説明

癌の処置における治療標的としてのチロシンキナーゼ受容体TYRO3

本発明は、TYRO3阻害剤を使用することにより癌を処置するための新たな方法及び癌を処置するための目的の新たな分子を同定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医学の分野、特に癌の処置に関する。それは、癌の処置の新たな方法及び癌の処置における有用な分子のスクリーニングの方法に関する。
【0002】
発明の背景
癌は、細胞分裂が制御から外に出た場合に生じ、DNA修復経路の欠陥、正常遺伝子の癌遺伝子への形質転換、又は腫瘍抑制遺伝子の機能障害に起因する。多くの異なる形態の癌が存在する。これらの癌の発生率は変動する。しかし、それは最も発展した国において、心臓病に続き2番目に高い死亡原因を表す。
【0003】
膀胱癌は発生率に関して5番目の癌である。それは、表在性病変として尿路上皮(Ta及び上皮内癌(CIS))又は固有層(T1)又は筋肉浸潤性病変(T2−T4)に限定していると思われる。腫瘍進行の2つの異なる経路が、今までに膀胱癌において記載されている:Ta経路及びCIS経路。Ta腫瘍は、最初の提示で膀胱腫瘍の50%を構成し、通常、基底膜に浸潤しない低悪性度の表在性乳頭腫瘍である。上皮内癌(CIS)も、基底膜に浸潤しないが、しかし、常に高悪性度の表在性腫瘍である。Ta腫瘍は、BCG(バシラス属カルメット・ゲラン)治療に関連する又はしない外科的切除術にもかかわらず、しばしば再発するが、しかし、稀に筋肉浸潤性疾患(T2−T4)に進行するのに対し、CISはしばしばT2−T4腫瘍に進行する。筋肉浸潤性膀胱癌に関して、標準処置は嚢胞切除術である。この根治処置にもかかわらず、筋肉浸潤性膀胱癌は、大半の患者にとって依然として致命的な疾患である。
【0004】
今日までに、多くの再発性の染色体変化が膀胱癌において記載されている場合でさえ、少数の遺伝子だけが腫瘍進行に関係していることが実証されている(p53遺伝子、CDKN2A、RB1、E2F3、FGFR3)。
【0005】
したがって、適切な膀胱腫瘍処置、特に新たなより効果的な治療剤についての有意な必要がある。
【0006】
発明の要約
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書において、TYRO3がいくつかの型の腫瘍(膀胱腫瘍を含む)において過剰発現され、腫瘍細胞の生存に関与することを実証する。さらに、本発明者らは、TYRO3の阻害又は枯渇を誘導する化合物を使用して、TYRO3を過剰発現する癌を処置できることを示す。
【0007】
本発明は、癌、特に膀胱癌を処置するための新たな治療剤を提供する。
【0008】
第1の局面において、本発明は、TYRO3を過剰発現する癌の処置における使用のためのTYRO3チロシンキナーゼの阻害剤に関する。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0009】
本発明は、また、TYRO3を過剰発現する癌の処置おける使用のための、TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤及び医薬的に許容可能な担体/賦形剤を含む医薬的組成物に関する。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0010】
TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤は、好ましくは、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、TYRO3可溶性ベイト(bait)、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、及びTYRO3チロシンキナーゼ活性を阻害する小分子からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤は、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、TYRO3可溶性ベイト、及びキナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体からなる群より選択される。特定の実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤は、RNAi、TYRO3発現に特異的に干渉するアンチセンス核酸又はリボザイムである。
【0011】
好ましい実施態様において、阻害剤は、siRNA、特に配列番号1の配列を含むsiRNAである。
【0012】
別の実施態様において、阻害剤はTYRO3可溶性ベイトである。特定の実施態様において、TYRO3可溶性ベイトは、受容体の少なくとも細胞外ドメイン又はそのドメインの1つ(Ig様又はフィブロネクチン)で構成される組換えTYRO3受容体である。別の特定の実施態様において、TYRO3可溶性ベイトはGas−6に対する抗体である。
【0013】
一実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤を、別の活性成分、特に抗腫瘍性薬物と組み合わせて使用する。特定の実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤を、膀胱腫瘍の処置と組み合わせて使用する。
【0014】
別の局面において、本発明は、TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法に関し、それにおいて、方法は以下の工程を含む:(i)候補分子をTYRO3受容体と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0015】
本発明は、また、TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法に関し、それにおいて、方法は以下の工程を含む:(i)候補分子を、TYRO3受容体を発現する細胞と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3遺伝子発現を減少させ、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0016】
TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するためのこれらの方法は、場合によりさらに、TYRO3を過剰発現する腫瘍の非ヒト動物モデルにおいてインビトロで選択された分子を投与し、疾患進行に対する効果を分析する工程を含みうる。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍であり、TYRO3を過剰発現する腫瘍の非ヒト動物モデルは、膀胱腫瘍の非ヒト動物モデルである。
【0017】
本発明は、さらに、TYRO3を過剰発現する癌を被験者において処置するための方法に関し、それにおいて、方法は、治療的有効量のTYRO3チロシンキナーゼ阻害剤を被験者に投与する工程を含む。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0018】
最後に、本発明は、TYRO3を過剰発現する癌の処置のための医薬の調製のためのTYRO3チロシンキナーゼ阻害剤の使用に関する。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1は、膀胱腫瘍及び膀胱癌細胞株におけるTYRO3発現を示す。ヒト膀胱癌腫瘍におけるmRNA発現レベルを、Affymetrix U95A DNAマイクロアレイを使用して評価した(図1A)。異なる群間での発現における差を、ANOVA検定を使用して比較した(図1B)。
【図1B】図1は、膀胱腫瘍及び膀胱癌細胞株におけるTYRO3発現を示す。ヒト膀胱癌腫瘍におけるmRNA発現レベルを、Affymetrix U95A DNAマイクロアレイを使用して評価した(図1A)。異なる群間での発現における差を、ANOVA検定を使用して比較した(図1B)。
【図2A】図2は、膀胱腫瘍及び膀胱癌細胞株におけるGAS6発現を示す。ヒト膀胱癌腫瘍におけるmRNA発現レベルをAffymetrix U95A DNAマイクロアレイを使用して評価し(図2A)、異なる群間での発現における差を、ANOVA検定を使用して比較した(図2B)。
【図2B】図2は、膀胱腫瘍及び膀胱癌細胞株におけるGAS6発現を示す。ヒト膀胱癌腫瘍におけるmRNA発現レベルをAffymetrix U95A DNAマイクロアレイを使用して評価し(図2A)、異なる群間での発現における差を、ANOVA検定を使用して比較した(図2B)。
【図3】図3は、Q−RT−PCRにより評価された、ヒト膀胱癌細胞株T24、MGH−U3、RT4、KK47、TCCSUP、EJ138、J82、及びRT112における、ならびにNHU正常尿路上皮由来細胞株におけるTYRO3及びGAS6のmRNA発現レベルを示す。
【図4】図4は、MGH−U3細胞におけるTYRO3サイレンシングの効率を示す。細胞を50nM siRNA(siRNA抗TYRO3(配列番号1)又はコントロールsiRNA(スクランブル、配列番号2))を用いてトランスフェクトし、TYRO3サイレンシングの効率をウエスタンブロットによりトランスフェクションの72時間後に評価した。
