発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法
【課題】放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】発光層2を含む発光部3にヒートシンク基板5が接合された発光ダイオード1であって、ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなり、第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が発光部3の材料と略等しい材料からなり、第2の金属層22は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる発光ダイオード1を用いることにより、上記課題を解決できる。
【解決手段】発光層2を含む発光部3にヒートシンク基板5が接合された発光ダイオード1であって、ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなり、第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が発光部3の材料と略等しい材料からなり、第2の金属層22は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる発光ダイオード1を用いることにより、上記課題を解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色、橙色、黄色或いは黄緑色などの可視光を発する発光ダイオード(英略称:LED)として、例えば、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP;0≦X≦1,0<Y≦1)からなる発光層を有する発光部と、前記発光部が形成された基板と、を備えた化合物半導体LEDが知られている。
【0003】
前記基板としては、一般に、前記発光層から出射される光に対し光学的に不透明であり、また機械的にもそれ程強度のない砒化ガリウム(GaAs)等が用いられている。
しかし、最近では、より高輝度の可視光発光ダイオードを得るために、また、発光素子の機械的強度の更なる向上を目的として、前記基板を除去して、然る後、発光光を透過または反射し、尚且つ機械強度的に優れる材料からなる支持体層(基板)を接合させている。
例えば、特許文献1〜7には、前記発光層に前記支持体層(基板)を改めて接合させる技術(接合型LED形成技術)が開示されている。さらにまた、特許文献8には、前記接合技術に関連する技術が開示され、金属層と反射層とを接着した有機接着層にオーミック金属を埋め込んだ発光素子が開示されている。
【0004】
前記接合型LED形成技術の開発により、発光部に接合させる基板の自由度が増えており、たとえば、放熱性の高い金属、セラミックなどからなるヒートシンク基板を用いることができている。前記基板としてヒートシンク基板を用いることにより、前記発光部からの放熱性を確保して、発光層の劣化を抑制し、長寿命とすることができる。
特に、高電流に耐えて高輝度で光らせる必要がある高出力用の発光ダイオードは、従来のものに比べて発熱量が多く、放熱性の確保がより課題となっている。そのため、発光部にヒートシンク基板を接合させることは、発光ダイオードの長寿命化により有用とされる。
【0005】
しかしながら、放熱性の高い金属、セラミックなどからなるヒートシンク基板は、その熱膨張係数が、発光部の熱膨張係数と大きく異なり、発光部にヒートシンク基板を接合した時や、その後の熱処理工程などに於いて、発光部および/またはヒートシンク基板に割れが発生する場合を生じた。これにより、大きく発光ダイオードの製造歩留まりを低下させる場合があった。
【0006】
ヒートシンク基板として、その熱膨張係数が、前記発光部の熱膨張係数の1ppm/K以内であり、その熱伝導率が200W/K以上である材料を用いることができれば、熱処理工程などに於いて割れなどの発生を抑制できるとともに放熱性を十分確保できる。しかし、そのような熱膨張係数と熱伝導率の特性を両立できる材料はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3230638号公報
【特許文献2】特開平6−302857号公報
【特許文献3】特開2002−246640号公報
【特許文献4】特許第2588849号公報
【特許文献5】特開2001−57441号公報
【特許文献6】特開2007−81010号公報
【特許文献7】特開2006−32952号公報
【特許文献8】特開2005−236303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
(1)本発明の発光ダイオードは、発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層の材料が、前記発光部の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料であることを特徴とする。
(3)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなることを特徴とする。
(4)本発明の発光ダイオードは、前記第2の金属層が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなることを特徴とする。
【0011】
(5)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第2の金属層が銅からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層との層の数が合わせて3層以上9層以下とされていることを特徴とする。
(6)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第1の金属層の合わせた厚さが、前記ヒートシンク基板の厚さの15%以上45%以下であることを特徴とする。
(7)本発明の発光ダイオードは、前記発光部と前記ヒートシンク基板との間に反射構造体が備えられていることを特徴とする。
【0012】
(8)本発明の発光ダイオードは、前記発光層が、AlGaInP層またはAlGaAs層を含むことを特徴とする。
(9)本発明の発光ダイオードは、前記発光層が、平面視したときに対角線の長さが1mm以上の略矩形状であり、前記発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする。
(10)本発明の発光ダイオードは、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面が銅からなり、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面と側面とを覆うように金属積層膜が形成されていることを特徴とする。
【0013】
(11)本発明の発光ダイオードランプは、先に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下であることを特徴とする。
(12)本発明の発光ダイオードランプは、前記発光ダイオードの発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする。
【0014】
(13)本発明の発光ダイオードの製造方法は、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
(14)本発明の発光ダイオードの製造方法は、前記ヒートシンク基板を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、を高温下で圧着して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成によれば、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明の発光ダイオードは、発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0018】
本発明の発光ダイオードランプは、先に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下である構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0019】
本発明の発光ダイオードの製造方法は、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有する構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態である発光ダイオードの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態である発光ダイオードに用いるヒートシンク基板の製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図9】本発明の実施形態である発光ダイオードランプの一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(第1の実施形態)
<発光ダイオード>
図1は、本発明の実施形態である発光ダイオードの一例を示す図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)1は、発光層2を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板5と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられ、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
【0022】
<発光部>
発光部3は、発光層2を含む化合物半導体積層構造体であって、複数のエピタキシャル成長させた層を積層してなるエピタキシャル積層構造体である。
発光部3としては、たとえば、発光効率が高く、基板接合技術が確立されているAlGaInP層またはAlGaAs層などを利用できる。AlGaInP層は、一般式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)で表される材料からなる層である。この組成は、発光ダイオードの発光波長に応じて、決定される。赤および赤外発光の発光ダイオードを作製する際に用いられるAlGaAs層の場合も同様に、構成材料の組成は発光ダイオードの発光波長に応じて決定される。
発光部3は、n型またはp型の何れか一の伝導型の化合物半導体であり、内部でpn接合が形成される。なお、発光部3の表面の極性はp型、n型のどちらでもよい。
【0023】
図1に示すように、発光部3は、たとえば、コンタクト層12bと、クラッド層10aと、発光層2と、クラッド層10bと、GaP層13とからなる。
コンタクト層12bは、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるため層であり、例えば、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を1.5μmとする。
また、クラッド層10aは、例えば、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を1μmとする。
【0024】
発光層2は、例えば、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなり、層厚を0.8μmとする。
発光層2は、ダブルへテロ構造(Double Hetero:DH)、単一量子井戸構造(Single Quantum Well:SQW)または多重量子井戸構造(Multi Quantum Well:MQW)などの構造を有する。ここで、ダブルへテロ構造は、放射再結合を担うキャリアを閉じ込められる構造である。また、量子井戸構造は、井戸層と、前記井戸層を挟む2つの障壁層を有する構造であって、SQWは井戸層が1つのものであり、MQWは井戸層が2以上のものである。発光部3の形成方法としては、MOCVD法などを用いることができる。
発光層2から単色性に優れる発光を得るためには、特に、発光層2としてMQW構造を用いることが好ましい。
【0025】
クラッド層10bは、例えば、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1017cm−3とし、層厚を1μmとする。
また、GaP層13は、例えば、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を3×1018cm−3とし、層厚を3μmとする。
【0026】
発光部3の構成は、上記に記載した構造に限られるものではなく、たとえば、素子駆動電流を発光部3の全般に平面的に拡散させる電流拡散層や、素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層または電流狭窄層などを有していてもよい。
【0027】
<第1の電極、第2の電極>
第1の電極6および第2の電極8はそれぞれオーミック電極であり、それらの形状および配置は、発光部3に電流を均一に拡散させるものであればよく、特に限定されない。たとえば、平面視したときに円状または矩形状の電極を用いることができ、一個の電極として配置することも、複数の電極を格子状に配置することもできる。
