説明

発光モジュールおよび車両用灯具

【課題】照明や灯具への適用を考慮した発光モジュールを提供する。
【解決手段】発光モジュール50は、基板54と、基板54に搭載され、マトリックス状に配列されている複数の半導体発光素子52a〜52dと、半導体発光素子の発光面56a〜56dに対向するように設けられている蛍光体層58と、複数の半導体発光素子のうち少なくとも一部の発光素子の発光面の周囲を囲むように設けられている遮光部60a〜60dと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの発光素子を備えた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間、幅広い範囲の路面を自動車用灯具で照射する際には、ハイビーム用配光パターンを形成する灯具ユニットが用いられることが多い。一方、このようなハイビーム用配光パターンは、対向車や先行車へグレアを与える可能性があるため、更なる改良が求められている。
【0003】
例えば、ロービーム用配光パターンを形成する灯具ユニットを左右方向にスイブルすることで照射範囲を広げた車両用灯具が考案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような灯具は、スイブルのための機構部品が必要であり、装置が複雑化、大型化してしまうとともに、瞬時に配光を切り替えることが難しい。
【0004】
一方、近年、性能の向上が著しい白色発光ダイオード(以下、LED(Light Emitting Diode)と称する。)を光源に用いた車両用灯具の開発も進んでいる。例えば、複数の白色LEDをマトリックス状に配置した光源が考案されている(引用文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−30739号公報
【特許文献2】特開2009−134965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、照明や灯具への適用を考慮した発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、基板と、基板に搭載され、マトリックス状に配列されている複数の発光素子と、発光素子の発光面に対向するように設けられている蛍光部材と、複数の発光素子のうち少なくとも一部の発光素子の発光面の周囲を囲むように設けられている遮光部と、を備えている。
【0008】
この態様によると、遮光部により、発光素子間の光漏れが抑制される。
【0009】
複数の発光素子は、点灯時の光度が相対的に高い第1の発光素子と、点灯時の光度が相対的に低い第2の発光素子とを有してもよい。遮光部は、主として第1の発光素子と該第1の発光素子と隣接する発光素子との間に設けられていてもよい。これにより、第1の発光素子からの光漏れを抑制しつつ、発光モジュール全体に用いられる遮光部を減らすことができるため、コストの低減が図られる。
【0010】
発光素子は、フリップチップ型の素子であってもよい。これにより、例えば、ワイヤボンディングによって基板に実装する発光素子と比較して、配線を基板に接続する領域が必要ないため、発光素子間の間隔を狭めることができる。その結果、隣接する発光素子間の隙間に起因する配光パターンに生じる影を抑制できる。
【0011】
蛍光部材は、板状の蛍光体であってもよい。これにより、蛍光体の加工が容易となる。特に、輝度を向上するための種々の表面加工が可能となる。
【0012】
基板は、熱膨張係数が発光素子の熱膨張係数の±5ppm/℃の範囲内であってもよい。これにより、発光素子の点消灯による繰り返しの温度変化で生じる接続信頼性の低下を抑制できる。
【0013】
発光素子および蛍光部材から出射した光による光源像を、照射方向前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するレンズを更に備えてもよい。レンズは、発光素子または蛍光部材に直接接合されていてもよい。これにより、発光素子からの光または蛍光部材を通過した光がレンズとの界面で吸収、反射されにくくなり、発光モジュールから出射する光束が向上する。
【0014】
本発明の別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、発光モジュールと、発光モジュールの点消灯を制御する制御回路と、を備えた車両用灯具であって、制御回路は、車両用灯具が装着された車両が停車した状態を検出した場合、発光モジュールの点消灯状態を、走行時における照射モードよりも消費電力の低い停車モードとなるように制御する。
【0015】
この態様によると、運転者の操作を必要とせずに車両用灯具の省電力化を実現できる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、照明や灯具への適用を考慮した発光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【図2】図1に示す灯具ユニットの要部を示す斜視図である。
【図3】図1に示す発光モジュールの正面図である。
【図4】本実施の形態に係る車両用灯具により形成された配光パターンの一例を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る発光モジュールの一例を示す概略断面図である。
【図6】図6(a)は、本実施の形態の発光モジュールに好適なLEDチップの構造を説明するための模式図、図6(b)は、比較例のLEDチップの構成を示す模式図である。
【図7】異なる大きさのLEDチップをマトリックス状に配列した状態を示す模式図である。
【図8】異なる形状のLEDチップをマトリックス状に配列した状態を示す模式図である。
【図9】図9(a)は、LEDチップの電極部分が縦方向に並んでいる様子を示す模式図、図9(b)は、LEDチップの電極部分が横方向に並んでいる様子を示す模式図である。
【図10】LEDチップの間隔を場所によって変化させた状態を示す模式図である。
【図11】発光波長の異なる複数種のLEDチップを配列した状態を示す模式図である。
【図12】一枚のエピタキシャル基板に形成された複数のLEDチップを実装基板上に搭載した状態を示す模式図である。
【図13】図13(a)は、マトリックス状に配列されているLEDチップのうち、一部の列(行)のLEDチップをずらした状態を示す模式図、図13(b)は、矩形の複数のLEDチップを斜めに、かつ、マトリックス状に配列した状態を示す模式図である。
【図14】一部のLEDチップの周囲にのみ遮光枠を設けた状態を示す模式図である。
【図15】図15(a)は、遮光枠の側面の一部に遮光膜を形成した発光モジュールの概略断面図、図15(b)は、図15(a)に示す遮光枠の一部の拡大図、図15(c)は、図15(b)に示す遮光枠の一部の変形例を示す図である。
【図16】遮光枠の一部の厚みを薄くした状態を示す模式図である。
【図17】遮光枠がLEDチップを囲む領域の面積をチップによって変更した状態を示す模式図である。
【図18】蛍光体の側面に遮光膜を形成した発光モジュールの概略断面図である。
【図19】遮光枠の一部に反射膜を形成した状態を示す模式図である。
【図20】LEDチップとして紫外線発光チップを用いた発光モジュールの概略断面図である。
【図21】枠で区画される領域の形状が六角形である発光モジュールを示す模式図である。
【図22】区画された蛍光体層の大きさが場所によって異なっている状態を示す模式図である。
【図23】図23(a)〜図23(g)は、蛍光体層の形状を説明するための概略断面図である。
【図24】図24(a)〜図24(f)は、発光モジュールにおける蛍光体層の配置を説明するための概略断面図である。
【図25】図25(a)は、ポッティング法により区画毎に蛍光体層を作成した状態を示す模式図、図25(b)〜図25(d)は、印刷法により一度に蛍光体層を作成した状態を示す模式図である。
【図26】実装基板の一例を示す概略断面図である。
【図27】両面配線の実装基板を示す模式図である。
