説明

発光ダイオードの製造方法

【課題】フォトニック結晶構造を備えた発光ダイオードの製造方法の提供。
【解決手段】キャリア20と、III−窒化物材料からなる活性層構造18と、III−窒化物材料からなるフォトニック結晶構造19とを備え、活性層構造18は、n型ドープ層8およびp型ドープ層9および適切には量子井戸構造を持つ第1活性層を備える。フォトニック結晶構造19は、周期的に分布した溝、または周期的に分布し、1つ又はそれ以上の溝によって間隔があいた柱を備える。フォトニック結晶構造19は、内部において溝の直径が徐々に増加している過成長層6と、溝の直径がほぼ一定である方向性フォトニック結晶層4,5とを含む。ダイオード100は、方向性フォトニック結晶構造19が、基板の第1表面の選択したエリアを露出する3次元パターンに設けられるような方法で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶構造を備えた発光ダイオードの製造方法に関するものであり、下記のステップを含む。
・基板に第1表面を設けるステップ。
・周期的に分布した第1エリアを含むパターンを、前記第1表面に付与するステップ。
・エピタキシャル横方向成長(ELOG: epitaxial lateral overgrowth)を用いて、III−窒化物材料からなる少なくとも1つの層を成長させるステップ。
・n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含む、III−窒化物材料からなる活性層構造を成長させるステップ。
・基板を除去し、基板表面に付与したパターンに対応したパターンを持つフォトニック結晶構造を生成するステップ。
【0002】
本発明はまた、この方法で製造した発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0003】
III−窒化物材料をベースとした発光ダイオード(GaN LED)が、重要な研究課題である。III−窒化物材料は、特に、窒化ガリウム(GaN)およびより高次の合金、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)などである。これらの材料は、青色発光ダイオードとして使用できる。
【0004】
第1および第2活性層を備えた半導体材料での光の発生は、それ自体知られており、ある電圧の印加時に活性層中の電荷キャリアが再結合してフォトンを発生する。しかしながら、発生したフォトンが材料から出発できることが必要である。この課題は、放射光が放射モードではなく半導体内部の導波モードに入ることである。半導体内部で発生した光が、全内部反射に起因して跳ね返り、光が半導体材料から脱出できる前に吸収される確率が高くなる。この課題を低減する1つの方法が、反射防止コーティングおよび凹凸付き表面の適用をベースとしている。
【0005】
この課題を低減する代替の方法が、フォトニック結晶の設置であり。より的確にはフォトニック結晶構造である。こうしたフォトニック結晶構造が、典型的には、周期的に分布した孔または溝が設けられた、誘電体層または誘電体層スタックとして設計される。周期的な分布は、例えば、三角形アレイである。これにより光などの電磁波が3次元の小さな空間内に閉じ込め可能である。従って、こうした小さな空間を規定するフォトニック結晶は、発光を改善し、光を案内したりできる。GaN LEDの外部量子効率は、しばしば10%近くであるため、フォトニック結晶の形成はGaN LEDの効率を相当に改善できる。ここで、外部量子効率は、内部量子効率と取り出し効率の積である。この効率改善は、半導体材料からの導波モードの散乱に起因した、大きく修正された放射パターンに起因すると考えられる。
【0006】
フォトニック結晶構造の周期的に分布した溝は、典型的にはドライエッチングによって規定される。この製造プロセスは、極端に硬く化学的に不活性である材料のエッチングの困難さによって複雑になる。それは、必然的に不完全さをもちらし、面外(out-of-plane)光学損失を生じさせる。
【0007】
米国特許第7642108号は、フォトニック結晶構造を備える、こうしたGaN LEDを製造する改善した方法を開示する。この方法は、エピタキシャル横方向成長(ELOG)との組合せで、基板移送(transfer)プロセスを使用する。それ自体知られているように、成長がパターン化したテンプレートから開始する場合、GaNは横方向に成長する能力を有する。米国特許第7642108号の方法は、マスクの形式で基板表面にパターンを設けている。マスクは、ELOGを用いて過成長(overgrown)している。そこでは、横方向成長は、減少した欠陥密度で成長した層を生じさせることが判る。従って、マスクの場所においてGaNまたはAlGaN材料が比較的低い欠陥密度で形成される。別の場所、即ち、成長が開始した場所では、半導体材料は比較的高い欠陥密度で形成される。その後、活性層構造が成長する。この活性層構造は、n型ドープである第1活性層と、p型ドープである第2活性層とを備える。この成長および、それ自体当業者に知られているように、上部電極層と保護層の設置の後、基板移送プロセスが実行される。そこで、キャリアが上面に取り付けられ、元の基板が、例えば、研削(grinding)およびエッチングによって除去される。これによりELOGで成長した層は露出する。ここで、米国特許第7642108号の方法はエッチングを続行し、高い欠陥密度を有するエリアが除去される。このエッチングは、同じパターンに従って活性層構造を通じて続行する。多分、これは望ましいことである。比較的高い欠陥密度を持つエリア上に成長した活性層の品質は、比較的低い欠陥密度を持つエリア上に成長した活性層の品質よりかなり低くなると考えられるためである。エッチングは、キャリアに達するまて続行してもよいが、これは必須ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第7642108号から知られた方法の不具合は、III−窒化物材料の層を通過するエッチングを行うことが必要である点である。上述したように、このエッチングは困難であり、塩素ベースのプラズマなど激しいエッチャントを必要とする。それは、III−窒化物材料の層をかなり損傷するであろう。ELOGで形成した層だけでなく、活性層構造もエッチングされるため、このことは得られるデバイスの信頼性に対する悪影響を有するであろう。
【0009】
本発明の第1の目的は、改善した製造方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、改善したデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の目的に従って、本発明は、フォトニック結晶構造を備えた、少なくとも1つの発光ダイオードを製造する方法を提供するものであり、下記のステップを含む。
