説明

発光素子用連結基板および発光装置連結基板

【課題】熱放散性に優れ、分割が容易な発光素子用連結基板並びに発光装置連結を提供する。
【解決手段】複数の発光素子用配線基板3が分割領域を挟んで縦横の並びに整列した発光素子用連結基板1において、前記発光素子用配線基板3が、焼結金属からなる平板状の金属基体5と、該金属基体5の上面に形成された発光素子37を搭載する搭載部7と、前記金属基体5を厚み方向に貫通するセラミックスからなる貫通絶縁体9と、前記金属基体5と電気的に絶縁されるとともに前記貫通絶縁体9の内側を厚み方向に貫通する貫通導体11と、該貫通導体11と電気的に接続されるとともに前記金属基体5と絶縁され前記搭載部7の周囲に設けられた配線13とを備え、前記分割領域21に前記発光素子用配線基板の基板領域の全周に沿って細長い空洞19を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発光ダイオード等の発光素子を搭載するための発光素子用連結基板おならびに発光装置連結基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDを用いた発光装置は非常に発光効率が高く、白熱電球などと比較すると発光に伴い発生する熱量が小さいために様々な用途に用いられてきたが、近年では、LED発光装置の高輝度化に伴い、大型液晶ディスプレイのバックライトや、各種インテリア照明など、より広い分野に展開されている。
【0003】
しかしながら、発光素子の輝度が向上するとともに、発光装置から発生する熱も増加している。発光素子の輝度低下を防止するためには、LED素子から熱を速やかに放散することが可能な高放熱性の発光素子用配線基板が必要となっている(例えば特許文献1、2を参照。)。
【0004】
このような要求に対し、本出願人は、焼結金属を主体とした発光素子用配線基板を提案した。このように焼結金属を主体とした発光素子用配線基板は放熱性を向上することができるとともに、立体的な配線回路を形成することができるため、放熱性に優れ、しかも小型の発光素子用配線基板を容易に提供することができる。
【0005】
ところで、従来、小型の基板を作製する場合には取扱い性や生産性を向上させるために、複数の基板が集合した連結基板に分割溝を設け、めっき処理や素子を実装するなどした後で、個片に分割することが行われている(例えば、特許文献3、4を参照。)。
【特許文献1】特許第3253265号公報
【特許文献2】特開2003−347600号公報
【特許文献3】特許第003330104号公報
【特許文献4】特公平7−77292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した金属を主体とする発光素子用配線基板は、特許文献3に記載されたセラミックスを主体とする発光素子用配線基板に比べ、延性が高いため、連結基板に分割溝を形成しても容易に分割しにくく、分割性の改善が望まれている。
【0007】
従って本発明は、焼結金属を主体とし、熱放散性に優れた発光素子用配線基板を容易に提供できる分割性に優れた発光素子用連結基板ならびに、この発光素子用連結基板に発光素子を搭載した発光装置連結基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光素子用連結基板は、複数の発光素子用配線基板が分割領域を挟んで縦横の並びに整列した発光素子用連結基板において、前記発光素子用配線基板が、焼結金属からなる平板状の金属基体と、該金属基体の上面に形成された発光素子を搭載する搭載部と、前記金属基体を厚み方向に貫通するセラミックスからなる貫通絶縁体と、前記金属基体と電気的に絶縁されるとともに前記貫通絶縁体の内側を厚み方向に貫通する貫通導体と、該貫通導体と電気的に接続されるとともに前記金属基体と絶縁され前記搭載部の周囲に設けられた配線とを備え、前記分割領域に前記発光素子用配線基板の基板領域の全周に沿って細長い空洞を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、前記金属基体に有底穴が設けられ、該有底穴の底面に前記搭載部が形成されていることが望ましい。
【0010】
そして、前記分割領域において、前記空洞が上下に重なって複数形成されていることが望ましい。
