説明

癌処置のための組成物

本発明は、過剰増殖細胞の成長もしくは増殖の阻害または過剰増殖細胞の後退の誘導のための組成物および方法を提供する。より詳細には、本発明は、標的細胞に対して有毒なレベルにグリコーゲンを増加させるために標的細胞(例えば、過剰増殖細胞)中のグリコーゲン蓄積を刺激するための組成物および方法を提供する。1つの局面において、本願発明は、細胞中のグリコーゲンを有毒レベルに増加させる方法において、前記細胞中のグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる遺伝子産物を細胞中で発現させる工程を含む、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2002年10月29日提出の出願番号60/422,365号の優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、過剰増殖細胞の成長もしくは増殖の阻害または過剰増殖細胞の後退の誘導に関する。より詳細には、本発明は、標的細胞に対して有毒なレベルにグリコーゲンを増加させるための標的細胞中のグリコーゲン蓄積の刺激に関する。グリコーゲン蓄積を増加させる方法は、例えば、グリコーゲンの合成もしくは輸送に関与する野生型もしくは変異タンパク質(例えば、遺伝子導入を介する)をコードする1つまたは複数の遺伝子の発現もしくは活性の増加およびグリコーゲンの代謝、異化、除去、または分解に関与する野生型もしくは変異タンパク質(例えば、アンチセンス核酸または低分子を介する)をコードする1つまたは複数の遺伝子の発現もしくは活性の減少を含む。
【0003】
(背景技術)
癌は、全世界の罹患率および死亡率の主な原因である。癌のヒトおよび経済費用の規模は非常に大きい。米国のみでも、毎年100万人以上が癌と診断され、癌の総年間費用は1兆8700億円を超え、総年間医療費の約4.7%を占める。最近、早期発見により癌の死亡率は全体的に減少しているが、普遍的に有効な癌の防止および治療ストラテジーは存在しない。癌の症例数は、種々の理由(高齢者、環境汚染などが含まれる)によって年々増加すると予想される。
【0004】
現在の癌治療は、一般に、早期発見および積極的治療(手術、化学療法、放射線療法、またはホルモン療法を含む)の組み合わせに依存する。しかし、このような治療の浸襲性および全身性毒性は患者に多数の副作用をもたらすので、その臨床上の有効性および患者の生活の質を非常に危うくする。
【0005】
さらに、癌細胞または腫瘍は本質的に癌治療で使用される細胞傷害薬に耐性を示すものもあれば、最初に応答するが、既存の耐性細胞集団を優先する淘汰圧および/または薬物誘導性変異の結果として治療中に耐性を示すものもある。実際、薬物耐性は、癌化学療法における主要な失敗原因である。放射性療法は固形性腫瘍塊内の癌細胞の根絶には比較的無効であることも十分に認識されている。放射性療法は細胞の破壊に酸素由来のフリーラジカルが必要であり(Gray etal.,Brit.J.Radiol.26:683(1953))、適切な血液供給の欠如により腫瘍塊内の酸素レベルは低いので、このような失敗は驚くべきことではない。さらに、ほとんどの化学療法薬は、その有効性を発揮するのに酸素を必要とする(Giatromanolaki and Harris,Anticancer Res.21:4317(2001))。したがって、癌細胞を除去し、且つ低酸素または酸素欠乏条件下でその細胞傷害効果を発揮することができる癌治療が必要である。
【0006】
癌の原因は依然としてほとんど知られていない。しかし、一般に、癌形成または発癌は複数の遺伝的および環境的要素を含む複雑なプロセスであると認められている。複数の発癌要因の間の複雑な相互作用の不完全な理解を考えると、特異的且つ普遍的に癌細胞死を誘導するか腫瘍成長を阻害する治療標的を同定することは手ごわい挑戦である。分子生物学および遺伝学の出現により、現在、癌細胞の異常成長に潜在的に寄与する多数のシグナル伝達経路が同定されている。例えば、Rasは、ヒト癌の30%で変異的に活性化され、成長因子受容体(例えば、上皮成長因子、インスリン様成長因子、Her2/Neu受容体)の過剰発現は異なる種の腫瘍で共通して認められる。これらの所見により、癌関連シグナル伝達経路において特定の構成要素を遮断するための化合物デザインが発見された。しかし、癌細胞におけるシグナル伝達は、相違し、且つ非常に豊富な経路およびプロセスを含む。したがって、癌治療手段として特定の細胞経路を遮断するための化学薬品の使用に耐性を示す可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、細胞死を有効に誘導しながら正常な細胞に対する副作用を最小にする改良された癌治療が必要である。本発明は、この必要性に取り組み、関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、細胞中の有毒レベルへのグリコーゲンの増加方法を提供する。方法の例は、細胞中のグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる遺伝子産物の細胞中での発現を含む。種々の態様では、遺伝子産物には、グリコーゲンの合成もしくは細胞内蓄積を増加させるタンパク質(例えば、グリコーゲン生成酵素(glycogenic enzyme))またはグリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、または除去を減少させるタンパク質(例えば、グリコーゲン分解酵素)が含まれる。種々のさらなる態様では、グリコーゲンの代謝、異化、利用、または分解を減少させる遺伝子産物には、グリコーゲン分解酵素の阻害核酸(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、si(small interfering)RNA分子、またはリボザイム)が含まれる。
【0009】
本発明を実施するための標的細胞には、例えば、細胞増殖性障害細胞、良性過形成細胞、ならびに転移性および非転移性腫瘍および癌細胞などの過剰増殖細胞が含まれる。ターゲティングに適切な過剰増殖細胞は、被験体および任意の器官または組織中に存在し得る。器官および組織の例には、例えば、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、および造血系が含まれる。
【0010】
本発明で有用な遺伝子産物には、タンパク質および阻害核酸(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、siRNA分子、またはリボザイム)が含まれる。遺伝子産物を、ベクター(例えば、ウイルスまたは哺乳動物の発現ベクター)中に含めることができるポリヌクレオチドによって任意選択的にコードすることができる。遺伝子産物およびポリヌクレオチドを、任意選択的に小胞に含めることができる。過剰増殖細胞中で活性なプロモーター(例えば、ヘキソキナーゼII、COX−2、α−フェトプロテイン、癌胎児抗原、DE3/MUC1、前立腺特異的抗原、C−erB2/neu、テロメラーゼ逆転写酵素、または低酸素症応答性プロモーター)などの調節エレメントによってポリヌクレオチドの発現を駆動することができる。
【0011】
本発明の方法は、さらに、標的細胞中での任意選択的にポリヌクレオチドによってコードされた1つまたは複数のさらなる遺伝子産物の発現を含む。遺伝子産物の例は、細胞周期インヒビターまたはサイクリンインヒビターなどの細胞増殖を阻害する第2のタンパク質である。
【0012】
本発明はまた、過剰増殖細胞中のグリコーゲンの有毒レベルへの増加方法を提供する。方法の例は、過剰増殖細胞中のグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる薬剤との細胞の接触を含む。1つの態様では、過剰増殖細胞は、肝臓、筋肉、または脳の細胞ではない。別の態様では、薬剤は、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ(例えば、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼ)の活性または発現を実質的に阻害しない。種々のさらなる態様では、薬剤は、グリコーゲンの合成または細胞内蓄積を増加させるか、グリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、または除去を減少させる。さらなる態様では、薬剤は、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させるか、グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる。薬剤の例には、基質アナログが含まれる。薬剤のさらなる例には、グリコーゲンの代謝、異化、利用、または分解を減少または阻害する阻害核酸(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、siRNA分子、またはリボザイム)が含まれる。
【0013】
グリコーゲンを有毒レベルに増加させる本発明の方法には、任意選択的に、細胞膨張、リソソーム数の増加、リソソームサイズの増加、またはリソソーム構造の変化などのグリコーゲン毒性に関連する1つまたは複数の形態学的変化が含まれる。グリコーゲンの有毒レベル増加には、細胞の溶解またはアポトーシスを引き起こすか、細胞の増殖、成長、または生存を阻害または減少させる方法も含まれる。
【0014】
本発明で有用であり、且つその発現または活性を刺激または増加させることができるグリコーゲン生成酵素の例には、例えば、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼが含まれる。PP−1ファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニットの例には、G(PPP1R3B、PPP1R4)、PTG(PPP1R3C、PPP1R5)、PPP1R3D(PPP1R6)、またはG/RG1(PPP1R3A、PPP1R3)が含まれる。
【0015】
本発明で有用であり、且つその発現または活性を阻害または減少させることができるグリコーゲン生成酵素の例には、例えば、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、およびα−グルコシダーゼが含まれる。
【0016】
本発明は、さらに、被験体の細胞増殖性障害の治療方法を提供する。方法の例は、障害を含む1つまたは複数の細胞中で細胞増殖障害を治療するのに十分な細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程を含む。方法の別の例は、細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に障害を含む1つまたは複数の細胞を接触させる工程を含む。1つの態様では、細胞増殖障害が、肝細胞、筋細胞、または脳細胞の障害ではない。別の態様では、薬剤は、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ(例えば、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼ)の活性または発現を実質的に阻害しない。
【0017】
本発明の方法の実施のための細胞増殖障害には、例えば、良性過形成、転移性および非転移性腫瘍および癌が含まれる。腫瘍細胞および癌細胞は、被験体中および任意の器官または組織中に存在し得る。器官および組織の例には、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系が含まれる。腫瘍および癌は、任意の悪性度(悪性度I、II、III、IV、またはVの腫瘍など)の充実性または液状であり得るか、寛解であり得る。腫瘍型の例には、例えば、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経膠腫、リンパ腫、および白血病が含まれる。
【0018】
本発明は、さらに、腫瘍を有する被験体の治療方法を提供する。方法の例は、1つまたは複数の腫瘍細胞中で被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程を含む。方法の別の例は、被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に1つまたは複数の腫瘍細胞を接触させる工程を含む。1つの態様では、腫瘍細胞は、肝細胞、筋細胞、または脳細胞ではない。別の態様では、薬剤は、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ(例えば、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼ)の活性または発現を実質的に阻害しない。
【0019】
治療方法は、予防方法および別の治療プロトコールと組み合わせた方法を含む。したがって、被験体が腫瘍などの細胞増殖障害を罹患している場合、例えば、腫瘍と診断されるか徴候が現れる前、被験体が腫瘍療法を受けている間、または被験体が腫瘍療法を受けた後(例えば、腫瘍が寛解した場合)、被験体を治療することができる。したがって、遺伝子産物または薬剤を、別の治療(例えば、抗腫瘍療法または免疫増強療法)の実施前、実質的に同時、または後に投与することができる。
【0020】
本発明の方法による投与によって別の治療の有効性を増加させることができる。例えば、腫瘍療法または免疫増強療法を受けているか受けていた被験体への投与により、細胞内グリコーゲン量が増加し、それにより抗腫瘍療法または免疫増強療法の有効性を増加させることができる。1つの態様では、腫瘍療法は、肝臓、筋肉、または脳のためではない。別つの態様では、薬剤は、実質的にグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ(例えば、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼ)の活性または発現を実質的に阻害しない。したがって、治療方法は、1つまたは複数のさらなる治療法を含む。治療法の例は、例えば、抗腫瘍または免疫増強治療薬または薬剤を投与する工程を含む。
【0021】
本発明は、さらに、被験体の病態が改善する(例えば、細胞増殖障害の1つまたは複数の不都合な症状の軽減)被験体の治療方法を提供する。腫瘍について、例えば、治療方法の例により、腫瘍体積が減少するか、腫瘍体積の増加が阻害されるか、腫瘍の進行が阻害されるか、腫瘍細胞の溶解またはアポトーシスが刺激されるか、腫瘍の転移が阻害されるか、延命される。
【0022】
本発明の実施のための被験体の例には、ヒトなどの哺乳動物(細胞増殖性障害を罹患しているか罹患する危険性のある被験体)が含まれる。被験体には、例えば、細胞増殖性障害療法の候補またはこのような治療を受けているか受けていた候補がさらに含まれる。腫瘍のために、例えば、治療の例には、抗腫瘍療法および免疫増強療法が含まれる。
【0023】
抗腫瘍療法の例には、例えば、化学療法、免疫療法、外科的切除、放射線療法、または発熱療法が含まれる。抗腫瘍療法の例には、例えば、アルキル化薬、抗代謝薬、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド、またはヌクレオチドアナログ、より詳細には、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5−アザシチジン(5−AZC)および5−アザシチジン関連化合物、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、ミトーテン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、またはジブロモマンニトールなどの抗腫瘍薬を使用した治療がさらに含まれる。
【0024】
免疫増強療法の例は、例えば、リンパ球、形質細胞、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、またはB細胞への投与を含む。免疫増強療法の例には、例えば、細胞成長因子、細胞生存因子、細胞分化因子、サイトカイン、またはケモカイン、より詳細には、IL−2、IL−1α、IL−β、IL−3、IL−6、IL−7、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、IFN−γ、IL−12、TNF−α、TNFβ、MIP−1α、MIP−β、RANTES、SDF−1、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309/TCA3、ATAC、HCC−1、HCC−2、HCC−3、LARC/MIP−3α、PARC、TARC、CKβ、CKβ6、CKβ7、CKβ8、CKβ9、CKβ11、CKβ12、C10、IL−8、GROα、GROβ、ENA−78、GCP−2、PBP/CTAPIIIβ−TG/NAP−2、Mig、PBSF/SDF−1、またはリンホタクチンなどの免疫増強薬を使用した治療がさらに含まれる。
【0025】
本発明は、無細胞および細胞ベースの抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法を提供する。方法の例は、グリコーゲンを産生する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性についてアッセイする工程を含む。グリコーゲン毒性により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。方法の別の例は、またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後に前記グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性または発現を測定する工程を含む。グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の発現または活性の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。方法のさらなる例は、その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後に遺伝子発現を測定する工程を含む。遺伝子発現の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0026】
方法のさらに別の例は、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の発現または活性を調整する(増加または減少させる)試験薬剤を得る工程と、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を前記試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程を含む。グリコーゲン毒性により薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。方法のさらに別の例は、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後に前記グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性を測定する工程を含む。グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0027】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化のスクリーニング、細胞生存のスクリーニング、細胞の増殖、成長、または生存の阻害または減少のスクリーニングによって決定することができるグリコーゲン毒性のアッセイを使用することができる。
【0028】
薬剤の同定方法は、遺伝子の発現または活性(例えば、グリコーゲン生成酵素もしくはグリコーゲン分解酵素またはレポーター)の変化のアッセイを使用することができる。グリコーゲン生成酵素およびグリコーゲン分解酵素ならびにレポーターの例を本明細書中に記載する。
【0029】
薬剤の同定方法を、溶液中、固相中、インビトロ、またはインビボで行うことができる。
【0030】
本発明でスクリーニングするか標的として使用することができる細胞は、原核細胞または真核細胞である。細胞を、その発現が(例えば、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の)調節領域によって調節される核酸配列(例えば、遺伝子)で安定にまたは一過性に形質転換することができる。細胞には、過剰増殖細胞、不死化細胞、ならびに腫瘍細胞および癌細胞が含まれる。
【0031】
本発明は、キットを提供する。キットの例は、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への前記薬剤の投与のための説明書を含む。キットの別の例は、グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への薬剤の投与のための説明書を含む。キットのさらに別の例は、細胞内グリコーゲンの蓄積を増加させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への薬剤の投与のための説明書を含む。キットは、任意選択的に、例えば、抗腫瘍薬もしくは免疫増強薬、薬学的組成物、ならびに薬剤を局所的、局部的、または全身に被験体に送達させるための製品を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(詳細な説明)
本発明は、細胞内グリコーゲンレベルの調整方法を提供する。グリコーゲンの細胞内レベルの調整により、細胞のグリコーゲンは交互に軽減または蓄積し得る。細胞中のグリコーゲン蓄積は有毒であり、細胞の増殖、成長、生存、または生存度の阻害または減少を引き起こし得る。十分な有毒レベルにグリコーゲンが蓄積した場合、細胞は死滅し得る。したがって、標的細胞の増殖、成長、生存、または生存率を減少させるために、望ましくない細胞増殖ならびに異常および罹患した過剰増殖細胞(例えば、腫瘍および癌細胞などの細胞増殖性障害)をターゲティングすることができる。
【0033】
種々の機構によって細胞中に蓄積するようにグリコーゲンを誘導または刺激することができる。例えば、本明細書中で「グリコーゲン生成酵素」と呼ばれるグリコーゲンの合成、産生、または蓄積に直接または間接的に関与する酵素の発現または活性を誘導または増加させてグリコーゲンの細胞内量を増加させることができる。別の例では、本明細書中で「グリコーゲン分解酵素」と呼ばれるグリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、または除去に直接または間接的に関与する酵素の発現または活性を阻害または減少させてグリコーゲンの細胞内量を増加することができる。基質を産生反応物に触媒しないので、グリコーゲンの合成、産生、もしくは蓄積、またはグリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、もしくは除去に関与するいくつかのタンパク質は技術的に酵素ではなく、例えば、GLUTはグルコース輸送体であり、グリコーゲンターゲティングサブユニットファミリーはPP−1をグリコーゲンと会合させるアダプター分子であるが、グリコーゲンレベルを調整する種々の経路におけるその関与により便宜上このようなタンパク質も本明細書中でグリコーゲン生成酵素およびグリコーゲン分解酵素と呼ぶ。したがって、本発明は、特定の生理学的または生化学的機構と無関係の細胞内グリコーゲンレベルの増加方法を含む。
【0034】
グリコーゲンの合成、産生、蓄積、代謝、異化、利用、分解、または除去に関与する酵素の発現または活性を、種々の方法によって調整することができる。例えば、細胞内グリコーゲンレベルを増加させるために、1つまたは複数のグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン生成酵素をコードする遺伝子を細胞に移入することができる。別の例では、細胞内グリコーゲンレベルを増加させるために、阻害核酸(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA、または三重鎖形成ポリヌクレオチド)または阻害核酸をコードする核酸を細胞に移入することができる。細胞内グリコーゲンレベルを増加させるために、グリコーゲン分解酵素をターゲティングするかグリコーゲン分解酵素をターゲティングするアンチセンスをコードする阻害核酸配列を細胞に移入することができる。適切な核酸またはタンパク質の細胞質内移入により、細胞内グリコーゲン蓄積を任意選択的に有毒レベルに刺激または誘導することができる。
【0035】
したがって、本発明によれば、細胞(例えば、過剰増殖細胞)中の細胞内グリコーゲンを任意選択的に有毒レベルに調整(増加または減少)する方法を提供する。1つの実施形態では、グリコーゲンの増加方法は、細胞中のグリコーゲン量を任意選択的に有毒レベルに増加させる遺伝子産物を細胞中で発現させる工程を含む。種々の態様では、遺伝子産物は、グリコーゲンの合成もしくは細胞内蓄積を増加させるタンパク質またはグリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、もしくは除去を減少させるタンパク質である。特定の態様では、遺伝子産物は、グリコーゲン生成酵素(例えば、ポリヌクレオチドによってコードされる)、アンチセンスポリヌクレオチド、siRNA分子、またはグリコーゲン分解酵素をターゲティングするリボザイムを含む。
【0036】
グリコーゲン生成酵素の特定の非限定的な例には、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼが含まれる。PP−1アイソタイプおよびファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニットには、G(PPP1R3B、PPP1R4)、PTG(PPP1R3C、PPP1R5)、PPP1R3D(PPP1R6)、またはG/RG1(PPP1R3A、PPP1R3)が含まれる。グリコーゲン蓄積に間接的に関与するグリコーゲン生成酵素の特定の例は、グリコーゲン合成のために細胞にグルコースを輸送するグルコース輸送担体(GLUT)である。グリコーゲン生成酵素の名称(Hugo命名法を使用)、配列、および対応するGenbankアクセッション番号の例には、以下が含まれる。
【0037】

グリコゲニン
GYG グリコゲニン NM_004130
GYG2 グリコゲニン2 NM_003918

グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)
AF396651、AF396655、AF396654

タンパク質ホスファターゼ−1
PPP1CAタンパク質ホスファターゼ1、触媒サブユニット、αアイソタイプ NM_002708

グリコーゲンシンターゼ
GYS1 グリコーゲンシンターゼ1(筋肉) NM_002103
GYS2 グリコーゲンシンターゼ2(肝臓) NM_021957

グルコース輸送体
SLC2A1 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー1
NM_006516 GLUT1
SLC2A2 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー2
NM_000340 GLUT2
SLC2A3 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー3
NM_006931 GLUT3
SLC2A4 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー4
NM_001042 GLUT4
SLC2A6 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー6
NM_017585 GLUT9、GLUT6
SLC2A7 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー7
AL356306
SLC2A8 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー8
NM_014580 GLUTX1、GLUT8
SLC2A9 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー9
NM_020041 Glut9、GLUTX
SLC2A10 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー10
NM_030777 GLUT10
SLC2A11 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー11
NM_030807 GLUT11、GLUT10
SLC2A12 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー12
NM_145176 GLUT12、GLUT8
SLC2A13 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー13
NM_052885 HMIT
SLC2A14 溶質キャリアファミリー2(促進グルコース輸送体)メンバー14
NM_153449 GLUT14

