説明

発光素子の製造方法及び発光素子

【課題】製造コストを低減させることができ、歩留りを向上させることのできる発光素子の製造方法及び発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子1の製造方法は、n型半導体層と発光層25とp型半導体層とを含む半導体積層構造の一部を除去して、n型半導体層の表面の一部を露出させる工程と、p型半導体層上に拡散電極30を形成する工程と、拡散電極30上にp電極42を形成すると同時に露出したn型半導体層上にp電極42と同一材料からなるn電極40を形成する工程と、絶縁層50を形成する工程と、p電極42及びn電極40上の絶縁層50を除去して、p電極42上及びn電極40上に開口52を形成する工程と、p電極42上及びn電極40上の開口52にバリア層70を形成する工程と、p電極42上及びn電極40上に形成したバリア層70上にはんだ層80を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p電極とn電極とが同一材料からなる発光素子の製造方法及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体層上に形成された拡散電極と、当該拡散電極表面を被覆するパッシベーション膜であって一部に開口部を有するパッシベーション膜と、上面にはんだ層を有する接合電極とを備え、拡散電極表面には、パッシベーション膜の開口部の底部に開口部より大径で、かつ、その表面が拡散電極の表面より平坦なバッファ電極が形成され、バッファ電極へ接合電極が接続する半導体発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体発光素子は、拡散電極の表面にバッファ電極が形成され、このバッファ電極上においてパッシベーション膜にバッファ電極よりも小さな開口部が形成されており、バッファ電極の表面が平坦であるので、バッファ電極とパッシベーション膜との間の密着性を確保することができ、開口部をエッチングする際に、バッファ電極とパッシベーション膜との界面から横方向エッチング進行することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の半導体発光素子は、p電極とn電極とを異なる材料から形成していることから半導体発光素子の製造プロセスの工程が多く、また、各電極に用いる材料のそれぞれを個別に用意することを要すると共に、電極に接触するバリア層等と電極との間の密着性等の相性の良い材料を電極ごとに探索しなければならないので、製造コストの低減、及び半導体発光素子の歩留りの向上には限界がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、製造コストを低減させることができ、歩留りを向上させることのできる発光素子の製造方法及び発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造の一部をp型半導体層側から除去して、前記n型半導体層の表面を露出させる除去工程と、前記p型半導体層上に拡散電極を形成する拡散電極形成工程と、前記拡散電極上にp電極を形成すると同時に、前記除去工程にて露出した前記n型半導体層上に前記p電極と同一材料からなるn電極を形成する電極形成工程と、前記p電極が形成された前記拡散電極と、前記n電極が形成された前記n型半導体層の少なくとも一部とを覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層を除去して、前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層に開口をそれぞれ形成する開口形成工程と、前記p電極上及び前記n電極上の前記開口に同一材料からなるバリア層を同時に形成するバリア層形成工程と、前記p電極上及び前記n電極上に形成した前記バリア層上に同一材料からなるはんだ層を同時に形成するはんだ層形成工程と、を備える発光素子の製造方法が提供される。
【0008】
また、上記発光素子の製造方法において、前記n型半導体層がn型のGaNから形成されると共に、前記拡散電極が酸化物半導体から形成され、前記n電極は、Ni若しくはCrからなり前記n型半導体層に接触する接触層を含み、前記p電極は、Ni若しくはCrからなり前記拡散電極に接触する接触層を含むことが好ましい。
【0009】
また、上記発光素子の製造方法において、前記絶縁層形成工程は、前記p電極が形成された前記拡散電極と、前記n電極が形成された前記n型半導体層の少なくとも一部とを覆う第1の絶縁層を形成する第1の絶縁層形成工程と、前記p電極及び前記n電極の上方の少なくとも一部を除く前記第1の絶縁層上に反射層を形成する反射層形成工程と、前記反射層を覆う第2の絶縁層を形成する第2の絶縁層形成工程と、を有し、前記開口形成工程は、前記p電極上及び前記n電極上の前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層を除去して、前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層に前記開口をそれぞれ形成することが好ましい。