【図28】図28(a)は、比較例1に係る発光モジュールの概略断面図、図28(b)は、比較例1に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図29】図29(a)は、実施例1に係る発光モジュールの概略断面図、図29(b)は、実施例1に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図30】図30(a)は、実施例2に係る発光モジュールの概略断面図、図30(b)は、実施例2に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図31】図31(a)は、実施例3に係る発光モジュールの概略断面図、図31(b)は、実施例3に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図32】図32(a)は、実施例4に係る発光モジュールの概略断面図、図32(b)は、実施例4に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図33】図33(a)は、実施例5に係る発光モジュールの概略断面図、図33(b)は、実施例5に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図34】図34(a)は、実施例6に係る発光モジュールの概略断面図、図34(b)は、実施例6に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図35】図35(a)は、実施例7に係る発光モジュールの概略断面図、図35(b)は、実施例7に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【図36】図36(a)は、実施例8に係る発光モジュールの概略断面図、図36(b)は、実施例8に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0020】
本実施の形態に係る発光モジュールは、車両用灯具をはじめとする、あらゆる照明や灯具に適用可能なものである。特に、本実施の形態に係る発光モジュールは、発光モジュールが備える複数の発光素子の一部または全部の明るさを制御することで複数の配光パターンを実現する照明や灯具に好適である。
【0021】
(車両用灯具)
はじめに、本実施の形態に係る発光モジュールが適用される灯具の一例として、車両用灯具を説明する。図1は、本実施の形態に係る車両用灯具の概略断面図である。
【0022】
車両用灯具10は、灯具ボディ12と、透光カバー14と、灯具ボディ12および透光カバー14によって形成された灯室16内に収容されている灯具ユニット18と、灯室16内において灯具ユニット18を支持する支持部材としてのブラケット20と、を備える。灯具ユニット18は、直射方式のプロジェクタ型灯具ユニットであり、複数の半導体発光素子を備える発光モジュール22と、投影レンズ24と、投影レンズ24をブラケット20と連結するための連結部材26と、を備える。
【0023】
発光モジュール22は、半導体発光素子としてのLEDチップ22aと、セラミックなどで形成された熱伝導性絶縁基板22bとを備える。発光モジュール22は、その照射軸が灯具ユニット18の照射方向(図10中左方向)と略平行となる車両前方に向けられた状態で、ブラケット20上に載置されている。
【0024】
連結部材26は、略水平に配置された平面部26aと、この平面部26aよりも前方領域にある湾曲部26bとを有する。湾曲部26bは、発光モジュール22から出射した光を反射しないように形状が構成されている。
【0025】
投影レンズ24は、発光モジュール22から出射した光を灯具前方に投影する、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置され、連結部材26の車両前方側先端部に固定されている。投影レンズ24の後方焦点近傍には、発光モジュール22のLEDチップ22aが配置されている。発光モジュール22から出射した光は、投影レンズ24に直接入射する。投影レンズ24に入射した光は、投影レンズ24で集光されて略平行な光として前方に照射される。
【0026】
図2は、図1に示す灯具ユニット18の要部を示す斜視図である。図3は、図1に示す発光モジュール22の正面図である。図2、図3に示すように、発光モジュール22は、複数のLEDチップ22aを有している。本実施の形態に係る発光モジュール22においては、水平方向Hに6個、鉛直方向Vに2個、計12個のLEDチップ22aが、熱伝導性絶縁基板22b上にマトリックス状に配列されている。
【0027】
なお、図1、図3に示すように、四角形のブラケット20の所定の縁部(3つの角部)にはねじ穴28が形成されている。ねじ穴28には、エイミングスクリュー30,32、およびレベリングシャフト34のいずれかの一端が締結されている。また、エイミングスクリュー30,32、およびレベリングシャフト34の他端は、灯具ボディ12のねじ穴(不図示)に締結されている。これにより、ブラケット20は、灯具ボディ12の後面から前方へ離間した状態で灯具ボディ12に取り付けられている。車両用灯具10は、エイミングスクリュー30,32、レベリングシャフト34およびレベリングアクチュエータ36により、灯具ユニット18の光軸を水平方向あるいは垂直方向に調整できるように、構成されている。
【0028】
また、ブラケット20の後方側の面には、放熱フィン38が設けられている。また、放熱フィン38と灯具ボディ12との間には、放熱フィン38に向けて空気を送風し、放熱フィン38を冷却するファン40が設けられている。
【0029】
図4は、本実施の形態に係る車両用灯具10により形成された配光パターンの一例を示す図である。図1に示す車両用灯具10は、発光モジュール22の一部のLEDチップ22aを消灯することで、図4に示すように、車両前方の一部の領域を非照射とする配光パターンPHを形成できる。なお、図4に示す12個の矩形の領域は、LEDチップのそれぞれが照射する領域に対応しており、斜線で示されている領域は、光が照射されている状態を示している。
【0030】
したがって、車両用灯具10は、歩行者42、先行車44、対向車46が存在している領域に対応するLEDチップを消灯することで、歩行者42、先行車44、対向車46に対するグレアを抑制できる。
【0031】
(発光モジュール)
次に、発光モジュールの好適な例について説明する。図5は、本実施の形態に係る発光モジュールの一例を示す概略断面図である。本実施の形態に係る発光モジュール50は、図5に示すように、第1発光ユニット51a〜第4発光ユニット51dを備える。第1発光ユニット51aは、半導体発光素子52aを備える。第2発光ユニット51bは、半導体発光素子52bを備える。第3発光ユニット51cは、半導体発光素子52cを備える。第4発光ユニット51dは、半導体発光素子52dを備える。マトリックス状に配列されている半導体発光素子52a〜52dは、基板54に搭載されている。
【0032】
また、各半導体発光素子52a〜52dの発光面56a〜56dに対向するように蛍光体層58が設けられている。蛍光体層58は、対向する半導体発光素子52a〜52dが発する光を波長変換して出射する光波長変換部材として機能する。なお、発光モジュール50は、蛍光体層58を用いずに必要とする色や波長の光を得ることができる場合は、蛍光体層58を備えていなくてもよい。
【0033】
発光ユニット同士の間隔W1は、発光ユニットの幅W2より小さいとよい。間隔W1は、各発光ユニットのそれぞれが照射する領域の間に隙間が生じないように考慮しながら、実験やこれまでの知見を用いて適宜設計すればよい。発光モジュールを車両用灯具(車両用前照灯装置)に用いる場合、例えば、発光ユニット同士の間隔W1は10〜500μmの範囲で設定されているとよい。なお、各発光ユニットは、半導体発光素子と蛍光体との組合せにより種々の色の光を出射することができる。例えば、青色光を発する半導体発光素子と、青色光を吸収し黄色光に変換する蛍光体と、の組合せにより白色光を実現する発光ユニットであってもよい。また、紫外光を発する半導体発光素子と、紫外光を吸収し青色光に変換する第1の蛍光体と、紫外光を吸収し黄色光に変換する第2の蛍光体と、の組合せにより白色光を実現する発光ユニットであってもよい。
【0034】