ヘキソキナーゼアイソタイプおよびファミリーメンバー
GCKグルコキナーゼ(ヘキソキナーゼ4、若年者の成人発生型糖尿病2)NM_000162
HK1 ヘキソキナーゼ1 NM_033500
HK2 ヘキソキナーゼ2 NM_000189
HK3 ヘキソキナーゼ3(白血球) NM_002115

グルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼ
GFPT1 グルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼ1 NM_002056
GFPT2 グルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼ2 NM_005110

PP−1アイソタイプおよびファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット
PPP1R3B タンパク質ホスファターゼ1、調節(阻害)サブユニット3B NM_024607G、FLJ14005、PPP1R4
PPP1R3C タンパク質ホスファターゼ1、調節(阻害)サブユニット3C NM_005398
PPP1R5、PTG
PPP1R3D タンパク質ホスファターゼ1、調節(阻害)サブユニット3D NM_006242、PPP1R6
PPP1R3A タンパク質ホスファターゼ1、調節(阻害)サブユニット3A(グリコーゲンおよび筋小胞体結合サブユニット、骨格筋) NM_002711 PPP1R3、G/RG1

グリコーゲン分解酵素の特定の非限定的な例には、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼが含まれる。グリコーゲン分解酵素の名称(Hugo命名方を使用)、配列、および対応するGenbankアクセッション番号の例には、以下が含まれる。
【0038】

グリコーゲンホスホリラーゼ
PYGB ホスホリラーゼ、グリコーゲン;脳 NM_002862
PYGL ホスホリラーゼ、グリコーゲン;肝臓(エール病、グリコーゲン貯蔵疾患VI型)NM_002863
PYGM ホスホリラーゼ、グリコーゲン;筋肉(McArdle症候群、グリコーゲン貯蔵疾患V型)NM_005609

ホスホリラーゼキナーゼ
PHKA1 ホスホリラーゼキナーゼα1(筋肉)NM_002637
PHKA2 ホスホリラーゼキナーゼα2(肝臓)NM_000292
PHKB ホスホリラーゼキナーゼβ NM_000293
PHKG1 ホスホリラーゼキナーゼγ1(筋肉)NM_006213
PHKG2 ホスホリラーゼキナーゼγ2(精巣)NM_000294
PHKGL ホスホリラーゼキナーゼγ様(筋肉)
CALM1 カルモジュリン1(ホスホリラーゼキナーゼδ) NM_006888
CALM2 カルモジュリン2(ホスホリラーゼキナーゼδ) NM_001743
CALM3 カルモジュリン3(ホスホリラーゼキナーゼδ) NM_005184

グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3
GSK3A グリコーゲンシンターゼキナーゼ3α NM_019884
GSK3B グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β NM_002093

グルコース−6−リン酸
G6PC グルコース−6−リン酸(触媒的)(グリコーゲン貯蔵疾患I型、フォン・キールケ病) NM_000151

タンパク質ホスファターゼ1調節サブユニット
PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1調節(阻害)サブユニット1A)
PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1調節サブユニット2)

ホスホフルクトキナーゼ
PFKL ホスホフルクトキナーゼ(肝臓) NM_002626
PFKM ホスホフルクトキナーゼ(筋肉) NM_000289
PFKP ホスホフルクトキナーゼ(血小板) NM_002627

グルコシダーゼ
AGL アミロ−1,6−グルコシダーゼ、4α−グルカノトランスフェラーゼ(グリコーゲン脱分枝酵素、グリコーゲン貯蔵疾患III型) NM_000646
GAA グルコシダーゼα;酸性(ポーンプ病、グリコーゲン貯蔵疾患II型) NM_00152
GANAB グルコシダーゼα;中性AB
GANC グルコシダーゼα;中性C AF545045
MGAM マルトース−グルコアミラーゼ(α−グルコシダーゼ) NM_004668

GCKRグルコキナーゼ(ヘキソキナーゼ4)調節タンパク質NM_001486

グリコーゲンの合成、産生、蓄積、代謝、異化、利用、分解、または除去に関与する酵素の発現または活性を、薬剤または治療によって調整することもできる。このような薬剤または治療薬は、グリコーゲンの合成、産生、蓄積、代謝、異化、利用、分解、または除去に関与するタンパク質に対して直接または間接的に作用することができる。
【0039】
例えば、酵素によってあまり改変されないか改変されないグリコーゲン分解酵素の基質アナログは、このような薬剤クラスの特定の例である。基質アナログは、酵素の活性部位に結合し、天然の基質の結合を阻害または防止することにより、グリコーゲンレベルを増加させることができる。糖および炭水化物のアナログ(例えば、偽オリゴサッカリド)は、グリコーゲン分解酵素の発現または活性の阻害または減少に有用な薬剤クラスの特定の例である。基質アナログには、ポリペプチドおよび天然に存在する基質を模倣する模倣物も含まれる。例えば、酵素を不活化することによりグリコーゲンレベルを減少させるGSK−3ホスホリラーゼグリコーゲンシンターゼ。したがって、グリコーゲンシンターゼのアナログは、GSK−3を阻害する薬剤の1つの特定の例である。
【0040】
したがって、本発明によれば、細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤を使用した細胞中のグリコーゲンの調整方法も提供する。1つの実施形態では、方法は、グリコーゲン量を有毒レベルに増加させる薬剤に細胞(例えば、過剰増殖細胞)を接触させる工程と、過細胞が肝細胞、筋細胞、または脳細胞でないこととを含む。別の実施形態では、方法は、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ(例えば、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ)の活性または発現を実質的に阻害しない場合にグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる薬剤に細胞を接触させる工程を含む。1つの態様では、薬剤は、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加または刺激する。別の態様では、薬剤は、グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少または阻害する。さらなる態様では、過剰増殖細胞は、良性化形成細胞または転移性もしくは非転移性癌細胞を含む。癌細胞は、培養物(インビトロ)またはinvivo(例えば、被験体の脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系)で存在し得る。
【0041】
本明細書中で使用される、用語「実質的に」および「実質的な」は、薬剤または治療薬によりグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプなどの特定の酵素の発現または活性を「阻害、減少、増加、または刺激」するかどうかに関して使用する場合、薬剤または治療薬は特定の酵素(例えば、グリコーゲンホスホリラーゼ)が細胞中の細胞内グリコーゲンを有毒レベルに増加させる活性に影響を与えないことを意味する。例えば、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプを実質的に阻害しない薬剤は、細胞内グリコーゲンが有毒レベルに蓄積する範囲で使用される薬剤濃度で酵素を阻害しない。肝臓、筋肉、および脳内に存在する公知のヒトグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプは3つ存在する。したがって、これらのグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプを「実質的に阻害する」は、肝臓、筋肉、または脳内で細胞内グリコーゲンが有毒レベル(例えば、細胞の増殖、減少、生存、生存率などが減少する)まで増加するのに十分に酵素活性が減少または阻害されることを意味する。
【0042】
グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素(例えば、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプ)を間接的に刺激または阻害するように作用する(中間体タンパク質を阻害してグリコーゲンホスホリラーゼ活性を阻害する)薬剤および治療は、この規定によって除外されない。グリコーゲンホスホリラーゼなどのグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を直接ターゲティングするか結合し、使用濃度で細胞内グリコーゲンを有毒レベル未満(例えば、薬剤使用量が細胞の死滅に必要な量未満)に増加させる薬剤および治療も本規定によって除外されない。したがって、本規定は、使用される場合、グリコーゲンホスホリラーゼなどのグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素にターゲティングされるか結合し、且つその効果が薬剤または治療薬の使用濃度で細胞内グリコーゲンレベルを有毒レベルに増加させることである、薬剤および治療(本明細書中に記載の薬剤および治療の特定の非限定的な例が含まれる)をいう。
【0043】
薬剤には、低分子が含まれる。本明細書中で使用される、用語「低分子」は、サイズが約5キロダルトン未満の分子をいう。典型的には、このような低分子は、有機分子であるが、元素またはイオン性形態(例えば、リチウム、亜鉛など)などの無機分子であり得る。
【0044】
グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少または阻害する薬剤の特定の非限定的な例には、N−メチル−β−グルコース−C−カルボキシアミド(Watson et al.,Biochemistry,33:5745(1994))、α−D−グルコース(Oikonomakos et al.,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.19:185(1994))、グルコピラノシリジン−スピロ−ヒダントイン16(Somsak et al.,Curr.Pharm.Des.15:1177(2003))、N−アセチル−N’−β−D−グルコピラノシル尿素(Acurea)およびN−ベンゾイル−N’−β−D−グルコピラノシル尿素(Bzurea)(Oikonomakos et al.,Eur.J.Biochem.269:1684(2002))、N−アセチル−β−D−グルコピラノシルアミン(Board M.,Biochem.J.328:695(1997))、フェノシルイミダゾリウム(Van Schaftingen and De Hoffmann E Eur.J.Biochem.218:745(1993))、CP−91149(インドール−2−カルボキシアミド)(Latsis et al.,Biochem.J.368:309(2002))、フラボピリドール(Kaiser et al.,Arch.Biochem.Biophys.386:179(2001))、インドール−2−カルボキシアミド(Hoover et al.,J.Med.Chem.41:2934(1998))、S−3−イソプロピル−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−1−エチル−2−メチル−ピリミジン−3,5,6−トリカルボキシレート(W1807)(Oikonomakos et al.,Protein Sci.10:1930(1999))、BAY R3401およびBAYW1807(Bergans et al.,Diabetes,49:1419(2000); Shiota et al.,Am.J.Physiol.273:E868(1997))、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−d−アラビニトール(DAB)(Fosgerau et al.,Arch.Biochem.Biophys.380 :274(2000))、5−クロロ−lH−インドール−2−カルボン酸(1−(4−フルオロベンジル)−2−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−2−オキソエチル)アミド(CP320626)(Oikonomakoset al.,Structure,8:575(2000))、ピリドキサル(5’)ジホスホ(1)−α−D−グルコース(Withers G.J.Biol.Chem.260:841(1985))、3,4−ジクロロイソクマリン(3,4−DC)(Rusbridge and Beynon FEBS Lett.268:133(1990))、カフェイン(San Juan Serrano et al.,Int.J.Biochem.Cell.Biol.27:911(1995))。α−、β−、およびγ−シクロデキストリン(Pinotsiset al.,Protein Sci.12:1914(2003))、グルコピラノシリデンスピロチオヒドラトイン(Oikonomakoset al.,Bioorg.Med.Chem.10:261(2002))、アミノグアニジン(Sugita et al.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.282:E386(2002))、プログリコシン(Yamanouchi et al.,Arch.Biochem.Biophys.294:609(1992))、ならびに2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−グルコピラノシルフルオリド(Massillonet al.,J.Biol.Chem.270:19351(1995))などのグリコーゲンホスホリラーゼインヒビター
が含まれる。
【0045】
グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少または阻害する薬剤のさらなる非限定的な例には、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ(αまたはβ)インヒビターが含まれる。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)の不活化により、基質(グリコーゲンシンターゼおよび真核生物タンパク質合成開始因子2B(eIF−2B)が含まれる)が脱リン酸化する。これにより、その機能が活性化されて細胞内グリコーゲンが増加する。
【0046】
GSK−3の低分子インヒビターには、ヒメニアルジシン(hymenialdisine)(例えば、Dibromo−hymenialdisine)(Breton and Chabot−Fletcher,J.Pharmacol.Exp.Ther.282:459(1997);Meijer,et al.,Chem.Biol.7:51(2000));インジルビン(例えば、5,5’−ジブロモ−インジルビン)(Damienset al.,Oncogene 20:3786(2001);Leclerc et al.,J.Biol.Chem.276:251(2001));マレイミド(例えば、Ro31−8220、SB−216763、およびSB−415286)(Coghlan et al.,Chem.Biol.7:793(2000);Cross et al.,J.Neurochem.77:94(2001);Hers et al.,FEBS Lett.460:433(1999);Lochhead et al.,Diabetes 50:937(2001);Smith et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.11:635(2001));およびムスカリンアゴニスト(例えば、AF102B and AF150)(Forlenza et al.,J.Neural.Transm.107:1201(2000))などの薬物が含まれる。アロイシン(Aloisine)など(例えば、アロイシンAおよびアロイシンB)(Martinez,et al.,J.Med.Chem.45:1292(2002);Martinez et al.,Med.Res.Rev.22:373(2002);Mettey et al.,J.Med.Chem.46:222(2003))などのさらなる低分子GSK−3薬物インヒビターは、ATPと競合する。GSK−3の低分子インヒビターには、CHIR 98014、CHIR 98021 、およびCHIR 99023(Ring et al.,Diabetes,52:588(2003);Nikoulina et al.,Diabetes,51:2190(2002))も含まれる。
【0047】
GSK−3の低分子インヒビターには、リチウムなどのエレメントおよびイオン(Klein and Melton,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8455(1996);およびStambolic et al.,Curr.Biol.6:1664(1996))がさらに含まれる。GSK−3に対して極めて特異的であるが、細胞培養物中のGSK−3活性を阻害するのに比較的高用量のリチウムが必要である(KiはmMである)(Stambolic et al.,Curr.Biol.6:1664(1996))。他の元素イオンと同様に、リチウムはMg2+の競合によって作用する(Ryves and Harwood Biochem.Biophys.Res.Commun.280:720(2001);Carmichael et al.,J.Biol.Chem.277:33791(2002);およびStambolic et al.,Curr.Biol.6:1664(1996))。インスリン作用を模倣する2価形態の亜鉛も15mMの濃度で細胞培養物中のGSK−3を阻害する(Ilouz et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.295:102(2002))。別の金属イオン(ベリリウム)は、6mMの濃度でGSK−3の最大活性を半分にするように阻害する(Ryves et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.290:967(2002))。
【0048】
GSK−3結合タンパク質は、GSK−3インヒビターのさらなる例である。例えば、インスリンは、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)依存性機構を介してGSK−3を不活化する。PKB(Aktともいう)のPI−キナーゼ−誘導性活性化により、GSK−3の両アイソタイプ(GSK−3bのS9;GSK−3aのS21)をPKBリン酸化し(Cross et al.,.Nature 378:785(1995))、GSK−3活性を阻害する。他の刺激により、S9/S21リン酸化を介してGSK−3が不活化する(GSK−3不活化キナーゼp90RSK(MAPKAP−K1としても公知)を刺激するEGFおよびPDGFなどの成長因子が含まれる)。
【0049】
グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少または阻害する薬剤のさらなる非限定的な例には、α−グルコシダーゼインヒビターが含まれる。ほとんどの公知の天然および合成α−グルコシダーゼインヒビターは、偽オリゴサッカリド(Bischoff,H.,Eur.J.Clin.Investig.24:3(1994))、アザ糖(Wong et al.,J.Org.Chem.60:1492(1995))、およびインドリジジンアルカロイド(Elbein,A.D.,Ann.Rev.Biochem.,56:497(1987))などの糖アナログである。アカルボース(アクチノプラネス属由来の偽テトラサッカリド)は、α−グルコシダーゼの最も強力なインヒビターの1つである(Legler G.Adv.Carb.Chem.Biochem.,48:319(1990))。その構造は、基質の遷移状態に類似する。したがって、基質アナログは、本発明に有用なα−グルコシダーゼインヒビターの特定のクラスである。
【0050】
α−グルコシダーゼの発現または活性を減少または阻害する薬剤のさらなる非限定的な例には、Baym1099(Wisselaar et al.,Clin.Chim.Acta.,182:41(1989))、Conduritol Bエポキシド(Hermans et al.,J.Biol.Chem.266:13507(1991))、カスタノスペルミン(Rhinehart,et al.,Biochem.Pharmacol.41:223(1991))、イソファゴミン(グリコーゲンホスホリラーゼの肝臓および筋肉アイソタイプの強力なインヒビター)(Dong et al.,Biochem.35:2788(1996);Lundgren et al.,Diabetes 45:S2 521(1996);およびWaagepetersen et al.,Neurochemistry International 36:435(2000))、ビリダミン、バリエナミン、およびバリオールアミン(Takeuchi et al.,J.Biochem.108:42(1990);and U.S.Patent No.4,701,559)、 アカルビオシン−グルコース(Acarviosine−glucose)およびイソアカルボース(isoacarbose)(Kim et al.,Arch.Biochem.Biophys.371:277(1999))、スリランカ原産の植物から単利することができるサラシノール(米国特許第6,455,573号;およびYoshikawa et al.,Bioorg.Med.Chem.10:1547(2002))、D(+)−トレハロース(Matsuur et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.66:1576(2002))、カリスポンギン酸(Callyspongynic acid)(1)(Nakao et al.,J.Nat Prod.65:922(2002))、1−デオキシノジリムシン(1−Deoxynojirimcin)(DNM)(Papandreou et al.,Mol.Pharmacol.61:186(2002))、トウチ抽出物(Hiroyuki et al.,J.Nutr.Biochem.12:351(2001)),ジケトピペラジン(1)(Kwon et al.,J.Antibiot.53:954(2000);Sou et al.,Chem.Pharm.Bull.49:791(2002))、2,6−ジデオキシ−7−O−(β−D−グルコピラノシル)2,6−イミノ−D−グリセロ−L−グロ−ヘプチトール(7−O−β−D−グルコピラノシル−α−ホモノジリマイシ、1)(Ikeda et al.,Carbohydr.Res.323:73(2000))、エタノールアミンおよびフェニル6−デオキシ−6−(モルホリン−4−イル)−β−D−グルコピラノシド(Balbaa et al.,Carbohydr.Res.317:100(1999)),N−メチル−1−デオキシノジリムシン(MOR−14)(Minatoguchi etal.,Circulation,97:1290(1998))、アカビソニン(Acavisonine)−シモンドシン(Baek et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.67:532(2003))、ネストリシン(Nestrisine)(Tsujii et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.220:459(1996)、Bay g 5421(Aletor etal.,Poult.Sci.82:796(2003))、Sangzhi(Ramulus mori,SZ)(Ye et al.,Yao Xue Xue Bao,37:108(2002))、2,4,6−トリニトロフェニル2−デオキシ−2,2−ジフルオロ−α−グルコシド(Braun et al.,J.Biol.Chem.270:26778(1995))、L−ヒスチジン、ヒスタミン、およびそのイミダゾール誘導体(Fieldet al.,Biochem.J.274:885(1991))、4−O−α−D−グルコピラノシルモラノリンおよび種々のN置換誘導体(Yoshikuni et al.,Chem.Pharm.Bull,37:106(1989))、エピカスタノスペルミン(Molyneux et al.,Arch.Biochem.Biophys.,251:450(1986))、ノジリマイシン(Chambers et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.107:1490(1982))、およびノジリマイシンテトラゾール(Mitchell et al.,Biochemistry,35 :7341(1996))が含まれる。
【0051】
α−グルコシダーゼインヒビターのさらに特定の例には、O−4,6−ジデオキシ−4−[[[lS−(1α,4α,5β,6α)]−4,5,6−トリヒドロキシ−3(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−α−D−グルコピラノシル−(l−4)O−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコース(アカボースとしても公知);2(S),3(R),4(S),5(S)−テトラヒドロキシ−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エチル]−5−(ヒドロキシメチル)−1(S)−シクロヘキサミン(ボグリボースとしても公知)(A0−128)(Goke et al.,Digestion,56:493(1995));1,5−ジデオキシ−1,5−[(2− ヒドロキシエチル)イミノ]−D−グルシトール(ミグリトールとしても公知);1,5−ジデオキシ−1,5−[2−(4−エトキシカルボニルフェノキシ)エチルイミノ]−D−グルシトール(エミグリテートとしても公知)(Lembcke et al.,Res.Exp.Med.191:389(1991));2,6−ジデオキシ−2,6−イミノ−7−(β−D−グルコピラノシル)−D−グリセロ−L−グロヘプチトール(MDL−25637としても公知);1,5−ジデオキシ−1,5−(6−デオキシ−1−O−メチル−α−D−グルコピラノス−6−イルイミノ)−D−グルシトール(カミグリボース(camiglibose)としても公知);1,5,9,11,14−ペンタヒドロキシ−3−メチル−8,13−ジオキソ−5,6,8,13−テトラヒドロベンゾ[a]ナフタセン−2−カルボン酸(プラジミシンQとしても公知);アジポシン(adiposine);および1,2−ジデオキシ−2−[2(S),3(S),4(R)−トリヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−5−シクロヘキセン−1(S)−イルアミノ]−L−グルコピラノース(サルボスタチン(salbostatin)としても公知)が含まれる。Indolizidine alkaloids,such as オーストラリン(australine)、カスタノスペルミン、およびスワインソニンは、α−グルコシダーゼインヒビターである。α−グルコシダーゼインヒビターには、経口抗糖尿病薬も含まれる(Lebovitz,H.E.Drugs,44:21(1992))。N−ブチルデオキシノジリマイシン(N−ブチル−DNJ)およびDNJの関連N−アルキル誘導体はα−グルコシダーゼIおよびIIのインヒビターである(Saunier et al.,J.Biol.Chem.257:14155(1982);and Elbein,Ann.Rev.Biochem.56:497(1987))。1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトールおよび誘導体(N−アルキル、N−アシル、N−アロイル、N−アラルキル、およびO−アシル誘導体が含まれる)は、α−グルコシダーゼインヒビターである。α−グルコシダーゼインヒビターには、L−アラビノースならびにアラビナン、アラビノキシラン、およびアラビノガラクタンなどの植物中で見出される形態が含まれる。カスタノスペルミンは、可逆反応性が低く、且つ作用が比較的長く持続するα−グルコヒドロラーゼインヒビターの例である。これはまた、リソソームα−グルコシダーゼを阻害し、それによりリソソームグリコーゲンが蓄積する。別の特定のα−グルコヒドロラーゼインヒビターは、1,5−ジデドキシ−1,5−(6−デオキシ−1−O−メチル−6−α,D−グルコピラノシル)イミノ−D−グルシトール(MDL 73945)(Robinson et al,Diabetes 40:825(1991))である。さらなるα−グルコヒドロラーゼインヒビターには、グルコピラノシルおよび4,6−ビスデソキシ−4−(4,5,6−トリヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルシクロヘクス−2−エン−1−イルアミノ)−α−D−グルコピラノースのオリゴグルコシジル誘導体が含まれる。化合物O−{4,6−bisdesoxy−4−[1S−(1,4,6/5)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルシクロヘクス−2−エン−1−イルアミノ]α−D−グルコピラノシル}−(l−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(l−4)−D−グルコピラノースは、代表的な種である(米国特許第4,062,950号)。
【0052】
表1は、式Iの構造を有するα−グルコシダーゼインヒビターの例を示す(米国特許第6,143,932号および同第6,121,489号を参照のこと)。式Iの下位集団は以下である。RおよびRは、独立して、水素原子、アミノ保護基、C〜C12アシル、C〜C10シクロアルキル、C〜C複素環、C〜C12アルキル、C〜C12置換アルキル、C〜C16アルキルアリール、C〜C16ア置換アルキルアリール、C〜C15アルキル複素環、または置換C〜C15アルキル複素環であり、R、R、およびRは、独立して、水素原子、C〜C12アルキル、C〜C12置換アルキル、フェニル、置換フェニル、C〜C16アルキルアリール、C〜C16置換アルキルアリール、C〜C15アルキル複素環、または置換C〜C15アルキル複素環であり、R、R、およびRは、独立して、C〜C18置換基であり、Rは水素原子であり、R10は、任意選択的に、RおよびRが水素原子またはアミノ保護基以外である場合にC〜C18置換基として存在し、AA、BB、およびCCは、独立して、0〜5であり、Bは0〜3である。R、R、およびRに結合した炭素の立体化学は、独立して、R型もしくはS型または2つの混合物であり、Bが2または3の場合、RおよびRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Bが0である場合、RおよびRはそれぞれ異なり、RまたはRのいずれかがRと結合し、RがRと結合し、RがRと結合して置換または非置換ピロリジン環を形成することができる。XおよびYはそれぞれ水素原子であるか、共にカルボニル基を示す。
【0053】
表1のIC50値は、50%酵素阻害濃度を示し、以前に記載のようにアッセイを行った(Haslvorson and Ellias,Biochem.Biophys.Acta,30:28(1958))。最も活性なインヒビターは式I(XおよびYが共にカルボニル基を形成し、Bが0であり、AA、BB、およびCCが特記したもの以外は0であり、Rは水素原子であり、Rはベンジルであり、Rはナフス−2−イルメチルであり、RはS(N−(ナフス−2−イルメチル)インドール−3−イルメチル)であり、RおよびRはそれぞれ水素であり、R10は存在せず、Rは以下である)の化合物である。
【0054】
【表1−1】

