発光分光測定のための装置及び方法
本発明は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調部分と、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを含む電流波形を有する発光分光測定(OES)のためのスパークを発生させるスパーク発生器を提供する。好ましくは、スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源から発生される。本発明はまた、スパーク発生器を備える発光分光計と、スパーク発生器を用いた発光分光測定の方法とを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分光測定のための装置及び方法、特に、しかし非限定的に、スパーク発生器、分光計、及び発光分光測定の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子放出分光測定(AES)とも呼ばれる発光分光測定(OES)は、試料の元素分析のための技術であり、例えば、固体金属試料の分析において特に有利である。本発明は、試料を急激に気化させ、気化された試料内の元素を励起するのにスパーク(本明細書では、あらゆる電気スパーク、アーク、又は放電を指す上で使用される)が使用されるOES、いわゆるスパークOESに関する。励起状態から低エネルギ状態への遷移が発生する時に、励起された試料元素によって光が放出される。各元素は、スペクトル線とも呼ばれるその電子構造に特徴的な個別の波長を有する光を放出する。スペクトル線を検出することにより、OESは、試料の元素組成の定量的及び定性的測定を可能にすることができる。従って、スパーク発光分光計は、試料内の元素を励起して光を放出させるためのスパーク発生器、放出光を個別波長に分散させるための光学系、分散光の光強度を検出するための検出システム、及び光強度を表す検出システムからの信号を記憶及び処理するためのデータ記憶及び処理システムを含む。組成の測定に対して十分なデータを集積するために、一般的に一連のスパークが使用され、スパークから発生する得られるデータは、処理に対して蓄積される。
【0003】
OESにおいて試料を励起するための一連のスパークを生成するためのスパーク発生器は、好ましくは、安定したエネルギ出力及び高精度の測定のための高度の再現性を有するスパークを生成すべきである。
【0004】
スパークが抵抗及びインダクタンスを通じたコンデンサー(RLC回路)の放電によって非変調方式で発生する従来のアナログスパーク発生器は、電流波形又はスパークのプロフィールに対する大幅な量の制御を許さず、従って、再現性は低い。従って、試料内の成分の測定精度は悪影響を受ける。一般的に、アナログスパーク源の電流波形は、スパーク電流の比較的緩慢な立ち上がり部(以下に説明するデジタル源と比較して)から幅広のピーク、その後の長い期間にわたる指数関数的な電流の漸次的な立ち下がり部又は減衰によって特徴付けられる。この種の非変調電流プロフィールは、試料内の微量元素の分析にはそれ程適さないことが見出されている。上述の非変調電流プロフィールは、微量元素よりも金属内の合金元素の分析に良好である場合があるが、その場合であっても、アナログで発生したスパークは、貧弱なスパーク再現性に起因して上述の貧弱な測定精度を依然として招く。
【0005】
例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されている変調スパークを発生させるいわゆるデジタルスパーク発生器が公知であり、これらのスパーク発生器により、上述の問題のうちの一部に対処することが模索されている。この参考文献には、スパーク中のスパーク電流を測定し、スパーク電流を基準電流と比較し、基準電流に依存する所定の値に調節するための手段を含むスパーク発生器が説明されている。基準比較のためのサンプリング速度は、50〜200kHzであるといわれている。基準電流は、スパーク電流波形のためのプログラムの一部としてコンピュータ上に記憶される。一般的に、従来技術に説明されている変調電流波形は、高振幅(高電流)で比較的短い持続時間を有する単一の初期スパークを有し、電流プラトーに幾分類似する低電流の持続性変調減衰が続く。高振幅ピークは、電流プラトーの5倍の強度のものとすることができる。そのような波形は、欧州特許第396291B1号明細書の図4に略示されている。初期の高電流ピークは、主に試料の気化に使用するためのものであると説明されており、持続性電流は、気化された試料内の原子を励起するためのものである。この種の電流プロフィールは、微量元素を検出するのにはアナログスパーク源のプロフィールよりも良好であるが、金属合金試料内の合金元素の分析にはそれ程適さないことが見出されている。
【0006】
特開平8−159973A号公報及び欧州特許第318900A2号明細書には、2つの電流部分が生成される別の種類のスパーク源が説明されている。最初に単一のピークである高電流部分が生成され、次に、漸次的に低くなる強度を有する2つ又は3つのピークを含む低電流部分が生成される。これらのスパーク源は、受動回路の使用に起因する制御の欠如を欠点とする。特に、電流ピークの振幅及び持続時間が、コンデンサー及びインダクタの異なる値によって固定される。欧州特許第84566A号明細書では、ここでもまた受動回路(すなわち、共振LC回路)を用いた減衰振動電流源を使用するスパーク源が開示されており、従って、このスパーク源も、制御の欠如を欠点とする。電流包絡線は、指数関数的減衰曲線に沿って単純に低下し、ピーク周波数は、回路の共振周波数によって判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第396291B1号明細書
【特許文献2】特開平8−159973A号公報
【特許文献3】欧州特許第318900A2号明細書
【特許文献4】欧州特許第84566A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電荷結合デバイス(CCD)検出器を光検出器として使用するOES計器における付加的な問題は、そのような検出器が、時間と共にその応答において劣化を示す可能性があることである。そのような劣化の速度を低下させることが望ましいと考えられる。
【0009】
本発明は、上述の背景を踏まえて達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調部分と、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを含む電流波形を有するスパークを発光分光測定(OES)に対して発生させるためのスパーク発生器を提供する。
【0011】
本発明の別の態様により、本発明によるスパーク発生器を含む発光分光計を提供する。
【0012】
本発明によるスパーク発生器及び発光分光計は、好ましくは、以下に説明する本発明による方法を実施するためのものである。
【0013】
本発明更に別の態様により、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調部分と、いかなる変調ピークも実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを含む電流波形を有するスパークを電極と分析される試料の間に発生させる段階と、スパークの結果として試料によって放出された光を分散させる段階と、選択された波長における分散光の強度を検出する段階とを含む発光分光測定の方法を提供する。
【0014】
好ましくは、スパークは、上述の方法で本発明によるスパーク発生器によって生成される。同じく好ましくは、上述の方法は、本発明による発光分光計によって実施される。
【0015】
本発明は、ここに具体的に説明するものを含む数々の利点を有する。他の利点は、下記の説明から明らかになる。本発明は、スパーク工程の異なる段階のより制御性の高い時間分離を可能にする。例えば、本発明は、試料表面の予備処理(再溶解及び構造の微細化)及び気化の段階の光学分析のための得られる蒸気の励起段階からのより良好な分離を可能にする。プログラマブル電流源の使用は、ピーク間持続時間、立ち上がり時間、ピーク振幅、及び高電流ピーク数の変更を可能にする。この制御性は、特開平8−159973A号公報及び欧州特許第318900A2号明細書のカスケード電流源又は欧州特許第84566A号明細書の減衰振動電流源のいずれを用いても可能ではない。
【0016】
複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調電流部分の使用は、試料表面への高エネルギ送出のより良好な制御を可能にすることが見出されている。この高エネルギ送出は、スパークの開始時点で単一の高電流ピークよりもより制御性が良好な方式で試料表面の状態を整え、それを気化する。より具体的には、この特徴は、高エネルギ段階中に、スパークプラズマエネルギのマグニチュード(すなわち、温度)と、試料表面へのこのエネルギの伝達の持続時間とを別々に制御することを可能にする。より詳細ではあるが、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、特許請求する方式でスパークに送出されるエネルギを変調することにより、気化のための高エネルギプラズマ段と、試料表面において安定化現象を促進する低エネルギ段との間で迅速に交替することが可能になり、同時に次回の分析段階を最適化するために蒸気の最も高いエネルギを緩和することが可能になる。
【0017】
電流プラトーの形態であるとさえすることができる、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流を有する第2の変調電流部分の使用は、特開平8−159973A号公報、欧州特許第318900A2号明細書、及び欧州特許第84566A号明細書に説明されているデバイスによっては達成することができず、これは、これらのデバイスに使用される電気回路が、本質的に電流パルスを送出するように設計され、電流プラトーを維持することができないことによる。本発明のこの特徴は、これらのデバイスではなく、プログラマブル電流源によって与えられる。好ましくは、本発明の比較的低い電流の部分は消滅電流ではなく、安定化され、制御された電流である。この目的は、制限かつ制御されたエネルギ量をスパークに送出し、分析に対して蒸気の励起を最適化することである。この分析段階において、エネルギレベル及び蒸気へのこのエネルギ供給の持続時間は、本発明を用いて別々に制御することができる。
【0018】
本発明は、金属試料内の微量元素及び合金化元素の測定をこれらの用途のうちのいずれか一方又は他方により良く適合する上述の従来技術の方法とは対照的に両方共に良好な精度で可能にする。他のスパーク源を使用する場合と同様に、スパークのエネルギの一部は試料の気化に、一部は原子化及び/又はイオン化に、更に一部は励起に使用されることになる。しかし、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、本発明は、上述の利点を達成することができ、これは、スパークエネルギが、純粋にアナログのスパーク源と比較して、例えば、波形の初期部分において、複数の比較的高い電流の高勾配電流ピーク(すなわち、高エネルギ)で送出され、従って、例えば、原子及びイオンの化学種における高エネルギ電子遷移に好ましい7,000〜10,000Kのものとすることができるより制御性の高い高温ゾーンがプラズマ内に達成されることによる。微量元素を測定するのに有利であるとすることができる最も感度の高いスペクトル線は、一般的に、原子型遷移(スペクトル線の表においてU1、U2、...等と記載される)及びイオン型遷移(スペクトル線の表においてV1、V2、...等と記載される)のようないわゆる共振遷移からもたらされる。これらの遷移は、高い遷移確率を有し、例えば、7eVから12eVまでの範囲に高エネルギを有することができ、従って、高温度プラズマによって最も効率的に励起される。特に、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する、好ましくはプログラマブルである波形の高電流部分における複数のピークの使用は、高温度プラズマの持続時間のより良好な制御性を与える。
【0019】
同様に、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、欧州特許第396291B1号明細書に説明されている従来技術のデジタルスパーク源と比較して金属内の合金元素の検出を強化することができ、これは、スパークエネルギが、波形の開始時点で単一の高強度の電流ピーク内に集中されず、代替的に、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数のピークにわたって分散され、それによってこの波形が、スパーク内の後の方で主に原子化学種において発生する傾向を有するより低いエネルギの電子遷移(例えば、2eVから7eV)を促進するのにも有効であり、これらの遷移に対してより低い背景を発生させることによる。多くの場合に、これらの種類の原子遷移は感度が低く、すなわち、より低い遷移確率しか持たず、従って、そうでなければ存在する元素の高い濃度に起因して検出器に過大な負荷を与える場合がある高強度のスペクトル線を生成することになる合金元素を測定するのに有利であるとすることができる。
【0020】
スパークプラズマへのエネルギ送出に対する改良された制御により、一方で高エネルギ遷移(例えば、7〜12eV)に対する好ましい励起条件と、他方で低エネルギ遷移(例えば、2〜7eV)に対する好ましい励起条件とのより良好な時間分離を本発明によって達成することができる。本発明はまた、有利な遷移からのスペクトル背景(連続放射線とも呼ばれる)のより良好な分離を可能にする。これらの特徴は、放出光がスパーク持続時間内に位置する定められた時間窓内でのみ測定されるOESにおいて多くの場合に使用されるいわゆる「時間分解分光測定」(TRS)の使用に有利である。TRSは、「時間ゲート分光測定(TGS)」とも呼ぶことができる。TRSでは、異なるスペクトル線に対して異なる時間窓を使用することができる。時間窓の選択は、スペクトル線のエネルギのようなスペクトル線のパラメータに依存する。時間窓は、例えば、スパーク源又はスペクトル背景干渉によるスペクトル線への摂動を最小にするように選択することができる。TRSは、例えば、微量元素分析に対して有意な恩典をもたらすものである。
【0021】
本発明は、多くの組成の定量測定(所定の取得時間に対する)において精度を大きく改善し、それによって同じ精度での取得時間を短縮することが見出されている。
【0022】
本発明による波形を有するスパークの使用は、OES計器の環境内でのCCD光検出器の応答性の劣化速度を低下させることができる。いかなる理論によっても拘束されることなく、この劣化は、従来技術のデジタルスパーク源の単一の高強度の電流ピークを使用する場合に生成されるもののような一般的に計器の低圧環境内で小量存在する揮発性の有機分子の高強度のUV光による光化学反応(消光)に起因すると考えられる。この場合、光化学的に生成される生成物は、CCD検出器の表面上に堆積されるようになり、それによって時間と共に検出器の感度が低下すると考えられる。本発明は、従来技術におけるようにエネルギを単一の高強度のピークに集中させるのではなく、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数のピークにわたって高エネルギを分散するスパークを用い、このスパークが消光確率を低下させると考えられ、それによって本発明と併用した場合に検出器上で観測される堆積速度の低下の説明がつく。
【0023】
ここで、本発明を例示的にかつ添付図面を参照してより詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の例の概略図である。
【図2A】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第2の例の概略図である。
【図2B】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第3の例の概略図である。
【図2C】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第4の例の概略図である。
【図2D】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第5の例の概略図である。
【図2E】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第6の例の概略図である。
【図3A】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第7の例の概略図である。
【図3B】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第8の例の概略図である。
