説明

発光素子および前記素子を用いた発光装置

【課題】幅広い波長領域にスペクトルを有する高効率な白色発光素子を提供する。また、白色の色度が経時変化しにくい白色発光素子を提供する。また、発光スペクトルの形状が電流密度に依存しにくい白色発光素子を提供する。
【解決手段】基板300上に第1の発光素子310と第2の発光素子320が直列に積層されており、第1の発光素子310は、第1の陽極311と第1の陰極313の間に発光層312を有する構造であり、第2の発光素子320は、第2の陽極321と第2の陰極323の間に発光層322を有する構造である。ここで、発光層312は、青色〜青緑色の領域と黄色〜橙色の領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトル330を示し、発光層322は、青緑色〜緑色の領域と橙色〜赤色の領域の両方にピークを有する第2の発光スペクトル340を示す構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性の有機化合物または無機化合物を有し、電圧を印加することにより発光する発光素子に関する。特に、白色発光を呈する発光素子、およびそれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子の一種として、発光性の有機化合物を用いた発光素子の研究開発が盛んに行われている。この発光素子の一般的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物または無機化合物を含む層(以下、「発光層」と記す)を挟んだものであり、素子に電圧を印加することにより一対の電極から電子およびホールがそれぞれ発光層に注入・輸送される。そして、それらキャリア(電子およびホール)が再結合することにより、発光性の有機化合物または無機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。
【0003】
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子は通常、サブミクロン〜数ミクロン程度の薄膜で形成されるため、薄型軽量に作製できることが大きな利点である。また、キャリアが注入されてから発光に至るまでの時間はせいぜいマイクロ秒あるいはそれ以下であるため、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。また、数ボルト〜数十ボルト程度の直流電圧で十分な発光が得られるため、消費電力も比較的少ない。これらの利点から、上述した発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。
【0005】
また、このような発光素子においては、一対の電極および発光層を膜状に形成するため、大面積の素子を形成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLED(点光源)、あるいは蛍光灯(線光源)などの光源では得難い特色であるため、上述した発光素子は照明等の光源としての利用価値も高い。
【0006】
これらの応用分野を考えると、上述したような発光素子において、白色発光素子の開発は重要なテーマの一つと言える。十分な輝度、発光効率、素子寿命そして色度の白色発光素子が得られれば、それとカラーフィルターを組み合わせることにより良質なフルカラーディスプレイを作製できるし、また、バックライトや照明などの白色光源への応用も期待できるためである。
【0007】
現在、白色発光素子としては、赤、緑、青(光の三原色)の各波長領域にピークを有する白色発光ではなく、補色の関係(例えば青色発光と黄橙色発光)を組み合わせた白色発光を示す発光素子(以下、「2波長型白色発光素子」と記す)が主流である(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】Chishio Hosokawa、外7名、SID 01 DIGEST、31.3(p.522−p.525)(2001)
【0008】
非特許文献1においては、補色の関係にある2つの発光層が接するように積層することにより、白色発光を達成している。このような2波長型白色発光素子は、発光効率が高く、また比較的良好な素子寿命を得ることができる。非特許文献1においても、初期輝度400cd/m2で、輝度の半減期は10000hrという値を達成している。
【0009】
しかしながら、2波長型白色発光素子は、CIE色度座標上では良好な白色を得ることができるが、その発光スペクトルは連続的ではなく、補色の関係にある2つのピークしか有さない。従って、自然光に近いブロードな白色光を得ることは困難である。また、補色の一方のスペクトルが電流密度や点灯時間に依存して増減してしまうと、色度は白色から大きくずれてしまいやすい。また、補色の一方のスペクトルが増減すると、カラーフィルターと組み合わせたフルカラーディスプレイを考慮した場合、赤、緑、青のカラーフィルターの透過スペクトルと素子の発光スペクトルが合致せず、所望の色がでにくくなってしまう。
【0010】
一方、上述のような2波長型白色発光素子ではなく、赤、緑、青の各波長領域にそれぞれピークを有する発光スペクトルを持つ白色発光素子(以下、「3波長型白色発光素子」と記す)の研究開発も進められている(例えば、非特許文献2および非特許文献3参照)。非特許文献2は赤、緑、青の3つの発光層を積層する構成であり、非特許文献3は1つの発光層の中に赤、緑、青の発光を示す発光材料を添加する構成である。
【非特許文献2】J.Kido、外2名、サイエンス、vol.267、1332−1334(1995)
【非特許文献3】J.Kido、外2名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.67(16)、2281−2283(1995)
【0011】
しかしながら、これらの3波長型白色発光素子は、発光効率や素子寿命の点で2波長型白色発光素子に及ばず、より大きな改善が必要である。また、非特許文献2でも示されているような素子は、流れる電流密度に依存してスペクトルが変化するなど、安定した白色光が得られない場合が多いことが知られている。
【0012】
また、非特許文献1〜3とは異なる観点で、白色発光素子を得ようという試みもなされている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。これら特許文献1〜2は、複数の発光素子を直列に積層し、それぞれの発光素子からの発光を重ねることにより、高い電流効率(ある電流密度に対して得られる輝度)を得ようという試みである。そして、この時に異なる発光色の発光素子を直列に積層することにより、白色発光素子を得ることもできることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−264085
【特許文献2】特開2003−272860
【0013】
しかしながら、特許文献1〜2で開示されている手法では、例えば3波長型白色発光素子を得る場合は3つの素子を直列に積層する必要がある。つまり、幅広い波長領域にスペクトルを有する白色発光素子(異なる発光色が多数混ざった白色発光素子)を作製しようとすれば、その分、直列に積層する発光素子の数も大幅に増えてしまい、駆動電圧が何倍にもなってしまう。また、発光素子を数多く直列に積層するがために、積層した総膜厚が大きくなり、光学的な干渉を受けやすくなってしまうため、発光スペクトルを細かくチューニングすることが困難になる。
【0014】
以上で述べたように、従来の2波長型白色発光素子は発光効率が高く素子寿命も良好であるが、幅広い波長領域にスペクトルを有さないという問題があり、また、それに付随して白色の色度が経時変化しやすい。また、従来の3波長型白色発光素子は発光効率が低く素子寿命も悪い上に、スペクトルの形状が電流密度に依存しやすいという問題点がある。さらに、特許文献1〜2で開示されている手法により幅広い波長領域にスペクトルを有する白色発光素子を得ようとすると、直列に積層する発光素子の数が大幅に増えてしまい、駆動電圧が大幅に上昇するため現実的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明では、幅広い波長領域にスペクトルを有する高効率な白色発光素子を提供することを課題とする。また、白色の色度が経時変化しにくい白色発光素子を提供することを課題とする。また、発光スペクトルの形状が電流密度に依存しにくい白色発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、2波長型白色発光素子のように2つのピークを有する発光スペクトルを示す発光素子と、その発光素子の発光スペクトルのピークとは異なる位置にピークを有する発光スペクトルを示すもう一つの発光素子とを、直列に積層し、その両方のスペクトルを重ね合わせた発光を得ることにより、課題を解決できることを見出した。この時、直列に積層する2つの素子は、いずれも2つのピークを有する発光スペクトルを示すことが好ましい。
【0017】
従って本発明の構成は、第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記2つのピークとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示す発光素子である。
【0018】
この時、前記第2の発光スペクトルは、少なくとも2つのピークを有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の構成は、第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、補色の関係にある2種の発光色からなる第1の発光色を示し、他方は前記2種の発光色とは異なる第2の発光色を示し、前記第1の発光色と前記第2の発光色を合わせた発光を示す発光素子である。