【0028】
第1の電極6の材料としては、コンタクト層12bとしてn型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuGe、AuSiなどを用いることができ、コンタクト層12bとしてp型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
また、更にその上にAuなどを積層して、酸化を防止させるとともに、ワイヤーボンディングを向上させることができる。
【0029】
第2の電極8の材料としては、GaP層13としてn型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuGe、AuSiなどを用いることができ、GaP層13としてp型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
【0030】
<反射構造体>
図1に示すように、発光部3の反射構造体4側の面3bには、第2の電極8を覆うように反射構造体4が形成されている。反射構造体4は、金属膜15と透明導電膜14とが積層されてなる。
【0031】
金属膜15は、銅、銀、金、アルミニウムなどの金属およびそれらの合金などにより構成されている。これらの材料は光反射率が高く、反射構造体4からの光反射率を90%以上とすることができる。金属膜15を形成することにより、発光層2からの光を金属膜15で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができる。これにより、発光ダイオードをより高輝度化できる。
【0032】
金属膜15は、たとえば、透明導電膜14側からAg合金/W/Pt/Au/接続用金属からなる積層構造とされる。
金属膜15の発光部3と反対側の面15bに形成された前記接続用金属は、電気抵抗が低く、低温で溶融する金属である。前記接続用金属を用いることにより、発光部3に熱ストレスを与えることなく、ヒートシンク基板を接続できる。
接続用金属としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などを用いられる。前記Au系の共晶金属としては、たとえば、AuSn、AuGe、AuSiなどの合金の共晶組成(Au系の共晶金属)を挙げることができる。
また、接続用金属には、チタン、クロム、タングステンなどの金属を添加することが好ましい。これにより、チタン、クロム、タングステンなどの金属がバリヤ金属として機能して、ヒートシンク基板に含まれる不純物などが金属膜15側に拡散して、反応することを抑制できる。
【0033】
透明導電膜14は、ITO膜、IZO膜などにより構成されている。なお、反射構造体4は、金属膜15だけで構成してもよい。
また、透明導電膜14の代わりに、または、透明導電膜14とともに、透明な材料の屈折率差を利用したいわゆるコールドミラー、例えば、酸化チタン膜、酸化ケイ素膜の多層膜や白色のアルミナ、AlNを用いて、金属膜15に組み合わせてもよい。
【0034】
<ヒートシンク基板>
反射構造体4を構成する金属膜15の発光部3と反対側の面15bに、ヒートシンク基板5の接合面5aが接合されている。
ヒートシンク基板5の厚さは、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
ヒートシンク基板5の厚さが150μmより厚い場合には、発光ダイオードの製造コストが上昇して好ましくない。また、ヒートシンク基板5の厚さが50μmより薄い場合には、ハンドリング時に割れ、かけ、反りなどが容易に生じて、製造歩留まりを低下させるおそれが発生する。
【0035】
ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなる。
ヒートシンク基板1枚あたりの第1の金属層21と第2の金属層22の層数は、合わせて3〜9層とすることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。
第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて2層とした場合には、厚さ方向での熱膨張が不均衡となり、ヒートシンク基板5の割れが発生するおそれが発生する。逆に、第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて9層より多くした場合には、第1の金属層21と第2の金属層22の層の厚さをそれぞれ薄くする必要が生じる。第1の金属層21または第2の金属層22からなる単層基板を層の厚さを薄くして作製することは困難であり、各層の厚さを不均一にして、発光ダイオードの特性をばらつかせるおそれが発生する。さらに、層の厚さを薄くした前記単層基板は、容易に基板の割れを発生させる。さらにまた、前記単層基板の製造が困難であることから、発光ダイオードの製造コストを悪化させるおそれも生じる。
なお、第1の金属層21と第2の金属層22の層数は、合わせて奇数とすることがより好ましい。
【0036】
<第1の金属層>
第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であることが好ましい。これにより、ヒートシンク基板5の放熱性を高くして、発光ダイオード1を高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオード1の寿命を長寿命とすることができる。
【0037】
また、第1の金属層21は、その熱膨張係数が発光部3の熱膨張係数と略等しい材料からなることが好ましい。特に、第1の金属層21の材料が、発光部3の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内である熱膨張係数を有する材料であることが好ましい。これにより、接合時の発光部3への熱によるストレスを小さくすることができ、ヒートシンク基板5を発光部3と接続させたときの熱によるヒートシンク基板5の割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができる。
【0038】
たとえば、発光部3としてAlGaInP層(熱膨張係数=約5.3ppm/K)を用いた場合には、第1の金属層21としてモリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
また、モリブデンの熱伝導率は138W/m・Kであり、タングステンの熱伝導率は174W/m・Kであり、130W/m・K以上であった。
【0039】
第1の金属21の合計の厚さは、ヒートシンク基板5の厚さの10%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましく、25%以上35%以下であることが更に好ましい。第1の金属21の合計の厚さがヒートシンク基板5の厚さの45%を超える場合は、熱伝導率が高い第2の金属層22の効果が小さくなり、ヒートシンク機能が低下する。逆に、第1の金属21の厚さがヒートシンク基板5の厚さの10%未満の場合は、第1の金属21がほとんど機能せず、ヒートシンク基板5を発光部3と接続させたときの熱によるヒートシンク基板5の割れを抑制できない。つまり、第2の金属層22と発光部3との間の大きな熱膨張係数の差により、熱によるヒートシンク基板5の割れを発生させて、接合不良発生を招く場合が生じる。
特に、第1の金属層21としてモリブデンを用いた場合には、モリブデンの合計の厚さが、ヒートシンク基板5の厚さの15%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましく、25%以上35%以下であることが更に好ましい。
第1の金属層21の厚みは、10μm以上40μm以下とすることが好ましく、20μm以上30μm以下とすることがより好ましい。
【0040】
<第2の金属層>
第2の金属層22は、少なくとも第1の金属層21よりも熱伝導率が高い材料が好ましく、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることがより好ましい。これにより、ヒートシンク基板5の放熱性をより高くして、発光ダイオード1をより高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオード1の寿命をより長寿命とすることができる。
【0041】
第2の金属22としては、たとえば、銀(熱伝導率=420W/m・K)、銅(熱伝導率=398W/m・K)、金(熱伝導率=320W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率=236W/m・K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
第2の金属層22の厚みは、10μm以上40μm以下とすることが好ましく、20μm以上40μm以下とすることがより好ましい。
なお、第2の金属層22の厚みと第1の金属層21の厚みとは異なっていてもよい。さらに、ヒートシンク基板5が複数の第1の金属層21と第2の金属層22により形成される場合に、各層の厚みはそれぞれ異なっていてもよい。
【0042】
なお、ヒートシンク基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させる接合補助膜、または、ダイボンド用の共晶金属を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便に行うことができる。前記接合補助膜としては、Au、AuSnなどを用いることができる。
【0043】
なお、発光部3にヒートシンク基板5を接合する方法は、上記に記載した方法に限られるものではなく、たとえば、拡散接合、接着剤、常温接合方法など公知の技術を適用することもできる。
【0044】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、発光層2を含む発光部3にヒートシンク基板5が接合された発光ダイオード1であって、ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなり、第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が発光部3の材料と略等しい材料からなり、第2の金属層22は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0045】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21の材料が、発光部3の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料である構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0046】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0047】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第2の金属層22が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0048】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21がモリブデンからなり、第2の金属層22が銅からなり、第1の金属層21と第2の金属層22との層の数が合わせて3層以上9層以下とされている構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
第1の金属層21の位置に第2の金属層22を配置し、第2の金属層22の位置に第1の金属層21を配置しても良い。上記の実施形態の場合、第1の金属層21の位置に銅からなる層を配置し、第2の金属層22の位置にモリブデンからなる層を配置しても、同様の効果が得られる。
【0049】
<発光ダイオードの製造方法>
次に、本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法について説明する。
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、ヒートシンク基板の製造工程と、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有する。
まず、ヒートシンク基板の製造工程について説明する。
【0050】
<ヒートシンク基板の製造工程>
ヒートシンク基板5は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、をホットプレスして形成する。
【0051】
まず、2枚の略平板状の第1の金属板21と、1枚の略平板状の第2の金属板22を用意する。たとえば、第1の金属板21としては厚さ25μmのMoを用い、第2の金属板22としては厚さ70μmのCuを用いる。
次に、図2(a)に示すように、前記2枚の第1の金属板21の間に前記第2の金属板22を挿入してこれらを重ねて配置する。
【0052】
