説明

発光モジュール

【課題】LED列が延びる方向のスペースが制限された条件下において、より高密度にLEDを配設でき、かつ、ワイヤボンディングがし易いとともに、封止部材の伸び縮みに拘らずボンディングワイヤが折れ難い発光モジュールを提供する。
【解決手段】モジュール基板2に配線導体16、17を設け、アノード側及びカソード側の素子電極を有したチップ状のLED32をボンディングワイヤ37で複数接続してなるLED列31を基板2上に設け、その素子電極が並んだ方向と直交する方向に列をなすとともに、この列が延びる方向に素子電極の同極同士が隣り合うように並べて、基板2上に固定し、隣り合ったLED32間にボンディングワイヤ37を斜めに設け、これらLED32の異極の素子電極同士を接続し、LED列31の両端に位置されたLED32と配線導体を端部ボンディングワイヤ41で接続し、透光性封止部材でLED列31を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により発光するチップ状のLED(発光ダイオード)を複数有し、これらを一斉に発光させて、例えばスポットライト等の投光器や照明器具の光源等に使用される発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
装置基板の一面に、四角い枠からなるリフレクタを設け、このリフレクタの内側に、直列回路をなすチップ列をこの列が延びる方向と直交する方向に複数並設するとともに、蛍光体が混ぜられたシリコーン樹脂等の透光性封止樹脂をリフレクタの内側に充填して、この封止樹脂で各チップ列を埋設したCOB(chip on board)型の照明装置が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この照明装置でチップ列の夫々は、一対の素子電極を有した複数のLEDチップを、列をなして配設するとともに、列が延びる方向に隣接されたLEDチップの素子電極にボンディングワイヤをワイヤボンディングして、各LEDチップを直列接続して形成されている。この接続において、LEDチップが有した一対の素子電極が並んだ方向とチップ列が延びる方向が同じであるので、ボンディングワイヤはチップ列と同方向に延びて配線されている。これとともに、各チップ列の長さはいずれも同じであり、これらのチップ列が並設されることで、リフレクタで区画された四角い領域の略全域にわたってLEDチップが縦横に整列されてマトリックス状に配設されている。
【0004】
こうした構成の照明装置では、チップ列が延びる方向に並んだLEDチップ間に、ボンディングワイヤの一端が接合される中継導体(ボンディングパット)を要しない。そのため、LEDチップの配設ピッチが短く、LEDチップを高密度に配設するのに適しているとともに、それに伴いボンディングワイヤが短くなるので、このボンディングワイヤが封止樹脂の重みで変形することを抑制できる点においても好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LEDチップの平面形状は一般的に長方形であり、このLEDチップの長手方向に一対の素子電極が並べられている。そのため、特許文献1に記載の照明装置で、そのチップ列が延びる方向のスペースが制限されている場合、以下の課題がある。
【0007】
即ち、チップ列の形成において隣り合ったLEDチップ間の間隔(正確には、隣り合って対向するチップ側面間の間隔であって、これはLEDチップの配設ピッチより短い。)を優先すると、制限された前記スペースに配設できるLEDチップの数が少なくなるので、LEDチップをより高密度に配設する上では好ましくない。
【0008】
又、制限された前記スペースに配設するLEDチップの数を優先すると、隣り合ったLEDチップ間の間隔が極めて狭くなる。そのため、こうした狭小な間隔内にLED列を埋める封止樹脂が円滑に充填され難くなり、それに伴い前記狭小な間隔内に入り込んだ封止樹脂内に気泡が残留し易くなる。封止樹脂内に残留した気泡は、そこに入射されたLEDチップからの光を散乱させるので、適正な配光を乱すことがある。
【0009】