【0055】
【表1−2】

【0056】
細胞内グリコーゲンレベルを増加させる薬剤には、例えば、オクラトキシンA(Dwivedi and Burns,Res.Vet.Sci.36:92(1984))、N−アセチルシステイン(Itinose et al.,Res.Commun.Chem.Pathol.Pharmacol.83:87(1994))、ジクロロアセテート(DCA)(Kato−Weinstein et al.,Toxicology,130:141(1998);Lingohret al.,Toxicol.Sci.68:508(2002))、カンタリジン(Wang et al.,Toxicology,147:77(2000))、メチロブロモフェンビンホス(Methylobromofenvinphos)(IPO 63化合物)(Chishti and Rotkeiwicz,Arch.Environ.Contam.Toxicol.22:445(1992))、ゲニステイン(Okazaki et al.,(2002) Arch.Toxicol.76:553)、キニーネ(al− Habori et al.,Biochem.J.282:789(1992))、アルベルド毒素(Alveld toxins)(Flaoyen et al.,Vet.Res.Commun.15:443(1991))、メチオニンスルホキシイミン(Havor and Delorme Glia 4:64(1991))、ツニカマイシン(Chardin et al.,Cell Tissue Res.,256:519(1989))、メトホルミン(Detaille et al.,Biochem.Pharmacol.58:1475(1999))、5−イドツベルシジン(5−idotubercidin)(Fluckiger−Isler and Walter Biochem.J.292:85(1993))、カンタリジン(Wang et al.,Toxicology,147:77(2000))、ジアゾキシド(Alemzadehet al.,Eur.J.Endocrinol.146:871(2002))がさらに含まれる。
【0057】
ホルモンは、細胞内グリコーゲンレベルを増加させることができる薬剤のさらに別の例である。特定の非限定的な例には、上皮成長因子(Bosch et al.,Biochem.J.239:523(1986))、ヒドロコルチゾン(Black Am.J.Physiol.254:G65(1988))、ノルアドレナリン、血管活性腸管ペプチド(Allaman et al.,Glia,30:382(2000))、等質コルチコイド(Laloux etal.,Eur.J.Biochem.136:175(1983))、およびインスリンが含まれる。
【0058】
栄養補助食品は、細胞内グリコーゲンレベルを増加させることができる薬剤のさらなる例である。特定の非限定的な例には、グルコース(Watson et al.,Biochemistry,33:5745(1994))、フルクトース(Gergely et al.,Biochem.J.,232:133(1985))、D−タガトース(Kruger et al.,Regul.Toxicol.Pharmacol.29:S1−S10(1999))、インスリンと組み合わせたオリゴフルクトース(Flamm et al.,Crit.Rev.Food Sci.Nutr.41:353(2001))、およびNa+同時輸送アミノ酸(グルタミン、アランン、アスパラギン、およびプロリンなど)(Hue L,Gaussin V.In:Amino Acid Metabolism and Therapy in Health and Nutritional Disease(Cynober,L.A.,ed)pp.179−188,CRC Press,Boca Raton,FL.(1995))が含まれる。
【0059】
植物および植物抽出物は、細胞内グリコーゲンレベルを増加させることができる薬剤のさらに別の例である。特定の非限定的な例には、ファムヌス・カタルチカ(Rhamnus cathartica)(Lichtensteiger et al.,Toxicol.Pathol.5:449(1997))、ツルレイシおよびムクナ(Rathi et al.,Phytother Res.16:236(2002))、ならびにグラニニニア・コラ(Graninia Kola)種子の粉末(Braide and Grill Gegenbaurs.Morphol.Jahrb.136:95(1990))
が含まれる。
【0060】
本明細書中に開示されているか当該分野で公知のインヒビターの例に加えて、構造および機能の知識に基づいてグリコーゲン分解酵素インヒビターをデザインすることができる。GSK−3について、例えば、結晶構造が決定されている(Bax et al.,Structure(Camb)9:1143(2001);Dajani et al.,Cell 105:721(2001);ter Haar et al.,Nat.Struct.Biol.8:593(2001))。GSK−3結晶構造の分析により、酵素がプライミングされた前リン酸化基質を好むことが明らかとなる。GSK−3のTループは、GSK−3bおよびGSK−3a中のそれぞれY216およびY279でチロシンをリン酸化するが、トレオニンをリン酸化しない。Y216/Y279リン酸化は、基質結合部位を開く役割を果たし得る(Dajani et al.,Cell 105:721(2001))。したがって、GSK−3のTループチロシンリン酸化により基質リン酸化を促進することができるが、厳密にはキナーゼ活性を必要としない(Dajani et al.,Cell 105:721(2001))。GSK−3結晶構造はまた、S9/S21セリンリン酸化の阻害の役割は、正電荷のポケットに細胞内結合するプライミングされた偽基質を作製することであることを示す。触媒溝が塞がれるので、この折りたたみにより基質のリン酸化が排除される。阻害機構は競合性であるので、十分に高濃度の偽基質は、プライミングされた基質と競合しないかその逆であり得る。したがって、GSK−3キナーゼドメインの正電荷のポケットに適合する様にモデル化した低分子インヒビターは、グリコーゲンシンターゼなどのプライミングされた基質の結合を選択的に阻害することができる。
【0061】
結晶構造に加えて、研究は、GSK−3がGSK−3リン酸化部位のC末端に存在する「プライミング」残基で前リン酸化された標的タンパク質を好むことを示す(Fiol et al.,J.Biol.Chem.262:14042(1987))。GSK−3基質のコンセンサス配列は、Ser/Thr−X−X−XSer/Thr−P(最初のSerまたはThrは標的残基であり、Xは任意のアミノ酸(しかししばしばPro)であり、最後のSer−P/Thr−Pはプライミングリン酸化部位である)である。プライミングリン酸化により、ほとんどのGSK−3基質の基質リン酸化効率が100〜1,000倍に増加する(Thomas et al.,FEBS Lett.458:247(1999))。例えば、グリコーゲンシンターゼ(原型的なプライミングされた基質)はカゼインキナーゼII(CK2)によってプライミングリン酸化を受け、その後GSK−3によって連続的多部位リン酸化を受ける(Fiol et al.,Arch.Biochem.Biophys.267:797(1988);Fiol et al.,J.Biol.Chem.265:6061(1990))。いくつかのGSK−3基質はプライミング部位を欠く。これらのタンパク質は、しばしば、リン残基を模倣し得るプライミング部位またはその付近に負電荷の残基を示す。
【0062】
GSK−3は多数の基質を有するので、GSK−3は基質特異性を付与するために多数の調節レベルを必要とする。したがって、GSK−3を、任意のこれらのシグナルを介して阻害することができる。例えば、セリンリン酸化、チロシンリン酸化の阻害またはチロシン脱リン酸化の刺激、プライミングリン酸化を介した基質の共有結合修飾による間接的阻害、およびGSK−3の結合または足場形成タンパク質との相互作用を介したGSK−3媒介基質リン酸化の阻害または促進によってGSK−3を阻害することができる。
【0063】
構造および機能の知識に基づいてα−グルコシダーゼインヒビターをデザインすることもできる。例えば、α−グルコシダーゼの触媒機構は異化を含む。2−デオキシ−2−フルオロ−α―D−グルコシルフルオリドまたは5−フルオロ−α−D−グルコシルフルオリドなどの化合物による不可逆的酵素阻害は、遷移状態のグルコシルカチオンを脱安定化して安定なグルコシル−酵素中間体の形成を促進するグルコース環のC−2またはC−5でのフッ化物の誘導効果に起因する(Krasikov et al.,Biochemistry,66:267(2001))。カルボカチオンの特徴(負電荷および/または半イス型立体配座)を模倣したα−グルコシダーゼリガンドはインヒビターとして作用する。半イス型立体配座を有するγ−グルコノラクトンは、ウシ肝臓α−グルコシダーゼの競合的インヒビターである(Firsov LM,Biokhimiya,43:2222(1978))。正電荷のα−グルコシダーゼインヒビターは、より強力なインヒビターである。例えば、Trisは、α−グルコシダーゼ活性を阻害する(Krasikov et al.,Biochemistry,66:267(2001))。したがって、カルボカチオンの特徴を示すリガンドを模倣する任意の組成物は、特に正電荷のα−グルコシダーゼを阻害する薬剤であり得る。
【0064】
インドリジジンアルカロイド(カストノスペルミン(castonospermine)、スワイノソニン(swainosonine))およびデオキシノジリマイシンに典型的な6員環構造は、グルコシダーゼ阻害に不可欠ではない。むしろ、環内の窒素の存在および窒素と比較した水酸基の立体配座が阻害活性の主な前提条件である(Tropea et al.,Biochemistry,28:2027(1989))。タンパク質阻害の出現には、見かけ上イミンの窒素と触媒の酸との間の水素結合が必要である。例えば、阻害効果の約10倍増加によりN−アルキル−D−グルコシルアミンはN−ブチル−(またはドデシル)−D−グルコナミジンに移行し、インヒビターの幾何学的性質により、四面体C幾何学を平面spアミジン幾何学に変化する。これは、プロトン化アミジンが触媒酸からプロトンを受け取ることができないためと考えられる(Legler G,Finken M,Carbohydr.Res.,292:103(1996))。したがって、最も活性な構造(すなわち、阻害剤)は、環内に水酸基と比較して立体配座を保持する窒素を有する。
【0065】
細胞内グリコーゲン量が「増加する」本発明の方法では、これは、グリコーゲンレベルが所与の細胞または複数の細胞内でより高いことを意味する。グリコーゲンに関して使用する場合、用語「蓄積する」はまた、細胞内グリコーゲンレベルの任意の増加をいう。複数の細胞に関してこの用語を使用する場合、全ての細胞が等しく応答してグリコーゲンを蓄積し得るわけではない。したがって、一部の細胞はグリコーゲンレベルの増加を示すことができるが、一部の細胞はグリコーゲンレベルの増加を示すことができない。
【0066】
細胞内グリコーゲンレベルの増加は一過性でもより長期間持続してもよいが、典型的には、十分に有毒な量である。有毒レベルのグリコーゲンにより、細胞の増殖、成長、生存、または生存率が減少するか、グリコーゲン毒性の1つまたは複数の他の特徴が得られる。グリコーゲン毒性の特徴には、例えば、グリコーゲン濃縮による細胞膨張、リソソーム数およびサイズの増加、粒子の外観によって特徴づけられるリソソーム構造の変化、ならびにグリコーゲンの核内蓄積などの形態学的変化が含まれる。したがって、有毒レベルのグリコーゲンを、細胞の増殖もしくは成長速度(例えば、倍加時間、細胞周期の長さなど)、生存期間(例えば、寿命)、生存率(溶解またはアポトーシス)のアッセイ、または組織学的分析によって決定することができる。
【0067】
したがって、本発明は、細胞に有毒な量にグリコーゲンを増加させる方法を提供する。種々の態様では、細胞の増殖、成長、もしくは生存の阻害もしくは減少またはグリコーゲン毒性に関連する形態学的変化(細胞膨張、リソソーム数の増加、リソソームサイズの増加、またはリソソーム構造の変化など)のアッセイによって毒性を検出する。
【0068】
有毒レベルのグリコーゲンにより細胞の生存率も減少し得る。したがって、本発明は、細胞の溶解またはアポトーシスを引き起こす量にグリコーゲンを増加させる方法を提供する。
【0069】
肝臓および筋肉などの一定の細胞型がより大量のグリコーゲンを貯蔵する傾向があるので、有毒なグリコーゲンの細胞内レベルは、細胞型によって変化する。したがって、グリコーゲン毒性を誘導するために、肝細胞および筋細胞などの通常細胞内グリコーゲン量がより多い細胞型のグリコーゲンの絶対量はより多くてよい。例えば、ヒト直腸結腸腺癌細胞株(HT−29、HRT−18、SW−480、およびCaco−2)の非同期培養物では、指数成長期のより低い相対レベルおよびその後の静止期の3〜4倍の増加によって特徴づけられるグリコーゲン蓄積速度は細胞株間で類似していた。HT−29およびHRT−18細胞株の同期培養物は共にS期、G2期、およびM期のグリコーゲン量は少なく、その後G1期およびG1期中のピーク(初期値の2.5〜3倍)から増加し始める。これの後にG1期の後半で対照的に減少した。しかし、静止期および指数期に存在するグリコーゲンは、各細胞株に特異的であった:Caco−2細胞、HRT−18細胞、HT−29細胞、およびSW−480細胞の最大値は、それぞれ、258.5+/−6.9(S.D.)、88.9+/−2.6、87.5+/−3、および17.5+/−1.8μgグリコーゲン/mgタンパク質であった(Rousset et al.,Cancer Res.39(2 Pt 1):531(1979))。したがって、細胞型に基づいてグリコーゲンレベルを変化させることができ、通常より高い絶対レベルを有する細胞はまた、一般に、毒性を示すためにより高い絶対レベルのグリコーゲンが必要である。
【0070】
グリコーゲン毒性への感受性はまた、細胞型によって変化し得る。したがって、一定の細胞型では正常レベルよりもわずかに高いグリコーゲンレベルでさえ毒性の誘導に十分であるのに対して、他の細胞株では、毒性を誘導するために通常範囲を超えるグリコーゲンレベルへの有意な増加が必要であり得る。いずれかの場合、本明細書中に開示の任意の種々のアッセイおよび形態学的基準または当該分野で公知の他のものを使用してグリコーゲン毒性を決定することができる(例えば、Phillips et al.,The Liver:An Atlas and Text of Ultrastructural Pathology.New York:Raven Press(1987);Lembcke et al.,Res.Exp.Med.191:389(1991);and Baudhuinet al.,Lab.Invest.13:1139(1964))を参照のこと)。
【0071】
本発明の種々の実施形態では、薬剤または治療がグリコーゲンレベルを有毒レベルに増加させる量(標的細胞の死滅に十分なレベルが含まれるが含まれる)で使用する場合に、以前にグリコーゲン生成酵素活性を刺激または増加するか、グリコーゲン分解酵素の活性を阻害または減少させるか、細胞内グリコーゲンレベルに直接または間接的に影響を与えるタンパク質の活性を調整すると特徴づけられた薬剤および治療を適用可能である。すなわち、使用した薬剤および治療が細胞内グリコーゲンの有毒レベルへの増加に十分であるか、細胞の死滅に十分である場合、グリコーゲン生成酵素刺激活性もしくはグリコーゲン分解酵素阻害活性を有するか細胞内グリコーゲンレベルに影響を与えるタンパク質活性を調整する当該分野で公知の薬剤および治療を本発明で使用することができる。
【0072】
本発明のさらなる実施形態では、薬剤または治療が本発明の前に過剰増殖細胞または細胞増殖性障害(例えば、良性過形成または腫瘍もしくは癌)の治療に使用されていない場合に、グリコーゲン生成酵素活性を刺激または増加するか、グリコーゲン分解酵素の活性を阻害または減少させるか、細胞内グリコーゲンレベルを増加させる別のタンパク質の活性を調整することが公知であるか本質的にそうである薬剤および治療を適用可能である。すなわち、当該分野で公知の薬剤および治療が本発明前に細胞増殖性障害の治療に使用されていない場合、当該分野で公知であり且つ本質的に以下に記載の能力を有すると認識されているか、当該分野で公知であり且つ以下に記載の能力を本式的に有する薬剤および治療を本発明で使用することができる:グリコーゲン生成酵素活性を刺激または増加させるか、グリコーゲン分解酵素活性を阻害または減少させるか、細胞内グリコーゲンレベルを増加させるタンパク質活性を調整する能力。任意選択的に、本発明で使用したこのような公知の薬剤および治療により、グリコーゲンレベルが有毒レベル(標的細胞の死滅に十分な量)に増加する。
【0073】
本発明は、インビボ方法を含む。例えば、本明細書中に記載の過剰増殖細胞などの細胞は、哺乳動物などの被験体(例えば、ヒト被験体など)中に存在し得る。被験体は、任意選択的に、細胞増殖障害を有するか有する危険性を有する。細胞増殖性障害を含む過剰増殖細胞を、本発明にしたがって処置して細胞内グリコーゲンを増加させ、それにより毒性を誘導することができる。
【0074】
本明細書中で使用される、用語「細胞増殖障害」、「過剰増殖する」、「過剰増殖性障害」、およびその文法上の変形物は、細胞、組織、または器官に関して使用する場合、任意の望ましくないか、過剰であるか、異常な細胞、組織、または器官の増殖、成長、分化、または生存をいう。過剰増殖細胞は、その増殖、成長、または生存が、対応する基準正常細胞よりも多い細胞(例えば、細胞増殖性障害の細胞)を示す。増殖および分化障害には、被験体中の望ましくないか、過剰であるか、異常な細胞数、細胞成長、または細胞生存によって特徴づけられる疾患および生理学的病態(良性過形成および新形成)が含まれる。このような障害の特定の例には、転移性および非転移性腫瘍および癌が含まれる。
【0075】
したがって、本発明はまた、被験体の細胞増殖障害(例えば、良性過形成または腫瘍もしくは癌)の治療方法を提供する。1つの実施形態では、肝細胞、筋細胞、または脳細胞の障害ではない細胞増殖性障害の治療法は、細胞増殖性障害の治療に十分な細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を障害を含む1つまたは複数の細胞中で発現させる工程を含む。別の実施形態では、肝細胞、筋細胞、または脳細胞の障害ではない細胞増殖性障害の治療法は、細胞増殖性障害の治療に十分な細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に障害を含む1つまたは複数の細胞を接触させる工程を含む。特定の態様では、過剰増殖性障害は、転移性または非転移性癌を含む。さらなる態様では、癌細胞は、頭頸部、脳、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、または造血系に存在する。
【0076】
さらに別の実施形態では、細胞増殖障害の治療方法は、障害を含む1つまたは複数の細胞中で細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程を含む。さらに別の実施形態では、細胞増殖障害の治療方法は、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に前記細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に障害を含む1つまたは複数の細胞を接触させる工程を含む。特定の態様では、過剰増殖性障害は転移性または非転移性癌を含む。さらなる態様では、癌細胞は、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系に存在する。
【0077】
腫瘍を有するか腫瘍を有する危険性のある被験体の治療方法をさらに提供する。1つの実施形態では、腫瘍が、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍ではなく、方法は、1つまたは複数の腫瘍細胞中で被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物発現させる工程を含む。別の実施形態では、腫瘍が、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍ではなく、方法は、被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に1つまたは複数の腫瘍細胞を接触させる工程を含む。さらなる実施形態では、1つまたは複数の腫瘍細胞中で前記被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程を含む。さらに別の実施形態では、方法は、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に前記被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に1つまたは複数の腫瘍細胞を接触させる工程を含む。
【0078】
腫瘍療法を受けているか受けていた被験体の治療方法をさらに提供する。1つの実施形態では、腫瘍は肝臓、筋肉、または脳の腫瘍ではなく、方法は、被験体に被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲンを増加させる薬剤を被験体に投与する工程を含む。別の実施形態では、方法は、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に被験体に被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤を被験体に投与する工程を含む。
【0079】
本明細書中で使用される、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、「処置(treatment)」、およびその文法上の変形物は、特定の生理学的効果または結果を得ることが望まれる各患者に本発明のプロトコール、投与計画、またはプロセスに供することを意味する。各治療患者は特定の治療プロトコールに応答することができず、治療には任意の特定の患者または患者集団で所望の効果を得ている必要はない。言い換えれば、所与の患者または患者集団は治療に応答することができない。
【0080】
用語「腫瘍」、「癌」、および「新形成」は本明細書中で交換可能に使用され、その成長、増殖、または生存が正常な対応細胞の成長、増殖、または生存よりも大きい細胞もしくは細胞集団、または組織、もしくは器官をいう。このような障害には、例えば、癌、肉腫、黒色腫、神経(芽腫、神経膠腫)、およびリンパ腫、細網内皮細胞、リンパ、もしくは造血系の腫瘍性障害(骨髄腫、リンパ種、または白血病)が含まれる。腫瘍には、転移性型および非転移性型が含まれる、任意の悪性度(悪性度I、II、III、IV、またはV)の腫瘍または寛解した腫瘍が含まれる。
【0081】
腫瘍は、多数の原発性腫瘍型(乳房、肺、甲状腺、頭頸部、脳、副腎、甲状腺、リンパ、リンパ、胃腸管(口腔、食道、胃、小腸、結腸、直腸)、尿生殖路(子宮、卵巣、子宮頸部、膀胱、精巣、陰茎、前立腺)、腎臓、膵臓、肝臓、骨、筋肉、皮膚が含まれるが、これらに限定されない)に起因し、二次部位に転移し得る。
【0082】
「固形性腫瘍」は、典型的には、凝集して塊を形成する新形成または転移をいう。特定の例には、黒色腫、乳癌、膵臓癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌(精上皮腫が含まれる)、胃癌、結腸癌、肝細胞癌、副腎癌、腎臓癌、膀胱癌、肺癌、頭頸部癌、および脳の腫瘍/癌などの内蔵腫瘍が含まれる。
【0083】
癌腫は、上皮または内分泌組織の悪性疾患をいい、呼吸器系の癌腫、胃腸系癌腫、泌尿器生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳房の癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫、および黒色腫が含まれる。この用語には、癌肉腫(例えば、癌性および肉腫性組織から構成される悪性腫瘍が含まれる)も含まれる。腺癌には、腺組織の癌腫または腫瘍が腺様構造を形成する癌腫が含まれる。黒色腫は、メラノサイトおよび皮膚、眼(網膜が含まれる)、または身体の他の領域で発症し得る色素細胞起源の他の細胞の悪性腫瘍をいう。さらなる癌腫は、子宮/子宮頸部、肺、頭頸部、結腸、膵臓、精巣、副腎、腎臓、食道、胃、肝臓、および卵巣から形成され得る。
【0084】
肉腫は、間葉細胞起源の悪性腫瘍をいう。肉腫の例には、例えば、リンパ肉腫、脂肪肉腫、骨肉種、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および線維肉腫が含まれる。
【0085】
神経新形成には、神経膠腫、膠芽細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞種、星状細胞腫、乏突起膠細胞腫が含まれる。
【0086】
「液状腫瘍」は、リンパ腫、骨髄腫、または白血病などの細網内皮系もしくは造血系の過形成または事実上拡散する過形成をいう。白血病の特定の例には、急性および慢性リンパ芽球性白血病、骨髄芽球性白血病、および多発性骨髄腫が含まれる。典型的には、このような疾患は、未分化型急性白血病(例えば、正芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)に起因する。特定の骨髄性障害には、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)が含まれるが、これらに限定されず、リンパ性悪性疾患には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B細胞性(B−lineage)ALLおよびT細胞性(T−lineage)ALLが含まれる)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)が含まれるが、これらに限定されない。特定の悪性リンパ腫には、非ホジキンリンパ腫および変種(variant)、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、およびリード−スターンバーグ病が含まれる。
【0087】
本発明の方法は、被験体の病態の検出可能または測定可能な改善(治療上の利点)を提供する方法を含む。治療上の利点は、病態の任意の客観的もしくは主観的、一過性もしくは一時的、または長期の改善または障害の重症度もしくは不都合な症状の軽減である。したがって、1つまたは複数の関連する不都合な症状または合併症の重症度、継続時間、または頻度が付加的または部分的に軽減するか、1つまたは複数の生理学的、生化学的、または細胞の徴候または病態の特徴が阻害または逆転する場合、満足な臨床終点(clinical endpoint)が達成される。したがって、治療上の利点または改善(「改善する(ameliorate)」を同意語として使用する)には、全ての標的増殖細胞(例えば、腫瘍)の完全な破壊または細胞増殖障害に関連する全ての不都合な症状または合併症の除去は必要ない。例えば、腫瘍細胞塊の部分的破壊または腫瘍の進行もしくは悪化の阻害による腫瘍の安定化により、腫瘍の一部または大部分が残存したとしても、死亡率を減少させ、数日、数週間、または数ヵ月でも延命することができる。
【0088】
治療上の利点の特定の非限定的な例には、腫瘍体積(サイズまたは細胞塊)の減少、腫瘍体積の増加の阻害、腫瘍の進行または転移の遅延または阻害、腫瘍細胞の溶解またはアポトーシスの刺激、誘導、または増加が含まれる。本明細書中で開示されるように、本発明の方法の効果は、グリコーゲン毒性によって誘導された細胞膨張に起因する腫瘍細胞塊を増加させることができることである。したがって、腫瘍細胞塊の減少は、細胞膨張が回復するか腫瘍細胞の溶解もしくはアポトーシスが起こった後に起こり得る。腫瘍細胞がグリコーゲン毒性の特徴を示すかどうかまたは腫瘍細胞数の減少もしくは腫瘍細胞の増殖、成長、もしくは生存が阻害されるかどうかについての腫瘍を含む生検サンプル(例えば、血液または組織のサンプル)の試験を確立することができる。あるいは、固形性腫瘍についての浸襲性および非浸襲性の画像処理方法により腫瘍のサイズまたは体積を確認することができる。