次に、所定の加圧装置に前記基板を配置して、高温下で、第1の金属板21と第2の金属板22に矢印の方向に荷重をかける。これにより、図2(b)に示すように、第1の金属層21がMoであり、第2の金属層22がCuであり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなるヒートシンク基板5を形成する。
ヒートシンク基板5は、たとえば、熱膨張係数が5.7ppm/Kとなり、熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0053】
なお、この後、発光部(ウェーハ)3の接合面の大きさに合わせて切断した後、表面を鏡面加工してもよい。
また、ヒートシンク基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させるため接合補助膜を形成してもよい。前記接合補助膜としては、金、白金、ニッケルなどを用いることができる。たとえば、まず、ニッケルを0.1μm成膜した後、前記ニッケル上に金を0.5μm成膜する。
さらにまた、前記接合補助膜の代わりに、ダイボンド用のAuSn等の共晶金属を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便にすることができる。
【0054】
<発光部および第2の電極形成工程>
まず、図3に示すように、半導体基板11の一面11a上に、複数のエピタキシャル層を成長させてエピタキシャル積層体17を形成する。
半導体基板11は、エピタキシャル積層体17形成用基板であり、たとえば、一面11aが(100)面から15°傾けた面とされた、Siドープしたn型のGaAs単結晶基板である。このように、エピタキシャル積層体17としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、エピタキシャル積層体17を形成する基板として、砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いることができる。
【0055】
発光部3の形成方法としては、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxicy:MBE)法や液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxicy:LPE)法などを用いることができる。
【0056】
本実施形態では、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧MOCVD法を用いて、各層をエピタキシャル成長させる。
なお、Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエチルマグネシウム(bis−(C5H5)2Mg)を用いる。また、Siのドーピング原料にはジシラン(Si2H6)を用いる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)又はアルシン(AsH3)を用いる。
なお、p型のGaP層13は、例えば、750°Cで成長させ、その他のエピタキシャル成長層は、例えば、730°Cで成長させる。
【0057】
具体的には、まず、半導体基板11の一面11a上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層12aを成膜する。緩衝層12aとしては、例えば、Siをドープしたn型のGaAsを用い、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を0.2μmとする。
次に、緩衝層12a上に、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるコンタクト層12bを成膜する。
次に、コンタクト層12b上に、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層10aを成膜する。
次に、クラッド層10a上に、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなる発光層2を成膜する。
次に、発光層2上に、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層10bを成膜する。
次に、クラッド層10b上に、Mgドープしたp型のGaP層13を成膜する。
【0058】
次に、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13aを、表面から1μmの深さに至るまで鏡面研磨して、表面の粗さを、たとえば、0.18nm以内とする。
次に、図4に示すように、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13a上に第2の電極(オーミック電極)8を形成する。第2の電極8は、たとえば、0.4μmの厚さのAuBe上に0.2μmの厚さのAuが積層されてなる。第2の電極8は、たとえば、平面視したときに20μmφの円形状であり、60μmの間隔で形成される。
【0059】
<反射構造体形成工程>
次に、図5に示すように、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13aおよび第2の電極8を覆うようにITO膜からなる透明導電膜14を形成する。次に、450℃の熱処理を施して、第2の電極8と透明導電膜14との間にオーミックコンタクトを形成する。
【0060】
次に、図6に示すように、透明導電膜14のエピタキシャル積層体17と反対側の面14aに、蒸着法を用いて、銀(Ag)合金からなる膜を0.5μm成膜した後、タングステン(W)、白金(Pt)を各0.1μm、金(Au)を0.5μm、AuGe共晶金属(融点386℃)を1μm成膜して、金属膜15とする。
これにより、金属膜15と透明導電膜14とからなる反射構造体4が形成される。
【0061】
<ヒートシンク基板接合工程>
次に、反射構造体4とエピタキシャル積層体17とを形成した半導体基板11と、前記ヒートシンク基板の製造工程で形成したヒートシンク基板5と、を減圧装置内に搬入して、反射構造体4の接合面4aとヒートシンク基板5の接合面5aとが対向して重ねあわされるように配置する。
次に、前記減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、半導体基板11とヒートシンク基板5とを400℃に加熱した状態で、100g/cm2の加重を印加して反射構造体4の接合面4aとヒートシンク基板5の接合面5aと接合して、接合構造体18を形成する。
【0062】
<半導体基板および緩衝層除去工程>
次に、図8に示すように、接合構造体18から、半導体基板11及び緩衝層12aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。これにより、発光層2を有する発光部3が形成される。
【0063】
<第1の電極形成工程>
次に、真空蒸着法を用いて、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aに電極用導電膜を成膜する。前記電極用導電膜としては、例えば、AuGe/Ni/Auからなる金属層構造を用いることができる。たとえば、AuGe(Ge質量比12%)を0.15μmの厚さで成膜した後、Niを0.05μmの厚さで成膜し、さらにAuを1μmの厚さで成膜する。
次に、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用して、前記電極用導電膜を平面視円形状にパターニングして、n型オーミック電極(第1の電極)6として、図1に示す発光ダイオード1を作製する。
【0064】
なお、この後、例えば、420°Cで3分間熱処理を行って、n型オーミック電極(第1の電極)6の各金属を合金化することが好ましい。これにより、n型オーミック電極(第1の電極)6を低抵抗化することができる。
【0065】
なお、発光ダイオードを所望の大きさに区画する切断部分の発光部3をエッチングで除去した後、0.8mmピッチでレーザを用いて、前記切断部分の基板と接続層を所望の大きさの発光ダイオードチップ(LEDチップ)に切断する。発光ダイオードの大きさは、たとえば、平面視したときに略矩形状の発光部3の対角線の長さを1.1mmとする。その後、発光部3の露出面を粘着シートで保護して、切断面を洗浄する。
【0066】
本発明の発光ダイオードによれば、発光ダイオードにヒートシンク基板を接合する構成なので、高電流域においても、高い発光効率が得られている。
【0067】
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、半導体基板11に緩衝層12aを介して発光層2を含む発光部3を形成した後、発光部3の半導体基板11と反対側の面13aに第2の電極8を形成する工程と、発光部3の半導体基板11と反対側の面13aに第2の電極8を介して反射構造体4を形成する工程と、発光部3に反射構造体4を介してヒートシンク基板5を接合する工程と、半導体基板11および緩衝層12aを除去する工程と、発光部3のヒートシンク基板5と反対側の面3aに第1の電極6を形成する工程と、を有する構成なので、接合の際の基板の割れを抑制して、高電圧を印加して、放熱性に優れ、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【0068】
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、ヒートシンク基板5を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層21と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層22と、を高温下で圧着して形成する構成なので、接合の際の基板の割れを抑制して、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【0069】
<発光ダイオードランプ>
本発明の実施形態である発光ダイオードランプについて説明する。
図9は、本発明の実施形態である発光ダイオードランプの一例を示す断面模式図である。図9に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオードランプ40は、パッケージ基板45と、パッケージ基板45上に形成された2つの電極端子43、44と、電極端子44上に搭載された発光ダイオード1と、発光ダイオード1を覆うように形成されたシリコンなどからなる透明樹脂(封止樹脂)41と、を有している。
発光ダイオード1は、発光部3と反射構造部4とヒートシンク基板5と第1の電極6と第2の電極8を有しており、ヒートシンク基板5が電極端子43と接続されるように配置されている。また、第1の電極6と電極端子44とはワイヤーボンディングされている。電極端子43、44に印加された電圧が、第1の電極6と第2の電極8を介して発光部3に印加され、発光部3に含まれる発光層が発光する。発光された光は、正面方向fに取り出される。
【0070】
パッケージ基板45は、その熱抵抗が10℃/W以下とされている。これにより、発光層2に1W以上の電力を加えて発光させたときでも、ヒートシンクとして機能させることができ、発光ダイオード1の放熱性をより高めることができる。
なお、パッケージ基板の形状は、これに限定されず、他の形状のパッケージ基板を用いてもよい。他の形状のパッケージ基板を用いたLEDランプ製品においても、放熱性を十分確保できるので、高出力、高輝度の発光ダイオードランプとすることができる。
【0071】
本発明の実施形態である発光ダイオードパッケージ40は、発光ダイオード1と、発光ダイオード1を搭載するパッケージ基板45とを有する発光ダイオードランプ40であって、パッケージ基板45の熱抵抗が10℃/W以下である構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0072】
本発明の実施形態である発光ダイオードパッケージ40は、発光ダイオード1の発光層2に1W以上の電力を加えて発光させる構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す図である。
図10に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)51は、ヒートシンク基板5の代わりにヒートシンク基板55が用いられたほかは第1の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0074】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)51は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板55と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板55は、第1の金属層21としてMoが用いられ、第2の金属層22としてCuが用いられ、Mo(1μm)/Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)/Mo(1μm)の5層構造基板(厚さ127um)が用いられている。
【0075】