【0010】
また、上記発光素子の製造方法において、前記電極形成工程は、前記n型半導体層の表面に複数のn電極を形成することが好ましい。
【0011】
また、上記発光素子の製造方法において、前記電極形成工程は、前記拡散電極の表面に複数のp電極を形成することが好ましい。
【0012】
また、上記発光素子の製造方法において、前記p電極及び前記n電極は、前記接触層の上方にAu層を含むことが好ましい。
【0013】
また、上記発光素子の製造方法において、前記p電極及び前記n電極は、前記接触層と前記Au層との間に、中間層を有してもよい。
【0014】
また、本発明は上記目的を達成するため、n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造と、前記p型半導体層及び前記発光層の一部が除去されて露出した前記n型半導体層上に設けられ、前記n型半導体層にオーミック接触するn電極と、前記p型半導体層上に設けられ、前記p型半導体層にオーミック接触する拡散電極と、前記拡散電極上に設けられ、前記拡散電極にオーミック接触し、前記n電極と同一材料からなるp電極と、前記n電極上及び前記p電極上にそれぞれ設けられ、互いに同一材料からなるバリア層と、を備える発光素子が提供される。
【0015】
また、上記発光素子において、前記n型半導体層がn型のGaNから形成されると共に、前記拡散電極が酸化物半導体から形成され、前記n電極は、Ni若しくはCrからなり前記n型半導体層に接触する接触層を含み、前記p電極は、Ni若しくはCrからなり前記拡散電極に接触する接触層を含むことが好ましい。
【0016】
また、上記発光素子において、前記n型半導体層の表面に、複数の前記n電極が設けられることが好ましい。
【0017】
また、上記発光素子において、前記拡散電極の表面に、複数の前記p電極が設けられることが好ましい。
【0018】
また、上記発光素子において、前記p電極及び前記n電極は、前記接触層の上方にAu層を含むことが好ましい。
【0019】
また、上記発光素子において、前記p電極及び前記n電極は、前記接触層と前記Au層との間に、中間層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造コストを低減させることができ、歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の縦断面図であり、図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図2C】図2Cは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の縦断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の縦断面図であり、図4(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の縦断面の概要を示し、図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の平面の概要を示す。
【0023】
(発光素子1の構成)
本発明の第1の実施の形態に係る発光素子1は、図1(a)に示すように、一例として、C面(0001)を有するサファイア基板10と、サファイア基板10の上に設けられるバッファ層20と、バッファ層20の上に設けられるn側コンタクト層22と、n側コンタクト層22の上に設けられるn側クラッド層24と、n側クラッド層24の上に設けられる発光層25と、発光層25の上に設けられるp側クラッド層26と、p側クラッド層26の上に設けられるp側コンタクト層28とを含む半導体積層構造を備える。
【0024】
また、発光素子1は、p側コンタクト層28の上に設けられる拡散電極30と、拡散電極30上の一部の領域に設けられるp電極42と、p側コンタクト層28から少なくともn側コンタクト層22の表面までエッチングにより除去することにより露出したn側コンタクト層22の上に設けられるn電極40と、拡散電極30上のp電極42が配置される領域を露出させる開口52及びn側コンタクト層22上のn電極40が配置される領域を露出させる開口52を有するパッシベーション膜としての絶縁層50と、絶縁層50の内部に配置される反射層60と、絶縁層50の上面の一部を覆うと共にp電極42及びn電極40の上の開口のそれぞれに設けられるバリア層70と、バリア層70の上に設けられるはんだ層80とを備える。
【0025】