【0089】
軽減または減少させることができる腫瘍、新形成、および癌に関連するさらなる不都合な症状および合併症には、例えば、吐気、食欲不振、嗜眠、痛み、および不快症状が含まれる。したがって、不都合な症状の重症度、持続時間、または頻度の部分的または完全な軽減、被験体の主観的な感覚の改善(活動力、食欲、精神的に満足な状態の増加)は、全て治療上の利点の特定の非限定的な例である。
【0090】
有効とも見なされる治療は、別の治療計画、プロトコール、またはプロセスの使用が軽減する治療である。例えば、腫瘍のための本発明の方法は、その実施により腫瘍治療に必要な抗腫瘍薬または免疫増強薬(化学療法薬、放射線療法薬、または免疫療法薬など)の投与頻度または投与量が減少する場合に治療上の利点を有すると見なされる。
【0091】
したがって、本発明によれば、抗腫瘍療法の有効性の増加方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍の治療ではない抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けているか受けていた被験体に細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤を投与し、抗腫瘍療法または免疫増強療法を行う工程を含む。別の実施形態では、方法は、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けているか受けていた被験体に細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤を投与し、抗腫瘍療法または免疫増強療法を行う工程を含む。薬剤を、抗腫瘍療法または免疫増強療法の前、実質的に同時、または実施後に投与する。
【0092】
治療上の利点を得るか、客観的または主観的に1つ、いくつか、または全ての病態の不都合な症状または合併症を測定可能なまたは検出可能な範囲で改善するが、障害、病態、または不都合な症状の進行または悪化を防止または阻害するための治療用量、「有効量」、「十分な量」により満足な結果が得られる。したがって、細胞増殖性障害の場合、この量は、被験体に治療上の利点を提供するか障害の症状を改善するのに十分である。治療をうける障害の状態または治療の任意の副作用によって示されるように、用量を比例的に増加させることができる。
【0093】
勿論、任意の治療プロトコールに典型的であるように、被験体は一定範囲の治療応答を示す。したがって、適切な量は、少なくとも一部は、治療をうける障害(例えば、良性過形成または腫瘍および腫瘍型または悪性度)、所望の治療効果、各被験体(例えば、被験体内の生物学的利用能、性別、年齢など)ならびに遺伝的および後成的可変性(例えば、薬理ゲノム学)に基づいた被験体の薬物に対する応答に依存する。
【0094】
用語「被験体」および「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、動物、典型的には、非ヒト霊長類(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、マカクザル、テナガザル)、ペット(domestic animal)(イヌおよびネコ)、家畜(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、およびヒトなどの哺乳動物をいう。被験体には、インビボでの効果の研究のための疾患モデル動物(例えば、腫瘍または癌の動物モデル)(例えば、マウスおよび非ヒト霊長類など)が含まれる。ヒト被験体には、成人および小児(例えば、新生児およびそれ以上の小児)が含まれる(1歳と5歳との間、5歳と10歳との間、10歳と18歳との間、およびそれ以上(例えば、60歳と65歳との間、65歳と70歳との間、および70歳と100歳との間の年齢))。
【0095】
被験体には、細胞増殖性障害を有するか有する危険性のあるヒトが含まれる。被験体には、抗腫瘍療法または免疫増強療法の候補、抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けている被験体、および抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けていた被験体も含まれる。
【0096】
危険性のある被験体には、細胞増殖性障害(例えば、良性過形成、腫瘍、または癌)の家族歴を有する被験体、遺伝的素因を有する被験体、または以前に罹患した被験体が含まれる。危険性のある被験体には、発癌物質もしくは変異誘発物質への環境曝露がさらに含まれる(喫煙者または産業もしくは作業環境下におかれた被験体)。このような被験体は、細胞増殖性障害と診断されていないか、その症状を示していなかった。したがって、癌などの細胞増殖性障害を発症する危険性のある被験体を、腫瘍関連遺伝子、遺伝子の欠失、または遺伝子の変異についての遺伝子スクリーニングを使用して同定することができる。乳癌を発症する危険性のある被験体は、例えば、Brca1を欠く。結腸癌を発症するリスクのある被験体は、腫瘍抑制遺伝子が欠失または変異していた(例えば、体調腺腫性ポリポーシス(APC)など)。細胞増殖性障害に対する特定の遺伝的素因を有する危険性のある被験体は当該分野で公知である(例えば、The Genetic Basis of Human Cancer2nd ed.by Bert Vogelstein(Editor),Kenneth W.Kinzler(Editor)(2002)McGraw−Hill Professional;The Molecular Basis of Human Cancer.Edited by WB Coleman and GJ Tsongalis(2001)Humana Press;およびThe Molecular Basis of Cancer.Mendelsohn et al.,WB Saunders(1995)を参照のこと)。
【0097】
したがって、危険性のある被験体を、細胞増殖性障害の発症可能性を阻害または減少させるために予防的に治療するか、細胞増殖性障害の治癒後または同一もしくは異なる細胞増殖性障害の再発後に治療することができる。このような治療の結果は、危険性のある被験体の治療において細胞増殖性障害またはその不都合な症状を部分的または完全な防止であり得る。
【0098】
本発明で有用な核酸には、グリコーゲンの合成または細胞内の量を増加させるかグリコーゲン蓄積に直接または間接的に寄与する任意のタンパク質をコードする配列が含まれる。したがって、このような配列には、本明細書中に記載の任意および全てのグリコーゲン生成酵素をコードする配列ならびに任意および全てのグリコーゲン分解酵素の阻害核酸が含まれる。
【0099】
本発明で有用なさらなる核酸配列には、細胞内グリコーゲン蓄積に関与する任意のタンパク質の発現または活性を直接または間接的に調整するタンパク質をコードする配列が含まれる。特定の例には、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させるタンパク質およびグリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させるタンパク質が含まれる。したがって、このような配列には、グリコーゲン生成酵素およびグリコーゲン分解酵素の転写または翻訳を調節するタンパク質が含まれる。このようなタンパク質の1つの特定の例は、グリコーゲン分解酵素α−グルコシダーゼの遺伝子発現を抑制するNotch−1/Hes−1である(Yan et al,J Biol Chem.,277:29760(2002))。したがって、阻害のためにこのようなタンパク質をコードするかこのようなタンパク質をターゲティングする核酸も本発明で使用することができる。
【0100】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」は、リン酸エステル結合または等価物によって結合した少なくとも2つまたはそれ以上のリボ−またはデオキシ−リボ核酸塩基対(ヌクレオチド)をいう。核酸には、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオシドが含まれる。核酸には、一本鎖、二本鎖、もしくは三本鎖、または環状もしくは線状の分子が含まれる。核酸分子は、排他的または任意のヌクレオチド含有分子群と混合して属し得る(例えば、RNA、DNA、cDNA、ゲノム核酸、非ゲノム核酸、天然に存在するか天然に存在しない核酸および合成核酸が含まれるが、これらに限定されない)。
【0101】
核酸は、任意の長さであり得る。本発明で有用な核酸の長さは、典型的には、約20ヌクレオチド長から20Kb長まで、10長ヌクレオチドから10Kb長まで、1〜5Kb長またはそれ以下、1000〜約500ヌクレオチド長またはそれ以下の範囲である。核酸はまた、より短くなることがある(例えば、100〜500ヌクレオチド長、約12〜25、25〜50、50〜100、100〜250、または約250〜500ヌクレオチド長)。より短いポリヌクレオチドは、一般に、一本鎖または二本鎖DNAの「オリゴヌクレオチド」または「プローブ」という。しかし、このようなオリゴヌクレオチド長の上限はない。
【0102】
ポリヌクレオチドには、L型またはD型およびその混合物が含まれ、被験体に投与した場合に分解に耐性を示すようにさらに修飾することができる。特定の例には、被験体の種々の組織または流動物中に存在するエンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼに耐性を示す5’および3’結合が含まれる。
【0103】
核酸にはアンチセンスが含まれる。本明細書中で使用される、用語「アンチセンス」は、特定のDNAまたはRNA配列に結合することができるポリヌクレオチドまたはペプチド核酸をいう。アンチセンスには、一本鎖、二本鎖、三本鎖、またはそれ以上の鎖のRNAおよびDNAポリヌクレオチドならびにRNA転写物またはDNAに結合するペプチド核酸(PNA)が含まれる。特定の例には、センスRNAに結合するRNAおよびDNAアンチセンスが含まれる。例えば、一本鎖核酸は、細胞由来のグリコーゲンの代謝、異化、除去、または分解に関与するタンパク質転写物をターゲティングすることができる(例えば、mRNA)。アンチセンス分子は、典型的には、センス鎖と100%相補的であるが、ヌクレオチドのいくつかがセンス分子に結合する「部分的に」相補的であり得る(100%未満の相補性(例えば、95%、90%、80%、70%、および時折それ以下))。
【0104】
三重鎖形成アンチセンスは、二本鎖DNAに結合し、それにより遺伝子転写を阻害することができる。遺伝子の転写開始部位由来のオリゴヌクレオチド(例えば、開始部位から−10位と+10位との間)は、特定の例である。
【0105】
遺伝子発現阻害のためのsiRNA(siRNAまたはRNAiという)は、当該分野で公知である(例えば、Kennerdell et al.,Cell 95:1017(1998);Fire et al.,Nature,391:806(1998);WO02/44321号;WO01/68836号;WO00/44895号、WO99/32619号、WO01/75164号、WO01/92513号、WO01/29058号、WO01/89304号、WO02/16620号;およびWO02/29858号を参照のこと)。「ヘアピン」構造を形成するRNAをコードする核酸またはハイブリッド形成する2つのRNA分子を作製するコードする核酸の各末端からのRNAの発現によってRNAiサイレンシングを誘導することができる。
【0106】
特定のRNA切断を触媒する酵素RNA分子であるリボザイムを使用して、コードされたタンパク質の発現を阻害することができる。リボザイムは相補標的RNAと配列特異的ハイブリッドを形成し、その後切断される。特定の例には、例えば、グリコーゲンの代謝、異化、除去、または分解に関与するタンパク質をコードする配列のエンドヌクレアーゼ切断を特異的且つ有効に触媒することができる操作されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子が含まれる。
【0107】
潜在的なRNA標的内のリボザイム切断部位を、最初に、切断部位(例えば、GUA、GUU、およびGUCが含まれる)についての標的分子のスキャニングによって同定することができる。一旦同定されると、切断部位を含む標的領域に対応する約15リボヌクレオチドと20リボヌクレオチドとの間のRNA配列を、オリゴヌクレオチドを操作不可能にすることができる二次構造の特徴について評価する。リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用した相補オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成の接近可能性によって、候補標的配列の適合性も評価することができる。
【0108】
アンチセンス、リボザイム、RNAi、および三重鎖形成核酸を、本明細書中で集合的に「阻害核酸」または「阻害ポリヌクレオチド」という。このような阻害核酸は、グリコーゲン分解酵素などの細胞内グリコーゲンの代謝、異化、除去、または分解に関与するタンパク質の発現を阻害することができる。このような阻害核酸は、タンパク質の発現または活性を阻害し、その後グリコーゲンの合成または蓄積に寄与するタンパク質の発現または活性を阻害することができる。このようなタンパク質の発現または活性の阻害により、グリコーゲンの合成または蓄積に関与するタンパク質の抑制が軽減され、細胞内グリコーゲンが蓄積する。
【0109】
阻害ポリヌクレオチドは、発現調節エレメントがインビボで機能する必要はない。このような分子を、細胞によって吸収されて受動拡散を介して細胞に侵入することができる。このような分子を、ウイルスベクターなどのベクターを使用して細胞に移入することもできる。阻害ポリヌクレオチドを転写されるような核酸によってコードすることができる。さらに、阻害ポリヌクレオチドをコードするこのような核酸を、細胞内またはインビボでのコードされたアンチセンスの発現の持続または増加のための発現調節エレメントに作動可能に連結することができる。
【0110】
データベースで利用可能な遺伝子配列に基づいて阻害核酸をデザインすることができる。例えば、本明細書中に記載のように、Genbank配列(例えば、グリコーゲン分解酵素)は当該分野で公知であり、これを使用して阻害核酸をデザインすることができる。
【0111】
特定の阻害核酸は当該分野で公知である。グリコーゲン分解酵素のアンチセンスの特定の例には、ホスホリラーゼキナーゼα2発現調整(米国特許第6,458,591号);ホスホリラーゼキナーゼα1発現調整(米国特許第6,426,188号);ホスホリラーゼキナーゼβ発現の阻害(米国特許第6,368,856号);グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β発現調整(米国特許第6,323,029号);グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β発現の阻害(米国特許第6,316,259号);および肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ発現の調整(米国特許第6,043,091号)が含まれる。
【0112】
siRNA阻害の特定の例には、GSK3αおよびGSK3βが含まれる(Yu et al.,Mol Ther.7:228(2003))。ヘアピンsiRNAベクターのトランスフェクションによるGSK3αまたはGSK3βのいずれかの阻害によって、GSK−3標的β−カテニンの発現が増加し、両キナーゼの阻害によりβ−カテニン発現がより顕著になり、このことはGSK3αおよびGSK3βのベクターベースのsiRNA阻害を示す。
【0113】
核酸には、ヌクレオチドおよびヌクレオシドの置換、付加、および欠失、ならびに誘導形態および融合/キメラ配列(例えば、コードされた組換えポリペプチド)がさらに含まれる。例えば、遺伝コードの縮重により、核酸には、グリコーゲン生成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸に関して縮重する配列およびサブシーケンスが含まれる。他の例は、グリコーゲン生成酵素のアミノ酸配列をコードする配列に相補的な核酸である。
【0114】
核酸の欠失(サブシーケンスおよびフラグメント)は、約10〜25、25〜50、または50〜100個のヌクレオチドを有し得る。このような核酸は、細胞、培養培地、生体サンプル(例えば、組織、器官、血液、または血清)、または被験体中のタンパク質をコードする配列のポリペプチドサブシーケンスの発現、遺伝子操作(PCR増幅のためのプライマーおよびテンプレートとして)、および存在もしくは量の検出(例えば、ハイブリッド形成による)のためのプローブとして有用である。
【0115】
用語「ハイブリッド形成する」おびその文法上の変形物は、核酸配列間の結合をいう。ハイブリッド形成配列は、一般に、基準配列のアミノ酸配列をコードする核酸と約50%超の相補性を有する。ハイブリッド形成配列間のハイブリッド形成領域は、少なくとも約10〜15ヌクレオチド、15〜20ヌクレオチド、20〜30ヌクレオチド、30〜50ヌクレオチド、50〜100ヌクレオチド、または約100〜200ヌクレオチドにわたり得る。
【0116】
種々の標準的なクローニング技術および化学合成技術を使用して、核酸を産生することができる。このような技術には、抗体コード配列にアニーリングすることができるプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を使用したゲノムDNAまたはcDNA標的を使用した核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))が含まれるが、これらに限定されない。化学合成(例えば、固相ホスホラミダイト合成)または遺伝子からの転写によって核酸を産生することもできる。次いで、産生された配列を、インビトロで翻訳するか、プラスミドにクローン化し、増殖し、細胞内(例えば、酵母もしくは細菌などの微生物、動物もしくは哺乳動物などの真核生物、または植物)で発現させることができる。
【0117】
発現または操作のために、核酸を、発現カセットおよびベクターに組み込むことができる。核酸が発現調節エレメントに作動可能に連結された場合、核酸を含む発現カセットおよびベクターを発現することができる。本明細書中で使用される、用語「作動可能に連結された」は、その意図する様式で操作可能なエレメント間の物理的または機能的関係をいう。したがって、核酸に「作動可能に連結された」発現調節エレメントは、調節エレメントが核酸転写を調整し、必要に応じて転写物を翻訳することを意味する。
【0118】
エレメントの作動可能な連結のために物理的結合は必要ではない。例えば、最小エレメントを、グリコーゲン生成酵素をコードする核酸に連結させることができる。「トランスで」最小エレメントに結合する様に機能するタンパク質をコードする作動可能に連結された核酸の発現を調節する第2のエレメントは、グリコーゲン生成酵素の発現に影響を与えることができる。第2のエレメントはグリコーゲン生成酵素の発現を調節するので、第2のエレメントは、物理的に結合していなくてもグリコーゲン生成酵素をコードする核酸に作動可能に連結されている。
【0119】
用語「発現調節エレメント」は、作動可能に連結された核酸の発現に影響を与える核酸をいう。プロモーターおよびエンハンサーは、発現調節エレメントの特定の非限定的な例である。「プロモーター配列」は、下流(3’方向)配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。プロモーター配列には、転写開始を容易にするヌクレオチドが含まれる。エンハンサーは遺伝子発現も調節するが、作動可能に連結された遺伝子の転写開始部位から一定距離で機能することができる。エンハンサーは、遺伝子の5’末端または3’末端のいずれかならびに遺伝子内(例えば、イントロンまたはコード配列中)で機能する。さらなる発現調節エレメントには、リーダー配列、融合パートナー配列、多重遺伝子または多シストロン性メッセージ作製ための内部リボゾーム結合部位(IRES)エレメント、イントロンのためのスプライシングシグナル(mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正確な読み取り枠の維持)、目的の転写物を適切にポリアデニル化するためのポリアデニル化シグナル、および終止コドンが含まれる。
【0120】
発現調節エレメントには、シグナルまたは刺激を用いずに作動可能に連結された核酸が転写される「構成性」エレメントが含まれる。シグナルまたは刺激に応答して発現を付与する発現調節エレメントは「調節可能」であり、作動可能に連結された核酸の発現を増加または減少させる。シグナルまたは刺激に応答して作動可能に連結された核酸の発現を増加させる調節可能なエレメントを、「誘導性エレメント」という。シグナルまたは刺激に応答して作動可能に連結された核酸の発現を減少させる調節可能なエレメントを、「抑制エレメント」という(すなわち、シグナルは発現を減少させ、シグナルが除去されるか存在しない場合、発現が増加する)。
【0121】
発現調節エレメントには、「組織特異的発現調節エレメント」と呼ばれる特定の組織型または細胞型で活性なエレメントが含まれる。他の細胞型または組織型と比較して特定の細胞型または組織型で活性である転写アクチベータータンパク質または他の転写レギュレーターによって認識されるので、組織特異的発現調節エレメントは、典型的には、特定の細胞型または組織型で活性である。
【0122】
組織特異的発現調節エレメントには、細胞増殖性障害(腫瘍および癌が含まれる)などの過剰増殖細胞で活性なプロモーターおよびエンハンサーが含まれる。このようなプロモーターの特定の非限定的な例は、ヘキソキナーゼII、COX−2、α−フェトプロテイン、癌胎児抗原、DE3/MUC1、前立腺特異的抗原、C−erB2/neu、テロメラーゼ逆転写酵素、および低酸素症応答性プロモーターである。
【0123】
細菌発現について、構成性プロモーターには、T7ならびにλバクテリオファージのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターが含まれる。昆虫細胞系では、構成性または誘導性プロモーター(例えば、エクジソン)を使用することができる。酵母では、構成性プロモーターには、例えば、ADHまたはLEU2が含まれ、GALなどの誘導性プロモーターが含まれる(例えば、Ausubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2,Ch.13,ed.,Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience,1988;Grant et al.,In:Methodsin Enzymology,153:516−544(1987),eds.Wu & Grossman,1987,Acad.Press,N.Y.;Glover,DNA Cloning,Vol.II,Ch.3,IRL Press,Wash.,D.C.,1986;Bitter,In:Methods in Enzymology,152:673−684(1987),eds.Berger & Kimmel,Acad.Press,N.Y.;およびStrathem et al.,The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces eds.Cold Spring Harbor Press,Vols.I and II(1982)を参照のこと)。
【0124】
哺乳動物発現系について、ウイルスまたは他の生物の構成性プロモーターを使用することができる。例えば、SV40もしくはウイルス長末端反復(LTR)などまたは哺乳動物細胞ゲノム(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター、熱ショックプロモーター、ステロイド/チロイドホルモン/レチノイン酸応答エレメント)または哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルスLTR)由来の誘導性プロモーターを使用する。
【0125】
したがって、本発明の方法は、特に、標的細胞(例えば、細胞増殖性障害の細胞)への核酸またはタンパク質を移入する工程が含む。このような細胞を、形質転換細胞と言う。用語「形質転換された」は、細胞または生物に関して使用される場合、細胞への外因性分子(例えば、タンパク質または核酸(例えば、導入遺伝子))の組み込み後の細胞の遺伝子変化を意味する。したがって、「形質導入細胞」は、例えば、組換えDNA技術によって外因性分子が人の手により移入された細胞またはその子孫である。核酸またはタンパク質を、形質転換細胞およびその子孫中で安定または一過性に発現することができる。形質転換細胞を増殖させるか、移入タンパク質を発現するか、核酸を転写するか、コードされたタンパク質を発現することができる。複製時に変異が起こり得るので、子孫細胞は親細胞と同一でなくてよい。
【0126】
形質転換細胞には、細菌、真菌、植物、昆虫、および動物(例えば、哺乳動物(ヒトが含まれる))の細胞などの原核細胞および真核細胞が含まれるが、これらに限定されない。1つの特定の態様では、細胞は、グリコーゲンを産生することができるかグリコーゲン毒性に感受性を示す細胞である。別の特定の態様では、細胞は、レポーターに作動可能に連結されたグリコーゲン生成酵素、グリコーゲン分解酵素、または細胞内グリコーゲンの増減に関与する他のタンパク質の発現調節エレメントを含む細胞である。細胞は、培養物中、複数の細胞の一部、またはex vivoもしくは験体(インビボ)における組織もしくは器官中に存在し得る。
【0127】
典型的には、細胞形質転換は、プラスミド、ウイルス(ウイルスベクターなど)、または核酸の挿入または組み込みによって操作することができる当該分野で公知の他の送達体をいう「ベクター」を使用する。遺伝子操作のために、「クローニングベクター」を使用することができ、挿入されたポリヌクレオチドを転写または翻訳するために「発現ベクター」を使用することができる。このようなベクターは、発現調節エレメントに作動可能に連結された核酸(グリコーゲン生成酵素をコードする核酸および阻害核酸をコードする核酸が含まれる)の移入ならびに細胞または被験体中(例えば、溶液中または固相中)でのインビボでコードされたタンパク質または阻害核酸の発現に有用である。
【0128】
ベクターは、一般に、細胞での増殖のための複製起点を含む。必要に応じて、転写および翻訳を容易にするために、ベクター内に存在する調節エレメント(本明細書中に記載の発現調節エレメントが含まれる)を含めることができる。
【0129】
ベクターは、選択マーカーを含み得る。「選択マーカー」は、遺伝子を含む細胞を選択可能な遺伝子である。「正の選択」は、選択マーカーを含む細胞が正の選択への曝露において生存するプロセスをいう。薬物耐性は、正の選択マーカーの1つの例であり、マーカーを含む細胞は、選択薬を含む培養培地中で生存し、マーカーを欠く細胞は死滅する。選択マーカーには、G418耐性を付与するneo、ハイグロマイシン耐性を付与するhygr、およびピューロマイシン耐性を付与するプロなどの薬物耐性遺伝子が含まれる。他の正の選択マーカー遺伝子には、マーカーを含む細胞を同定またはスクリーニング可能な遺伝子が含まれる。これらの遺伝子には、蛍光タンパク質(GFPおよびGFP様発色団、ルシフェラーゼ)の遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、およびCD8などの表面マーカーなどが含まれる。「負の選択」は、負の選択マーカーを含む細胞が適切な負の選択剤の曝露時に死滅するプロセスをいう。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子を含む細胞(Wigler et al.,Cell 11:223(1977))は、薬物ガンシクロビル(GANC)に感受性を示す。同様に、gpt遺伝子は、細胞に6−チオキサンチン感受性を付与する。