半導体発光素子52a〜52dは、各半導体発光素子の側面および下面を覆うように遮光部60a〜60dが設けられている。遮光部60a〜60dは、それぞれ分離されていてもよいし、図5に示すように一体で形成されていてもよい。また、遮光部60a〜60dは、複数の半導体発光素子のうち少なくとも一部の半導体発光素子の発光面の周囲を囲むように設けられていてもよい。
【0035】
このような遮光部60a〜60dを備える発光モジュール50においては、半導体発光素子52aの光の一部が、隣接する半導体発光素子52bの発光面56bと対向する領域62bの蛍光体層58に向かって照射されても、遮光部60aによって遮られる。また、半導体発光素子52bの光の一部が、隣接する半導体発光素子52a,52cの発光面56a,56cと対向する領域62a,62cの蛍光体層58に向かって照射されても、遮光部60bによって遮られる。また、半導体発光素子52cの光の一部が、隣接する半導体発光素子52b,52dの発光面56b,56dと対向する領域62b,62dの蛍光体層58に向かって照射されても、遮光部60cによって遮られる。また、半導体発光素子52dの光の一部が、隣接する半導体発光素子52cの発光面56cと対向する領域62cの蛍光体層58に向かって照射されても、遮光部60dによって遮られる。
【0036】
このように、本実施の形態に係る発光モジュール50は、少なくとも一つの半導体発光素子から発する光によって、隣接する半導体発光素子の発光面と対向する領域の蛍光体層58が光ることが抑制される。その結果、例えば、発光ユニット51aが点灯し、発光ユニット51aに隣接している発光ユニット51bが消灯している場合に、発光ユニット51bの照射対象領域が意図せず照らされることが抑制される。また、少なくとも一つの半導体発光素子の光の一部が、隣接する半導体発光素子の照射領域に向かって照射されても、半導体発光素子の側面を覆う遮光部によって遮られる。
【0037】
したがって、点灯している半導体発光素子に隣接する半導体発光素子が消灯している場合に、消灯している半導体発光素子を備える発光ユニットの照射対象領域が意図せず照らされることが抑制される。つまり、複数の半導体発光素子間の光漏れが抑制される。これにより、本実施の形態に係る発光モジュールを備えた車両用灯具10が、図4に示すような配光パターンを形成した場合、消灯している半導体発光素子に対応する領域に存在する車両の乗員や歩行者に対して、グレアを与えることが抑制される。
【0038】
なお、前述の「マトリックス状に配列」とは、少なくとも、複数の発光素子がm×1(mは2以上の整数)、1×n(nは2以上の整数)、m×n(m、nはいずれも2以上の整数)で配列されている場合が含まれる。2つの配列方向は、必ずしも直交している必要はなく、全体として平行四辺形や台形の領域に配列されていてもよい。また、複数の発光素子は、全てが単一の種類でなくてもよく、複数種の発光素子を組み合わせたものであってもよい。
【0039】
ところで、従来の複数の白色LEDをマトリックス状に配置した光源を備える車両用灯具では、並んでいる複数の白色LEDの間の隙間が、配光パターンに暗い影として投影されてしまう場合がある。このような状況で車両を運転した場合、運転者にとって影が煩わしく感じる可能性がある。
【0040】
そこで、このような点に関して、発明者ら鋭意検討した結果、本実施の形態に係る発光モジュールでは、以下に述べる様々な工夫や構成を適宜採用することで改善できることが明らかとなった。また、半導体発光素子間の隙間などに起因する配光パターンに生じる影と、配光パターン内の消灯領域への光漏れと、の抑制を高度なレベルで両立し得ることも可能となる。
【0041】
以下の実施の形態で述べる工夫の一例を列挙すると次の通りとなる。
(1)発光素子(LEDチップ)の構造、大きさ、形状など
(2)遮光部の材質、形状、表面形状など
(3)蛍光部材の材質、形状、表面処理など
(4)実装基板の物性、形状など
(5)レンズの構成、材質、形状など
(6)制御回路
なお、以下の説明では、工夫が施されている構成を中心に説明するものとし、その他の構成は不図示として説明を適宜省略する。
【0042】
(1:LEDチップ)
[チップ構造]
図6(a)は、本実施の形態の発光モジュールに好適なLEDチップの構造を説明するための模式図、図6(b)は、比較例のLEDチップの構成を示す模式図である。基板54上に複数のLEDチップをマトリックス状に搭載する場合、フェースダウンタイプ(フリップチップ型)(図6(a)参照)のLEDチップ64、または、フェースアップタイプのLEDチップ66(図6(b)参照)の採用が考えられる。
【0043】
しかしながら、図6(b)に示すように、フェースアップタイプのLEDチップ66を採用する場合、チップの上面66aと基板54とを結ぶワイヤボンディング68のために、チップ間隔を空ける必要がある。その結果、配光パターンに影が生じやすくなる。一方、図6(a)に示すように、フリップチップ型のLEDチップ64であれば、チップ下面の突起電極(不図示)を介して基板と接続されるため、ワイヤボンディングのような配線を基板に接続する領域が必要ないため、LEDチップ間の間隔を狭めることができる。その結果、隣接するLEDチップ64間の隙間に起因する配光パターンに生じる影の発生を抑制できる。
【0044】
[チップサイズ]
図7は、異なる大きさのLEDチップをマトリックス状に配列した状態を示す模式図である。発光モジュールを車両用灯具に適用する場合、前照灯の配光パターンにおいて、ホットゾーンと呼ばれる高い光度(例えば、8万cd以上。)が要求される領域がある。そこで、基板上の中央部にホットゾーンを形成する大型(例えば、1mm×1mm。)のLEDチップ70を配列する。一方、その周辺部はコストダウンのために小型(例えば、0.3mm×0.3mm。)のLEDチップ72を配列する。これにより、ホットゾーンの形成を可能としつつ、コストが低減された発光モジュールを実現することができる。
【0045】
[チップ形状]
図8は、異なる形状のLEDチップをマトリックス状に配列した状態を示す模式図である。発光モジュールを車両用灯具に適用する場合、配光パターンの上部の一部に斜めのカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成できることが要求される場合がある。そこで、基板上の一部に、斜めのカットオフラインを形成する三角形のLEDチップ74を配列する。一方、その周辺部は通常のLEDチップ70を配列する。LEDチップ74の斜辺は、水平方向に対して10°〜60°程度の角度を有することが好ましい。より好ましくは、15°、30°、45°などである。
【0046】
[チップ内の電極方向]
図9(a)は、LEDチップの電極部分が縦方向に並んでいる様子を示す模式図、図9(b)は、LEDチップの電極部分が横方向に並んでいる様子を示す模式図である。LEDチップ70において、電極部分70aでは輝度が相対的に低く、電極70a間の中央部分では輝度が相対的に高くなるため、発光面内で輝度ムラが生じている。また、LEDチップ間には隙間(100〜300μm程度)があるので、その部分における輝度も当然下がっており、発光モジュール全体としても輝度ムラが生じている。このような輝度ムラは、配光パターンにおいて影(黒スジ)として表れることがある。
【0047】
そこで、左右(水平)方向の黒スジを抑制したい場合は、図9(a)に示すように、電極方向が縦方向になるようにLEDチップ70を配列する。一方、上下(鉛直)方向の黒スジを抑制したい場合は、図9(b)に示すように、電極方向が横方向になるようにLEDチップ70を配列する。
【0048】
[チップ間隔]
図10は、LEDチップの間隔を場所によって変化させた状態を示す模式図である。例えば、前述のホットゾーンを形成するLEDチップ70が配列されている中央部では、チップ間の間隔C1が狭まっており、チップの配置密度が高くなっているため、配光パターンにおけるホットゾーンの光度を高めることができる。一方、LEDチップ76が配列されている周辺部では、チップ間の間隔C2が広げられており、チップの配置密度が低くなっているため、配光パターンの周辺部を照射するチップの数を減らすことができ、発光モジュール全体のコストダウンが可能となる。
【0049】
[発光波長(発光色)の異なる複数種のLEDチップの組合せ]