【図4】本発明によるスパーク波形の従来技術のスパーク波形との比較図である。
【図5A】本発明による発光分光計の実施形態の概略図である。
【図5B】本発明によるスパーク発生器における回路構成の実施形態の概略図である。
【図6A】従来技術のスパークと本発明によるスパークの両方を用いてAl 394.40nmに対して発光分光計上に記録された強度−時間プロットを示す図である。
【図6B】従来技術のスパークと本発明によるスパークの両方を用いてBa 455.40nmに対して発光分光計上に記録された強度−時間プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図内に示す実施形態は、本発明の範囲に対して非限定的であり、例示のみを意図した例であることを認めるであろう。
【0026】
本発明による電流波形の一例を図1に略示している。図1は、スパーク電流(I)を時間(t)に対してプロットしている。図1から、波形が、Aで表した比較的高い電流の第1の変調部分に続いてBで表した比較的低い電流の第2の変調部分を含む変調波形を含むことが分る。比較的高い電流又は勾配、又は比較的低い電流又は勾配のような本明細書に使用する比較的という用語は、他方の例えば電流又は勾配に対する比較を意味する。例えば、比較的高い電流という用語は、比較的低い電流と比較して高い電流を意味する。一部の実施形態では、図1に示している波形の代わりに、変調の第1の波形部分が時間的に波形のうちの第2の変調部分に続くとすることができることを認めるであろう。従って、本明細書では、第1の変調部分という用語及び第2の変調部分という用語は、時間的な順序を表すのではなく、単に2つの異なる変調部分を表す。しかし、好ましくは、波形のうちの第1の変調部分は時間的に最初にくる、すなわち、第1の変調部分に波形のうちの第2の変調部分が続く。そのような実施形態は、第1の変調部分の比較的高い電流を試料の気化に利用することを可能にする。
【0027】
比較的高い電流の部分Aは、この例ではP1〜P6とラベル付けした可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調される。図1には、可変振幅を有する複数のピークによる変調の事例を示している。ピークP1〜P3のシーケンスは、増大する振幅を有する比較的高い勾配のピークによる高電流部分Aの急傾斜の前縁又は電流立ち上がり部(図1に上方矢印rで表す)の変調を表す。ピークP3〜P6のシーケンスは、高電流部分Aの後縁又は電流立ち下がり部(図1に下方矢印fで表す)を変調する低下する振幅を有する比較的高い勾配のピークによる高電流部分Aの更に別の変調を表す。従って、本発明の1つの種類の実施形態では、波形のうちの第1の部分(すなわち、比較的高い電流の部分)は、根底にある電流包絡線を含み、すなわち、電流立ち上がり部と電流立ち下がり部とを含むことが分る。そのような実施形態では、増大する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって電流立ち上がり部を変調することができ、低下する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって電流立ち下がり部を変調することができる。他の実施形態では、他の変調が可能である。例えば、一部の実施形態では、波形のうちの第1の部分のみを複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調することができ、電流立ち下がり部は、複数の比較的高い勾配のピークを持たないか、又はその逆である。好ましくは、少なくとも、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部が、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅の)によって変調される。
【0028】
図1に示しているもの以外の波形変調が、本発明の範囲で可能であることを認めるであろう。例えば、比較的高い勾配の変調ピークのシーケンスを変更することができる。
【0029】
一部の実施形態では、波形のうちの第1の比較的高い電流の部分(すなわち、第1の変調部分)は、少なくとも、第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク及び第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができる。例えば、波形のうちの第1の比較的高い電流の部分は、第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク、それに続く第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク、任意的にそれに続く再度第1の高振幅と同じとすることができ、又は異なる高振幅とすることができる第3の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができ、波形のうちの比較的低い電流の部分に至るまで以降同様に続く。本発明による可変振幅を有する比較的高い電流の高勾配ピークを有する様々なスパーク電流波形の概略図を図2Aから図2Eに示している。図3A及び図3Bには、本発明による可変ピーク間持続時間を有する比較的高い勾配のピークを有するスパーク電流波形の例の概略図(図3A)、並びに可変振幅及び可変ピーク間持続時間を有するスパーク電流波形の例の概略図(図3B)を示している。
【0030】
本発明のスパークと従来技術の単一のピークのスパークとの比較を図4の例に示しており、この図では、本発明の場合に本発明のスパークのエネルギがいくつかのピークにわたって分散されており、それによって振幅及び時間に関してスパークエネルギ送出のより良好な全体制御が与えられることが分る。低電流部分では、2つの波形は重なり合う。
【0031】
例えば、図1にBで表す波形のうちの第2の比較的低い電流の部分(すなわち、第2の変調部分)は、図示の実施形態では、複数の比較的高い勾配のピークによる変調に続き、好ましくは、持続性の電流の形態(すなわち、第1の比較的高い電流の部分よりも長い持続時間)にある。好ましくは、比較的低い電流の部分は、電流プラトーの傾向を有する比較的低い勾配の低電流(すなわち、実質的に一定の電流値)によって変調される。プラトーは、好ましくは、非ゼロのプラトーである。それによって第2の電流部分により、制限かつ制御されたエネルギ量を与えることが可能になる。
【0032】
一部の実施形態では、第2の比較的低い電流の部分(すなわち、第2の変調部分)は、比較的低い勾配の電流によって変調することができ、この変調は所定の時間の後に停止され、それによってその後に、例えば、指数関数的減衰からもたらされるような非変調減衰に第3の部分において低電流部分が続くようにする。比較的低い電流の部分の終端では、残光アーク放電を低減するために、電流波形は、例えば、短絡によって好ましくは中断され、放電が突然終了する。そのような中断を例えば図1の点SCに示している。
【0033】
比較的低い電流及び低い勾配の部分(すなわち、第2の変調部分)は、好ましくは、実質的にいかなる変調ピークも持たず、従って、比較的高い勾配のピークを実質的に含まない。このようにして、比較的低い電流の部分は、低エネルギ原子遷移を優先的に励起し、それによってこれらの遷移のスパークのうちの比較的高い電流の部分によって優先的に励起される高エネルギ遷移からのより良好な時間分離が可能になる。
【0034】
可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピークを低勾配を有する変調された比較的低い電流の第2の部分と共に含む電流波形を有するスパークを使用することにより、本発明は、原子とイオンの両方において高エネルギと低エネルギの両方の様々な異なる種類の遷移を効率的に励起することを可能にし、従って、本発明は、金属試料内の微量元素と合金元素の両方を測定することにおいて有効である。複数の比較的高い勾配のピークは、特定の分析用途に適するようにプログラムされた可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有することができ、例えば、波形を所定の試料内の対象元素を測定するのに有効なものに調整することができる。同様に、第2の比較的低い電流の部分の変調された低い勾配を特定の分析用途に適するようにプログラムすることができる。
【0035】
可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する比較的高い勾配のピークは、可変振幅又は可変ピーク間持続時間(すなわち、ピーク間で異なる期間)のいずれか又はその両方を有することができる。好ましくは、ピークは、少なくとも可変振幅のものである(すなわち、任意的に可変ピーク間持続時間を有する)。
【0036】
一般的に、波形の高勾配電流ピークは、特定の分析用途に適するようにその個数、振幅、及び/又はピーク間持続時間に関して調節することができる。好ましくは、ピーク数、その振幅、及び/又はピーク間持続時間はプログラマブルであり、以下により詳細に説明するスパーク発生器回路を制御するコンピュータによって制御される。
【0037】
本明細書に使用する電流ピークの個数に関する複数という用語は、2つ又はそれよりも多くを意味する。波形内のピーク数は、分析される試料に適するようにプログラムすることができる。一般的に、例えば、金属試料内で試料の母材を構成する組成は、変調においてピーク数を測定される上での有意なファクタである。従って、最適なピーク数は、実験的に測定することができ、その後にそれに従ってピーク変調を制御するコンピュータプログラムに適するコンピュータプログラム又はパラメータを選択することができる。
【0038】
好ましくは、第1の比較的高い電流の変調部分は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する2つ又はそれよりも多く、より好ましくは、3つ又はそれよりも多くのピークによって変調される。例えば、波形は、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれよりも多くのピークを有するようにプログラムすることができる。例えば、図1は、比較的高い電流の部分において電流立ち上がり部に3つのピークを有し、立ち下がり部に4つのピークを有し(最も高いピークを立ち上がり部及び立ち下がり部の一部として計数する)、合計で6つのピークを有する、本発明による波形を示している。
【0039】
一般的に、波形のうちの第1の比較的高い電流の変調部分は、スパーク電流の前縁又は立ち上がり部、例えば、図1に示している立ち上がり部rを含む。好ましくは、この前縁は、複数の比較的高い電流の高勾配ピーク、より好ましくは、増大する振幅を有するものより好ましくは、増大する振幅を有する少なくとも3つのそのようなピークによって変調される。好ましくは、波形のうちの比較的高い電流の部分は、後縁又は立ち下がり部、例えば、図1に示している立ち下がり部fも含む。好ましくは、この後縁は、複数の比較的高い勾配のピーク、より好ましくは、低下する振幅を有するものよりも好ましくは低下する振幅を有する少なくとも2つのそのようなピークによって変調される。
【0040】
複数の比較的高い勾配の電流ピークに関する可変振幅という用語は、ピークが全て同じ振幅のものというわけではなく、各ピークの振幅を例えば変調プログラムに従って独立して調節することができることを意味する。例えば、各ピークの振幅は、以下に詳細に説明するように、変調プログラムの1つ又はそれよりも多くの基準電流に基づくことができる。一部の実施形態では、高い勾配の電流ピークは、各々が異なる振幅のものとすることができる。他の実施形態では、少なくとも1つの比較的高い勾配の電流ピークが異なる振幅のものである場合に、複数の比較的高い勾配の電流ピークのうちの2つ又はそれよりも多くは、同じ振幅を有することができる。
【0041】
複数の比較的高い勾配の電流ピークは、比較的高い電流振幅を有するようにプログラムされる。好ましくは、振幅は、スパーク発生器回路を制御するコンピュータ上でプログラマブルである。振幅は、特定の分析用途に適するようにプログラムされる。一般的に、複数のピークの少なくとも一部、より好ましくは、殆ど、最も好ましくは、全ての電流振幅は、15Aと250Aの間、より一般的には20Aと150Aの間にある。
【0042】
異なる振幅を有する隣接ピークの間では、電流ステップ(すなわち、振幅の差分)は、好ましくは、1Aから235A、より好ましくは、少なくとも10A、更により好ましくは、10Aから40Aまでの範囲にある。
【0043】
比較的高い勾配のピークの立ち上がり時間は、一般的に式(1)によって測定することができる。
dI/dt=(Ups−Uarc)/L (1)
ここで、dI/dtは、電流立ち上がり速度であり、Upsは、スパーク発生器回路に対する電源電圧であり、Uarcは、スパーク電圧であり(例えば、30〜40ボルト)、Lは、スパーク回路内のインダクタのピーク電流源インダクタ値(例えば、〜8μH)である。ピーク持続時間は、電流ピークの立ち上がり時間と立ち下がり時間との和であり、立ち下がり時間は、一般的に式(2)によって測定される。
dI/dt=−Uarc/L (2)
【0044】
比較的高い勾配のピークは、その立ち上がり側で10〜60A/μs、好ましくは、25〜55A/μs、より好ましくは、30〜50A/μsの範囲の例えば40A/μsの勾配を有することができる。
【0045】
好ましくは、波形のうちの第1の部分(すなわち、比較的高い電流の部分)は、根底にある電流包絡線を含み、すなわち、電流立ち上がり部及び電流立ち下がり部を含む。そのような実施形態では、電流立ち上がり部は、増大する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができ、及び/又は電流立ち下がり部は、低下する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができる。他の実施形態では、他の変調が可能である。例えば、一部の実施形態では、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部のみを複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調することができ、電流立ち下がり部は、複数の比較的高い勾配のピークを持たないか、又はその逆である。好ましくは、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調される。
【0046】
波形のうちの第1の高電流の変調部分の前縁における立ち上がり時間、すなわち、スパークの開始時点から最も高い振幅ピークまでの立ち上がり時間は、好ましくは、10μsから100μs、より好ましくは、20μsから90μs、例えば、25μsから75μsまでの範囲にある。
【0047】
好ましくは、波形のうちの第1の変調された比較的高い電流の部分は、比較的短い持続時間のものである(すなわち、第2の比較的低い電流の部分と比較して)。波形のうちの変調された比較的高い電流の部分の持続時間は、好ましくは、10μsから200μs、より好ましくは、20μsから100μsまでの範囲にある。一般的に波形のうちの第1の変調部分が第2の変調部分よりも短いことが好ましいが、一部の実施形態では、波形のうちの第2の変調部分が第1の変調部分よりも短いとすることができる(例えば、100μsの持続時間を有する第1の部分と、50μsの持続時間を有するより短い第2の部分)。
【0048】
波形のうちの変調された比較的低い電流の部分の持続時間は、好ましくは、1μsから3000μs、より好ましくは、50μsから2000μsまでの範囲にあり、必須ではないが、好ましくは、第1の変調部分よりも長い持続時間を有する。
【0049】
しかし、一部の用途では、波形のうちの第2の変調部分を必要としない場合がある。それに応じて、付加的な態様では、本発明は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む変調部分を含む電流波形を有するスパークを発光分光測定に対して発生させるためのスパーク発生器を提供する。本発明の付加的な態様では、好ましくは、電流波形は、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の変調部分を含まない。
【0050】
本明細書では、ピーク間持続時間という用語は、ピークからピークまでで測定された隣接ピーク間の持続時間を意味する。複数の比較的高い勾配の電流ピークに関する可変ピーク間持続時間という用語は、全てが同じピーク間持続時間のものというわけではなく、すなわち、全てが時間的に均等に離間されているわけではないことを意味する。ピークのピーク間持続時間は、例えば、変調プログラムに従って独立して調節することができる。例えば、ピークのピーク間持続時間は、以下に詳細に説明するように、変調プログラムの1つ又はそれよりも多くの基準電流に基づくことができる。複数の比較的高い勾配のピークのピーク間持続時間は、好ましくは、1μsから100μsまでの範囲にある。