【0130】
含まれるウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レオウイルス、レンチウイルス、ロタウイルスゲノム、サルウイルス40(SV40)、またはウシ乳頭腫ウイルスベースのベクターである(Cone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349(1984);Eukaryotic Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,Gluzman ed.,1982;Sarver et al.,Mol.Cell.Biol.1:486(1981))。アデノウイルスは、ゆっくりと複製し、そして/または最終的に分化する細胞に効率よく感染し、これを使用してゆっくりと複製し、そして/または最終的に分化する細胞をターゲティングすることができる。発現に有用なさらなるウイルスベクターには、パルボウイルス、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)、および水泡性口内炎ウイルス(VSV)が含まれる。
【0131】
哺乳動物発現ベクターには、AAVなどのインビボおよびex vivo発現のためにデザインしたものが含まれる(米国特許第5,604,090号)。AAVウイルスは、治療上の利点を得るのに十分なレベルでヒトにおいて発現することが以前に示されている(Kay etal.,Nat.Genet.24:257(2000);Nakai et al.,Blood 91:4600(1998))。アデノウイルスベクター(米国特許第5,700,470号、同第5,731,172号、および同第5,928,944号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号、)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルスベクターは、分裂および非分裂細胞ならびに泡沫状ウイルスの感染に有用である)ベクター(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号、および同第5,674,703号、ならびにWIPO公開W092/05266号およびW092/14829号)、乳頭腫ウイルスベクター(例えば、ヒトおよびウシ乳頭腫ウイルス)は全て遺伝子治療で使用されている(米国特許第5,719,054)。ベクターには、サイトメガロウイルス(CMV)ベースのベクターも含まれる(米国特許第5,561,063号)。遺伝子を胃腸管細胞に効率よく送達させるベクターが開発されている(米国特許第5,821,235号、同第5,786,340号、および同第6,110,456号)。
【0132】
標的細胞リガンドまたは受容体に結合する表面上のタンパク質の封入によって、特定の細胞型(例えば、望ましくなく増殖する細胞)をターゲティングするようにウイルス粒子またはウイルスまたは哺乳動物ベクターを含む小胞をデザインすることができる。あるいは、標的細胞中で核酸を発現するために細胞型特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーをベクター中に含めることができる。したがって、インビトロ、ex vivo、またはインビボでの形質転換のために細胞をターゲティングするためにウイルスベクター自体またはウイルス表面上のタンパク質を作製することができる。
【0133】
浸透圧衝撃(例えば、リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、微量注入、細胞融合などの当該分野で公知の方法によって、標的細胞へ組成物(例えば、タンパク質および核酸)を移入することもできる。他の技術を使用して、インビトロ、ex vivo、およびインビボで核酸およびポリペプチドを移入することもできる。例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンン、またはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリ乳酸/グリコリドコポリマー、またはエチレンビニルラクテートコポリマーなどの高分子。核酸を、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセルまたはポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルの使用による)またはコロイド系にトラップすることができる。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ、および液体ベースの系(が含まれ水中油型乳濁液)、ミセル、混合ミセル、およびリポソームが含まれる。
【0134】
種々の組成物の細胞への移入のためのリポソームは当該分野で公知であり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リポフェクチン、およびDOTAPが含まれる(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、および同第4,975,282号;およびGIBCO−BRL,Gaithersburg,Mdを参照のこと)。遺伝子治療に有用なピペラジンベースの両親媒性(amphilic)カチオン性脂質も公知である(例えば、米国特許第5,861,397号を参照のこと)。カチオン性脂質系も公知である(例えば、米国特許第5,459,127号を参照のこと)。
【0135】
高分子物質、マイクロカプセル、およびリポソームなどのコロイド分散系を、本明細書中で集合的に「小胞」という。したがって、細胞または組織、インビトロ、インビボ、およびex vivoでのウイルスおよび非ウイルスベクター送達手段を含む。
【0136】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、アミド結合または等価物を介した2つまたはそれ以上の共有結合アミノ酸または「残基」をいうために本明細書中で交換可能に使用される。ポリペプチドの長さは制限されず、アミノ酸を、非天然および非アミド化学結合(例えば、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、またはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)によって形成された結合)によって結合することができる。非アミド結合には、例えば、ケトメチレン、アミノメチレン、オレフィン、エーテル、およびチオエーテルなどが含まれる(例えば、Spatola in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.7,pp 267−357(1983),“Peptide and Backbone Modifications,”Marcel Decker,NYを参照のこと)。
【0137】
用語「単離した」は、組成物の調整剤(modifier)として使用される場合、組成物が人の手によって作製され、その天然に存在するインビボ環境から分離されていることを意味する。一般に、このようにして分離した組成物は、通常、例えば、1つまたは複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜と事実上会合している1つまたは複数の材料を実質的に含まない。用語「単離された」は、ポリペプチド多量体、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化)、または誘導化形態などの別の物理的形態を排除しない。
【0138】
「単離された」組成物はまた、典型的に事実上会合している材料のほとんどまたは全てを含まない場合、「実質的に純粋」であり得る。したがって、実質的に純粋でもある単離した分子は、何百万の他の配列間で存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、抗体ライブラリー中の抗体またはゲノムまたはcDNAライブラリー中の核酸など)を含まない。「実質的に純粋な」分子を、1つまたは複数の分子と組み合わせることができる。したがって、「実質的に純粋な」は、組成物の組み合わせを排除しない。
【0139】
実質的な純度は、分子の分子量の少なくとも約60%またはそれ以上であり得る。純度はまた、約70%または80%またはそれ以上およびそれ以上(例えば、90%またはそれ以上)であり得る。任意の適切な方法(例えば、UV分光法、クロマトグラフィ(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀染色またはクーマシー染色)、および配列分析(核酸およびペプチド)が含まれる)純度を決定することができる。
【0140】
本発明で有用な核酸、タンパク質、薬剤、および他の組成物には、修飾形態が未修飾または基準核酸、タンパク質、薬剤、または組成物の機能または活性の少なくとも一部を保持する場合、本明細書中に記載の修飾形態が含まれる。例えば、グリコーゲン合成に関与する修飾タンパク質(例えば、グリコーゲン合成酵素)をコードする核酸は、細胞内グリコーゲンの刺激または増加に十分な活性を保持することができるが(修飾タンパク質を単独またはグリコーゲン合成に関与する別のタンパク質と組み合わせて使用することができる)、グリコーゲン合成に関与する基準未修飾タンパク質と比較して活性は増減した。
【0141】
したがって、本発明は、さらに、例示的タンパク質、核酸、薬剤、および組成物が修飾されたタンパク質、核酸、薬剤、および他の組成物を使用する。本明細書中で使用される、用語「修飾する」およびその文法上の変形物は、タンパク質、核酸、薬剤、または他の組成物などの組成物に関して使用される場合、修飾組成物が基準組成物から逸脱することを意味する。このような修飾タンパク質、核酸、薬剤、および他の組成物は、基準未修飾タンパク質、核酸、薬剤、および組成物よりも活性がより高いまたは低くてよい。
【0142】
ポリペプチド修飾には、「変異型」とも呼ばれるアミノ酸の置換物、付加物、および欠失物が含まれる。ポリペプチド修飾には、1つまたは複数のL−アミノ酸が置換されたD−アミノ酸(およびその混合物)、構造および機能アナログ(例えば、合成もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸アナログおよび誘導体化形態を有するペプチド模倣物)も含まれる。
【0143】
ポリペプチド修飾には、配列(例えば、1つまたは複数のアミノ酸)に共有結合した基準天然(野生型)配列中に通常存在しない1つまたは複数の分子を有するアミノ酸配列である融合(キメラ)ポリペプチド配列がさらに含まれる。修飾には、分子内または分子間ジスルフィド結合のアミノ末端とカルボキシル末端との間の末端−末端アミド結合などの環状構造が含まれる。ポリペプチド(抗体が含まれる)を、インビトロまたはインビボで修飾することができる(例えば、糖残基、リン酸基、ユビキチン、脂肪酸、または脂質を含めるために翻訳後修飾する)。
【0144】
「保存的置換」は、あるアミノ酸の生物学的、化学的、または構造的に類似した残基への置換である。生物学的類似は、置換が生物活性(例えば、酵素活性)に適合することを意味する。構造的類似は、アミノ酸が類似の長さの側鎖(アラニン、グリシン、およびセリンなど)を有するか、類似のサイズであることを意味する。化学的類似は、残基の電荷が同一であるか、親水性または疎水性であることを意味する。特定の例には、ある疎水性残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンなど)と別の残基との置換、ある極性残基と別の極性残基との置換(リジンのアルギニンへの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、アスパラギンのグルタミンへの置換、トレオニンのセリンへの置換など)などが含まれる。
【0145】
用語「同一な」または「同一性」は、2つまたはそれ以上の基準物質が同一であることを意味する。したがって、2つのタンパク質配列が同一である場合、これらは同一のアミノ酸配列を有する。「同一領域」は、同一である2つまたはそれ以上の基準物質の一部をいう。したがって、1つまたは複数の配列領域に関して2つのタンパク質配列が同一である場合、これらはその領域中にアミノ酸同一性を共有する。用語「実質的な同一性」は、分子が構造的に同一であるか、基準分子の1つまたは複数の機能(例えば、生物学的機能)の少なくとも一部を有することを意味する。修飾ポリペプチドが少なくとも部分的活性を有する(例えば、グリコーゲンの合成または蓄積に寄与する)場合、実質的な同一性を有するポリペプチドには、基準ポリペプチドと50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、またはそれ以上同一なアミノ酸配列が含まれる。
【0146】
本明細書中で使用される、用語「配列」または「フラグメント」は、全長分子の一部を意味する。タンパク質配列は、全長比較配列よりも1つまたは複数のアミノ酸が少ない(例えば、アミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかからの1つまたは複数の内部または末端アミノ酸の欠失)。核酸配列は、全長比較核酸配列よりも少なくとも1つのヌクレオチドが少ない。したがって、配列は、全長分子までの任意の長さであり得る。
【0147】
修飾形態には、誘導体化配列(例えば、遊離アミノ基が塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボベンズオキシ基を形成するアミノ酸;塩、メチル、およびエチルエステル由来の遊離カルボキシル基;O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成する遊離水酸基)および天然に存在するアミン酸誘導体(例えば、プロリンについては4−ヒドロキシプロリン、リジンについては5−ヒドロキシリジン、セリンについてはホモセリンなど)がさらに含まれる。当該分野で周知の任意の種々の方法(例えば、PCRベースの部位特異的欠失および挿入変異誘発、化学修飾、変異誘発、および架橋など)を使用して修飾することができる。
【0148】
当該分野で公知の方法を使用した細胞発現もしくはインビトロ翻訳によるポリペプチドをコードする核酸の組換えDNAテクノロジーまたはポリペプチド鎖の化学合成を使用してペプチド配列を作製することができる。化学合成機(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAを参照のこと)によってポリペプチド配列を産生することもできる。
【0149】
任意の他の治療計画または治療プロトコールと組み合わせて本発明を実施することができる。本発明の組成物および方法を、所望の効果が得られる任意の他の薬剤または治療薬と組み合わせることもできる。薬剤および治療薬の例は、抗腫瘍活性または免疫増強活性を有する。
【0150】
したがって、本発明は、本明細書中に記載されているか当該分野で公知の抗細胞増殖プロトコールなどの任意の治療計画または治療プロトコールと組み合わせて使用する方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、抗腫瘍または免疫増強療法または薬剤を投与する工程を含む。抗腫瘍または免疫増強療法薬または薬剤を、細胞内グリコーゲンを増加させる核酸または薬剤もしくは治療薬の投与前、実質的に同時、または投与後に投与することができる。
【0151】
本明細書中で使用される、「抗腫瘍」、「抗癌」、または「抗新生物」薬、治療薬、治療法、活性、または効果は、過形成、腫瘍、癌、または新生物の成長、転移、増殖、または生存を阻害、減少、遅延、軽減、または防止する任意の薬剤、療法、治療計画、プロトコール、またはプロセスを意味する。抗腫瘍薬、療法、または治療薬は、細胞周期の進行または細胞増殖の破壊、阻害、または遅延;アポトーシス、溶解、または細胞死の刺激または増強;核酸またはタンパク質の合成または代謝の阻害;細胞分裂の阻害;細胞の生存または産生の減少、軽減、または阻害;または細胞生存因子、成長因子、またはシグナル伝達経路(細胞外または細胞内)の利用によって操作することができる。
【0152】
抗腫瘍療法の例には、化学療法、免疫療法、放射線療法(イオン化または化学)、局所または局部的発熱(高熱)療法、および外科的切除が含まれる。
【0153】
抗細胞増殖薬および抗腫瘍薬の特定の非限定的なクラスには、アルキル化薬、抗代謝薬、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド、およびヌクレオチドアナログが含まれる。微生物毒素の特定の非限定的な例には、細菌コレラ毒素、百日咳毒素、炭疽毒素、ジフテリア毒素、および植物毒素リシンが含まれる。薬物の特定の例には、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5−アザシチジン(5−AZC)および5−アザシチジン関連化合物、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、ミトーテン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびジブロモマンニトールが含まれる。
【0154】
放射線療法には、被験体への内部または外部送達が含まれる。被験体に内在化することや放射性同位体に物理的に接触させることなく、例えば、α線、β線、γ線、およびX線を外部から被験体に照射することができる。X線線量の特定の例は、長時間(3〜5/週)に対し50〜200レントゲンの一日用量から2000〜6000レントゲンの単回線量までの範囲である。線量は広範に変化し、曝露時間、同位体の半減期、照射型、処置される細胞型および位置、ならびに疾患の悪性度の進行に依存する。放射性核種の特定の例には、例えば、47Sc、67Cu、72Se、88Y、90Sr、90Y、97Ru、99Tc、105Rh、111In、125I、131I、149Tb、153Sm、186Re、188Re、194Os、203Pb、211At、212Bi、213Bi、212Pb、223Ra、225Ac、227Ac、および228Thが含まれる。
【0155】
本明細書中で使用される、用語「免疫増強」は、薬剤、療法、または治療薬に関して使用される場合、薬剤、療法、または治療薬により、体液性または細胞性の免疫応答が増加、刺激、誘導、または促進されることを意味する。このような療法により、一様に免疫応答を増強することができるか、特定の標的(例えば、腫瘍または癌などの細胞増殖障害)に対する免疫応答を増強することができる。
【0156】
免疫増強薬の特定の非限定的な例には、成長因子、生存因子、分化因子、サイトカイン、およびケモカインが含まれる。さらなる例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびその混合物である。腫瘍関連抗原(TAA)を介して腫瘍細胞に結合する抗体は、免疫増強治療薬の特定の例である。用語「腫瘍関連抗原」または「TAA」は、腫瘍細胞によって発現する抗原をいう。
【0157】
ターゲティングすることができるTAAおよび対応する抗体の特定の例には、例えば、白血球CD33抗原に結合するM195抗体(米国特許第6,599,505号);卵巣癌CA6腫瘍関連抗原に結合するモノクローナル抗体DS6(米国特許第6,596,503号);上皮細胞表面H抗原に結合するヒトIBD12モノクローナル抗体(米国特許第4,814,275号);および結腸、乳房、卵巣、および肺の癌腫によって発現されるLe炭水化物エピトープに結合するBR96抗体が含まれる。使用することができるさらなる抗腫瘍抗体には、例えば、Herceptin(抗Her−2neu抗体)、Rituxan(登録商標)、Zevalin、Bevacizumab(Avastin)、Bexxar、Campath(登録商標)、Oncolym、17−1A(Edrecolomab)、3F8(抗神経芽細胞腫抗体)、MDX−CTLA4、IMC−C225(Cetuximab)、およびMylotargが含まれる。
【0158】
免疫増強薬および治療薬のさらなる例には、細胞増殖性障害に対する抗体を発現するか細胞増殖性障害に対する免疫応答を増加させるリンパ球、血漿細胞、マクロファージ、星状細胞、NK細胞、およびB細胞などの免疫細胞が含まれる。免疫原性を増強または刺激するサイトカインには、免疫増強薬の非限定的な例でもあるIL−2、IL−1α、IL−β、IL−3、IL−6、IL−7、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、IFN−γ、IL−12、TNF−α、およびTNFβが含まれる。MIP−1α、MIP−1β、RANTES、SDF−1、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309/TCA3、ATAC、HCC−1、HCC−2、HCC−3、PARC、TARC、LARC/MIP−3α、CKβ、CKβ6、CKβ7、CKβ8、CKβ9、CKβ11、CKβ12、C10、IL−8、ENA−78、GROα、GROβ、GCP−2、PBP/CTAPIIIβ−TG/NAP−2、Mig、PBSF/SDF−1、およびリンホタクチンは、免疫増強薬のさらなる非限定的な例である。
【0159】
本発明は、さらに、任意選択的にキットの構成要素の使用のための説明書(本発明の方法を実施するための説明書)と組泡あせて適切な包装材料に包装された、薬剤、核酸タンパク質、および薬学的組成物を含むキットを提供する。1つの実施形態では、キットは、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への前記薬剤の投与のための説明書を含む。別の実施形態では、キットは、グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への前記薬剤の投与のための説明書を含む。さらに別の実施形態では、キットは、細胞内グリコーゲンの蓄積を増加させる一定量の薬剤およびラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への前記薬剤の投与のための説明書を含む。さらなる態様では、キットは、抗腫瘍薬または免疫増強薬(例えば、アルキル化薬、抗代謝薬、植物アルカロイド、植物抽出物、抗生物質、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシドアナログ、ヌクレオチドアナログ、または抗体)をさらに含む。なおさらなる態様では、キットは、例えば、薬剤を被験体に、局所的、局部的、または全身への送達のための製品を含む。
【0160】
本明細書中で使用される、用語「包装材料」は、キットの構成要素を格納する物理的構造をいう。包装材料は、構成要素を滅菌状態で維持することができ、このような目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプルなど)で作製することができる。ラベルまたは添付文書には、例えば、本発明の方法の実施(例えば、細胞増殖性障害の治療、抗細胞障害活性を有する薬剤の同定のためのアッセイなど)のための適切な書面での説明が含まれ得る。したがって、さらなる実施形態では、キットは、インビトロ、インビボ、またはex vivoで本発明の方法を実施するための説明書を含むラベルまたは添付文書を含む。
【0161】
したがって、説明書には、本明細書中に記載の本発明の任意の方法の実施のための説明書が含まれる。例えば、本発明の薬学的組成物を、腫瘍または癌などの細胞増殖性障害を治療するための被験体への投与についての説明書と共にコンテナ、パック、またはディスペンサー中に含めることができる。説明書には、満足な臨床終点または起こり得る任意の不都合な症状、保存情報、使用期限、または食品医薬品局などの規制機関によって命じられたヒト被験体の使用についての任意の情報の説明書がさらに含まれ得る。
【0162】
説明書は、「印刷物」(例えば、キット内の紙もしくは厚紙またはキットもしくは包装材料に固定したかキットの構成要素を含むバイアルもしくはチューブに張り付けたラベル)であり得る。説明書は、ボイステープまたはビデオテープを含むことができ、さらに、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスク)、CD−ROMまたはDVD−ROM/RAMなどの光学CD、磁気テープ、RAMおよびROMなどの電気保存媒体、および磁気/光学保存媒体などのこれらのハイブリッドなどのコンピュータ読取り可能な媒体を含み得る。
【0163】
本発明のキットは、緩衝液、防腐剤、またはタンパク質/核酸安定剤をさらに含み得る。キットは、活性のアッセイのためのコントロール構成要素(例えば、コントロールサンプルまたは標準)も含み得る。キットの各構成要素を、個別のコンテナ内または混合物中に密封することができ、種々の全コンテナを1または複数の輸送容器に含めることができる。
【0164】
本発明のタンパク質、核酸、薬剤、および他の組成物ならびに方法は、薬学的処方物をさらに使用することができる。このような薬学的処方物は、インビボまたはex vivoでの被験体への投与に有用である。
【0165】
薬学的処方物は、「薬学的に許容可能な」および「生理学的に許容可能な」キャリア、希釈剤、または賦形剤を含む。本明細書中で使用される、用語「薬学的に許容可能な」および「生理学的に許容可能な」は、薬学的投与に適合する溶媒(水性または非水性)、溶液、乳濁液、分散媒、コーティング、等張および吸収促進もしくは遅延薬を含む。このような処方物を、液体(乳濁液、懸濁液、シロップ、またはエリキシル)または固体形態(錠剤(コーティングまたは非コーティング)、カプセル(硬質または軟質)、粉末、顆粒、結晶、またはマイクロビーズ)に含めることができる。補足化合物(例えば、防腐剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、および抗真菌薬)を、組成物に組み込むことができる。
【0166】
薬学的処方物を、特定の局所、領域、または全身投与経路に適合するように作製することができる。したがって、薬学的処方物は、特定の経路での投与のためのキャリア、希釈剤、賦形剤を含む。本発明の組成物の投与経路の特定の非限定的な例は、非経口(例えば、静脈内、皮内、筋肉内、皮下)、経口、経皮(局所)、経粘膜、頭蓋内、眼内、直腸投与、および投薬プロトコールまたは治療される病態に適切な任意の他の処方である。
【0167】
非経口、皮内、または皮下投与で使用される溶液または懸濁液には、注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸などの緩衝液;または塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張化剤が含まれ得る。塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基でpHを調整することができる。
【0168】
注射用薬学的処方物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切なキャリアには、生理食塩水、制菌水、CremophorEL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって流動性を維持することができる。抗菌薬および抗真菌薬には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールが含まれる。等張剤(例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウム)を、組成物に含めることができる。吸収遅延薬(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含めることにより、注射用組成物の吸収時間を延長することができる。
【0169】