図11は、発光波長の異なる複数種のLEDチップを配列した状態を示す模式図である。図11に示す発光モジュールは、白色光を発するLEDチップ70と、アンバ光を発するLEDチップ78とを備えている。これにより、ヘッドライトとターンシグナルランプとを一体化した車両用灯具を実現できる。また、紫外線(UV)を発するLEDチップ80、赤外線(IR)を発するLEDチップ82を更に組み込むことにより、暗視カメラ用の光源機能を発光モジュールに付加することができる。
【0050】
[エピタキシャル層の分割]
図12は、一枚のエピタキシャル基板に形成された複数のLEDチップを実装基板上に搭載した状態を示す模式図である。ばらばらのLEDチップを対で基板上に搭載する場合、搭載機の精度上100μm程度の隙間がチップ間に生じる。そこで、一枚のエピタキシャル基板84上に複数のLEDチップを形成し、チップ間にあるエピタキシャル基板をダイシングブレードによりハーフカットして電気的に切断(物理的には一体)することによって、個々のLEDチップに分割する。これにより、チップ間の隙間を小さくできるとともに、各LEDチップの個別調光が可能となる。
【0051】
[チップ配置]
図13(a)は、マトリックス状に配列されているLEDチップのうち、一部の列(行)のLEDチップをずらした状態を示す模式図、図13(b)は、矩形の複数のLEDチップを斜めに、かつ、マトリックス状に配列した状態を示す模式図である。図13(a)に示すように、中央の列に配置されているLEDチップ86は、手前または奥側の列に配置されているLEDチップ88に対して図の右方向に距離C3だけずらされている。これにより、中央の列に配置されているLEDチップ86同士の隙間と、手前または奥側の列に配置されているLEDチップ88同士の隙間と、が距離C3だけずれているので、発光モジュールが形成する配光パターンの縦方向(鉛直方向)の黒スジが目立ちにくくなる。
【0052】
また、図13(b)に示すように、隣接するLEDチップ90との隙間が斜めになるように、各LEDチップ90をマトリックス状、かつ、斜めに配列されている。そのため、発光モジュールが形成する配光パターンの縦方向(鉛直方向)および横方向(水平方向)の黒スジが目立ちにくくなる。
【0053】
(2:遮光部)
[部分的に設置]
図14は、一部のLEDチップの周囲にのみ遮光枠を設けた状態を示す模式図である。前述のように、隣接するLEDチップからの光漏れを防止するためには、発光面の周囲を囲むように遮光枠を設けることが好ましい。しかしながら、LEDチップ間の隙間を広げすぎると配光パターンの一部に暗い影が投影されてしまうため、LEDチップ間の隙間をあまり広げることもできず、遮光枠の厚みも薄くしなければならない。加えて、全てのLEDチップの間に遮光枠を設けると、部品が大型化してしまう。薄い遮光枠の作製には微細加工が必要であり、特に遮光枠が大型化すると作製の難易度が高まり、収率の低下や製造時間の増大から製造コストの上昇を招く可能性がある。
【0054】
光漏れが生じやすいのは、例えば、図14に示すように、基板上の中央部に配列されているホットゾーンを形成するLEDチップ70である。このようなLEDチップ70は、ホットゾーンを形成するために点灯時の光度が相対的に高い。一方、LEDチップ70の周囲には、点灯時の光度が相対的に低いLEDチップ92が配置されている。そして、遮光枠94は、主としてLEDチップ70とLEDチップ70と隣接するLEDチップ92との間に設けられている。これにより、LEDチップ70からの光漏れを抑制しつつ、発光モジュール全体に用いられる遮光枠94を簡素化、小型化することができるため、コストの低減が図られる。
【0055】
[枠の側面を着色]
図15(a)は、遮光枠の側面の一部に遮光膜を形成した発光モジュールの概略断面図、図15(b)は、図15(a)に示す遮光枠の一部の拡大図、図15(c)は、図15(b)に示す遮光枠の一部の変形例を示す図である。発光モジュール100は、基板102と、基板102上に配列されているフリップチップタイプのLEDチップ104a〜104dと、各LEDユニットの周囲に配置されている遮光枠106a〜106eとを備えている。
【0056】
図15(b)に示すように、遮光枠106a〜106e(以下、遮光枠106と称する)は、ガラスなどの透明な材料からなる、薄板状に形成されている本体部108と、本体部108の一方の側面に形成された着色部110と、を有する。着色部110は、光を遮光する遮光膜として機能するものであれば材質や厚みは特に限定されない。これにより、遮光枠106のうち、遮光部として機能する部分の幅を抑えることができ、配光パターンに生じる影の発生を抑制できる。また、図15(c)に示すように、本体部108の頭頂部にのみ着色部112を形成した遮光枠であってもよい。着色部は、実質的に遮光部として機能するものであれば、特に構成は限定されない。例えば、少なくとも光の一部を反射または減衰させるものであればよい。
【0057】
[枠の厚みを部分的に変更]
図16は、遮光枠の一部の厚みを薄くした状態を示す模式図である。遮光枠114の厚みを薄くすることは、製造上の難易度を伴う。そこで、光漏れの観点から遮光枠の厚みを特に薄くする必要がある部分だけ厚みを薄くし、それ以外の部分については製造が容易な厚みとする。図16に示すように、基板上の中央部には、ホットゾーンを形成するLEDチップ70が配列されている。そこで、LEDチップ70間の隙間に配置されている遮光枠114aの厚みを他の部分114bよりも薄くすることで、遮光枠114全体の製造コストを低減できる。
【0058】
[枠の大きさを部分的に変更]
図17は、遮光枠がLEDチップを囲む領域の面積をチップによって変更した状態を示す模式図である。図17に示すように、ホットゾーンを形成するLEDチップ70の一つを囲む領域の面積は、LEDチップ70の周囲にあるLEDチップ116の一つを囲む領域の面積よりも小さい。つまり、LEDチップ70を囲む遮光枠118は、区画されている複数の領域の大きさが場所によって異なるように構成されている。その結果、ホットゾーンを形成するLEDチップ70をより密集して配置することが可能となり、ホットゾーンの最大光度を上げることができる。
【0059】
[遮光膜]
図18は、蛍光体の側面に遮光膜を形成した発光モジュールの概略断面図である。発光モジュール120は、基板122と、基板122上に配列されているフリップチップタイプのLEDチップ124a〜124dと、各LEDユニットの周囲に配置されている遮光枠126a〜126eと、各LEDユニットの上方に設けられている蛍光体層128a〜128dと、を備えている。
【0060】
蛍光体層128a〜128dの各側面には、遮光膜130a〜130eが形成されている。遮光膜130a〜130eは、例えば、金属や合金で構成されている。発光モジュール120においては、遮光枠126a〜126eおよび遮光膜130a〜130eによって遮光部が構成されている。これにより、遮光枠の形状を単純にできる。
【0061】
[反射膜が形成されている遮光枠]
図19は、遮光枠の一部に反射膜を形成した状態を示す模式図である。発光モジュール132は、LEDチップ124a〜124dおよび蛍光体層128a〜128dのそれぞれの間に、遮光枠134a〜134eが設けられている。遮光枠134a〜134e(以下、遮光枠134と称する)は、LEDチップ124a〜124dの側部に隣接している鉛直部136aと、鉛直部136aの上方であって蛍光体層128a〜128dの側部に隣接しているテーパ部136bとを有する。
【0062】
一般的に、遮光枠134の全てに反射膜を形成することで発光モジュールが実現できる光度は高まる。しかしながら、テーパ部136bに反射膜を形成すると、蛍光体層128a〜128dからの蛍光を主として反射するので、色ムラとなる。そこで、発光モジュール132は、テーパ部136b(蛍光体層部)には反射膜が形成されておらず、鉛直部136aの側面にのみ反射膜138が形成されている。これにより、色ムラの少ない発光モジュールが実現される。
【0063】
[紫外線発光チップ]
図20は、LEDチップとして紫外線発光チップを用いた発光モジュールの概略断面図である。白色LEDは、通常、青色発光LEDチップと黄色蛍光体とで構成される。この構成では、青色の透過光が分離しやすいため、色ムラが生じやすい。そこで、図20に示すように、発光モジュール140は、紫外線を発光するLEDチップ142a〜142dと、LEDチップ142a〜142dの発光面と対向するように設けられている蛍光体層144a〜144dと、を備える。蛍光体層144a〜144dは、紫外線により励起され青色の光を発する青色蛍光体と、紫外線により励起され黄色の光を発する黄色蛍光体と、を含む。また、LEDチップ142a〜142dおよび蛍光体層144a〜144dのそれぞれの間に、遮光枠146a〜146eが設けられている。