【0051】
波形のうちの比較的低い電流の第2の変調部分は、実質的にいかなる変調ピークも持たない。言い換えれば、第2の変調部分は、いくつかの目立たないピークを有することができる。しかし、好ましくは、第2の変調部分はいかなる変調ピークも持たず、すなわち、全く変調ピークが存在しない。
【0052】
好ましくは、比較的低い電流の第2の部分は、その持続時間の殆どにわたって実質的に平坦である(すなわち、実質的に傾斜がない)。その場合、第2の部分は消滅電流ではなく、安定化され、制御された電流である。好ましくは、比較的低い電流の第2の部分の低勾配変調は、電流プラトーに対して電流を変調する。
【0053】
変調された比較的低い電流の部分の平均電流振幅は、好ましくは、1Aから60A、より好ましくは、5Aから50A、より好ましくは、10Aから40Aまでの範囲にある。
【0054】
好ましくは、波形のうちの第2の変調部分の低勾配は、約1A/μsを上回らず、より好ましくは、約0.5A/μsを上回らず、最も好ましくは、約0.2Aμsを上回らない電流勾配を有する。一般的に、波形のうちの第2の変調部分の低勾配は、好ましくは、約0.1A/μsから1A/μsの電流勾配を有する。好ましくは、波形のうちの第2の変調部分の振幅は、スパーク発生器回路を制御するコントローラ内でプログラマブルである。
【0055】
一部の実施形態では、第2の比較的低い電流部分の低勾配変調は、所定の時間の後に停止することができ、それによってその後に非変調減衰、例えば、指数関数的減衰に低電流部分が続くようにする。
【0056】
好ましくは、電流波形は、例えば、電流源の短絡によって突然終了する。有利な態様においては、それによって残光アーク放電が低減する。この中断は、図1の点SCに示している電流波形上で明瞭に見ることができる。
【0057】
波形のうちの第2の比較的低い電流の部分は、比較的長い持続時間のものである(すなわち、第1の比較的高い電流の部分と比較して)。第2の比較的低い電流部分の持続時間は、波形のうちの残りの部分と同様にプログラマブルである。一般的に、第2の変調された低電流部分の持続時間は、1μsから3000μs、より好ましくは、50μsから2000μsである。
【0058】
スパークの全持続時間又は波形幅もまた、好ましくは、プログラマブルである。一般的に、スパーク波形持続時間は、100μsから3200μs、より一般的には100μsから2100μsまでの範囲にある(例えば、約500μs)。
【0059】
スパーク発生器は、スパークギャップ内にスパークを形成するように構成される。好ましくは、スパークギャップは、電極と分析される試料の間に形成される。それに応じて、好ましくは、スパーク発生器は、電極及び試料支持体を含み、電極及び試料支持体は、この電極とこの試料支持体上に装着された分析される試料の間にスパークギャップを形成し、このスパークギャップ内にスパークが形成されるように構成される。好ましくは、スパークは、従来と同様に不活性の例えばアルゴン雰囲気内に形成され、例えば、電極、試料支持体、及び試料は、例えば、アルゴン雰囲気でフラッシュ洗浄することができるスパークチャンバ内に設置することができる。スパークは、少なくとも1つの電流源、例えば、電気回路、好ましくは、RLC回路の放電によって形成される。スパークOESのための1つ又はそれよりも多くの放電回路又は電流源は、本発明による放電波形を変調するプログラムの制御下に使用することができる。スパーク波形は、例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されているか、又は以下に図5Bを参照して説明する高電流のための回路と低電流のための回路とを含む2つ又はそれよりも多くの回路又は電流源の放電から形成することができる。このようにして、スパークは、1つ、2つ、又はそれよりも多くの電流源から発生させることができる。好ましくは、スパーク発生器は、スパークの波形を変調するための手段を含み、すなわち、本発明による回路の放電を受けてスパークギャップ内にスパークを形成するように構成された少なくとも1つ、好ましくは、2つの高電圧RLC回路を含む。すなわち、スパークを発生させるための上記の又は各電流源は、好ましくは、回路の放電を受けてスパークギャップ内にスパークを形成するように構成された高電圧RLC回路を含む。
【0060】
好ましくは、スパークを発生させるためのスパーク発生器は、コンピュータ制御され、従って、プログラマブルである。それに応じて、電流波形は、プログラマブルである。好ましくは、スパーク発生器を制御するためのコンピュータは、検出システムからのデータを処理する段階のような分光計の他の機能を制御するものと好ましくは同じコンピュータであるが、別々のコンピュータ、例えば、スパーク形成電子計器に関連する専用プロセッサとすることもできる。好ましくは、スパーク発生器は、ある一定の(すなわち、1つ又はそれよりも多くの)高電圧RLC回路を含み、スパークは、回路の放電から公知の方式で発生される。しかし、放電は、本発明による波形を生成するように変調される。そのような回路を変調する方法は当業技術で公知であり、更に別の方法を以下に説明する。
【0061】
好ましくは、プログラムは、少なくとも1つの電流源(例えば、回路)を制御し、この電流源の放電を変調して、本発明による波形を有するスパークを生成するコンピュータ上で記憶され、作動される。プログラムは、例えば、第1の比較的高い電流部分におけるピーク振幅、ピーク間持続時間、及び/又はピーク数、変調される第2の比較的低い電流部分の振幅、勾配、及び/又は持続時間、合計スパーク時間、並びに任意的に波形の他の態様(例えば、あらゆる非変調部分及び/又は短絡の終了)に関してあらゆる変調及び非変調部分を含むスパークに対して使用すべき電流波形を定める。コンピュータは、いくつかの異なる組のプログラム又は少なくとも1つの可変プログラムを記憶することができ、各プログラム又はプログラムの変形は、僅かに異なる電流波形を定め、ユーザ又はコンピュータのいずれかは、所定の分析用途に最も適するプログラムを選択することができる。コンピュータは、波形を変調するための1つ又はそれよりも多くのプログラムを記憶することができ、例えば、ピークの振幅、ピーク間持続時間、及び個数、並びに比較的高い電流の部分及び比較的低い電流の部分の持続時間を表す変数が存在する。
【0062】
本発明は、例えば、スパークを発生させるための1つ又はそれよりも多くの適切なプログラマブル電流源によって実施することができる。スパークを発生させるためのプログラマブル電流源のための公知の回路は、欧州特許第396291B1号明細書に説明されており、その図2A、図2B、及び図3に示されており、その内容は、全部が引用によって本明細書に組み込まれている。欧州特許第396291B1号明細書に説明されている回路は、回路を制御するコンピュータ上で記憶され、作動されるプログラムに従って制御することができることを認めるであろう。上記又は各回路には、例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されているように、放電(スパーク)電流を変調することを可能にする適切な構成要素、例えば、測定抵抗器、比較器、及び関連の回路スイッチ構成要素を設けることができる。それに応じて、好ましくは、本発明は、スパーク電流を測定するための電流測定手段と、スパーク電流を1つ又はそれよりも多くの基準電流(例えば、各プログラマブル電流源に対して1つの基準電流)と比較するための電流比較手段と、上記又は各プログラマブル電流源からの電流を調節し、すなわち、スパーク電流を1つ又はそれよりも多くの基準電流と比較する段階に応じて調節するための電流調節手段とを含む。従って、波形のうちの第1の変調部分のピークの振幅及び/又はピーク間持続時間は、例えば、1つ又はそれよりも多くの基準電流に依存して調節することができる。
【0063】
本発明によるスパーク発生器における好ましい回路を図5Bに示しており、以下に説明する。好ましくは、プログラマブル電流源における上記又は各回路は、スパーク電流を測定するための電流測定手段(例えば、測定抵抗器)と、スパーク電流を基準電流と比較するための電流比較手段(例えば、比較器又は「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」)と、上記又は各プログラマブル電流源からの電流フローを調節するための電流調節手段(例えば、スイッチ)とを含む。電流源の変調のための変調手段の好ましい構成は、スパーク電流を測定するための電流測定手段と、測定電流をデジタル形式に変換するためのアナログからデジタルへの(A/D)コンバータと、測定電流(又はそれを表す信号)をデジタル形式で受け取るためのFPGAと、プログラマブル電流源からの電流フローを調節するための変調プログラムに従ってFPGAによって制御可能な関連の回路スイッチ構成要素(例えば、IGBT又は電力トランジスタ)とを含む。FPGAは、測定電流を上記又は各プログラマブル電流源における基準電流と比較し、それに応じて関連の回路スイッチ構成要素を作動させて、上記又は各電流源からの電流フローを変調する。本発明による電流波形を生成するために、基準電流は、スパーク時間に関して異なっている。
【0064】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つの電流源と、スパーク発生器においてスパーク中のスパーク電流を測定するための電流測定手段(例えば、測定抵抗器)と、スパーク電流を基準電流(例えば、アナログ比較器の場合には、基準は、変調プログラムに従ってコンピュータによってデジタルからアナログへの(D/A)コンバータを通じて与えられる)と比較するための電流比較手段(例えば、比較器又はFPGA等)と、スパーク電流を基準電流に依存する所定の値に調節するための電流調節手段(例えば、可変増幅器要素、例えば、FET、IGBT、又は電力トランジスタのような、好ましくは、可変スイッチである回路スイッチ)とを使用する。通常、基準は、コンピュータに記憶された例えばD/Aからの電圧の関数である理想的な電流値である。それに応じて、電流を比較する段階は、実際には電流を表す電圧を比較する段階を含むことができることを認めるであろう。同様に、本明細書における基準電流という用語は、基準電流と基準電圧の両方、又は基準電流を表す他の信号を含む。
【0065】
2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源が使用される場合には、各電流源を別々の(すなわち、各電流源自体の)電流測定手段、電流比較手段、及び電流調節手段によって変調することができ、更に、別々の基準電流(又は基準電流を表す基準電圧)が供給される。代替的に、2つ又はそれよりも多くの電流源(例えば、回路)が使用される場合には、各電流源を単一の電流測定手段及び電流比較手段(例えば、FPGA)によって変調することができるが、別々の(すなわち、各電流源自体の)電流調節手段(例えば、スイッチ)を有することができ、更に、各電流源に対して別々の基準電流が存在する。スパーク電流を必要に応じてスパーク電流を調節するためのコンピュータプログラムによって定められた基準電流と比較するためのサンプリング周波数(変調周波数)は、好ましくは、少なくとも5MHzである。すなわち、電流波形を変調するための変調周波数は、好ましくは、少なくとも5MHzである。このようにして、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する比較的高い勾配の相当数のピークを波形のうちの第1の高電流部分内に生成することができ、スパークエネルギのより高い制御が与えられる。
【0066】
より好ましくは、スパーク発生器は、例えば、本明細書の図5Bに示して以下に説明するように、高電流源と低電流源を含む少なくとも2つ(最も好ましくは、2つ)の変調(すなわち、プログラマブル)電流源を有する。好ましくは、高電流源は、高速立ち上がり時間の高電流源である。好ましくは、変調高電流源は、例えば、40A/μsの勾配及び250Aの電流最大値を有する高電流を生成することができる。好ましくは、高電流源の放電は、第1の比較的高い電流の部分の振幅及びピーク間持続時間による変調ピークを発生させるためのものである。好ましくは、変調低電流源の放電は、低立ち上がり時間、例えば、4A/μsの勾配及び50Aの電流最大値を有する低電流を生成することができる。好ましくは、低電流源は、より高い精度を必要とする第2の比較的低い電流の部分を発生させるためのものである。好ましくは、高電流源及び低電流源は、各々変調RLC回路を含む。各RLC回路の抵抗及び/又はインダクタンスの値は、説明した波形の高電流特性及び低電流特性を与えるように適切に選択される。好ましくは、高電流源及び低電流源は、共通の電源及びコンデンサーを有する。好ましくは、変調高電流源と変調低電流源の両方は、スパークの開始時点から、例えば、トリガ信号の後に有効にされ、従って、全体的な電流波形は、両方の変調電流の和である。一般的に高電流源は、低電流源が停止する前に停止する。任意的に、低電流源の変調は、高電流源を停止した後のある時点から自然な電流減衰が発生するようにその時点で中止することができる。任意的に、低電流源を突然終了させる上で、電流短絡を使用することができる。高電流源及び低電流源を変調するためのサンプリング周波数又は変調周波数は、好ましくは、少なくとも5MHzである。それに応じて、好ましくは、スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源、より好ましくは、プログラマブル高電流源及びプログラマブル低電流源から発生し、更に好ましくは、第1の変調部分は、プログラマブル高電流源によって発生し、第2の変調部分は、プログラマブル低電流源によって発生する。
【0067】
本発明のスパーク発生器は、スパーク発光分光計に使用するためのものである。スパーク発生器は、試料内の要素を励起して光を放出させるためのスパークを発生させる。好ましくは、本発明によるスパーク発光分光計は、本発明によるスパーク発生器に加えて、試料から放出される光を分散させ、すなわち、個別の波長又はスペクトル線に分散させるための光学系と、分散光の光強度を検出するための検出システムと、検出システムからの光強度を表す信号を記憶して処理するためのデータ記憶及び処理システムとを更に含む。
【0068】
図5Aは、本発明を実施するための発光分光計の一実施形態を略示している。この分光計は、本発明の範囲に対して非限定的であり、例示のみのためのものである。分光計は、コンピュータ12によって制御される。コンピュータ12は、本発明による波形を用いてスパーク源10の放電を変調するための1つ又はそれよりも多くのプログラムを記憶する。スパーク源10は、2つの高電圧RLC回路(図示せず)を含む。より具体的には、スパーク源10は、各々が放電(スパーク)電流を変調することを可能にする構成要素、例えば、電流測定手段、比較器又はFPGA、及び関連の回路スイッチ構成要素を含む高電流源及び低電流源を含む。従って、使用時には、例えば、コンピュータプログラムに従ってコンピュータから基準電流が同様に供給される比較器又はFPGAに放電電流を供給する段階を含むいくつかのフィードバックシステムがスパーク源10に使用され、プログラムに従って電流フローを可能にするか、電流フローを低減するかのいずれかを行って各電流源からの変調電流を供給するように回路内のスイッチが作動され、これらの変調電流は、一緒に本発明の電流波形を構成する。高電流源及び低電流源の各々には、別々の基準電流が供給される。スパーク源10は、アルゴンが充填されたスパークチャンバ4の内部に収容された電極6と試料8とに電気的に接続され、それによって使用時にこれらの間にスパークが形成され、回路の放電を受けて試料8の一部分が気化及び励起される。一般的に、試料8は、金属試料であり、一般的にディスクの形態にある。使用時には、スパーク励起を受けて試料8内の要素によって放出されたスペクトル線を含む光18が光学系14に入射し、光学系14は、この光をスペクトル線に分散させる。一般的に光学系14は、光を分散させるための回折格子(図示せず)を含む。次に、1つ又はそれよりも多くの光検出器、例えば、光電子増倍管又はCCD検出器を含む検出システム16を用いて、選択された分光スペクトル線20が検出される。検出システム16からの信号は、任意的に更に別の処理の後にコンピュータ12によって受け取られ、コンピュータ12は、これらの信号を例えば試料のスペクトル又は他の定性又は定量分析の形式での最終出力のためのデータとして記憶して処理する。一般的に、光学系14及び検出システム16は、低圧(真空)下で保持され、及び/又はスペクトル線との干渉を避けるために光学的に不活性な気体でフラッシュ洗浄される。
【0069】
