説明

病原性ウイルスからの別のリーディングフレームによりコードされる抗原

【課題】本発明の目的は、ウイルス病原体に対する有効なT細胞エピトープを提供することである。
【解決手段】本発明は、病原性ウイルスの別のリーディングフレームによりコードされるポリペプチドであって、メチオニンアミノ酸残基から開始し、抗原決定基を含み、7を超えるアミノ酸残基を含むもの、および7を超えるアミノ酸を含む該ポリペプチドの断片を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性ウイルスに由来するペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかのウイルス感染については、宿主からウイルス感染を克服ないし排除するには大抵のコードされたウイルスタンパク質に対する初期の有効で強力なCTL応答が重要であることがますます明らかになってきている。
【0003】
HIVのCTLエピトープ内の変異に対する選択はCTLがウイルス複製に対してインビボで圧力を及ぼすことを示しており、またマカークザルにおける研究は急性および慢性の両シミアン免疫不全ウイルス(SIV)感染におけるウイルス血症を制御するうえでのCD8+T細胞の役割についての興味深い(compelling)インビボデータを提供している。急性感染の際に治療を受けたHIV感染個体は、治療の中断後にその後のウイルス制御と関連してHIVに対するCTLおよびTヘルパー細胞の両応答の亢進を示す。
【0004】
それゆえ、大抵の(全てではないにしても)ウイルスタンパク質の正確なエピトープの同定は宿主の免疫応答を理解する観点からの主たる目標であり、これら病原体に対する新規かつ有効なワクチンをデザインするうえで最も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでのところ、これらエピトープの同定のための大抵の研究は、実際に転写されるオープンリーディングフレーム(ORF)でコードされるウイルスタンパク質、すなわち構造タンパク質およびウイルスの何らかの機能(たとえば制御、複製または再生産)を有するタンパク質に主として向けられていた。
【0006】
病原体の可能な別のリーディングフレームを調べるべくある種の研究はなされてはきたが、HCV(Walewskiら(RNA 7 (2001) 710-721)およびWO99/63941を参照)および他のウイルスまたは抗原(Bullockら(J. Exp. Med. 186(7)(1997), 1051-1058)、Malarkannanら(Immunity 10 (1999) 681-690)およびShastriら(J. Biol. Chem. 270 (3)(1995) 1088-1091))での重複リーディングフレームに関する幾つかの報告にもかかわらず、これまでのそのような別のリーディングフレームについての話題は、ウイルス病原体にではなく腫瘍抗原に関連のあるものとしか認められてこなかった。これら報告されたウイルスポリペプチドはすべてAUGまたはATG以外の開始コドンを有しており、たとえばAla、Leu、ProまたはGlyで開始されるペプチドに導く。さらに、これら従来技術によるウイルスペプチドはT細胞エピトープではなく、せいぜい抗体応答を惹起しうるのみであった。
【0007】
本発明の目的は、ウイルス感染に対抗するためのさらなる手段を提供することである。本発明のさらなる目的は、ウイルス病原体、とりわけヒト病原体に対する既存のまたは提唱されたワクチンを置換または改善する手段を提供することである。本発明の特別の目的は、ウイルス病原体に対する有効なT細胞エピトープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それゆえ、本発明は、病原性ウイルスの別のリーディングフレームによりコードされるポリペプチドであって、
メチオニンアミノ酸残基から開始され、
抗原決定基を含み、かつ
7を超えるアミノ酸残基を含む
ことを特徴とするポリペプチド、および7を超えるアミノ酸を含む該ポリペプチドの断片を提供する。
【0009】
驚くべきことに、そのようなエピトープ(抗原決定基)は病原性ウイルスによる感染と極めて関係が深いことがわかった。実際、そのような別にコードされたエピトープに対するT細胞応答をそのような感染を患う患者において検出することができる。ウイルスが宿主細胞に感染すると、ウイルスタンパク質を生成するウイルスゲノムのORFが転写されるのみならず、ゲノムの他のフレームによりコードされるある種のタンパク質または断片もまた転写されるように思われる。
【0010】
そのような本発明によるポリペプチドは、ゲノムのORF内ではあるが所定の病原性ウイルスで主として(主)転写されるORFの範囲外にある抗原性配列として定義することができる。
【0011】
本発明との関連において使用する別のリーディングフレームとは、たとえば構造タンパク質や非構造タンパク質の発現のために使用される生物やウイルスのコドンをコードするオープンリーディングフレーム(主フレーム)とは異なるリーディングフレームとして定義することができる。
【0012】
典型的に、しかし必ずしも全ての場合にそうではないが、主フレームは、たとえばメッセンジャーRNAや(+)/(−)鎖RNAウイルスからのRNAの核酸の最初のコード開始コドン、たとえばAUGやGUGから開始する。本発明において記載する別のフレームは、それぞれ主フレームによって使用されるこれら開始コドンまたは他のいかなるコドンを使用することはない。
【0013】
本発明は、5つのそのような別のリーディングフレームを想定しており、これらは上記の主フレームと区別して第二の呼び方として非コードオープンリーディングフレーム(ncORF)とも称する。そのような別のリーディングフレームの1つは+1フレームであり、このものは主フレームコドンの5’プライムヌクレオチドの3’プライムのつぎのヌクレオチドから開始するコドンを使用する。そのような第二のフレームは+2フレームであり、このものは5’プライムヌクレオチドが主コードフレームのコドンの3’プライムヌクレオチドと同一であるコドンを使用する。別のリーディングフレーム4、5および6は、それぞれ別のリーディングフレーム1および2をコードする核酸に相補的な核酸によりコードされる。フレーム4コドンの5’プライムヌクレオチドは+1フレームのコドンの真中のヌクレオチドに相補的である。フレーム5コドンの5’プライムヌクレオチドは+1フレームコドンの5’プライムヌクレオチドに相補的であり、フレーム6コドンの5’プライムヌクレオチドは+2フレームコドンの3’プライムヌクレオチドに相補的である。