・基板に、III−窒化物材料の成長に適した第1表面を設けるステップ。
・周期的に分布した第1エリアおよび、前記第1エリアを空間的に制限する少なくとも1つの第2エリアを含むパターンを、前記第1表面に付与するステップ。このパターンは、空洞および突起を用いて実現され、そのうちの1つは第1表面を露出させる。
・第1ステップにおいて、第1表面が第1エリア内で露出している場合は、ほぼ第1エリア内で第1表面の上にIII−窒化物材料からなるフォトニック結晶柱(pillar)を成長させ、第1表面が少なくとも1つの第2エリア内で露出している場合は、ほぼ少なくとも1つの第2エリア内で第1表面の上にIII−窒化物材料からなる少なくとも1つのフォトニック結晶層を成長させる。
・第2ステップにおいて、第1エリアおよび少なくとも1つの第2エリアの両方において、エピタキシャル横方向成長(ELOG: epitaxial lateral overgrowth)を用いて、III−窒化物材料からなる過成長(overgrowth)層を成長させる。
・第3ステップにおいて、n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含む、III−窒化物材料からなる活性層構造を成長させるステップ。
・フォトニック結晶構造の形成のために、過成長層および、フォトニック結晶柱またはフォトニック結晶層のいずれかから、基板を少なくとも部分的に除去するステップ。
【0011】
基板表面上にパターンを単に設けるのではなく、3次元パターンを基板の中または上に設けることによって、先行技術において必須であったエッチング工程が省略できる。また、基板と過成長層との間にあるフォトニック結晶の存在(柱または溝付き層として)は、成長が開始した場所に対応するエリアにおける過成長層の品質を改善する傾向があることが判る。これは、特に、フォトニック結晶のほぼ閉じ込め形状が、いくらかの横方向成長が存在することを排除しないことによって達成され、その結果、中間溝の幅が減少する。そして、全体として過成長がより緩やかに生ずる。
【0012】
簡単にするため、フォトニック結晶は、柱または溝付き層として実現されており、以下、方向性フォトニック結晶層とも称している。
【0013】
適切には、フォトニック結晶は、フォトニック結晶柱の間に1つ又はそれ以上の溝が設けられ、あるいは前記フォトニック結晶層に溝が設けられる。溝は、過成長層の中に延びており、ほぼ第1エリアまたはほぼ少なくとも1つの第2エリアにおいて第1ステップでの成長から由来する。溝は、テンプレート層の除去によって、第1ステップ中または第1ステップ後に形成してもよい。代替として、溝は、第1ステップの際、第1エリアまたは第2エリアにおいて選択的かつ方向性の成長から由来するとも言える。第1ステップの終わりに、これらの溝は、空でもよく、あるいは、特にパターンを規定するために使用したテンプレート層で充填または部分充填されてもよい。
【0014】
一実施形態では、3次元パターンは、パターンを基板中に転写することによって作成してもよい。これは、例えば、エッチングによって行われ、これにより空洞を作成する。そして、第1表面は、突起の上部において露出しており、事実上、第1表面は、それが存在する限り露出している。空洞は、典型的には溝状の形状を有し、好ましくは側面を有し、その上でのIII−窒化物材料の成長が部分的または完全に抑制される。また空洞は、III−窒化物材料の成長が抑制される底面を有してもよい。しかしながら、突起の充分な高さおよび突起間の充分な距離がある場合、これは必須ではない。
【0015】
代替の実施形態において、3次元パターンは、基板の上部でのテンプレート層の設置によって作成される。これは、例えば、酸化物層、例えば、熱酸化物などであり、これは後でパターン化される。他の材料を代替または追加で使用してもよい。下記の基準は、こうした材料の選択にとって重要である。即ち、これらはIII−窒化物材料のエピタキシャル成長のための成長温度に耐えられること。これらの表面でのIII−窒化物材料の成長がほぼ完全に抑制されること。III−窒化物材料に対して選択的に材料除去が実施可能であること。従って、酸化物材料が最も適切に出現するが、他の材料および異なる材料を持つ層スタックは排除されない。一実施例では、テンプレート層は、過成長層の成長前に除去される。他の実施例では、テンプレート層は、基板の除去後に除去される。
【0016】
3次元パターンの形成後、III−窒化物材料の成長は、3つの主要なステップにおいて生ずる。第1ステップでは方向性成長が生じ、第2ステップでは過成長が生じ、第3ステップでは活性層構造が形成される。第1ステップは、横方向成長速度が減少し、典型的には完全にまたは大幅に抑制されている点で、第2ステップと相違する。第2ステップと第3ステップの間に追加のステップを実行して、遷移層を設けてもよい。
【0017】
各ステップが異なるまたは等しい組成を有する異なる層の成長を含んでもよいことが明確に判る。しかしながら、途中で基板を反応器から除去することなく、反応チャンバの組成を変化させることによって、組成変化を適用することが好ましい。第1、第2、第3ステップを連続的に、即ち、反応チャンバから基板の途中除去なしで、実行することが最も好ましい。さらに、1つの層(例えば、過成長層)の上部における層組成が、後続の層の底部での層組成と類似していることは適切である。
【0018】
第1ステップの一実施形態において、方向性フォトニック結晶層は、AlN,AlGaN,AlInGaNのグループから選択され、少なくとも25%のAl含量を持つ材料を含む。これらの材料は、方向性成長を好み、即ち、横方向成長に対して垂直成長とも称される。さらに、より多くのAl含量は、より均一な誘電率をもたらす。GaNが異方性誘電特性を有することが知られており、これは、均一な特性を持つフォトニック結晶構造を得るためには不都合である。AlNは、この異方性を有していない。適切には、方向性フォトニック結晶層は、AlGa1−xN(Alモル比xが0.25≦x≦1)を含む。方向性フォトニック結晶層は、異なるAlモル比を有する複数層を含んでもよく、あるいは、シリコンとの界面で最も高いAl比を持つ、段階的なAlモル比を有する単一層を含んでもよい。好ましくは、シリコンの上に位置し、これと接触するAlN(x=1)が最初に成長する。その後、一定または段階的なAlモル比を持つAlGa1−xN層(0.25≦x<1)が成長する。
【0019】
第2ステップにおいて、溝は過成長する。ここで、溝の直径が、過成長層の底部から上部へ行くにつれて減少する。第2ステップの好ましい実施形態では、ELOGプロセスでの横方向成長速度は制御される。この制御は、溝の形状を調整したり、過成長層の厚さおよび品質を特定するのに有益であると考えられる。過成長層は、実際上、活性層構造に最も近接したフォトニック結晶構造の一部を構成することなる。従って、この層は最小の欠陥で成長することが重要である。さらに、溝の形状は、活性層構造からフォトニック結晶構造への光の大きな外部結合(outcoupling)を可能するように最適化されることが重要である。