上記成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中への必要量の活性組成物の組み込みによって、滅菌注射用処方物を調製することができる。一般に、基剤となる分散媒を含む滅菌賦形剤への活性組成物の組み込みによって、分散液を調製する。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、例えば、有効成分および前に調製した溶液由来の任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥を含む。
【0170】
経粘膜または経皮投与のために、処方において浸透すべきバリアに適切な浸透剤を使用する。このような浸透剤は当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。鼻腔用スプレー、吸入デバイス(例えば、吸入器)、または座剤によって、経粘膜投与を行うことができる。経皮投与のために、活性化合物を、軟膏、サルベ(salve)、ゲル、クリーム、またはパッチに処方する。
【0171】
体外への急速な排出から保護するキャリアを使用して薬学的処方物を調製することができる(モノステアリン酸グリセリンまたはステアリン酸グリセリンなどの徐放性処方物または時間遅延材料など)。局所、局部、または全身徐放性送達または制御放出を達成するために移植片およびマイクロカプセル化送達系など製品を使用して、処方物を送達させることもできる。
【0172】
エチレン−ビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方物の調製方法は当業者に公知である。Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから材料を購入することもできる。リポソーム懸濁液(抗体またはウイルスコーティングタンパク質を使用して細胞または組織をターゲティングするリポソームが含まれる)を薬学的に許容可能なキャリアとして使用することもできる。例えば、米国特許第4,522,811号に記載の公知の方法にしたがってこれらを調製することができる。
【0173】
投与に適切なさらなる薬学的処方物は当該分野で公知である(例えば、Gennaro(ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams & Wilkins(2000);Anselet al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7 ed.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999);Kibbe(ed.),Handbook ofPharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,3 ed.(2000);およびRemington’s Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.,(1993)を参照のこと)。
【0174】
核酸、タンパク質、薬剤、治療薬、および薬学的処方物を含む本発明で使用される組成物を、投与を容易にし、且つ投薬量を均一にするために単位投薬形態に密封することができる。本明細書中で使用される、「単位投薬形態」は、単一投薬治療に適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は所望の治療効果が得られるように計算されたキャリア、賦形剤、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた一定量の組成物を含む。単位投薬形態は、種々の要因(使用される特定の組成物、達成すべき効果、ならびに治療をうける被験体の薬物動態学的性質および薬理ゲノム学的性質が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない)に依存する。
【0175】
本発明は、抗細胞増殖活性を有し、且つ細胞増殖性障害(例えば、癌および腫瘍)の治療に有用な薬剤および治療薬についての無細胞(例えば、溶液中、固相中)および細胞ベースの(例えば、インビトロまたはインビボ)同定およびスクリーニング方法を提供する。溶液中、原核細胞または真核細胞を使用したインビトロで、および例えば疾患動物モデルを使用したインビボで方法を実施することができる。グリコーゲンの代謝、異化、分解、または除去に関与するタンパク質(例えば、グリコーゲン生成酵素)の発現または活性を減少させるためまたはグリコーゲンの合成または蓄積に関与するタンパク質(例えば、グリコーゲン分解酵素またはグルコース輸送体)の発現または活性を増加または刺激するために、例えば、有毒レベルにグリコーゲンレベルを増加させることができると同定された薬剤および治療薬を、単独または遺伝子導入と組み合わせて使用することができる。
【0176】
1つの実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲンを産生する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性についてアッセイする工程を含む。グリコーゲン毒性により前記試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。別の実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲンを産生する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後に細胞生存率についてアッセイする工程を含む。生存率の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0177】
グリコーゲンを産生するかグリコーゲン毒性を示す非形質転換細胞の使用によって、本発明の細胞ベースのスクリーニングアッセイを実施することができる。このような細胞は、典型的には、1つまたは複数のグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現し、その発現または活性を抗細胞増殖活性を有する薬剤を同定するためにアッセイすることができる。
【0178】
したがって、さらに別の実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後に前記グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性または発現を測定する工程を含む。グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の発現または活性の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。種々の態様では、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット(例えば、G(PPP1R3B、PPP1R4)、PTG(PPP1R3C、PPP1R5)、PPP1R3D(PPP1R6)、またはG/RG1(PPP1R3A、PPP1R3))、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼなどの1つまたは複数のグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼなどの1つまたは複数のグリコーゲン分解酵素を測定する。
【0179】
あるいは、スクリーニング方法において、(例えば、核酸配列での)形質転換細胞を使用することができる。例えば、細胞を、その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子で安定にまたは一過性に形質転換し、遺伝子発現の変化によって薬物が抗細胞増殖活性を有するかどうかを示すことができる。特定の例は、レポーター遺伝子(ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質などの検出することができるタンパク質をコードする遺伝子をいう)で形質転換された細胞である。例えば、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1ファミリーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼファミリーメンバー、グルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼによって発現を調整することができる。
【0180】
したがって、さらに別の実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後に遺伝子発現を測定する工程と、遺伝子発現の増減により前記試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なすこととを含む。
【0181】
スクリーニング方法の実施に有用な細胞型の特定の非限定的な例には、細胞増殖性障害に感受性を示す任意の組織または器官由来の細胞が含まれる。例えば、細胞には、不死化細胞、腫瘍細胞、および癌細胞株、ならびに脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系由来の初代単離物が含まれる。
【0182】
さらなる実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる試験薬剤を得る工程と、グリコーゲン生成酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程を含む。グリコーゲン毒性により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0183】
さらなる実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素に結合する試験薬剤を得る工程と、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程を含む。グリコーゲン毒性により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0184】
補助的実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる試験薬剤を得る工程と、グリコーゲン分解酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または前記試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程とを含む。グリコーゲン毒性により前記試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。
【0185】
なおさらなる別の実施形態では、抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法は、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を試験薬剤に接触させる工程と、試験薬剤の存在下または試験薬剤との接触後にグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性を測定する工程とを含む。グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性の増減により試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤と見なす。種々の態様では、接触は、無細胞系(例えば、溶液中または固相中)または細胞ベースの系(例えば、インビトロまたはインビボ)である。
【0186】
用語「接触」は、薬剤または治療薬に関して使用する場合、薬剤と他の基準物質との間の直接または間接的相互作用を意味する。直接的相互作用の特定の例は、結合である。間接的相互作用の特定の例は、薬剤が中間体分子に対して作用し、その後基準物質に作用する場合である。したがって、例えば、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素と試験薬剤との接触は、酵素が薬剤と結合するか、薬剤が中間体に作用した後に酵素に作用することを含む。
【0187】
用語「測定」および「アッセイ」ならびにその文法上の変形物は、本明細書中で交換可能に使用され、定性的もしくは定量的測定のいずれかまたは定性的および定量的測定の両方をいう。この用語をグリコーゲンレベルに関して使用する場合、グリコーゲン、細胞毒性、または酵素(例えば、グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素)の発現もしくは活性など、グリコーゲンレベル、毒性、または酵素の発現もしくは活性などの任意のアッセイ手段を意図する(本明細書中に記載の種々の方法および当該分野で公知の方法が含まれる)。例えば、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化のスクリーニング;細胞生存のスクリーニング;細胞の増殖、成長、または生存の阻害または減少のスクリーニングによって、グリコーゲン毒性をアッセイすることができる。
【0188】
試験薬剤および治療薬を、グリコーゲンを測定することができるか、その成長、増殖、または生存率を測定することができる任意の原核細胞または真核細胞に適用することができる。例えば、不死化細胞、過剰増殖細胞、または腫瘍細胞もしくは癌細胞を、接触してグリコーゲン蓄積、グリコーゲン毒性、または細胞の成長、増殖、生存、もしくは生存率の減少を測定または検出することが可能な条件下で十分な時間培養で成長させることができる。
【0189】
当該分野で公知の種々の方法によって、グリコーゲン蓄積を検出することができる。方法の例を、実施例1に示し、これは、グリコーゲンのグルコースへのグルコアミラーゼ媒介加水分解およびその後の比色定量を含む。値は、100万個の細胞あたりのグルコースの還元(μg)で示す。グリコーゲンへのグルコース組み込みを測定する高処理スクリーニングアッセイが開発されており(Berger J,Hayes NS.Anal Biochem.1998 Aug 1;261(2):159)、細胞内グリコーゲン蓄積を増加または刺激する薬剤および治療薬の同定の目的でグリコーゲン蓄積を測定するために使用することができる。http://neo.pharm.hiroshima−u.ac.jp/ccab/2nd/mini−review/mr132/yano.html
組織学的分析を使用して、グリコーゲンを検出することができる。例えば、マクマナス過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色を使用した組織学的切片においてグリコーゲンが認められる。過ヨウ素酸が炭素を炭素結合形成アルデヒドに酸化し、フクシン−亜硫酸と反応して赤紫色を呈するという点で、染色は組織化学的反応である。あるいは、免疫金粒子と組み合わせたグリコーゲンと結合するモノクローナル抗体は、例えば、電子顕微鏡を使用してグリコーゲンを検出することができる(Baba,O.Kokubyo Gakkai Zasshi.60:264(1993))。
【0190】
グリコーゲン含有率を直接または間接的に決定することができる。例えば、[13Cまたは14C]−グルコースなどの放射性標識グルコースをグリコーゲンに組み込み、その後X線写真で定量した。グリコーゲン測定の別のアプローチは、グルコアミラーゼを使用したグルコース単量体への加水分解および例えばグルコーストリンダー比色試薬(Sigma,St.Louis,MO)を使用した還元グルコースの比色測定による(Kepler and Decker.In:Methods ofEnzymatic Analysis,Eds.H.U.Bergenmeyer and K.Gawehn,Academic Press,New York,4:1127−1131(1974)。グリコーゲンの別のアッセイは、アントロン試薬(Lab Express,Inc.Fairfield,New Jersey)を使用した酸還元グルコースの比色検出である(Seifter et al.,Arch.Biochem.25:191(1950)。これらのアッセイを、細胞内グリコーゲン蓄積を増加または刺激する薬剤および治療薬の高所りすクリーニングのために設定することもできる。
【0191】
グリコーゲンレベルをインビボで決定することもできる。例えば、フーリエ変換赤外分光を使用して、ヒト組織中のグリコーゲンレベルが決定されている(Yano K.,Evaluation Of Glycogen Levels In Human Carcinoma Tissues By Fourier Transform InfraredSpectroscopy.“Trends in Analytical Life Sciences”Vol.1(CCAB97) Cyber Congress on Analytical BioSciences held on Internet Aug.21,1997)。NMR分光は、非浸襲性のインビボでの連続的な筋肉グリコーゲン代謝研究手段である(Roden and Shulman,Annu Rev Med.50:277(1999))。
【0192】
当該分野で公知の比色アッセイ、発光アッセイ、放射分析アッセイ、または蛍光分析アッセイに基づく種々の方法で細胞傷害性を測定することができる。細胞生存率決定のための比色分析技術には、例えば、トリパンブルー排除が含まれる(例えば、実施例1および2を参照のこと)。簡単にのべれば、トリパンブルーで細胞を染色し、血球計を使用して細胞を計数する。生細胞は色素を排除するのに対して、死滅した細胞および死滅しつつある細胞は青色色素を取り込み、光学顕微鏡下で容易に区別される。中性赤は生細胞によって吸着され、細胞のリソソーム中に濃縮され、生細胞を、光学顕微鏡を使用した中性赤染色細胞数の定量によって決定することができる。テトラゾリウム塩(例えば、MTT、XTT、WST−1)は、比色アッセイ形式における細胞生存率の定量に有用である(Roche Diagnostics Corp.Indianapolis,IN)。代謝的にインタクトな細胞でのみ活性なミトコンドリアの呼吸鎖中の「コハク酸−テトラゾリウムレダクターゼ」系によってテトラゾリウム塩をホルマザンに切断する。
【0193】
細胞生存率の決定のための蛍光分析技術には、例えば、ヨウ化プロピジウム、蛍光DNA介在薬が含まれる。ヨウ化プロピジウムは、生細胞から排除されるが、死細胞の核を染色する。次いで、ヨウ化プロピジウム標識細胞のフローサイトメトリーを使用して、生細胞および死細胞を定量することができる。Alamar Blueアッセイ(Alamar Biosciences Inc Sacramento CA)は、代謝活性に応答して色または蛍光が変化するレドックス指示薬を組み込み、哺乳動物細胞の生存率または増殖の定量に使用する。Alamar Blueを分光計(蛍光)で測定することができる。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出は、構造の損傷および細胞死を示し、分光学的酵素アッセイによって測定することができる。ブロモデオキシウリジン(BrdU)を新規に合成したDNAに組み込み、蛍光色素標識抗体で検出することができる。蛍光色素Hoechst33258でDNAを標識し、細胞増殖の定量に使用することができる(例えば、フローサイトメトリー)。蛍光色素であるカルボキシフルオロセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSEまたはCFDA−SE)の定量的組み込みより、細胞分裂が分析される(例えば、フローサイトメトリー)。この技術をインビトロまたはインビボのいずれかで使用することができる。7−アイノアクチノマイシンD(7−AAD)は、DNAとの会合時にスペクトルシフトが起こる蛍光介在物(intercalator)であり、細胞分裂を分析することができる(例えば、フローサイトメトリー)。
【0194】
細胞増殖決定のための放射分析技術には、例えば、新規に合成された生細胞のDNAに組み込まれ、細胞の増殖の決定に頻繁に使用される[H]−チミジンが含まれる。細胞生存率を定量するために、シンチレーションカウンティングによって死細胞由来のクロム(51Cr)放出を定量することができる。
【0195】
細胞生存率の決定のための発光技術には、例えば、CellTiter−Glo蛍光細胞生存率アッセイ(Promega Madison WI)が含まれる。この技術は、生細胞数を決定するためにATPの存在を定量する。
【0196】
細胞生存率および細胞増殖の決定のための市販のキットには、例えば、Cell Proliferation Biotrak ELISA(Amersham Biosciences Piscataway,NJ);蛍光試薬の差分取り込みに基づいて迅速に細胞数および生存率が得られるGuavaViaCountTm Assay(Guava Technologies,Hayward,CA);CyQUANT(登録商標)細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR);およびCytoLuxアッセイキット(PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston,MA)が含まれる。DELFIA(登録商標)アッセイキット(PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston,MA)は、時間分解蛍光法を使用して細胞の増殖および毒性を決定することができる。BRET2(生物発光共鳴エネルギー移動)は、生細胞中のタンパク質−タンパク質相互作用および細胞内シグナル伝達事象をモニタリングするためにデザインされた進歩した非破壊性アッセイテクノロジーである(PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston,MA)。BRET2は、供与体としてレニラルシフェラーゼ(Rluc)を使用し、受容体分子として緑色蛍光タンパク質(GFP2)の変異体を使用した生物発光供与体タンパク質から蛍光受容体タンパク質への共鳴エネルギーの移動に基づく。BRET2は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に類似しているが、励起光源を必要とせず、それに関連する問題(例えば、自己蛍光による高バックグラウンド)が排除される。細胞死検出ELISAは、細胞死後の細胞質ヒストン関連DNAフラグメント(モノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソーム)の定量的インビトロ決定のための光度測定酵素免疫アッセイである(Roche Diagnostics Corp.,Indianapolis,IN)。LDH細胞傷害性検出キットは、損傷細胞から放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定する(Takara.Mirus.Bio,Madison,WI)。Quantos(商標)細胞増殖アッセイは、溶解細胞由来のDNA−色素複合体の蛍光を測定する蛍光ベースのアッセイである(Stratagene,La Jolla,CA)。CellTiter−Glo細胞生存率アッセイは、細胞生存率の測定のための発光アッセイである(Promega,Madison WI)。
【0197】
試験薬剤および治療薬を利用可能であるか、当該分野で公知の組み合わせライブラリー法における任意の多数のアプローチ(生物学的ライブラリー;空間的にアドレス化可能な(addressable)平行固相または液相ライブラリー;解析を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィ選択を使用した合成ライブラリー法が含まれる)を使用して産生することができる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに制限されるが、他のアプローチをペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーに適用可能である。
【0198】
分子ライブラリーの合成方法は当該分野で公知である(例えば、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad,Sci.U.S.A.90:6909(1993);Erb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:11422(1994);Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678(1994);Cho et al.,Science 261:1303(1993);Carrell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059(1994);Carell et al.,Angew.Chem.Int Ed.Engl.33:2061(1994);and Gallop et al.,J Med.Chem.37:1233(1994)を参照のこと)。化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten,Biotechniques 13:412(1992))、ビーズ中(Lam,Nature354:82(1991))、チップ上(Fodor Nature 364:555(1993))、細菌中(米国特許第5,223,409号)、胞子中(米国特許第5,233,409号)、プラスミド中(Cull et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865(1992))、またはファージ上(Scott and Smith,Science 249:386(1990);Devli Science 249:404(1990);Cwirla et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378(1990);Felici,J.Mol.Biol.222:301(1991);および米国特許第5,233,409号)に存在する。
【0199】
細胞中のグリコーゲンを増加させる薬剤または治療薬の同定のためのインビトロアッセイの例として、細胞を組織マイクロタイタープレート中で成長させることができる。これらのマイクロタイタープレートは、グリコーゲン蓄積または細胞毒性の測定に適切な任意の形態であり得る。アッセイを実施するために、細胞株(例えば、癌細胞株)を、細胞株の成長に適切な条件下および適切な細胞密度でプレートに播種することができる。試験薬剤を、手動または自動様式で(例えば、ロボットの使用)、種々の濃度および種々の処方で細胞に適用することができる。あるいは、細胞を、試験による処置(例えば、温度、pH、酸化(低酸素)、塩、またはイオン濃度の変更など)に供することができる。細胞グリコーゲン蓄積または細胞毒性を、本明細書中に記載されているか当該分野で公知の特定の使用アッセイによって決定する。例えば、照度計を使用して、蛍光ベースのアッセイ由来の結果を測定し、蛍光光度計またはフローサイトメーターを使用して蛍光ベースのアッセイを定量し、シンチレーションカウンターを使用して放射分析ベースのアッセイなど由来の結果を測定する。
【0200】
他で定義しない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明に関連する当業者によって一般的に理解されている意味と同一である。本明細書中に記載のものと類似または等価な方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を本明細書中に記載する。
【0201】
全ての刊行物、特許、Genbankアクセッション番号、および本明細書中に引用された他の文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書を調整する。
【0202】
