説明

発光ダイオード

【課題】主発光のピーク波長が500nm以下である場合において高い透過性及び透明性を有すると共に、良好な成型性で得られる発光ダイオードを提供する。
【解決手段】発光素子2と、発光素子2を封止する光学部材1と、を備えた発光ダイオード100であって、光学部材1は、(A)同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基を少なくとも1組とヒドロシリル基を少なくとも2個とを有するポリオルガノシロキサンと、(B)少なくとも2個の二重結合を有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である、発光ダイオード100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードにおける発光素子を封止する光学部材用樹脂として、エポキシ樹脂がよく用いられていた。しかし、一般にエポキシ樹脂によって形成される光学部材は、可視域での透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られない。また、エポキシ樹脂の中でも、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテル等は紫外から近紫外域における透明性は比較的高いが、これらは熱や光によって着色し易い等の問題点を有している。そのため、例えば特許文献1,2では、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルに含まれる着色原因の一つである不純物の低減方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−171439号公報
【特許文献2】特開2004−75894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の不純物の低減方法では着色を十分に抑制するには限界があった。このため、近年、発光素子の発光効率の向上に伴い、特に発光素子における発光波長の主発光のピーク波長が500nm以下である場合において、更なる透過性、透明性、耐熱・耐紫外線着色性の向上が求められている。
【0004】
また、上記の脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルと酸無水物とからなる硬化物は、破断強度、靭性が芳香族エポキシ樹脂より劣るため、成形物について異種接合体との界面はく離やクラックが生じるとの問題だけでなく、更には硬化時に酸無水物が揮発し容積が減少する等の問題から成型性が問題視されている。このため、更なる成型性の向上が求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、主発光のピーク波長が500nm以下である場合において高い透過性及び透明性を有すると共に、良好な成型性で得られる発光ダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光ダイオードは、発光素子と、該発光素子を封止する光学部材と、を備えた発光ダイオードであって、光学部材は、(A)同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基を少なくとも1組とヒドロシリル基を少なくとも2個とを有するポリオルガノシロキサンと、(B)少なくとも2個の二重結合を有する化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0007】
本発明に係る発光ダイオードは、上記硬化性樹脂組成物の硬化物により発光素子を封止することにより、高い透過性及び透明性を有すると共に、良好な成型性で得ることができる。
【0008】
同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基のうち少なくとも一方が、炭素数12以上かつ酸素原子数2以上の置換基であることが好ましい。この場合、更に高い透過性及び透明性を有すると共に、更に良好な成型性で得ることができる。
【0009】
ポリオルガノシロキサンは、炭素数10以上の置換基をエステル位に有する(メタ)アクリレートを、少なくとも3個のヒドロシリル基を有する環状ポリオルガノシロキサンにより、少なくとも2個のヒドロシリル基が残るようにヒドロシリル化させて得ることができることが好ましい。この場合、更に高い透過性及び透明性を有すると共に、更に良好な成型性で得ることができる。
【0010】
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルであることが好ましい。この場合、発光ダイオードの耐熱性等を向上させることができる。
【0011】
環状ポリオルガノシロキサンは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0012】
少なくとも2個の二重結合を有する化合物は、アリル基を有することが好ましい。この場合、発光ダイオードの透明性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、主発光のピーク波長が500nm以下である場合において高い透過性及び透明性を有すると共に、良好な成型性で得られる発光ダイオードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」又はそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」又はそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
【0015】
本発明に係る発光ダイオードは、発光素子と、該発光素子を封止する光学部材と、を備えた発光ダイオードである。光学部材は、(A)同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基を少なくとも1組とヒドロシリル基を少なくとも2個とを有するポリオルガノシロキサン(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)少なくとも2個の二重結合を有する化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)ヒドロシリル化触媒(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である。(A)成分及び(B)成分はそれぞれ液状であり、それらの混合液を(C)成分存在下で加熱することにより、ヒドロシリル化反応が生じて硬化物が形成される。