更に、前記いずれの場合にも、LEDチップの配置が高密度であるという条件において、ボンディングワイヤは、隣り合ったLEDチップの異極の素子電極を接続してチップ列と方向に平行に設けられているので、このボンディングワイヤの長さは短い。ボンディングワイヤが短過ぎると、このワイヤのボンディングがし難くなるので、製造上好ましくない。しかも、短過ぎるボンディングワイヤは変形し難い。ところで、素子電極に接合部されたボンディングワイヤの両端部は、再結晶化して強度が低下している。そのため、ボンディングワイヤを埋めている封止樹脂の温度変化に伴う伸び縮みが、ボンディングワイヤ
【0010】
にストレスとして繰り返し作用することにより、ボンディングワイヤが折れる恐れがある。
【0011】
以上のように従来のCOB型の照明装置は、チップ列が延びる方向のスペースが制限された条件下において、より高密度にLEDチップを配設するには適さないとともに、ワイヤボンディングがし難く、かつ、封止樹脂の伸び縮みに伴いボンディングワイヤが折れる恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、を具備したことを特徴とし
ている。
【0013】
請求項1の発明で、チップ状のLED(発光ダイオード)とは、ベアチップからなるLEDを指しており、このLEDは、平面視形状は長方形で、かつ、この長方形の長手方向に並べられた一対の素子電極を有している。請求項1の発明で、モジュール基板には、合成樹脂又はガラス或いはセラミックスの絶縁層を用いることができ、この場合、絶縁層は一枚であっても複数積層してあってもよく、又、絶縁層の裏面に放熱促進用の金属板を積層してなるモジュール基板を用いることができる。請求項1の発明で、複数のLEDを並べてなる列は、直線状であることが好ましいが、それには制約されず、折り返されていて
【0014】
も差し支えない。請求項1の発明で、ボンディングワイヤは、金属細線であればよく、Au細線を好適に使用できる。請求項1の発明で、封止部材には、透明ガラスの他、透光性の封止樹脂例えば透明シリコーン樹脂、透明ウレタン樹脂、透明アクリル樹脂などを用いることができる。
【0015】
この請求項1に係る発明の発光モジュールでは、そのLED列が有した複数のチップ状LEDの夫々を、個々のLEDが有した一対の素子電極が並んだ方向と直交する方向に並べたので、LED列が延びる方向が制限された条件下において、LED列が延びる方向に並べ得るLEDの数を増やすことが可能である。こうして高密度にLEDを配設できるにも拘らず、LED列が延びる方向に隣り合ったLEDの異極の素子電極同士を接続したボンディングワイヤが斜めに設けられているため、LED列が延びる方向と平行にボンディングワイヤが配線された場合に比較して、ボンディングワイヤの長さを長く確保できる。
【0016】
したがって、LED列での各LEDの配設ピッチが短いにも拘らず、ワイヤボンディングがし易く、かつ、ボンディングワイヤが変形し易くなることにより、封止部材の伸び縮みを原因としてボンディングワイヤの端部に与えられるストレスを軽減できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明の発光モジュールによれば、LED列が延びる方向が制限された条件下において、LED列が延びる方向に並べ得るLEDの数を増やすことが可能で、より高密度にLEDを配設することができ、更に、こうした高密度配置に拘らずにボンディングワイヤの長さを長く確保できるので、ワイヤボンディングがし易いとともに、ボンディングワイヤが折れ難い、という効果がある。また、各チップ状LEDの間隔を原因とする気泡の残留を減らすことができ、適正な配光を得やすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る発光モジュールをその一部を省略して示す正面図である。
【図2】図1中矢印F2−F2線に沿って示す断面図である。
【図3】図1中F3部の拡大正面図である。
【図4】(A)図1の発光モジュールが備えるLEDを拡大して示す正面図である。(B)は同LEDを拡大して示す側面図である。
【図5】(A)は図1の発光モジュールが備えたLED列の一部を拡大して示す正面図である。(B)は従来技術に係る発光モジュールが備えたLED列の一部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図5を参照して本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