【0020】
この時、前記第2の発光色は、補色の関係にある2種の発光色からなり、その2種の発光色は前記第1の発光色で補色の関係にある2種の発光色とは異なることが好ましい。
【0021】
なお、補色の関係としては、青色〜青緑色の波長領域と黄色〜橙色の波長領域との組み合わせが好ましい。従って本発明の他の構成は、第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記第1の発光スペクトルとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示す発光素子である。
【0022】
この時、前記第2の発光スペクトルは、前記第1の発光スペクトルとは異なる補色の関係となるように、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルであることが好ましい。
【0023】
また、青色〜青緑色の波長領域と黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルとしては、430nm〜480nmの波長領域および550nm〜600nmの波長領域の両方にピークを有することが好ましい。従って本発明の他の構成は、第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、430nm〜480nmの波長領域および550nm〜600nmの波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記第1の発光スペクトルのピークとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示す発光素子である。
【0024】
この時、前記第2の発光スペクトルは、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有するように、480〜550nmの波長領域および600nm〜680nmの波長領域の両方にピークを有することが好ましい。
【0025】
なお、上述した本発明の構成においては、前記第1の発光層は、第3の発光層と、前記第3の発光層とは異なる発光色を示す第4の発光層と、を有することが好ましい。この時、前記第3の発光層と前記第4の発光層が互いに接して設けられている構成が、作製しやすく好適である。
【0026】
また、上述した本発明の構成においては、前記第2の発光層は、第5の発光層と、前記第5の発光層とは異なる発光色を示す第6の発光層と、を有することが好ましい。この時、前記第5の発光層と前記第6の発光層が互いに接して設けられている構成が、作製しやすく好適である。
【0027】
そして、以上で述べたような本発明の発光素子を用いて発光装置を作製することにより、幅広い波長領域にスペクトルを有する高効率な発光装置、色度が経時変化しにくい発光装置、あるいは発光スペクトルの形状が電流密度に依存しにくい発光装置を提供することができる。従って本発明では、本発明の発光素子を用いた発光装置も含むものとする。特に、本発明の発光素子は幅広い波長領域にスペクトルを有するため、発光装置としてはカラーフィルターをさらに有する発光装置や照明器具が好ましい。
【0028】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた発光体や画像表示デバイスなどを指す。また、発光素子にコネクター、例えばフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0029】
本発明を実施することで、幅広い波長領域にスペクトルを有する高効率な白色発光素子を提供することができる。また、白色の色度が経時変化しにくい白色発光素子を提供することができる。また、発光スペクトルの形状が電流密度に依存しにくい白色発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について、基本的な構成、動作原理および具体的な構成例を挙げて詳細に説明する。なお、発光素子は、発光を取り出すために少なくともどちらか一方の電極が透明であれば良い。従って、基板上に透明な電極を形成し、基板側から光を取り出す従来の素子構造だけではなく、実際は、基板とは逆側から光を取りだす構造や、電極の両側から光を取り出す構造も適用可能である。
【0031】
まず、本発明の発光素子の基本的な構成について、図1(a)を用いて説明する。図1(a)は、基板100上に第1の発光素子110と第2の発光素子120が直列に積層された、本発明の発光素子の構成例である。第1の発光素子110は、第1の陽極111と第1の陰極113の間に第1の発光素子の発光層112を有する構造であり、また、第2の発光素子120は、第2の陽極121と第2の陰極123の間に第2の発光素子の発光層122を有する構造である。発光層112および122は、いずれも発光性の有機化合物を含む。
【0032】
このような発光素子に対し、第1の陽極111側をプラスに、第2の陰極123側をマイナスにバイアスを印加すると、ある電流密度Jの電流が素子に流れる。この時、第1の陽極111から第1の発光素子の発光層112にホールが、第1の陰極113から第1の発光素子の発光層112に電子がそれぞれ注入され、再結合に至ることにより、第1の発光素子から第1の発光130が得られる。また、第2の陽極121から第2の発光素子の発光層122にホールが、第2の陰極123から第2の発光素子の発光層122に電子がそれぞれ注入され、再結合に至ることにより、第2の発光素子から第2の発光140が得られる。つまり、第1の発光素子110と第2の発光素子120の両方から発光が得られるわけである。
【0033】
なお、回路的に見れば図1(b)のようになり、第1の発光素子110および第2の発光素子120に共通の電流密度Jの電流が流れ、それぞれその電流密度Jに対応した輝度(図1(b)ではそれぞれL1およびL2)で発光することになる。この時、図1(a)に示した例では、第1の陽極111、第1の陰極113、第2の陽極121を光透過性とすることにより、第1の発光130と第2の発光140の両方を取り出すことができる。
【0034】
ここで、本発明においては、第1の発光130および第2の発光140のうちいずれか一方は、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方はそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示すことが特徴である。例えば、第1の発光130が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、第2の発光140が橙色〜赤色の波長領域にピークを有する第2の発光スペクトルを示すような構成である(詳細は下記実施形態1にて説明する)。なお、青色〜青緑色の発光色と黄色〜橙色の発光色は、補色の関係にある発光色である。
【0035】
発光性の有機化合物が電流によって励起されて発光に至る発光素子では、2つのピークを有する発光スペクトル(上述の例では第1の発光スペクトル)を示す発光を得るのは、従来技術の2波長型白色発光素子に代表されるように比較的容易である。しかしながら、3つ以上のピークを有する発光スペクトルを得る、あるいはブロードな発光スペクトルを得るというのは非常に困難である。その技術的課題を克服する手法が、本発明の構成である。すなわち、2波長型白色発光素子のような2つのピークを有する発光スペクトルを示す発光素子(上述の例では第1の発光素子)をベースに、それだけでは補完しきれない領域の発光スペクトルを有する発光素子を直列に積層し、発光を重ね合わせる構成である。この構成であれば、単に1つのピークしか有さない発光素子を直列に積層するよりは、積層する素子の数を減らすことができ、それに伴って駆動電圧の上昇を抑えることができるため有用である。また、図1(b)で示したように、本発明の発光素子においては、ある電流密度Jに対して得られるL1の輝度とL2の輝度の両方を加算した輝度が得られるため、電流に対する輝度(すなわち電流効率)も高い値が得られる。
【0036】
なお、上述の説明では、第1の発光素子110が、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトル示し、第2の発光素子120がそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示す場合を例に説明したが、それとは逆の構成であっても良い。すなわち、第1の発光素子110が前記第2の発光スペクトルを示し、第2の発光素子120が前記第1の発光スペクトルを示しても良い。また、図1(a)では第1の陽極111側に基板100が設置されている構成としたが、逆に第2の陰極123側に設置されている構成であっても良い。さらに、図1(a)では第1の陽極111側から発光を取り出す構成としているが、図4(a)に示すように第2の陰極123側から発光を取り出す構成や、図4(b)に示すようにその両方から発光を取り出す構成であっても良い。
【0037】