【0014】
さらに、別のリーディングフレームは、主フレームの翻訳に関与しないゲノムの領域、たとえば、いわゆる非翻訳5’プライムまたは3’プライム領域に位置していてよい。
【0015】
これら「ncOrf」(「非コードORF」)は病原体について(これまで)知られた機能を示さないが、これら「ncOrf」は抗原決定基(B細胞またはT細胞エピトープ)をコードする。
【0016】
HCV(Walewskiら、WO99/63941を参照)および他のウイルスまたは抗原(Bullockら、Malarkannanら、Shastriら)での別にコードされたORFに関する全ての使用可能な報告と対照的に、本発明によるポリペプチドはすべて開始コドンとしてAUGまたはATG(メチオニンをコードする)を有する。さらに、本発明により提供されるペプチドはT細胞エピトープを含み、抗体応答を生起させるもののみに限られることを意図するものではない。
【0017】
本発明により提供される原理はウイルス感染において一般的なものであると思われる。それゆえ、本発明はある種のウイルスまたはウイルス群に限定されるものではない。この点に関し、本発明による好ましいポリペプチドまたは断片は、主要なおよび著名な(ヒト)病原性ウイルスまたは現在のところ適切な治療または活性な免疫プロトコールの存在しない病原性ウイルス、たとえば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、F型肝炎ウイルス(HFV)、G型肝炎ウイルス(HGV)、ヒト免疫不全ウイルス(たとえば、HIV−1およびHIV−2)、インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)、エボラウイルス、HTLVI、HTLVII、SIV、パルボウイルス、パピローマウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、帯状疱疹ウイルス(HZV)、麻疹ウイルスおよび発癌ウイルスからのものである。
【0018】
本発明では全く新規な世代の免疫原性エピトープが提供され、該エピトープは本発明の好ましい態様によれば本発明によるポリペプチドおよび断片が少なくとも1つの細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープを含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、本発明によるポリペプチドまたは断片は、A0201、A1、A24、A3、A31、B3501、B4403、B7、B8、とりわけA0201、またはそれらの混合物よりなる群から選ばれたHLA対立遺伝子に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープを含む。
【0020】
好ましい態様によれば、本発明によるポリペプチドまたは断片は少なくとも1つのTヘルパー細胞エピトープを含む。
【0021】
好ましくは、本発明によるポリペプチドまたは断片は、DP、DQ、DRまたはそれらの混合物よりなる群から選ばれたHLA対立遺伝子に対するTヘルパー細胞エピトープを含む。
【0022】
本発明による好ましいエピトープは、表2a)〜2n)(配列番号1〜822)に列挙した群から選ばれるかまたは7を超えるアミノ酸を含む該ポリペプチドの断片および/または表4a)〜4n)に列挙した群から選ばれた断片、好ましくは50またはそれ以上のスコアを有する断片、さらに好ましくは200を超えるスコアを有する断片、とりわけ500を超えるスコア(表に示したスコア(Parkerら(J. Immunol. 152 (1994) 163)により報告されたアルゴリズムにより決定した)による)を有する断片を含むかまたは該断片からなるエピトープである。
【0023】
本発明によるさらに好ましいエピトープは、表6に列挙され7を超えるアミノ酸残基を含むポリペプチド(配列番号823〜874)または7を超えるアミノ酸残基を含む該ポリペプチドの断片である。
【0024】
本発明によるポリペプチドまたは断片は、担体、とりわけ免疫修飾(immunomodulating)物質にコンジュゲートすることができる。ある種の応用においては、そのような結合はこれらペプチドの作用の改善という結果となる。また、WO01/78767に記載のように、これらペプチドのN末端および/またはC末端に選択した疎水性(F、I、L、A、Y、W、C)または酸性(DまたはE)アミノ酸残基を結合させるのが好ましい。
【0025】
それゆえ、好ましいポリペプチドまたは断片は、N末端またはC末端の少なくとも一方に2ないし7のアミノ酸(該アミノ酸はF、I、L、A、Y、WまたはCから選ばれる)からなるテール;またはN末端またはC末端の少なくとも一方に2ないし7のアミノ酸(該アミノ酸はDまたはEから選ばれる)からなるテールを含む。
【0026】
特に好ましいコンジュゲートでは、本発明のポリペプチドまたは断片は、ポリカチオン性物質、とりわけポリカチオン性ポリペプチド、および免疫修飾核酸、とりわけデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン含有オリゴデオキシヌクレオチドよりなる群から選択される免疫修飾物質にコンジュゲートする。
【0027】
好ましくは、ポリカチオン性物質は、ポリマー、好ましくはポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンまたは抗菌性ペプチドである。
【0028】
本発明に従って用いるポリカチオン性化合物は、WO97/30721による特徴的な作用を示すあらゆるポリカチオン性化合物であってよい。好ましいポリカチオン性化合物は、塩基性ポリペプチド、有機ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはその混合物から選ばれる。これらポリアミノ酸は、少なくとも4アミノ酸残基の鎖長を有していなければならない。特に好ましいのは、ポリリシン、ポリアルギニン、および8を超える、とりわけ20を超えるアミノ酸残基の範囲に20%を超える、とりわけ50%を超える塩基性アミノ酸を含むポリペプチドまたはその混合物のようなペプチド結合を含む物質である。他の好ましいポリカチオンおよびその医薬組成物は、WO97/30721(たとえば、ポリエチレンイミン)およびWO99/38528に記載されている。好ましくは、これらポリペプチドは20〜500アミノ酸残基、とりわけ30〜200残基を含む。
【0029】
