説明

発光分光法により低圧ガスを分析するためのシステム

本発明の目的は、二次真空のオーダの圧力のガスを分析するためのガス分析システム(2)である。このシステムは、円筒状ボリューム(11)を画成する導電性壁部(12)と、少なくとも1つの中央貫通穴(31)を有するディスク(15)とを有するカソード(14)と、穴(31)の実質的に中央に配置されるアノード(13)と、電場E(17)、および電場E(17)に対して直交する磁場B(19)の作用の組合せにより円筒状ボリューム中で生成されるプラズマのプラズマ発生源とを備えるガス・イオン化デバイス(4)と、プラズマにより発せられる光放射を集めるためのシステムと、円筒状ボリューム(11)のコンダクタンスよりも低いコンダクタンスを有し、イオン化デバイス(5)と集光システム(5)との間に配置される、アノード(13)と同軸の円筒状空洞部(23)と、放射スペクトルの展開を分析するための光学分光器(41)を備える、イオン化されたガスの分析デバイス(6)とを備える。好ましくは、円筒状ボリューム(11)の対向側の空洞部(23)の端部が、プラズマにより発せられる光放射に対して直交する窓(21)によって閉じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分光法を利用して、二次真空(10−3から10−8ミリバール)のオーダの非常に低圧のガスを分析するためのシステムに関する。さらに、本発明は、被制御圧力エンクロージャ内を出所とするガス流出物を分析するための方法に関する。最後に、本発明は、少なくとも1つの被制御圧力エンクロージャを備える産業用デバイスと、この被制御圧力エンクロージャと協働するガス分析システムとを開示する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業において過去数年の間に達成された進歩は、主に、ますます大型のシリコンウェーハ(200mmから300mmの直径を有するもの)上で実現されつつある、数平方ミリメートルのサイズの構成要素上の電子回路の集積度の上昇に関連している。
【0003】
このような回路を作製するために必要な技術ステップは、多数(最大で400)に及ぶ。とりわけ、真空処理のステップは、それらのステップにより製造プロセス全体にわたって継続的な製造が可能となること、および、それらのステップにより構成要素の幾何学的形状基準に従うことが可能となることの両方によって、極めて重要な役割を担う。
【0004】
オンサイト・プロセス分析方法の実施により、故障の発生と同時にその故障が特定され、多数のバッチが製造され得る際の反応時間が短縮される。その結果、真空内に生成されるプラズマを利用して、オンサイトでリアルタイムに半導体製造プロセスを推移監視し制御することに対する大きな需要が高まっている。
【0005】
半導体製造デバイスにおいて発光分光法を使用することが、知られている。発光分光法は、回路エッチング・プロセスまたは半導体構成要素エッチング・プロセスにおける腐食の終了を検出するために、使用される。分析されるプラズマは、デバイスの反応器によって生成されるものである。このデバイスは、エッチング・プロセスからの光を分析する発光分光計を単に備えることにより、それ自体でプロセス・ステップのチェックを行なうことが可能である。
【0006】
しかし、本目的は、半導体デバイスの製造プロセスまたはエッチング・プロセスのステップのチェックを行なうためにではなく、デバイスの真空環境を構成する全てのガスのチェックを行なうために、発光分光法を利用することである。発光分光計は、光を散乱させた後に、プラズマの自由電子により励起された原子、分子、およびイオンによって発せられる放射線の変化をリアルタイムで分析する。
【0007】
しかし、現在知られている技術によれば、このような測定は、低真空(1000ミリバールから1ミリバールまで)内において、または一次真空(1ミリバールから10−3ミリバールまで)内において可能であるにすぎない。
【0008】
欧州特許出願公開第1022559号は、0.1ミリバールから1000ミリバールの間の圧力のガスを収容するエンクロージャを備えるデバイスと、ガス・イオン化デバイスおよび発光分光法を利用するガス分析デバイスを備える、それらのガスを分析するためのシステムとを説明している。このイオン化デバイスは、ICP発生源またはマイクロ波発生源である、プラズマ電波発生源を備える。
【0009】