【0016】
本発明に係る硬化性樹脂組成物のうち、先ず(A)成分について説明する。
【0017】
(A)成分は、同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基のうち少なくとも一方が、炭素数12以上かつ酸素原子数2以上の置換基であることが好ましい。
【0018】
更に、(A)成分は、炭素数10以上の置換基をエステル位に有する(メタ)アクリレートを、少なくとも3個のヒドロシリル基を有する環状ポリオルガノシロキサンにより、少なくとも2個のヒドロシリル基が残るように、後述する(C)ヒドロシリル化触媒と同様のヒドロシリル化触媒を用いてヒドロシリル化させて得られる誘導体であることが好ましい。この場合、(メタ)アクリレートの二重結合と、環状ポリオルガノシロキサンのヒドロシリル基とにより、ヒドロシリル化触媒下においてヒドロシリル化反応が生じる。これにより、炭素数12以上及び酸素原子数2以上を有し、ケイ素原子に結合した少なくとも1個の置換基が形成される。
【0019】
(メタ)アクリレートと環状ポリオルガノシロキサンとの反応は、環状ポリオルガノシロキサンのヒドロシリル基の当量(ヒドロシリル基当量)Xを(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の当量(アクリロイル基当量)Yより多い当量で反応させることが好ましい。この場合、ヒドロシリル基当量Xと(メタ)アクリロイル基当量Yとの比X/Yが4/1〜2/1であることが好ましい。X/Yが2/1より小さいと、(A)成分におけるヒドロシリル基が少なくなるため、(B)成分と硬化しにくくなる傾向があり、X/Yが4/1より大きいと、(メタ)アクリレートを有さない(A)成分が多くなるため、(A)成分と(B)成分とによる硬化が不十分となる傾向がある。
【0020】
炭素数10以上の置換基をエステル位に有する(メタ)アクリレートは、以下に制限されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロデシルが挙げられる。これらの中で、耐熱性等の点で(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが特に好ましい。これらの(メタ)アクリレートは一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
環状ポリオルガノシロキサンとしては、以下に制限されるものではないが、例えば、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。これらの中で、入手の容易さの点で、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0022】
(A)成分の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、59〜90質量部であることが好ましく、63〜90質量部であることがより好ましい。59質量部より小さいと、白濁や目減り等の硬化物の成型性が低下する傾向があり、90質量部より大きいと、硬化が不十分となる傾向がある。
【0023】
次に、(B)成分について説明する。
【0024】
(B)成分としては、ヒドロシリル基と反応可能な二重結合を少なくとも2個有していれば制限されるものではないが、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリレート、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテル等のビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ジメチルシロキサンジビニル等のビニル、リモネン、1,5−ヘキサジエン、1,8−ノナジエン、ブタジエン、ポリブタジエン、トリビニルシクロヘキサン等の二重結合を含む化合物が挙げられる。これらの中でも、透明性に優れることから、アリル基を有するものが好ましく、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。これらの化合物は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)成分の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、10〜41質量部であることが好ましく、10〜37質量部であることがより好ましい。10質量部より小さいと、硬化が不十分となる傾向があり、41質量部より大きいと、白濁や目減り等の硬化物の成型性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明において、(A)成分のポリオルガノシロキサンのヒドロシリル基(Si−H)と、(B)成分の二重結合との当量比(ヒドロシリル基/二重結合)は、1/1.4〜1/0.6であることが好ましく、1/1.3〜1/0.7であることがより好ましい。この当量比が1/1.4より小さいと、(B)成分の二重結合が多くなり、硬化物が着色して透明性が低下する傾向があり、1/0.6より大きいと、得られる硬化物の硬度が低下する傾向にある。
【0027】
次に、(C)成分について説明する。
【0028】
(C)ヒドロシリル化反応触媒、及び上述の(メタ)アクリレートと環状ポリオルガノシロキサンとの反応に用いるヒドロシリル化反応触媒の具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金を担持させたもの、塩化白金酸、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等の錯体、白金―オレフィン錯体、白金―ビニルシロキサン錯体、白金―ホスフィン錯体、ジカルボニルジクロロ白金、karstedt触媒、ロジウム―ホスフィン錯体、ロジウムーオレフィン錯体等が上げられる。これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金―オレフィン錯体、白金―ビニルシロキサン錯体、白金―ホスフィン錯体、ロジウム―ホスフィン錯体、ロジウムーオレフィン錯体が好ましい。これらのヒドロシリル化触媒は、一種単独又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記のヒドロシリル化触媒には、助触媒を併用することが可能であり、例えば、トリフェニルホスフィン、ジエチルマレート、2−ヒドロキシー2−メチルー1−ブチン、硫黄、トリエチルアミンが挙げられる。これらの助触媒は、一種単独又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(C)成分の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.00001〜0.5質量部であることが好ましく、0.00001〜0.3質量部であることがより好ましい。0.00001質量部より小さいと、硬化が不十分となる傾向があり、0.5質量部より大きいと、硬化物が着色する傾向がある。