【0020】
いろいろなオプションが横方向成長速度を制御するために利用できる。第1オプションでは、過成長層は、アルミニウムを5〜25%のモル比で含み、即ち、AlGa1−xN(0.05≦x≦0.25)を含む。代替または追加で、横方向成長は、Siドーピングを用いて制御される。追加のオプションは、文献(Nano lett. 6, 1808 (2006))から知られているように、エピタキシャル成長プロセスの際、代替として反応チャンバでの前駆体の供給である。前駆体は、例えば、アンモニア(NH)、テトラメチルガリウム(TMGa)、テトラエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムである。当業者に知られているような他の前駆体を供給してもよい。横方向成長速度は、一定でも可変でもよいことが判る。適切な実施形態が、横方向成長速度が底部から上部へいくにつれて増加するものである。その変化は、徐々にでもよく、階段状でもよい。
【0021】
こうして形成された、減少する直径を持つ溝の上部セクションは、以下、溝の先端(tip)および、フォトニック結晶構造の周期的に分布した溝の先端と称している。用語「先端(tip)」は、溝の上部が鋭い先端であると解釈すべきでなく、典型的には上部は丸みを帯びるようになる。適切には、先端は、断面図で見た場合、溝の一次配向に対して60度未満の角度を含む側壁を含む。より好ましくは、この角度は、45度未満であり、例えば、15〜40度である。この角度は、本発明の本実施形態によれば、側壁での単一ポイントで存在しているだけでない。代わりに、平均して前記角度を含む過成長層での第1高さと第2高さとの間に側壁の一部が存在する。好ましくは、第1高さと第2高さとの間の距離は、過成長層の厚さの半分より大きい。好ましくは、第1高さと第2高さとの間の角度変化は、好ましくは20度未満である。
【0022】
第2ステップ後で第3ステップ前に、遷移層を過成長層と活性層構造との間に成長させてもよい。この層は、一方で、過成長層と活性層構造との間の組成変化の調整を可能にしており、例えば、n型ドーピングを含む。さらにこの遷移層は、特に、量子井戸構造を含む活性層構造とフォトニック結晶構造との間の距離を規定している。活性層構造からの光の外部結合に対するフォトニック結晶構造の効果は、典型的には、両者間の距離とともに減少する。従って、遷移層の厚さを設定することは、外部結合量をも規定している。適切には、遷移層は、2.0ミクロン未満の厚さを有し、より好ましくは1.0ミクロン未満であり、好ましくは少なくとも0.25ミクロン、より好ましくは少なくとも0.5ミクロンの厚さを有する。それは、方向性フォトニック結晶層と比べて比較的薄い方が好ましい。先端を有する溝が存在する場合、遷移層の厚さは、先端と活性層構造との間として測定される。
【0023】
第3ステップは、活性層構造の形成を含む。好ましい実施形態では、量子井戸が設けられる。量子井戸自体は知られている。一実施形態では、量子井戸が、第1材料および第2材料の交互層からなる層スタックの堆積によって形成される。層は、典型的には薄く、例えば、10nm未満であり、好ましくは1〜7nmの範囲である。GaN LEDの状況において、周知の組合せが、GaNの第1材料およびInGaNの第2材料である。しかしながら、代替の組合せが排除されない。量子井戸構造は、接合効率の改善に起因して高い放射効率を有するため、好都合である。この改善は、作用反作用でのキャリア閉じ込めおよび低減したキャリア漏れに起因する考えられる。さらに、バルク材料と比較すると、量子井戸構造では表面再結合があまり重要でない。
【0024】
好ましくは、多重量子井戸が利用される。それは、単一量子井戸より大きな体積を有し、より高い光出力が可能になるためである。典型的には、交互の半導体層の堆積に起因して、量子井戸構造は、超格子構造として実現される。その結果、バンドギャップの修正をもたらす。多重量子井戸と比較して、超格子は、薄いバリアを有し、そのため、井戸間のトンネル現象が発生でき、超格子面に対して垂直な方向に沿ったキュリア輸送が起こる。その結果、より均一なキャリア分布が得られる。
【0025】
GaN LEDにおける量子井戸は、一実施形態では、p型ドープ領域とn型ドープ領域との間に中間領域を含む。この中間領域は、真性ドープでもよく、p−i−nダイオード構造が得られる。代替として、中間領域は、例えば、Siを用いてドープしてもよい。
【0026】
フォトニック結晶の使用は、量子井戸構造との組合せで特に有益であり、複数の面および限定された体積が、放射光輸送の導波モードを強化する傾向があるためである。本発明は、量子井戸構造を通るエッチングを行う必要がない。複数の層の観点から、量子井戸構造を通るこうしたエッチングは、極めて容易に損傷を生じさせる。
【0027】
好ましくは、基板は、ハンドリングウエハと、埋め込み層と、上部層とを備える。パターンは、前記上部層に転写され、基板の除去は、ハンドリングウエハおよび埋め込み層の除去を含む。こうした基板の重要な一例は、SOI、即ち、シリコン・オン・インシュレータ基板である。SOI基板の上部層は、適切には、(111)配向を持つシリコン基板であるが、(001)配向および(110)配向も除外されず、III−窒化物材料の層は、その上にきれいに成長できることが判明した。シリコン上部層は、先行技術として知られているように、エッチングによってパターン化してもよい。またパターニングは、シリコン基板とIII−窒化物材料との間の応力を低減する傾向がある。さらに結晶品質も改善できる。適切な実施例では、パターンは、埋め込み層、特に埋め込み絶縁層にさらに転写される。Si,SiO,III−窒化物のウェット化学エッチングでの選択性のため、埋め込み絶縁層は、リフトオフプロセスにおける基板の除去を促進する。このリフトオフプロセスを用いることによって、ウエハ研削(grinding)または裏面化学エッチングを回避できる。さらに、こうしたリフトオフプロセスは、ハンドリングウエハが再利用可能であるという利点を有する。
【0028】
更なる実施例では、パターン化した上部層は、比較的薄く、例えば、1ミクロン未満、好ましくは、多くて100nmまたは多くて20nmである。減少した厚さは、上部層の側面でのIII−窒化物材料の成長が最小化されるという利点を有する(側面でのこうした成長は、露出した結晶表面の異なる配向に起因して制限されているが)。減少した厚さはまた、上部層は、その光学透明性に起因して、エッチングによる除去を要しないという利点を有する。それ自体知られているように、シリコンは、極めて薄い場合、透明になる。しかしながら、シリコン層は、例えば、エッチングによって除去してもよい。シリコン上部層を除去することは、フォトニック結晶の特性を改善すると思われる。シリコン内の放射が減少するというリスクを低減するためである。知られているように、シリコンは1.1eVのバンドギャップを有し、青色光は2.5eVの入射を有する。