これらポリカチオン性化合物は化学的にまたは組換えにより製造してよく、あるいは天然の採取源に由来してもよい。
【0030】
カチオン性(ポリ)ペプチドはまた、ポリカチオン性で抗菌性の微生物ペプチドであってもよい。これら(ポリ)ペプチドは、原核生物または動物または植物起源のものであってよく、化学的にまたは組換えにより製造されてよい。ペプチドはまたデフェンシンのクラスに属していてもよい。そのような宿主防御ペプチドまたはデフェンシン(defensives)もまた、本発明によるポリカチオン性ポリマーの好ましい形態である。一般に、好ましくはAPC(樹状細胞を含む)によって媒介される獲得免疫系を最終生成物として活性化(またはダウンレギュレーション)することを可能にする化合物はポリカチオン性ポリマーとして用いる。
【0031】
本発明においてポリカチオン性物質として使用するのに特に好ましいのは、カテリシジン(cathelicidin)由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体(WO02/13857、参照のため本明細書中に引用する)、とりわけ哺乳動物、好ましくはヒト、ウシまたはマウスのカテリシジンに由来する抗菌ペプチド、または(ヒト)成長ホルモンなどの神経刺激性の化合物である(たとえば、WO01/24822に記載)。
【0032】
天然の採取源に由来するポリカチオン性化合物としては、HIV−REVまたはHIV−TAT(由来のカチオン性ペプチド、アンテナペディア(antennapedia)ペプチド、キトサンまたはキトサンの他の誘導体)または生化学的な製造または組換え製造によりこれらペプチドまたはタンパク質に由来する他のペプチドが挙げられる。他の好ましいポリカチオン性化合物は、カテリン(cathelin)またはカテリンの関連物質またはカテリンに由来する物質、とりわけマウス、ウシまたは特にヒトのカテリンおよび/またはカテリシジンである。カテリンの関連物質またはカテリンに由来する物質はカテリン配列の全部または一部を含み、少なくとも15〜20アミノ酸残基を有する。誘導体化は、20の標準アミノ酸以外のアミノ酸による天然アミノ酸の置換または修飾を含む。さらに、さらなるカチオン性残基がそのようなカテリン分子中に導入されてよい。これらカテリン分子は、本発明による抗原/ワクチン組成物と組み合わせるのが好ましい。しかしながら、これらカテリン分子は驚くべきことに、さらなるアジュバントを加えなくとも抗原に対するアジュバントとして有効なことがわかった。それゆえ、そのようなカテリン分子は、さらなる免疫促進性物質を用いまたは用いることなく、本発明の医薬において有効なアジュバントとして用いることが可能である。
【0033】
本発明に従って用いることのできる他の好ましいポリカチオン性物質は、3〜7の疎水性アミノ酸、とりわけLのリンカーによって隔てられた少なくとも2つのKLKモチーフを含む合成ペプチドである(WO02/32451、参照のため本明細書中に引用する)。
【0034】
本発明に従って用いる免疫修飾核酸は、合成したもの、原核生物および真核生物由来のものであってよい。真核生物由来である場合は、DNAは系統樹に基づいて進化の遅れた種(たとえば昆虫、しかし他の種も可能)からのものでなければならない。本発明の好ましい態様において、免疫原性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は合成により製造したDNA分子またはそのような分子の混合物である。たとえば米国特許第5,723,335号および同第5,663,153号に記載されているようなチオホスフェート置換アナログ(チオホスフェート残基がホスフェートを置換する)などのODNの誘導体または修飾物、および好ましくは免疫促進組成物を安定化させるがその免疫学的特性は変化させない他の誘導体および修飾物も含まれる。好ましい配列モチーフは、2つの5’プリンおよび2つの3’ピリミジンによりフランキングされた(非メチル化)CpGジヌクレオチドを含む6塩基DNAモチーフ(5’−Pur−Pur−C−G−Pyr−Pyr−3’)である。本発明によるODNに含まれるCpGモチーフは高等脊椎動物DNAよりも微生物において一般的であり、メチル化のパターンにおいて差異を示す。驚くべきことに、マウスAPCを促進する配列はヒトの細胞に対しては特に有効というわけではない。本発明に従って用いる好ましいパリンドローム性または非パリンドローム性ODNは、たとえばオーストリア特許出願A1973/2000、A805/2001、EP0468520A2、WO96/02555、WO98/16247、WO98/18810、WO98/37919、WO98/40100、WO98/52581、WO98/52962、WO99/51259およびWO99/56755(すべて参照のため本明細書に引用する)に開示されている。免疫系を促進させることとは別に、ある種のODNはある種の免疫応答を中和する。これら配列もまた、たとえば自己免疫疾患の治療に応用するために本発明に含まれる。ODN/DNAは、化学的にまたは組換えにより製造することができ、または天然源に由来するものであってよい。好ましい天然源は昆虫である。
【0035】
あるいは、ヒポキサンチンおよびシトシンに基づく核酸(たとえばWO01/93905に記載のようなもの)やデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含有するデオキシ核酸(PCT/EP02/05448(参照のため本明細書に引用する)に記載)を本発明の免疫促進核酸として用いるのが好ましい。
【0036】
もちろん、異なる免疫原性核酸の混合物も本発明に従って用いることができる。
【0037】
上記の物質は、本発明のペプチドまたは断片または混合物とのコンジュゲートとして用いることができる。混合物は、すでに混合した形態かまたは適用前に混合することを意図した単一成分のキットとして提供できる。
【0038】
本発明による好ましいポリペプチドまたは断片はT細胞エピトープを含む。
【0039】
驚くべきことに、本発明により、シフトしたリーディングフレーム(すなわち、リーディングフレーム2および3)を有するポリペプチドまたは断片のみならず、該病原性ウイルスの機能的なリーディングフレームの相補鎖を読みとる別のリーディングフレーム、すなわち本明細書において一般にリーディングフレーム4〜6と称するものによってコードされるペプチドおよび断片もまた臨床的に関連するペプチドとして提供される。このことは、既知の(機能的または構造)遺伝子の反対の端に位置する、たとえばその調節配列に位置するリーディングフレームも重要であることを意味する。