欧州特許出願公開第1131670号は、エンクロージャ内を出所とするガス試料のチェックを行なうために、発光分光法を利用するデバイスを説明している。このデバイスは、プラズマ形成区域と、プラズマにより発せられた光放射を分析するための手段とを備える、チャンバを備える。光ファイバなどの放射線センサが、プラズマ形成区域の付近に配置される。プラズマは、電磁波を発生させる励起アンテナに関連付けされた発電機によって、形成される。電場または磁場が、放射線透過性境界部からイオン化された粒子を隔離するための障壁を形成するために使用される。
【0010】
国際公開第00/31773号は、真空プロセス・チャンバ内を出所とするガス流出物の成分を検出するためのデバイスを説明している。このデバイスは、プラズマが中で形成されるセルと、プラズマにより発せられた光を集光し、集光した光を光スペクトル分析器に伝達するための、窓の後に配置された検出器とを備える。このプラズマは、蛍光ランプまたはマグネトロン・マイクロ波発生器において使用される種類の民生用発電機などの交流発電機によって生成される電場によって発生する。1つの特定の実施形態においては、固体カソードが、ガス流の方向に対して同軸方向に配設され、アノードとして使用されるセルの導電性壁部から隔離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1022559号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1131670号
【特許文献3】国際公開第00/31773号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
プロセス・チャンバ内の圧力が、10−3ミリバール未満に低下すると、このシステムは、分光測定に有効な光を生成するのに十分なだけガスを励起することができない。したがって、この課題は、発光分光法を利用して二次真空(10−3から10−7ミリバール)内のガス試料をリアルタイムで(1秒未満で)分析することが可能となるように十分に発光し、十分に集束された、プラズマから発せられる光放射を発生させることである。
【0013】
しかし、さらに、この測定は、分析に必要な期間全体を通じて再現可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、二次真空のオーダの圧力下にあるガスを分析するためのシステムである。この分析システムは、
円筒状ボリュームを画成する導電性壁部と、少なくとも1つの中央貫通穴を有するディスクとを有するカソードと、
穴の実質的に中央に配置されるアノードと、
電場、および電場に対して直交する磁場の作用の組合せにより円筒状ボリューム中で生成されるプラズマのプラズマ発生源と
を備えるガス・イオン化デバイスと、
プラズマにより発せられる光放射を集めるためのシステムと、
円筒状ボリュームのコンダクタンスよりも低いコンダクタンスを有し、イオン化デバイスとコレクタ・システムとの間に配置される、アノードと同軸の円筒状空洞部と、
放射スペクトルの展開を分析するための光学分光器を備える、イオン化されたガスの分析デバイスと
を備える。
【0015】
アノードは、ディスクの中央穴に中心が置かれなければならず、そうでない場合には、光のリングは形成されず、低圧での測定が不可能となる。
【0016】
さらに正確には、カソードは、横断中央穴を囲む周囲横断穴を備える有孔ディスクを備える。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、空洞部の直径dは、円筒状ボリュームの直径Dよりも小さく、分析されるべきガスの圧力に応じて調節され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、アノードは、カソードのディスクに装着される、誘電性材料から作製されたマウントによって、カソードから絶縁される。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態によれば、アノードは、カソードのディスクの中央穴内に挿入される、誘電性材料から作製されたマウントによって、カソードから絶縁される。
【0020】
有利には、この後者の場合において、このシステムは、調整デバイスをさらに備え、この調整デバイスにより、分析されるべきガスの圧力の変動に応じて、アノードの供給電圧を制御することが可能となる。
【0021】
集光システムは、少なくとも1つの収束レンズを備え、このレンズは、レンズの光軸および電極の軸が優先的に同一となるように配設される。
【0022】
1つの変形形態によれば、円筒状ボリュームの対向側の空洞部の端部が、プラズマにより発せられる光放射に対して透過性である窓によって遮られる。