【0029】
本発明の第2態様によれば、半導体本体が用意される。本体には、III−窒化物材料の成長に適した第1表面を備えた基板が設けられ、前記第1表面にはパターンが付与されている。このパターンは、周期的に分布した第1エリアおよび、前記第1エリアを空間的に制限する少なくとも1つの第2エリアを含む。このパターンは、空洞および突起を用いて実現され、そのうちの1つは第1表面を露出させる。III−窒化物材料からなる複数のフォトニック結晶柱またはフォトニック結晶層が、基板の露出した第1表面に存在している。必要に応じて、充填または部分充填された溝が、フォトニック結晶柱の間またはフォトニック結晶層内に存在している。III−窒化物材料からなる過成長層内で、前記溝が過成長する。
【0030】
この本体は、本発明の方法の中間生産物である。溝は、一実施形態では、テンプレート層で充填され、これは第1表面に付与されるパターンを規定する。代替かつ好ましい実施形態では、基板は、溝を通じて分離した第1表面を持つ層部分を有する、パターン化した半導体上部層を備える。それぞれIII−窒化物材料からなるフォトニック結晶層またはフォトニック結晶柱は、第1表面上に存在する。よって、半導体上部層中の前記溝は、フォトニック結晶層を通って、またはフォトニック結晶柱の間に延びている。さらに本体は、III−窒化物材料からなる過成長層をさらに備え、そこで前記溝は過成長する。
【0031】
好ましくは、過成長層は、溝に対する側壁を規定しており、前記側壁は、過成長層内の第1高さおよび第2高さとの間で、溝の一次配向を基準として多くても平均で60度の角度を有する。
【0032】
半導体本体は、事実上、ウエハ製造者によってデバイス製造者に供給される中間生産物であり、フォトニック結晶構造の機能性を含む。特に、溝に先端が設けられる場合、溝間のピッチへの要求があまり厳しくない傾向がある。これにより、中間生産物は、ウエハ製造者に対する詳細なデバイスのノウハウの伝達の必要性がなく製造できることになる。溝間のピッチを参照する代わりに、フォトニック結晶層および下地となる基板上部層の中に規定される柱間のピッチを参照できることは明確化のため追記しておく。
【0033】
溝の直径は、適切な実施形態では、0.25〜2.5ミクロンである。溝間または柱間のピッチは、適切な実施形態では、0.4〜5.0ミクロンである。
【0034】
好ましくは、III−窒化物材料の遷移層が、過成長層の上部に設けられる。活性層構造がその上に存在してもよい。これらの存在はまた、こうした中間生産物に対する要求に依存する。適切には、中間生産物は、保護層を用いて保護され、これはその場(in situ)で成長してもよく、例えば、SiNの保護層である。本体への処理の続行前に、この保護層は除去されるであろう。
【0035】
本発明の第3態様によれば、本発明は、キャリアと、III−窒化物材料からなる活性層構造と、III−窒化物材料からなるフォトニック結晶構造とを備える発光ダイオードを提供する。活性層構造は、n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含む。好ましくは、それは、量子井戸構造をさらに含む。フォトニック結晶構造は、パターン化され、周期的に分布した溝、または周期的に分布した柱(溝によって間隔があいた)を規定する。フォトニック結晶構造は、内部において溝の直径が徐々に増加している過成長層と、溝の直径がほぼ一定である方向性フォトニック結晶層とを含む。このほぼ一定とは、本発明の状況において、溝の直径が、フォトニック結晶層内で50%未満、好ましくは20%未満で変化することと理解されよう。
【0036】
1つの適切な実施形態では、遷移層が、活性層構造とフォトニック結晶構造との間に存在する。遷移層は、活性層構造内で発生し、導波モードで存在する放射光のフォトニック結晶構造との結合を提供するように規定される。結合は、適切には散乱によって生ずるが、他の結合機構も決して除外されない。遷移層の存在は、フォトニック結晶構造の周期的に分布した溝が発光波長よりかなり大きい直径を有する場合、特に有益である。これにより本発明は、方向性フォトニック結晶層および遷移層の上部におけるその成長に起因して、エッチングされず、欠陥密度の意味で有益な品質を有する活性層構造を提供している。遷移層およびフォトニック結晶構造により、光が散乱し、あるいは導波モードからフォトニック結晶へ結合したり、半導体材料から出発できる案内モードに続くことが可能になる。
【0037】
遷移層は、典型的には、散乱プロセスについて最適化される。適切には、それは、2.0ミクロン未満、より好ましくは多くても1.0ミクロンの層厚を有する。適切には、その厚さは、少なくとも0.2ミクロン、好ましくは0.5ミクロンである。フォトニック結晶構造に、先端を有する溝が設けられた場合、この層厚は、先端の上部からのもので定義される。先端は、実質的に凹状表面を有してもよい。凹状表面は、適切には、90度より大きな角度を相互に含む第1突起および第2突起を含む。この凹状表面の形状は、適切には、散乱を最大化するように最適化される。
【0038】
さらに、本発明の方法を参照して検討した上記および下記の両方実施形態は、本発明のデバイスと組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
これらおよび他の態様は、図面を参照して明らかになるであろう。
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体本体の概略断面図である。
【図2】第2実施形態に係る半導体本体が得られる、本発明に係る方法における3つのステージの概略断面図である。
【図3】第2実施形態に係る半導体本体が得られる、本発明に係る方法における3つのステージの概略断面図である。
【図4】第2実施形態に係る半導体本体が得られる、本発明に係る方法における3つのステージの概略断面図である。
【図5】本方法の追加のステージの概略断面図を示す。
【図6】本発明に係るデバイスを示す。
【図7】本発明のデバイスの追加のバージョンを示す。
【図8】本発明で用いられるパターンの3つの例を概略平面図で示す。
【図9】本発明で用いられるパターンの3つの例を概略平面図で示す。
【図10】本発明で用いられるパターンの3つの例を概略平面図で示す。
【図11】追加の実施形態において、本発明に係る本体を示す。