【0031】
本発明に係る硬化性樹脂組成物には、上記(A)〜(C)成分以外に、その他の添加剤を加えてもよい。
【0032】
本発明に係る硬化性樹脂組成物の保存安定性の改良、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば脂肪族の不飽和結合を有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。遅延効果の高い具体的な化合物の例としては、エチニルシクロヘキサノール、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルフマレート、3−ヒドロキシー3−メチルー1−ブチン等が挙げられる。これらの硬化遅延剤は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明に係る硬化性樹脂組成物の特性を改良するための添加剤を必要に応じて添加してもよい。添加剤の例としては、アルミナ、水酸化アルミナ、溶融シリカ、結晶性シリカ、タルク、硫酸バリウム等の無機フィラーや、ラジカル捕捉剤、抗酸化剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、耐オゾン剤、光安定剤、熱安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、染料、金属不活性剤、物性調整剤、老化防止剤や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0034】
さらに、本発明に係る硬化性樹脂組成物には、種々の発光ダイオードの特性を改善するための添加剤を添加してもよい。添加剤としては例えば、蛍光体、ブルーイング剤等の着色剤、金属酸化物等の光拡散剤、熱伝導性フィラー等が挙げられる。
【0035】
次に、硬化性樹脂組成物の成型方法について説明する。
【0036】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、所定の型枠等を用いて注型硬化し、構造体やフィルム等を形成することが可能である。また、硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解してワニスを作製し、そのワニスを用いてコーティングを形成することも可能である。また、ポッティング等も可能である。本発明に係る硬化性組成物は、(A)〜(C)成分をあらかじめ混合し、組成物中のヒドロシリル基と、反応性を有する二重結合とを一部又は全部反応させることによって硬化できる。混合後に気泡等が生じた場合には、減圧、加圧、遠心、超音波等の処理を施してもよい。硬化阻害や着色防止のため、予め窒素バブリングによって硬化性組成物中の酸素濃度を低減してもよい。
【0037】
本発明における硬化性樹脂組成物から硬化物を得るための反応温度は、60〜200℃の範囲が好ましく、60〜150℃の範囲が特に好ましい。60℃未満では硬化反応がなかなか進行せず、200℃を超える場合では、反応が急激に進行しやすい。また、急激な硬化反応によって発生する内部応力を低減するために、硬化温度を段階的に昇温することが望ましい。本発明に係る硬化性樹脂組成物から硬化物を得るための反応時間は、反応温度による硬化反応の進行の具合により種々の時間を設定することができる。
【0038】
本発明に係る発光ダイオードは、上記したような硬化性樹脂組成物の硬化物により形成される光学部材により、発光素子を封止することによって製造することができる。
【0039】
発光素子としては、特に限定されるものではなく、公知の発光ダイオードに用いられる発光素子を用いることができる。このような発光素子としては、例えばMOCVD法、HDVPE法、液相成長法といった各種方法によって、必要に応じてGaN、AlNなどのバッファー層を設けた基板上に半導体材料を積層して作製したものが挙げられる。この場合の基板としては、以下に限定されるものではないが、例えばサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶が挙げられる。
【0040】
積層される半導体材料としては、例えばGaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaN、InGaAlN、SiCが挙げられる。発光素子の構造としては、MIS接合、pn接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合やダブルへテロ接合等が挙げられる。発光素子はパッシベーション層を設けても設けなくてもよい。発光素子は従来知られている方法によって電極を形成することができる。
【0041】
発光素子上の電極は種々の方法でリード端子等と電気接続できる。電気接続部材としては、発光素子の電極とのオーミック性や機械的接続性等がよいものよく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウムやそれらの合金等を用いたボンディングワイヤーが挙げられる。また、銀、カーボン等の導電性フィラーを樹脂で充填した導電性接着剤等を用いることができる。本発明に係る発光素子における発光波長の主発光のピーク波長が500nm以下である場合において本発明の効果が顕著である。
【0042】
本発明に係る発光ダイオードに用いられるリード端子としては、ボンディングワイヤー等の電気接続部材との密着性、電気伝導性等の良好なものが好ましい。これらのリード材料としては、例えば、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅や、これらに銀、ニッケル等をメッキしたもの等が挙げられる。
【0043】
本発明に係る発光ダイオードは、本発明に係る硬化性樹脂組成物と共に、透明な材料を組み合わせて発光素子を封止してもよい。透明な材料の組み合わせとしては、例えば、透明性の高い樹脂である、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等やガラスで発光素子を封止した後、その上あるいは周囲を本発明に係る硬化性樹脂組成物で被覆する方法がある。また、発光素子を本発明に係る硬化性組成物で被覆し、その上に上記の透明性の高い樹脂やガラス等を被覆してもよい。