【0023】
別の変形形態によれば、このボリュームの対向側の空洞部の端部は、プラズマにより発せられる光放射に対して透過性であるレンズによって遮られる。この状況においては、レンズはさらに、窓の役割を果たす。
【0024】
窓またはレンズの汚染を最小限に抑えるために、空洞部は、この空洞部を横断する光放射の経路が同一方向となるように、ポンプ移動されるガスの流れとは逆側に、円筒状ボリュームの端部にて優先的に配設される。
【0025】
本発明のさらなる目的は、上述のガス分析システムに接続される、二次真空に保持されるガスを収容する少なくとも1つのエンクロージャを備える、プラズマ・ベース半導体製造デバイスである。ガス分析システムは、発光分光器とコンピュータとを備える、イオン化されたガスを分析するためのデバイスを備える。本発明によれば、発光分光器およびコンピュータは、コンパクトな一体型制御システムを構築するために共有ケーシング内に配置され、ガス分析結果に応じてこのデバイスと連係作動するようにこのデバイスに接続される。
【0026】
当然ながら非限定的な例として提示される、添付の図面内の一実施形態に関する以下の説明を読むことにより、本発明の他の特徴および利点が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のガス分析システムを備える産業用機械の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるガス・イオン化デバイスの図である。
【図3】ガス・イオン化デバイスのカソードのディスクの詳細図である。
【図4】図2と同様の、本発明の別の実施形態によるガス・イオン化デバイスの図である。
【図5】イオン化ガス分析システムの光学的取得系統の図である。
【図6】プラズマにより発せられる光放射を集める区域の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に図示される産業用デバイスは、圧力が制御される少なくとも1つのエンクロージャ1と、エンクロージャ1に接続されるガス分析システム2とを備える。二次真空Pv(10−3から10−8ミリバール)が、一次および二次ポンプ・ユニット3を備える真空ラインによって、エンクロージャ1内に確立される。このガス分析システムは、プラズマ発生源によりイオン化を行なうガス・イオン化デバイス4と、光を集光し、集光された光を分析デバイス6の方向に送ることが可能な光学コレクタ・システム5とを備える。光学コレクタ5および分析デバイス6は、光学的取得系統7を形成する。
【0029】
図2は、本発明によるガス分析システム2のガス・イオン化デバイス4をより正確に図示する。このイオン化デバイス4は、プラズマ発生源および直流発電機10を備える。
【0030】
イオン化デバイス4は、円筒状ボリューム11を備え、この円筒状ボリューム11は、直径Dを有し、ステンレス鋼などの耐真空性導電性材料から作製された壁部12によって画成される。イオン化デバイス4は、二次真空下に置かれるエンクロージャ1に連結される。ボリューム11は、エンクロージャ1のポンプ手段3を真空排気されてよい。エンクロージャ1自体も、真空排気される。エンクロージャ1内のガス試料を分析することが可能となるように、プラズマがこのボリューム11内に生成される。
【0031】
プラズマ発生源は、直流発電機10の正極および負極にそれぞれ接続される、アノード13(+極)およびカソード14(−極)から形成される。カソード14は、直径Dの円筒状ボリューム11を画成する壁部12と、有孔ディスク15とを備える。アノード13は、ワイヤ・アノードであり、カソード14の中央に配置され、カソード14のディスク15の表面上に配置されたセラミックなどの低脱気率の誘電性材料から作製されたマウント16によってカソード14から絶縁される。
【0032】
発電機10は、(正電荷を有する)アノード13と(負電荷を有する)カソード14との間に、3000ボルトのオーダの大きな電位差を与え、これにより、プラズマ発生源の軸18に対して直交方向に極めて強い電場E17が発生する。この電場17により、カソード14からアノード13への電子流を生じさせ、加速させて、エンクロージャ1内を出所とするガス分子を励起およびイオン化することによって、プラズマを生成することが可能となる。有効なプラズマを実現するために、約100ミリテスラの一定強度を有し、電場17に対して垂直であり軸18に対して平行である所与の方向を有する磁場B19が、これに加えられる。磁場19は、円筒状ボリューム11を囲む少なくとも1つのトロイド状永久磁石20によって生成される。電場E17に結合された磁場B19が存在することにより、プラズマのガス分子の励起を大きく高めることが可能となる。したがって、プラズマ発生源は、2つの幾何学的円筒状電極13および14の間の一定の電場17の作用と、電極13、14の表面に対して平行であり、電場17に対して直交する一定の磁場19の作用との組合せにより、形成される。