以上では、発光層112及び発光層122に発光性の有機化合物を含む場合を説明したが、発光層は発光性の無機化合物を含んでも良い。つまり110と120を無機のLEDとする。そして、第1の発光130および第2の発光140のうちいずれか一方は、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方はそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示すことを特徴とする。例えば、第1の発光130が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、第2の発光140が橙色〜赤色の波長領域にピークを有する第2の発光スペクトルを示すような構成である。なお、第1の発光スペクトルが有する2つのピークに相当する発光色は補色の関係にある。また、第2の発光スペクトルも補色の関係にある2種の波長領域のそれぞれにピークを有してもよい。その場合は、第2の発光スペクトルは、第1の発光スペクトルを構成するピークとは異なる位置にあるピークを有するのが好ましい。つまり第1の発光を構成する2種の発光色と第2の発光を構成する2種の発光色は異なることが好ましい。
【0038】
また、図1に示したような電流によって発光に至る発光素子だけでなく、無機ELのような衝突励起型の発光素子においても、本願の概念は適用できる。
【0039】
すなわち、2つの衝突励起型の発光素子を直列に接続する。そして、2つの衝突励起型の発光素子のうち一方は、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方はそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示すことを特徴とする。第1の発光スペクトルが有する2つのピークに対応する発光色は補色の関係にある。また、第2の発光スペクトルも補色の関係にある2種の波長領域のそれぞれにピークを有してもよい。その場合は、第2の発光スペクトルは、第1の発光スペクトルを構成するピークとは異なる位置にあるピークを有するのが好ましい。つまり、2つの衝突励起型の発光素子のうち、一方の発光素子からの発光を構成する2種の発光色と、他方の発光素子からの発光を構成する2種の発光色は異なることが好ましい。
【0040】
また、補色の関係としては、青色〜青緑色の波長領域と黄色〜橙色の波長領域を例に説明したが、他の補色の関係(例えば、青緑色〜緑色の波長領域と橙色〜赤色の波長領域)を用いても良い。また、第1の発光素子の発光色と第2の発光素子の発光色において、それぞれ異なる補色の関係を適用することにより、非常にブロードな白色光を得ることができるため好ましい(詳細は下記実施形態2にて説明する)。
【0041】
以上で述べたような構成とすることで、可視光領域の多くをカバーでき、高効率な白色光を容易に得ることができる。次に、以下では、発光色の組み合わせを考慮した構成例を挙げ、従来技術に対する利点を加えながら説明する。
【0042】
[実施形態1]
図2(a)に素子構成を示した。図2(a)は、基板200上に第1の発光素子210と第2の発光素子220が直列に積層された、本発明の発光素子の構成例である。第1の発光素子210は、第1の陽極211と第1の陰極213の間に第1の発光素子の発光層212を有する構造であり、また、第2の発光素子220は、第2の陽極221と第2の陰極223の間に第2の発光素子の発光層222を有する構造である。
【0043】
ここで、第1の発光素子の発光層212は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1の発光層212−1と、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2の発光層212−2とで構成されている。また、第2の発光素子の発光層222は橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す。なお、第1の発光層212−1と第2の発光層212−2は逆の積層順であっても良い。
【0044】
このような発光素子に対し、第1の陽極211側をプラスに、第2の陰極223側をマイナスにバイアスを印加すると、第1の発光230と第2の発光240が得られる。第1の発光230は、第1の発光層212−1および第2の発光層212−2の両方からの発光を合わせたものであるので、図2(b)に示す通り、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1の発光素子は2波長型の白色または白に近い発光色(青みがかった白、黄みがかった白等)を示すものである。また、第2の発光240は、図2(b)に示す通り、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す。
【0045】
したがって、本実施形態1における本発明の発光素子は、第1の発光230および第2の発光240が重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする発光が得られる。
【0046】
第1の発光素子は、従来でもよく用いられる補色の関係を用いた2波長型白色発光素子と同様の構成であり、高輝度かつ素子寿命の良好な白色または白に近い発光色の発光素子を達成できるが、赤色の波長領域のスペクトルが貧弱であり、カラーフィルターを用いるフルカラーディスプレイには適さない。しかしながら、本実施形態1のような構成であれば、その課題を十分に克服できることがわかる。
【0047】
また、例えば、第1の発光層212−1(青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す)の発光輝度が、経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、スペクトル全体に対する第1の発光層212−1の寄与は1/3程度であるため、色度のずれは比較的小さくて済むという利点もある。もし従来の2波長型白色発光素子のように、第1の発光素子210のみで構成される発光素子であれば、第1の発光層212−1の輝度変化は色度に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0048】
また、青色〜青緑色の波長領域の発光を示す発光素子と、黄色〜橙色の波長領域の発光を示す発光素子と、橙色〜赤色の波長領域の発光を示す発光素子と、3つの発光素子を直列に積層させても本実施形態1と同様な発光スペクトルを得ることはできるが、その場合の駆動電圧は2つの素子を直列に積層した本実施形態1の発光素子に比べ、概ね1.5倍以上になってしまう。
【0049】
なお、上述の説明では、第1の発光素子210が2つの発光層(212−1と212−2)を有するために2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、第2の発光素子220はそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示す場合を例に説明したが、第2の発光素子220が前記第1の発光スペクトルを示す構成であっても良い。すなわち、第2の発光素子220が2つの発光層を有するために2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、第1の発光素子210がそれと異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示す構成であっても良い。また、図2(a)では第1の陽極211側に基板200が設置されている構成としたが、逆に第2の陰極223側に設置されている構成であっても良い。さらに、図2(a)では第1の陽極211側から発光を取り出す構成としているが、第2の陰極223側から発光を取り出す構成や、その両方から発光を取り出す構成であっても良い。
【0050】
[実施形態2]
図3(a)に素子構成を示した。図3(a)は、基板300上に第1の発光素子310と第2の発光素子320が直列に積層された、本発明の発光素子の構成例である。第1の発光素子310は、第1の陽極311と第1の陰極313の間に第1の発光素子の発光層312を有する構造であり、また、第2の発光素子320は、第2の陽極321と第2の陰極323の間に第2の発光素子の発光層322を有する構造である。
【0051】
ここで、第1の発光素子の発光層312は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1の発光層312−1と、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2の発光層312−2とで構成されている。また、第2の発光素子の発光層222は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第3の発光層322−1と、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第4の発光層322−2とで構成されている。なお、第1の発光層312−1と第2の発光層312−2は逆の積層順であっても良い。また、第3の発光層322−1と第4の発光層322−2は逆の積層順であっても良い。
【0052】
このような発光素子に対し、第1の陽極311側をプラスに、第2の陰極323側をマイナスにバイアスを印加すると、第1の発光330と第2の発光340が得られる。第1の発光330は、第1の発光層312−1および第2の発光層312−2の両方からの発光を合わせたものであるので、図3(b)に示す通り、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1の発光素子は2波長型の白色または白色に近い色の発光を示すものである。また、第2の発光340は、第3の発光層322−1および第4の発光層322−2の両方からの発光を合わせたものであるので、図3(b)に示す通り、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2の発光素子は、第1の発光素子とは異なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を示すものである。