【0040】
それゆえ、本発明の1つのさらなる側面は、該病原性ウイルスの機能的なリーディングフレームの相補鎖を読みとる別のリーディングフレーム、すなわち一般にリーディングフレーム4〜6と称するものによってコードされる全ての抗原からなる。
【0041】
本発明による好ましいポリペプチドまたは断片は、表4a、4c、4e、4g、4i、4kおよび4mに列挙され、50またはそれ以上のスコア、より好ましくは200を超えるスコア、とりわけ500を超えるスコアを有するペプチドの群から選択される少なくとも1のペプチドを含む。
【0042】
本発明の好ましい側面によれば、ポリペプチドまたは断片は治療剤として使用する。とりわけT細胞エピトープが予防的な使用のためのワクチンとして使用できることが知られている。しかしながら、本発明によるペプチドおよび断片を用い、とりわけリーディングフレーム2および3のHCV由来ペプチドを用い、HCVなどの病原性ウイルスの(慢性)感染症を克服するための治療手段が提供される。
【0043】
本発明によるペプチドおよび断片はまた、所定のエピトープの好ましくは1または2のアミノ酸がたとえばTourdotら(Eur.J.Immunol. 30 (2000), 3411-3421)に開示の法則に従って修飾または置換されている修飾エピトープ、並びにそのような修飾エピトープをコードする核酸配列をも含む。
【0044】
好ましい側面によれば、本発明はまた本発明による1またはそれ以上のポリペプチドまたは断片を含む医薬組成物にも関する。この医薬組成物は、予防および治療の両目的に使用できる。
【0045】
上記に記載したように、本発明の医薬組成物は、免疫修飾物質、好ましくはポリカチオン性物質、とりわけポリカチオン性ポリペプチド、および免疫修飾核酸、とりわけデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン含有オリゴデオキシヌクレオチドよりなる群から選択されるものをさらに含むのが好ましい。
【0046】
本発明の医薬組成物においては、本発明のペプチドまたは断片は単独または所定の病原性ウイルス(または異なる病原体の抗原の組み合わせ)の「通常の」ポリペプチド(エピトープ、抗原決定基)と組み合わせて用いることができる。それゆえ、好ましい態様は、病原性ウイルスの構造的または機能的ポリペプチドまたはその断片、とりわけ抗原決定基を含む構造的または機能的ポリペプチドまたはその断片を包含する。
【0047】
本発明による医薬組成物の投与は、他の既知のポリペプチドワクチンの投与に従って行うことができる。好ましくは、該組成物は、本発明による1またはそれ以上のポリペプチドまたは断片を単位投与当たり1ng〜1g、好ましくは100ng〜10mg、とりわけ10μg〜1mg含む。
【0048】
好ましくは医薬組成物はワクチンとして調合する。
【0049】
本発明による医薬組成物は、さらなる活性成分、とりわけ免疫強化サイトカイン、抗炎症物質、抗菌物質またはそれらの組み合わせを含んでいるのが好ましい。
【0050】
本発明の医薬組成物はさらに、ポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンよりなる群から選ばれたポリカチオン性ポリマー、または抗菌ペプチド、とりわけカテリシジン由来の抗菌ペプチド、または成長ホルモン、とりわけヒト成長ホルモンを含んでいるのがさらに好ましい。
【0051】
さらに、補助物質、とりわけ薬理学的に許容しうる担体、緩衝物質、安定化剤またはそれらの組み合わせが医薬組成物に提供される。
【0052】
他の側面によれば、本発明はまた、該病原性ウイルスの感染の治療または予防用医薬の製造のための本発明によるポリペプチドまたは断片の使用にも関する。
【0053】
ウイルスが宿主細胞に感染したときに、ウイルスタンパク質を生じるウイルスゲノムのORFが転写されるのみならず、該ゲノムの他のフレームによってコードされるタンパク質または断片の幾つかもまた転写されることは、従来技術の範囲では予測できなかった。このことは、リーディングフレーム4〜6についてはさらに一層驚くべきことであった。
【0054】
本発明を以下の実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、本発明はこれら特定の態様に限られるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】HLA−A0201tgマウス+HCV−H77 ncORF11、13、27由来ペプチドを用いた実験からのElispotアッセイを示す。
【0056】
【図2】HLA−A0201tgマウス+HCV−1b ncORF36由来ペプチドを用いた実験からのElispotアッセイを示す。
【0057】
【図3】HLA−A0201HCV陽性患者のElispotアッセイを示す。
【0058】
【図4】トランスジェニックマウスにおけるHCV1bリーディングフレーム4〜6からのペプチドの免疫原性を示す。
【0059】
【図5a】インフルエンザAウイルスからのncORF由来ペプチドをKLK/o−d(IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種は、強力なIFN−γ産生T細胞およびウイルスの攻撃に対する防御を誘発することを示す。
【0060】
【図5b】インフルエンザAウイルスからのncORF由来ペプチドをKLK/o−d(IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種は、強力なIFN−γ産生T細胞およびウイルスの攻撃に対する防御を誘発することを示す。
【0061】
実施例:
実施例1:HCV
HCVを本発明のモデルウイルスとして用いた。しかしながら、本実施例に記載する原理はいかなるウイルスにも応用できる。
【0062】
HCVポリプロテインのリーディングフレーム以外の全てのリーディングフレームにおいて7アミノ酸残基よりも長くAUG(Met)コドンで開始される全てのORFを決定するため、HCVの7つの臨床的に関連のある株(1a、1b、2a、2b、3a、3bおよびH77)の全ゲノムを分析した。HCVゲノム配列は、ジーンバンクデータベース(アクセッション番号:AF387806(1a)、D11355(1b)、AF238485(2a)、AB030907(2b)、AF046866(3a)、D49374(D26556)(3b)、AF011751(H77))から得た。全部で822の新規なORFがこの研究で同定された(表1の要約を参照)。
【0063】
【表1】