【0033】
生成されたプラズマは、光源として使用される。したがって、存在するガスの分子特性の下方遷移により発せられる光は、二次真空内におけるリアルタイム測定(1秒未満)を可能とするのに十分なものとなる。
【0034】
しかし、ボリューム11内において真空中にプラズマが発生することにより、分析される必要があるガスを有する真空排気されたエンクロージャ1内に存在する分子(とりわけ炭化水素)において、分子のクラッキングが生じる。クラッキングが生ずると、それらの分子は、プラズマが緊密に結合された状態で生成されつつあるボリューム11の壁部12上に凝着する傾向があり、したがって、除去が困難になる。この状況においては、プラズマ発生源は、これらの分子を捕獲する役割を果たし、それにより、エンクロージャおよびポンプ・ラインの汚染除去に寄与する。しかし、この捕獲が生じることは、光学分析デバイスに対して有害である。
【0035】
エンクロージャ1内に存在するガスの検出および有意な分析が可能となるのに十分なだけの光を集光するためには、プラズマと分析デバイスとの間の距離を縮めることが重要であるが、それにより、このデバイスは、急速に汚染を被るようになり、光不透過性になる。正確な測定が、急速に困難になり、不可能ではないとしても、同一の条件下において再現することは不可能となる。
【0036】
この問題を改善するために、本発明は、窓21を配置することを提案し、これにより、ボリューム11内のプラズマ発生源に隣接する空洞部の端部の対向側の円筒状空洞部23の端部22にてプラズマにより発せられる光が透過することが可能となる。円筒状空洞部23は、プラズマ発生源が中に配置される円筒状ボリューム11のコンダクタンスよりも低いコンダクタンスを有する。例えば、空洞部23は、ボリューム11の直径D未満の直径dを有してよい。別の例としては、空洞部23は、1cm以上の長さ、およびボリューム11の直径Dの少なくとも1/2以下の直径dを有してよい。優先的には、空洞部23の直径dを、作動圧力に応じて調節することが可能であり、作動圧力がより大きく、汚染区域がより広いほど、空洞部23の直径dはより小さくなければならない。実際には、空洞部23の直径dは、外側から形成され、その最大値は低圧ガス分析デバイスの作動に適合するものである。次に、作動圧力の上昇に応じて、空洞部の内側と同一形状の挿入物が、空洞部23内に押込まれて、その直径dを小さくすることができる。
【0037】
この空洞部23の内部には、電場Eまたは磁場Bは存在しない。プラズマ発生源から窓21の距離を隔てること、ならびに空洞部23内に電場または磁場が存在しないことにより、汚染分子が窓21に到達する前に汚染分子を捕獲することが可能となる。窓21の汚染の問題を最小限に抑えるために、有利には、空洞部23は、光放射の経路が同一方向になるように、ポンプ移動されるガス24の流れとは逆側に配設される。圧力の低下は、分析されるべきガスが中に存在する真空排気されたエンクロージャ1のポンプ・ユニット3によって引き起こされ、同時に、プラズマにより、圧力が若干上昇する。結果として得られた差圧により、プラズマの生成物からなる粒子流は、ポンプ・ユニット3の方向に向かい、それにより、窓21の汚染が限定される。
【0038】
1つの変形形態によれば、外部加熱(図示せず)が、空洞部23の周囲にて加えられてよく、これにより、空洞部23内の遠心分離分子に対する熱分散効果がもたらされ、さらに、空洞部23の低コンダクタンスに関連する障壁効果が向上される。
【0039】
しかし、プラズマにより発せられる光は、エンクロージャ1内の分析されるべきガスの圧力の低下と共に、より弱くなる。さらに、プラズマは、アノード13の全長にわたって分散され、それにより、発光される光を分析デバイス6に対して集束させることが困難になる。図3は、この欠点を改善することが可能なカソード14のディスク15の一実施形態を詳細に図示する。
【0040】
カソード14は、ディスク15を備え、このディスク15は、その周囲上に一連の横断穴30が穿孔され、これらの一連の直交方向穴30は、やはり横断する中央穴31を囲むリングを形成する。ワイヤ・アノード13は、ホール31の中心でホール31を横断する。この有孔ディスク15を使用することにより、この設置物のこの部分の真空排気が可能となるとともに、ガス分子の循環が自由になる。