【0053】
したがって、本実施形態2における本発明の発光素子は、第1の発光330および第2の発光340が重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする発光が得られる。
【0054】
第1の発光素子310および第2の発光素子320はいずれも、従来でもよく用いられる補色の関係を用いた2波長型白色発光素子と同様の構成であり、高輝度かつ素子寿命の良好な白色または白色に近い色の発光素子を達成できるが、第1の発光素子310は主として青緑色〜緑色(特にエメラルドグリーン)の波長領域および橙色〜赤色の波長領域のスペクトルが貧弱であり、カラーフィルターを用いるフルカラーディスプレイには適さない。また、エメラルドグリーンの波長領域のスペクトルが小さく、色の鮮やかさにも欠ける。しかしながら、本実施形態1のような構成であれば、積層した第2の発光素子320の発光スペクトルによりその欠点を補完でき、課題を十分に克服できることがわかる。
【0055】
また、例えば、第1の発光層312−1(青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す)の発光輝度が、経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、スペクトル全体に対する第1の発光層312−1の寄与は1/4程度であるため、色度のずれは比較的小さくて済むという利点もある。もし従来の2波長型白色発光素子のように、第1の発光素子310のみで構成される発光素子であれば、第1の発光層312−1の輝度変化は色度に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0056】
また、青色〜青緑色の波長領域の発光を示す発光素子と、青緑色〜緑色の波長領域の発光を示す発光素子と、黄色〜橙色の波長領域の発光を示す発光素子と、橙色〜赤色の波長領域の発光を示す発光素子と、4つの発光素子を直列に積層させても本実施形態2と同様な発光スペクトルを得ることはできるが、その場合の駆動電圧は2つの素子を直列に積層した本実施形態2の発光素子に比べ、概ね2倍以上にもなってしまう。
【0057】
なお、上述の説明では、第1の発光素子310が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示し、第2の発光素子320は青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示す場合を例に説明したが、それぞれ逆の関係であっても良い。すなわち、第2の発光素子320が青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示し、第1の発光素子310が青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有するスペクトルを示す構成であっても良い。また、図3(a)では第1の陽極311側に基板300が設置されている構成としたが、逆に第2の陰極323側に設置されている構成であっても良い。さらに、図3(a)では第1の陽極311側から発光を取り出す構成としているが、第2の陰極323側から発光を取り出す構成や、その両方から発光を取り出す構成であっても良い。
【0058】
[実施形態3]
次に、以下では、本発明の発光素子の構成、特に図1(a)における第1の発光素子110と第2の発光素子120に関し、用いることのできる材料や素子構造を説明する。本発明の発光素子は、少なくとも図1(a)に示した構成であればよいが、第1の陽極111と第1の発光素子の発光層112との間、および第2の陽極121と第2の発光素子の発光層122との間には、ホール注入層および/またはホール輸送層を挿入していても良い。また、第1の陰極113と第1の発光素子の発光層112との間、および第2の陰極123と第2の発光素子の発光層122との間には、電子注入層および/または電子輸送層を挿入していても良い。
【0059】
なお、ホール注入層は陽極からホールを受け取る機能を示す層であり、ホール輸送層は発光層にホールを受け渡す機能を示す層である。また、電子注入層は陰極から電子を受け取る機能を示す層であり、電子輸送層は発光層に電子を受け渡す機能を示す層である。
【0060】
まず、それら各層に用いることのできる材料を具体的に例示する。ただし、本発明に適用できる材料は、これらに限定されるものではない。
【0061】
ホール注入層に用いることができるホール注入材料としては、フタロシアニン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(略称:H2−Pc)、銅フタロシアニン(略称:Cu−Pc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等を用いることができる。また、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)やポリアニリン(略称:PAni)などを用いることもできる。また、酸化モリブデン(MoOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化ニッケル(NiOx)などの無機半導体の薄膜や、酸化アルミニウム(Al23)などの無機絶縁体の超薄膜も有効である。また、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(4−(N,N−ジ−m−トリル)アミノ)フェニル−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系化合物も用いることができる。さらに、それら芳香族アミン系化合物に対してアクセプタ性を示す物質を芳香族アミン系化合物に添加してもよく、具体的にはVOPcにアクセプタである2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:F4−TCNQ)を添加したものや、α−NPDにアクセプタであるMoOxを添加したものを用いてもよい。
【0062】
ホール輸送層に用いることができるホール輸送材料としては、芳香族アミン系化合物が好適であり、上述したTDATA、MTDATA、TPD、α−NPD、DNTPDなどを用いることができる。
【0063】
電子輸送層に用いることができる電子輸送材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体が挙げられる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)などのトリアゾール誘導体、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](略称:TPBI)のようなイミダゾール誘導体、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などのフェナントロリン誘導体を用いることができる。
【0064】
電子注入層に用いることができる電子注入材料としては、上述したAlq3、Almq3、BeBq2、BAlq、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2、PBD、OXD−7、TAZ、p−EtTAZ、TPBI、BPhen、BCPなどの電子輸送材料を用いることができる。その他に、LiF、CsFなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、CaF2のようなアルカリ土類ハロゲン化物、Li2Oなどのアルカリ金属酸化物のような絶縁体の超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(略称:Li(acac))や8−キノリノラト−リチウム(略称:Liq)などのアルカリ金属錯体も有効である。また、これら電子注入材料に対してドナー性を示す物質を電子注入材料に添加してもよく、ドナーとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などを用いることができる。具体的にはBCPにドナーであるリチウムを添加したものや、Alq3にドナーであるリチウムを添加したものを用いることができる。
【0065】
次に、第1の発光素子110や第2の発光素子120における発光層(112や122)の構成を説明する。まず、発光性の有機化合物として用いることのできる材料を列挙するが、本発明においてはこれらに限定されず、いかなる発光性の有機化合物を用いても良い。
【0066】
例えば青色〜青緑色の発光は、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)、9,10−ジフェニルアントラセンなどをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)などのスチリルアリーレン誘導体や、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(略称:DNA)、9,10−ビス(2−ナフチル)−2−t−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)などのアントラセン誘導体から得ることができる。また、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)等のポリマーを用いても良い。
【0067】