【0044】
封止の方法として、種々の方法が適用できるが、例えば、底部に発光素子を配置させたカップ、キャビティ、パッケージ凹部等に液状の本発明に係る硬化性樹脂組成物をディスペンサー、ピペッター等を用いて注入し、加熱硬化してもよい。硬化性組成物は、硬化しない程度に加熱して注入してもよい。また、組成物の注入と硬化に、種々の成型機を用いてもよい。また、例えば砲弾状の型に本発明に係る硬化性組成物を注入した後で、発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬し、硬化させてもよい。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物を予めレンズ等の形状で硬化し、それを発光素子上に固定してもよい。さらには、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド剤として用いることができるし、発光素子上のパッシベーション膜として用いることができる。また、パッケージ基板としても用いることができる。
【0045】
被覆部分の形状は、以下に制限されるものではないが、例えばレンズ形状、板状、薄膜状、プリズム状等が挙げられる。これらの形状は硬化性樹脂組成物を成形硬化させることによって形成してもよいし、硬化性樹脂組成物を硬化した後に加工を施してもよい。また、別の方法としては、光硬化性の樹脂や熱可塑性の樹脂と金型を用いて、硬化物に形状層を付与してもよい。
【0046】
本発明に係る発光ダイオードは、種々の系の発光ダイオードとして適用することができる。例えば、ランプ系、SMD系、チップ系、砲弾系のいずれの系でもよい。これらに用いられるパッケージの種類は特に制限されるものではないが、たとえば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等が用いられる。
【0047】
その他に、本発明に係る発光ダイオードには、従来の公知の種々の方式が適用できる。例えば、発光素子背面に光を反射あるいは集光する層を設ける方式、封止樹脂の黄変に対して補色着色部を底部に形成する方式、主発光のピークより短波長の光を吸収する薄膜を発光素子上に設ける方式、発光素子を軟質あるいは液状の封止剤で封止した後に周囲を硬質の材料で封止する方式、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を発する蛍光体を含む材料で発光素子を封止した後で周囲を封止する方式、蛍光体を含む材料を予め成形したから発光素子とともに封止する方式、輝度むらを低減させるためにパッケージを2段状の凹部とする方式、発光ダイオードを貫通孔に挿入して固定する方式、発光素子をはんだバンプ等を用いたフリップチップ接続等によってリード部材等と接続して基板方向から光を取り出す方式等を挙げることができる。
【0048】
図1は、光学部材を備えた発光ダイオードの一実施形態を示す概略端面図である。図1に示す発光ダイオード100は、発光素子2と、発光素子2が封止されるように設けられた透明な光学部材1とを備える実装型の発光ダイオードである。光学部材1は、発光素子2を覆うとともにキャビティ10を充填している。光学部材1は、例えば、硬化性樹脂組成物の溶液をキャビティ10内に流し込み、キャビティ10内の硬化性樹脂組成物を加熱によって硬化する方法により形成される。発光素子2は、ケース部材5に形成されたキャビティ10の底部に配置されている。発光素子2は、接着層20を介してケース部材5に接着されており、ワイヤー8を介してリードフレーム7と接続されている。
【0049】
本発明に係る発光ダイオードは、従来公知の各種の用途に用いることができる。以下に制限されるものではないが、例えば、バックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライトを挙げることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」は、「質量部」を意味する。
【0051】
また、以下において、TCDMAは(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、TDM−DVE(表中はTDM−と略す)はジシクロペンタニルジビニルエーテル、TMCTSは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、TAICはトリアリルイソシアヌレート、PBはポリブタジエンをあらわす。
【0052】
(実施例1)
100mlのスクリュー管にTCDMA6.47部(日立化成工業株式会社製)、TMCTS3.53部(和光純薬株式会社製)、エチニルシクロヘキサノール0.015部(和光純薬株式会社製)を入れ、均一になるまで混合し、その後に、0価のヒドロシリル化触媒である白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金1.7%)(和光純薬株式会社製)0.020部を添加し液状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をオーブン中で、100℃で1時間、125℃で2時間、150℃で1時間の条件で加熱し、液状の誘導体を得た。
【0053】
続いて、上記の誘導体を含むスクリュー管100mlに、TAIC2.45部、エチニルシクロヘキサノール0.015部(和光純薬株式会社製)を入れ、均一になるまで混合し、その後に白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金1.7%)0.020部を添加し液状の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を寸法が20mm×20mm×1mmの型、及び外形寸法が3.2mm×2.6mm×1.8mm、キャビティ内径がφ2.4mmのポリフタルアミド製表面実装型発光ダイオードのキャビティ部にそれぞれピペッターで流し込み、100℃で1時間、150℃で1時間の条件で加熱し、それぞれ板状の硬化物及び表面実装型発光ダイオードを作製した。
【0054】
(実施例2)
実施例1のTAICを2.93部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0055】
(実施例3)
実施例1のTAICを3.42部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0056】
(実施例4)