【0041】
この構成においては、プラズマは、軸18を中心として周囲に位置しアノード13を囲む、数ミリメートル径のリング32の形態の、ディスク15の中央穴31内に位置する。このように得られ位置するプラズマは、はるかに強度が高く、したがって、分析デバイス6に対して集中させることがさらに容易になる。したがって、発光分光法を利用する分析を、10−3ミリバール未満、さらには10−7ミリバール未満の非常に低圧にて実施することができる。
【0042】
磁場B19は、軸18に中心が置かれる回転円筒体内の発生器に沿って形成され、好ましくは、ディスク15を形成する材料を貫通し、それにより、磁場B19は、ディスク15の固体部分33においては強力になり、ディスク15の穴30、31内においてははるかに弱くなる。ディスク15を使用することにより、中央穴31内における磁場B19の強度だけでなく、電場E17の値が(最大で5倍まで)、著しくおよび局所的に高められる。
【0043】
本発明によるイオン化デバイス4を組み立てる作業の際に、カソード14のディスク15は、円筒状ボリューム11の壁部12に対して垂直に配置される。マウント16は、カソード14のディスク15の上方に固定される。アノード13は、カソード14のディスク15の上方に設置され、ディスク15の平面に対して垂直に位置し、カソード14のディスク15の中央部上に位置決めされるように、マウント16の中央に接合される。
【0044】
アノード13は、ディスクの中央穴内において実質的に中央に配置されなければならない。そうでない場合には、光のリング32は形成されず、低圧での測定は不可能となる。したがって、カソード14のディスク15内においてアノード13を中央に配置することにより、アノード13とボリューム11の壁部12とを完全に平行に保持することが可能となる。
【0045】
図4は、本発明の別の実施形態を図示する。変更のない要素については、図2の参照符号がそのまま使用される。
【0046】
プラズマの好ましい位置ゾーンに相当する、カソード14の有孔ディスク15の中央穴の内部においては、電場E17の強度は、非常に高く、円筒状ボリューム11の残りの部分よりも最大で5倍までさらに高い。この位置における電場17の強度は、このレベルにてアノード13のスパッタリングを生じさせ得るものである。このリスクは、アノード13の供給電圧が、約3,000ボルトを上回る場合には、さらに高い。アノード13のスパッタリングにより、真空チャンバ内に存在するタイプのものとは一致しない、非常に広いスペクトル・バンドの形態の発光スペクトルにおける迷光発光が現れる。さらに、これらの強力な迷光バンドは、目下の発光バンド特性のタイプを隠す場合がある。
【0047】
このリスクを回避するために、アノード13は、有孔ディスク15の中央穴内に挿入される、誘電性材料から作製されたマウント25によって、カソード14から絶縁される。したがって、カソード14の中央穴の内部は、中性化され、スペクトル測定にとって厄介な、アノード13のスパッタリングというリスクがなくなる。このゾーンの抑制により、プラズマ発生源によって発生される光の発光が若干低下するという問題がもたらされる。しかし、アノード13に対してより高い供給を行なうことが可能であることにより、光の損失を大幅に補償することが可能となり、したがって、リアルタイム(1秒未満)で測定を行なうことが可能となる。
【0048】
したがって、この実施形態においては、分析されるべきガスの圧力が10−7ミリバールのオーダの低さにある場合に、電極の供給電圧を上昇させる必要がある。しかし、このような電圧の印加は、圧力がさらに高く、10−5ミリバールよりも高い場合には、はるかに重要なものとなる。この場合には、プラズマの強度は、アノードが再びスパッタリングのリスクを負うようなものとなる。さらに、プラズマによりクラッキングされた分子は、堆積によって、プラズマとプラズマの付近に配置され得る光学素子とを収容するボリューム11を、急速に汚染する。これは24時間未満で生じる。任意の圧力において利点を維持するために、アノード13の供給電圧用の制御デバイス26が、設置される。分析されるべきガスの圧力が上昇すると、アノード13の供給電圧は、低減される。圧力が低下すると、供給電圧は上昇される。このようにして、圧力にかかわらず、リアルタイムで測定を行なうのに十分な強度ではあるが、光学素子の汚染を回避するのには十分な弱さのプラズマが得られる。この結果、堆積による汚染が著しく低減されることにより、システムの寿命は、引き延ばされる。この制御は、プラズマ発生源において生成されるイオン化電流に、または、例えば発光分光計の補助などによりスペクトルの強度に関連付けられてよい。制御を追加することにより、はるかに高い圧力での作動が可能であるシステムを得ることが可能となり、これにより、10−8から1ミリバールに及び得る圧力範囲においてスペクトル測定を実施することが可能となる。イオン化電流の測定により、この同一の作動圧力範囲内において圧力の測定値を得ることが可能となる。