ヒートシンク基板55の製造方法について説明すると、第1の実施形態で示したヒートシンク基板の製造方法を用いて、まず、Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)の3層構造基板を製造した後、スパッタ法により、前記3層構造基板の両面にMoを1μmの厚さで成膜して、5層構造からなるヒートシンク基板55を形成する。なお、ヒートシンク基板55の熱膨張係数は、6.6ppm/K、熱伝導率は230W/m・Kとなる。
【0076】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の実施形態である発光ダイオードのさらに別の一例を示す図である。
図11に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)52は、ヒートシンク基板5の代わりにヒートシンク基板56が用いられたほかは第1の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0077】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)52は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板56と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板56は、第1の金属層21としてMoが用いられ、第2の金属層22としてCuが用いられ、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造基板(厚さ85um)が用いられている。
【0078】
ヒートシンク基板56の製造方法について説明すると、第1の実施形態で示したヒートシンク基板の製造方法を用いて、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造からなるヒートシンク基板56を製造する。なお、ヒートシンク基板56の熱膨張係数は、6.1ppm/K、熱伝導率は250W/m・Kとなる。
【0079】
(第4の実施形態)
図12は、本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す図である。
図12に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)53は、反射構造体4の側面4dおよびヒートシンク基板56の側面56dおよび底面56eを覆うように金属積層膜25が形成されたほかは第3の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0080】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)53は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板56と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板56の発光部3と反対側の面(底面)56bが銅からなり、ヒートシンク基板56の底面56bと側面56d及び反射構造体4の側面4dとを覆うようにNi層とAu層とからなる金属積層膜25が形成されている。金属積層膜25を形成することにより、放熱性を高めることができる。
なお、Ni層およびAu層の成膜方法としてはメッキ法などを用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
まず、第1の実施形態に示した方法を用いて、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層構造からなる実施例1のヒートシンク基板を形成した。なお、ヒートシンク基板の接合面には、Pt(0.1μm)/Au(0.5μm)を成膜した。実施例1のヒートシンク基板の熱膨張係数は5.7ppm/Kであり、熱伝導率は220W/m・Kであった。
【0082】
次に、第1の実施形態に示した方法を用いて、発光部と反射構造体を形成するとともに、これに前記ヒートシンク基板を接合して、実施例1の発光ダイオードを作製した。
コンタクト層12bは、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を1.5μmとした。クラッド層10aは、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を1μmとした。発光層2は、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなり、層厚を0.8μmとした。クラッド層10bは、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1017cm−3とし、層厚を1μmとした。また、GaP層13は、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を3×1018cm−3とし、層厚を3μmとした。
さらに、第1の電極は、AuGe/Ni/Auの積層構造として形成し、第2の電極は、AuBe/Auの積層構造とした。また、反射構造体としては、ITOからなる透明導電膜と、Ag合金/W/Pt/Au/AuGeからなる積層構造とした。
実施例1の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約65lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0083】
(実施例2)
まず、第2の実施形態に示した方法を用いて、Mo(1μm)/Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)/Mo(1μm)の5層構造(厚さ127um)からなる実施例2のヒートシンク基板を製造した。
実施例2のヒートシンク基板の熱膨張係数は6.6ppm/Kであり、熱伝導率は230W/m・Kであった。
【0084】
次に、実施例2のヒートシンク基板を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例2の発光ダイオードを作製した。
実施例2の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約69lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0085】
(実施例3)
まず、第3の実施形態に示した方法を用いて、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造(厚さ85μm)からなる実施例3のヒートシンク基板を製造した。
実施例3のヒートシンク基板の熱膨張係数は6.1ppm/Kであり、熱伝導率は250W/m・Kであった。
【0086】
次に、実施例3のヒートシンク基板を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例3の発光ダイオードを作製した。
実施例3の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約71lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0087】
(比較例1)
ヒートシンク基板としてSi基板を用いたほかは実施例1と同様にして、比較例1の発光ダイオードを作製した。なお、Si基板の熱膨張係数は3ppm/Kであり、熱伝導率は126W/m・Kであった。
比較例1の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。このとき、比較例1の発光ダイオードの発光効率は、温度上昇により低下して、約49lm/Wであった。また、10枚投入したウェーハの内4枚が生産工程で割れてしまった。つまり、割れ率(ウェーハ割れ率)は40%で、生産性に課題があることが分かった。こ
【0088】
(比較例2)
ヒートシンク基板としてCu基板を用いたほかは実施例1と同様にして、比較例2の発光ダイオードを作製した。実施例1と同様に、発光部と反射構造体を形成した後、これに前記ヒートシンク基板を接合したとき、全てのウェーハに割れが生じた。Cu基板は、熱膨張係数が大きい為、割れたと考えられる。
【0089】
(比較例3、4,5)
上記実施例1〜3、比較例1、2と同様にして、表1に示すヒートシンク基板を有する発光ダイオードを製造した。
実施例1〜3、比較例1〜5の発光ダイオードについて、ウェーハの割れ、および、発光効率(電流値500mA時)を調べ、表1にまとめた。
表1に示すように、比較例3〜5の発光ダイオードは、割れは発生しなかった、しかし、比較例3〜5の発光ダイオードのヒートシンク基板の熱伝導率は小さく、比較例3〜5の発光ダイオードの発光効率は、温度上昇により低下した。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の発光ダイオードは、放熱特性を向上させて、従来にない高輝度で発光させる各種の表示ランプ、照明器具等に利用でき、前記表示ランプ、前記照明器具等を製造・利用する産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0092】
1…発光ダイオード(発光ダイオードチップ)、2…発光層、3…発光部、3a…反射構造体と反対側の面、3b…反射構造体側の面、4…反射構造体、5…ヒートシンク基板、5a…接合面、5b…接合面と反対側の面、6…第1の電極、8…第2の電極、8b…発光部と反対側の面、11…半導体基板(エピタキシャル成長用基板)、11a…結晶成長面、10a、10b…クラッド層、12a…緩衝層、12b…コンタクト層、13…GaP層、13a…半導体基板と反対側の面、14…透明導電膜、15…金属接合膜、15b…発光部と反対側の面、17…エピタキシャル積層体、21…第1の金属層、22…第2の金属層、25…金属積層膜、40…発光ダイオードランプ、41…樹脂、43、44…電極端子、45…基板、46…ワイヤー、51、52、53…発光ダイオード(発光ダイオードチップ)、55、56…ヒートシンク基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色、橙色、黄色或いは黄緑色などの可視光を発する発光ダイオード(英略称:LED)として、例えば、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP;0≦X≦1,0<Y≦1)からなる発光層を有する発光部と、前記発光部が形成された基板と、を備えた化合物半導体LEDが知られている。
【0003】
前記基板としては、一般に、前記発光層から出射される光に対し光学的に不透明であり、また機械的にもそれ程強度のない砒化ガリウム(GaAs)等が用いられている。
しかし、最近では、より高輝度の可視光発光ダイオードを得るために、また、発光素子の機械的強度の更なる向上を目的として、前記基板を除去して、然る後、発光光を透過または反射し、尚且つ機械強度的に優れる材料からなる支持体層(基板)を接合させている。
例えば、特許文献1〜7には、前記発光層に前記支持体層(基板)を改めて接合させる技術(接合型LED形成技術)が開示されている。さらにまた、特許文献8には、前記接合技術に関連する技術が開示され、金属層と反射層とを接着した有機接着層にオーミック金属を埋め込んだ発光素子が開示されている。
【0004】
前記接合型LED形成技術の開発により、発光部に接合させる基板の自由度が増えており、たとえば、放熱性の高い金属、セラミックなどからなるヒートシンク基板を用いることができている。前記基板としてヒートシンク基板を用いることにより、前記発光部からの放熱性を確保して、発光層の劣化を抑制し、長寿命とすることができる。
特に、高電流に耐えて高輝度で光らせる必要がある高出力用の発光ダイオードは、従来のものに比べて発熱量が多く、放熱性の確保がより課題となっている。そのため、発光部にヒートシンク基板を接合させることは、発光ダイオードの長寿命化により有用とされる。
【0005】
しかしながら、放熱性の高い金属、セラミックなどからなるヒートシンク基板は、その熱膨張係数が、発光部の熱膨張係数と大きく異なり、発光部にヒートシンク基板を接合した時や、その後の熱処理工程などに於いて、発光部および/またはヒートシンク基板に割れが発生する場合を生じた。これにより、大きく発光ダイオードの製造歩留まりを低下させる場合があった。
【0006】
ヒートシンク基板として、その熱膨張係数が、前記発光部の熱膨張係数の1ppm/K以内であり、その熱伝導率が200W/K以上である材料を用いることができれば、熱処理工程などに於いて割れなどの発生を抑制できるとともに放熱性を十分確保できる。しかし、そのような熱膨張係数と熱伝導率の特性を両立できる材料はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3230638号公報
【特許文献2】特開平6−302857号公報
【特許文献3】特開2002−246640号公報
【特許文献4】特許第2588849号公報
【特許文献5】特開2001−57441号公報
【特許文献6】特開2007−81010号公報
【特許文献7】特開2006−32952号公報
【特許文献8】特開2005−236303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、