本実施形態においては、n電極40を構成する材料とp電極42を構成する材料とは同一である。また、n電極40及びp電極42を多層から形成する場合、それぞれの層構成は同一である。特に、n電極40を構成する材料及びp電極42を構成する材料は、n電極40に接触するバリア層70及びp電極42に接触するバリア層70との間で電気的接続、及び密着性が良好な材料を用いる。更に、n電極40上に設けられるバリア層70及びはんだ層80を構成する材料と、p電極42上に設けられるバリア層70及びはんだ層80を構成する材料とを同一にすることができる。なお、バリア層70とはんだ層80とを併せて接合電極という。
【0026】
ここで、バッファ層20と、n側コンタクト層22と、n側クラッド層24と、発光層25と、p側クラッド層26と、p側コンタクト層28とはそれぞれ、III族窒化物化合物半導体からなる層である。III族窒化物化合物半導体は、例えば、AlGaIn1−x−yN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の四元系のIII族窒化物化合物半導体を用いることができ、また、AlN、GaN、又はInN等の2元系のIII族窒化物化合物半導体、AlGa1−xN、AlIn1−xN、又はGaIn1−xN(ただし、0<x<1)の3元系のIII族窒化物化合物半導体を用いることもできる。
【0027】
本実施形態においては、バッファ層20は、AlNから形成される。そして、n側コンタクト層22とn側クラッド層24とは、所定量のn型ドーパント(例えば、Si)をそれぞれドーピングしたn−GaNからそれぞれ形成される。また、発光層25は、InGaN/GaN/AlGaNから形成される多重量子井戸構造を有する。更に、p側クラッド層26とp側コンタクト層28とは、所定量のp型ドーパント(例えば、Mg)をドーピングしたp−GaNからそれぞれ形成される。
【0028】
また、本実施形態に係る拡散電極30は酸化物半導体から形成され、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から形成される。そして、絶縁層50は、例えば、二酸化シリコン(SiO)から主として形成される。また、反射層60は、絶縁層50の内部に設けられ、発光層25が発する光を反射する金属材料、例えば、Alから形成される。絶縁層50全体の厚さは、例えば、0.1μm以上1μm以下であり、絶縁層50の内部に設けられる反射層60の厚さは、反射層60に入射した光を適切に反射させることを目的として、例えば、0.05μm以上0.5μm以下である。
【0029】
n電極40は、図1(a)に示すように、n側コンタクト層22上における、n側クラッド層24からp側コンタクト層28までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部分から離れた位置に、メサ部分の側面に沿って設けられる。また、n電極40は、バリア層70に接触する上面において、バリア層70と非接触の部分である外縁部40aが絶縁層50に接する。なお、図1(b)では、はんだ層80が表面に露出しているので、n電極40を目視で確認することはできない。また、p電極42は、メサ部分上に設けられる拡散電極30の上面の中央部分に、上面視にて矩形状に形成される。また、p電極42は、バリア層70に接触する上面において、バリア層70と非接触の部分である外縁部42aが絶縁層50に接する。そして、絶縁層50は、p電極42の形成領域を除いて拡散電極30及び上記メサ部分を覆い、n電極40の形成領域を除いてn側コンタクト層22を覆っている。
【0030】
また、n電極40及びp電極42は、Ni又はCrと、Auとを含む金属材料から形成される。特にn側コンタクト層22がn型のGaNから形成される場合、n電極40は、n側コンタクト層22の側から接触層としてのNi層とNi層の上方のAu層とを含んで形成することができ、又はn側コンタクト層22の側から接触層としてのCr層とCr層の上方のAu層とを含んで形成することができる。また、特に拡散電極30が酸化物半導体から形成される場合、p電極42は、拡散電極30の側から接触層としてのNi層とNi層の上方のAu層とを含んで形成することができ、又は拡散電極30の側から接触層としてのCr層とCr層の上方のAu層とを含んで形成することができる。n電極40及びp電極42の表面の平坦性を良好にすること、かつ、オーミック接触を維持すること(すなわち、良好なオーミックコンタクトを得ること)を目的として、Ni層若しくはCr層の厚さは、例えば、0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましく、Au層の厚さは0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
【0031】