図1中符号1はCOB型の発光モジュールを示している。発光モジュール1は、例えばスポットライトの投影レンズ群の焦点に配置されて、このライトの光源として使用される。
【0021】
発光モジュール1は、モジュール基板2と、複数の反射層6〜10と、複数の配線導体11〜20と、三つ以上の発光グループ21〜30と、端部ボンディングワイヤ41と、保護層42と、枠体44と、封止部材48とを具備している。
【0022】
モジュール基板2は、所定形状例えば図1に示すように四角形であるとともに、図2に示すように絶縁層3の裏面に金属板4を積層して形成されている。絶縁層3は合成樹脂製である。金属板4はアルミニウム又はその合金からなる。なお、図1中符号2aはモジュール基板2の四隅に開口された取付け孔を示している。
【0023】
図1に示すように例えば5個の反射層6〜10は、モジュール基板2の互いに平行な二辺を結ぶ方向に延びる長方形状をなしていて、同じ大きさであるとともに、モジュール基板2の互いに平行な他の二辺を結ぶ方向に間隔を置いて並べられている。これら反射層6〜10は、図2に示すようにモジュール基板2上に積層されている。各反射層6〜10は、絶縁層3上に積層された銅と、この銅層上にめっきされたニッケルと、このニッケル上にめっきされた銀により形成されている。なお、反射層6〜10はその少なくとも表層が銀製であれば二層でも一層でも差し支えない。
【0024】
夫々が一対の配線導体11〜20は、モジュール基板2上に積層され、これらも、銅とニッケルと銀の三層構造をなしているが、反射層6〜10と同様に少なくとも表層が銀製であれば二層でも一層でも差し支えない。配線導体11〜20と反射層6〜10とは、エッチングやめっき処理等により同時に形成される。
【0025】
図1に示すようにアノード側及びカソード側を担う一対の配線導体11は、反射層6に対して必要な絶縁間隔を隔ててこの反射層6の両側に沿うように延びて設けられている。これら配線導体11の一端部は端子部11a又は11bをなしている、同様に、一対の配線導体12は反射層7に対して設けられていて端子部12a又は12bを有し、一対の配線導体13は反射層8に対して設けられていて端子部13a又は13bを有し、一対の配線導体14は反射層9に対して設けられていて端子部14a又は14bを有し、一対の配線導体15は反射層10に対して設けられていて端子部15a又は15bを有している。
【0026】
各端子部11a〜15a,11b〜15bは、夫々反射層6〜10の長手方向一端(図1ではモジュール基板2の下端)から離れて反射層6〜10の並び方向と同方向に並べられている。
【0027】
同様に、アノード側及びカソード側を担う一対の配線導体16は、反射層6に対して必要な絶縁間隔を隔ててこの反射層6の両側に沿うように延びて設けられている。これら配線導体16の一端部は端子部16a又は16bをなしている、同様に、一対の配線導体17は反射層7に対して設けられていて端子部17a又は17bを有し、一対の配線導体18は反射層8に対して設けられていて端子部18a又は18bを有し、一対の配線導体19は反射層9に対して設けられていて端子部19a又は19bを有し、一対の配線導体20は反射層10に対して設けられていて端子部20a又は20bを有している。各端子部
【0028】
16a〜20a,16b〜20bは、夫々反射層6〜10の長手方向他端(図1ではモジュール基板2の上端)から離れて反射層6〜10の並び方向と同方向に並べられている。
【0029】
モジュール基板2の図1中一点鎖線で示す中心線A、つまり後述する発光グループ間の中心線を境に、配線導体11,16は線対称であり、同様に、配線導体12,17、配線導体13,18、配線導体14,19、及び配線導体15,20の夫々も中心線Aを境に線対称である。
【0030】
発光グループ21〜30は全長が異なる三種に分けられている。即ち、全長が最長の発光グループ23,28と、全長が最短の発光グループ21,25,26,30と、全長が中間長さの発光グループ22,24,27,29とに分けられている。
【0031】