【0064】
以下の表2は、ポリペプチドの全配列を含む。
【0065】
本実施例に適合させるのが好ましい他のHCVサブタイプとしては、サブタイプ1c、2c、2d、3c〜f、4a〜j、5aまたは6aが挙げられる。
【0066】
表2a(配列番号1〜42)
HCV1a ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AF387806
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表2b(配列番号43〜110)
HCV1a ncOrf4〜6
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
表2c(配列番号111〜166)
HCV1b ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AF
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
表2d(配列番号167〜241)
HCV1b ncOrf4〜6
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
表2e(配列番号242〜288)
HCV2a ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AF238485
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
表2f(配列番号289〜359)
HCV2a ncOrf4〜6
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
表2g(配列番号360〜404)
HCV2b ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AB030907
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
表2h(配列番号405〜479)
HCV2b ncOrf4〜6
【表19】

【0084】
【表20】

【0085】
【表21】

【0086】
表2i(配列番号480〜517)
HCV3a ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AF046866
【表22】

【0087】
【表23】

【0088】
表2j(配列番号518〜587)
HCV3a ncOrf4〜6
【表24】

【0089】
【表25】

【0090】
【表26】

【0091】
表2k(配列番号588〜640)
HCV3b ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:D49374,D26556
【表27】

【0092】
【表28】

【0093】
表2l(配列番号641〜712)
HCV3b ncOrf4〜6
【表29】

【0094】
【表30】

【0095】
【表31】

【0096】
表2m(配列番号713〜752)
HCVH77 ncOrf1〜3
ジーンバンクアクセッション番号:AF011751
【表32】

【0097】
【表33】

【0098】
表2n(配列番号753〜822)
HCVH77 ncOrf4〜6
【表34】

【0099】
【表35】

【0100】
【表36】

【0101】
異なるHLA対立遺伝子について可能なCTLエピトープの予測のためにウエブベースのコンピューターソフトウエアを用い、10またはそれ以上の(相対的)カットオフ値となる(Parkerら(上記)により)(おそらく)コードされているエピトープの存在について単一のORFをすべて分析した。
【0102】
【表37】

【0103】
以下の表4には、試験したHLA対立遺伝子に関して認められたエピトープの正確な(最小の)配列を、所定のエピトープが所定のHLA型に有効に結合する能力を同定する(相対的)スコアとともに示す。
【0104】
表4a
1a(1〜3)
【表38】