(1)本発明の発光ダイオードは、発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層の材料が、前記発光部の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料であることを特徴とする。
(3)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなることを特徴とする。
(4)本発明の発光ダイオードは、前記第2の金属層が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなることを特徴とする。
【0011】
(5)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第2の金属層が銅からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層との層の数が合わせて3層以上9層以下とされていることを特徴とする。
(6)本発明の発光ダイオードは、前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第1の金属層の合わせた厚さが、前記ヒートシンク基板の厚さの15%以上45%以下であることを特徴とする。
(7)本発明の発光ダイオードは、前記発光部と前記ヒートシンク基板との間に反射構造体が備えられていることを特徴とする。
【0012】
(8)本発明の発光ダイオードは、前記発光層が、AlGaInP層またはAlGaAs層を含むことを特徴とする。
(9)本発明の発光ダイオードは、前記発光層が、平面視したときに対角線の長さが1mm以上の略矩形状であり、前記発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする。
(10)本発明の発光ダイオードは、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面が銅からなり、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面と側面とを覆うように金属積層膜が形成されていることを特徴とする。
【0013】
(11)本発明の発光ダイオードランプは、先に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下であることを特徴とする。
(12)本発明の発光ダイオードランプは、前記発光ダイオードの発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする。
【0014】
(13)本発明の発光ダイオードの製造方法は、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
(14)本発明の発光ダイオードの製造方法は、前記ヒートシンク基板を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、を高温下で圧着して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成によれば、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び発光ダイオードの製造方法を提供することができる。
【0017】
本発明の発光ダイオードは、発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0018】
本発明の発光ダイオードランプは、先に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下である構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0019】
本発明の発光ダイオードの製造方法は、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有する構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態である発光ダイオードの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態である発光ダイオードに用いるヒートシンク基板の製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施形態である発光ダイオードの製造工程の一例を示す工程断面図である。
【図9】本発明の実施形態である発光ダイオードランプの一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(第1の実施形態)
<発光ダイオード>
図1は、本発明の実施形態である発光ダイオードの一例を示す図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)1は、発光層2を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板5と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられ、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
【0022】
<発光部>
発光部3は、発光層2を含む化合物半導体積層構造体であって、複数のエピタキシャル成長させた層を積層してなるエピタキシャル積層構造体である。
発光部3としては、たとえば、発光効率が高く、基板接合技術が確立されているAlGaInP層またはAlGaAs層などを利用できる。AlGaInP層は、一般式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)で表される材料からなる層である。この組成は、発光ダイオードの発光波長に応じて、決定される。赤および赤外発光の発光ダイオードを作製する際に用いられるAlGaAs層の場合も同様に、構成材料の組成は発光ダイオードの発光波長に応じて決定される。
発光部3は、n型またはp型の何れか一の伝導型の化合物半導体であり、内部でpn接合が形成される。なお、発光部3の表面の極性はp型、n型のどちらでもよい。
【0023】
図1に示すように、発光部3は、たとえば、コンタクト層12bと、クラッド層10aと、発光層2と、クラッド層10bと、GaP層13とからなる。
コンタクト層12bは、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるため層であり、例えば、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を1.5μmとする。
また、クラッド層10aは、例えば、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を1μmとする。
【0024】
発光層2は、例えば、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなり、層厚を0.8μmとする。
発光層2は、ダブルへテロ構造(Double Hetero:DH)、単一量子井戸構造(Single Quantum Well:SQW)または多重量子井戸構造(Multi Quantum Well:MQW)などの構造を有する。ここで、ダブルへテロ構造は、放射再結合を担うキャリアを閉じ込められる構造である。また、量子井戸構造は、井戸層と、前記井戸層を挟む2つの障壁層を有する構造であって、SQWは井戸層が1つのものであり、MQWは井戸層が2以上のものである。発光部3の形成方法としては、MOCVD法などを用いることができる。
発光層2から単色性に優れる発光を得るためには、特に、発光層2としてMQW構造を用いることが好ましい。
【0025】
クラッド層10bは、例えば、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1017cm−3とし、層厚を1μmとする。
また、GaP層13は、例えば、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を3×1018cm−3とし、層厚を3μmとする。
【0026】
発光部3の構成は、上記に記載した構造に限られるものではなく、たとえば、素子駆動電流を発光部3の全般に平面的に拡散させる電流拡散層や、素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層または電流狭窄層などを有していてもよい。
【0027】
<第1の電極、第2の電極>
第1の電極6および第2の電極8はそれぞれオーミック電極であり、それらの形状および配置は、発光部3に電流を均一に拡散させるものであればよく、特に限定されない。たとえば、平面視したときに円状または矩形状の電極を用いることができ、一個の電極として配置することも、複数の電極を格子状に配置することもできる。
【0028】
第1の電極6の材料としては、コンタクト層12bとしてn型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuGe、AuSiなどを用いることができ、コンタクト層12bとしてp型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
また、更にその上にAuなどを積層して、酸化を防止させるとともに、ワイヤーボンディングを向上させることができる。
【0029】
第2の電極8の材料としては、GaP層13としてn型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuGe、AuSiなどを用いることができ、GaP層13としてp型の化合物半導体を用いた場合には、たとえば、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
【0030】
<反射構造体>
図1に示すように、発光部3の反射構造体4側の面3bには、第2の電極8を覆うように反射構造体4が形成されている。反射構造体4は、金属膜15と透明導電膜14とが積層されてなる。
【0031】
金属膜15は、銅、銀、金、アルミニウムなどの金属およびそれらの合金などにより構成されている。これらの材料は光反射率が高く、反射構造体4からの光反射率を90%以上とすることができる。金属膜15を形成することにより、発光層2からの光を金属膜15で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができる。これにより、発光ダイオードをより高輝度化できる。
【0032】
金属膜15は、たとえば、透明導電膜14側からAg合金/W/Pt/Au/接続用金属からなる積層構造とされる。
金属膜15の発光部3と反対側の面15bに形成された前記接続用金属は、電気抵抗が低く、低温で溶融する金属である。前記接続用金属を用いることにより、発光部3に熱ストレスを与えることなく、ヒートシンク基板を接続できる。
接続用金属としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などを用いられる。前記Au系の共晶金属としては、たとえば、AuSn、AuGe、AuSiなどの合金の共晶組成(Au系の共晶金属)を挙げることができる。
また、接続用金属には、チタン、クロム、タングステンなどの金属を添加することが好ましい。これにより、チタン、クロム、タングステンなどの金属がバリヤ金属として機能して、ヒートシンク基板に含まれる不純物などが金属膜15側に拡散して、反応することを抑制できる。
【0033】
透明導電膜14は、ITO膜、IZO膜などにより構成されている。なお、反射構造体4は、金属膜15だけで構成してもよい。
また、透明導電膜14の代わりに、または、透明導電膜14とともに、透明な材料の屈折率差を利用したいわゆるコールドミラー、例えば、酸化チタン膜、酸化ケイ素膜の多層膜や白色のアルミナ、AlNを用いて、金属膜15に組み合わせてもよい。
【0034】
<ヒートシンク基板>
反射構造体4を構成する金属膜15の発光部3と反対側の面15bに、ヒートシンク基板5の接合面5aが接合されている。
ヒートシンク基板5の厚さは、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
ヒートシンク基板5の厚さが150μmより厚い場合には、発光ダイオードの製造コストが上昇して好ましくない。また、ヒートシンク基板5の厚さが50μmより薄い場合には、ハンドリング時に割れ、かけ、反りなどが容易に生じて、製造歩留まりを低下させるおそれが発生する。
【0035】
ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなる。
ヒートシンク基板1枚あたりの第1の金属層21と第2の金属層22の層数は、合わせて3〜9層とすることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。