最長の全長を有した発光グループ23,28は、反射層6〜10の内でそれらの並び方向中央部に位置された反射層8上に実装されていて、中心線Aを境に線対称である。最短の全長を有した発光グループ21,26は、反射層6〜10の内でそれらの並び方向一端に位置された反射層6上に実装されていて、中心線Aを境に線対称であり、同様に最短の全長を有した発光グループ25,30は、反射層6〜10の内でそれらの並び方向他端に位置された反射層10上に実装されていて、中心線Aを境に線対称である。中間長さの全長を有した発光グループ22,27は、反射層6,8間の反射層7上に実装されていて、
【0032】
中心線Aを境に線対称であり、同様に中間長さの全長を有した発光グループ24,29は、反射層8,10間の反射層9上に実装されていて、中心線Aを境に線対称である。
【0033】
したがって、図1に示すように三種の発光グループの内で最長の全長を有した発光グループ23,28の両側に配置された発光モジュールの全長は、発光グループ23,28から遠く配置された発光モジュールほど短い。
【0034】
以上のように三種に分けられたグループ毎に応じて全長が異なっている他は、各発光グループ21〜30の構成は同じである。そのため、ここでは、図2に示した発光グループ26で代表して説明する。
【0035】
発光グループ26は複数のLED列31を備えている。各LED列31は、発光素子であるチップ状の複数のLED(発光ダイオード)32及びボンディングワイヤ37からなる。
【0036】
各LED32は、図4(B)に示すようにサファイアガラス等の絶縁性を有した透光性のLED基板32aに発光層32bが設けられたベアチップからなり、通電されることにより発光層32bは青色系の光を発光する。図4(A)に示すようにLED32は平面視長方形状であり、その発光層32b上に一対の素子電極33,34を有している。一方の素子電極はアノード用であり、他方の素子電極はカソード用である、これら異極の素子電極33,34は、長方形のLED32の長手方向に並べて設けられている。
【0037】
これらLED32は、モジュール基板2に積層された反射層6〜10上に、各反射層6〜10の長手方向及び配線導体11〜20が延びる方向と直交する方向、つまり、図1において左右方向に好ましくは真っ直ぐな列をなして並べられ固定されている。
【0038】
こうしたモジュール基板2上への各LED32の固定において、図3及び図5(A)に示すように各LED32は、その一対の素子電極33,34が並んだ方向、言い換えれば、LED32自体の長手方向と直交する方向、更に、別の表現をすれば、各反射層6〜10の幅方向(長手方向と直交する方向)に、所定の配設ピッチP1で並べられている。したがって、LED列31が延びる方向に隣り合ったLED32の長手方向に沿う一側面32c同士は、後述する封止部材48の充填前の状態で対向して配置されている。
【0039】
しかも、各LED32は、その長手方向を、LED列31が延びる方向と直交させて、言い換えれば、各反射層6〜10の長手方向に一致させて配置されている。これとともに、各LED32の素子電極33,34の同極同士は、LED列31が延びる方向に隣り合うように並べられている。具体的には、図5(A)で代表するように、同図において上側にLED32の一方の素子電極33が配置されるとともに、同下側に他方の素子電極34が配置された状態に、各LED32が並設されている。
【0040】
図5(A)中符号B1はLED列31が延びる方向に隣り合ったLED32同士の対向した一側面32c間の間隔を示しており、図5(A)中符号C1は同じく隣り合ったLED32の一側面32cと平行な他側面32d間の間隔を示している。
【0041】
各LED32の固定は、LED基板32aの発光層32bが設けられた面とは反対側の面を、透光性のダイボンド材35(図2参照)で接着することでなされている。ダイボンド材35には透光性のシリコーン樹脂等が用いられている。
【0042】
ボンディングワイヤ37は金の細線からなる。ボンディングワイヤ37の両端は、図3及び図5(A)で代表して示すようにLED列31が延びる方向に隣り合ったLED32同士のアノード用とカソード用の素子電極33,34にワイヤボンディングにより接続されている。それにより、各ボンディングワイヤ37は、LED列31が延びる方向に隣り合ったLED32間に斜めに設けられて、これらボンディングワイヤ37により複数のLED32が電気的に直列に接続されている。図5(A)中符号L1は、斜めに配線されたボンディングワイヤ37の平面視での長さを示している。