【0105】
【表39】

【0106】
【表40】

【0107】
【表41】

【0108】
【表42】

【0109】
表4b
1a(4〜6)
【表43】

【0110】
【表44】

【0111】
【表45】

【0112】
【表46】

【0113】
【表47】

【0114】
【表48】

【0115】
【表49】

【0116】
【表50】

【0117】
【表51】

【0118】
【表52】

【0119】
【表53】

【0120】
表4c
1b(1〜3)
【表54】

【0121】
【表55】

【0122】
【表56】

【0123】
【表57】

【0124】
【表58】

【0125】
表4d
1b(4〜6)
【表59】

【0126】
【表60】

【0127】
【表61】

【0128】
【表62】

【0129】
【表63】

【0130】
【表64】

【0131】
【表65】

【0132】
【表66】

【0133】
【表67】

【0134】
【表68】

【0135】
【表69】

【0136】
表4e
2a(1〜3)
【表70】

【0137】
【表71】

【0138】
【表72】

【0139】
【表73】

【0140】
【表74】

【0141】
表4f
2a(4〜6)
【表75】

【0142】
【表76】

【0143】
【表77】

【0144】
【表78】

【0145】
【表79】

【0146】
【表80】

【0147】
【表81】

【0148】
【表82】

【0149】
【表83】

【0150】
【表84】

【0151】
【表85】

【0152】
【表86】

【0153】
【表87】

【0154】
表4g
2b(1〜3)
【表88】

【0155】
【表89】

【0156】
【表90】

【0157】
【表91】

【0158】
【表92】

【0159】
【表93】

【0160】
表4h
2b(4〜6)
【表94】

【0161】
【表95】

【0162】
【表96】

【0163】
【表97】

【0164】
【表98】

【0165】
【表99】

【0166】
【表100】

【0167】
【表101】

【0168】
【表102】

【0169】
【表103】

【0170】
【表104】

【0171】
【表105】

【0172】
表4i
3a(1〜3)
【表106】

【0173】
【表107】

【0174】
【表108】

【0175】
【表109】

【0176】
【表110】

【0177】
表4j
3a(4〜6)
【表111】

【0178】
【表112】

【0179】
【表113】

【0180】
【表114】

【0181】
【表115】

【0182】
【表116】

【0183】
【表117】

【0184】
【表118】

【0185】
【表119】

【0186】
【表120】

【0187】
【表121】

【0188】
表4k
3b(1〜3)
【表122】

【0189】
【表123】

【0190】
【表124】

【0191】
【表125】

【0192】
【表126】

【0193】
表4l
3b(4〜6)
【表127】

【0194】
【表128】

【0195】
【表129】

【0196】
【表130】

【0197】
【表131】

【0198】
【表132】

【0199】
【表133】

【0200】
【表134】

【0201】
【表135】

【0202】
【表136】

【0203】
【表137】

【0204】
表4m
H77(1〜3)
【表138】

【0205】
【表139】

【0206】
【表140】

【0207】
【表141】

【0208】
【表142】

【0209】
【表143】

【0210】
表4n
H77(4〜6)
【表144】

【0211】
【表145】

【0212】
【表146】

【0213】
【表147】

【0214】
【表148】

【0215】
【表149】

【0216】
【表150】

【0217】
【表151】

【0218】
【表152】

【0219】
【表153】

【0220】
【表154】

【0221】
【表155】

【0222】
【表156】

【0223】
【表157】

【0224】
【表158】

【0225】
実施例1.2:本発明によるncHCVペプチドの免疫原性
本発明により提供されるペプチドが免疫原性を有する可能性があるか否かを決定するため、HLA−A0201対立遺伝子についてHCV1bからの3つのペプチドを選び、これらペプチドでHLA−A0201トランスジェニックマウス(HHD)にワクチン接種した。
【0226】
実施例1.2.1:本発明によるncORF(Ipep1371、Ipep1372、Ipep1373)によるマウスのワクチン接種
HLA−A0201トランスジェニックマウス(1群当たり5匹)を以下のようにして皮下にてワクチン接種した:
(1)1371(HCV−H77 ncORF(1−3)11 TLWAGPLKV) + CpG1668
(2)1372(HCV−H77 ncORF(1−3)13 LLLQRWALV) + CpG1668
(3)1373(HCV−H77 ncORF(1−3)27 FMLGALLPI) + CpG1668
【0227】
ワクチン接種の7日後、水切りしたリンパ節を取り出し、細胞をペプチドでイクスビボにて活性化してIFN−gを産生するペプチド特異的なT細胞の数を決定した(Elispotアッセイ)。図1からわかるように、全てのペプチドが多数のペプチド特異的なT細胞を誘発した(「バックグラウンド」は「培地対照」、すなわちペプチドなしで培養した細胞を意味する)。
【0228】
実施例1.2.2:本発明によるncORF(Ipep1445、Ipep1447)によるマウスのワクチン接種
HLA−A0201トランスジェニックマウス(1群当たり5匹)を以下のようにして皮下にてワクチン接種した:
(1)1445(HCV−1b ncORF(1−3)36 RLLQLKYCV) + CpG1668
(2)1447(HCV−1b ncORF(1−3)36 FLYLPLSFAV) + CpG1668
【0229】
ワクチン接種の7日後、脾臓を取り出し、細胞をペプチドでイクスビボにて活性化してIFN−gを産生するペプチド特異的なT細胞の数を決定した(Elispotアッセイ)。図2からわかるように、両ペプチドが多数のペプチド特異的なT細胞を誘発した(「バックグラウンド」は「培地対照」、すなわちペプチドなしで培養した細胞を意味する)。
【0230】
実施例1.3:本発明によるncHCVペプチドのHCV患者のインビボ関連性
本発明によるncORFペプチドはtg−マウスにおいて免疫原性であるので、本発明のペプチドをHCV+患者からのPBLでELIspotアッセイにより分析した。
【0231】
実施例1.3.1:HCV患者由来細胞および本発明によるncORF(Ipep1371、Ipep1372、Ipep1373)を用いたElispot
患者は1992年に慢性HCVに感染しており、1993年から1994年にIFN−アルファ単一療法で治療した。1996年に凍結した患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を解凍して以下のペプチドを用いてIFN−g Elispotアッセイを行った:
(1)1371(HCV−H77 ncORF(1−3)11 TLWAGPLKV)
(2)1372(HCV−H77 ncORF(1−3)13 LLLQRWALV)
(3)1373(HCV−H77 ncORF(1−3)27 FMLGALLPI)
(4)1006(HCV由来) MWNFISGIQYLAGLSTLPGN
(5)84(HCV由来) GYKVLVLNPSVAAT
(6)CMVpp65 NLVPMVATV
(7)インフルエンザAマトリックス(アミノ酸58〜67) GILGFVFTL
【0232】
表5および図3からわかるように、ペプチド1371、1372および1373は、正の対照ペプチド(CMV由来、インフルエンザ由来)と同様に多数のペプチド特異的なT細胞を誘発した。
【0233】
【表159】

【0234】
実施例1.4:フレーム4〜6からのペプチドはトランスジェニックマウスにおいて免疫原性である
(Ipep1490;Ipep1491;Ipep1492;Ipep1493;Ipep1494;Ipep82)
HLA−A0201トランスジェニックマウス(1群当たり5匹)を以下のようにして皮下にてワクチン接種した:
(1)1490(HCV−1b ncORF(4−6) KMLNRRVLWV) + CpG1668
(2)1491(HCV−1b ncORF(4−6) VLLMCQLPLV) + CpG1668
(3)1492(HCV−1b ncORF(4−6) MLNRRVLWVV) + CpG1668
(4)1493(HCV−1b ncORF(4−6) TILELEQSFV) + CpG1668
(5)1494(HCV−1b ncORF(4−6) KMMSPHAAV) + CpG1668
(6) 82(EBV、対照 GLCTLVAML) + CpG1668
【0235】
ワクチン接種の7日後、脾臓を取り出し、細胞をペプチドでイクスビボにて活性化してIFN−gを産生するペプチド特異的なT細胞の数を決定した(Elispotアッセイ)。図4からわかるように、4つのペプチドのうちの2つ(#1491、#1494)が多数のペプチド特異的なT細胞を誘発する。
【0236】
実施例1による本発明のHCVモデルを用い、以下のことを明らかに示すことができた:
ウイルスゲノムの異なるORF内に、可能なコードされたCTLエピトープを同定することができる;
これらORFのペプチドは、とりわけリーディングフレーム4〜6においても、tg−マウスで免疫原性である;
HCV+患者において陽性のELIspotの結果を与える、すなわちHCV感染において関連のある病理学的パラメーターである。
【0237】
実施例2:HIV
本実施例ではHIVのゲノムをその非コードORFに関して本発明に従って分析した。その結果を表6に示す。これらから、HIVワクチンの製造に抗原として用いるのが好ましい最小長の7アミノ酸残基を有するHIV−ncORFまたは7アミノ酸残基よりも長いHIV−ncORFを得ることができる。
【0238】
さらに好ましくは、最小長の9アミノ酸残基を有するORFが、とりわけT細胞抗原、B細胞抗原またはその両者である場合に表6から選択される。
【0239】
それゆえ、HIV−ORFは表6中のORF−No.13、23、27、69および80から選択するのが好ましい。
【0240】
【表160】