【図12】図12(a)〜図12(d)は、本発明の方法で用いられる4つの実施形態において、付与されたパターンを持つ基板の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面は、スケールどおりに描いておらず、異なる図面での等しい参照符号は同じまたは類似の部分を参照する。下記の実施形態は、単に説明用の例を示すものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0042】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体本体50の概略断面図である。半導体本体50は、本発明に係る方法の少なくとも幾つかのステップが実施された中間生産物である。本体50は、本実施形態では、ハンドリングウエハ1と、埋め込み層2と、上部層3とを含む基板10を備える。基板10は、典型的には、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板であり、埋め込み層2として、例えば、酸化シリコンを有する。基板上部におけるIII−窒化物材料からなる層の成長の観点から、上部層3は、典型的には、こうした成長に適した材料として選択される。適切な上部層の典型的な例は、(111)配向、(001)配向、または(110)配向の単結晶シリコン層である。他の半導体も上部層として適しており、例えば、SiC層またはGe層などがある。上部層の層厚は、典型的には、10nm〜20ミクロンのオーダー、好ましくは1〜10ミクロンであるが、これに限定されない。ハンドリングウエハ1は、基板10と、その上に成長したIII−窒化物材料の層との間の熱膨張の相違の結果として生じ得る反りの影響に対して耐久性があるように選択してもよい。
【0043】
除去プロセスにとって好都合であるが、基板はSOI基板であることは必須ではない。選択的に除去可能な埋め込み層2の使用によるものではなく、基板10の適切な除去のための他の方法は、それ自体しられている。例えば、基板内にp−n接合をエッチング停止として使用してもよい。よって、シリコン基板、好ましくは、(111)配向、(001)配向、または(110)配向の単結晶シリコンが代わりに使用できる。
【0044】
この本体50は、溝12を備え、その各々に先端(tip)15が設けられる。先端15は、溝12のエピタキシャル横方向成長(ELOG)を用いて過成長層6の成長の際に得られる。ELOGプロセスは、ここでは横方向成長と方向性成長との比率を調整するように最適化しており、後者は垂直成長とも称される。好ましい実施形態では、ELOGプロセスでの横方向成長速度は、緩やかな過成長を達成するように低減している。横方向成長速度を低減しつつ、過成長層を形成するためにいろいろなオプションが利用できる。第1オプションでは、過成長層は、アルミニウムを5〜25%のモル比で含み、即ち、AlGa1−xN(0.05≦x≦0.25)を含む。代替または追加で、横方向成長は、Siドーピングを用いて制御される。追加のオプションは、文献(Nano lett. 6, 1808 (2006))から知られているように、エピタキシャル成長プロセスの際、代替として反応チャンバでの前駆体の供給である。前駆体は、例えば、アンモニア(NH)、テトラメチルガリウム(TMGa)、テトラエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムである。当業者に知られているような他の前駆体を供給してもよい。
【0045】
本実施形態では、この成長は、溝12の一次配向に対して傾斜した鋭い角度を含む先端15の側壁が得られるように調整されている。この角度は、好ましくは45度より小さく、本例では約30度である。本図1は、側壁を直線的に示しているが、これは概略的な表現であり、実際には、側壁は、せいぜい平均して直線的であることは理解されよう。本図1は、直線的な側壁を、過成長層の底部から上部へ延びるように示しているが、これは必須ではないと理解すべきである。一般的に言えば、側壁は、おおよそ直線である側壁を持つ第1部分を有する。ここで、第1部分は、過成長層内で第1高さと第2高さとの間に延びている。前記第1高さと第2高さの間の距離は、例えば、過成長層6の厚さの30%または50%または70%である。
【0046】
側壁に凹面形状を設けることが最も適切であると考えられる。平均して直線及び/又はほぼ凹面状である側壁の代わりに、段差を付けた側壁または正弦波形状を持つ側壁も除外されない。本図は、事実上、単一の過成長層を示している。しかしながら、過成長層は、異なる組成を持つ複数の副層を含むことは除外されない。典型的には、過成長層6は、5〜25%のAl含量を持つAlGaNを含むが、代替として、過成長層は、Inを含む材料、例えば、AlInN,AlGaInNなどを含んでもよい。
【0047】
この本体50は、過成長層6の上部に遷移層7を備える。こうした遷移層7は、その上での活性層8,9および量子井戸構造28を持つ活性層構造18の規則正しい成長にとって有益である。適切には、遷移層7は、せいぜい2ミクロン、より好ましくはせいぜい10ミクロンの厚さを有する。しかしながら、大きな厚さを有する遷移層7は、活性層構造18と、層4,5,6で形成されるフォトニック結晶構造との間の相互作用にとって不利である。
【0048】
遷移層7が、溝12が先端15として延びている過成長層6の上に存在する場合、遷移層7は、0.5ミクロンより小さくして、活性層構造18の優れた成長と、活性層構造18内で発生した光のフォトニック結晶構造への適切な結合とを組み合わせてもよい。そこでは、遷移層7は、フォトニック結晶での大きな界面表面積に起因して、表面再結合を回避していると発明者によって考えられている。これにより、それは、表面効果をフォトニック結晶構造から活性構造18に存在する電磁界へ転送できる。この結果、導波モード放射と光学モード放射との結合が得られる。
【0049】
図2〜図5は、本発明に係る方法での幾つかのステージの概略断面図を示す。該方法により、図6に示すような発光ダイオード100が得られる。図4に示すような半導体本体50は、中間生産物として得られる。
【0050】
図2は、本発明に係る第1の複数ステップを実行した後の半導体基板10を示す。ここで、基板10には、第1表面110が設けられる。パターンが、前記第1表面110に対して、例えば、フォトレジスト層、ハードマスクなどの形態で付与される。パターンは、周期的に分布する第1エリアと、前記第1エリアを空間的に制限する少なくとも1つの第2エリアとを含む。適切には、第1表面110は、第1エリアにおいて露出される。このパターンを基板10の上部層3に転写した場合、第2エリアにおいて基板10の残部によって包囲された溝12が形成されることになる。代替として、第1表面110は、少なくとも1つの第2エリアにおいて露出される。その結果、基板10の上部層3は、柱状(pillar)(または露出した突起)にパターン化される。周期的分布は、好ましくは2次元に延長しているが、1次元の延長でも充分であろう。