【図5】図5は、膀胱癌細胞の生存率に対するTYRO3ノックダウンの効果を表わすグラフを示す。図4の説明文に記載されるトランスフェクション後、細胞を、トランスフェクションから72時間後にトリプシンを用いて処理し、トリパンブルーを用いて染色し、生存細胞を3通りにMalassez血球計数器を使用してカウントした。結果は、3重で行われた2つの独立した実験での平均値±SDである。
【図6】図6は、膀胱癌細胞の生存率に対するTYRO3抗体の効果を示す。細胞を、TYRO3の細胞外ドメインに対する種々の濃度のポリクローナル抗体(ヤギ抗Rse(N18)、Santa-Cruz biotechnology)の存在において72時間インキュベートし、細胞生存率をMTTアッセイにより測定した。
【図7】図7は、細胞生存率に対する組換え可溶性TYRO3受容体の効果を示す。2つのIg様ドメイン(aa1−220)及び2つのフィブロネクチンIIIドメイン(aa220−421)で構成されるTYRO3の細胞外ドメイン(421aa)を細菌中で産生させ、精製した。細胞を、種々の量のこの可溶性受容体の存在において72時間インキュベートし、細胞生存率をMTT取り込みにより測定した。
【図8】図8は、トランスフェクト膀胱癌細胞でのTUNELアッセイの結果を示す。3×10個細胞/ウェルを、24ウェルプレート中のガラススライドに播種し、50nM siRNAを用いてトランスフェクトした。DNAフラグメント化を、トランスフェクションから72時間後、製造者の指示に従って、TUNEL(デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)媒介性ニック末端標識)アッセイ検出キット(Roche Diagnostic, Meylan, France)を使用して評価した。本発明者らは、光学顕微鏡下で600個の細胞を分析し、標識細胞の割合を決定した。
【図9】図9は、siRNAトランスフェクションから72時間後のフローサイトメトリーによる細胞周期分析を示す。結果を、フィッシャー検定を使用して分析した(***p<0.001、*0.01<p<0.05)。
【図10】図10は、足場非依存性コロニー形成に対するTYRO3ノックダウンの効果を表わすグラフを示す。10%FCS及び0.3%アガーを添加したDMEM中の2.10個の50nM siRNAトランスフェクト細胞を、12ウェルプレート上で培地及び0.8%アガーを含む3重のウェルに加えた。プレートを2週間インキュベートし、50μmより大きい直径を伴うコロニーを、測定格子を備えた位相差顕微鏡を使用して陽性とスコア化した。結果は、3重に行われた2つの独立した実験での平均値±SDである。
【図11A】図11は、異種移植J82腫瘍の増殖に対するTYRO3 siRNAの効果を示す。腫瘍を持つマウスを、4μgのsiRNA(コントロール又はTYRO3)の腹腔内注射により1週間に3回処置した(6匹のマウス及び12個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図11Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01;**,0.01<p<0.001;***,p<0.001)。挿入は、処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像である。上線の腫瘍は、コントロールsiRNA処置マウスのものである。下線の腫瘍は、TYRO3 siRNA処置マウスのものである。腫瘍を実験の終わりに秤量した(図11B)。
【図11B】図11は、異種移植J82腫瘍の増殖に対するTYRO3 siRNAの効果を示す。腫瘍を持つマウスを、4μgのsiRNA(コントロール又はTYRO3)の腹腔内注射により1週間に3回処置した(6匹のマウス及び12個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図11Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01;**,0.01<p<0.001;***,p<0.001)。挿入は、処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像である。上線の腫瘍は、コントロールsiRNA処置マウスのものである。下線の腫瘍は、TYRO3 siRNA処置マウスのものである。腫瘍を実験の終わりに秤量した(図11B)。
【図12A】図12は、異種移植J82腫瘍の増殖に対するTYRO3 siRNAの効果を示す。腫瘍を持つマウスを、4μgのsiRNA(コントロール又はTYRO3)の腹腔内注射により1週間に3回処置した(6匹のマウス及び12個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図12Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01,**,0.01<p<0.001,***,p<0.001)。挿入は、処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像である。上線の腫瘍は、TYRO3 siRNA処置マウスのものである。中線の腫瘍は、コントロールsiRNA処置マウスのものである。下線の腫瘍は、PBS処置マウスのものである。腫瘍を実験の終わりに秤量した(図12B)。
【図12B】図12は、異種移植J82腫瘍の増殖に対するTYRO3 siRNAの効果を示す。腫瘍を持つマウスを、4μgのsiRNA(コントロール又はTYRO3)の腹腔内注射により1週間に3回処置した(6匹のマウス及び12個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図12Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01,**,0.01<p<0.001,***,p<0.001)。挿入は、処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像である。上線の腫瘍は、TYRO3 siRNA処置マウスのものである。中線の腫瘍は、コントロールsiRNA処置マウスのものである。下線の腫瘍は、PBS処置マウスのものである。腫瘍を実験の終わりに秤量した(図12B)。
【図13】図13は、Q−RT−PCRにより評価された、処置腫瘍及びコントロール腫瘍におけるTBP(TATA結合タンパク質)のmRNAレベル±SDにより割った、最後のsiRNA注射から3日後でのMGH−U3異種移植についてのTYRO3 mRNAレベルを示すグラフである。
【図14A】図14は、細菌において産生されたTYRO3の組換え細胞外ドメインからなるTYRO3組換え可溶性受容体の異種移植MGH−U3腫瘍の増殖に対する効果を示す。腫瘍を持つマウスを、80μgのTYRO3可溶性受容体又はPBSの腫瘍内注射により1週間に3回処置した(7匹のマウス及び14個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図14Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01;**,0.01<p<0.001;***,p<0.001)処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像を図14Bに示す。
【図14B】図14は、細菌において産生されたTYRO3の組換え細胞外ドメインからなるTYRO3組換え可溶性受容体の異種移植MGH−U3腫瘍の増殖に対する効果を示す。腫瘍を持つマウスを、80μgのTYRO3可溶性受容体又はPBSの腫瘍内注射により1週間に3回処置した(7匹のマウス及び14個の腫瘍/群)(最初の注射が0日に対応する)。腫瘍容積の変動を、図14Aのグラフに表わす。(ウィルコクソン順位和検定:*,0.05<p<0.01;**,0.01<p<0.001;***,p<0.001)処置の終わりに観察された代表的な腫瘍の像を図14Bに示す。
【図15】図15は、TYRO3可溶性受容体又はPBSを用いて処置された異種移植MGH−U3腫瘍でのTUNELアッセイの結果を示す。処置の開始から18日後にマウスを屠殺し、腫瘍をパラフィン包埋した。DNAフラグメント化を、次に、製造者の指示に従って、TUNEL(デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Tdt)媒介性ニック末端標識)アッセイ検出キット(Roche Diagnostic, Meylan, France)を使用して評価した。観察された代表的な視野の像を示す。
【図16A】図16は、異なる癌におけるTYRO3過剰発現を示す。Oncomineのウェブサイトを使用したヒト腫瘍におけるTYRO3の差次的発現分析(Rhodes et al., 2004)。正常(白色、左パネル)組織と比較した、腫瘍(灰色、右パネル)でのTYRO3遺伝子発現レベルの有意な上方調節(p<0.01)を示す試験を表わす(図16A)。この分析のために使用されるデータについての詳細を図16Bに提供する。
【図16B】図16は、異なる癌におけるTYRO3過剰発現を示す。Oncomineのウェブサイトを使用したヒト腫瘍におけるTYRO3の差次的発現分析(Rhodes et al., 2004)。正常(白色、左パネル)組織と比較した、腫瘍(灰色、右パネル)でのTYRO3遺伝子発現レベルの有意な上方調節(p<0.01)を示す試験を表わす(図16A)。この分析のために使用されるデータについての詳細を図16Bに提供する。
【図17】図17は、GeneSapiens DataBase(Kilpinen et al., 2008)より抽出された正常組織(図16B)の大スペクトルにわたるTYRO3遺伝子発現のプロットを示す。