また、n電極40は、接触層と、中間層と、Au層とを含んで形成することもできる。同様にしてp電極42は、拡散電極30の側から接触層と、中間層と、Au層とを含んで形成することができる。中間層は、接触層と、n側コンタクト層22若しくは拡散電極30とのオーミック接触を維持すること等を目的として、上方のAuが接触層のNi又はCrに拡散すること(すなわち、AuとNi又はCrとが合金化すること)を抑制することのできる材料、例えば、Ti、Pt等の金属材料を用いて形成することができる。中間層は、例えば、0.01μm以上0.1μm以下の厚さを有して形成することが好ましい。
【0032】
ここで、本実施形態においては、p電極42とバリア層70との接触部分は、平面視にてp電極42の中央側であり、p電極42と絶縁層50との接触部分は、平面視にてp電極42の外縁部42aである。更に、バリア層70は、絶縁層50における拡散電極30と反対側の表面(すなわち、図1(a)中の上面)に接触しており、絶縁層50の表面の所定の領域を覆っている。このバリア層70は、絶縁層50との接触部分に主としてTiから構成される金属層を有する。なお、n電極40及びp電極42の外縁部の表面に絶縁層50を接触させるべく、n電極40及びp電極42を構成する接触層(すなわち、Ni層又はCr層)、中間層、及びAu層の厚さは、上記のような範囲にすることが好ましい。
【0033】
また、図1(b)に示すように、発光素子1は、平面視にて発光素子1の中央付近に略矩形状に形成され、バリア層70を介してp電極42に電気的に接触するp側のはんだ層80を備える。また、発光素子1は、平面視にて略コの字状に形成され、バリア層70を介してn電極40に電気的に接触するn側のはんだ層80を備える。すなわち、n側のはんだ層80は、平面視にて発光素子1の一辺近傍に沿って設けられる辺部80aと、辺部80aの両端部分から当該一辺に垂直な方向に延びる端部80bとを有する。このようにn側のはんだ層80をコの字状に形成することにより、発光素子1をサブマウント等に搭載した場合において、p側のはんだ層80に電気的に接続するリード若しくは配線を外部に容易に引き出すことができる。はんだ層80は、共晶材料、例えば、AuSnから形成することができる。はんだ層80は、例えば、真空蒸着法(例えば、電子ビーム蒸着法、又は抵抗加熱蒸着法等)、スパッタ法、めっき法、スクリーン印刷法等により形成することができる。また、はんだ層80は、AuSn以外の共晶材料からなる共晶はんだ又はSnAgCu等の鉛フリーはんだから形成することもできる。
【0034】
具体的に、バリア層70は、絶縁層50とn電極40及びp電極42に接触する第1のバリア層と、第1のバリア層上に形成され、はんだ層80を構成する材料の拡散を抑制する第2のバリア層とを少なくとも含んで形成される。第1のバリア層は、n電極40を構成する材料及びp電極42を構成する材料に対してオーミック接触すると共に密着性が良好な材料から形成され、例えば、Tiから主として形成される。また、第2のバリア層は、はんだ層80を構成する材料がn電極40及びp電極42側に拡散することを抑制することのできる材料から形成され、例えば、Niから主として形成される。
【0035】
また、バリア層70は、第1のバリア層及び第2のバリア層を1つのペア層として、複数のペア層を含むこともできる。バリア層70が複数のペア層を含むことにより、はんだ層80を構成する材料の拡散を更に抑制できる。そして、バリア層70の第1のバリア層の膜厚は、例えば、150nm程度であり、第2のバリア層の膜厚は、例えば、100nm若しくは150nm程度である。更に、はんだ層80は、例えば、2μm以上20μm以下の厚さを有して形成される。
【0036】
以上のように構成された発光素子1は、青色領域の波長の光を発するフリップチップ型の発光ダイオード(LED)であり、例えば、発光素子1は、順電圧が2.9Vで、順電流が20mAの場合に、ピーク波長が455nmの光を発する。また、発光素子1は平面視にて略四角形状に形成される。発光素子1の平面寸法は、例えば、縦寸法及び横寸法がそれぞれ略350μmである。
【0037】
なお、サファイア基板10の上に設けられるバッファ層20からp側コンタクト層28までの各層は、例えば、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy : MBE)、ハライド気相エピタキシー法(Halide Vapor Phase Epitaxy : HVPE)等によって形成することができる。ここで、バッファ層20がAlNから形成されるものを例示したが、バッファ層20はGaNから形成することもできる。また、発光層30の量子井戸構造は、多重量子井戸構造でなく、単一量子井戸構造、歪量子井戸構造にすることもできる。
【0038】
また、絶縁層50は、酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)、五酸化タンタル(Ta)等の金属酸化物、若しくはポリイミド等の電気絶縁性を有する樹脂材料から形成することもできる。そして、反射層60は、Agから形成することもでき、Al又はAgを主成分として含む合金から形成することもできる。また、反射層60は、屈折率の異なる2つの材料の複数の層から形成される分布ブラッグ反射器(Di stributed Bragg Reflector : DBR)であってもよい。