図5Aのスパーク源における好ましい回路構成を図5Bに示している。図5Bを参照すると、共通の電源、例えば、350V(図示せず)、及びコンデンサー、例えば、220μFを利用する高電流源35及び低電流源36が示されている。高電流源35及び低電流源36は、各々が回路内でそれぞれのIGBTトランジスタスイッチ37及び38、並びにインダクタ39及び40を通じてそれぞれスパークギャップ33間に接続される。各回路内のインダクタンス及び抵抗の値は、高電流及び低電流を与えるように、例えば、高電流部分において4μH及び低電流部分において360μHが選択される。スパークギャップ33間に流れる電流は、電流測定デバイス34を用いて測定され、測定電流は、A/Dコンバータ41を通じて「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」及びコントローラ31に供給される。FPGA及びコントローラ31は、測定電流をコンピュータ12(図5Aに示している)から供給される高電流源及び低電流源の各々に対する基準電流と比較する。比較は、少なくとも5MHzの周波数で行われ、測定電流がそれぞれの基準値よりも大きいか又は小さいかに依存してスイッチ39及び40が独立して開閉され、それによって本発明によるスパーク電流波形が生成される。点火デバイス32は、コンピュータ12からの命令に従ってFPGAによってスパークを開始するようにトリガされる。点火デバイスは、欧州特許第396291号明細書(この文献の図3)における回路イニシエータに対して説明されている種類のものとすることができる。使用時には、一般的に高変調電流源と低変調電流源の両方は、スパークの開始時点から、例えば、トリガ信号の後に有効にされ、従って、全体的な電流波形は、両方の変調電流の和である。一般的に高電流源は、指定された時間の後かつ低電流源が停止する前に停止される。代替的に、高電流源と低電流源を異なる時点で開始することができる。例えば、高電流源を開始時点からトリガすることができ、指定された時間遅延の後に低電流源を開始することができ、これらの2つの電流源は重複し、その後に、高電流源は停止され、低電流源は続行される。任意的に、高電流源を停止した後のある時点から自然な電流減衰が発生するように、その時点で低電流源の変調を中止することができる。一般的に、低電流源を突然終了するのに電流短絡が使用される。
【0070】
本発明の更に別の態様により、本発明によるスパーク発生器を用いて電極と分析される試料の間にスパークを発生させる段階と、スパークの結果として試料によって放出された光を分散させる段階と、選択された波長における分散光の強度を検出する段階とを含む発光分光測定法を提供する。
【0071】
一般的に、本発明による発光分光測定法は、多数のスパークを連続して発生させる段階と、連続スパークからもたらされる光強度データを連続して収集し、組成を正確に測定する段階とを含む。スパークの個数、持続時間、及び周波数は、分析用途に依存する。組成測定の方法に使用されるスパーク数は、一般的に1,000から5,000までの範囲にあり、各個々のスパークの合計持続時間(すなわち、高電流部分と低電流部分との合計)は、一般的に100μsから2000μsまで(例えば、約500μs)続く。スパーク周波数は、一般的に1Hzから1000Hz、より一般的には100Hzから600Hzまでの範囲にある。本方法における全スパーク時間(すなわち、全てのスパークに要する時間)は、一般的に3秒から30秒である。
【0072】
スパーク発生器は、一連のスパークを全てが同じ波形を有するように発生させる必要はなく、一連のスパークは、特定の分析用途により良く適合するように本発明による異なる波形を有するスパークを含むことができる。例えば、1つの波形は、1つの要素の分析に適合するように選択することができ、別の波形は、別の要素の分析に適合するように選択することができる。例えば、1つのスパークタイプは、波形のうちの第1の変調高電流部分内に所定のピーク数及び所定のピーク周波数を有する変調を有することができ、例えば、最初のスパークタイプと交替することができる別のスパークタイプは、異なる変調、例えば、変調高電流部分内で異なるピーク数及び/又はピーク周波数を有することができる。一連のスパーク内ではあらゆる数の異なるスパーク波形を使用することができ、これらは、あらゆるシーケンス又は組合せで使用することができる。好ましくは、所定の分析用途において1つよりも多くのスパーク波形を有するスパークが使用される場合には、好ましくは、各波形は、本発明による波形である。しかし、本発明による波形を有するスパークを本発明のこれらの波形以外の波形を有するスパークと順に組み合わせることができると考えられる。
【0073】
例えば、検出光の強度をデータとして記憶する段階、これらのデータを任意的に処理する段階、任意的にこの処理の後にこれらのデータを出力する段階、及び/又は試料の元素組成を測定する段階のような従来的なOES法の1つ又はそれよりも多くの段階を本発明の方法と共に使用することができる。
【0074】
放出された光強度の測定は、特定の放出線の励起エネルギに基づいて、電流の第1の変調部分及び第2の変調部分のうちの少なくとも一方又は好ましくは両方の送出中に(すなわち、好ましくは、電流の第1の変調部分と第2の変調部分の両方が送出される時間窓中に)実施することができる。
【0075】
本発明は、放出光がスパーク持続時間内に位置する定められた時間窓内でのみ測定されるOESにおけるいわゆる「時間分解分光測定」(TRS)又はより具体的には「時間ゲート取得」(TGA)の使用に対して有利なものであることが見出されている。TRSでは、異なるスペクトル線に対して異なる時間窓を使用することができる。時間窓の選択は、スペクトル線のエネルギのようなスペクトル線のパラメータに依存する。時間窓は、例えば、スパーク源又はスペクトル背景干渉によるスペクトル線に対する摂動を最小にするように選択することができる。TRSは、例えば、微量元素分析に対して有意な恩典を有するものである。本発明は、TRSを更に有効にすることが見出されている。例えば、図6A及び図6Bを参照すると、発光分光計においてAl 394.40nm(図6A)及びBa 455.40nm(図6B)という2つの異なるスペクトル線に対して記録された強度−時間プロットが示されている。各スペクトル線に対して、スパーク中にスペクトル線の強度を測定する最適な時間窓が存在する。図には、これらの時間窓は、プロット上に示す垂直線の間の時間として示している。各スペクトル線に対して、単一の高電流ピークに低電流プラトーが続く従来技術の電流波形を有するスパークを用いて記録された強度−時間プロット(「単ピーク」とラベル付けしている)と、本発明による電流波形を有するスパークを用いて記録された強度−時間プロット(「多ピーク」とラベル付けしている)とを示している。本発明により発生したスパークは、従来技術のスパークにおけるものと類似の合計エネルギがスパークに送出されるが、異なる振幅−時間プロフィールを有するように変調された。本発明によるスパークの場合には、それぞれのスペクトル線を測定するのに最適な時間窓中において、強度が、従来技術の波形を有するスパークを用いたものよりも有意に高いことが分る。
【0076】
本発明は、金属試料内の微量元素及び合金化元素の測定をこれらの用途のうちのいずれか一方又は他方により良く適合する上述の従来技術の方法とは対照的に両方共に良好な精度で可能にする。
【0077】
本発明は、多くの組成の定量測定(所定の取得時間に対する)において精度を大きく改善し、それによって所定の精度での取得時間を短縮することが見出されている。取得時間の改善は、例えば、従来技術の単一ピークのスパークを用いたものと比較して10%と50%の間にあることが見出されている。下記の表は、本発明のスパーク発生器を用いて取得した結果と、単一の高電流ピークに続いて低電流減衰を生成する従来技術のスパーク発生器を用いて取得した結果との比較を示している。結果は、種々の母材において試料を較正及び測定するための取得時間を示している。
【0078】
(表)
【0079】
本発明による波形を有するスパークの使用は、OES計器の環境内でのCCD光検出器の応答性の劣化速度を低下させることができる。図5Aを参照すると、一般的に、光学系14及び検出システム16は、スペクトル線との干渉を避けるために低圧(真空)下で保持され、及び/又は光学的に不活性な気体でフラッシュ洗浄される。それにも関わらず、少量の揮発性有機分子が、光学系及び検出システムの気体環境内に残留する可能性がある。あらゆる理論に縛られることなく、本発明者は、CCD検出器の応答性における経時劣化が、従来技術のデジタルスパーク源を用いた場合に生成される可能性がある、強いUV光との、そのような有機分子の光化学反応(消光)に起因すると考えている。この場合、光化学的に生成される生成物は、CCD検出器の燐コーティングを有する表面上に堆積されるようになり、それによって時間と共に検出器の感度が低下すると考えられる。従来技術のデジタルスパーク源におけるような単一の強度のピークではなく、複数のピークにわたってエネルギが分散する本発明のスパーク源波形は、観測される低い消光確率、従って、検出器上への低い堆積速度をもたらすことが理解される。
【0080】
文脈が別途明確に示さない限り、本明細書に使用する複数形の用語は、本明細書では単数形を含むように解釈されるものとし、その逆も同様である。
【0081】
本明細書に説明する工程のあらゆる段階は、そうでないと別途記載しない限り又は文脈がそうでないことを明確に必要としない限り、いかなる順序でも実施することができる。
【0082】
本説明及び本明細書の特許請求の範囲を通して「備える」、「含む」、「有する」、及び「収容する」などの用語、並びにこれらの用語の変形、例えば、「備えている」、「備える」などは、「含むがそれに限定されない」を意味し、他の構成要素を除外するように意図していない(かつ除外しない)。
【0083】
本明細書における例又は例示的な文言(「例として」、「のような」、「例えば」、及び類似の語句を含む)の使用は、本発明をより明快に例示することのみを意図したものであり、別途主張しない限り、本発明の範囲に対する制限を意味しない。本明細書内のいかなる文言も、いずれかの非請求的要素が本発明の実施に対して必須であることを示すように解釈すべきではない。
【0084】
本発明の上述の実施形態に対する変更を加えることができ、同時に本発明の範囲に収まることを認めるであろう。本明細書に開示する各特徴は、特に断らない限り、同じ、均等、又は類似の目的を実現するように機能する別の特徴によって置換することができる。従って、特に断らない限り、開示する各特徴は、一般的な一連の均等物又は類似の特徴の一例でしかない。
【0085】
本明細書に開示する特徴の全ては、そのような特徴及び/又は段階の少なくとも一部が互いに排他的である組合せを除き、あらゆる組合せで組み合わせることができる。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、あらゆる組合せに使用することができる。同様に、必須ではない組合せで説明する特徴も、別々に(組合せではなく)使用することができる。
【0086】
上述の特徴の多く、特に好ましい実施形態のものは、本発明の一部の実施形態として存在するだけではなく、これらの特徴自体で独自に発明性を有することを認めるであろう。現時点で特許請求するあらゆる発明に加えて又はその代わりに、これらの特徴に対する独立した保護を求めることができる。
【符号の説明】
【0087】
A 比較的高い電流の第1の変調部分
B 比較的低い電流の第2の変調部分
I スパーク電流
t 時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分光測定のための装置及び方法、特に、しかし非限定的に、スパーク発生器、分光計、及び発光分光測定の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子放出分光測定(AES)とも呼ばれる発光分光測定(OES)は、試料の元素分析のための技術であり、例えば、固体金属試料の分析において特に有利である。本発明は、試料を急激に気化させ、気化された試料内の元素を励起するのにスパーク(本明細書では、あらゆる電気スパーク、アーク、又は放電を指す上で使用される)が使用されるOES、いわゆるスパークOESに関する。励起状態から低エネルギ状態への遷移が発生する時に、励起された試料元素によって光が放出される。各元素は、スペクトル線とも呼ばれるその電子構造に特徴的な個別の波長を有する光を放出する。スペクトル線を検出することにより、OESは、試料の元素組成の定量的及び定性的測定を可能にすることができる。従って、スパーク発光分光計は、試料内の元素を励起して光を放出させるためのスパーク発生器、放出光を個別波長に分散させるための光学系、分散光の光強度を検出するための検出システム、及び光強度を表す検出システムからの信号を記憶及び処理するためのデータ記憶及び処理システムを含む。組成の測定に対して十分なデータを集積するために、一般的に一連のスパークが使用され、スパークから発生する得られるデータは、処理に対して蓄積される。
【0003】
OESにおいて試料を励起するための一連のスパークを生成するためのスパーク発生器は、好ましくは、安定したエネルギ出力及び高精度の測定のための高度の再現性を有するスパークを生成すべきである。
【0004】
スパークが抵抗及びインダクタンスを通じたコンデンサー(RLC回路)の放電によって非変調方式で発生する従来のアナログスパーク発生器は、電流波形又はスパークのプロフィールに対する大幅な量の制御を許さず、従って、再現性は低い。従って、試料内の成分の測定精度は悪影響を受ける。一般的に、アナログスパーク源の電流波形は、スパーク電流の比較的緩慢な立ち上がり部(以下に説明するデジタル源と比較して)から幅広のピーク、その後の長い期間にわたる指数関数的な電流の漸次的な立ち下がり部又は減衰によって特徴付けられる。この種の非変調電流プロフィールは、試料内の微量元素の分析にはそれ程適さないことが見出されている。上述の非変調電流プロフィールは、微量元素よりも金属内の合金元素の分析に良好である場合があるが、その場合であっても、アナログで発生したスパークは、貧弱なスパーク再現性に起因して上述の貧弱な測定精度を依然として招く。
【0005】
例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されている変調スパークを発生させるいわゆるデジタルスパーク発生器が公知であり、これらのスパーク発生器により、上述の問題のうちの一部に対処することが模索されている。この参考文献には、スパーク中のスパーク電流を測定し、スパーク電流を基準電流と比較し、基準電流に依存する所定の値に調節するための手段を含むスパーク発生器が説明されている。基準比較のためのサンプリング速度は、50〜200kHzであるといわれている。基準電流は、スパーク電流波形のためのプログラムの一部としてコンピュータ上に記憶される。一般的に、従来技術に説明されている変調電流波形は、高振幅(高電流)で比較的短い持続時間を有する単一の初期スパークを有し、電流プラトーに幾分類似する低電流の持続性変調減衰が続く。高振幅ピークは、電流プラトーの5倍の強度のものとすることができる。そのような波形は、欧州特許第396291B1号明細書の図4に略示されている。初期の高電流ピークは、主に試料の気化に使用するためのものであると説明されており、持続性電流は、気化された試料内の原子を励起するためのものである。この種の電流プロフィールは、微量元素を検出するのにはアナログスパーク源のプロフィールよりも良好であるが、金属合金試料内の合金元素の分析にはそれ程適さないことが見出されている。
【0006】
特開平8−159973A号公報及び欧州特許第318900A2号明細書には、2つの電流部分が生成される別の種類のスパーク源が説明されている。最初に単一のピークである高電流部分が生成され、次に、漸次的に低くなる強度を有する2つ又は3つのピークを含む低電流部分が生成される。これらのスパーク源は、受動回路の使用に起因する制御の欠如を欠点とする。特に、電流ピークの振幅及び持続時間が、コンデンサー及びインダクタの異なる値によって固定される。欧州特許第84566A号明細書では、ここでもまた受動回路(すなわち、共振LC回路)を用いた減衰振動電流源を使用するスパーク源が開示されており、従って、このスパーク源も、制御の欠如を欠点とする。電流包絡線は、指数関数的減衰曲線に沿って単純に低下し、ピーク周波数は、回路の共振周波数によって判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第396291B1号明細書
【特許文献2】特開平8−159973A号公報
【特許文献3】欧州特許第318900A2号明細書
【特許文献4】欧州特許第84566A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電荷結合デバイス(CCD)検出器を光検出器として使用するOES計器における付加的な問題は、そのような検出器が、時間と共にその応答において劣化を示す可能性があることである。そのような劣化の速度を低下させることが望ましいと考えられる。
【0009】