【0241】
【表161】

【0242】
【表162】

表6:非コードHIV−ORF = GAG、POL、VIF、VPR、TAT、REV、VPU、ENVおよびNEF(表6中のORF番号1、14、16、49、55、59、60、62、63および87)以外はすべてのORF
【0243】
HIVの選択したORF:表6中のORF番号2、3、6、9、11、12、13、17、19、20、21、22、23、24、26、27、30、31、32、34、35、37、38、40、43、44、46、48、50、56、57、58、64、67、69、70、71、73、74、77、79、80、81、82、83、84、85、88、89、90および91。
【0244】
実施例3.ヒトパピローマウイルス(HPV)
本実施例では、実施例1でHCVエピトープについて記載したのと同様にしてHPVの優れた免疫特性を備えた可能なncORFエピトープを同定する。その結果を以下の表7に示す。
【0245】
【表163】

【0246】
【表164】

【0247】
【表165】

【0248】
【表166】

【0249】
【表167】

【0250】
【表168】

【0251】
【表169】

【0252】
【表170】

【0253】
【表171】

【0254】
【表172】

【0255】
【表173】

【0256】
【表174】

【0257】
【表175】

【0258】
【表176】

【0259】
【表177】

【0260】
【表178】

【0261】
【表179】

【0262】
【表180】

【0263】
【表181】

【0264】
【表182】

【0265】
【表183】

【0266】
【表184】

【0267】
【表185】

【0268】
【表186】

【0269】
【表187】

【0270】
【表188】

【0271】
【表189】

【0272】
【表190】

【0273】
【表191】

【0274】
【表192】

【0275】
【表193】

【0276】
【表194】

【0277】
【表195】

【0278】
【表196】

【0279】
【表197】

【0280】
【表198】

表7
【0281】
実施例4.インフルエンザ
KLK/o−d(IC)13とともにインフルエンザAウイルスからのncORF由来ペプチドを用いたマウスのワクチン接種。ワクチン接種の7日後に特異的なT細胞応答を測定し、その後、被験動物を致死量のマウス適合インフルエンザAウイルス(×31)で攻撃する。生存を15日間モニターする。
【0282】
材料
マウス:C57B1/6(Harlan-Winkelmann、ドイツ)
ペプチドp82(GLCTLVAML):EBV;HLA−A0201;アミノ酸開始280からの対照ペプチド
p1574(IASNENMETM):インフルエンザ核タンパク質、アミノ酸開始365からの対照ペプチド
p1569(TMLYNKMEF):セグメント1、フレーム1、ORF1、アミノ酸開始569からのFlu ncORF由来ペプチド
p1600(SSIAAQDAL):セグメント3、フレーム6、ORF2、アミノ酸開始83からのFlu ncORF由来ペプチド
p1664(VTILNLALL):セグメント4、フレーム5、ORF6、アミノ酸開始9からのFlu ncORF由来ペプチド
投与量:100μg/ペプチド/マウス。
【0283】
o−d(IC)13(=ODN1a):ODN 5’ICI CIC ICI CIC ICI CIC ICI CIC IC3’をPurimex Nucleic Acids Technology、ゲッチンゲンにより合成した。
投与量:5ナノモル/マウス。
【0284】
KLK:KLKLLLLLKLK−COOHをMPS(Multiple Peptide System、米国)により合成した。
投与量:127ナノモル/マウス。
調合:270mMソルビトール/10mM Hepes
【0285】
インフルエンザAウイルス:×31、マウス適合インフルエンザAウイルス、A/Pr/8/34(セグメント1、2、3、5、7、8)およびA/Aichi/2/68(セグメント4、6)からの組換え(rec.)ウイルス
【0286】
実験条件(15匹のマウス/群)
1.p1574 + KLK + o−d(IC)13
2.p1569 + KLK + o−d(IC)13
3.p1600 + KLK + o−d(IC)13
4.p1664 + KLK + o−d(IC)13
5.p1600 + p1569 + KLK + o−d(IC)13
【0287】
第0日目にマウスの両後肢に上記化合物を含む全量100μl(50μl/足)を皮下注射した。第7日目に、各実験群についてペプチド特異的なIFN−γ産生細胞の数を計数するために5匹のマウスからの分離していない脾細胞を96ウエルELIspotプレートで刺激した。残りの10匹のマウスはマウス適合×31インフルエンザAウイルス(510E5 pfu)で攻撃した。生存を15日間モニターした。
【0288】
結果(ELIspot;図5a)
1群および3群(ペプチドp1574およびp1600)の脾細胞は、各ペプチドで再刺激した後に特異的なスポットを示さない。2群および4群(p1569およびp1664)は再刺激後にIFN−γを特異的に放出する。5群は2つの個々のペプチド(混合物としてではなく、p1600およびp1569)でワクチン接種した。両ペプチドの混合物かまたはp1569のいずれかで再刺激すると特異的なサイトカイン放出が検出される。対照的に、p1600単独で再刺激するとIFN−γスポットは検出できない。これは3群(p1600単独)と一致するものである。
【0289】
結果(攻撃;図5b)
図5bは、致死量のマウス適合インフルエンザAウイルス×31で攻撃したマウスの生存率を示す。1群(p1574、H2−Dbについて報告された防御ペプチド)は攻撃した全マウスの30%を防御する。ペプチドp1569は全く防御を与えない。対照的に、ペプチドp1600およびp1664は、それぞれ攻撃した動物の50%および62%を防御する。動物を2つの異なるペプチドでワクチン接種すると(5群、ペプチドp1600およびp1664)、動物の70%が防御される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性ウイルスの別のリーディングフレームによりコードされるポリペプチドであって、
メチオニンアミノ酸残基から開始され、
抗原決定基を含み、かつ
7を超えるアミノ酸残基を含む
ことを特徴とするポリペプチド、および7を超えるアミノ酸を含む該ポリペプチドの断片。
【請求項2】
該病原性ウイルスが、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、F型肝炎ウイルス(HFV)、G型肝炎ウイルス(HGV)、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス(FMDV)、エボラウイルス、HTLVI、HTLVII、SIV、パルボウイルス、パピローマウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、帯状疱疹ウイルス(HZV)、麻疹ウイルスおよび発癌ウイルスよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項3】
少なくとも1の細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項4】
