を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水溶性モノマー(III)が、ビニルアミン、ビニルホルムアミド、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ジメチルシロキサンのビニル誘導体、アミノシロキサン、ビニルフルオロカーボン、ヒドロキシアルキルアクリレート;アミノアルキルアクリレート及びそのアルキル及びベンジル四級化塩を含むその塩;(メタ)アクリル酸及びその塩;及びアクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリ
ルアミド及びそれらの塩からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマー状化合物が1000ないし5百万ダルトンの範囲の平均分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
更に、有効量の1種以上の界面活性剤を含む請求項1に記載の硬い表面のための表面保護剤及び洗浄組成物。
【請求項13】
すぐに使用可能な(ready−to−use)スプレー、液体又はペースト形態の、又は水で希釈して、最終洗浄組成物とし得る固体又は液体濃縮物である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
0.001%ないし50%のポリマー状化合物を含む請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
更に、香料、他の種類の汚れ除去ポリマー、着色剤、防腐剤、抗菌剤、蛍光増白剤、UV吸収剤、光制御剤、イオン化剤、消泡剤、酵素、漂白剤、酸化触媒、ゼオライト、又はシクロデキストリン及びその誘導体を含むがそれらに限定されない臭気抑制剤である更なる有効成分又はこれらの混合物を少なくとも1種以上含む請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
表面洗浄又は処理のための再利用可能な又は使い捨てのふき取り繊維(wipe)又はパッドであって、該ふき取り繊維又はパッドがその中又はそこに請求項12に記載の組成物を吸着して有するところのふき取り繊維又はパッド。
【請求項17】
硬い表面を洗浄するための方法であって、前記表面を有効洗浄量の請求項1に記載の洗浄配合物と接触させることからなる方法。
【請求項18】
前記表面が、セラミックタイル、石材、ガラス、セメント、コンクリート、レンガ、石膏、大理石;石、大理石又はプラスチックの石造様調理台;及び木材、プラスチック、積層板又は有機又は無機材料製の他の種類の床である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
汚れに対する耐性、後の汚れ除去の容易さが改善され、かつ抗菌性がもたらされるところの、硬い表面を処理する方法であって、前記硬い表面を有効洗浄量の請求項12に記載の組成物と接触させることからなる方法。
【請求項20】
硬い表面を抗菌有効量の請求項1で定義したポリマー状化合物と接触させることからなる硬い表面の抗菌処理のための方法。
【請求項21】
硬い表面を有効量の請求項1で定義したポリマー状化合物と接触させることからなる硬い表面上に生物膜(biofilm)が形成するのを抑制するための方法。

【公表番号】特表2008−523184(P2008−523184A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544880(P2007−544880)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056256
【国際公開番号】WO2006/061334
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】