本明細書中で使用される、単数形「a」、「and」、および「the」には、文脈中え明記しない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば、用語「a gene or nucleicacid」には、複数の遺伝子または核酸が含まれ、用語「a cell」には、細胞の全部もしくは一部または複数の細胞などが含まれ得る。
【0203】
本発明の多数の実施形態を記載している。それにも関わらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修正形態を得ることができると理解される。したがって、以下の実施例は例示を意図し、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0204】
(実施例1)
本実施例は、材料と方法の種々の例を記載する。
【0205】
組換えアデノウイルスベクター:ヒトGcDNAの読取り枠(配列番号3−GenBankアクセッション番号XM_015545、位置は10bp〜1183bp)を増幅するために合成オリゴヌクレオチドをデザインした(配列番号1−センスプライマー・・・・・;配列番号2−アンチセンスプライマー・・・・)。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、ヒト胎児肝臓MarathoncDNAライブラリー(Clontech,Inc.)から1192bpのフラグメントを増幅した。このフラグメントを、pBluescript(Stratagene,Inc.)のEcoRV部位にサブクローン化し、pSSBS−Gを作製した。このプラスミドを3倍の範囲(coverage)で配列決定した。ヒトGcDNAを含むpSSBS−GのHincIIフラグメントを、Adeno−X発現系(Clontech,Inc.)由来のpShuttleのPmeI部位にサブクローン化してpShuttle−hsGを作製した。
【0206】
熱ショックタンパク質70の5’非翻訳領域中の翻訳エンハンサーエレメント(配列番号6−M11717に対応するGenBankアクセッション番号AC020768、位置は276bp〜488bp)を、PCR(配列番号4−センスプライマー・・・・;配列番号5−アンチセンスプライマー・・・・)によって増幅し、213bpフラグメントを、pNEB193ベクター(New England Biolabs,Inc.)のSmaI部位にサブクローン化した。得られたクローンを、3倍の範囲で配列決定した。257bp XbaI/SpeIフラグメントを、pShuttle−G中のGcDNAの5’側の固有のNheI部位に平滑末端クローニングしてpShuttle−hspGを作製した。
【0207】
ウッドチャックB型肝炎ウイルス中の転写エンハンサーエレメント(WPRE)(配列番号9−Genbankアクセッション番号J02442、位置は1093bp〜1714bp)を、PCR(配列番号7−センスプライマー・・・・;配列番号8−アンチセンスプライマー・・・・)によって増幅し、641bpフラグメントを、pGEM−Tベクター系(Promega,Inc.)を使用してサブクローン化した。得られたクローンを、3倍の範囲で配列決定した。WPREエレメントを含むNptI/XbaI制限フラグメントをGcDNAの3’にクローン化してpShuttle−GWPREを作製した。
【0208】
ClontechのAdeno−X発現系を使用して、本研究で使用するアデノウイルスベクターを作製した。製造者の説明書にしたがったAdeno−Xアデノウイルスゲノムへの空のpShuttleベクター、pShuttle−G、pShuttle−hspG、およびpShuttle−GWPREの導入によって、組換えアデノウイルスベクター(それぞれ、AdpSh、AdG、AdhspG、およびAdGWPRE)を作製した。ClontechのAdeno−X発現系の説明書にしたがったHEK293細胞へのアデノウイルスベクターDNAのトランスフェクションによって、粗アデノウイルスストックを産生した。アデノウイルス粒子を、製造者の説明書にしたがってAdenopureアデノウイルス精製キット(Puresyn,Inc.)を使用して精製した。
【0209】
細胞培養:HeLa(ヒト子宮頸部癌)、MCF7(ヒト乳房上皮癌)、およびLoVo(ヒト結腸直腸上皮癌)細胞株を、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD)から得た。HeLaおよびMCF7細胞を、5%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、ペニシリン(100 U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/mg)、および2.2g/l NaHCOを補足した高グルコースダルベッコ最少基本培地(DMEM,Gibco番号12800−017)中で培養した。LoVo細胞を、5%熱不活化FBS、2mMグルタミン、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100ug/mg)、および2.2g/lNaHCOを補足したハムのF−12培地(F−12K,ATCC)のKaighn改変培地中で培養した。
【0210】
培養細胞株を、6ウェルまたは12ウェルの組織培養プレートに播種した。これらが70〜85%コンフルエントに達した場合、細胞に種々の量の組換えGアデノウイルスまたはコントロールアデノウイルスを感染させた。300μlの培地を含む各ウェルにアデノウイルスを添加し、37℃、5%COで2時間インキュベートした。インキュベーション後、1.5mlの培地を加え、37℃、5%COでインキュベートした。培地を毎日交換した。感染からの種々の測定点で、トリパンブルーを使用して生細胞を計数し、残りの細胞を回収し、次のグリコーゲン測定のために凍結した。
【0211】
トリパンブルー生存率細胞数:トリパンブルー(0.4%、Gibco)を使用して、死細胞および死滅しつつある細胞を染色した。0.25%トリプシン−EDTAを含む組織培養プレート(Gibco番号25200−056)から細胞を取出し、1mlリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。Neubauer血球計を使用して、手作業で細胞を計数した。
【0212】
グリコーゲンアッセイ:いくらか修正したKeppler and Deckerにしたがってグルコースへの酵素的グリコーゲン加水分解を行った(Keppler and Decker,1984 in:Methods of Enzymatic Analysis,3rded.(Bergmeyer,H.U.Bergmeyer,J.,and Grab,M.Eds.),Vol.6,pp.11−18,VCH,New York.)。簡単に述べれば、凍結細胞ペレットを、3ラウンドの凍結融解に供して細胞膜を破壊した。細胞ペレットを、200μlの250mUグルコアミラーゼを含む0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.8)に再懸濁した。溶解物を、震盪しながら45℃で2時間インキュベートした。溶解物を、2500rpmで10分間の遠心分離によって清澄化した。上清(5μl)およびグルコース標準を、96ウェルプレートに移し、10μlの0.25N水酸化ナトリウムで中和した。次いで、グルコースTrinder比色試薬(Sigma,315−500)を使用して、グルコースを測定した。Molecular Devices VERSAmaxマイクロプレートリーダーを使用して、505nmで呈色反応の強度を測定した。
【0213】
ロスコビチン研究:ロスコビチン(Calbiochem番号557362)(2−(R)−(1−エチル−2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン)は、サイクリン依存性キナーゼCdk2およびCdc2の強力且つ選択的なインヒビターである。ジメチルスルホキシド(DMSO)中にロスコビチンストック溶液を調製し、使用するまで−20℃で保存した。薬物を培地で希釈し、35μMの最終濃度で使用した。全ての場合、非処置細胞は、DMSOのみで処置した細胞と同様に挙動した。アデノウイルスでの形質導入から24時間後にロスコビチンを細胞培養物に添加し、48〜72時間インキュベートした。次いで、トリパンブルー生存数およびグリコーゲン測定のために細胞を回収した。
【0214】
(実施例2)
本実施例は、細胞内グリコーゲンを増加させるタンパク質をコードする遺伝子の細胞への導入によってグリコーゲンを細胞に有毒なレベルに増加させることができることを示すデータを記載する。
【0215】
グリコーゲン粒子にPP−1をターゲティングするグリコーゲンターゲティングサブユニットファミリーのメンバーをコードする核酸を、標的ヒト癌細胞株中の発現のために組換えアデノウイルスベクターにクローン化した。実施例1に記載のように、野生型ヒトGタンパク質をコードするcDNAを、アデノウイルスベクターにクローン化した。GcDNAを発現する組換えアデノウイルスベクターを、AdGと命名した。アデノウイルス自体が高用量で細胞に有害であり得るので、AdGと同一であるがGcDNAを欠くコントロールベクターを作製し、AdpShと命名した。
【0216】
実施例1に記載のように、組換えウイルスベクターから産生された高力価のアデノウイルス粒子を使用して、種々のヒト癌細胞に感染させた。簡単に述べれば、ヒト子宮頸部癌細胞株(HeLa)を、約70%のコンフルエントまで培養し、AdGまたはコントロールAdpShを感染させた。24時間後、AdpSh処置細胞と比較してAdG感染細胞で形態学的変化が認められた。さらに、AdG感染細胞はサイズがより大きく、細胞ラウンディング(rounding)の増大が認められた。
【0217】
トリパンブルー排除アッセイを使用して、ウイルス感染後の細胞生存率をアッセイした。トリパンブルーで染色された細胞および生細胞を、Neubauer血球計を使用して計数する。生細胞は色素を排除するのに対して、死滅した細胞および死滅しつつある細胞は青色色素を取り込み、光学顕微鏡下で容易に区別することができる。
【0218】
感染72時間後、コントロールAdpSh処置細胞と比較してAdG処置細胞で有意なトリパンブルー取り込みが認められた。したがって、Gの過剰発現によってHeLa細胞株の死滅が誘導された。
【0219】
AdGでのHeLa細胞の感染後に認められた細胞生存率の減少およびグリコーゲンの増加は、時間およびウイルス用量に依存する。HeLa細胞に、200感染多重度(MOI)または1000MOIのAdGまたはAdpShアデノウイルスのいずれかを感染させた(図1)。AdG感染細胞からトリパンブルーを排除する生細胞数とコントロールAdpSh感染細胞のそれとの比を百分率として示す(図1、パネルA)。結果は、AdG感染細胞の生存率が長期間減少することを示す。
【0220】
ウイルス用量の増加によってもAdG感染細胞の生存率が減少する。AdG感染細胞において200から1000までの漸増する感染多重度(MOI)を用いたグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコースの用量依存性増加が認められた(図1、パネルB)。対照的に、コントロールAdpShでの細胞の感染により、いずれかの感染多重度でのグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコースの非特異的蓄積は最小であった。
【0221】
結果は、グリコーゲン蓄積の増加は細胞生存率の減少と相関することを示す。これらの所見は、Gの過剰発現によって誘導されたグリコーゲンの蓄積によって細胞が死滅することを裏付ける。
【0222】
過剰増殖癌細胞に対するこのストラテジーの利用可能性を確認するために、実施例1に記載のように、一般に、AdGアデノウイルスを使用して、2つのさらなる細胞株を感染させた。HeLa細胞株と比較して、ヒト乳房上皮癌(MCF7)およびヒト結腸直腸上皮癌(LoVo)におけるGの過剰発現により、同様に細胞生存率が減少し、且つグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコースが増加する(図2)。これらのデータにより、アデノウイルス発現Gによって誘導されたグリコーゲンの蓄積は一般に癌細胞を死滅させることができることが確認された。
【0223】
(実施例3)
本実施例は、細胞成長を阻害する薬物と組み合わせて、細胞中で細胞内グリコーゲンを増加させるタンパク質をコードする遺伝子の導入によってグリコーゲン蓄積および細胞死が強化されることを示すデータを記載する。
【0224】
ロスコビチンは、サイクリン依存性キナーゼCdk2およびCdc2の強力且つ選択的なインヒビターであり、細胞増殖抑制性を示す。AdGと組み合わせて使用した場合にこの薬物がグリコーゲン蓄積を増加し、それに対応して細胞生存率を減少させるかどうかを研究するために、HeLa細胞にAdGまたはAdpShアデノウイルス(500MOI)を感染させ、その後35μMロスコビチンを添加した(図3)。
【0225】
AdGとロスコビチンとの組み合わせにより、感染HeLa細胞のグリコーゲン量が有意に増加した。対照的に、非感染コントロール細胞は、ロスコビチンの有無にかかわらずグリコーゲン蓄積は有意に増加しなかった(図3、パネルA)。ロスコビチン処置細胞および未処置細胞について、AdGL感染細胞からトリパンブルーを排除する生細胞数とコントロールAdpSh感染細胞のそれとの比を百分率で示す(図3、パネルB)。
【0226】
したがって、データは、癌細胞に有毒なレベルにグリコーゲンを増加させるために、癌細胞の成長を阻害、減少、または防止する化合物を、グリコーゲン生成酵素を発現するベクター(例えば、アデノウイルスG)と組み合わせて使用することができることを証明する。さらに、標的細胞中でグリコーゲン生成酵素のみの発現と比較して達成されたグリコーゲン量は増加する。
【0227】
(実施例4)
本実施例は、遺伝子発現レベルを増加させるために遺伝子導入ベクターを修飾することができることを示すデータを記載する。
【0228】
cDNAの発現レベルを増加させるために、2つの核酸増強エレメントをAdGベクターとその細胞生存率減少能力について比較した(図4)。第1のエレメントはmRNAの翻訳効率を増加させ、これはヒト熱ショックタンパク質−70(hsp70)遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)中で最初に同定された(Vivinus et al.,Eur J Biochem.268:1908(2001))。実施例1に記載のように、このエレメントをAdGベクターに組み込むことにより、AdhspGを作製した。WPREと呼ばれる第2のエレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルスで同定され、シス活性化RNA転写後調節エレメントである(Donello et al.,J Virol.72:5085(1998))。実施例1に記載のように、WPREをAdGLベクターに組み込むことにより、AdGWPREを作製した。
【0229】
HeLa細胞に各ウイルスベクター(500MOI)に個別に感染させた。ウイルス感染細胞からトリパンブルーを排除する生細胞数とコントロールAdpSh感染細胞のそれとの比を百分率で示す。hsp705’UTRエレメントは、感染HeLa細胞の生存率を有意に減少させなかった。WPREエレメントの組み込みにより、AdGLのみと比較して細胞生存率が約1.5倍減少した。したがって、遺伝子導入ベクターの遺伝子修飾は目的遺伝子(例えば、G)の発現を増加し、それによりグリコーゲン蓄積を増強し、細胞生存率を減少させることができる。
【0230】
(実施例5)
本実施例は、阻害剤を同定するためのα−グルコシダーゼ活性アッセイのいくつかの例を記載する。
【0231】
簡単に述べれば、10μlの試験薬剤溶液おおび990μlの基質溶液(10mMマルトース)を、α−グルコシダーゼ固定化Sepharose(10mgの湿潤ゲル)を含む先端に蓋をしたミニカラムに添加する。10mMマルトースを含む1.0mlのモデル腸液の添加によってアッセイを開始する。37℃で30分間のインキュベーション後、グルコースCII試験(Wako Pure Chemical Co.,Japan)によって遊離グルコースを定量する。試験薬剤を含むか含まない濾過物通のグルコース量の相違に基づいて阻害活性を計算する。このアッセイ条件下でα−グルコシダーゼ活性を50%阻害する試験薬剤の量を、IC50と定義する(Matsumoto et al.,Analytical Sciences,18:1315(2002))。
【0232】
α−グルコシダーゼを阻害する薬剤の同定アッセイのさらなる例は、α−グルコシダーゼ(Sigma Chemical Co.によって産生された酵母I型)ならびにブタ腸粘膜から調製されたマルターゼおよびサッカラーゼ(Borgstrom and Dahlgvist in Acta Chem.Scand.,12:1997(1958)に記載のように調製)に対する薬剤を試験することである。マルトースおよびスクロースを基質として使用する場合、0.02Mリン酸緩衝液(pH6.8)での希釈によって調製した0.25mlのα−グルコシダーゼ溶液を、0.5mlの試験薬剤溶液を含む同一の緩衝液および基質として0.25mlの0.05Mマルトースまたは0.05Mスクロースを含む同一の緩衝液と混合する。混合物を37℃で10分間反応させる。次いで、グルコースB試験試薬(3ml;グルコース測定のためのグルコースオキシダーゼ試薬、Wako Pure Chemical Co.,Japan)を添加し、混合物を37℃で20分間加温する。その後、反応溶液の吸光度を505nmで測定する。
【0233】
p−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシダーゼを基質として使用する場合、α−グルコシダーゼ(酵母I型、Sigma Chemical Co.)およびグルコアミラーゼ(クモノスカビ、Sigma Chemical Co.)に対する試験薬剤の阻害活性を、0.005mg/mlのα−グルコシダーゼを含む0.25mlの0.02Mリン酸緩衝液(pH6.8)、0.5mlの試験薬剤溶液を含む同一の緩衝液、および0.25mlの0.01Mp−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシダーゼ溶液を含む同一の緩衝液辺の添加によって決定し、混合物を37℃で15分間反応させる。炭酸ナトリウム溶液(3ml)、反応を停止させるために0.1Mを添加し、400nmの吸光度を測定する。3〜5つの異なる濃度の試験薬剤によって決定される阻害率(%)から50%阻害濃度を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】図1Aおよび1Bは、時間およびウイルスベクター用量に依存性を示すAdGの感染後のHeLa細胞の生存率の減少およびグリコーゲン沈着の増加を示す図である。(A)200MOI(ライトグレーのバー)または1000MOI(ダークグレーのバー)のアデノウイルスを表示の時間HeLa細胞に感染させた。各バーは、百分率として示したコントロールAdpSh感染細胞と比較したAdG感染細胞由来の生細胞の百分率を示す。(B)表示のように、HeLa細胞に200MOIまたは1000MOIのアデノウイルスを感染させた。ベクター形質導入後の細胞内グリコーゲンレベルを表示の時間にアッセイした。バーは、AdG感染細胞およびAdpSh(pSh)感染細胞中のグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコースを示す。ウイルスベクターが多いほどグリコーゲンレベルは高くなる。
【図2】図2A〜2Dは、AdGでのヒト結腸直腸癌細胞株(LoVo)およびヒト乳ガン細胞株(MCF7)の感染後の細胞生存率の減少およびグリコーゲン蓄積の増加を示す図である。(A)AdpShと比較した100MOIでのAdG感染後のLoVo細胞の生存度。(B)コントロールAdpShと比較したAdGの増加したMOIに起因するLoVo細胞のグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコース蓄積の増加。MCF7細胞は、45MOIAdGを感染させた場合に45MOIコントロールAdpShと比較したグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来の(C)生存率の減少および(D)グルコース蓄積の増加を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、AdGのみと比較して細胞周期インヒビターであるロスコビチンと組み合わせたAdGによりグリコーゲンレベルが増加し、細胞生存度がさらに減少することを示す図である。(A)AdGおよびロスコビチン(黒のバー)により、AdGのみ(ダークグレーのバー)またはコントロールAdpShと組み合わせたロスコビチン(中央のグレーのバー)のいずれかと比較して感染HeLa細胞中のグルコアミラーゼ減少グリコーゲン由来のグルコースが長時間有意に増加した。(B)ロスコビチンによって、AdG感染細胞の細胞生存率が有意に減少した。コントロールAdpSh感染細胞と比較したAdG感染細胞由来の生存細胞の比を、ロスコビチン処理(グレーのバー)および未処理細胞(白のバー)の両方についての百分率として示す。全てを100MOIのウイルスで処置した。
【図4】図4は、癌細胞生存率をさらに減少させるために遺伝因子によりGの発現を増加させることができることを示す図である。使用した4つのウイルスは、Gを含まないAdpSh、Gを含むが増強エレメントを含まないAdG、Gおよびhsp705’UTRエレメントを含むAdhspG、ならびにGおよびWPREエレメントを含むAdGWPREであった。全てのウイルスを、100MOIで使用した。ウイルス感染細胞由来の生存細胞とコントロールAdpSh感染細胞との比を百分率として示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中のグリコーゲンを有毒レベルまで増加させる方法であって、該細胞中のグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる遺伝子産物を細胞中で発現させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記遺伝子産物が、グリコーゲンの合成または細胞内蓄積を増加させるタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子産物が、グリコーゲンの代謝、異化、利用、分解、または除去を減少させるタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グリコーゲンが、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化を引き起こす量である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化が、細胞膨張、リソソーム数の増加、リソソームサイズの増加、またはリソソーム構造の変化を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリコーゲンが、細胞の溶解またはアポトーシスを引き起こす量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記グリコーゲンが、細胞の増殖、成長、または生存を阻害または減少させる量である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子産物が、グリコーゲン生成酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコーゲン生成酵素が、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PP−1ファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニットが、G(PPP1R3B、PPP1R4)、PTG(PPP1R3C、PPP1R5)、PPP1R3D(PPP1R6)、またはG/RG1(PPP1R3A、PPP1R3)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子産物が、グリコーゲン分解酵素の発現を減少させるアンチセンスポリヌクレオチド、siRNA分子、またはリボザイムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記グリコーゲン分解酵素が、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が過剰増殖細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記過剰増殖細胞が、転移性癌細胞または非転移性癌細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞が、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記過剰増殖細胞が被験体中に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が哺乳動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体がヒトである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子産物が、タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、siRNA分子、またはリボザイムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子産物がポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドがベクターを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクターがウイルスまたは哺乳動物の発現ベクターを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドが小胞をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子産物の発現が、過剰増殖細胞中で活性なプロモーターによって付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記プロモーターが、ヘキソキナーゼII、COX−2、α−フェトプロテイン、癌胎児抗原、DE3/MUC1、前立腺特異的抗原、C−erB2/neu、テロメラーゼ逆転写酵素、または低酸素症応答性プロモーターを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞増殖を阻害する第2のタンパク質を細胞中で発現させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のタンパク質が細胞周期インヒビターを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2のタンパク質がサイクリンインヒビターを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
過剰増殖細胞中のグリコーゲンを有毒レベルに増加させる方法であって、
該過剰増殖細胞中のグリコーゲン量を有毒レベルに増加させる薬剤に前記細胞を接触させる工程を
包含し、ここで、該過剰増殖細胞が、肝細胞、筋細胞、または脳細胞でない、方法。
【請求項30】