【図18】図18は、GeneSapiens DataBase(Kilpinen et al., 2008)より抽出された腫瘍組織の大スペクトルにわたるTYRO3遺伝子発現のプロットを示す。
【0020】
発明の詳細な説明
一連の80の膀胱癌、5つの正常膀胱尿路上皮、及び10の膀胱腫瘍細胞株においてトランスクリプトームを分析することにより、本発明者らは:
− 正常尿路上皮サンプルと比較し、膀胱癌のほぼ70%において過剰発現されるチロシンキナーゼ受容体TYRO3を同定し、この過剰発現は病期及び悪性度に非依存的であり;
− TYRO3リガンドの1つであるGAS6が、正常尿路上皮及び表在性腫瘍と比較し、浸潤癌においても過剰発現されることに注目し;そして
− 膀胱腫瘍細胞の生存におけるTYRO3の重要性を機能的に実証した。
【0021】
QPCR分析によってAffymetrixトランスクリプトームデータが検証され、そのようにして、大半の膀胱腫瘍サンプルにおいてTYRO3の過剰発現が示された。in situハイブリダイゼーションによって、TYRO3が膀胱腫瘍上皮細胞により発現されるのに対し、GAS6が間質細胞により主に発現されることが実証された。遺伝子発現をノックダウンするためのsiRNA又は組換えTYRO3可溶性受容体(受容体の細胞外ドメインで構成される)を使用した4つの膀胱腫瘍細胞株(2つがTYRO3だけを発現し、2つがTYRO3とGAS6の両方を発現する)におけるTYRO3の機能試験では、TYRO3がインビトロでの膀胱癌細胞の生存に必要であることが示された。これらの結果は、異種移植されたヒト膀胱腫瘍由来の細胞株を使用することによりインビボで確認された。実際に、TYRO31の不活化によって、1)細胞アポトーシスの誘導により細胞生存が阻害される;2)足場非依存性増殖が阻害され、TYRO3がクローン化可能細胞の細胞生存を調節することが実証される;3)ヌードマウスに異種移植された膀胱腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍のサイズがさらに低下する。興味深いことに、本発明者らは、その細胞外ドメインに対するポリクローナル抗TYRO3抗体を使用し、TYRO3活性阻害を通じた同じインビトロ効果を観察した。
【0022】
さらに、本発明者らは、TYRO3が膀胱腫瘍だけでなく、いくつかの他の型の癌、例えばびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌などでも過剰発現されることを実証した。
【0023】
したがって、TYRO3は、本発明者により、大半の膀胱腫瘍及びいくつかの他の型の癌において過剰発現されるチロシンキナーゼであり、腫瘍細胞の生存を誘導することが実証されている。従って、本発明は、TYRO3を過剰発現する癌、特に膀胱癌における新たな興味深い治療標的を提供する。
【0024】
今日までに、TYRO3が、少数のヒト腫瘍型(子宮の子宮筋腫(Sun et al., 2003a)、子宮の子宮体癌及び卵巣子宮内膜症(Sun et al., 2002, Sun et al., 2003b)、肺癌(Wimmel at al., 1999))において、そのリガンドと共に過剰発現又は同時発現していると記載されているが、しかし、腫瘍進行における、特に腫瘍細胞の生存におけるその役割は示唆も実証もされていない。
【0025】
その発現によってラット2線維芽細胞及びRatB1線維芽細胞が形質転換されて以来、その発癌での役割が示唆されている(lai et al., 2004; Taylor et al., 1995)。さらに、これらの発癌特性も示唆されている。なぜなら、EGF受容体の細胞外及びTYRO3の細胞内部分で構成されるハイブリッド受容体が、EGFの存在においてNIH3T3細胞を形質転換できるからである(lan et al., 2000)。
【0026】
しかし、TYRO3の潜在的な発癌での役割は、腫瘍細胞の生存におけるこの受容体の役割を開示も示唆もしない。
【0027】
最近、Kiener et al.による撤回された特許出願(WO2005000207)で、TYRO3がPCDGF(PC細胞由来の増殖因子)の受容体であることが示唆される。PCDGFが様々な癌において過剰発現されるため、この文書は、TYRO3に対するPCDGF結合の阻害が、PCDGFを過剰発現するいくつかの癌における治療的アプローチでありうることを示唆する。しかし、この文書は、それらのアプローチを支持するデータを含まない。実際に、TYRO3がPCDGFの受容体であること、及びTYRO3に対するPCDGFの潜在的な結合を阻害する分子が癌細胞に対する効果を有しうることを実証するデータはない。
【0028】
したがって、初めて、腫瘍細胞の生存におけるTYRO3の役割が記載及び証明されており、この役割は、存在するTYRO3を過剰発現する癌、特に膀胱腫瘍を処置するための新たな手段を提供する。
【0029】
チロシンキナーゼ受容体は、細胞外ドメイン(特異的リガンドに結合できる)、膜通過ドメイン、及び細胞内触媒ドメイン(選択された細胞内基質に結合し、それをリン酸化できる)で構成される。細胞外領域へのリガンドの結合は、その酵素活性化に導くチロシンキナーゼ受容体における一連の構造的な再配列を起こし、最終的に細胞外シグナルを核に伝達する細胞内タンパク質のリン酸化を通じた事象のカスケードを誘発し、遺伝子発現における変化を起こす。
【0030】
TYRO3チロシンキナーゼは、AXL/Ufo/Merチロシンキナーゼ受容体ファミリーのメンバーである。TYRO3は、BYK、Brt、Dtk、Rse、Sky、又はTifとしても公知である。Gas6(増殖停止特異的遺伝子6)及びプロテインSが、TYRO3チロシンキナーゼ活性を活性化することが記載されている。
【0031】
ポリヌクレオチド及びアミノ酸配列が、当技術分野において周知である。参照配列は、それぞれGenbank Accession Nos MN_006293.2及びNP_006284.2である。トランスクリプトームデータベースUniGeneにおけるヒトTYRO3についての参照エントリーは、Hs.381282である。
【0032】
本発明において、「TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤」は、TYRO3受容体の活性を阻害又は低下する分子である。このように、阻害剤は、TYRO3受容体を通じた細胞中への細胞外シグナルの伝達の抑制又は低下を誘導する。
【0033】
TYRO3チロシンキナーゼ活性の活性は、当技術分野において公知の任意の方法により容易にアッセイできる。第1のアッセイは、TYRO3受容体に結合する阻害剤の能力の決定でありうる。第2のアッセイは、この受容体又はこのリガンドの結合についてTYRO3受容体のリガンドと競合する阻害剤の能力の決定でありうる。第3のアッセイは、TYRO3発現レベルを減少させる阻害剤の能力の決定でありうる。第4のアッセイは、TYRO3基質のリン酸化又はTYRO3自己リン酸化を減少させる阻害剤の能力の決定でありうる。これらの異なる方法を、本文書において以下に記載し、合わせることができる。
【0034】
阻害は、受容体の細胞外ドメイン上での分子の結合に起因しうる。この場合において、阻害剤は、受容体のリガンド結合ドメイン又は別のドメインに結合するアンタゴニスト、又は立体障害もしくは改変により受容体の活性を改変する分子でありうる。この阻害剤は、例えば、小分子、アプタマー、又は受容体の細胞外ドメインに対する抗体でありうる。阻害活性は、結合アッセイ、競合結合アッセイ、又はリン酸化アッセイを通じて決定できる。
【0035】
阻害は、例えば、細胞表面の受容体数の減少ひいては細胞外シグナル伝達の低下を誘導する特異的なRNAi、アンチセンス、又はリボザイムを使用することによる、受容体をコードする遺伝子の発現の低下又は抑制にも起因しうる。阻害活性は、タンパク質レベル又はRNAレベルでのTYRO3の発現レベルの測定を通じてアッセイできる。阻害活性は、また、TYRO3又はTYRO3基質のリン酸化を通じてアッセイできる。
【0036】
TYRO3受容体のリガンドに結合するベイトの使用によって、これらのリガンドについての競合によるこの受容体の活性の低下又は抑制を誘導することもできる。実際に、TYRO3のこれらのベイトトラップリガンドは、結果的に、TYRO3活性化のための利用可能なリガンドの濃度を減少させる。これらのベイトは、膜中(例えばドミナントネガティブ受容体など)又は細胞外液中(例えば可溶性受容体など)に配置できる。これらのベイトは、また、TYRO3リガンドに対する抗体でありうる。阻害活性は、機能的TYRO3受容体とそのリガンドの間での結合の減少を決定するために、競合アッセイを通じて決定できる。阻害活性は、また、TYRO3又はTYRO3基質のリン酸化を通じてアッセイできる。
【0037】
本発明の特定の実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤は、好ましくは、チロシンキナーゼ活性を阻害する小分子、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、及びTYRO3可溶性ベイトからなる群より選択される。
【0038】
好ましい実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤は、好ましくは、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、及びTYRO3可溶性ベイトからなる群より選択される。