【0051】
適切なパターンの例は、図8〜図10において概略平面図で示している。図8は、基板10の上部層3において柱の形成が得られている第1例を示す。柱は、1つ又はそれ以上の溝によって相互に間隔があいている。図9は、底部において、下地の埋め込み層2またはハンドリングウエハ1を露出し、半導体材料3内で側壁を有する溝(孔)12が得られている第2例を示す(即ち、SOI基板を使用した実施形態である。それ以外では単に基板は露出している)。簡潔さのため溝を参照しているが、両方のオプションが含まれると理解すべきである。図8と図9の柱および溝を円形で示しているが、代替の形状、例えば、六角形のものを設けてもよい。
【0052】
図10は、半導体材料のストライプおよび、下地の埋め込み絶縁層2またはハンドリングウエハ1(SOI基板を使用した実施形態で)を露出するスリット形状の溝を含む1次元パターンの例を示す。代替として、パターンは、リング状の溝、C字状の溝、U字状の溝、W字状の溝およびこれらの任意の組合せを含んでもよい。溝は、基板表面全体110に渡って同じ形状を有することは必須でない。全部の基板表面110に渡って同じパターンである必要はない。代わりに、それを一定のゾーン(zone)に制限してもよい。例えば、上部層3は、鋸歯レーン(lane)としての使用を意図したエリアで除去してもよい。これは、幾つかの利点を有する。第1に、ダイシングの際、III−窒化物材料をのこぎり切断する必要がない。III−窒化物材料は比較的硬いだけでなく、2つの異なる材料のスタックをのこぎり切断することが困難であることが知られている。第2に、これによりIII−窒化物材料は、ブロックに効率的に再分割される。その結果、シリコン基板とIII−窒化物材料との間の異なる熱膨張に起因した応力が、かなり減少するようになる。
図2に戻って、パターンは、上部層3および埋め込み層2の両方に転写されることが示されている。これは必須ではないが、基板10の除去の際、後に検討しているように、利益になる。パターンの転写は、典型的には、エッチング、例えば、ドライエッチングによって実行される。ここでは、下地のハンドリングウエハを露出することが最も有益であるが、これは必須ではない。埋め込み層2の無い基板を使用する実施形態では、パターンは上部層3に転写されることになる。
【0053】
図3は、該方法の追加のステージでの基板10を示す。このステップは、基板表面110の前記残部にIII−窒化物材料の方向性フォトニック結晶層4,5を選択成長した後、達成される。方向性フォトニック結晶層4,5のパターンは、基板10の上部層3にあるパターンから延びており、これとほぼ同一である。本実施形態では、ハンドリングウエハ1は、シリコンで構成される。その露出の結果、III−窒化物材料は、ハンドリングウエハ1の前記露出エリアにおいてさらに成長し、ドット14を生成する。これらのドット14は、機能的でなく、妨害しない。一実施形態では、方向性フォトニック結晶層4,5は、少なくとも20%のアルミニウム含量を持つ材料を含む。これにより横方向成長の代わりに、閉じ込め成長(垂直成長とも称される)が生ずることが実現する。しかしながら、閉じ込め成長は、代替として達成してもよい。詳細には、方向性フォトニック結晶層は、AlGa1−xN(Alモル比xが、0.25≦x≦1)を含む。方向性フォトニック結晶層は、異なるAlモル比を有する複数の層、または、シリコンとの界面で最大Al比となる段階的なAlモル比を有する単一層を備えることができる。シリコンの上に位置し、これと接触するように、AlN(x=1)が最初に成長する。その後、一定または段階的なAlモル比を持つAlGa1−xN(0.25≦x<1)が成長する。
【0054】
代替の実施形態では、方向性フォトニック結晶層および構造を規定するために、第1表面の上部にあるテンプレート(29)を使用している。アモルファス酸化物または熱酸化物を使用できる。フォトニック結晶層の成長後、このテンプレートは、再び除去してもよい。代替として、この除去は、成長プロセスの完了および基板除去の後に行う。
【0055】
図3に示す実施形態では、第1および第2方向性フォトニック結晶層4,5を示す。1つより多い方向性フォトニック結晶層の存在は必須ではないが、有益であろう。例えば、第1方向性フォトニック結晶層4の組成は、第2方向性フォトニック結晶層5とは異なっても良い。その結果、溝12の直径は、第2方向性フォトニック結晶層5の範囲で減少してもよい。核生成(nucleation)層を、上部層3に直接設けることが適切であると考えられ、これは特にAlN層である。このAlNは、上部層3のシリコン材料と、後に成長するGa含有III−窒化物材料との間で良好な整合を提供すると考えられる。適切には、徐々に変化するAl含量を持つ単一の方向性フォトニック結晶層を使用する。詳細には、この層は、過成長層6との界面に向かって減少するAl含量を有する。このAl組成傾斜を持つこうした層が、反射防止特性を有することが判明した。その結果、別個の反射防止コーティングを付与する必要がない。
【0056】
図4は、本発明に係る製造方法の更なるステップ後に得られる半導体本体50を示す。これらのステップのうちの第1が、エピタキシャル横方向成長(ELOG)を用いたIII−窒化物材料からなる過成長層6の成長であり、これにより前記溝12を過成長させ、溝12の先端15を作成する。更なるステップが、n型ドープ層である第1活性層8と、量子井戸構造28と、p型ドープ層である第2活性層9とを含む、III−窒化物材料の活性層構造の成長である。中間ステップが、過成長層6の上部における遷移層7の設置である。
【0057】
過成長層6の形成は、エピタキシャル横方向成長(ELOG)を用いて生じ、それ自体は先行技術で知られており、それは、段階的な過成長が得られるようにさらに調整される。図4に示す実施形態では、過成長は、約40度の角度を含む側壁を形成するように生ずる。遷移層7は、単一のステップででも、過成長層6の直後に形成してもよい。過成長層6および遷移層7の組成は、必ずしも相違していない。しかしながら、遷移層7は、単に固有にドープされるか、あるいは活性層構造の上側活性層8と同じドーピングを有することが好ましい。
【0058】
活性層構造は、図4に示しており、n型ドープである第1活性層8と、p型ドープである第2活性層9とを含む。適切には、それは、図1に示すように、量子井戸構造28を含む。この量子井戸構造28は、単一の量子井戸構造、多重量子井戸構造、超格子、および量子井戸として当業者に知られている他のものでもよい。有益な例は、InGaN/GaN,InGaN/InGaN,InGaN/AlInGaN量子井戸を含む。量子井戸構造28は、単一層として描いているが、多重層を含んでもよい。適切には、Mgドーピングに関連して処理条件の観点から、p型ドープ層は上側層である。