【0049】
図5に図示されるように、透明窓40を通過するプラズマにより発せられる光は、集光システム5によって集められ、分析デバイス6によってスペクトル分析される。
【0050】
プラズマにより発せられる光を分析するための分析デバイス6は、光学コレクタ5から分光計41に光を伝達するファイバ43によって光学的に接続されたコンピュータ42に関連付けされる、発光分光計(OES)41から構成される。有利には、コンピュータ42は、発光分光器41と共に同一のケーシング内に配置されて、コンパクトな一体型制御システムを形成する。コンピュータ42を分光計41に接続するケーブルの長さは、非常に短く、それにより、非常に短時間のガス分析時間(<20ms)を確保することが可能となる。この一体型制御システムは、ガス分析の結果に基づき、接続される製造設備と連係作動する。この制御システムは、例えば、機械の機能を停止する、または、被制御圧力エンクロージャ1をパージするためにシステムを始動させることができる。
【0051】
イオン化デバイス4は、二次真空によって囲まれ、したがって、光透過性の壁部によって、大気圧にある光学的取得系統7から隔離されなければならない。プラズマが中で生成される真空媒体11と外部雰囲気との間の境界部は、この場合には、光の透過が可能なシール接合部を備える透明窓40を使用して形成される。この窓40は、優先的には、プラズマから生ずる光44の検出を最適化するために、この光44を発する区域に可能な限り近い位置に配置される。
【0052】
光学コレクタ5は、プラズマにより発せられる光を集光し、光ファイバ45の端部にこの光を収束させる。光ファイバ45の他方の端部は、発光分光器41の入力46に接続される。この場合には、光学コレクタ5は、少なくとも1つの収束レンズ47を備え、この収束レンズ47により、プラズマによって発せられる光の集光が可能となる。これらのレンズは、単レンズ(両凸レンズ、平凸レンズ)、またはアクロマチック・レンズ(色収差を回避することにより焦点合わせを向上させる)であってよい。
【0053】
集光システム5の光学軸、および電極の回転軸18は、同一である。この光学系の焦点距離は、収束を最適化するために可能な限り小さくなるように算定され、同時に、これにより、光学系の合計形状ファクタが低減される。
【0054】
正確な波長範囲にわたる伝達を向上させるために、窓40およびレンズ47は、400〜800nmの範囲にわたる伝達を向上させるように意図されたMgF2の薄層の塗布など、反射防止処理を施されてよい。可能な限り最大の波長範囲にわたって最適な伝達を実現するためには、窓40およびレンズ47は、特定の組成を有する材料から作製されてよい。例えば、フッ化カルシウムが使用されてよく、200〜1000nmにわたり伝達率が90%を上回る溶融シリカが使用されてもよい。
【0055】
このようにして、本発明のガス分析システム2の光学的取得系統7により、リアルタイム測定(測定時間が1秒未満)を達成することが可能となる。
【0056】
図6に図示される実施形態においては、光学コレクタ5を構成するレンズ50の中の1つが、シール51に当接している場合には、このレンズにより、透明窓の使用を回避することが可能となり、このレンズ50自体が、大気圧から真空を隔離する境界部としての役割を果たすことができる。プラズマ発生源からの光を集束するポイントである光学コレクタ5の出力からの光を、分光計41の入力46に送ることは、光放射53を集め誘導するレンズ50の後に配置された光ファイバ52を使用することによって、達成される。光ファイバ52の長さは、可能な限りファイバ52内の光損失を低減させるように、可能な限り短く(この場合には、約10cm)なるように選択される。
【0057】