【0039】
本明細書で使用する「チロシンキナーゼ活性を阻害する小分子」という用語は、有機又は無機化合物でありうる小分子を指し、通常、1000ダルトン未満で、TYRO3チロシンキナーゼの活性を阻害又は低下させる能力を伴う。この小分子は、任意の公知の生物(限定はされないが、動物、植物、細菌、真菌、及びウイルスを含む)又は合成分子のライブラリーに由来しうる。チロシンキナーゼ活性を阻害する小分子は、本文書にさらに記載する方法を用いて同定できる。
【0040】
特定の実施態様において、この分子は、CHIR−258/TKI−258(Novartis Pharmaceuticals)、CI−1033(Pfizer Pharmaceuticals)、EKB−569(Wyeth Pharmaceuticals)、エルロチニブ/タルセバ(登録商標)(OSI Pharmaceuticals)、MLN−8054(Millennium Pharmaceuticals)、スタウロスポリン(Calbiochem)、SU−14813(Pfizer Pharmaceuticals)、スニチニブ/スーテント(登録商標)(Pfizer Pharmaceuticals)、及びZD−6474(AstraZeneca Pharmaceuticals)からなる群より選択される(Karaman et al., 2008も参照のこと)。
【0041】
本明細書において使用する「抗体」という用語は、広く、任意の免疫学的結合剤、例えばIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、ならびにヒト化抗体又はキメラ抗体などを指すことを意図する。特定の実施態様において、IgG及び/又はIgMが好ましい。なぜなら、それらは生理学的状況において最も一般的な抗体であり、それらは最も容易に製造されるからである。「抗体」という用語を使用し、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指し、抗体フラグメント、例えばFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)、及び同様のものなどを含む。種々の抗体ベースの構築物及びフラグメントを調製及び使用するための技術は、当技術分野において周知である。抗体を調製し、特徴付けるための手段も当技術分野において周知である(例、Harlow and Lane, 1988を参照のこと)。
【0042】
「ヒト化」抗体は、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンの定常及び可変フレームワーク領域を動物免疫グロブリンの結合領域(例、CDR)と融合した抗体である。本発明において考慮する「ヒト化」抗体は、マウス、ラット、又は他の種からのキメラ抗体であり、ヒト定常及び/又は可変領域ドメイン、二重特異性抗体、組換え抗体及び改変抗体、ならびにそのフラグメントを持つ。そのようなヒト化抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性を保持するが、しかし、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するよう設計される。
【0043】
「キメラ」抗体は、(a)定常領域、又はその部分が変化、置換、又は交換されて、抗原結合部位(可変領域)が異なる又は変化したクラス、エフェクター機能及び/又は種の定常領域あるいはキメラ抗体に新たな特性を与える完全に異なる分子(例、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物など)に連結される;あるいは(b)可変領域、又はその部分が異なる又は変化した抗原特異性を有する可変領域と変化、置換、又は交換される抗体分子である。
【0044】
特に、「TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体」という用語は、TYRO3チロシンキナーゼの細胞外ドメインに結合し、その活性を遮断又は低下させることができる上記の抗体を指摘する。この阻害は、結合リガンドを妨げる立体障害又は改変に起因しうる。
【0045】
好ましい実施態様において、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体は、抗Rse(N−18)抗体(Santa-Cruz biotechnology)である。
【0046】
本明細書において使用する「キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体」は、リガンドに結合できるが、しかし、シグナルの伝達が欠損している受容体である。結果的に、ドミナントネガティブ受容体の過剰発現は、シグナル伝達を遮断することにより受容体シグナルに影響を及ぼす。細胞表面でのそのようなドミナントネガティブ受容体の存在は、リガンドについての競合を誘導し、活性受容体のために利用可能なリガンドの量を減少させ、ひいてはこの受容体の活性化を妨げる。本発明において、ドミナントネガティブ受容体TYRO3は、TYRO3のリガンドに結合する機能的な細胞外ドメイン及び細胞内基質のリン酸化を介して細胞内にシグナルを伝達することができない非機能的なキナーゼドメインを提示する。
【0047】
本明細書において使用する「TYRO3可溶性ベイト」という用語は、TYRO3リガンドに結合し、ひいてはそのリガンドについての競合により又は野生型の内因性受容体とのヘテロ二量体化によりTYRO3受容体の活性の低下又は抑制を誘導することができる細胞外分子を指摘する。この可溶性ベイトは、TYRO3受容体のリガンド又は受容体の細胞外ドメインに結合する能力を有する任意のペプチドで構成されうる。
【0048】
一実施態様において、TYRO3可溶性ベイトは、受容体の細胞外ドメイン、又はTYRO3リガンド又はTYRO3細胞外ドメイン(例、Ig様又はフィブロネクチンドメイン)に結合できるそのフラグメントで構成される組換えTYRO3受容体である。好ましい実施態様において、TYRO3可溶性ベイトはTYRO3受容体の全細胞外ドメインである。TYRO3の細胞外ドメイン(421aa)は、2つのIg様ドメイン(aa1−220)及び2つのフィブロネクチンIIIドメイン(aa220−421)で構成される。別の実施態様において、TYRO3可溶性ベイトは、1つ又は2つのIg様ドメインあるいは1つ又は2つのフィブロネクチンIIIドメインで構成される組換えTYRO3受容体である。必要な場合、TYRO3受容体ドメインをFcフラグメントに共役させ、受容体を安定化してもよい。
【0049】
特定の実施態様において、TYRO3可溶性ベイトはGas6及び/又はプロテインSに結合できる。
【0050】
別の特定の実施態様において、TYRO3可溶性ベイトはGas6及び/又はプロテインSに対する、好ましくはGas6に対する抗体である。Gas6及びプロテインSは、TYRO3チロシンキナーゼ活性を活性化すると記載されている。例えば、Gas6に対する抗体は、以下の抗体又はそのキメラ、ヒト化、もしくはヒト派生物の1つでありうる:モノクローナル抗体CNTO300(Fisher et al., 2005)、遮断抗ヒトGAS6 sc1935(Gould et al., 2005)、中和ポリクローナルgas6抗体(Stenhoff et al.,2004)、及び他の市販の抗Gas6抗体(Santa Cruz Biotechnology:カタログナンバー:sc−1935、sc−22759、sc−74035、sc−1936、sc−16660;R&D Systems:カタログ参照:MAB885及びAF885;Novus Biologicals:カタログ参照:H00002621−D01P、NBP1−00843、H00002621−A01、H00002621−B01;IBL-America(Immuno-Biological Laboratories):カタログ参照BW02563;Bioworld Technology:カタログナンバー:BS2563;Atlas Antibodies:カタログナンバー:HPA008275;Acris Antibodies GmbH:カタログナンバー:AP01178PU−N;Abcam:カタログナンバー:ab67099;及びSigma Aldrich:カタログナンバー:HPA008275)。
【0051】
本発明のTYRO3チロシンキナーゼの阻害剤は、また、核酸分子でもよい。「核酸分子」という用語は、限定はされないが、RNAi、アンチセンス、及びリボザイム分子を含む。
【0052】
本発明において、「TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子」は、TYRO3受容体をコードする遺伝子の発現を、特異的な方法で、低下又は抑制することができる核酸分子である。
【0053】
「RNAi」又は「干渉RNA」という用語は、標的タンパク質の発現を下方制御することが可能である任意のRNAを意味する。それは、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びショートヘアピンRNA(shRNA)分子を包含する。RNA干渉は、それによりdsRNAが標的遺伝子の発現を翻訳後レベルで特異的に抑制する現象を指す。正常な条件において、RNA干渉は、数千塩基対の長さの二重鎖RNA分子(dsRNA)により開始される。インビボで、細胞中に導入されたdsRNAは、siRNAと呼ばれるショートdsRNA分子の混合物に切断される。切断を触媒する酵素であるDicerは、RNase IIIドメインを含むエンドRNaseである(Bernstein, Caudy et al., 2001)。哺乳動物細胞において、Dicerにより産生されるsiRNAは、21〜23bp長であり、19又は20ヌクレオチド二本鎖配列、2ヌクレオチド3’オーバーハング及び5’三リン酸末端を伴う(Zamore, Tuschl et al., 2000; Elbashir, Lendeckel et al., 2001; Elbashir, Martinez et al., 2001)。