【0059】
図5は、本発明に係る方法での更なるステージを示す。このステージでは、キャリア20が接着層13を用いて基板に接合されている。キャリア20は、適切には、熱伝導性材料、例えば、金属(例えば、銅)または、電気絶縁性で熱伝導性のセラミック材料である。このタイプのキャリアは、発光ダイオードの分野において周知であり、更なる検討を要しない。接着層は、活性構造の半導体材料とキャリア20との間の接合に適した、ポリマー材料、はんだ、金属でもよい。金属または合金などの場合、典型的な材料が、Ti,TiN,TiW,TiNW,TiW,Ta,TaN,Wなどである。
【0060】
図5に示す更なる特徴が、間隙(gap)11である。間隙は、例えば、材料の除去によって作成され、各デバイスを典型的なメサ構造に制限している。代替の実施形態では、これらの間隙11は、上部層3の除去に起因してIII−窒化物層の何れの成長も局所的に抑制されるように形成される。間隙は、単にデバイス分離のために適しているだけでなく、基板10の除去を改善している。間隙11は、適切には極めて大きく、>5ミクロン、>10ミクロンまたは20ミクロンであり、合体を回避している。
【0061】
図6は、基板10の除去後に得られる発光ダイオード100を示す。このデバイスは、活性層構造18と、少なくとも1つの方向性フォトニック結晶層4,5から作成されたフォトニック結晶構造19と、過成長層6とを備える。遷移層7は、活性層構造18とフォトニック結晶構造19との間に存在する。本実施形態では、基板10は、ハンドリングウエハ1、埋め込み層2、上部層3を含めて除去されている。しかしながら、上部層3が、発光ダイオード100の波長範囲の放射光に関して透明である場合、この上部層3は除去する必要がない。除去ステップを終了した後、透明保護層(不図示)をその構造の上に堆積してもよい。こうした透明層は、パッケージの分野で知られているように、例えば、透明なエポキシ樹脂または他の透明なポリマーである。
【0062】
基板10の除去は、それ自体、基板移送プロセスとして知られている。本発明の状況では、基板除去のために、研削およびエッチングよりもリフトオフプロセスを使用することが適切であると考えられる。このリフトオフプロセスは、特に改善されており、埋め込み層は処理中に部分的に除去されている。特に、リフトオフプロセスを支援するために、埋め込み層でのチャネルが想定される。さらに、酸化物とIII−窒化物材料との間のエッチング選択性の観点から、酸化物を埋め込み層として使用することが有利であると考えられる。エッチャントは、流体、蒸気または気体でもよい。
【0063】
図7は、デバイス100の追加のバージョンを示し、活性層構造18へのコンタクト21を示している。図7は、コンタクト21がn型ドープ層8まで延びているのを示しているが、これは一例として理解すべきである。さらに、コンタクト21は、代替としてデバイス内のどこかに、例えば、反対側に付与してもよい。コンタクト21は、キャリア20を通って形成され、電気絶縁層22を用いてキャリア20から絶縁されている。こうしてデバイス100の両方のコンタクトが同じ側に存在でき、キャリア20は導電性であり、他方のコンタクトとして機能する。
【0064】
図11は、成長プロセスの変形例を示し、ゾーン11が基板に規定され、III−窒化物材料の成長が抑制される。その結果として、活性層8,9は、本来の横方向制限を伴う成長の際に発達しており、即ち、横方向成長が生じた場合でも、個々の層スタックをもたらす間隙の大きな幾何形状は、相互に隔離される。ゾーン11は、個々の発光ダイオードを限定しているが、代替として、こうしたゾーンが発光ダイオードのグループを限定してもよい。
【0065】
図12a〜dは、パターンが付与された基板10の概略断面図を示す。図12a、図12b、図12c、図12dは、ここでは代替の実施形態を示している。本発明によれば、パターンが基板10に付与され、基板10の第1表面110を露出させている。このパターンは、3次元であり、例えば、突起および空洞を含む。上述したように、第1表面110は、第1エリア(I)または、少なくとも第2エリア(II)において露出し得る。図12aと図12dは、第1表面110が第1エリア(I)において露出している実施形態を示す。図12bと図12cは、第1表面110が第2エリア(II)において露出している実施形態を示す。
【0066】
さらに、パターンは、基板10の上部層13をパターン化すること、即ち、上部層および、必要に応じて埋め込み層12の中に空洞をエッチング形成することによって形成してもよい。そして、第1表面110は突起の上部で露出している。代替として、テンプレート層29が設けられる。このテンプレート層29は、第1表面110が露出する底部において空洞を規定するようにパターン化される。図12aと図12bは、基板10の上部層がパターン化され、第1表面110が突起の上部で露出している実施形態を示す。図12cと図12dは、テンプレート層29が設けられ、第1表面110が空洞の底部で露出している実施形態を示す。
【0067】
要約すると、フォトニック結晶をGaNに形成するための問題は、エッチングプロセスが簡単ではない点である。溝の直径は、一般に、数百ナノメータの範囲であるが、n型GaNの厚さは、約4〜6ミクロンである。従って、こうした溝を高いアスペクト比(〜20)で製作するために、特別なエッチンャトおよび製法を開発する必要がある。他のオプションが、n型GaNの厚さを5ミクロンから、<1ミクロンに薄くすることであろう。論文(J.J. Wierer et al Nature Photonics 3, 163 (2009))を参照。
【0068】
本発明において、エピタキシー(epitaxy)の後にエッチングプロセスを必要とせず、エッチングの際に活性領域(MQW)に対する潜在的な損傷を回避する。さらに、パターン付き基板上での横方向成長のため、結晶品質を同時に改善できる。これは、3つの段階、即ち、方向性フォトニック結晶の方向性成長、過成長層での溝の過成長、および活性層成長を含む成長プロセスにおいて達成され、後者は、典型的には量子井戸構造の形成を含む。遷移層を過成長層と活性層との間に規定してもよい。方向性成長は、3次元であるパターンの上部に発生する。これは、方向性成長のための適切な開始ポイントを可能にする。パターンは、方向性成長を、テンプレート内の溝における成長として規定するテンプレートであってもよい。
【0069】