第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて2層とした場合には、厚さ方向での熱膨張が不均衡となり、ヒートシンク基板5の割れが発生するおそれが発生する。逆に、第1の金属層21と第2の金属層22の層数を合わせて9層より多くした場合には、第1の金属層21と第2の金属層22の層の厚さをそれぞれ薄くする必要が生じる。第1の金属層21または第2の金属層22からなる単層基板を層の厚さを薄くして作製することは困難であり、各層の厚さを不均一にして、発光ダイオードの特性をばらつかせるおそれが発生する。さらに、層の厚さを薄くした前記単層基板は、容易に基板の割れを発生させる。さらにまた、前記単層基板の製造が困難であることから、発光ダイオードの製造コストを悪化させるおそれも生じる。
なお、第1の金属層21と第2の金属層22の層数は、合わせて奇数とすることがより好ましい。
【0036】
<第1の金属層>
第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であることが好ましい。これにより、ヒートシンク基板5の放熱性を高くして、発光ダイオード1を高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオード1の寿命を長寿命とすることができる。
【0037】
また、第1の金属層21は、その熱膨張係数が発光部3の熱膨張係数と略等しい材料からなることが好ましい。特に、第1の金属層21の材料が、発光部3の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内である熱膨張係数を有する材料であることが好ましい。これにより、接合時の発光部3への熱によるストレスを小さくすることができ、ヒートシンク基板5を発光部3と接続させたときの熱によるヒートシンク基板5の割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができる。
【0038】
たとえば、発光部3としてAlGaInP層(熱膨張係数=約5.3ppm/K)を用いた場合には、第1の金属層21としてモリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
また、モリブデンの熱伝導率は138W/m・Kであり、タングステンの熱伝導率は174W/m・Kであり、130W/m・K以上であった。
【0039】
第1の金属21の合計の厚さは、ヒートシンク基板5の厚さの10%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましく、25%以上35%以下であることが更に好ましい。第1の金属21の合計の厚さがヒートシンク基板5の厚さの45%を超える場合は、熱伝導率が高い第2の金属層22の効果が小さくなり、ヒートシンク機能が低下する。逆に、第1の金属21の厚さがヒートシンク基板5の厚さの10%未満の場合は、第1の金属21がほとんど機能せず、ヒートシンク基板5を発光部3と接続させたときの熱によるヒートシンク基板5の割れを抑制できない。つまり、第2の金属層22と発光部3との間の大きな熱膨張係数の差により、熱によるヒートシンク基板5の割れを発生させて、接合不良発生を招く場合が生じる。
特に、第1の金属層21としてモリブデンを用いた場合には、モリブデンの合計の厚さが、ヒートシンク基板5の厚さの15%以上45%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましく、25%以上35%以下であることが更に好ましい。
第1の金属層21の厚みは、10μm以上40μm以下とすることが好ましく、20μm以上30μm以下とすることがより好ましい。
【0040】
<第2の金属層>
第2の金属層22は、少なくとも第1の金属層21よりも熱伝導率が高い材料が好ましく、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることがより好ましい。これにより、ヒートシンク基板5の放熱性をより高くして、発光ダイオード1をより高輝度で発光させることができるとともに、発光ダイオード1の寿命をより長寿命とすることができる。
【0041】
第2の金属22としては、たとえば、銀(熱伝導率=420W/m・K)、銅(熱伝導率=398W/m・K)、金(熱伝導率=320W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率=236W/m・K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
第2の金属層22の厚みは、10μm以上40μm以下とすることが好ましく、20μm以上40μm以下とすることがより好ましい。
なお、第2の金属層22の厚みと第1の金属層21の厚みとは異なっていてもよい。さらに、ヒートシンク基板5が複数の第1の金属層21と第2の金属層22により形成される場合に、各層の厚みはそれぞれ異なっていてもよい。
【0042】
なお、ヒートシンク基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させる接合補助膜、または、ダイボンド用の共晶金属を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便に行うことができる。前記接合補助膜としては、Au、AuSnなどを用いることができる。
【0043】
なお、発光部3にヒートシンク基板5を接合する方法は、上記に記載した方法に限られるものではなく、たとえば、拡散接合、接着剤、常温接合方法など公知の技術を適用することもできる。
【0044】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、発光層2を含む発光部3にヒートシンク基板5が接合された発光ダイオード1であって、ヒートシンク基板5は、第1の金属層21と第2の金属層22とが交互に積層されてなり、第1の金属層21は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が発光部3の材料と略等しい材料からなり、第2の金属層22は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0045】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21の材料が、発光部3の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料である構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0046】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0047】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第2の金属層22が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなる構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0048】
本発明の実施形態である発光ダイオード1は、第1の金属層21がモリブデンからなり、第2の金属層22が銅からなり、第1の金属層21と第2の金属層22との層の数が合わせて3層以上9層以下とされている構成なので、放熱性に優れ、接合の際の基板の割れを抑制でき、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
第1の金属層21の位置に第2の金属層22を配置し、第2の金属層22の位置に第1の金属層21を配置しても良い。上記の実施形態の場合、第1の金属層21の位置に銅からなる層を配置し、第2の金属層22の位置にモリブデンからなる層を配置しても、同様の効果が得られる。
【0049】
<発光ダイオードの製造方法>
次に、本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法について説明する。
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、ヒートシンク基板の製造工程と、半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有する。
まず、ヒートシンク基板の製造工程について説明する。
【0050】
<ヒートシンク基板の製造工程>
ヒートシンク基板5は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、をホットプレスして形成する。
【0051】
まず、2枚の略平板状の第1の金属板21と、1枚の略平板状の第2の金属板22を用意する。たとえば、第1の金属板21としては厚さ25μmのMoを用い、第2の金属板22としては厚さ70μmのCuを用いる。
次に、図2(a)に示すように、前記2枚の第1の金属板21の間に前記第2の金属板22を挿入してこれらを重ねて配置する。
【0052】
次に、所定の加圧装置に前記基板を配置して、高温下で、第1の金属板21と第2の金属板22に矢印の方向に荷重をかける。これにより、図2(b)に示すように、第1の金属層21がMoであり、第2の金属層22がCuであり、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層からなるヒートシンク基板5を形成する。
ヒートシンク基板5は、たとえば、熱膨張係数が5.7ppm/Kとなり、熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0053】
なお、この後、発光部(ウェーハ)3の接合面の大きさに合わせて切断した後、表面を鏡面加工してもよい。
また、ヒートシンク基板5の接合面5aに、電気的接触を安定化させるため接合補助膜を形成してもよい。前記接合補助膜としては、金、白金、ニッケルなどを用いることができる。たとえば、まず、ニッケルを0.1μm成膜した後、前記ニッケル上に金を0.5μm成膜する。
さらにまた、前記接合補助膜の代わりに、ダイボンド用のAuSn等の共晶金属を形成してもよい。これにより、接合工程を簡便にすることができる。
【0054】
<発光部および第2の電極形成工程>
まず、図3に示すように、半導体基板11の一面11a上に、複数のエピタキシャル層を成長させてエピタキシャル積層体17を形成する。
半導体基板11は、エピタキシャル積層体17形成用基板であり、たとえば、一面11aが(100)面から15°傾けた面とされた、Siドープしたn型のGaAs単結晶基板である。このように、エピタキシャル積層体17としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、エピタキシャル積層体17を形成する基板として、砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いることができる。
【0055】
発光部3の形成方法としては、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxicy:MBE)法や液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxicy:LPE)法などを用いることができる。
【0056】
本実施形態では、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧MOCVD法を用いて、各層をエピタキシャル成長させる。
なお、Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエチルマグネシウム(bis−(C5H5)2Mg)を用いる。また、Siのドーピング原料にはジシラン(Si2H6)を用いる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)又はアルシン(AsH3)を用いる。
なお、p型のGaP層13は、例えば、750°Cで成長させ、その他のエピタキシャル成長層は、例えば、730°Cで成長させる。
【0057】
具体的には、まず、半導体基板11の一面11a上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層12aを成膜する。緩衝層12aとしては、例えば、Siをドープしたn型のGaAsを用い、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を0.2μmとする。
次に、緩衝層12a上に、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるコンタクト層12bを成膜する。
次に、コンタクト層12b上に、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層10aを成膜する。
次に、クラッド層10a上に、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなる発光層2を成膜する。
次に、発光層2上に、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるクラッド層10bを成膜する。
次に、クラッド層10b上に、Mgドープしたp型のGaP層13を成膜する。
【0058】
次に、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13aを、表面から1μmの深さに至るまで鏡面研磨して、表面の粗さを、たとえば、0.18nm以内とする。