【0054】
多くの特許及び特許出願において、一般的な用語で、遺伝子発現を阻害するsiRNA分子の使用が記載されている。例えば、WO 99/32619、US 20040053876、US 20040102408、及びWO 2004/007718である。
【0055】
siRNAは、通常、翻訳開始コドンから50〜100ヌクレオチド下流の領域に対して設計されるのに対し、5’UTR(非翻訳領域)及び3’UTRは通常回避される。選ばれたsiRNA標的配列を、ESTデータベースに対するBLASTサーチに供し、所望の遺伝子だけが標的化されることを確実にすべきである。種々の産物が市販されており、siRNAの調製及び使用を助ける。
【0056】
好ましい実施態様において、RNAi分子は、少なくとも約15〜50ヌクレオチド長、好ましくは約20〜30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20〜25ヌクレオチド長のsiRNAである。
【0057】
特定の実施態様において、siRNA分子は配列番号1の配列を含む。
【0058】
RNAiは、天然RNA、合成RNA、又は組換え産生されたRNA、ならびに1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は変化により天然RNAとは異なる、変化したRNAを含みうる。そのような変化は、例えば分子の末端にあるいはRNAiの1つ又は複数の内部ヌクレオチドなどへの非ヌクレオチド材料の付加を含むことができる(RNAiをヌクレアーゼ消化に対して耐性にする改変を含む)。
【0059】
RNAiを、遊離(ネイキッド)形態で、あるいは、安定性及び/又は標的化を増強する送達系(例、リポソーム)の使用により投与してもよく、あるいは、他の賦形剤、例えばヒドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル、生物接着性ミクロスフェア、又はタンパク性ベクター(WO 00/53722)などに取り込ませてもよく、又は、陽イオンペプチドと組み合わせてもよい(US 2007275923)。それらは、また、それらの前駆体又はコードDNAの形態で投与してもよい。
【0060】
特定の実施態様において、RNAiを小胞内、好ましくはリポソーム内にカプセル化する。
【0061】
アンチセンス核酸を使用して、TYRO3受容体の発現を下方調節することもできる。アンチセンス核酸は、TYRO3受容体ポリペプチドをコードするセンス核酸の全て又は一部に相補的でありうる。例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的、又はmRNA配列と相補的でありうる。それは、標的mRNAの翻訳に干渉すると考えられる。
【0062】
好ましい実施態様において、アンチセンス核酸は、TYRO3受容体ポリペプチドをコードする標的mRNAに相補的なRNA分子である。
【0063】
アンチセンス核酸は、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50ヌクレオチド長でありうる。特に、アンチセンスRNA分子は、通常、18〜50ヌクレオチド長である。
【0064】
本発明の方法における使用のためのアンチセンス核酸を、当技術分野において公知の手順を使用した化学合成及び酵素ライゲーション反応を使用して構築できる。特に、アンチセンスRNAを化学合成でき、直鎖テンプレート(例、PCR産物)又は環状テンプレート(例、ウイルスベクター又は非ウイルスベクター)からインビトロ転写により産生でき、あるいはウイルスベクター又は非ウイルスベクターからインビボ転写により産生できる。
【0065】
アンチセンス核酸を改変し、増強した安定性、ヌクレアーゼ耐性、標的特異性及び改善された薬理学的特性を有してもよい。例えば、アンチセンス核酸は、アンチセンス核酸とセンス核酸の間に形成される二本鎖の物理的安定性を増加させるように設計された改変ヌクレオチド(例、ホスホロチオネート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を含みうる。
【0066】
リボザイム分子を使用し、機能的TYRO3チロシンキナーゼのレベルを減少させることもできる。リボザイムはリボヌクレアーゼ活性を伴う触媒的RNA分子であり、それらは相補的領域を有する一本鎖核酸(例えばmRNAなど)を切断することが可能である。このように、リボザイムを使用して、mRNA転写物を触媒的に切断し、それによりmRNAによりコードされるタンパク質の翻訳を阻害できる。機能的TYRO3チロシンキナーゼに特異的なリボザイム分子を、当技術分野で一般に公知である方法により設計、産生、及び投与できる(例、Fanning and Symonds, 2006を参照のこと。ハンマーヘッドリボザイム及びショートヘアピンRNAの治療的使用を総説している)。
【0067】
「癌」又は「腫瘍」という用語は、本明細書において使用する通り、癌の原因となる細胞に典型的な特徴、例えば無制御な増殖、不死化、転移能、及び特定の特徴的な形態特性などを保有する細胞の存在を指す。この用語は任意の型の悪性腫瘍(原発性又は転移性)を指す。
【0068】
「TYRO3を過剰発現する癌」という用語は、本明細書において使用する通り、TYRO3が上方調節されている任意の型の癌又は腫瘍を指す。TYRO3の発現レベルを、当業者に周知の種々の技術により癌サンプルから決定できる。TYRO3の発現レベルを、TYRO3タンパク質又はTYRO3 mRNAの量を測定することにより、あるいはTYRO3活性を評価することにより決定できる。TYRO3発現を、定量的RT−PCRにより又は当業者に公知の任意の方法を使用してアッセイできる。腫瘍組織におけるTYRO3発現を、正常な増殖細胞株、好ましくは腫瘍と同じ組織から提供される正常細胞における発現と比較すべきである。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0069】
「膀胱腫瘍」により、本明細書において、尿路膀胱腫瘍、膀胱癌又は尿路膀胱癌、及び膀胱新生物又は尿路膀胱新生物を意図する。膀胱腫瘍は膀胱癌又は膀胱腺腫でありうる。膀胱腫瘍についての最も一般的な病期分類システムは、TNM(腫瘍、結節、転移)システムである。この病期分類システムでは、腫瘍が膀胱中にどれくらい深く増殖するか、リンパ節における癌があるか否か、及び癌が体の任意の他の部分に広がっているか否かを考慮に入れる。好ましい実施態様において、膀胱腫瘍は膀胱癌である。好ましい実施態様において、処置される膀胱癌はT病期である。また、T病期の膀胱癌は以下のサブステージを有しうる:
CIS − 非常に初期の癌細胞が膀胱内膜の最内層だけで検出される;
Ta − 癌が膀胱内膜の最内層だけにある;
T1 − 癌が膀胱内膜下の結合組織中に増殖し始めている;
T2 − 癌が結合組織を通じて筋肉中に増殖している;
T2a − 癌が表層筋中に増殖している;
T2b − 癌がより深い筋肉中に増殖している;
T3 − 癌が筋肉を通じて脂肪層中に増殖している;
T3a − 脂肪層中の癌を顕微鏡下でだけ見ることができる;
T3b − 脂肪層中の癌を検査で見ることができる、又は医師が触れることができる;
T4 − 癌が膀胱外に広がっている;
T4a − 癌が前立腺、子宮、又は腟に広がっている;
T4b − 癌が骨盤及び腹部の壁に広がっている。
【0070】
したがって、本発明により処置できる膀胱腫瘍又は癌は、表在性(Ta、T1)又は浸潤性(T2〜T4)でありうる。特定の実施態様において、本発明により処置できる膀胱癌は、任意の及び全てのTサブステージがでありうる。
【0071】
好ましい実施態様において、処置される被験者からのサンプル、特に膀胱腫瘍サンプルを、TYRO3の過剰発現についてアッセイする。したがって、TYRO3阻害剤を用いた処置は、TYRO3を過剰発現する腫瘍、特にTYRO3を過剰発現する膀胱腫瘍を有する被験者に特に適切である。
【0072】
本明細書において使用する疾患の「処置」という用語は、患者の寿命を延長させることを意図する任意の行為、例えば疾患の治療及び遅延などを指す。処置は、腫瘍を根絶させ、腫瘍の進行を止め、転移の発生を予防し、腫瘍の退縮を促進し、及び/又は癌の筋肉浸潤を予防するように設計できる。処置される患者は、任意の哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0073】
本発明の医薬的組成物を用いたTYRO3を過剰発現する癌の処置は、他の治療、例えば外科手術、放射線治療、又は他の化学療法などに関連しうる。
【0074】
「治療的有効量」とは、上で定義するTYRO3を過剰発現する癌の処置を構成するために十分である患者に投与される、治療剤、TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤の量が意図される。
【0075】
TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤を含む医薬的阻害剤を、当業者に公知である標準的な医薬的慣行に従い製剤化する(例、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照のこと)。
【0076】
可能な医薬的組成物は、経口、直腸、膀胱内、局所(経皮的、バッカル、及び舌下を含む)、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内を含む)投与に適するものを含む。これらの製剤のために、従来の賦形剤を、当業者に周知の技術に従って使用できる。
【0077】
非経口投与のための組成物は、一般的に、生理学的に適合する無菌溶液、又は、場合により使用直前に固体又は凍結乾燥形態から調製できる懸濁剤である。アジュバント、例えば局所麻酔剤、保存剤、緩衝剤などを賦形剤中に溶解でき、界面活性剤又は湿潤剤を組成物中に含め、活性成分の均一分布を促進できる。
【0078】
経口投与のために、組成物を、従来の経口投薬の形態、例えば錠剤、カプセル、粉末、果粒、及び液状調製物(例えばシロップ、エリキシル、及び濃縮点滴)などに製剤化できる。非毒性の固形担体又は希釈剤を使用してもよく、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などを含む。圧縮錠剤のために、結合剤(粉末材料に粘着質を与える薬剤である)も必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、糖(例えばラクトース又はデキストロースなど)、及び天然ガム又は合成ガムを結合剤として使用できる。崩壊剤も錠剤中に必要であり、錠剤の分解を促進させる。崩壊剤は、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム、及び架橋ポリマーを含む。さらに、潤滑剤及び流動促進剤も錠剤中に含まれ、製造プロセス中での錠剤材料の表面への付着を予防し、製造中での粉末材料の流動特徴を改善する。コロイド状二酸化ケイ素が、流動促進剤として最も一般的に使用される。化合物、例えばタルク又はステアリン酸が、滑沢剤として最も一般的に使用される。
【0079】
経皮投与のために、組成物を、軟膏、クリーム、又はゲルの形態に製剤化でき、適切な浸透剤又は界面活性剤を使用し、浸透を促進させることができうる(例えばジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドなど)。
【0080】
経粘膜投与のために、点鼻薬、直腸、又は膣坐剤を使用できる。活性化合物を、当技術分野において公知の方法により、公知の坐剤基剤のいずれかに取り入れることができる。そのような基剤の例は、カカオバター、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、及び融点又は溶解速度を改変する他の適合材料を伴うこれらの混合物を含む。
【0081】
本発明の医薬的組成物を、投与して実質的に直ぐに又は投与後の事前に決められた任意の時間又は期間に活性薬物を放出するように製剤化してもよい。
【0082】
本発明の医薬的組成物は、医薬的に許容可能な賦形剤及び/又は担体に関連する1つ又は複数のTYRO3チロシンキナーゼ阻害剤を含むことができる。これらの賦形剤及び/又は担体は、上に記載する投与の形態に従って選ばれる。他の活性化合物は、また、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤、特に抗腫瘍薬物、例えばタモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、トラスツズマブ、GnRHアナログ、ゲムシタビン、ドセタキセル、パクリタキセル、マイトマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、エピルビシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ミトキサントロン(mitozantrone)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ブレオマイシン、エストラムスチンリン酸、又はエトポシドリン酸などに関連しうる。特定の実施態様において、TYRO3チロシンキナーゼ阻害剤は、膀胱癌の処置のために使用される他の分子(例、シスプラチン、アドリアマイシン、マイトマイシンC、ゲムシタビン、パクリタキセル、又はドセタキセル)に関連しうる。
【0083】
特定の実施態様において、医薬的組成物は、チロシンキナーゼ活性を阻害する小分子、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3に特異的なRNAi分子、特にsiRNA、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、Gas6に対する抗体、及びTYRO3可溶性受容体からなる群より選択されるTYRO3チロシンキナーゼの1つ又は複数の阻害剤を含む。
【0084】
好ましい実施態様において、医薬的組成物は、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3に特異的なRNAi分子、特にsiRNA、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、Gas6に対する抗体、及びTYRO3可溶性受容体からなる群より選択されるTYRO3チロシンキナーゼの1つ又は複数の阻害剤を含む。
【0085】
投与されるTYRO3チロシンキナーゼの阻害剤の量は、当業者に公知の標準的な手法により決定しなければならない。患者の生理学的データ(例、年齢、サイズ、及び体重)、投与経路、及び処置される疾患を、適切な投与量を決定するために考慮しなければならない。
【0086】
TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤を、単一の用量又は複数の用量として投与してもよい。TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤がチロシンキナーゼ活性を阻害する小分子である場合、各単位用量は、例えば、200〜1000mg/kg体重、特に500〜800mg/kg体重を含みうる。TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤がTYRO3の細胞外ドメインに対する抗体である場合、各単位用量は、例えば、0.1〜20mg/kg体重、特に4〜10mg/kg体重を含みうる。TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤がTYRO3に特異的なRNAi分子である場合、各単位用量は、例えば、2〜50mg/kg体重、特に5〜20mg/kg体重を含みうる。TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤がキナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体又はTYRO3可溶性受容体である場合、各単位用量は、例えば、5〜100mg/kg体重、特に15〜70mg/kg体重を含みうる。阻害剤がGas6又はプロテインSに対する抗体である場合、各単位用量は、例えば、0.1〜20mg/kg体重、特に4〜10mg/kg体重を含みうる。
【0087】
TYRO3阻害剤を、他の活性成分、特に、他のTYRO3阻害剤と又は他の癌の処置と組み合わせて使用できる(例えばタモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、トラスツズマブ、GnRHアナログ、ゲムシタビン、ドセタキセル、パクリタキセル、マイトマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、シクロホスファミド、エピルビシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、ミトキサントロン(mitozantrone)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ブレオマイシン、エストラムスチンリン酸、又はエトポシドリン酸など)。特に、TYRO3阻害剤は、膀胱癌の他の処置、例えばBCG処置(例、WO05/077411)又は抗癌薬物(例えば、シスプラチン、アドリアマイシン、マイトマイシンC、ゲムシタビン、パクリタキセル、又はドセタキセル)と組み合わせて使用できる。この場合において、TYRO3阻害剤及び他の分子を同時に又は連続的に投与できる。
【0088】
本発明は、さらに、治療的有効量のTYRO3チロシンキナーゼ阻害剤を被験者に投与することを含む、被験者においてTYRO3を過剰発現する癌を処置するための方法を提供する。特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。好ましくは、被験者はヒトである。
【0089】
本発明は、また、TYRO3を過剰発現する癌の処置のための医薬の調製のためのTYRO3チロシンキナーゼ阻害剤の使用に関する。
【0090】
本発明は、TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法を提供する。方法は、インビボ、エクスビボ、又はインビトロの方法、好ましくはインビトロの方法でありうる。
【0091】