本発明は、上述の背景を踏まえて達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調部分と、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを含む電流波形を有するスパークを発光分光測定(OES)に対して発生させるためのスパーク発生器を提供する。
【0011】
本発明の別の態様により、本発明によるスパーク発生器を含む発光分光計を提供する。
【0012】
本発明によるスパーク発生器及び発光分光計は、好ましくは、以下に説明する本発明による方法を実施するためのものである。
【0013】
本発明更に別の態様により、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調部分と、いかなる変調ピークも実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを含む電流波形を有するスパークを電極と分析される試料の間に発生させる段階と、スパークの結果として試料によって放出された光を分散させる段階と、選択された波長における分散光の強度を検出する段階とを含む発光分光測定の方法を提供する。
【0014】
好ましくは、スパークは、上述の方法で本発明によるスパーク発生器によって生成される。同じく好ましくは、上述の方法は、本発明による発光分光計によって実施される。
【0015】
本発明は、ここに具体的に説明するものを含む数々の利点を有する。他の利点は、下記の説明から明らかになる。本発明は、スパーク工程の異なる段階のより制御性の高い時間分離を可能にする。例えば、本発明は、試料表面の予備処理(再溶解及び構造の微細化)及び気化の段階の光学分析のための得られる蒸気の励起段階からのより良好な分離を可能にする。プログラマブル電流源の使用は、ピーク間持続時間、立ち上がり時間、ピーク振幅、及び高電流ピーク数の変更を可能にする。この制御性は、特開平8−159973A号公報及び欧州特許第318900A2号明細書のカスケード電流源又は欧州特許第84566A号明細書の減衰振動電流源のいずれを用いても可能ではない。
【0016】
複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む第1の変調電流部分の使用は、試料表面への高エネルギ送出のより良好な制御を可能にすることが見出されている。この高エネルギ送出は、スパークの開始時点で単一の高電流ピークよりもより制御性が良好な方式で試料表面の状態を整え、それを気化する。より具体的には、この特徴は、高エネルギ段階中に、スパークプラズマエネルギのマグニチュード(すなわち、温度)と、試料表面へのこのエネルギの伝達の持続時間とを別々に制御することを可能にする。より詳細ではあるが、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、特許請求する方式でスパークに送出されるエネルギを変調することにより、気化のための高エネルギプラズマ段と、試料表面において安定化現象を促進する低エネルギ段との間で迅速に交替することが可能になり、同時に次回の分析段階を最適化するために蒸気の最も高いエネルギを緩和することが可能になる。
【0017】
電流プラトーの形態であるとさえすることができる、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流を有する第2の変調電流部分の使用は、特開平8−159973A号公報、欧州特許第318900A2号明細書、及び欧州特許第84566A号明細書に説明されているデバイスによっては達成することができず、これは、これらのデバイスに使用される電気回路が、本質的に電流パルスを送出するように設計され、電流プラトーを維持することができないことによる。本発明のこの特徴は、これらのデバイスではなく、プログラマブル電流源によって与えられる。好ましくは、本発明の比較的低い電流の部分は消滅電流ではなく、安定化され、制御された電流である。この目的は、制限かつ制御されたエネルギ量をスパークに送出し、分析に対して蒸気の励起を最適化することである。この分析段階において、エネルギレベル及び蒸気へのこのエネルギ供給の持続時間は、本発明を用いて別々に制御することができる。
【0018】
本発明は、金属試料内の微量元素及び合金化元素の測定をこれらの用途のうちのいずれか一方又は他方により良く適合する上述の従来技術の方法とは対照的に両方共に良好な精度で可能にする。他のスパーク源を使用する場合と同様に、スパークのエネルギの一部は試料の気化に、一部は原子化及び/又はイオン化に、更に一部は励起に使用されることになる。しかし、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、本発明は、上述の利点を達成することができ、これは、スパークエネルギが、純粋にアナログのスパーク源と比較して、例えば、波形の初期部分において、複数の比較的高い電流の高勾配電流ピーク(すなわち、高エネルギ)で送出され、従って、例えば、原子及びイオンの化学種における高エネルギ電子遷移に好ましい7,000〜10,000Kのものとすることができるより制御性の高い高温ゾーンがプラズマ内に達成されることによる。微量元素を測定するのに有利であるとすることができる最も感度の高いスペクトル線は、一般的に、原子型遷移(スペクトル線の表においてU1、U2、...等と記載される)及びイオン型遷移(スペクトル線の表においてV1、V2、...等と記載される)のようないわゆる共振遷移からもたらされる。これらの遷移は、高い遷移確率を有し、例えば、7eVから12eVまでの範囲に高エネルギを有することができ、従って、高温度プラズマによって最も効率的に励起される。特に、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する、好ましくはプログラマブルである波形の高電流部分における複数のピークの使用は、高温度プラズマの持続時間のより良好な制御性を与える。
【0019】
同様に、本発明の範囲をいかなる理論によっても拘束することなく、欧州特許第396291B1号明細書に説明されている従来技術のデジタルスパーク源と比較して金属内の合金元素の検出を強化することができ、これは、スパークエネルギが、波形の開始時点で単一の高強度の電流ピーク内に集中されず、代替的に、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数のピークにわたって分散され、それによってこの波形が、スパーク内の後の方で主に原子化学種において発生する傾向を有するより低いエネルギの電子遷移(例えば、2eVから7eV)を促進するのにも有効であり、これらの遷移に対してより低い背景を発生させることによる。多くの場合に、これらの種類の原子遷移は感度が低く、すなわち、より低い遷移確率しか持たず、従って、そうでなければ存在する元素の高い濃度に起因して検出器に過大な負荷を与える場合がある高強度のスペクトル線を生成することになる合金元素を測定するのに有利であるとすることができる。
【0020】
スパークプラズマへのエネルギ送出に対する改良された制御により、一方で高エネルギ遷移(例えば、7〜12eV)に対する好ましい励起条件と、他方で低エネルギ遷移(例えば、2〜7eV)に対する好ましい励起条件とのより良好な時間分離を本発明によって達成することができる。本発明はまた、有利な遷移からのスペクトル背景(連続放射線とも呼ばれる)のより良好な分離を可能にする。これらの特徴は、放出光がスパーク持続時間内に位置する定められた時間窓内でのみ測定されるOESにおいて多くの場合に使用されるいわゆる「時間分解分光測定」(TRS)の使用に有利である。TRSは、「時間ゲート分光測定(TGS)」とも呼ぶことができる。TRSでは、異なるスペクトル線に対して異なる時間窓を使用することができる。時間窓の選択は、スペクトル線のエネルギのようなスペクトル線のパラメータに依存する。時間窓は、例えば、スパーク源又はスペクトル背景干渉によるスペクトル線への摂動を最小にするように選択することができる。TRSは、例えば、微量元素分析に対して有意な恩典をもたらすものである。
【0021】
本発明は、多くの組成の定量測定(所定の取得時間に対する)において精度を大きく改善し、それによって同じ精度での取得時間を短縮することが見出されている。
【0022】
本発明による波形を有するスパークの使用は、OES計器の環境内でのCCD光検出器の応答性の劣化速度を低下させることができる。いかなる理論によっても拘束されることなく、この劣化は、従来技術のデジタルスパーク源の単一の高強度の電流ピークを使用する場合に生成されるもののような一般的に計器の低圧環境内で小量存在する揮発性の有機分子の高強度のUV光による光化学反応(消光)に起因すると考えられる。この場合、光化学的に生成される生成物は、CCD検出器の表面上に堆積されるようになり、それによって時間と共に検出器の感度が低下すると考えられる。本発明は、従来技術におけるようにエネルギを単一の高強度のピークに集中させるのではなく、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数のピークにわたって高エネルギを分散するスパークを用い、このスパークが消光確率を低下させると考えられ、それによって本発明と併用した場合に検出器上で観測される堆積速度の低下の説明がつく。
【0023】
ここで、本発明を例示的にかつ添付図面を参照してより詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の例の概略図である。
【図2A】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第2の例の概略図である。
【図2B】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第3の例の概略図である。
【図2C】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第4の例の概略図である。
【図2D】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第5の例の概略図である。
【図2E】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第6の例の概略図である。
【図3A】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第7の例の概略図である。
【図3B】本発明によるスパーク発生器によって発生するスパーク電流波形の第8の例の概略図である。
【図4】本発明によるスパーク波形の従来技術のスパーク波形との比較図である。
【図5A】本発明による発光分光計の実施形態の概略図である。
【図5B】本発明によるスパーク発生器における回路構成の実施形態の概略図である。
【図6A】従来技術のスパークと本発明によるスパークの両方を用いてAl 394.40nmに対して発光分光計上に記録された強度−時間プロットを示す図である。
【図6B】従来技術のスパークと本発明によるスパークの両方を用いてBa 455.40nmに対して発光分光計上に記録された強度−時間プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図内に示す実施形態は、本発明の範囲に対して非限定的であり、例示のみを意図した例であることを認めるであろう。
【0026】
本発明による電流波形の一例を図1に略示している。図1は、スパーク電流(I)を時間(t)に対してプロットしている。図1から、波形が、Aで表した比較的高い電流の第1の変調部分に続いてBで表した比較的低い電流の第2の変調部分を含む変調波形を含むことが分る。比較的高い電流又は勾配、又は比較的低い電流又は勾配のような本明細書に使用する比較的という用語は、他方の例えば電流又は勾配に対する比較を意味する。例えば、比較的高い電流という用語は、比較的低い電流と比較して高い電流を意味する。一部の実施形態では、図1に示している波形の代わりに、変調の第1の波形部分が時間的に波形のうちの第2の変調部分に続くとすることができることを認めるであろう。従って、本明細書では、第1の変調部分という用語及び第2の変調部分という用語は、時間的な順序を表すのではなく、単に2つの異なる変調部分を表す。しかし、好ましくは、波形のうちの第1の変調部分は時間的に最初にくる、すなわち、第1の変調部分に波形のうちの第2の変調部分が続く。そのような実施形態は、第1の変調部分の比較的高い電流を試料の気化に利用することを可能にする。
【0027】
比較的高い電流の部分Aは、この例ではP1〜P6とラベル付けした可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調される。図1には、可変振幅を有する複数のピークによる変調の事例を示している。ピークP1〜P3のシーケンスは、増大する振幅を有する比較的高い勾配のピークによる高電流部分Aの急傾斜の前縁又は電流立ち上がり部(図1に上方矢印rで表す)の変調を表す。ピークP3〜P6のシーケンスは、高電流部分Aの後縁又は電流立ち下がり部(図1に下方矢印fで表す)を変調する低下する振幅を有する比較的高い勾配のピークによる高電流部分Aの更に別の変調を表す。従って、本発明の1つの種類の実施形態では、波形のうちの第1の部分(すなわち、比較的高い電流の部分)は、根底にある電流包絡線を含み、すなわち、電流立ち上がり部と電流立ち下がり部とを含むことが分る。そのような実施形態では、増大する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって電流立ち上がり部を変調することができ、低下する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって電流立ち下がり部を変調することができる。他の実施形態では、他の変調が可能である。例えば、一部の実施形態では、波形のうちの第1の部分のみを複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調することができ、電流立ち下がり部は、複数の比較的高い勾配のピークを持たないか、又はその逆である。好ましくは、少なくとも、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部が、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅の)によって変調される。
【0028】
図1に示しているもの以外の波形変調が、本発明の範囲で可能であることを認めるであろう。例えば、比較的高い勾配の変調ピークのシーケンスを変更することができる。
【0029】
一部の実施形態では、波形のうちの第1の比較的高い電流の部分(すなわち、第1の変調部分)は、少なくとも、第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク及び第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができる。例えば、波形のうちの第1の比較的高い電流の部分は、第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク、それに続く第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピーク、任意的にそれに続く再度第1の高振幅と同じとすることができ、又は異なる高振幅とすることができる第3の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができ、波形のうちの比較的低い電流の部分に至るまで以降同様に続く。本発明による可変振幅を有する比較的高い電流の高勾配ピークを有する様々なスパーク電流波形の概略図を図2Aから図2Eに示している。図3A及び図3Bには、本発明による可変ピーク間持続時間を有する比較的高い勾配のピークを有するスパーク電流波形の例の概略図(図3A)、並びに可変振幅及び可変ピーク間持続時間を有するスパーク電流波形の例の概略図(図3B)を示している。
【0030】
本発明のスパークと従来技術の単一のピークのスパークとの比較を図4の例に示しており、この図では、本発明の場合に本発明のスパークのエネルギがいくつかのピークにわたって分散されており、それによって振幅及び時間に関してスパークエネルギ送出のより良好な全体制御が与えられることが分る。低電流部分では、2つの波形は重なり合う。
【0031】
例えば、図1にBで表す波形のうちの第2の比較的低い電流の部分(すなわち、第2の変調部分)は、図示の実施形態では、複数の比較的高い勾配のピークによる変調に続き、好ましくは、持続性の電流の形態(すなわち、第1の比較的高い電流の部分よりも長い持続時間)にある。好ましくは、比較的低い電流の部分は、電流プラトーの傾向を有する比較的低い勾配の低電流(すなわち、実質的に一定の電流値)によって変調される。プラトーは、好ましくは、非ゼロのプラトーである。それによって第2の電流部分により、制限かつ制御されたエネルギ量を与えることが可能になる。
【0032】