次に、図4に示すように、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13a上に第2の電極(オーミック電極)8を形成する。第2の電極8は、たとえば、0.4μmの厚さのAuBe上に0.2μmの厚さのAuが積層されてなる。第2の電極8は、たとえば、平面視したときに20μmφの円形状であり、60μmの間隔で形成される。
【0059】
<反射構造体形成工程>
次に、図5に示すように、p型のGaP層13の半導体基板11と反対側の面13aおよび第2の電極8を覆うようにITO膜からなる透明導電膜14を形成する。次に、450℃の熱処理を施して、第2の電極8と透明導電膜14との間にオーミックコンタクトを形成する。
【0060】
次に、図6に示すように、透明導電膜14のエピタキシャル積層体17と反対側の面14aに、蒸着法を用いて、銀(Ag)合金からなる膜を0.5μm成膜した後、タングステン(W)、白金(Pt)を各0.1μm、金(Au)を0.5μm、AuGe共晶金属(融点386℃)を1μm成膜して、金属膜15とする。
これにより、金属膜15と透明導電膜14とからなる反射構造体4が形成される。
【0061】
<ヒートシンク基板接合工程>
次に、反射構造体4とエピタキシャル積層体17とを形成した半導体基板11と、前記ヒートシンク基板の製造工程で形成したヒートシンク基板5と、を減圧装置内に搬入して、反射構造体4の接合面4aとヒートシンク基板5の接合面5aとが対向して重ねあわされるように配置する。
次に、前記減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、半導体基板11とヒートシンク基板5とを400℃に加熱した状態で、100g/cm2の加重を印加して反射構造体4の接合面4aとヒートシンク基板5の接合面5aと接合して、接合構造体18を形成する。
【0062】
<半導体基板および緩衝層除去工程>
次に、図8に示すように、接合構造体18から、半導体基板11及び緩衝層12aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。これにより、発光層2を有する発光部3が形成される。
【0063】
<第1の電極形成工程>
次に、真空蒸着法を用いて、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aに電極用導電膜を成膜する。前記電極用導電膜としては、例えば、AuGe/Ni/Auからなる金属層構造を用いることができる。たとえば、AuGe(Ge質量比12%)を0.15μmの厚さで成膜した後、Niを0.05μmの厚さで成膜し、さらにAuを1μmの厚さで成膜する。
次に、一般的なフォトリソグラフィー手段を利用して、前記電極用導電膜を平面視円形状にパターニングして、n型オーミック電極(第1の電極)6として、図1に示す発光ダイオード1を作製する。
【0064】
なお、この後、例えば、420°Cで3分間熱処理を行って、n型オーミック電極(第1の電極)6の各金属を合金化することが好ましい。これにより、n型オーミック電極(第1の電極)6を低抵抗化することができる。
【0065】
なお、発光ダイオードを所望の大きさに区画する切断部分の発光部3をエッチングで除去した後、0.8mmピッチでレーザを用いて、前記切断部分の基板と接続層を所望の大きさの発光ダイオードチップ(LEDチップ)に切断する。発光ダイオードの大きさは、たとえば、平面視したときに略矩形状の発光部3の対角線の長さを1.1mmとする。その後、発光部3の露出面を粘着シートで保護して、切断面を洗浄する。
【0066】
本発明の発光ダイオードによれば、発光ダイオードにヒートシンク基板を接合する構成なので、高電流域においても、高い発光効率が得られている。
【0067】
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、半導体基板11に緩衝層12aを介して発光層2を含む発光部3を形成した後、発光部3の半導体基板11と反対側の面13aに第2の電極8を形成する工程と、発光部3の半導体基板11と反対側の面13aに第2の電極8を介して反射構造体4を形成する工程と、発光部3に反射構造体4を介してヒートシンク基板5を接合する工程と、半導体基板11および緩衝層12aを除去する工程と、発光部3のヒートシンク基板5と反対側の面3aに第1の電極6を形成する工程と、を有する構成なので、接合の際の基板の割れを抑制して、高電圧を印加して、放熱性に優れ、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【0068】
本発明の実施形態である発光ダイオードの製造方法は、ヒートシンク基板5を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層21と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層22と、を高温下で圧着して形成する構成なので、接合の際の基板の割れを抑制して、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることのできる発光ダイオードを製造できる。
【0069】
<発光ダイオードランプ>
本発明の実施形態である発光ダイオードランプについて説明する。
図9は、本発明の実施形態である発光ダイオードランプの一例を示す断面模式図である。図9に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオードランプ40は、パッケージ基板45と、パッケージ基板45上に形成された2つの電極端子43、44と、電極端子44上に搭載された発光ダイオード1と、発光ダイオード1を覆うように形成されたシリコンなどからなる透明樹脂(封止樹脂)41と、を有している。
発光ダイオード1は、発光部3と反射構造部4とヒートシンク基板5と第1の電極6と第2の電極8を有しており、ヒートシンク基板5が電極端子43と接続されるように配置されている。また、第1の電極6と電極端子44とはワイヤーボンディングされている。電極端子43、44に印加された電圧が、第1の電極6と第2の電極8を介して発光部3に印加され、発光部3に含まれる発光層が発光する。発光された光は、正面方向fに取り出される。
【0070】
パッケージ基板45は、その熱抵抗が10℃/W以下とされている。これにより、発光層2に1W以上の電力を加えて発光させたときでも、ヒートシンクとして機能させることができ、発光ダイオード1の放熱性をより高めることができる。
なお、パッケージ基板の形状は、これに限定されず、他の形状のパッケージ基板を用いてもよい。他の形状のパッケージ基板を用いたLEDランプ製品においても、放熱性を十分確保できるので、高出力、高輝度の発光ダイオードランプとすることができる。
【0071】
本発明の実施形態である発光ダイオードパッケージ40は、発光ダイオード1と、発光ダイオード1を搭載するパッケージ基板45とを有する発光ダイオードランプ40であって、パッケージ基板45の熱抵抗が10℃/W以下である構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0072】
本発明の実施形態である発光ダイオードパッケージ40は、発光ダイオード1の発光層2に1W以上の電力を加えて発光させる構成なので、放熱性に優れ、高電圧を印加して、高輝度で発光させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す図である。
図10に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)51は、ヒートシンク基板5の代わりにヒートシンク基板55が用いられたほかは第1の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0074】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)51は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板55と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板55は、第1の金属層21としてMoが用いられ、第2の金属層22としてCuが用いられ、Mo(1μm)/Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)/Mo(1μm)の5層構造基板(厚さ127um)が用いられている。
【0075】
ヒートシンク基板55の製造方法について説明すると、第1の実施形態で示したヒートシンク基板の製造方法を用いて、まず、Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)の3層構造基板を製造した後、スパッタ法により、前記3層構造基板の両面にMoを1μmの厚さで成膜して、5層構造からなるヒートシンク基板55を形成する。なお、ヒートシンク基板55の熱膨張係数は、6.6ppm/K、熱伝導率は230W/m・Kとなる。
【0076】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の実施形態である発光ダイオードのさらに別の一例を示す図である。
図11に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)52は、ヒートシンク基板5の代わりにヒートシンク基板56が用いられたほかは第1の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0077】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)52は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板56と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板56は、第1の金属層21としてMoが用いられ、第2の金属層22としてCuが用いられ、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造基板(厚さ85um)が用いられている。
【0078】
ヒートシンク基板56の製造方法について説明すると、第1の実施形態で示したヒートシンク基板の製造方法を用いて、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造からなるヒートシンク基板56を製造する。なお、ヒートシンク基板56の熱膨張係数は、6.1ppm/K、熱伝導率は250W/m・Kとなる。
【0079】
(第4の実施形態)
図12は、本発明の実施形態である発光ダイオードの別の一例を示す図である。
図12に示すように、本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)53は、反射構造体4の側面4dおよびヒートシンク基板56の側面56dおよび底面56eを覆うように金属積層膜25が形成されたほかは第3の実施形態と同様の構成とされている。なお、第1の実施形態で示した部材と同一の部材については同一の符号を付して示している。
【0080】
本発明の実施形態である発光ダイオード(LED)53は、発光層(図示略)を含む発光部3と、反射構造体4を介して発光部3に接合されたヒートシンク基板56と、を有している。また、発光部3の反射構造体4と反対側の面3aには第1の電極6が備えられており、発光部3の反射構造体4側の面3bには第2の電極8が備えられている。
ヒートシンク基板56の発光部3と反対側の面(底面)56bが銅からなり、ヒートシンク基板56の底面56bと側面56d及び反射構造体4の側面4dとを覆うようにNi層とAu層とからなる金属積層膜25が形成されている。金属積層膜25を形成することにより、放熱性を高めることができる。
なお、Ni層およびAu層の成膜方法としてはメッキ法などを用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
まず、第1の実施形態に示した方法を用いて、Mo(25μm)/Cu(70μm)/Mo(25μm)の3層構造からなる実施例1のヒートシンク基板を形成した。なお、ヒートシンク基板の接合面には、Pt(0.1μm)/Au(0.5μm)を成膜した。実施例1のヒートシンク基板の熱膨張係数は5.7ppm/Kであり、熱伝導率は220W/m・Kであった。
【0082】
次に、第1の実施形態に示した方法を用いて、発光部と反射構造体を形成するとともに、これに前記ヒートシンク基板を接合して、実施例1の発光ダイオードを作製した。
コンタクト層12bは、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を1.5μmとした。クラッド層10aは、Siをドープしたn型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を1μmとした。発光層2は、アンドープの(Al0.2Ga0.8)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの10対の積層構造からなり、層厚を0.8μmとした。クラッド層10bは、Mgをドープしたp型の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を2×1017cm−3とし、層厚を1μmとした。また、GaP層13は、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を3×1018cm−3とし、層厚を3μmとした。