【0039】
更に、発光素子1は、紫外領域、近紫外領域、又は緑色領域にピーク波長を有する光を発するLEDであってもよいが、LEDが発する光のピーク波長の領域はこれらに限定されない。なお、他の変形例においては、発光素子1の平面寸法はこれに限られない。例えば、発光素子1の平面寸法を縦寸法及び横寸法がそれぞれ1mmとなるよう設計することもでき、縦寸法と横寸法とが互いに異なるようにすることもできる。
【0040】
(発光素子1の製造工程)
図2Aから図2Cは、第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の一例を示す。具体的に、図2Aの(a)は、n側コンタクト層の表面を露出させるためのエッチングが施される前の縦断面図である。図2Aの(b)は、n側コンタクト層の表面を露出させるためのエッチングが施された後の縦断面図である。また、図2Aの(c)は、拡散電極にマスクが形成された状態の縦断面図である。更に、図2Aの(d)は、拡散電極をエッチングした後の縦断面図である。
【0041】
まず、サファイア基板10を準備して、このサファイア基板10の上に、n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造を形成する。具体的には、サファイア基板10の上に、バッファ層20と、n側コンタクト層22と、n側クラッド層24と、発光層25と、p側クラッド層26と、p側コンタクト層28とをこの順にエピタキシャル成長してエピタキシャル成長基板を形成する(半導体積層構造形成工程)。
【0042】
続いて、フォトレジストによるマスク200をエピタキシャル成長基板のp側コンタクト層28上にフォトリソグラフィー技術を用いて形成する(図2A(a))。次に、マスク200が形成された部分を除く一部の領域を、p側コンタクト層28からn側コンタクト層22の表面までエッチングした後、マスク200を除去する。これにより、n側クラッド層24からp側コンタクト層28までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部分が形成され、n側コンタクト層22の表面の一部が露出する(図2A(b)、除去工程)。なお、除去工程においては、マスク200が形成されていない部分のn側クラッド層24からp側コンタクト層28までを完全に除去することを目的として、n側コンタクト層22の一部までエッチングすることもできる。
【0043】
この後、n側コンタクト層22及びp側コンタクト層28の表面の全体に拡散電極30を形成する。すなわち、露出しているn側コンタクト層22の表面、メサ部分の側面、及びp側コンタクト層28の表面(すなわち、メサ部分の上面)を覆うように、拡散電極30を形成する。本実施形態において拡散電極30はITOであり、例えば、真空蒸着法を用いて形成される。なお、拡散電極30は、スパッタリング法、CVD法、又はゾルゲル法等により形成することもできる。そして、拡散電極30を残す領域にフォトレジストによるマスク202を形成する(図2A(c))。続いて、マスク202に被覆されていない拡散電極30をエッチングする。これにより、p側コンタクト層28の所定領域に拡散電極30が形成される(図2A(d)、拡散電極形成工程)。なお、まず、エピタキシャル成長基板の全面に拡散電極30を形成した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、拡散電極30の一部をエッチングして除去すると共に、p側コンタクト層28からn側コンタクト層22の表面までエッチングすることもできる。
【0044】
図2B(a)は、n電極及びp電極を形成した後の縦断面図である。また、図2B(b)は、第1の絶縁層を形成した後の縦断面図である。更に、図2B(c)は、反射層及び第2の絶縁層を形成した後の縦断面図である。
【0045】
まず、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、n電極40をn側コンタクト層22の表面の予め定められた一部の領域に形成すると同時に、p電極42を拡散電極30の表面の予め定められた一部の領域に形成する(図2B(a)、電極形成工程)。本実施形態において、n電極40を構成する材料と、p電極42を構成する材料とは同一材料である。すなわち、n電極40を形成するn側コンタクト層22の予め定められた領域と、p電極42を形成する拡散電極30の予め定められた領域とのそれぞれに開口を有するフォトレジストのマスクを形成した後、各開口に電極材料を同時に真空蒸着することにより、互いに同一材料からなるn電極40及びp電極42を形成する。なお、n電極40及びp電極42を構成する材料をn側コンタクト層22及び拡散電極30上に設けた後、n側コンタクト層22とn電極40との間、及び拡散電極30とp電極42との間のオーミック接触と密着性とを確保すべく、所定の温度、所定の雰囲気下で、所定の時間の熱処理を施すこともできる。