【0043】
図3で代表して示すように各発光グループ21〜30が備えた複数のLED列31の夫々に含まれるLED32の個数は同じである。そして、図1に示すように各LED列31は、それが延びる方向と直交する方向に並べられていて、モジュール基板2上に四角い領域を占めて既述のように配設されている。そのため、各発光グループ21〜30において、それらが有したLED32はマトリックス状をなして縦横に整列して配設されている。
【0044】
端部ボンディングワイヤ41は金の細線からなる。この端部ボンディングワイヤ41は、発光グループ21〜30の夫々において、それらが有した各LED列31の両端に位置されているLED32と、発光グループの両側に位置された一対の配線導体とを接続している。
【0045】
即ち、図3で代表して示すように発光グループ25の両側に位置された一対の配線導体15と、発光グループ25が有した各LED列31の両端に位置されたLED32とが、端部ボンディングワイヤ41により接続されている。したがって、発光グループ25が有した各LED列31は電気的に並列接続されている。同様に、発光グループ30とその両側位置の配線導体20とを接続した端部ボンディングワイヤ41と、発光グループ30が有した各LED列31の両端に位置されたLED32とが、端部ボンディングワイヤ41により接続されている。したがって、発光グループ30が有した各LED列31は電気的
に並列接続されている。
【0046】
そして、各反射層6〜10が延びる方向に隣リ合った発光グループ25,30とそれらの両側位置の配線導体11とを接続した端部ボンディングワイヤ41は、発光グループ25,30間の中心線Aを境に略線対称に配置されている。しかも、前記略線対称の関係にある端部ボンディングワイヤ41同士は、それらの間隔が配線導体11又は16に近づく程広くなるように斜めに設けられている。なお、他の発光グループとそれらに対する配線導体とを接続した端部ボンディングワイヤ41の関係も同様である。
【0047】
図1及び図2に示した保護層42は、絶縁性のレジストからなり、四角枠状をなしていて、モジュール基板2の周部に積層されている。保護層42は、モジュール基板2と同じ大きさであって、各反射層6〜10を囲んでいる。この保護層42は、取付け孔2a及び各端子部11a〜20a,11b〜20bを露出させる逃げ孔42a(図1参照)を有している。
【0048】
枠体44は合成樹脂等の絶縁材からなり、モジュール基板2に積層された保護層42上に固定されている。そのため、図1に示すように枠体44の内側に、反射層6〜10、配線導体11〜20の反射層6〜10に沿う部位、発光グループ21〜30、及び端部ボンディングワイヤ41が配設されている。
【0049】
封止部材48(図1及び図2参照)は枠体44内に充填されて、その内側の部材を埋設することでこれらの部材を封止している。封止部材48は透光性を有する材料からなり、例えば透明シリコーン樹脂製である。この封止部材48には図示しない蛍光体が分散して混ぜられている。蛍光体には、例えば各LED32が発する青色系の光によって励起されて黄色系の光を放射する黄色蛍光体が用いられているが、演色性向上のために赤色系蛍光体や緑色系蛍光体が添加されていてもよい。
【0050】
前記構成のCOB型の発光モジュール1では、そのLED列31が有したチップ状の複数のLED32の夫々を、個々のLED32が有した一対の素子電極33,34が並んだ方向と直交する方向に所定の配設ピッチP1で並べている。このため、LED列31が延びる方向が制限された条件下において、LED列31が延びる方向に並べ得るLED32の数を増やすことが可能であり、これに伴い高密度にLED32を配設することができる。
【0051】
詳しくは、図5(B)に示した本実施形態に対する比較例の構成では、LED32が有した一対の素子電極33,34が並んだ方向とLED列31が延びる方向とが同じで、かつ、ボンディングワイヤ37はLED列31と平行にこの列が延びる方向に配線されていている。この比較例において、LED32の大きさ、及び隣り合ったLED32の短辺からなるとともに相対向した側面32e間の間隔B1は、図5(A)に示した本実施形態と同じである。