例えば青緑色〜緑色の発光は、クマリン30、クマリン6などのクマリン系色素や、ビス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジナト]ピコリナトイリジウム(略称:FIrpic)、ビス(2−フェニルピリジナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(ppy)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、上述のペリレンやTBPを5wt%以上の高濃度で適当なホスト材料に分散させることによっても得られる。また、BAlq、Zn(BTZ)2、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)クロロガリウム(Ga(mq)2Cl)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
【0068】
例えば黄色〜橙色の発光は、ルブレン、4−(ジシアノメチレン)−2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−6−メチル−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エチニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)2(acac))、ビス(2−フェニルキノリナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(pq)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。ビス(8−キノキリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
【0069】
例えば橙色〜赤色の発光は、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:BisDCM)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[2−(ジュロリジン−9−イル)エチニル]−4H−ピランDCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エチニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)2(acac))、などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。ビス(8−キノキリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のポリマーを用いても良い。
【0070】
なお、上記の構成において、適当なホスト材料としては、発光性の有機化合物よりも発光色が短波長のものであるか、またはエネルギーギャップの大きいものであればよい。具体的には、上述した例に代表されるホール輸送材料や電子輸送材料から適宜選択することができる。また、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)などを使用しても良い。
【0071】
一方、本発明の発光素子における陽極(第1の陽極111および第2の陽極121)材料としては、仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましい。また、第1の陽極111から光を取り出す場合は、第1の陽極111はインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物等の透明導電性材料を用いればよい。また、第1の陽極111側を遮光性とするのであれば、第1の陽極111はTiN、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr等の単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を用いることができる。あるいは、Ti、Al等の反射性電極の上に上述した透明導電性材料を積層する方法でもよい。また、第2の陽極121は光透過性が必要であり、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電性材料の他、上述したホール輸送性の化合物(特に芳香族アミン系化合物)に対してアクセプタ性を示す物質をホール輸送性の化合物に添加した構成を用いても良い。具体的にはVOPcにアクセプタである2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:F4−TCNQ)を添加したものや、α−NPDにアクセプタであるMoOxを添加したものを第2の陽極121として用いてもよい。
【0072】
また、陰極(第1の陰極113および第2の陰極123)材料としては、仕事関数の小さい導電性材料を用いることが好ましく、具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属を用いて形成することもできる。また、LiF、CsF、CaF2、Li2O等の電子注入層を用いる場合は、アルミニウム等の通常の導電性薄膜を用いることができる。また、第2の陰極123側を光の取り出し方向とする場合は、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属を含む超薄膜と、透明導電膜(ITO、IZO、ZnO等)との積層構造を用いればよい。あるいは、上述した電子輸送材料に対してドナー性を示す物質(アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)を添加した構成を用い、その上に透明導電膜(ITO、IZO、ZnO等)を積層してもよい。また、第1の陰極113は光透過性が必要であり、上述した電子輸送材料に対してドナー性を示す物質(アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)を電子輸送材料に添加した構成を用いても良い。具体的にはBCPにドナーであるリチウムを添加したものや、Alq3にドナーであるリチウムを添加したものを用いることができる。
【0073】
なお、以上で述べた本発明の発光素子を作製するに当たっては、発光素子中の各層の積層法を限定されるものではない。積層が可能ならば、真空蒸着法やスピンコート法、インクジェット法、ディップコート法など、どの様な手法を選んでも良いものとする。
【0074】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0075】
本実施例では、本発明の発光素子の素子構造および作製方法について、図5を用いて具体的に説明する。
【0076】
まず、110nmの膜厚でインジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス基板500を用意する。成膜されたITOは、本実施例において第1の陽極511として作用する。
【0077】
次に、第1の陽極511が形成されたガラス基板500を、第1の陽極511が形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、真空蒸着法により、第1の陽極511上に膜厚が20nmとなるようにCuPcを成膜し、ホール注入層512を形成する。真空蒸着は、真空蒸着装置の内部に備えられた蒸発源にCuPcを入れ、抵抗加熱法により蒸発させることによって行う。なお、本実施例においては、ホール注入層512はホール輸送層としても機能する。
【0078】
次いで、ホール注入層512上に、第1の発光素子の発光層513を形成する。本実施例においては、第1の発光素子の発光層513は、第1の発光層513−1および第2の発光層513−2から構成されており、第1の発光層513−1と第2の発光層513−2とは互いに接している。
【0079】
第1の発光層513−1はα−NPDとペリレンとを含む構成であり、α−NPDとペリレンとをそれぞれ蒸発源として用いた共蒸着法にて形成する。この時、α−NPD中にペリレンが3質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は30nmとする。この第1の発光層513−1においては、ペリレンが青色〜青緑色の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0080】
また、第2の発光層513−2はDNAとDCM2とを含む構成であり、DNAとDCM2とをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、DNA中にDCM2が0.1質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は30nmとする。この第2の発光層513−2においては、DCM2が黄色〜橙色の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0081】
次に、第1の発光素子の発光層513上に、膜厚が10nmとなるようにBCPを成膜し、電子輸送層514を形成する。次いで、電子輸送層514上に、膜厚が20nmとなるようにAlq3を成膜し、電子注入層515を形成する。これらの成膜に関しても、ホール注入層512の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0082】
さらに、電子注入層515上に、第1の陰極516を形成する。第1の陰極516は、電子輸送性の化合物であるBCPと、それに対してドナー性を示す物質であるリチウムとを含む構成であり、BCPとリチウムとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、BCP中にリチウムが0.5質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。