さらに、第1の電極は、AuGe/Ni/Auの積層構造として形成し、第2の電極は、AuBe/Auの積層構造とした。また、反射構造体としては、ITOからなる透明導電膜と、Ag合金/W/Pt/Au/AuGeからなる積層構造とした。
実施例1の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約65lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0083】
(実施例2)
まず、第2の実施形態に示した方法を用いて、Mo(1μm)/Cu(50μm)/Mo(25μm)/Cu(50μm)/Mo(1μm)の5層構造(厚さ127um)からなる実施例2のヒートシンク基板を製造した。
実施例2のヒートシンク基板の熱膨張係数は6.6ppm/Kであり、熱伝導率は230W/m・Kであった。
【0084】
次に、実施例2のヒートシンク基板を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例2の発光ダイオードを作製した。
実施例2の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約69lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0085】
(実施例3)
まず、第3の実施形態に示した方法を用いて、Cu(30μm)/Mo(25μm)/Cu(30μm)の3層構造(厚さ85μm)からなる実施例3のヒートシンク基板を製造した。
実施例3のヒートシンク基板の熱膨張係数は6.1ppm/Kであり、熱伝導率は250W/m・Kであった。
【0086】
次に、実施例3のヒートシンク基板を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例3の発光ダイオードを作製した。
実施例3の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。約71lm/Wの高い発光効率が得られた。このとき、発光ダイオードは、ヒートシンク基板の効果により、温度上昇による効率低下がなかった。
【0087】
(比較例1)
ヒートシンク基板としてSi基板を用いたほかは実施例1と同様にして、比較例1の発光ダイオードを作製した。なお、Si基板の熱膨張係数は3ppm/Kであり、熱伝導率は126W/m・Kであった。
比較例1の発光ダイオードに2.4V印加し、500mA通電して、主波長620nmの赤色発光をさせた。このとき、比較例1の発光ダイオードの発光効率は、温度上昇により低下して、約49lm/Wであった。また、10枚投入したウェーハの内4枚が生産工程で割れてしまった。つまり、割れ率(ウェーハ割れ率)は40%で、生産性に課題があることが分かった。こ
【0088】
(比較例2)
ヒートシンク基板としてCu基板を用いたほかは実施例1と同様にして、比較例2の発光ダイオードを作製した。実施例1と同様に、発光部と反射構造体を形成した後、これに前記ヒートシンク基板を接合したとき、全てのウェーハに割れが生じた。Cu基板は、熱膨張係数が大きい為、割れたと考えられる。
【0089】
(比較例3、4,5)
上記実施例1〜3、比較例1、2と同様にして、表1に示すヒートシンク基板を有する発光ダイオードを製造した。
実施例1〜3、比較例1〜5の発光ダイオードについて、ウェーハの割れ、および、発光効率(電流値500mA時)を調べ、表1にまとめた。
表1に示すように、比較例3〜5の発光ダイオードは、割れは発生しなかった、しかし、比較例3〜5の発光ダイオードのヒートシンク基板の熱伝導率は小さく、比較例3〜5の発光ダイオードの発光効率は、温度上昇により低下した。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の発光ダイオードは、放熱特性を向上させて、従来にない高輝度で発光させる各種の表示ランプ、照明器具等に利用でき、前記表示ランプ、前記照明器具等を製造・利用する産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0092】
1…発光ダイオード(発光ダイオードチップ)、2…発光層、3…発光部、3a…反射構造体と反対側の面、3b…反射構造体側の面、4…反射構造体、5…ヒートシンク基板、5a…接合面、5b…接合面と反対側の面、6…第1の電極、8…第2の電極、8b…発光部と反対側の面、11…半導体基板(エピタキシャル成長用基板)、11a…結晶成長面、10a、10b…クラッド層、12a…緩衝層、12b…コンタクト層、13…GaP層、13a…半導体基板と反対側の面、14…透明導電膜、15…金属接合膜、15b…発光部と反対側の面、17…エピタキシャル積層体、21…第1の金属層、22…第2の金属層、25…金属積層膜、40…発光ダイオードランプ、41…樹脂、43、44…電極端子、45…基板、46…ワイヤー、51、52、53…発光ダイオード(発光ダイオードチップ)、55、56…ヒートシンク基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、
前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、
前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、
前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記第1の金属層の材料が、前記発光部の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記第1の金属層が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記第2の金属層が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第2の金属層が銅からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層との層の数が合わせて3層以上9層以下とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第1の金属層の合わせた厚さが、前記ヒートシンク基板の厚さの15%以上45%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記発光部と前記ヒートシンク基板との間に反射構造体が備えられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記発光層が、AlGaInP層またはAlGaAs層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記発光層が、平面視したときに対角線の長さが1mm以上の略矩形状であり、前記発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項10】
前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面が銅からなり、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面と側面とを覆うように金属積層膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下であることを特徴とする発光ダイオードランプ。
【請求項12】
前記発光ダイオードの発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする請求項11に記載の発光ダイオードランプ。
【請求項13】
半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、
前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、
前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、
前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、
前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記ヒートシンク基板を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、を高温下で圧着して形成することを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項1】
発光層を含む発光部にヒートシンク基板が接合された発光ダイオードであって、
前記ヒートシンク基板は、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなり、
前記第1の金属層は、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部の材料と略等しい材料からなり、
前記第2の金属層は、熱伝導率が230W/m・K以上である材料からなることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記第1の金属層の材料が、前記発光部の熱膨張係数の±1.5ppm/K以内となる熱膨張係数を有する材料であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記第1の金属層が、モリブデン、タングステンまたはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記第2の金属層が、アルミニウム、銅、銀、金またはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第2の金属層が銅からなり、前記第1の金属層と前記第2の金属層との層の数が合わせて3層以上9層以下とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記第1の金属層がモリブデンからなり、前記第1の金属層の合わせた厚さが、前記ヒートシンク基板の厚さの15%以上45%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記発光部と前記ヒートシンク基板との間に反射構造体が備えられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記発光層が、AlGaInP層またはAlGaAs層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記発光層が、平面視したときに対角線の長さが1mm以上の略矩形状であり、前記発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項10】
前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面が銅からなり、前記ヒートシンク基板の前記発光部と反対側の面と側面とを覆うように金属積層膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光ダイオードと、前記発光ダイオードを搭載するパッケージ基板とを有する発光ダイオードランプであって、前記パッケージ基板の熱抵抗が10℃/W以下であることを特徴とする発光ダイオードランプ。
【請求項12】
前記発光ダイオードの発光層に1W以上の電力を加えて発光させることを特徴とする請求項11に記載の発光ダイオードランプ。
【請求項13】
半導体基板に緩衝層を介して発光層を含む発光部を形成した後、前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に第2の電極を形成する工程と、
前記発光部の前記半導体基板と反対側の面に前記第2の電極を介して反射構造体を形成する工程と、
前記発光部に前記反射構造体を介してヒートシンク基板を接合する工程と、
前記半導体基板および前記緩衝層を除去する工程と、
前記発光部の前記ヒートシンク基板と反対側の面に第1の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記ヒートシンク基板を、熱伝導率が130W/m・K以上であって、熱膨張係数が前記発光部と略等しい第1の金属層と、熱伝導率が230W/m・K以上の第2の金属層と、を高温下で圧着して形成することを特徴とする請求項13に記載の発光ダイオードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−192701(P2010−192701A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35710(P2009−35710)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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