一部の実施形態では、第2の比較的低い電流の部分(すなわち、第2の変調部分)は、比較的低い勾配の電流によって変調することができ、この変調は所定の時間の後に停止され、それによってその後に、例えば、指数関数的減衰からもたらされるような非変調減衰に第3の部分において低電流部分が続くようにする。比較的低い電流の部分の終端では、残光アーク放電を低減するために、電流波形は、例えば、短絡によって好ましくは中断され、放電が突然終了する。そのような中断を例えば図1の点SCに示している。
【0033】
比較的低い電流及び低い勾配の部分(すなわち、第2の変調部分)は、好ましくは、実質的にいかなる変調ピークも持たず、従って、比較的高い勾配のピークを実質的に含まない。このようにして、比較的低い電流の部分は、低エネルギ原子遷移を優先的に励起し、それによってこれらの遷移のスパークのうちの比較的高い電流の部分によって優先的に励起される高エネルギ遷移からのより良好な時間分離が可能になる。
【0034】
可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピークを低勾配を有する変調された比較的低い電流の第2の部分と共に含む電流波形を有するスパークを使用することにより、本発明は、原子とイオンの両方において高エネルギと低エネルギの両方の様々な異なる種類の遷移を効率的に励起することを可能にし、従って、本発明は、金属試料内の微量元素と合金元素の両方を測定することにおいて有効である。複数の比較的高い勾配のピークは、特定の分析用途に適するようにプログラムされた可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有することができ、例えば、波形を所定の試料内の対象元素を測定するのに有効なものに調整することができる。同様に、第2の比較的低い電流の部分の変調された低い勾配を特定の分析用途に適するようにプログラムすることができる。
【0035】
可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する比較的高い勾配のピークは、可変振幅又は可変ピーク間持続時間(すなわち、ピーク間で異なる期間)のいずれか又はその両方を有することができる。好ましくは、ピークは、少なくとも可変振幅のものである(すなわち、任意的に可変ピーク間持続時間を有する)。
【0036】
一般的に、波形の高勾配電流ピークは、特定の分析用途に適するようにその個数、振幅、及び/又はピーク間持続時間に関して調節することができる。好ましくは、ピーク数、その振幅、及び/又はピーク間持続時間はプログラマブルであり、以下により詳細に説明するスパーク発生器回路を制御するコンピュータによって制御される。
【0037】
本明細書に使用する電流ピークの個数に関する複数という用語は、2つ又はそれよりも多くを意味する。波形内のピーク数は、分析される試料に適するようにプログラムすることができる。一般的に、例えば、金属試料内で試料の母材を構成する組成は、変調においてピーク数を測定される上での有意なファクタである。従って、最適なピーク数は、実験的に測定することができ、その後にそれに従ってピーク変調を制御するコンピュータプログラムに適するコンピュータプログラム又はパラメータを選択することができる。
【0038】
好ましくは、第1の比較的高い電流の変調部分は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する2つ又はそれよりも多く、より好ましくは、3つ又はそれよりも多くのピークによって変調される。例えば、波形は、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれよりも多くのピークを有するようにプログラムすることができる。例えば、図1は、比較的高い電流の部分において電流立ち上がり部に3つのピークを有し、立ち下がり部に4つのピークを有し(最も高いピークを立ち上がり部及び立ち下がり部の一部として計数する)、合計で6つのピークを有する、本発明による波形を示している。
【0039】
一般的に、波形のうちの第1の比較的高い電流の変調部分は、スパーク電流の前縁又は立ち上がり部、例えば、図1に示している立ち上がり部rを含む。好ましくは、この前縁は、複数の比較的高い電流の高勾配ピーク、より好ましくは、増大する振幅を有するものより好ましくは、増大する振幅を有する少なくとも3つのそのようなピークによって変調される。好ましくは、波形のうちの比較的高い電流の部分は、後縁又は立ち下がり部、例えば、図1に示している立ち下がり部fも含む。好ましくは、この後縁は、複数の比較的高い勾配のピーク、より好ましくは、低下する振幅を有するものよりも好ましくは低下する振幅を有する少なくとも2つのそのようなピークによって変調される。
【0040】
複数の比較的高い勾配の電流ピークに関する可変振幅という用語は、ピークが全て同じ振幅のものというわけではなく、各ピークの振幅を例えば変調プログラムに従って独立して調節することができることを意味する。例えば、各ピークの振幅は、以下に詳細に説明するように、変調プログラムの1つ又はそれよりも多くの基準電流に基づくことができる。一部の実施形態では、高い勾配の電流ピークは、各々が異なる振幅のものとすることができる。他の実施形態では、少なくとも1つの比較的高い勾配の電流ピークが異なる振幅のものである場合に、複数の比較的高い勾配の電流ピークのうちの2つ又はそれよりも多くは、同じ振幅を有することができる。
【0041】
複数の比較的高い勾配の電流ピークは、比較的高い電流振幅を有するようにプログラムされる。好ましくは、振幅は、スパーク発生器回路を制御するコンピュータ上でプログラマブルである。振幅は、特定の分析用途に適するようにプログラムされる。一般的に、複数のピークの少なくとも一部、より好ましくは、殆ど、最も好ましくは、全ての電流振幅は、15Aと250Aの間、より一般的には20Aと150Aの間にある。
【0042】
異なる振幅を有する隣接ピークの間では、電流ステップ(すなわち、振幅の差分)は、好ましくは、1Aから235A、より好ましくは、少なくとも10A、更により好ましくは、10Aから40Aまでの範囲にある。
【0043】
比較的高い勾配のピークの立ち上がり時間は、一般的に式(1)によって測定することができる。
dI/dt=(Ups−Uarc)/L (1)
ここで、dI/dtは、電流立ち上がり速度であり、Upsは、スパーク発生器回路に対する電源電圧であり、Uarcは、スパーク電圧であり(例えば、30〜40ボルト)、Lは、スパーク回路内のインダクタのピーク電流源インダクタ値(例えば、〜8μH)である。ピーク持続時間は、電流ピークの立ち上がり時間と立ち下がり時間との和であり、立ち下がり時間は、一般的に式(2)によって測定される。
dI/dt=−Uarc/L (2)
【0044】
比較的高い勾配のピークは、その立ち上がり側で10〜60A/μs、好ましくは、25〜55A/μs、より好ましくは、30〜50A/μsの範囲の例えば40A/μsの勾配を有することができる。
【0045】
好ましくは、波形のうちの第1の部分(すなわち、比較的高い電流の部分)は、根底にある電流包絡線を含み、すなわち、電流立ち上がり部及び電流立ち下がり部を含む。そのような実施形態では、電流立ち上がり部は、増大する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができ、及び/又は電流立ち下がり部は、低下する振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークによって変調することができる。他の実施形態では、他の変調が可能である。例えば、一部の実施形態では、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部のみを複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調することができ、電流立ち下がり部は、複数の比較的高い勾配のピークを持たないか、又はその逆である。好ましくは、波形のうちの第1の部分の電流立ち上がり部は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い勾配のピーク(好ましくは、増大する振幅を有する)によって変調される。
【0046】
波形のうちの第1の高電流の変調部分の前縁における立ち上がり時間、すなわち、スパークの開始時点から最も高い振幅ピークまでの立ち上がり時間は、好ましくは、10μsから100μs、より好ましくは、20μsから90μs、例えば、25μsから75μsまでの範囲にある。
【0047】
好ましくは、波形のうちの第1の変調された比較的高い電流の部分は、比較的短い持続時間のものである(すなわち、第2の比較的低い電流の部分と比較して)。波形のうちの変調された比較的高い電流の部分の持続時間は、好ましくは、10μsから200μs、より好ましくは、20μsから100μsまでの範囲にある。一般的に波形のうちの第1の変調部分が第2の変調部分よりも短いことが好ましいが、一部の実施形態では、波形のうちの第2の変調部分が第1の変調部分よりも短いとすることができる(例えば、100μsの持続時間を有する第1の部分と、50μsの持続時間を有するより短い第2の部分)。
【0048】
波形のうちの変調された比較的低い電流の部分の持続時間は、好ましくは、1μsから3000μs、より好ましくは、50μsから2000μsまでの範囲にあり、必須ではないが、好ましくは、第1の変調部分よりも長い持続時間を有する。
【0049】
しかし、一部の用途では、波形のうちの第2の変調部分を必要としない場合がある。それに応じて、付加的な態様では、本発明は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを含む変調部分を含む電流波形を有するスパークを発光分光測定に対して発生させるためのスパーク発生器を提供する。本発明の付加的な態様では、好ましくは、電流波形は、変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の変調部分を含まない。
【0050】
本明細書では、ピーク間持続時間という用語は、ピークからピークまでで測定された隣接ピーク間の持続時間を意味する。複数の比較的高い勾配の電流ピークに関する可変ピーク間持続時間という用語は、全てが同じピーク間持続時間のものというわけではなく、すなわち、全てが時間的に均等に離間されているわけではないことを意味する。ピークのピーク間持続時間は、例えば、変調プログラムに従って独立して調節することができる。例えば、ピークのピーク間持続時間は、以下に詳細に説明するように、変調プログラムの1つ又はそれよりも多くの基準電流に基づくことができる。複数の比較的高い勾配のピークのピーク間持続時間は、好ましくは、1μsから100μsまでの範囲にある。
【0051】
波形のうちの比較的低い電流の第2の変調部分は、実質的にいかなる変調ピークも持たない。言い換えれば、第2の変調部分は、いくつかの目立たないピークを有することができる。しかし、好ましくは、第2の変調部分はいかなる変調ピークも持たず、すなわち、全く変調ピークが存在しない。
【0052】
好ましくは、比較的低い電流の第2の部分は、その持続時間の殆どにわたって実質的に平坦である(すなわち、実質的に傾斜がない)。その場合、第2の部分は消滅電流ではなく、安定化され、制御された電流である。好ましくは、比較的低い電流の第2の部分の低勾配変調は、電流プラトーに対して電流を変調する。
【0053】
変調された比較的低い電流の部分の平均電流振幅は、好ましくは、1Aから60A、より好ましくは、5Aから50A、より好ましくは、10Aから40Aまでの範囲にある。
【0054】
好ましくは、波形のうちの第2の変調部分の低勾配は、約1A/μsを上回らず、より好ましくは、約0.5A/μsを上回らず、最も好ましくは、約0.2Aμsを上回らない電流勾配を有する。一般的に、波形のうちの第2の変調部分の低勾配は、好ましくは、約0.1A/μsから1A/μsの電流勾配を有する。好ましくは、波形のうちの第2の変調部分の振幅は、スパーク発生器回路を制御するコントローラ内でプログラマブルである。
【0055】
一部の実施形態では、第2の比較的低い電流部分の低勾配変調は、所定の時間の後に停止することができ、それによってその後に非変調減衰、例えば、指数関数的減衰に低電流部分が続くようにする。
【0056】
好ましくは、電流波形は、例えば、電流源の短絡によって突然終了する。有利な態様においては、それによって残光アーク放電が低減する。この中断は、図1の点SCに示している電流波形上で明瞭に見ることができる。
【0057】
波形のうちの第2の比較的低い電流の部分は、比較的長い持続時間のものである(すなわち、第1の比較的高い電流の部分と比較して)。第2の比較的低い電流部分の持続時間は、波形のうちの残りの部分と同様にプログラマブルである。一般的に、第2の変調された低電流部分の持続時間は、1μsから3000μs、より好ましくは、50μsから2000μsである。
【0058】
スパークの全持続時間又は波形幅もまた、好ましくは、プログラマブルである。一般的に、スパーク波形持続時間は、100μsから3200μs、より一般的には100μsから2100μsまでの範囲にある(例えば、約500μs)。
【0059】
スパーク発生器は、スパークギャップ内にスパークを形成するように構成される。好ましくは、スパークギャップは、電極と分析される試料の間に形成される。それに応じて、好ましくは、スパーク発生器は、電極及び試料支持体を含み、電極及び試料支持体は、この電極とこの試料支持体上に装着された分析される試料の間にスパークギャップを形成し、このスパークギャップ内にスパークが形成されるように構成される。好ましくは、スパークは、従来と同様に不活性の例えばアルゴン雰囲気内に形成され、例えば、電極、試料支持体、及び試料は、例えば、アルゴン雰囲気でフラッシュ洗浄することができるスパークチャンバ内に設置することができる。スパークは、少なくとも1つの電流源、例えば、電気回路、好ましくは、RLC回路の放電によって形成される。スパークOESのための1つ又はそれよりも多くの放電回路又は電流源は、本発明による放電波形を変調するプログラムの制御下に使用することができる。スパーク波形は、例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されているか、又は以下に図5Bを参照して説明する高電流のための回路と低電流のための回路とを含む2つ又はそれよりも多くの回路又は電流源の放電から形成することができる。このようにして、スパークは、1つ、2つ、又はそれよりも多くの電流源から発生させることができる。好ましくは、スパーク発生器は、スパークの波形を変調するための手段を含み、すなわち、本発明による回路の放電を受けてスパークギャップ内にスパークを形成するように構成された少なくとも1つ、好ましくは、2つの高電圧RLC回路を含む。すなわち、スパークを発生させるための上記の又は各電流源は、好ましくは、回路の放電を受けてスパークギャップ内にスパークを形成するように構成された高電圧RLC回路を含む。
【0060】
好ましくは、スパークを発生させるためのスパーク発生器は、コンピュータ制御され、従って、プログラマブルである。それに応じて、電流波形は、プログラマブルである。好ましくは、スパーク発生器を制御するためのコンピュータは、検出システムからのデータを処理する段階のような分光計の他の機能を制御するものと好ましくは同じコンピュータであるが、別々のコンピュータ、例えば、スパーク形成電子計器に関連する専用プロセッサとすることもできる。好ましくは、スパーク発生器は、ある一定の(すなわち、1つ又はそれよりも多くの)高電圧RLC回路を含み、スパークは、回路の放電から公知の方式で発生される。しかし、放電は、本発明による波形を生成するように変調される。そのような回路を変調する方法は当業技術で公知であり、更に別の方法を以下に説明する。
【0061】
好ましくは、プログラムは、少なくとも1つの電流源(例えば、回路)を制御し、この電流源の放電を変調して、本発明による波形を有するスパークを生成するコンピュータ上で記憶され、作動される。プログラムは、例えば、第1の比較的高い電流部分におけるピーク振幅、ピーク間持続時間、及び/又はピーク数、変調される第2の比較的低い電流部分の振幅、勾配、及び/又は持続時間、合計スパーク時間、並びに任意的に波形の他の態様(例えば、あらゆる非変調部分及び/又は短絡の終了)に関してあらゆる変調及び非変調部分を含むスパークに対して使用すべき電流波形を定める。コンピュータは、いくつかの異なる組のプログラム又は少なくとも1つの可変プログラムを記憶することができ、各プログラム又はプログラムの変形は、僅かに異なる電流波形を定め、ユーザ又はコンピュータのいずれかは、所定の分析用途に最も適するプログラムを選択することができる。コンピュータは、波形を変調するための1つ又はそれよりも多くのプログラムを記憶することができ、例えば、ピークの振幅、ピーク間持続時間、及び個数、並びに比較的高い電流の部分及び比較的低い電流の部分の持続時間を表す変数が存在する。
【0062】