【0083】
このようにして第1の発光素子510を形成した後、第2の発光素子520を直列に積層する。まず第2の陽極521は、MoOxを10nmの膜厚で成膜することにより形成する。成膜は、ホール注入層512の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0084】
次に、第2の陽極521上に、膜厚が50nmとなるようにα−NPDを成膜し、ホール注入層522を形成する。なお、本実施例においては、ホール注入層522はホール輸送層としても機能する。成膜は、ホール注入層512の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0085】
次いで、ホール注入層522上に、第2の発光素子の発光層523を形成する。第2の発光素子の発光層523はCBPとIr(btp)2(acac)とを含む構成であり、CBPとIr(btp)2(acac)とをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、CBP中にIr(btp)2(acac)が8質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は30nmとする。この第2の発光素子の発光層523においては、Ir(btp)2(acac)が、第1の発光素子の発光色とは異なる発光色を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0086】
次に、第2の発光素子の発光層523上に、膜厚が10nmとなるようにBCPを成膜し、電子輸送層524を形成する。次いで、電子輸送層524上に、膜厚が20nmとなるようにAlq3を成膜し、電子注入層525を形成する。これらの成膜に関しても、ホール注入層512の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0087】
さらに、電子注入層525上に、第2の陰極526を形成する。第2の陰極526は、電子輸送性の化合物であるBCPと、それに対してドナー性を示す物質であるリチウムとを含む構成であり、BCPとリチウムとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、BCP中にリチウムが0.5質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。さらにAlを150nmの膜厚で蒸着することにより、第2の陰極526とする。
【0088】
以上のようにして形成された第1の発光素子510は、青色〜青緑色の発光を示す第1の発光層と黄色〜橙色の発光を示す第2の発光層を有しているため、青色〜青緑色の波長領域と黄色〜橙色の波長領域の2箇所に発光スペクトルのピークを示す。また、第2の発光素子520は赤色の発光を示すため、第1の発光素子とは異なる位置にピークを有する発光スペクトルを示す。
【0089】
したがって、第1の発光素子510および第2の発光素子520を直列に積層した本実施例の発光素子は、第1の陽極511と第2の陰極526との間に電圧を印加することにより、青色〜青緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、そして赤色の波長領域を広範囲にカバーするブロードな白色発光が得られる。また、3つの発光色のうちいずれかの輝度が経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、スペクトルがブロードである影響で色度のずれは比較的小さい。
【実施例2】
【0090】
本実施例では、本発明の発光素子の素子構造および作製方法について、図6を用いて具体的に説明する。
【0091】
まず、110nmの膜厚でインジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス基板600を用意する。成膜されたITOは、本実施例において第1の陽極611として作用する。
【0092】
次に、第1の陽極611が形成されたガラス基板600を、第1の陽極611が形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、真空蒸着法により、第1の陽極611上に膜厚が20nmとなるようにDNTPDを成膜し、ホール注入層612を形成する。真空蒸着は、真空蒸着装置の内部に備えられた蒸発源にDNTPDを入れ、抵抗加熱法により蒸発させることによって行う。
【0093】
次いで、ホール注入層612上に、膜厚が20nmとなるようにα−NPDを成膜し、ホール輸送層613を形成する。成膜は、ホール注入層612の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0094】
次に、ホール輸送層613上に、第1の発光素子の発光層614を形成する。本実施例においては、第1の発光素子の発光層614は、第1の発光層614−1および第2の発光層614−2から構成されており、第1の発光層614−1と第2の発光層614−2とは互いに接している。
【0095】
第1の発光層614−1はα−NPDとTBPとを含む構成であり、α−NPDとTBPとをそれぞれ蒸発源として用いた共蒸着法にて形成する。この時、α−NPD中にTBPが1質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。この第1の発光層614−1においては、TBPが青色〜青緑色の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0096】
また、第2の発光層614−2はα−NPDとDCM2とを含む構成であり、α−NPDとDCM2とをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、α−NPD中にDCM2が1質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。この第2の発光層614−2においては、DCM2が黄色〜橙色の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0097】
次に、第1の発光素子の発光層614上に、膜厚が20nmとなるようにBAlqを成膜し、電子輸送層615を形成する。次いで、電子輸送層615上に、膜厚が30nmとなるようにAlq3を成膜し、電子注入層616を形成する。これらの成膜に関しても、ホール注入層612の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。
【0098】
さらに、電子注入層616上に、第1の陰極617を形成する。第1の陰極617は、電子輸送性の化合物であるBCPと、それに対してドナー性を示す物質であるリチウムとを含む構成であり、BCPとリチウムとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、BCP中にリチウムが0.5質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。
【0099】
このようにして第1の発光素子610を形成した後、第2の発光素子620を直列に積層する。まず第2の陽極621は、ホール輸送性の化合物であるα−NPDと、それに対してアクセプタ性を示す物質であるMoOxとを含む構成であり、α−NPDとMoOxとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、α−NPD中にMoOxが25質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は50nmとする。
【0100】
次に、第2の陽極621上に膜厚が25nmとなるようにα−NPDを成膜し、ホール注入層622を形成する。成膜は、ホール注入層612の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。なお、本実施例においては、ホール注入層622はホール輸送層としても機能する。
【0101】
次いで、ホール注入層622上に、第2の発光素子の発光層623を形成する。本実施例においては、第2の発光素子の発光層623は、第3の発光層623−1および第4の発光層623−2から構成されており、第3の発光層623−1と第4の発光層623−2とは互いに接している。
【0102】
第3の発光層623−1はα−NPDとBisDCMとを含む構成であり、α−NPDとBisDCMとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、α−NPD中にBisDCMが2質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は15nmとする。この第3の発光層623−1においては、BisDCMが橙色〜赤色(特に赤色)の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0103】
また、第4の発光層623−2は、20nmの膜厚でGa(mq)2Clを成膜することにより形成する。成膜は、ホール注入層622の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。この第4の発光層623−2においては、Ga(mq)2Clが青緑色〜緑色(特にエメラルドグリーン)の発光を示す発光性の有機化合物として機能する。
【0104】