【0064】
発光モジュール140は、LEDチップとして紫外線発光タイプのチップを用いているため、色ムラが生じにくい。そのため、遮光枠146a〜146eの側面の全面に反射膜148を形成することが可能となり、遮光枠の側面の一部のみに反射膜を形成する場合と比較して構成が単純となり、遮光枠の製造が容易となる。
【0065】
[枠で区画される領域の形状]
図21は、枠で区画される領域の形状が六角形である発光モジュールを示す模式図である。図21に示すように、発光モジュール150が備える遮光枠152は、LEDチップ70の一つを囲む領域の形状が六角形である。遮光枠の仕切り壁の形状が四角形の場合、配光パターンに投影される影の方向は、縦方向(鉛直方向)および横方向(水平方向)である。一方、遮光枠の仕切り壁の形状が六角形の場合、配光パターンに形成される影は、縦方向(鉛直方向)および横方向(水平方向)、以外の方向にも生じる。そのため、配光パターンに生じる影が目立ちにくくなる。なお、枠で区画される領域の形状は、五角形や八角形などの多角形であってもよい。
【0066】
(3:蛍光体層)
[蛍光体の材質]
蛍光体層の構成は、前述の種々の発光モジュールに適用できるものであれば、特に限定されない。例えば、蛍光体を分散させた樹脂組成物やガラス組成物、蛍光セラミックが挙げられる。以下では、蛍光体の構成として好ましい幾つかの形態について例示する。
【0067】
白色LEDチップ間の輝度ムラ、色ムラを低減するためには、青色光と黄色光、または、赤色光と青色光と緑色光、の混合が重要になる。そのためには、蛍光体層内における蛍光体を均一に拡散(分散)させることが好ましい。そこで、以下の構成が挙げられる。
(ア)粉体状蛍光体の粒子径(メディアン径)を20μm以下とする。
(イ)UV励起の蛍光体を用いる。
(ウ)蛍光体層に拡散剤としてシリカやアルミナ粒子を添加する。
(エ)拡散剤として泡(ボイド)を入れる。
(オ)YAG(ガーネット層)内にYAP(ペロブスカイト相)を混入させる。
【0068】
[蛍光体層の大きさ]
図22は、区画された蛍光体層の大きさが場所によって異なっている状態を示す模式図である。蛍光体層154は、ホットゾーンを形成するLEDチップと対向している領域R(網点領域)における一つの区画156の大きさを、それ以外の領域における区画158よりも小さくしている。これにより、発光モジュールが形成する配光パターンにおけるホットゾーンの光度を上げることができる。
【0069】
[蛍光体層の形状]
図23(a)〜図23(g)は、蛍光体層の形状を説明するための概略断面図である。各図に示している発光モジュールにおいて、蛍光体層は、遮光のために遮光枠内に形成されている。なお、蛍光体層の製造には、形状や寸法の高精度な加工制御が重要である。そのため、蛍光体層は、板状の蛍光体が好ましい。これにより、蛍光体の加工が容易となる。特に、輝度を向上するための種々の表面加工(例えば凹凸の形成)が可能となる。
【0070】
図23(a)に示す蛍光体層160は、台形状である。図23(b)に示す蛍光体層162は、Y字形状である。図23(c)に示す蛍光体層166は、側面に反射部168が形成されている。図23(d)に示す蛍光体層170は、側面に遮光部172が形成されている。図23(e)に示す蛍光体層174は、台形状であり、側面および底面に波長選択性フィルタ176が形成されている。したがって、LEDチップ178から出射された光は、波長選択性フィルタ176により選択された波長の光が蛍光体層174に到達する。
【0071】
図23(f)に示す蛍光体層180は、出射面180aの上方に光拡散相182が設けられている。これにより、蛍光体層180から出射する光の輝度ムラを低減することができる。図23(g)に示す蛍光体層184は、入射面184aの下方に光拡散相186が設けられている。これにより、LEDチップ188から出射する光は、光拡散相186によって輝度ムラが低減されてから、蛍光体層184に入射する。なお、光拡散相と蛍光体層とは、接着剤を用いずに、熱圧着、常温接合などの方法で接合することが好ましい。これにより、光が接着剤層を通過する際の散乱や減衰を防止できるため、発光モジュール全体の光取り出し効率が向上する。
【0072】
[蛍光体層の配置]
図24(a)〜図24(f)は、発光モジュールにおける蛍光体層の配置を説明するための概略断面図である。蛍光体層は、輝度の向上や色ムラ抑制を考慮して、LEDチップと分離したり、レンズ、導光体、反射鏡などと組み合わせたりするために、種々の配置をとりうる。
【0073】
図24(a)に示す蛍光体層190は、LEDチップ192と離間した位置に配置されている。これにより、LEDチップ192や蛍光体層190の放熱性が向上し、発光モジュール全体の特性が改善する。また、蛍光体層190は、遮光枠194に囲まれており、LEDチップ192の発光面192aよりも面積の小さい出射面190aを有している。これにより、発光モジュールの輝度が向上する。
【0074】
図24(b)に示す蛍光体層196は、その出射面196aの前方にレンズ198が設けられている。これにより、蛍光体層196から出射した光を集光できる。図24(c)に示す蛍光体層200は、その中心200aがLEDチップ202の中心202aに対してずれるように設けられている。
【0075】
図24(d)に示す蛍光体層204は、導光体206の出射面206aの上方に配置されている。導光体の入射面206bは、LEDチップ208の発光面208aと対向している。このように、LEDチップ208が発する光が導光体206を通過してから蛍光体層204に入射することで光の照射範囲が規制される。これにより、複数のLEDチップ間の光漏れが抑制される。
【0076】
ここで、導光体206は、LEDチップが発する光を透過させることができる透光性(透明)材料を有する。透光性材料としては、例えば、透明な樹脂材料などの有機材料、透明な無機ガラスなどの無機材料、有機材料と無機材料との混合物、ゾル・ゲル材料、などが挙げられる。例えば、樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0077】
図24(e)に示す発光モジュールは、蛍光体層190とLEDチップ192との間にレンズ210が配置されている点に特徴がある。これにより、LEDチップ192が出射した光は、レンズ210で集光されてから蛍光体層190に入射する。図24(f)に示す発光モジュールは、反射鏡212を用いてLEDチップ192の下方へ向かう光を集束し、蛍光体層190へ向かわせている点に特徴がある。
【0078】
[蛍光体層の形成方法]
図25(a)は、ポッティング法により区画毎に蛍光体層を作成した状態を示す模式図、図25(b)〜図25(d)は、印刷法により一度に蛍光体層を作成した状態を示す模式図である。図25(b)は、印刷方向をLEDチップに対応する各区画の対角線の方向に沿って印刷した場合、図25(c)は、印刷方向をLEDチップに対応する各区画の縦辺の方向に沿って印刷した場合、図25(d)は、印刷方向をLEDチップに対応する各区画の横辺に沿って印刷した場合、を示している。
【0079】
図25(a)に示すように、蛍光体層214は、各LEDチップに対応するように区画された複数の蛍光体214aがマトリックス状に配置されている。蛍光体層214をポッティング法により区画毎に形成した場合、区画の各辺の内側に矩形のムラ214bが発生するため、目視で気になる。
【0080】
蛍光体層の形成方法としては、粉体蛍光体を樹脂と混合し、ペースト状にしたものを印刷によって形成する方法もある。そこで、図25(b)〜図25(d)に示すように、印刷方向を一方向に揃えることにより、色ムラ214c〜214eを一定方向に制御できる。
(4:実装基板)
[線膨張係数]