1つの変形形態においては、この光の光学コレクタ5は、収束点が分光計41の入力スロット46に置かれた光学デバイスである。このデバイスは、複数のレンズ50のセットから構成されてよく、これにより、収束を向上させることが可能となる。この状況においては、分光計41の入力スロット46は、光ビーム53の収束点上に直接的に置かれる。光ファイバは、広い波長範囲にわたる最適な伝達率が比較的低いため、この光は、光ファイバによって発光分光計には誘導されず、入力フラップ46の上に光ビーム53を直接的に集束させることによって、誘導される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次真空のオーダの圧力下においてガスを分析するためのガス分析システムにおいて、
ガス・イオン化デバイスを含み、前記ガス・イオン化デバイスは、
円筒状ボリュームを画成する導電性壁部と、少なくとも1つの中央貫通穴を有するディスクとを有するカソードと、
前記穴の実質的に中央に配置されるアノードと、
電場、および前記電場に対して直交する磁場の作用の組合せにより前記円筒状ボリューム中で生成されるプラズマのプラズマ発生源とを備え、前記ガス分析システムはさらに、
前記プラズマにより発せられる光放射を集めるシステムと、
前記円筒状ボリュームのコンダクタンスよりも低いコンダクタンスを有し、前記イオン化デバイスと前記集光システムとの間に配置される、前記アノードと同軸の円筒状空洞部と、
放射スペクトルの展開を分析するための光学分光器を備える、イオン化されたガスの分析デバイスとを備える、ガス分析システム。
【請求項2】
前記カソードは、横断中央穴を囲む周囲横断穴を備える有孔ディスクを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記空洞部の直径dは、前記円筒状ボリュームの直径Dよりも小さく、前記直径dは、分析されるべきガスの圧力に応じて調節され得る、請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項4】
前記アノードは、前記カソードの前記ディスクの前記中央穴内に挿入される誘電性材料から作製されたマウントによって、前記カソードから絶縁される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
調整デバイスをさらに備え、前記調整デバイスにより、分析されるべきガスの圧力の変動に応じて、前記アノードの供給電圧を制御することが可能となる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記集光システムは、少なくとも1つの収束レンズを備え、それにより、光軸および前記電極の軸は、同一になる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記円筒状ボリュームの対向側の前記空洞部の端部が、前記プラズマにより発せられる前記光放射に対して透過性である窓によって遮られる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記円筒状ボリュームの対向側の前記空洞部の前記端部は、前記プラズマにより発せられる前記光放射に対して透過性であるレンズによって遮られる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記空洞部は、前記光放射の経路が同一方向となるように、ポンプ移動されるガスの流れとは逆側に、前記円筒状ボリュームの端部上に配設される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
発光分光器とコンピュータとを備えるイオン化ガス分析デバイスを備え、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のガス分析システムに接続される、二次真空内に保持されるガスを収容する少なくとも1つのエンクロージャを含むプラズマ・ベース半導体製造機械であって、前記発光分光器およびコンピュータは、コンパクトな一体型制御システムを構築するために共有ケーシング内に配置され、ガス分析結果に応じて当該機械と連係作動するように当該機械に接続されることを特徴とする、プラズマ・ベース半導体製造機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−537211(P2010−537211A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522284(P2010−522284)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059614
【国際公開番号】WO2009/027156
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】