A0201、A1、A24、A3、A31、B3501、B4403、B7、B8、とりわけA0201、またはそれらの混合物よりなる群から選ばれたHLA対立遺伝子に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープを含むことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項5】
少なくとも1のTヘルパー細胞エピトープを含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項6】
DP、DQ、DRまたはそれらの混合物よりなる群から選ばれたHLA対立遺伝子に対するTヘルパー細胞エピトープを含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項7】
表2a)〜2n)(配列番号1〜822)に列挙した群から選ばれるポリペプチドまたは7を超えるアミノ酸を含む該ポリペプチドの断片。
【請求項8】
表4a)〜4n)に列挙した群から選ばれた断片、好ましくは50またはそれ以上のスコアを有する断片、さらに好ましくは200を超えるスコアを有する断片、とりわけ500を超えるスコアを有する断片を含むかまたは該断片からなるポリペプチド。
【請求項9】
表6に列挙され7を超えるアミノ酸残基を含むポリペプチド(配列番号823〜874)または7を超えるアミノ酸残基を含む該ポリペプチドの断片。
【請求項10】
担体、とりわけ免疫修飾物質にコンジュゲートしていることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項11】
ポリカチオン性物質、とりわけポリカチオン性ポリペプチド、および免疫修飾核酸、とりわけデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン含有オリゴデオキシヌクレオチドよりなる群から選択される免疫修飾物質にコンジュゲートしていることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項12】
少なくとも1のT細胞エピトープを含むことを特徴とする、請求項1ないし11のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項13】
該病原性ウイルスの機能的なリーディングフレームの相補鎖を読みとる別のリーディングフレームによってコードされることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項14】
表4a、4c、4e、4g、4i、4kおよび4mに列挙され、50またはそれ以上のスコア、より好ましくは200を超えるスコア、とりわけ500を超えるスコアを有するペプチドの群から選択される少なくとも1のペプチドを含むことを特徴とする、請求項1ないし13のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項15】
治療剤として使用することを特徴とする、請求項1ないし14のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項16】
N末端またはC末端の少なくとも一方に2ないし7のアミノ酸からなるテールを含み、該アミノ酸がF、I、L、A、Y、WまたはCから選ばれることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項17】
N末端またはC末端の少なくとも一方に2ないし7のアミノ酸からなるテールを含み、該アミノ酸がEまたはDから選ばれることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項18】
50またはそれ以上のスコア、さらに好ましくは200を超えるスコア、とりわけ500を超えるスコアを有し、表7に列挙したペプチドの群から選ばれるペプチドを含むことを特徴とする、請求項1ないし17のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の1またはそれ以上のポリペプチドまたは断片を含む医薬組成物。
【請求項20】
ポリカチオン性物質、とりわけポリカチオン性ポリペプチド、および免疫修飾核酸、とりわけデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン含有オリゴデオキシヌクレオチドよりなる群から好ましくは選択される免疫修飾物質をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
病原性ウイルスの構造的または機能的ポリペプチドまたはその断片、とりわけ抗原決定基を含む構造的または機能的ポリペプチドまたはその断片をさらに含むことを特徴とする、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1ないし18のいずれかに記載の1またはそれ以上のポリペプチドまたは断片を単位投与当たり1ng〜1g、好ましくは100ng〜10mg、とりわけ10μg〜1mg含むことを特徴とする、請求項19ないし21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
ワクチンとして調合することを特徴とする、請求項19ないし22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
さらなる活性成分、とりわけ免疫強化サイトカイン、抗炎症物質、抗菌物質またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項19ないし23のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
ポリカチオン性ペプチド、とりわけポリアルギニン、ポリリシンよりなる群から選ばれたポリカチオン性ポリマー、または抗菌ペプチド、とりわけカテリシジン由来の抗菌ペプチド、または成長ホルモン、とりわけヒト成長ホルモンをさらに含むことを特徴とする、請求項19ないし24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
補助物質、とりわけ薬理学的に許容しうる担体、緩衝物質、安定化剤またはそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする、請求項19ないし25のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項27】
該病原性ウイルスの感染の治療または予防用医薬を製造するための請求項1ないし18のいずれかに記載のポリペプチドまたは断片の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate


【公開番号】特開2009−298821(P2009−298821A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227627(P2009−227627)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【分割の表示】特願2004−523778(P2004−523778)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】