特定の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される。好ましい実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌は膀胱腫瘍である。
【0092】
この方法は、TYRO3受容体に結合し、TYRO3受容体のリガンドと又はリガンドについて競合し、TYRO3遺伝子発現を減少させ、又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる分子の能力の分析に基づく。
【0093】
一実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法は、以下の工程を含む:(i)候補分子をTYRO3受容体と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること。方法は、TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を決定する工程(i’)を含みうる。
【0094】
別の実施態様において、TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法は、以下の工程を含む:(i)候補分子をTYRO3受容体を発現する細胞と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3遺伝子発現を減少させ、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること。このスクリーニングのために使用される細胞は、高レベルの内因性TYRO3を発現する細胞、例えば大半の膀胱細胞株、特にJ82又はRT112細胞株、あるいはTYRO3を過剰発現する遺伝子改変細胞であり、チロシンキナーゼ活性の最適化された検出を可能にする。方法は、TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を決定する工程(i’)を含みうる。
【0095】
TYRO3受容体への分子の結合は、周知の技術、例えば表面プラズモン共鳴、熱量測定、又はBiacore技術などにより測定できる。
【0096】
TYRO3受容体のリガンドと又はリガンドについて競合する分子の能力は、例えば、標識リガンド、特に放射性標識リガンド、Biacore、又は分光学的観察を用いた競合実験により評価できる。
【0097】
TYRO3遺伝子発現は、異なる周知の技術、例えば定量的RT−PCR、ノーザンブロット、ELISA、又はウエスタンブロットなどを用いて評価できる。
【0098】
TYRO3リン酸化レベルを、抗ホスホチロシン又は抗ホスホTYRO3抗体を使用したウエスタンブロット、放射性FlashPlateアッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ、又は解離増強ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)により評価できる。
【0099】
上に記載するこの方法は、さらに、上で開示する本発明のインビトロの方法により以前に選択された分子を、TYRO3を過剰発現する癌の非ヒト動物モデル、特に膀胱腫瘍の非ヒト動物モデルにおいて投与すること、及び腫瘍進行に対する効果を分析することを含む続く工程を含みうる。分子の効率を、例えば、動物の寿命、転移の発生、腫瘍の進行、癌の筋肉浸潤の発生を分析することにより評価できる。全てのこれらの特徴を、処置を伴わない、TYRO3を過剰発現する癌の非ヒト動物モデル、例えば膀胱腫瘍の非ヒト動物モデルなどからなるコントロールのものと比較しなければならない。非ヒト動物モデルは、移植腫瘍を伴うヌードマウスでもよい。特定の実施態様において、移植腫瘍は膀胱腫瘍である。
【0100】
以下の実施例は、例示の目的のために与えられ、限定のためではない。
【0101】
実施例
実施例1:膀胱腫瘍におけるTYRO−3及びGAS6過剰発現
RNAレベルを、Affymetrix DNAマイクロアレイU95Aを使用し、80の膀胱癌、5つの正常な膀胱尿路上皮において分析した。SAMソフトウェア(http://www-stat.stanford.edu/~tibs/SAM)を使用し、腫瘍サンプルと正常サンプルの間での差次的発現を示す遺伝子が同定された。パラメータ「偽発見率10%」及び「少なくとも2のSAM倍変化」を伴うSAMによって、正常尿路上皮と比較して腫瘍において有意により強く発現される823のプローブセット及び腫瘍においてあまり強く発現されない477のプローブセットが同定された。
【0102】
これらの上方制御された遺伝子の中で、TYRO−3キナーゼに焦点を合わせ、SAMを用いて得られた結果を、ANNOVA検定を使用して確認した(図1B)。各腫瘍サンプルにおけるTYRO3 RNAのレベル(MAS 5 Affymetrix DNAチップデータ)を、次に、正常サンプルにおけるTYRO3 RNAレベルの分布と比較し、差を、それが3つの標準偏差を超えた場合に有意と見なした(zスコア>3,p<0.0013)。TYRO3は57/80(71%)の腫瘍において有意に発現された。この過剰発現は、腫瘍病期及び悪性度に非依存的であった(図1A)。Affymetrixデータから得られたこれらの結果は、Q−RT−PCR分析により確認された(データ示さず)。
【0103】
興味深いことに、GAS6(TYRO3の唯一の公知のリガンド)も、正常又は表在性腫瘍と比較し、浸潤腫瘍において有意に過剰発現された(正常サンプルと浸潤サンプル又は表在性腫瘍と浸潤腫瘍の間で差次的に発現された遺伝子のSAM分析、ANNOVA検定により確認)(図2A)。
【0104】
相関は、TYRO3又はGAS6遺伝子座でのmRNA発現レベルとDNAコピー数の間で観察されず、TYRO3及びGAS6の過剰発現がDNA増幅に起因しないことを示唆した。in situハイブリダイゼーションによって、TYRO3が上皮細胞により発現されるのに対し、GAS6が上皮細胞及び間質細胞の両方により発現され、それ故に、GAS6によるTYRO3の可能なオートクライン又はパラクリン活性化、及び、それ故に、それらの癌におけるTYRO3の役割の強化が示唆された(データ示さず)。TYRO3の突然変異は、種々のレベルのTYRO3 mRNAを発現する15の膀胱腫瘍サンプルのサブセットにおいて見出されなかった。
【0105】
実施例2:膀胱腫瘍細胞におけるTYRO3活性の阻害効果
膀胱癌におけるTYRO3の役割を探索するために、第1工程は、TYRO3だけを発現する表在性腫瘍及びTYRO3及びGAS6の両方を発現する浸潤腫瘍を模倣する膀胱癌由来細胞株を同定することであった。TYRO3及びGAS6 mRNAの発現レベルを、従って、8つの膀胱癌由来細胞株(T24、RT4、KK47、TCCSUP、EJ138、J82、及びRT112細胞株(ATCC)ならびにMGH−U3細胞株(Lin et al., 1985))及び1つの正常尿路上皮細胞株NHU(ATCC)においてQ−RT−PCRにより研究した(図3)。全ての試験された細胞株が、正常な細胞株と比較し、TYRO3をより強く発現し、TYRO3発現が癌依存的であり、細胞増殖に関連しないことを示唆する。
【0106】
細胞増殖及び腫瘍特性におけるTYRO3の役割を研究するために、TYRO3発現を、RNA干渉技術を使用して遮断し、又は、TYRO3活性を、TYRO3の細胞外ドメインに対する遮断抗体又は細菌中で産生されたTYRO3の組換え細胞外ドメインからなる可溶性受容体を使用して阻害した。TYRO3を発現する2つの細胞株(MGH−U3、KK47)、TYRO3及びGAS6の両方を発現する2つの細胞株(J82、RT112)、及び非常に低いTYRO3発現レベルを提示する1つのコントロールの乳癌由来細胞株(MCF−7)を使用した。TYRO3免疫沈降後での抗ホスホチロシン抗体を使用したウエスタンブロットにより、(GAS6を発現している又はしていない)各型の細胞株において、TYROが活性化されることが示された(データ示さず)。
【0107】
TYRO3 siRNAを用いたMGH−U3、KK47、J82、及びRT112細胞のトランスフェクションによって、TYRO3 mRNAレベル及びタンパク質レベルが顕著に減少した(80〜90%阻害)(MGH−U3細胞株についての結果を図4に提示する)。このTYRO3のノックダウンによって、コントロールsiRNAよりも少ない生きたMGH−U3、KK47、J82、及びRT112細胞がもたらされたのに対し(図5)、それはMCF7細胞に対しては効果を有さず、特定のsiRNAを用いたトランスフェクションに続いて観察された効果が、オフターゲットの効果ではなく特異的な遺伝子サイレンシングに起因することを示唆した。細胞増殖に対する同じ効果が、また、その細胞外ドメインに対するポリクローナル抗体(図6)又はTYRO3の細胞外ドメイン全体(aa 1〜421)からなる組換え可溶性受容体(図7)を使用したTYRO3の遮断により得られた。
【0108】
この生細胞数の減少は、増加したアポトーシス速度(図8)と細胞周期進行における有意な、しかし、低い変化(図9)に起因しうる。TYRO3ノックダウンは、また、軟寒天アッセイにおいてより少ない生きたMGH−U3、KK47、RT112、及びJ82コロニーをもたらし、TYRO3がクローン化可能癌細胞の細胞生存を調節することを実証した(図10)。
【0109】
実施例3:膀胱癌細胞増殖におけるTYRO3の役割に関するインビボ試験