【0052】
これら図5(A)(B)との対比から明らかなように、本実施形態での配設ピッチP1は比較例において対応する配設ピッチP2より短い。これとともに、本実施形態での隣り合ったLED32の他側面32d間の間隔C1は、比較例において対応する間隔C2より短い。したがって、LED32を高密度に配設することができる。
【0053】
又、制限されたスペースに配設するLED32の数を優先すると、図5(B)の比較例
【0054】
では隣り合ったLED32の側面32e間の間隔B1が狭くなるので、この狭小な間隔B1内にLED列31を埋める封止部材48が円滑に充填され難くなる。それに伴い、間隔B1内に入り込んだ封止部材48内に気泡が残留し易くなるので、残留した気泡での光を散乱により、適正な配光が乱されることがある。しかし、本実施形態で制限された前記スペースに配設するLED32の数を比較例と同じとした場合には、間隔B1が比較例より広くなるので、この間隔B1を原因とする気泡の残留を減らすことができ、したがって、適正な配光を得やすい。
【0055】
更に、以上のように制限されたスペースにLED32を高密度に配設できるにも拘らず、LED列31が延びる方向に隣り合ったLED32の異極の素子電極33,34同士を接続したボンディングワイヤ37の長さL1を、比較例での同ボンディングワイヤ37の長さL12より長くできる。
【0056】
即ち、図5(A)(B)での対比から明らかなように、隣り合ったLED32間にボンディングワイヤ37を斜めに設けたので、その長さL1を、比較例のようにLED列31が延びる方向に真っ直ぐに配線されたボンディングワイヤ37の長さL2より長く確保できる。
【0057】
したがって、LED列31での各LED32の配設ピッチP1を短くできるにも拘らず、ボンディングワイヤ37を隣り合ったLED32の異極の素子電極33,34にわたるワイヤボンディングを容易に行える。
【0058】
これとともに、長さL1が長いボンディングワイヤ37は変形し易い。そのため、発光モジュール1の発光とその停止に伴う封止部材48の伸び縮みを原因として、ボンディングワイヤ37の端部に与えられるストレスが軽減される。したがって、ボンディングワイヤ37が、その端部において折れることが抑制される。言い換えれば、ボンディングワイヤ37とLED32の素子電極33,34との接続の信頼性が高まり、発光モジュール1の耐久性を向上できる。
【0059】
更に、前記構成のCOB型の発光モジュール1では、発光グループ21〜25と26〜30間の仮想上の中心線Aに最も近いLED列31の両端と配線導体11〜20を接続する端部ボンディングワイヤ41が、既述のように斜めに設けられている。このため、中心線Aに最も近いLED列31に一端が接続された端部ボンディングワイヤ41の他端は、配線導体11〜20の中心線A側の端(図3中符号Eで示す)から比較的大きく隔たった部位にワイヤボンディングにより接続される。このため、配線導体11〜20の前記端Eの間際に端部ボンディングワイヤ41が接続される場合に比較して、配線導体11〜20
【0060】
に対する端部ボンディングワイヤ41の接続の信頼性が高められる。
【0061】
前記構成のCOB型の発光モジュール1は、その各発光グループ21〜30の夫々に、それらの端子部11a〜20a,11b〜20bを通じて給電されることにより、これら発光グループ21〜30が有した各LED32を一斉に発光させることができる。この発光により放射された青色系の光と、この光の一部で励起された封止部材48内の蛍光体が発した黄色系の光とが混じって、白色系の光が形成されて、それが発光モジュール1から光の利用方向に出射される。
【0062】
この場合、LED32の発光層32bからその裏側に放射された光は、ダイボンド材35を通ることなく反射層6〜10のいずれかに入射され、或いはダイボンド材35を通って反射層6〜10のいずれかに入射される。いずれにしても、こうして反射層6〜10に入射された青色系の光は、反射層6〜10のいずれかで光の利用方向に反射されるので、この点で光の取出し効率が良い。
【0063】