本発明は、例えば、スパークを発生させるための1つ又はそれよりも多くの適切なプログラマブル電流源によって実施することができる。スパークを発生させるためのプログラマブル電流源のための公知の回路は、欧州特許第396291B1号明細書に説明されており、その図2A、図2B、及び図3に示されており、その内容は、全部が引用によって本明細書に組み込まれている。欧州特許第396291B1号明細書に説明されている回路は、回路を制御するコンピュータ上で記憶され、作動されるプログラムに従って制御することができることを認めるであろう。上記又は各回路には、例えば、欧州特許第396291B1号明細書に説明されているように、放電(スパーク)電流を変調することを可能にする適切な構成要素、例えば、測定抵抗器、比較器、及び関連の回路スイッチ構成要素を設けることができる。それに応じて、好ましくは、本発明は、スパーク電流を測定するための電流測定手段と、スパーク電流を1つ又はそれよりも多くの基準電流(例えば、各プログラマブル電流源に対して1つの基準電流)と比較するための電流比較手段と、上記又は各プログラマブル電流源からの電流を調節し、すなわち、スパーク電流を1つ又はそれよりも多くの基準電流と比較する段階に応じて調節するための電流調節手段とを含む。従って、波形のうちの第1の変調部分のピークの振幅及び/又はピーク間持続時間は、例えば、1つ又はそれよりも多くの基準電流に依存して調節することができる。
【0063】
本発明によるスパーク発生器における好ましい回路を図5Bに示しており、以下に説明する。好ましくは、プログラマブル電流源における上記又は各回路は、スパーク電流を測定するための電流測定手段(例えば、測定抵抗器)と、スパーク電流を基準電流と比較するための電流比較手段(例えば、比較器又は「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」)と、上記又は各プログラマブル電流源からの電流フローを調節するための電流調節手段(例えば、スイッチ)とを含む。電流源の変調のための変調手段の好ましい構成は、スパーク電流を測定するための電流測定手段と、測定電流をデジタル形式に変換するためのアナログからデジタルへの(A/D)コンバータと、測定電流(又はそれを表す信号)をデジタル形式で受け取るためのFPGAと、プログラマブル電流源からの電流フローを調節するための変調プログラムに従ってFPGAによって制御可能な関連の回路スイッチ構成要素(例えば、IGBT又は電力トランジスタ)とを含む。FPGAは、測定電流を上記又は各プログラマブル電流源における基準電流と比較し、それに応じて関連の回路スイッチ構成要素を作動させて、上記又は各電流源からの電流フローを変調する。本発明による電流波形を生成するために、基準電流は、スパーク時間に関して異なっている。
【0064】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つの電流源と、スパーク発生器においてスパーク中のスパーク電流を測定するための電流測定手段(例えば、測定抵抗器)と、スパーク電流を基準電流(例えば、アナログ比較器の場合には、基準は、変調プログラムに従ってコンピュータによってデジタルからアナログへの(D/A)コンバータを通じて与えられる)と比較するための電流比較手段(例えば、比較器又はFPGA等)と、スパーク電流を基準電流に依存する所定の値に調節するための電流調節手段(例えば、可変増幅器要素、例えば、FET、IGBT、又は電力トランジスタのような、好ましくは、可変スイッチである回路スイッチ)とを使用する。通常、基準は、コンピュータに記憶された例えばD/Aからの電圧の関数である理想的な電流値である。それに応じて、電流を比較する段階は、実際には電流を表す電圧を比較する段階を含むことができることを認めるであろう。同様に、本明細書における基準電流という用語は、基準電流と基準電圧の両方、又は基準電流を表す他の信号を含む。
【0065】
2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源が使用される場合には、各電流源を別々の(すなわち、各電流源自体の)電流測定手段、電流比較手段、及び電流調節手段によって変調することができ、更に、別々の基準電流(又は基準電流を表す基準電圧)が供給される。代替的に、2つ又はそれよりも多くの電流源(例えば、回路)が使用される場合には、各電流源を単一の電流測定手段及び電流比較手段(例えば、FPGA)によって変調することができるが、別々の(すなわち、各電流源自体の)電流調節手段(例えば、スイッチ)を有することができ、更に、各電流源に対して別々の基準電流が存在する。スパーク電流を必要に応じてスパーク電流を調節するためのコンピュータプログラムによって定められた基準電流と比較するためのサンプリング周波数(変調周波数)は、好ましくは、少なくとも5MHzである。すなわち、電流波形を変調するための変調周波数は、好ましくは、少なくとも5MHzである。このようにして、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する比較的高い勾配の相当数のピークを波形のうちの第1の高電流部分内に生成することができ、スパークエネルギのより高い制御が与えられる。
【0066】
より好ましくは、スパーク発生器は、例えば、本明細書の図5Bに示して以下に説明するように、高電流源と低電流源を含む少なくとも2つ(最も好ましくは、2つ)の変調(すなわち、プログラマブル)電流源を有する。好ましくは、高電流源は、高速立ち上がり時間の高電流源である。好ましくは、変調高電流源は、例えば、40A/μsの勾配及び250Aの電流最大値を有する高電流を生成することができる。好ましくは、高電流源の放電は、第1の比較的高い電流の部分の振幅及びピーク間持続時間による変調ピークを発生させるためのものである。好ましくは、変調低電流源の放電は、低立ち上がり時間、例えば、4A/μsの勾配及び50Aの電流最大値を有する低電流を生成することができる。好ましくは、低電流源は、より高い精度を必要とする第2の比較的低い電流の部分を発生させるためのものである。好ましくは、高電流源及び低電流源は、各々変調RLC回路を含む。各RLC回路の抵抗及び/又はインダクタンスの値は、説明した波形の高電流特性及び低電流特性を与えるように適切に選択される。好ましくは、高電流源及び低電流源は、共通の電源及びコンデンサーを有する。好ましくは、変調高電流源と変調低電流源の両方は、スパークの開始時点から、例えば、トリガ信号の後に有効にされ、従って、全体的な電流波形は、両方の変調電流の和である。一般的に高電流源は、低電流源が停止する前に停止する。任意的に、低電流源の変調は、高電流源を停止した後のある時点から自然な電流減衰が発生するようにその時点で中止することができる。任意的に、低電流源を突然終了させる上で、電流短絡を使用することができる。高電流源及び低電流源を変調するためのサンプリング周波数又は変調周波数は、好ましくは、少なくとも5MHzである。それに応じて、好ましくは、スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源、より好ましくは、プログラマブル高電流源及びプログラマブル低電流源から発生し、更に好ましくは、第1の変調部分は、プログラマブル高電流源によって発生し、第2の変調部分は、プログラマブル低電流源によって発生する。
【0067】
本発明のスパーク発生器は、スパーク発光分光計に使用するためのものである。スパーク発生器は、試料内の要素を励起して光を放出させるためのスパークを発生させる。好ましくは、本発明によるスパーク発光分光計は、本発明によるスパーク発生器に加えて、試料から放出される光を分散させ、すなわち、個別の波長又はスペクトル線に分散させるための光学系と、分散光の光強度を検出するための検出システムと、検出システムからの光強度を表す信号を記憶して処理するためのデータ記憶及び処理システムとを更に含む。
【0068】
図5Aは、本発明を実施するための発光分光計の一実施形態を略示している。この分光計は、本発明の範囲に対して非限定的であり、例示のみのためのものである。分光計は、コンピュータ12によって制御される。コンピュータ12は、本発明による波形を用いてスパーク源10の放電を変調するための1つ又はそれよりも多くのプログラムを記憶する。スパーク源10は、2つの高電圧RLC回路(図示せず)を含む。より具体的には、スパーク源10は、各々が放電(スパーク)電流を変調することを可能にする構成要素、例えば、電流測定手段、比較器又はFPGA、及び関連の回路スイッチ構成要素を含む高電流源及び低電流源を含む。従って、使用時には、例えば、コンピュータプログラムに従ってコンピュータから基準電流が同様に供給される比較器又はFPGAに放電電流を供給する段階を含むいくつかのフィードバックシステムがスパーク源10に使用され、プログラムに従って電流フローを可能にするか、電流フローを低減するかのいずれかを行って各電流源からの変調電流を供給するように回路内のスイッチが作動され、これらの変調電流は、一緒に本発明の電流波形を構成する。高電流源及び低電流源の各々には、別々の基準電流が供給される。スパーク源10は、アルゴンが充填されたスパークチャンバ4の内部に収容された電極6と試料8とに電気的に接続され、それによって使用時にこれらの間にスパークが形成され、回路の放電を受けて試料8の一部分が気化及び励起される。一般的に、試料8は、金属試料であり、一般的にディスクの形態にある。使用時には、スパーク励起を受けて試料8内の要素によって放出されたスペクトル線を含む光18が光学系14に入射し、光学系14は、この光をスペクトル線に分散させる。一般的に光学系14は、光を分散させるための回折格子(図示せず)を含む。次に、1つ又はそれよりも多くの光検出器、例えば、光電子増倍管又はCCD検出器を含む検出システム16を用いて、選択された分光スペクトル線20が検出される。検出システム16からの信号は、任意的に更に別の処理の後にコンピュータ12によって受け取られ、コンピュータ12は、これらの信号を例えば試料のスペクトル又は他の定性又は定量分析の形式での最終出力のためのデータとして記憶して処理する。一般的に、光学系14及び検出システム16は、低圧(真空)下で保持され、及び/又はスペクトル線との干渉を避けるために光学的に不活性な気体でフラッシュ洗浄される。
【0069】
図5Aのスパーク源における好ましい回路構成を図5Bに示している。図5Bを参照すると、共通の電源、例えば、350V(図示せず)、及びコンデンサー、例えば、220μFを利用する高電流源35及び低電流源36が示されている。高電流源35及び低電流源36は、各々が回路内でそれぞれのIGBTトランジスタスイッチ37及び38、並びにインダクタ39及び40を通じてそれぞれスパークギャップ33間に接続される。各回路内のインダクタンス及び抵抗の値は、高電流及び低電流を与えるように、例えば、高電流部分において4μH及び低電流部分において360μHが選択される。スパークギャップ33間に流れる電流は、電流測定デバイス34を用いて測定され、測定電流は、A/Dコンバータ41を通じて「フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)」及びコントローラ31に供給される。FPGA及びコントローラ31は、測定電流をコンピュータ12(図5Aに示している)から供給される高電流源及び低電流源の各々に対する基準電流と比較する。比較は、少なくとも5MHzの周波数で行われ、測定電流がそれぞれの基準値よりも大きいか又は小さいかに依存してスイッチ39及び40が独立して開閉され、それによって本発明によるスパーク電流波形が生成される。点火デバイス32は、コンピュータ12からの命令に従ってFPGAによってスパークを開始するようにトリガされる。点火デバイスは、欧州特許第396291号明細書(この文献の図3)における回路イニシエータに対して説明されている種類のものとすることができる。使用時には、一般的に高変調電流源と低変調電流源の両方は、スパークの開始時点から、例えば、トリガ信号の後に有効にされ、従って、全体的な電流波形は、両方の変調電流の和である。一般的に高電流源は、指定された時間の後かつ低電流源が停止する前に停止される。代替的に、高電流源と低電流源を異なる時点で開始することができる。例えば、高電流源を開始時点からトリガすることができ、指定された時間遅延の後に低電流源を開始することができ、これらの2つの電流源は重複し、その後に、高電流源は停止され、低電流源は続行される。任意的に、高電流源を停止した後のある時点から自然な電流減衰が発生するように、その時点で低電流源の変調を中止することができる。一般的に、低電流源を突然終了するのに電流短絡が使用される。
【0070】
本発明の更に別の態様により、本発明によるスパーク発生器を用いて電極と分析される試料の間にスパークを発生させる段階と、スパークの結果として試料によって放出された光を分散させる段階と、選択された波長における分散光の強度を検出する段階とを含む発光分光測定法を提供する。
【0071】
一般的に、本発明による発光分光測定法は、多数のスパークを連続して発生させる段階と、連続スパークからもたらされる光強度データを連続して収集し、組成を正確に測定する段階とを含む。スパークの個数、持続時間、及び周波数は、分析用途に依存する。組成測定の方法に使用されるスパーク数は、一般的に1,000から5,000までの範囲にあり、各個々のスパークの合計持続時間(すなわち、高電流部分と低電流部分との合計)は、一般的に100μsから2000μsまで(例えば、約500μs)続く。スパーク周波数は、一般的に1Hzから1000Hz、より一般的には100Hzから600Hzまでの範囲にある。本方法における全スパーク時間(すなわち、全てのスパークに要する時間)は、一般的に3秒から30秒である。
【0072】
スパーク発生器は、一連のスパークを全てが同じ波形を有するように発生させる必要はなく、一連のスパークは、特定の分析用途により良く適合するように本発明による異なる波形を有するスパークを含むことができる。例えば、1つの波形は、1つの要素の分析に適合するように選択することができ、別の波形は、別の要素の分析に適合するように選択することができる。例えば、1つのスパークタイプは、波形のうちの第1の変調高電流部分内に所定のピーク数及び所定のピーク周波数を有する変調を有することができ、例えば、最初のスパークタイプと交替することができる別のスパークタイプは、異なる変調、例えば、変調高電流部分内で異なるピーク数及び/又はピーク周波数を有することができる。一連のスパーク内ではあらゆる数の異なるスパーク波形を使用することができ、これらは、あらゆるシーケンス又は組合せで使用することができる。好ましくは、所定の分析用途において1つよりも多くのスパーク波形を有するスパークが使用される場合には、好ましくは、各波形は、本発明による波形である。しかし、本発明による波形を有するスパークを本発明のこれらの波形以外の波形を有するスパークと順に組み合わせることができると考えられる。
【0073】
例えば、検出光の強度をデータとして記憶する段階、これらのデータを任意的に処理する段階、任意的にこの処理の後にこれらのデータを出力する段階、及び/又は試料の元素組成を測定する段階のような従来的なOES法の1つ又はそれよりも多くの段階を本発明の方法と共に使用することができる。
【0074】
放出された光強度の測定は、特定の放出線の励起エネルギに基づいて、電流の第1の変調部分及び第2の変調部分のうちの少なくとも一方又は好ましくは両方の送出中に(すなわち、好ましくは、電流の第1の変調部分と第2の変調部分の両方が送出される時間窓中に)実施することができる。
【0075】
本発明は、放出光がスパーク持続時間内に位置する定められた時間窓内でのみ測定されるOESにおけるいわゆる「時間分解分光測定」(TRS)又はより具体的には「時間ゲート取得」(TGA)の使用に対して有利なものであることが見出されている。TRSでは、異なるスペクトル線に対して異なる時間窓を使用することができる。時間窓の選択は、スペクトル線のエネルギのようなスペクトル線のパラメータに依存する。時間窓は、例えば、スパーク源又はスペクトル背景干渉によるスペクトル線に対する摂動を最小にするように選択することができる。TRSは、例えば、微量元素分析に対して有意な恩典を有するものである。本発明は、TRSを更に有効にすることが見出されている。例えば、図6A及び図6Bを参照すると、発光分光計においてAl 394.40nm(図6A)及びBa 455.40nm(図6B)という2つの異なるスペクトル線に対して記録された強度−時間プロットが示されている。各スペクトル線に対して、スパーク中にスペクトル線の強度を測定する最適な時間窓が存在する。図には、これらの時間窓は、プロット上に示す垂直線の間の時間として示している。各スペクトル線に対して、単一の高電流ピークに低電流プラトーが続く従来技術の電流波形を有するスパークを用いて記録された強度−時間プロット(「単ピーク」とラベル付けしている)と、本発明による電流波形を有するスパークを用いて記録された強度−時間プロット(「多ピーク」とラベル付けしている)とを示している。本発明により発生したスパークは、従来技術のスパークにおけるものと類似の合計エネルギがスパークに送出されるが、異なる振幅−時間プロフィールを有するように変調された。本発明によるスパークの場合には、それぞれのスペクトル線を測定するのに最適な時間窓中において、強度が、従来技術の波形を有するスパークを用いたものよりも有意に高いことが分る。