それ故に、本発明者らの結果は、TYRO3がインビトロで膀胱癌の細胞生存/増殖を調節することを明らかに実証した。インビボでの膀胱癌細胞増殖におけるこの遺伝子の役割を試験した。J82及びMGH−U3細胞を無胸腺ヌードマウスに皮下移植した。一旦腫瘍が確立されると、マウスをコントロール又はTYRO3特異的siRNAsを用いた処置のために無作為に選択した。J82異種移植のために、処置の開始から2週間後に、12の内のわずか3つの腫瘍が依然として観察された(図11A及び11B)。MGH−U3異種移植のために、処置の21日後、腫瘍容積が、コントロールsiRNAを用いて処置されたマウスより、TYRO3 siRNAを用いて処置されたマウスにおいて70%低かった(ウィルコクソン順位和検定,p<0.001)(図12A及び12B)。
【0110】
この腫瘍増殖の阻害は、(最後のsiRNA注射から3日後に)1回測定されたTYRO3 mRNAレベルにおける有意な減少(スチューデントのt検定,p<0,001)に関連し、ここでこの減少が最も低いものであるはずである(図13)。組織学的差異は、処置された腫瘍とコントロール腫瘍の間で観察されなかった(データ示さず)。しかし、TUNNEL分析によって腫瘍増殖阻害が処置された腫瘍におけるアポトーシスの増加に起因することが実証された(データ示さず)。
【0111】
細菌において産生されたTYRO3の組換え細胞外ドメインからなる可溶性受容体が膀胱癌細胞増殖阻害を誘導する能力も、インビボで検査した。MGH−U3細胞を無胸腺ヌードマウスに皮下移植した。一旦腫瘍が確立されると、マウスをPBS又はTYRO3可溶性受容体を用いた処置のために無作為に選択した。処置の18日後、腫瘍容積が、PBSを用いて処置されたマウスより、TYRO3可溶性受容体を用いて処置されたマウスにおいて70%低かった(ウィルコクソン順位和検定,p<0.001)(図14A及び14B)。この腫瘍増殖の阻害は、処置された腫瘍におけるアポトーシスの増加に起因した(図15)。
【0112】
まとめると、本発明者らの結果によって、膀胱癌に関係する主要遺伝子としてTYRO3が同定され、腫瘍の病期及び/又は悪性度に非依存的に大半の症例(腫瘍の70〜75%)において上方調節されており、腫瘍細胞の生存に関与する。さらに、これらの実験によって、TYRO3の阻害又は枯渇を誘導する化合物が、膀胱腫瘍細胞の増強されたアポトーシスを惹起し、そして、結果的に、膀胱腫瘍を処置するために使用できることが実証される。
【0113】
実施例4:いくつかの型の腫瘍におけるTYRO3過剰発現
TYRO3過剰発現が膀胱腫瘍において同定され、TYRO3の抗アポトーシス的役割がこれに関連して実証されたため、本発明者らはTYRO3が他の癌に関与し、結果的に、それらの腫瘍を処置するための治療標的として使用できないか否かを疑問に思った。Oncomineウェブサイトに収集された公的に利用可能なデータを使用し、TYRO3が、正常サンプルと比較し、腫瘍において上方調節された7つの型の癌を特定した:膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、及びヘアリー細胞白血病(図16A及び16B)。本発明者は、また、前立腺癌と比較し、TYRO3発現が腫瘍進行中、即ち、転移性の前立腺癌において増加した別の癌を特定した(データ示さず)。正常組織(図17)及び腫瘍組織(図18)の大スペクトルにおいてTYRO3発現のプロットを得るためのGeneSapiensデータベースを使用し、TYRO3過剰発現が2つの他の癌型(メラノーマ及び結腸直腸癌)においても特定された。
【0114】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TYRO3を過剰発現する癌の処置における使用のためのTYRO3チロシンキナーゼの阻害剤。
【請求項2】
阻害剤が、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、及びTYRO3可溶性ベイトからなる群より選択される、請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】
TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子がRNAi、アンチセンス核酸、又はリボザイムである、請求項2記載の阻害剤。
【請求項4】
RNAiがsiRNA、特に配列番号1の配列を含むsiRNAである、請求項3記載の阻害剤。
【請求項5】
TYRO3可溶性ベイトが、受容体の細胞外ドメインの少なくとも1つのIg様又はフィブロネクチンIIIドメインで構成される組換えTYRO3受容体である、請求項2記載の阻害剤。
【請求項6】
TYRO3可溶性ベイトが、Gas6及び/又はプロテインSに対する抗体である、請求項2記載の阻害剤。
【請求項7】
TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤が、別の活性成分、特に抗腫瘍薬物と組み合わせて使用される、請求項1〜6記載のいずれか一項記載の阻害剤。
【請求項8】
TYRO3チロシンキナーゼの阻害剤及び医薬的に許容可能な担体/賦形剤を含むTYRO3を過剰発現する癌の処置における使用のための医薬的組成物。
【請求項9】
阻害剤が、TYRO3の細胞外ドメインに対する抗体、TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子、キナーゼデッドドメインを提示するドミナントネガティブ受容体、及びTYRO3可溶性ベイトからなる群より選択される、請求項8記載の医薬的組成物。
【請求項10】
TYRO3発現に特異的に干渉する核酸分子がRNAi、アンチセンス核酸、又はリボザイムである、請求項9記載の医薬的組成物。
【請求項11】
RNAiがsiRNAである、請求項10記載の医薬的組成物。
【請求項12】
TYRO3可溶性ベイトが、受容体の細胞外ドメインの少なくとも1つのIg様又はフィブロネクチンIIIドメインで構成される組換えTYRO3受容体である、請求項9記載の医薬的組成物。
【請求項13】
TYRO3可溶性ベイトが、Gas6及び/又はプロテインSに対する抗体である、請求項9記載の医薬的組成物。
【請求項14】
TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法であって、方法が以下の工程:(i)候補分子をTYRO3受容体と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること、
を含む方法。
【請求項15】
TYRO3を過剰発現する癌を処置するために適した分子をスクリーニング又は同定するための方法であって、方法が以下の工程:(i)候補分子を、TYRO3受容体を発現する細胞と接触させること、ならびに(ii)TYRO3受容体に結合し、及び/又はTYRO3受容体のリガンドと及び/又はリガンドについて競合し、及び/又はTYRO3遺伝子発現を減少させ、及び/又はTYRO3基質のリン酸化もしくはTYRO3自己リン酸化を減少させる能力を有する分子を選択すること、
を含む方法。
【請求項16】
TYRO3を過剰発現する癌の非ヒト動物モデルにおいて請求項14又は15記載の方法により選択される分子を投与し、疾患進行に対する効果を分析する工程をさらに含む、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
TYRO3過剰発現が膀胱腫瘍であり、TYRO3を過剰発現する癌の非ヒト動物モデルが膀胱腫瘍の非ヒト動物モデルである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
TYRO3を過剰発現する癌が、膀胱腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、唾液腺の腺様嚢胞癌、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、膵管腺癌、ヘアリー細胞白血病、転移性前立腺癌、メラノーマ、及び結腸直腸癌からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載の阻害剤、請求項8〜13のいずれか一項記載の医薬的組成物、又は請求項14〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
TYRO3を過剰発現する癌が膀胱腫瘍である、請求項18記載の阻害剤、医薬的組成物、又は方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−502955(P2012−502955A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527330(P2011−527330)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062091
【国際公開番号】WO2010/031828
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(591140123)
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE − HOPITAUX DE PARIS
【出願人】(509319214)ユニヴェルシテ・パリ−エスト・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS−EST CRETEIL VAL DE MARNE
【Fターム(参考)】