又、前記構成の発光モジュール1において、各発光グループ21〜30の幅は同じであり、そのLED列31が有したLED32の数は同じである。そのため、各LED列31に印加される電流値、したがって、夫々のLED列31が有した複数のLED32に対する順方向印加電圧を同じにできるので、各LED32の発光強度のばらつきを抑制できる。
【0064】
しかも、以上説明したように四角い領域を占めて配設される三種類の発光グループ21〜30をそれらのLED列31の並び方向の長さ(全長)が最長の発光グループ23,28を基準に、その両側に前記並び方向の長さ(全長)が短い発光グループ22,27、及び28,29が長さ順に配置されている。そのため、こうした三種類の発光グループ21〜30の組み合わせ形状を擬似的に略丸くできる。それに伴い、この発光モジュール1を光源としたスポットライトから被照射部に投影される配光パターンを擬似的に略丸くできる。
【0065】
又、各LED32はその発光に伴い発熱する。この熱の多くは、モジュール基板2に伝導されて、その金属板4から外部の図示しないヒートシンク等の放熱部材に放出される。この場合、モジュール基板2上の金属製の反射層6〜10の夫々がヒートスプレッダとして機能して、これらの層の全体にわたり熱を拡散するので、LED32の熱を速やかにモジュール基板2に伝導させてLED32の温度上昇を抑制できる。
【0066】
前記構成の発光モジュール1では、個々の発光グループ21〜30において、それらが有した複数のLED列31は電気的に並列であるので、あるLED列31が発光できなくなっても、それ以外のLED列31は発光を継続する。そのため、あるLED列31が発光できなくなったことを原因として、個々の発光グループ21〜30全体の発光が止まることがない。
【0067】
更に、前記構成の発光モジュール1は、前記中心線Aを境に線対称に配置された合計十個の発光グループ21〜30を有しており、これら発光グループ21〜30に対する通電系統が夫々独立している。そのため、仮に、ある発光グループの発光ができなくなっても、それ以外の発光グループは発光を継続するので、発光モジュール1全体の発光が止まる
ことがない。
【0068】
なお、本発明は、前記一実施形態には制約されず、例えばスポットライト以外にも適用可能であるとともに、本発明は、反射層6〜10を省略して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…発光モジュール、2…モジュール基板、11〜20…配線導体、21〜30…発光グループ、31…LED列、32…LED、33,34…素子電極、37…ボンディングワイヤ、41…端部ボンディングワイヤ、48…封止部材、A…中心線、P1…配設ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール基板と;
このモジュール基板上に設けられた配線導体と;
平面視形状が長方形であって、この長方形の長手方向に並べられたアノード側及びカソード側の素子電極を有し、これら素子電極が並んだ方向と直交する方向に列をなすとともにこの列が延びる方向に前記素子電極の同極同士が隣り合うようにかつ前記長方形の短方向の長さよりも長い間隔で隣り合う側面間が並べられて前記モジュール基板上の固定された複数のチップ状LED、及び前記列が延びる方向に隣り合った前記LED間に斜めに設けられてこれらLEDの異極の素子電極同士を接続して複数の前記LEDを接続したボンディングワイヤからなるLED列と;
このLED列の両端に位置されたLEDと前記配線導体を接続した端部ボンディングワイヤと;
前記配線導体、複数のチョップ状LEDの各側面間、LED列、及び端部ボンディングワイヤを埋めて前記モジュール基板に被着された透光性の封止部材と;
を具備したことを特徴とする発光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251796(P2010−251796A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154011(P2010−154011)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【分割の表示】特願2009−46741(P2009−46741)の分割
【原出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】