発光モジュールは、1枚の実装基板上に多くのLEDチップを搭載する。そこで、発光モジュールの熱サイクル試験で実装基板にクラックを発生させないために、実装基板の線膨張係数をLEDチップの熱膨張係数の±5ppm/℃の範囲内に規定する。これにより、LEDチップの点消灯による繰り返しの温度変化で生じる接続信頼性の低下を抑制できる。なお、LEDチップがGaNの場合、その熱膨張係数は約7ppm/℃である。実装基板の主成分としては、アルミナ、AlN、Si、SiOなどが好適である。
【0081】
[熱伝導率]
前述のように、発光モジュールは、1枚の実装基板上に多くのLEDチップを搭載する。そこで、実装基板の熱伝導率は、発光モジュールの他の性能に大きく影響しない範囲で、高くするとよい。また、ホットゾーンに対応する領域を照射するLEDチップが搭載される実装基板の部分は、それ以外の部分よりも熱伝導率の高い実装基板としてもよい。
【0082】
[実装基板の彫り込み]
図26は、実装基板の一例を示す概略断面図である。発光モジュール216は、実装基板218と、実装基板218の各凹部218aに配置されたLEDチップ220と、LEDチップの上部に配置された蛍光体層222と、を備える。各凹部218aは、実装基板218を彫り込むことで形成されている。そのため、各凹部218aを囲むように遮光部218bが同時に形成される。このように、実装基板218を彫り込んで凹部218aを形成することで、遮光枠を別部材として基板上に配置する必要がなくなる。その結果、発光モジュールの組立て工数が低減され、コストダウンが可能となる。なお、実装基板の材料としては、例えば、シリコンを用いることができる。
【0083】
[配線パターン]
図27は、両面配線の実装基板を示す模式図である。図27に示すように、LEDチップが3列以上の場合、両面配線の実装基板224を使用することが好ましい。図27に示すように、手前側の行にあるLEDチップ226aと接続されている配線228a、および、奥側の行にあるLEDチップ226cと接続されている配線228cは、実装基板224の表面224aに形成されている。一方、真ん中の行にあるLEDチップ226bと接続されている配線228bは、実装基板224の裏面224bに形成されている。これにより、基板面積を減らすことができる。
【0084】
[反射部]
前述の反射部のうち、LEDチップの発光面より上方の光反射面以外は光を吸収する色(黒色など)にして迷光を抑えるとよい。
【0085】
(5:レンズ)
[レンズの接合方法]
図24(b)に示すように、レンズを蛍光体層に接合する場合がある。また、レンズをLEDチップに接合してもよい。このようなレンズは、LEDチップおよび蛍光体層から出射した光による光源像を、照射方向前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するものであってもよい。この場合、有機系接着材を使用せずに接合することが好ましい。余分な層が増えると、層同士の界面で散乱や屈折が生じる可能性が高まるためである。そこで、レンズと蛍光体等とを、常温接合、界面活性化接合、陽極接合など種々の方法により、接着剤レスで接合する。これにより、LEDチップからの光または蛍光体層を通過した光がレンズとの界面で吸収・反射されにくくなり、発光モジュールから出射する光束が向上する。
【0086】
[陽極接合]
基板や遮光枠がシリコン製であり、レンズに用いるガラスがアルカリ金属を含有している場合、基板や遮光枠とレンズとを陽極接合(500℃、500V程度の加熱、電圧を加えることにより、ガラス中のアルカリ金属をシリコン中に拡散させて接合する技術)ができる。これにより、発光モジュールの気密封止が可能となる。
【0087】
[線膨張係数]
前述の陽極接合を行う場合、ガラスの線膨張係数をシリコンの線膨張係数である3ppm/℃に近づけることが好ましい。具体的には、レンズに用いるガラスとしては、線膨張係数が1〜10ppm/℃の範囲にある材料が好ましい。
【0088】
[レンズアレイ]
LEDチップがアレイ(マトリックス)状に配列されている上述の発光モジュールに、レンズアレイを搭載してもよい。レンズアレイは、各LEDチップに対応するレンズを一枚の板状の部材に複数形成したものである。このようなレンズアレイとしては、例えば、特表2006−520518に開示されている。本実施の形態に係る発光モジュールは、このようなレンズアレイを用いても、遮光部を備えているため光漏れが抑制される。なお、レンズアレイを樹脂による一体成形により作製しコストを低減してもよい。
【0089】
[CPCレンズ]
レンズアレイの一種とし、CPCレンズを利用してもよい。これにより、個々の発光ユニット内の色ムラが解消できる。
【0090】
[レンズのぼかし]
縦方向のみレンズにぼかしを入れてもよい。LEDアレイを全点灯させた時、発光ユニット(1つのLEDチップ+1つの蛍光体)間に生じる暗部が黒スジとして縦方向に投影されてしまうような場合、最終出射レンズである図1に示す投影レンズ24(PESレンズ)等の縦方向にぼかしを入れてもよい。
【0091】
また、横方向のみレンズにぼかしを入れてもよい。LEDアレイを全点灯させた時、発光ユニット間に生じる暗部が黒スジとして横方向に投影されてしまうような場合、図1に示す投影レンズ24の横方向にぼかしを入れてもよい。
【0092】
また、斜め方向のみレンズにぼかしを入れてもよい。LEDアレイを全点灯させた時、発光ユニット間に生じる暗部が黒スジとして斜め方向に投影されてしまうような場合、図1に示す投影レンズ24の斜め方向にぼかしを入れてもよい。なお、縦、横、斜め方向のぼかしを適宜組み合わせてもよい。
【0093】
[光ファイバアレイ]
光ファイバアレイを用いて輝度ムラ、色ムラを低減してもよい。LEDチップ上もしくは蛍光体層上に光ファイバを束にした導光体層を設置することによって、輝度ムラ、色ムラを低減できる。
【0094】
[平板マイクロレンズ]
平板マイクロレンズを設置してもよい。板状の透明体に高屈折率もしくは低屈折率成分を分布させることによって光学レンズを形成してもよい(GRINレンズ)。
【0095】
[空間充填]
図1に示す車両用灯具10では、LEDチップ22aから出射した光は投影レンズ24に到達するまでに空気層を通過する。そのため、界面反射により光束の取り出し効率に改善の余地がある。そこで、このような空気層が介在しないような構成が好ましい。例えば、投影レンズ24と発光モジュール22との間をシリコーンゲルで充填するとよい。
【0096】
このように、レンズと発光モジュールの間にゲルなどを充填して光学的に接続しつつ、機械的には接着していない(密着)場合、発光モジュールをデザインの異なる車両用灯具(前照灯)に適用できる。
【0097】
[蛍光体レンズ]
蛍光体自体をレンズ形状に加工し、LEDチップに搭載した発光モジュールとしてもよい。蛍光体が凸レンズ状なため、臨界角による光の閉じこめがなく、発光モジュール全体としての光束が向上する。
【0098】
(6:制御回路)
[停車時の省電力化]
車両は、信号待ち等で停車中の場合、路面を照射する必要はないが、他車から認知されるために点灯が必要であった。また、従来のバルブタイプの光源を用いた車両では、停車時にヘッドライトを消灯すると、バルブ寿命が短くなる問題があった。しかしながら、本実施の形態に係る発光モジュールでは、光源としてLEDを用いているため、点消灯による光源寿命への影響は少ない。そこで、安全性と省電力を両立するために、停車中は電流を低下または遮断する省電力モードを設定することが可能である。
【0099】
図1に示す車両用灯具10は、発光モジュール22と、発光モジュール22の点消灯を制御する制御回路(不図示)と、を備えている。制御回路は、車両用灯具が装着された車両が停車した状態を検出した場合、発光モジュールの点消灯状態を、走行時における照射モードよりも消費電力の低い停車モードとなるように制御する。これにより、運転者の操作を必要とせずに車両用灯具の省電力化を実現できる。
【0100】
[通信機能の付加]
前述の制御回路は、発光モジュールのLEDの点消灯制御を行うことができる。LEDの点消灯速度は速いため、パルス点灯させることにより情報を発信することができる。そこで、制御回路は、ADB(Adaptive Driving Beam)用の点消灯制御機能だけでなく、車車間(自車と他車)および路車間(信号機と車等)の通信制御機能を備えてもよい。
【0101】
[衝突時のフラッシュ]