次に、第2の発光素子の発光層623上に、膜厚が55nmとなるようにAlq3を成膜し、電子注入層624を形成する。成膜は、ホール注入層612の形成と同様に、真空蒸着法によって行う。なお、本実施例においては、電子注入層624は電子輸送層としても機能する。
【0105】
さらに、電子注入層624上に、第2の陰極625を形成する。第2の陰極625は、電子輸送性の化合物であるBCPと、それに対してドナー性を示す物質であるリチウムとを含む構成であり、BCPとリチウムとをそれぞれ蒸発源として備えた共蒸着法にて形成する。この時、BCP中にリチウムが0.5質量%の割合で含まれるように調節する。膜厚は10nmとする。さらにAlを150nmの膜厚で蒸着することにより、第2の陰極625とする。
【0106】
以上のようにして形成された第1の発光素子610は、青色〜青緑色の発光を示す第1の発光層と黄色〜橙色の発光を示す第2の発光層を有しているため、青色〜青緑色の波長領域と黄色〜橙色の波長領域の2箇所に発光スペクトルのピークを示す。また、第2の発光素子620は、青緑色〜緑色の発光を示す第3の発光層と橙色〜赤色の発光を示す第4の発光層を有しているため、青緑色〜緑色の波長領域と橙色〜赤色の波長領域の2箇所に発光スペクトルのピークを示す。
【0107】
したがって、第1の発光素子610および第2の発光素子620を直列に積層した本実施例の発光素子は、第1の陽極611と第2の陰極625との間に電圧を印加することにより、青色〜青緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、および青緑色〜緑色、橙色〜赤色の波長領域、すなわちほぼ可視光領域全般をカバーするブロードな白色発光が得られる。特に、第1の発光素子のみを使った白色では十分な輝度が得られないエメラルドグリーンと赤色の波長領域で、十分な輝度を達成できることが大きな利点である。また、4つの発光色のうちいずれかの輝度が経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、スペクトルがブロードである影響で色度のずれは比較的小さい。
【実施例3】
【0108】
本実施例では、本発明の発光素子を有する発光装置について図7を用いて説明する。なお、図7(A)は発光装置を示す上面図、図7(B)は図7(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された701は駆動回路部(ソース側駆動回路)、702は画素部、703は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、704は封止基板、705はシール材であり、シール材705で囲まれた内側である707は、空間になっている。
【0109】
なお、708はソース側駆動回路701及びゲート側駆動回路703に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)709からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0110】
次に、断面構造について図7(B)を用いて説明する。素子基板710上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路701と、画素部702が示されている。
【0111】
なお、ソース側駆動回路701はnチャネル型TFT723とpチャネル型TFT724とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成する回路は、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0112】
また、画素部702はスイッチング用TFT711と、電流制御用TFT712とそのドレインに電気的に接続された陽極713とを含む複数の画素により形成される。なお、陽極713の端部を覆って絶縁物714が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0113】
また、膜被覆性を良好なものとするため、絶縁物714の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物714の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物714の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物714として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化珪素、酸窒化珪素等、の両者を使用することができる。
【0114】
陽極713上には、本発明の発光素子715および陰極716がそれぞれ形成されている。ここで、陽極713に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、ITSO(indium tin silicon oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。また、陽極713をITO膜とし、陽極713と接続する電流制御用TFT712の配線を、窒化チタン、アルミニウムを主成分とする膜との積層構造、または窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極713を陽極として機能させることができる。また、陽極713は、本発明の発光素子715における第1の陽極と同一の物質で形成されていても良い。もしくは、陽極713は発光素子715の第1の陽極と一体化されていても良い。
【0115】
また、本発明の発光素子715は、図1で示したような第1の発光素子110と第2の発光素子120を積層した構成であり、具体的には実施形態、実施例1および実施例2の如き構成である。
【0116】
さらに、陰極716に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよいが、これらに限定されることはなく、適切な電子注入材料を選択することにより、多様な導電膜を適用することができる。なお、本発明の発光素子715から出た光を陰極716を透過させる場合には、陰極716として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、ITSO(indium tin silicon oxide)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In23―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いる手法が考えられる。また、陰極716は、本発明の発光素子715における第2の陰極と同一の物質で形成されていても良い。もしくは、陰極716は発光素子715の第2の陰極と一体化されていても良い。
【0117】
さらにシール材705で封止基板704を素子基板710と貼り合わせることにより、素子基板710、封止基板704、およびシール材705で囲まれた空間707に発光素子715が備えられた構造になっている。なお、空間707には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材705で充填される構成も含むものとする。
【0118】
なお、シール材705にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板704に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0119】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0120】
なお、本実施例に示す発光装置は、実施の形態、実施例1及び実施例2に示した発光素子の構成を自由に組み合わせて実施することが可能である。さらに本実施例に示す発光装置は、必要に応じてカラーフィルター等の色度変換膜を用いてもよい。
【実施例4】
【0121】
本実施例では、本発明の発光素子を有する発光装置を用いて完成させた様々な電気器具について、図8を用いて説明する。
【0122】
本発明の発光素子を有する形成される発光装置を用いて作製された電気器具として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)、照明器具などが挙げられる。これらの電気器具の具体例を図8に示す。
【0123】
図8(A)は表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、スピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
【0124】
図8(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体8101、筐体8102、表示部8103、キーボード8104、外部接続ポート8105、ポインティングマウス8106等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部8103に用いることにより作製される。
【0125】
図8(C)はビデオカメラであり、本体8201、表示部8202、筐体8203、外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、バッテリー8207、音声入力部8208、操作キー8209、接眼部8210等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部8202に用いることにより作製される。
【0126】