【0046】
続いて、n電極40及びp電極42を覆う絶縁層50を形成する。具体的には、n側コンタクト層22、n電極40、メサ部分、拡散電極30、及びp電極42を覆う第1の絶縁層50aを、プラズマCVD法により形成する(絶縁層形成工程における第1の絶縁層形成工程)。そして、第1の絶縁層50aの上であってn電極40及びp電極42の上方を除く所定の領域に、蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて反射層60を形成する(図2B(b)、絶縁層形成工程における反射層形成工程)。次に、図2B(b)の工程において形成された反射層60の上側と、反射層60が形成されていない部分の上側とに、プラズマCVD法を用いて第2の絶縁層50bを形成する(図2B(c)、絶縁層形成工程における第2の絶縁層形成工程)。これにより反射層60が第2の絶縁層50bにより被覆される。そして、第1の絶縁層50aと第2の絶縁層50bとから、本実施形態に係る絶縁層50が構成される。
【0047】
図2C(a)は、絶縁層の一部に開口を形成した後の縦断面図である。更に、図2C(b)は、バリア層及びはんだ層を形成した後の縦断面図である。
【0048】
続いて、絶縁層50におけるn電極40の上側部分の少なくとも一部とp電極42の上側部分の少なくとも一部とを、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて除去する。これにより、p電極42の上に絶縁層50の開口52が形成されると共に、n電極40の上に絶縁層50の開口52が形成される(図2C(a)、開口形成工程)。
【0049】
次に、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、それぞれの開口52の内側に、同一材料からなるバリア層70を同時に形成する(バリア層形成工程)。n電極40上の開口52に形成されたバリア層70はn電極40に電気的に接続すると共に、p電極42上の開口52に形成されたバリア層70はp電極42に電気的に接続する。続いて、n電極40上に形成したバリア層70の上、及びp電極42上に形成したバリア層70の上に同一材料からなるはんだ層80を同時に形成する(はんだ層形成工程)。これにより、図2C(b)に示す発光素子1が製造される。
【0050】
なお、n電極40、及びp電極42はそれぞれ、スパッタリング法により形成することもできる。また、絶縁層50は、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition : CVD)により形成することもできる。以上の工程を経て形成された発光素子1は、導電性材料の配線パターンが予め形成されたセラミック等から構成される基板の所定の位置に、フリップチップボンディングにより実装される。そして、基板に実装された発光素子1を、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はガラス等の封止材で一体として封止することにより、発光素子1を発光装置としてパッケージ化できる。
【0051】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1は、n電極40及びp電極42を同一材料で同時に形成するので、n電極40とp電極42とを異なる材料から別々に形成する場合に比べて、製造コストの削減、歩留りの向上を実現することができる。そして、n電極40及びp電極42を同一材料から同時に形成することから、n電極40及びp電極42とバリア層70との間の密着性、電気的な接続性についてn電極40及びp電極42のそれぞれごとに検討することを要さないので、バリア層70を構成する材料の選択の自由度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態に係る発光素子1は、n電極40及びp電極42の接触層をNi若しくはCrから形成することにより、同一材料からなる電極をITO等の酸化物半導体及びn型GaNの双方に対してオーミック接触させることができる。なお、発光素子1において接触層をNiから形成した場合、拡散電極30及びn側コンタクト層22への高い密着性が得られるという効果を奏し、Crから形成した場合には、拡散電極30及びn側コンタクト層22と接触層との接触抵抗を低くすることができるという効果を奏する。
【0053】