【0076】
本発明は、金属試料内の微量元素及び合金化元素の測定をこれらの用途のうちのいずれか一方又は他方により良く適合する上述の従来技術の方法とは対照的に両方共に良好な精度で可能にする。
【0077】
本発明は、多くの組成の定量測定(所定の取得時間に対する)において精度を大きく改善し、それによって所定の精度での取得時間を短縮することが見出されている。取得時間の改善は、例えば、従来技術の単一ピークのスパークを用いたものと比較して10%と50%の間にあることが見出されている。下記の表は、本発明のスパーク発生器を用いて取得した結果と、単一の高電流ピークに続いて低電流減衰を生成する従来技術のスパーク発生器を用いて取得した結果との比較を示している。結果は、種々の母材において試料を較正及び測定するための取得時間を示している。
【0078】
(表)
【0079】
本発明による波形を有するスパークの使用は、OES計器の環境内でのCCD光検出器の応答性の劣化速度を低下させることができる。図5Aを参照すると、一般的に、光学系14及び検出システム16は、スペクトル線との干渉を避けるために低圧(真空)下で保持され、及び/又は光学的に不活性な気体でフラッシュ洗浄される。それにも関わらず、少量の揮発性有機分子が、光学系及び検出システムの気体環境内に残留する可能性がある。あらゆる理論に縛られることなく、本発明者は、CCD検出器の応答性における経時劣化が、従来技術のデジタルスパーク源を用いた場合に生成される可能性がある、強いUV光との、そのような有機分子の光化学反応(消光)に起因すると考えている。この場合、光化学的に生成される生成物は、CCD検出器の燐コーティングを有する表面上に堆積されるようになり、それによって時間と共に検出器の感度が低下すると考えられる。従来技術のデジタルスパーク源におけるような単一の強度のピークではなく、複数のピークにわたってエネルギが分散する本発明のスパーク源波形は、観測される低い消光確率、従って、検出器上への低い堆積速度をもたらすことが理解される。
【0080】
文脈が別途明確に示さない限り、本明細書に使用する複数形の用語は、本明細書では単数形を含むように解釈されるものとし、その逆も同様である。
【0081】
本明細書に説明する工程のあらゆる段階は、そうでないと別途記載しない限り又は文脈がそうでないことを明確に必要としない限り、いかなる順序でも実施することができる。
【0082】
本説明及び本明細書の特許請求の範囲を通して「備える」、「含む」、「有する」、及び「収容する」などの用語、並びにこれらの用語の変形、例えば、「備えている」、「備える」などは、「含むがそれに限定されない」を意味し、他の構成要素を除外するように意図していない(かつ除外しない)。
【0083】
本明細書における例又は例示的な文言(「例として」、「のような」、「例えば」、及び類似の語句を含む)の使用は、本発明をより明快に例示することのみを意図したものであり、別途主張しない限り、本発明の範囲に対する制限を意味しない。本明細書内のいかなる文言も、いずれかの非請求的要素が本発明の実施に対して必須であることを示すように解釈すべきではない。
【0084】
本発明の上述の実施形態に対する変更を加えることができ、同時に本発明の範囲に収まることを認めるであろう。本明細書に開示する各特徴は、特に断らない限り、同じ、均等、又は類似の目的を実現するように機能する別の特徴によって置換することができる。従って、特に断らない限り、開示する各特徴は、一般的な一連の均等物又は類似の特徴の一例でしかない。
【0085】
本明細書に開示する特徴の全ては、そのような特徴及び/又は段階の少なくとも一部が互いに排他的である組合せを除き、あらゆる組合せで組み合わせることができる。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、あらゆる組合せに使用することができる。同様に、必須ではない組合せで説明する特徴も、別々に(組合せではなく)使用することができる。
【0086】
上述の特徴の多く、特に好ましい実施形態のものは、本発明の一部の実施形態として存在するだけではなく、これらの特徴自体で独自に発明性を有することを認めるであろう。現時点で特許請求するあらゆる発明に加えて又はその代わりに、これらの特徴に対する独立した保護を求めることができる。
【符号の説明】
【0087】
A 比較的高い電流の第1の変調部分
B 比較的低い電流の第2の変調部分
I スパーク電流
t 時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光分光測定(OES)のためのスパークを発生させるためのスパーク発生器であって、
前記スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源から発生され、かつ可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを備えた第1の変調部分と変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを備えた電流波形を有する、ことを特徴とするスパーク発生器。
【請求項2】
前記第2の変調部分は、電流プラトーにつながることを特徴とする請求項1に記載のスパーク発生器。
【請求項3】
前記第1の変調部分は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する3つ又はそれよりも多くのピークによって変調されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項4】
前記第1の変調部分は、振幅が増大していく複数の比較的高い勾配のピークによって変調された電流立ち上がり部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項5】
前記第1の変調部分は、振幅が減少していく複数の比較的高い勾配のピークによって変調された、前記電流立ち上がり部の後の電流立ち下がり部を備えることを特徴とする請求項4に記載のスパーク発生器。
【請求項6】
前記第1の変調部分は、少なくとも第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークと第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークとによって変調されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項7】
前記複数のピークの少なくとも一部の前記電流振幅は、15Aと250Aの間であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項8】
前記複数の比較的高い勾配のピークの前記ピーク間持続時間は、1μsから100μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項9】
前記第2の変調部分は、前記第1の変調部分よりも長い持続時間を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項10】
前記波形の前記第1の変調部分の前記持続時間は、10μsから200μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項11】
前記スパークの開始から最も高い振幅ピークの最上部までの立ち上がり時間が、10μsから100μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項12】
前記第2の変調部分には、前記電流の非変調減衰が続くことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項13】
前記スパークは、前記スパークの1つ又はそれよりも多くの電流源の短絡によって終了されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項14】
前記第2の変調部分の平均電流振幅が、1Aから60Aの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項15】
前記波形の前記第2の変調部分は、0.1A/μsと1A/μsの間の電流勾配を有することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項16】
前記スパークは、プログラマブル高電流源とプログラマブル低電流源から発生されることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項17】
前記第1の変調部分は、前記プログラマブル高電流源から発生され、前記第2の変調部分は、前記プログラマブル低電流源から発生されることを特徴とする請求項16に記載のスパーク発生器。
【請求項18】
前記電流波形を変調するための変調周波数が、少なくとも5MHzであることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項19】
発光分光測定(OES)のためのスパークを発生させるためのスパーク発生器であって、
前記スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源から発生され、かつ、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流と高い勾配のピークとを備えた変調部分を備えた電流波形を有する、ことを特徴とするスパーク発生器。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のスパーク発生器、
を備えることを特徴とする発光分光計。
【請求項21】
発光分光測定の方法であって、
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のスパーク発生器を用いて、電極と分析される試料との間にスパークを発生させる段階と、
前記スパークの結果として前記試料によって放出された光を分散させる段階と、
選択された波長での前記分散光の強度を検出する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
発光分光測定(OES)のためのスパークを発生させるためのスパーク発生器であって、
前記スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源から発生され、かつ可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流及び高い勾配のピークを備えた第1の変調部分と変調ピークを実質的に持たない比較的低い電流及び低い勾配の第2の変調部分とを備えた電流波形を有する、ことを特徴とするスパーク発生器。
【請求項2】
前記第2の変調部分は、電流プラトーにつながることを特徴とする請求項1に記載のスパーク発生器。
【請求項3】
前記第1の変調部分は、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する3つ又はそれよりも多くのピークによって変調されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項4】
前記第1の変調部分は、振幅が増大していく複数の比較的高い勾配のピークによって変調された電流立ち上がり部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項5】
前記第1の変調部分は、振幅が減少していく複数の比較的高い勾配のピークによって変調された、前記電流立ち上がり部の後の電流立ち下がり部を備えることを特徴とする請求項4に記載のスパーク発生器。
【請求項6】
前記第1の変調部分は、少なくとも第1の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークと第2の高振幅を有する複数の比較的高い勾配のピークとによって変調されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項7】
前記複数のピークの少なくとも一部の前記電流振幅は、15Aと250Aの間であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項8】
前記複数の比較的高い勾配のピークの前記ピーク間持続時間は、1μsから100μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項9】
前記第2の変調部分は、前記第1の変調部分よりも長い持続時間を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項10】
前記波形の前記第1の変調部分の前記持続時間は、10μsから200μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項11】
前記スパークの開始から最も高い振幅ピークの最上部までの立ち上がり時間が、10μsから100μsの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項12】
前記第2の変調部分には、前記電流の非変調減衰が続くことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項13】
前記スパークは、前記スパークの1つ又はそれよりも多くの電流源の短絡によって終了されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項14】
前記第2の変調部分の平均電流振幅が、1Aから60Aの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項15】
前記波形の前記第2の変調部分は、0.1A/μsと1A/μsの間の電流勾配を有することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項16】
前記スパークは、プログラマブル高電流源とプログラマブル低電流源から発生されることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項17】
前記第1の変調部分は、前記プログラマブル高電流源から発生され、前記第2の変調部分は、前記プログラマブル低電流源から発生されることを特徴とする請求項16に記載のスパーク発生器。
【請求項18】
前記電流波形を変調するための変調周波数が、少なくとも5MHzであることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のスパーク発生器。
【請求項19】
発光分光測定(OES)のためのスパークを発生させるためのスパーク発生器であって、
前記スパークは、2つ又はそれよりも多くのプログラマブル電流源から発生され、かつ、可変振幅及び/又はピーク間持続時間を有する複数の比較的高い電流と高い勾配のピークとを備えた変調部分を備えた電流波形を有する、ことを特徴とするスパーク発生器。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のスパーク発生器、
を備えることを特徴とする発光分光計。
【請求項21】
発光分光測定の方法であって、
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のスパーク発生器を用いて、電極と分析される試料との間にスパークを発生させる段階と、
前記スパークの結果として前記試料によって放出された光を分散させる段階と、
選択された波長での前記分散光の強度を検出する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2012−511848(P2012−511848A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540029(P2011−540029)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066420
【国際公開番号】WO2010/066644
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511141744)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066420
【国際公開番号】WO2010/066644
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511141744)
【Fターム(参考)】
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