得られた発光ダイオード100は、キャリア20、III−窒化物材料からなる活性層構造18と、III−窒化物材料からなるフォトニック結晶構造19とを備える。活性層構造18は、n型ドープ層8、p型ドープ層9および適切には量子井戸構造28を持つ第1活性層を備える。フォトニック結晶構造19は、周期的に分布した溝、または周期的に分布し、1つ又はそれ以上の溝によって間隔があいた柱を備える。フォトニック結晶構造19は、溝の直径が徐々に増加している過成長層6と、溝の直径がほぼ一定である方向性フォトニック結晶層4,5を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック結晶構造を備えた、少なくとも1つの発光ダイオードを製造する方法であって、
・基板に、III−窒化物材料の成長に適した第1表面を設けるステップと、
・周期的に分布した第1エリアおよび、前記第1エリアを空間的に制限する少なくとも1つの第2エリアを含むパターンを、前記第1表面に付与するステップであって、このパターンは、空洞および突起を用いて実現され、そのうちの1つは第1表面を露出させるようにしたステップと、
・第1ステップにおいて、第1表面が第1エリア内で露出している場合は、ほぼ第1エリア内で第1表面の上にIII−窒化物材料からなるフォトニック結晶柱を成長させ、第1表面が少なくとも1つの第2エリア内で露出している場合は、ほぼ少なくとも1つの第2エリア内で第1表面の上にIII−窒化物材料からなる少なくとも1つのフォトニック結晶層を成長させるステップと、
・第2ステップにおいて、第1エリアおよび少なくとも1つの第2エリアの両方において、エピタキシャル横方向成長(ELOG)を用いて、III−窒化物材料からなる過成長層を成長させるステップと、
・第3ステップにおいて、n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含む、III−窒化物材料からなる活性層構造を成長させるステップと、
・フォトニック結晶構造の形成のために、過成長層および、フォトニック結晶柱またはフォトニック結晶層のいずれかから、基板を少なくとも部分的に除去するステップと、を含む方法。
【請求項2】
フォトニック結晶は、フォトニック結晶柱の間に1つ又はそれ以上の溝が設けられ、あるいは前記フォトニック結晶層に溝が設けられ、
溝は、過成長層の中に延びており、ほぼ第1エリアまたはほぼ少なくとも1つの第2エリアにおいて第1ステップでの成長から由来するものであり、テンプレート層の除去によって、第1ステップ中または第1ステップ後に形成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パターンは、前記基板中に転写され、これにより第1エリアまたは少なくとも1つの第2エリアにおいて空洞を規定し、そして、第1表面は、突起の上部に存在している請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記パターンは、空洞を含む基板上へのテンプレート層の設置によって設けられ、
第1表面は、空洞の底部に存在している請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
過成長層は、溝に対する側壁を規定しており、前記側壁は、過成長層での第1高さと第2高さとの間で、溝の一次配向に対して平均でせいぜい60度の角度を含む請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
過成長層の成長後で、活性層構造の成長前に、III−窒化物材料からなる少なくとも1つの遷移層を成長させる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
基板は、ハンドリングウエハと、埋め込み層と、上部層とを備え、
パターンは、前記上部層に付与され、
基板の除去は、ハンドリングウエハおよび埋め込み層の除去を含む請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
パターンは、埋め込み層にさらに転写される請求項7記載の方法。
【請求項9】
III−窒化物材料の成長に適した第1表面を備えた基板であって、前記第1表面にはパターンが付与されており、該パターンは、周期的に分布した第1エリアおよび、前記第1エリアを空間的に制限する少なくとも1つの第2エリアを含み、該パターンは、空洞および突起を用いて実現され、そのうちの1つは第1表面を露出させるようにした基板と、
基板の露出した第1表面に存在し、必要に応じて、充填または部分充填された溝によって分離された、III−窒化物材料からなる複数のフォトニック結晶柱またはフォトニック結晶層と、
前記溝が過成長する、III−窒化物材料からなる過成長層とを備える半導体本体。
【請求項10】
過成長層の上部に、遷移層と、III−窒化物材料からなる活性層構造とを備え、
III−窒化物材料からなる活性層構造は、n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含む請求項9記載の半導体本体。
【請求項11】
過成長層は、溝に対する側壁を規定しており、前記側壁は、過成長層での第1高さと第2高さとの間で、溝の一次配向に対して平均でせいぜい60度の角度を含む請求項9または10記載の半導体本体。
【請求項12】
キャリアと、III−窒化物材料からなる活性層構造と、III−窒化物材料からなるフォトニック結晶構造とを備える発光ダイオードであって、
活性層構造は、n型ドープ層である第1活性層およびp型ドープ層である第2活性層を含み、
フォトニック結晶構造は、周期的に分布した溝、または周期的に分布し、1つ又はそれ以上の溝によって間隔があいた柱を備え、
フォトニック結晶構造は、内部において溝の直径が徐々に増加している過成長層と、溝の直径がほぼ一定である方向性フォトニック結晶層とを含む発光ダイオード。
【請求項13】
III−窒化物材料からなる遷移層が、活性層構造とフォトニック結晶構造との間に存在し、
該遷移層は、活性層構造内で発生した導波モードの放射光を、フォトニック結晶構造での光学モードの放射光と結合させるように規定される請求項12記載の発光ダイオード。
【請求項14】
遷移層は、0.2ミクロン未満の厚さを有する請求項13記載の発光ダイオード。
【請求項15】
過成長層は、その露出側において、実質的に凹状表面を有する空洞を含む請求項11〜14のいずれかに記載の発光ダイオード。
【請求項16】
周期的に分布した溝または柱は、200nm〜5ミクロンの範囲のピッチでそれぞれ規定されている請求項11〜15のいずれかに記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−238913(P2011−238913A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−94714(P2011−94714)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】