また、本実施の形態に係る発光素子1は、n電極40及びp電極42と反射層60とが分離した状態を保持しているので、反射層60に電流が流れることがなく、反射層60においてエレクトロマイグレーションが発生することを防止できる。これにより、電極の機能と反射層の機能とを兼用させた電極を設ける場合に比べて、反射層60を構成する材料のエレクトロマイグレーションを防止できることにより、反射層の反射率の低下、及び電極のオーミック特性の低下を防止でき、信頼性の高い発光素子1を提供することができる。
【0054】
[第2の実施の形態]
図3Aは、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の平面の概要を示し、図3Bは、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の縦断面の概要を示す。
【0055】
第2の実施の形態に係る発光素子2は、第1の実施の形態に係る発光素子1とは拡散電極30、n電極40、及びp電極42の構成が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0056】
第2の実施の形態において拡散電極30は、平面視にて櫛状に形成される。そして、拡散電極30における櫛の歯に対応する部分上に複数のp電極42が間隔をおいて形成されると共に、互いに平行な長尺の複数のバリア層70及びはんだ層80からなる接合電極が形成される。幅方向について外側の拡散電極30及びはんだ層80は、他の拡散電極30及びはんだ層80より短く形成される。
【0057】
n電極40は、櫛状の拡散電極30の歯の間、及び発光素子2の2つの角部(例えば、対角の位置ではない2つの角部)にそれぞれ形成され、n電極40上に設けられるバリア層70及びはんだ層80についても、発光素子1の2つの角部に形成される。そして、n電極40上のバリア層及びはんだ層80は、短く形成されたp電極42のバリア層70及びはんだ層80の先端と平面視にて対向している。
【0058】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係る発光素子2は、複数のn電極40を備えることにより発光素子2に供給される電流の発光素子2中における流れを分散させることができると共に、n電極40とn側コンタクト層22との接触面積を増加させることができる。これにより、第2の実施の形態のいては、発光素子2の駆動電圧を低減することができ、低い順方向電圧を安定的に保持することができる。
【0059】
[第3の実施の形態]
図4(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の縦断面の概要を示し、図4(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の平面の概要を示す。なお、図4(a)は、図4(b)のB−B線における断面の概要を示している。
【0060】
第3の実施の形態に係る発光素子3は、第1の実施の形態に係る発光素子1とはn電極40及びp電極42の構成が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0061】
発光素子3は、複数のn電極40と複数のp電極42とを備える。例えば、発光素子3は、平面視にてn側コンタクト層22上に複数のn電極40が間隔をおいて形成されており、拡散電極30上に複数のp電極42が間隔をおいて形成されている。換言すれば、複数のn電極40はn側コンタクト層22上に点在しており、複数のp電極42は拡散電極30上に点在している。そして、発光素子3は、順電圧が2.9Vで、順電流が20mAの場合に、ピーク波長が455nmの光を発する。また、発光素子3は平面視にて略四角形状に形成される。発光素子3の平面寸法は、例えば、縦寸法及び横寸法がそれぞれ略350μmである。
【0062】
また、発光素子3の製造工程においては、はんだ層形成工程において、点在している複数のp電極40の全て又は一部が、はんだ層80の形成により電気的に接続される。同様に、複数のn電極42の全て又は一部が、はんだ層80の形成により電気的に接続される。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0064】
1、2、3 発光素子
10 サファイア基板
20 バッファ層
22 n側コンタクト層
24 n側クラッド層
25 発光層
26 p側クラッド層
28 p側コンタクト層
30 拡散電極
40 n電極
40a 端部
42 p電極
42a 端部
50 絶縁層
50a 第1の絶縁層
50b 第2の絶縁層
52 開口
60 反射層
70 バリア層
80 はんだ層
80a 辺部
80b 端部
200、202 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造の一部をp型半導体層側から除去して、前記n型半導体層の表面を露出させる除去工程と、
前記p型半導体層上に拡散電極を形成する拡散電極形成工程と、
前記拡散電極上にp電極を形成すると同時に、前記除去工程にて露出した前記n型半導体層上に前記p電極と同一材料からなるn電極を形成する電極形成工程と、