前記グリコーゲンが、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化を引き起こす量である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記グリコーゲンが、細胞の溶解またはアポトーシスを引き起こす量である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記グリコーゲンが、細胞の増殖、成長、または生存を阻害または軽減する量である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤がグリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記グリコーゲン生成酵素が、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼから選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記薬剤がグリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記薬剤が、グリコーゲン分解酵素と特異的に結合するアンチセンス、リボザイム、siRNA、または三重鎖形成核酸を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記グリコーゲン分解酵素が、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
過剰増殖細胞中のグリコーゲンを有毒レベルに増加させる方法であって、該方法は、
該細胞と、該過剰増殖細胞中でグリコーゲンを有毒レベルに増加させる薬剤とを接触させる工程を包含し、但し、該薬剤は、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない、方法。
【請求項39】
前記グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプが、肝臓、筋肉、または脳のグリコーゲンホスホリラーゼを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記グリコーゲンが、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化を引き起こす量である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記グリコーゲンが、細胞の溶解またはアポトーシスを引き起こす量である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記グリコーゲンが、細胞の増殖、成長、または生存を阻害または減少させる量である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記薬剤がグリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記グリコーゲン生成酵素が、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼから選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記薬剤がグリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記薬剤が、グリコーゲン生成酵素と特異的に結合するアンチセンス、リボザイム、siRNA、または三重鎖形成核酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記グリコーゲン分解酵素が、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記薬剤が基質アナログを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記過剰増殖細胞が転移性または非転移性癌細胞を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記癌細胞が、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系に存在する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記過剰増殖細胞が被験体中に存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記被験体が哺乳動物である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記被験体がヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
被験体の細胞増殖障害の治療方法であって、
該細胞増殖障害が、肝細胞、筋細胞、または脳細胞の障害ではなく、該方法が、
障害を含む1つまたは複数の細胞中で該細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程または
該細胞増殖障害を治療するのに十分な量で細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤と、障害を含む1つまたは複数の細胞とを接触させる工程
を包含する、方法。
【請求項55】
前記過剰増殖性障害が転移性または非転移性癌を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記癌細胞が、頭頸部、脳、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、または造血系に存在する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
被験体の細胞増殖障害の治療方法であって、
障害を含む1つまたは複数の細胞中で該細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程または
薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に該細胞増殖障害を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤に障害を含む1つまたは複数の細胞を接触させる工程を含む、方法。
【請求項58】
前記過剰増殖性障害が転移性または非転移性癌を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記癌細胞が、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、筋肉、または造血系に存在する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体が哺乳動物である、請求項54および請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記被験体がヒトである、請求項54および請求項57に記載の方法。
【請求項62】
腫瘍を有する被験体の治療方法であって、
該腫瘍が、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍ではなく、該方法が、
1つまたは複数の腫瘍細胞中で被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物発現させる工程または
該被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤と、1つまたは複数の腫瘍細胞とを接触させる工程
を包含する、方法。
【請求項63】
腫瘍を有する被験体を治療する方法であって、
該腫瘍細胞が、1つまたは複数の腫瘍細胞中で該被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる遺伝子産物を発現させる工程または
該被験体を治療するのに有効な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる薬剤に1つまたは複数の腫瘍細胞を接触させる工程
を包含するが、
ただし、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない、
方法。
【請求項64】
腫瘍療法を受けているかまたは腫瘍治療を受けていた被験体の治療方法であって、該腫瘍療法が、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍の治療ではなく、被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲンを増加させる量の薬剤を被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項65】
腫瘍療法を受けているかまたは受けていた被験体の治療方法であって、薬剤がグリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない場合に被験体を治療するのに十分な量に細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤を被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項66】
抗腫瘍療法の有効性を増加させる方法であって、
抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けているかまたは受けていた被験体に、細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤を投与する工程および
抗腫瘍療法または免疫増強療法
を包含し、
ここで、該抗腫瘍療法が、肝臓、筋肉、または脳の腫瘍の治療ではない、方法。
【請求項67】
抗腫瘍療法の有効性を増加させる方法であって、抗腫瘍療法または免疫増強療法を受けているか受けていた被験体に細胞内グリコーゲン量を増加させる量の薬剤を投与する工程および、抗腫瘍療法または免疫増強療法を包含し、
但し、該薬剤は、グリコーゲンホスホリラーゼアイソタイプの活性または発現を実質的に阻害しない、方法。
【請求項68】
前記薬剤を、抗腫瘍療法または免疫増強療法の前、実質的に同時、または実施後に投与する、請求項66または請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記腫瘍が転移性または非転移性腫瘍を含む、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記腫瘍が、悪性度I、II、III、IV、またはVの腫瘍を含む、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記腫瘍が寛解する、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記腫瘍が充実性または液状である、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記腫瘍が、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、または皮膚の少なくとも一部に存在する、請求項62、請求項64、および請求項66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記腫瘍が、脳、頭頸部、乳房、食道、口腔、胃、肺、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、膀胱、結腸、直腸、前立腺、子宮、子宮頸部、卵巣、精巣、皮膚、または筋肉の少なくとも一部に存在する、請求項63、請求項65、および請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記腫瘍が造血系である、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記腫瘍が、肉腫、癌腫、黒色腫、骨髄腫、芽腫、神経膠腫、リンパ腫、または白血病を含む、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記治療により、腫瘍体積が減少するか、腫瘍体積の増加が阻害されるか、腫瘍の進行が阻害されるか、腫瘍細胞の溶解またはアポトーシスが刺激されるか、腫瘍の転移が阻害される、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記治療により腫瘍に関連する1つまたは複数の不都合な症状が軽減される、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記治療により被験体が延命される、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記被験体が、抗腫瘍療法または免疫増強療法の候補であるか、これを受けるか、受けていた、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
抗腫瘍薬または免疫増強治療薬を投与するか、または抗腫瘍または免疫増強の処置を与える工程をさらに含む、請求項62〜請求項67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記抗腫瘍治療が、化学療法、免疫療法、外科的切除、放射線療法、または発熱療法を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記抗腫瘍薬が、アルキル化薬、抗代謝薬、植物抽出物、植物アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド、またはヌクレオチドアナログを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記抗腫瘍薬が、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、AZT、5−アザシチジン(5−AZC)および5−アザシチジン関連化合物、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、ミトーテン、プロカルバジン、ダカルバジン、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびジブロモマンニトールから選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫増強治療が、リンパ球、形質細胞、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、またはB細胞の投与を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記免疫増強治療が、抗体、細胞成長因子、細胞生存因子、細胞分化因子、サイトカイン、またはケモカインを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記免疫増強薬が、IL−2、IL−1α、IL−β、IL−3、IL−6、IL−7、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、IFN−γ、IL−12、TNF−α、TNFβ、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、SDF−1、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309/TCA3、ATAC、HCC−1、HCC−2、HCC−3、LARC/MIP−3α、PARC、TARC、CKβ、CKβ6、CKβ7、CKβ8、CKβ9、CKβ11、CKβ12、C10、IL−8、GROα、GROβ、ENA−78、GCP−2、PBP/CTAPIIIβ−TG/NAP−2、Mig、PBSF/SDF−1、およびリンホタクチンから選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項88】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、該方法は、
a)グリコーゲンを産生する細胞を試験薬剤に接触させる工程;および
b)該試験薬剤の存在下で、または該試験薬剤との接触後に、グリコーゲン毒性についてアッセイする工程
を包含し、
ここで、該グリコーゲン毒性によって、該試験薬剤が抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定される、方法。
【請求項89】
前記グリコーゲン毒性を、グリコーゲン毒性に関連する形態学的変化のスクリーニングによってアッセイする、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記グリコーゲン毒性を、細胞生存のスクリーニングによってアッセイする、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記グリコーゲン毒性を、細胞の増殖、成長、または生存の阻害または減少のスクリーニングによってアッセイする、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
c)細胞生存度を測定する工程をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞が原核細胞または真核細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞を、その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子で安定にまたは一過的に形質転換する、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞を核酸配列で形質転換する、請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞が過剰増殖細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項97】
前記細胞が不死化細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞が癌細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項99】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程;および
b)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後に該グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性または発現を測定する工程であって、ここで、該グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の発現または活性の増減によって、該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定する工程
を包含する、方法。
【請求項100】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子を発現する細胞を試験薬剤に接触させる工程と、
b)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後に遺伝子発現を測定する工程であって、該遺伝子発現の増減により該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定する工程
を含む、方法。
【請求項101】
前記酵素が、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1アイソタイプもしくはファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼアイソタイプもしくはファミリーメンバー、またはグルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼを含む、請求項99または請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記PP−1ファミリーメンバーのグリコーゲンターゲティングサブユニットが、G(PPP1R3B、PPP1R4)、PTG(PPP1R3C、PPP1R5)、PPP1R3D(PPP1R6)、またはG/RG1(PPP1R3A、PPP1R3)を含む、請求項101に記載の方法
【請求項103】
前記グリコーゲン分解酵素が、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼを含む、請求項99または請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記遺伝子が、ガラクトシダーゼ、クロラムフェンコールアセチルトランスフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、または蛍光タンパク質をコードする、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
前記調節領域が、グリコゲニン、グリコゲニン−2、グリコーゲンシンターゼ、グリコゲニン相互作用タンパク質(GNIP)、タンパク質ホスファターゼ1(PP−1)、グルコース輸送担体(GLUT)、PP−1ファミリーのグリコーゲンターゲティングサブユニット、ヘキソキナーゼファミリーメンバー、グルタミン−フルクトース−6−リン酸トランスアミナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、脱分枝酵素、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース−6−ホスファターゼ、PPP1R1A(タンパク質ホスファターゼ1、調節インヒビターサブユニット1A)、PPP1R2(タンパク質ホスファターゼ1、調節サブユニット2)、ホスホフルクトキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3アイソタイプ、GCKRグルコキナーゼ調節タンパク質、またはα−グルコシダーゼから選択されるプロモーターを含む、請求項100に記載の方法。
【請求項106】
前記細胞が原核生物または真核生物である、請求項99または請求項100の方法。
【請求項107】
前記細胞を、その発現がグリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の調節領域によって調節される遺伝子で安定にまたは一過的に形質転換する、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記細胞を核酸配列で形質転換する、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞が過剰増殖細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞が不死化細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞が癌細胞である、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
前記接触がインビトロである、請求項99または請求項100に記載の方法。
【請求項113】
前記接触がインビボである、請求項99または請求項100に記載の方法。
【請求項114】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる試験薬剤を得る工程;
b)該グリコーゲン生成酵素を発現する細胞を該試験薬剤に接触させる工程;
c)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程であって、ここで、該グリコーゲン毒性により該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定する工程
を包含する、方法。
【請求項115】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素に結合する試験薬剤を得る工程;
b)該グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を発現する細胞を該試験薬剤に接触させる工程;
c)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程であって、該グリコーゲン毒性により該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定する工程
を包含する、方法。
【請求項116】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる試験薬剤を得る工程;
b)該グリコーゲン分解酵素を発現する細胞を該試験薬剤に接触させる工程;
c)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後にグリコーゲン毒性をアッセイする工程であって、該グリコーゲン毒性により該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤として同定する工程
を含む、方法。
【請求項117】
抗細胞増殖活性を有する薬剤の同定方法であって、
a)グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素を試験薬剤に接触させる工程;
b)該試験薬剤の存在下または該試験薬剤との接触後に該グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性を測定する工程であって、該グリコーゲン生成酵素またはグリコーゲン分解酵素の活性の増減によって、該試験薬剤を抗細胞増殖活性を有する薬剤して同定する工程
を含む、方法。
【請求項118】
前記接触が、溶液中、固相中、インビトロ、またはインビボである、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
グリコーゲン生成酵素の発現または活性を増加させる一定量の薬剤および
ラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への該薬剤の投与のための説明書を備える
キット。
【請求項120】
グリコーゲン分解酵素の発現または活性を減少させる一定量の薬剤および
ラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への該薬剤の投与のための説明書を備える、キット。
【請求項121】
細胞内グリコーゲンの蓄積を増加させる一定量の薬剤および
ラベル上または添付文書として治療を必要とする被験体への該薬剤の投与のための説明書を備える、キット。
【請求項122】
前記薬剤が基質アナログを備える、請求項119〜請求項121のいずれか1項に記載のキット。
【請求項123】
抗腫瘍薬または免疫増強薬をさらに備える、請求項119〜請求項121のいずれか1項に記載のキット。
【請求項124】
前記薬剤が薬学的処方物を備える、請求項119〜請求項121のいずれか1項に記載のキット。
【請求項125】
製品をさらに備える、請求項119〜請求項121のいずれか1項に記載のキット。
【請求項126】
前記製品が、薬剤を被験体に、局所的、局部的、または全身への送達のためのものである、請求項125に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−508939(P2006−508939A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547934(P2004−547934)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005562
【国際公開番号】WO2004/039412
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505158482)エンジーン, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】