近年、業務車両を中心にドライブレコーダの搭載が進んでいる。しかし、搭載されているカメラなどの撮像手段の性能は低く、特に夜間には光量不足により画像が不鮮明になることがある。そこで、車両用灯具10の制御回路は、衝突の瞬間を検知する検知手段からの情報に基づいて衝突の瞬間を検知した場合、発光モジュール22の光量を上げる。これにより、車両が備える撮像手段により鮮明に事故を記録できる。
【0102】
[点消灯時の制御]
車両用灯具10におけるADBによる配光制御の場合、他車が出現したときには、他車が存在する領域を照射しているLEDチップを瞬時に消灯させないと他車へグレアを与えてしまう。一方、他車がいなくなった瞬間にそれまで消灯していたLEDチップを点灯した場合には、運転者に違和感を与える。そこで、制御回路は、それまで消灯していたLEDチップを点灯させる場合には、徐々に光量が増すようにLEDチップへの電流(電圧)を制御する。
【0103】
[スポットライト]
ADBによる配光制御は、グレア防止のために複数のLEDチップの一部を部分的に消灯することが主な目的である。しかしながら、制御回路は、歩行者などを検出した場合には、ドライバに注意喚起するために、歩行者が存在する領域を照射するLEDチップの光量をスポット的に上げる制御を行ってもよい。
【実施例】
【0104】
以下、発光モジュールを実施例および比較例を用いて更に詳述する。はじめに、個々のLEDを調光できるように配線した窒化アルミ製の実装基板上に、大きさ1×1mm、発光ピーク波長450nmの青色LEDチップを4個搭載する。次に、シリコンを微細加工した遮光枠を搭載し、蛍光体層を実装してLEDパッケージ(以下、「発光モジュール」と称する。)を作製した。
【0105】
この発光モジュールをアルミダイキャスト製のヒートシンクに載せて、4個のLEDチップに700mAの電流を流して10分間安定させた。発光モジュールの光出射面の正面(発光モジュール上面)から、コニカミノルタ製の2次元色彩輝度計CA1500で輝度を測定し、発光モジュールの長手方向の輝度分布を測定した。ここで、長手方向は、各LEDチップの発光面のほぼ中心をつないだ方向である。
【0106】
その後、1個のLEDチップの電流を遮断して輝度分布を測定し、更に消灯部の輝度を測定した。消灯部の輝度が十分低く、遮光できている発光モジュールを焦点距離40mmのφ60の平凸レンズを備えた灯具に設置した。発光モジュールを点灯させて25m先のスクリーンへ投影して光度分布を測定した。その後、輝度測定と同じように1個のLEDの電流を遮断して、再度光度分布を測定した。対向車や先行車、歩行者にグレアを与えないためには、消灯したLEDチップに対応する領域の光度を625cd以下に保つ必要がある。
【0107】
(比較例1)
図28(a)は、比較例1に係る発光モジュールの概略断面図、図28(b)は、比較例1に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。図28(b)において、曲線S1は、4個のLED全てが点灯している状態の輝度分布、曲線S2は、LEDチップを1個だけ消灯した状態の輝度分布、を示している。なお、以下の各実施例における輝度分布においても同様である。
【0108】
比較例1に係る発光モジュール300は、基板302と、基板302に搭載されている複数のLEDチップ304と、複数のLEDチップ304を覆う大きさの一枚のYAG焼結体からなる蛍光体層306と、基板302に保持され、蛍光体層306の外周部を支持する外枠308と、を備える。
【0109】
発光モジュール300においては、個々のLEDチップ304も蛍光体層306も、隣接する発光部分(発光面)を光学的に分離(遮光)するための構造物(構成)は有していない。そのため、LEDチップ1個を消灯しても、その部分の輝度(図28(b)に示す曲線S2の最低部分)は1.5cd/mmと遮光が不十分であった。
【0110】
(実施例1)
図29(a)は、実施例1に係る発光モジュールの概略断面図、図29(b)は、実施例1に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。なお、実施例1に係る発光モジュールにおいて、比較例1と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0111】
発光モジュール310においては、LEDチップ304間には遮光する構造物は設置していない。一方、各蛍光体層312は、1個のLEDチップ304を覆う大きさのYAG焼結板からなり、その側面には銀ペースト314が塗布されている。これにより、隣接する蛍光体層312からの光が遮光される。その結果、LEDチップ1個を消灯すると、その部分の輝度(図29(b)に示す曲線S2の最低部分)が0.3cd/mmと大幅に輝度が低減し、遮光の効果が現れている。
【0112】
(実施例2)
図30(a)は、実施例2に係る発光モジュールの概略断面図、図30(b)は、実施例2に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。なお、実施例2に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0113】
発光モジュール320においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した三角枠321を設置して遮光した。これにより、隣接するLEDチップ304からの光が遮光される。一方、蛍光体層322は、1個のLEDチップ304を覆う大きさのYAG焼結板からなるが、その側面には何も塗布されていない。その結果、LEDチップ1個を消灯すると、その部分の輝度(図30(b)に示す曲線S2の最低部分)が0.6cd/mmと大幅に低減し、遮光の効果が現れている。
【0114】
そこで、灯具に発光モジュール320を組み込んで光度分布を測定したところ、LEDチップ1個を消灯したときの最低光度が500cdとなり、対向車や先行車、歩行者にグレアを与えるおそれのある625cdを下回っていることがわかった。実施例2の結果より、発光モジュールの消灯部の輝度が0.6cd/mm以下であれば、灯具に適用したときのグレアの発生を抑制できることがわかった。
【0115】
(実施例3)
図31(a)は、実施例3に係る発光モジュールの概略断面図、図31(b)は、実施例3に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。なお、実施例3に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0116】
発光モジュール330においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した三角枠321を設置して遮光した。これにより、隣接するLEDチップ304からの光が遮光される。一方、各蛍光体層312は、1個のLEDチップ304を覆う大きさのYAG焼結板からなり、その側面には銀ペースト314が塗布されている。これにより、隣接する蛍光体層312からの光が遮光される。このように、LEDチップ間と蛍光体層間を光学的に分離することによって、LEDチップ1個を消灯すると、その部分の輝度(図31(b)に示す曲線S2の最低部分)が0.3cd/mmと大幅に低減し、遮光の効果が現れている。
【0117】
(実施例4)
図32(a)は、実施例4に係る発光モジュールの概略断面図、図32(b)は、実施例4に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。なお、実施例4に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0118】
発光モジュール340においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した三角枠342を設置して遮光した。これにより、隣接するLEDチップ304からの光が遮光される。三角枠342は、その頂点が蛍光体層344の表面近傍まで達している。各蛍光体層344は、1個のLEDチップ304を覆う大きさのYAG焼結板からなる。これにより、隣接する蛍光体層344からの光が遮光される。このように、LEDチップ間と蛍光体層間を光学的に分離することによって、LEDチップ1個を消灯すると、その部分の輝度(図32(b)に示す曲線S2の最低部分)が0cd/mmと大幅に低減し、遮光の効果が現れている。