実施例1のTAICを1.95部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0057】
(実施例5)
実施例1のTAICを1.46部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0058】
(実施例6)
実施例1のTCDMAを4.95部、TMCTSを4.05部、TAICを3.73部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0059】
(実施例7)
実施例1のTCDMAを4.30部、TMCTSを4.70部、TAICを4.87部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0060】
(比較例1)
100mlのスクリュー管にTMCTS3.53部とTDM−DVE6.47部(丸善化学株式会社製)を入れ均一になるまで混合し、その後に白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金1.7%)(和光純薬株式会社製)0.020部を添加し液状の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を寸法が20mm×20mm×1mmの型、及び外形寸法が3.2mm×2.6mm×1.8mm、キャビティ内径がφ2.4mmのポリフタルアミド製表面実装型発光ダイオードのキャビティ部にそれぞれピペッターで流し込み、100℃で1時間、150℃で1時間の条件で加熱し、それぞれ板状の硬化物及び表面実装型発光ダイオードを得た。
【0061】
(比較例2)
比較例1のTMCTSを5.80部に、TDM−DVEの6.47部をTAICの4.20部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で硬化物を得た。
【0062】
(比較例3)
比較例1のTMCTSを5.24部に、TDM−DVEの6.47部をPBの4.76部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で硬化物を得た。
【0063】
上記の実施例と比較例に用いた材料、配合量及び樹脂組成物中のSi−H結合と二重結合の比を表1と表2に示す。
【0064】
【表1】


【表2】

【0065】
(硬化物の評価)
上記の実施例、比較例で得られた板状の硬化物について、成型性と光線透過率を評価した。また、表面実装型発光ダイオードについては、光学素子の封止の状態を外観評価した。以下に具体的な評価方法を示す。
【0066】
(成型性の評価)
硬化性樹脂組成物を加熱した後に、透明性のある板状の硬化物が得られた場合をA、硬化物に白濁や目減り等により、光線透過率の測定に必要な板が得られなかった場合をBと評価した。その評価結果を表3及び表4に示す。
【0067】
(光線透過率測定)
1mm厚の試験片の透過スペクトルを、分光光度計(製品名「U−3410」,日立製作所製)を用いて測定し、500nmである場合における光線透過率を求めた。その評価結果を表3及び表4に示す。
【0068】
(外観評価)
表面実装型発光ダイオードの外観については、硬化物の容積減少による目減り、硬化物とポリフタルアミド製パッケージ又はリードフレームとの界面のはく離等の不具合、硬化物の透明性を目視で調べ、それらの不具合が無い場合をAとし、不具合がある場合をBとした。その評価結果を表3及び表4に示す。
【0069】
【表3】


【表4】

【0070】
実施例1〜7は、成型性、500nmである場合における光線透過率及び発光ダイオードの外観において、いずれも良好な評価結果が得られたことから、発光ダイオードの発光素子を被覆する封止材料として好適であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】光学部材を備えた発光ダイオードの一実施形態を示す概略端面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…光学部材、2…発光素子、5…ケース部材、7…リードフレーム、8…ワイヤー、10…キャビティ、100…発光ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、該発光素子を封止する光学部材と、を備えた発光ダイオードであって、
前記光学部材は、
(A)同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む2個の置換基を少なくとも1組とヒドロシリル基を少なくとも2個とを有するポリオルガノシロキサンと、
(B)少なくとも2個の二重結合を有する化合物と、
(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物である、発光ダイオード。
【請求項2】
同一のケイ素原子に直接結合した炭素原子を含む前記2個の置換基のうち少なくとも一方が、炭素数12以上かつ酸素原子数2以上の置換基である、請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンは、炭素数10以上の置換基をエステル位に有する(メタ)アクリレートを、少なくとも3個のヒドロシリル基を有する環状ポリオルガノシロキサンにより、少なくとも2個のヒドロシリル基が残るようにヒドロシリル化させて得ることができる、請求項1又は2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルである、請求項3記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記環状ポリオルガノシロキサンは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンである、請求項3又は4記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記少なくとも2個の二重結合を有する化合物は、アリル基を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光ダイオード。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−117809(P2009−117809A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257601(P2008−257601)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】