前記p電極が形成された前記拡散電極と、前記n電極が形成された前記n型半導体層の少なくとも一部とを覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層を除去して、前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層に開口をそれぞれ形成する開口形成工程と、
前記p電極上及び前記n電極上の前記開口に同一材料からなるバリア層を同時に形成するバリア層形成工程と、
前記p電極上及び前記n電極上に形成した前記バリア層上に同一材料からなるはんだ層を同時に形成するはんだ層形成工程と、を備える発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記n型半導体層がn型のGaNから形成されると共に、前記拡散電極が酸化物半導体から形成され、
前記n電極は、Ni若しくはCrからなり前記n型半導体層に接触する接触層を含み、
前記p電極は、Ni若しくはCrからなり前記拡散電極に接触する接触層を含む請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層形成工程は、
前記p電極が形成された前記拡散電極と、前記n電極が形成された前記n型半導体層の少なくとも一部とを覆う第1の絶縁層を形成する第1の絶縁層形成工程と、
前記p電極及び前記n電極の上方の少なくとも一部を除く前記第1の絶縁層上に反射層を形成する反射層形成工程と、
前記反射層を覆う第2の絶縁層を形成する第2の絶縁層形成工程と、を有し、
前記開口形成工程は、前記p電極上及び前記n電極上の前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層を除去して、前記p電極上及び前記n電極上の前記絶縁層に前記開口をそれぞれ形成する請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極形成工程は、前記n型半導体層の表面に複数のn電極を形成する請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記電極形成工程は、前記拡散電極の表面に複数のp電極を形成する請求項4に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記p電極及び前記n電極は、前記接触層の上方にAu層を含む請求項5に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記p電極及び前記n電極は、前記接触層と前記Au層との間に、中間層を有する請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記電極形成工程は、前記拡散電極の表面に複数のp電極を形成する請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造と、
前記p型半導体層及び前記発光層の一部が除去されて露出した前記n型半導体層上に設けられ、前記n型半導体層にオーミック接触するn電極と、
前記p型半導体層上に設けられ、前記p型半導体層にオーミック接触する拡散電極と、
前記拡散電極上に設けられ、前記拡散電極にオーミック接触し、前記n電極と同一材料からなるp電極と、
前記n電極上及び前記p電極上にそれぞれ設けられ、互いに同一材料からなるバリア層と、を備える発光素子。
【請求項10】
前記n型半導体層がn型のGaNから形成されると共に、前記拡散電極が酸化物半導体から形成され、
前記n電極は、Ni若しくはCrからなり前記n型半導体層に接触する接触層を含み、
前記p電極は、Ni若しくはCrからなり前記拡散電極に接触する接触層を含む請求項9に記載の発光素子。
【請求項11】
前記n型半導体層の表面に、複数の前記n電極が設けられる請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記拡散電極の表面に、複数の前記p電極が設けられる請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記p電極及び前記n電極は、前記接触層の上方にAu層を含む請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
前記p電極及び前記n電極は、前記接触層と前記Au層との間に、中間層を有する請求項13に記載の発光素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−66053(P2011−66053A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213143(P2009−213143)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】