図8(D)は卓上照明器具であり、照明部8301、傘8302、可変アーム8303、支柱8304、台8305、電源8306を含む。本発明の発光素子を用いて形成される発光装置を照明部8301に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0127】
ここで、図8(E)は携帯電話であり、本体8401、筐体8402、表示部8403、音声入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート8407、アンテナ8408等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部8403に用いることにより作製される。
【0128】
以上のようにして、本発明の発光素子を用いた電気器具や照明器具を得ることができる。本発明の発光素子を有する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気器具に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の発光素子の基本的概念を示す図。
【図2】本発明の発光素子の構成例を示す図。
【図3】本発明の発光素子の構成例を示す図。
【図4】本発明の発光素子の構成例を示す図。
【図5】実施例1における本発明の発光素子の構造を示す図。
【図6】実施例2における本発明の発光素子の構造を示す図。
【図7】本発明の発光素子を用いた発光装置の構造を示す図。
【図8】本発明の発光装置を用いた電気器具の例を示す図。
【符号の説明】
【0130】
100 基板
110 第1の発光素子
111 第1の陽極
112 発光層
113 第1の陰極
120 第2の発光素子
121 第2の陽極
122 発光層
123 第2の陰極
130 第1の発光
140 第2の発光
200 基板
210 第1の発光素子
211 第1の陽極
212 発光層
213 第1の陰極
220 第2の発光素子
221 第2の陽極
222 発光層
223 第2の陰極
230 第1の発光
240 第2の発光
300 基板
310 第1の発光素子
311 第1の陽極
312 発光層
313 第1の陰極
320 第2の発光素子
321 第2の陽極
322 発光層
323 第2の陰極
330 第1の発光
340 第2の発光
500 ガラス基板
510 第1の発光素子
511 第1の陽極
512 ホール注入層
513 発光層
514 電子輸送層
515 電子注入層
516 第1の陰極
520 第2の発光素子
521 第2の陽極
522 ホール注入層
523 発光層
524 電子輸送層
525 電子注入層
526 第2の陰極
600 ガラス基板
610 第1の発光素子
611 第1の陽極
612 ホール注入層
613 ホール輸送層
614 発光層
615 電子輸送層
616 電子注入層
617 第1の陰極
620 第2の発光素子
621 第2の陽極
622 ホール注入層
623 発光層
624 電子注入層
625 第2の陰極
701 ソース側駆動回路
702 画素部
703 ゲート側駆動回路
704 封止基板
705 シール材
707 空間
709 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
710 素子基板
711 スイッチング用TFT
712 電流制御用TFT
713 陽極
714 絶縁物
715 発光素子
716 陰極
723 nチャネル型TFT
724 pチャネル型TFT
8003 表示部
8004 スピーカー部
8101 本体
8102 筐体
8103 表示部
8105 外部接続ポート
8202 表示部
8203 筐体
8204 外部接続ポート
8205 リモコン受信部
8206 受像部
8207 バッテリー
8208 音声入力部
8401 本体
8402 筐体
8403 表示部
8404 音声入力部
8405 音声出力部
8406 操作キー
8407 外部接続ポート
8408 アンテナ
212−1 第1の発光層
212−2 第2の発光層
312−1 第1の発光層
312−2 第2の発光層
322−1 第3の発光層
322−2 第4の発光層
513−1 第1の発光層
513−2 第2の発光層
614−1 第1の発光層
614−2 第2の発光層
623−1 第3の発光層
623−2 第4の発光層
8001 筐体
8002 支持台
8005 ビデオ入力端子
8104 キーボード
8201 本体
8209 操作キー
8301 照明部
8302 傘
8303 可変アーム
8304 支柱
8305 台
8306 電源




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2陽極と第2陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、
前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、
前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、少なくとも2つのピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記2つのピークとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示すことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2の発光スペクトルが少なくとも2つのピークを有することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、
前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、
前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、補色の関係にある2種の発光色からなる第1の発光色を示し、他方は前記2種の発光色とは異なる第2の発光色を示し、前記第1の発光色と前記第2の発光色を合わせた発光色を示すことを特徴とする発光素子。
【請求項4】
前記第2の発光色は補色の関係にある2種の発光色からなり、前記第2の発光色の2種の発光色は前記第1の発光色における2種の発光色とは異なることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、
前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、
前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記第1の発光スペクトルとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示すことを特徴とする発光素子。
【請求項6】
前記第2の発光スペクトルが、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルであることを特徴とする請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
第1の陽極と第1の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第1の発光層を有する第1の発光素子と、第2の陽極と第2の陰極との間に発光性の有機化合物を含む第2の発光層を有する第2の発光素子とが直列に積層された発光素子であって、
前記第1の陰極と前記第2の陽極は接しており、
前記第1の発光素子または前記第2の発光素子のいずれか一方は、430nm〜480nmの波長領域および550nm〜600nmの波長領域の両方にピークを有する第1の発光スペクトルを示し、他方は前記第1の発光スペクトルのピークとは異なる位置にピークを有する第2の発光スペクトルを示し、前記第1の発光スペクトルと前記第2の発光スペクトルを合わせた発光スペクトルを示すことを特徴とする発光素子。
【請求項8】
前記第2の発光スペクトルが、480〜550nmの波長領域および600nm〜680nmの波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルであることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光素子において、前記第1の発光層は、第3の発光層と、前記第3の発光層とは異なる発光色を示す第4の発光層と、を有することを特徴とする発光素子。
【請求項10】
前記第3の発光層と前記第4の発光層が、互いに接して設けられていることを特徴とする請求項9に記載の発光素子。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光素子において、前記第2の発光層は、第5の発光層と、前記第5の発光層とは異なる発光色を示す第6の発光層と、を有することを特徴とする発光素子。
【請求項12】
前記第5の発光層と前記第6の発光層が、互いに接して設けられていることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の発光素子を用いたことを特徴とする発光装置。
【請求項14】
カラーフィルターをさらに有することを特徴とする請求項13に記載の発光装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−12793(P2006−12793A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146487(P2005−146487)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】