【0119】
そこで、灯具に発光モジュール340を組み込んで光度分布を測定したところ、LEDチップ1個を消灯したときの最低光度が300cdとなり、対向車や先行車、歩行者にグレアを与えるおそれのある625cdを下回っていることが確認された。
【0120】
(実施例5)
図33(a)は、実施例5に係る発光モジュールの概略断面図、図33(b)は、実施例5に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。図33(b)においては、4個のLED全てが点灯している状態の輝度分布(曲線S1)のみを示している。なお、実施例5に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0121】
発光モジュール350においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した三角枠342を設置して遮光した。これにより、隣接するLEDチップ304からの光が遮光される。三角枠342は、その頂点が蛍光体層352の表面から露出している。蛍光体層352は、YAG粉体をジメチルシリコーン樹脂に12体積%混合したペーストを、LEDチップ304上にスキージで印刷することで形成されている。その際、三角枠342の先端が露出するように調整した。これにより、隣接する蛍光体層352からの光が遮光される。このように、LEDチップ間と蛍光体層間を光学的に分離することによって、LEDチップ1個を消灯すると、その部分の輝度が0cd/mmと大幅に低減し、遮光の効果が現れている。
【0122】
そこで、灯具に発光モジュール340を組み込んで光度分布を測定したところ、LEDチップ1個を消灯したときの最低光度が300cd以下となり、対向車や先行車、歩行者にグレアを与えるおそれのある625cdを下回っていることが確認された。
【0123】
(実施例6)
図34(a)は、実施例6に係る発光モジュールの概略断面図、図34(b)は、実施例6に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。図34(b)においては、4個のLED全てが点灯している状態の輝度分布(曲線S1)のみを示している。なお、実施例6に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0124】
発光モジュール360においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した垂直枠362を設置して遮光した。垂直枠362は、その側面が基板302の表面に対してほぼ垂直に設けられている。これにより、実施例5と同様の作用効果が得られた。
【0125】
(実施例7)
図35(a)は、実施例7に係る発光モジュールの概略断面図、図35(b)は、実施例7に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。図35(b)においては、4個のLED全てが点灯している状態の輝度分布(曲線S1)のみを示している。なお、実施例7に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0126】
発光モジュール370においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した枠372を設置して遮光した。枠372は、基板302に近い側(図35(a)に示す下部)の側面が基板302の表面に対してほぼ垂直に設けられているとともに、蛍光体層352の表面に近い側(図35(a)に示す上部)の側面が基板302の表面に対して斜めに設けられている。これにより、実施例5と同様の作用効果が得られた。
【0127】
(実施例8)
図36(a)は、実施例8に係る発光モジュールの概略断面図、図36(b)は、実施例8に係る発光モジュールの輝度分布のグラフを示す図である。図36(b)においては、4個のLED全てが点灯している状態の輝度分布(曲線S1)のみを示している。なお、実施例8に係る発光モジュールにおいて、前述と同じ構成については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0128】
発光モジュール380においては、LEDチップ304間にシリコンを微細加工した枠372を設置して遮光した。LEDチップ304上には枠372の形状に沿って切断したYAG焼結板からなる蛍光体層382を搭載した。YAG焼結板は、蛍光領域の波長(600nm)の直線光が入射されたときに40%以上の光が拡散光として出射するものが好ましい。
【0129】
このように構成した発光モジュール380の輝度分布、光度分布を測定したところ、LEDチップ間の暗部(輝度低下部)が非常に少なく、LEDチップ面内の輝度分布の変化も少なく、全LEDを点灯したときの均一感が著しく向上した。
【0130】
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や実施例に限定されるものではなく、実施の形態や実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施例における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態や各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0131】
10 車両用灯具、 12 灯具ボディ、 14 透光カバー、 18 灯具ユニット、 22 発光モジュール、 22a LEDチップ、 24 投影レンズ、 50 発光モジュール、 54 基板、 56a 発光面、 58 蛍光体層、 60a 遮光部、 64 LEDチップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載され、マトリックス状に配列されている複数の発光素子と、
前記発光素子の発光面に対向するように設けられている蛍光部材と、
前記複数の発光素子のうち少なくとも一部の発光素子の発光面の周囲を囲むように設けられている遮光部と、
を備えていることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記複数の発光素子は、点灯時の光度が相対的に高い第1の発光素子と、点灯時の光度が相対的に低い第2の発光素子とを有し、
前記遮光部は、主として前記第1の発光素子と該第1の発光素子と隣接する発光素子との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記発光素子は、フリップチップ型の素子であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記蛍光部材は、板状の蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記基板は、熱膨張係数が前記発光素子の熱膨張係数の±5ppm/℃の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
発光素子および蛍光部材から出射した光による光源像を、照射方向前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するレンズを更に備え、
前記レンズは、前記発光素子または前記蛍光部材に直接接合されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
前記発光モジュールの点消灯を制御する制御回路と、を備えた車両用灯具であって、
前記制御回路は、車両用灯具が装着された車両が停車した状態を検出した場合、前記発光モジュールの点消灯状態を、走行時における照射モードよりも消費電力の低い停車モードとなるように制御する、
ことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2012−169189(P2012−169189A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30123(P2011−30123)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】