【0011】
そしてまた、前記分割領域の表面に分割溝が形成されていることが望ましい。
【0012】
本発明の発光装置連結基板は、以上説明した発光素子用連結基板の前記搭載部に発光素子が搭載されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光素子用配線基板は、基体を焼結金属で形成することにより、樹脂モールド基板やセラミック基板などよりも高い熱伝導率を有し、発光素子から発生する熱を基体全体から効率良く、速やかに系外へ放散することができ、発光素子が過剰に加熱されることを防止できる。そのため輝度低下防止あるいは、さらなる高輝度化が可能となる。しかも金属基体に、絶縁体を介して電気的に絶縁された配線を表面に形成し、更に前記金属基体に貫通して設ける事で、多層化が可能となり複雑な配線設計への対応や基板の小型化が可能となる。また、前記発光素子用配線基板の基板領域の全周に細長い空洞が形成された分割領域が形成されているため、本発明のようなセラミックに比べ延性の高い金属を用いた場合でも、特殊な装置を使うことなく容易に分割することができる。
【0014】
さらに、前記金属基体に有底穴が設けられ、該有底穴の底面に前記搭載部を形成することで、発光素子搭載部と前記配線とを取り囲むように金属からなる反射部を形成することになり、金属基体からだけでなく反射部からも発光素子が生じる熱を放散することができる。そして反射部によって発光素子を保護できるとともに、発光素子の周辺に蛍光体などを容易に配置することができる。また、反射部により発光素子が発する光を反射させて光の取り出し効率を増加させ、高輝度化を実現することができる。さらに、金属基体および反射部が焼結金属から成ることにより、金属基体と貫通絶縁体と貫通導体と配線と反射部とを同時焼成にて作製することができ、これによりコストを低減することができる。
【0015】
そして、前記分割領域において、前記空洞が上下に重なって複数形成することで、より分割を容易にし、分割時の金属基体の変形などを抑制し、歩留りを向上させることができる。
【0016】
そしてまた、前記分割領域の表面に分割溝が形成することで、分割部のバリを減らすことができるため、さらに歩留りを向上させることができる。
【0017】
以上説明した本発明の発光素子用連結基板に発光素子を搭載した本発明の発光装置連結基板によれば、発光素子からの発熱を速やかに装置外に放出することができ、かつ分割歩留まりの良好な発光装置連結基板となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(a)に示すように、本発明の発光素子用連結基板1は、複数個の発光素子用配線基板3が分割領域を挟んで縦横の並びに整列したものである。この発光素子用配線基板3は、例えば、図1(b)に示すように、焼結金属からなる平板状の金属基体5と、この金属基体5の上面5aに形成された、発光素子を搭載する搭載部7と、セラミックスからなり金属基体5を厚み方向に貫通する貫通絶縁体9と、金属基体5と電気的に絶縁されるとともに貫通絶縁体9を厚み方向に貫通する貫通導体11と、貫通導体11と電気的に接続されるとともに金属基体5と絶縁され搭載部7の周囲に設けられた配線13とを備える。
【0019】
また、発光素子用配線基板3の下面には、発光素子用配線基板3を外部配線基板に接続するための外部接続端子15が設けられている。さらに、発光素子用配線基板3の基板領域17の全周に細長い空洞19を設けることにより、分割領域21が形成されている。
【0020】
そして、本発明の発光素子用連結基板1においては、発光素子用配線基板3を構成する金属基体5、貫通絶縁体9、貫通導体11、配線13、および外部接続端子15が同時焼成されている。
【0021】
本発明の発光素子用連結基板1によれば、金属基体5の材料として焼結金属を用いるとともに、金属基体5を貫通するように貫通絶縁体9および貫通導体11を設けることが重要である。すなわち、金属基体1の材料として焼結金属を用いることにより、樹脂モールド基板やセラミック基板よりも高い放熱性を確保し、発光素子から発生する熱を発光素子用配線基板3全体から効率よく放出することができる。
【0022】
また、発光素子用配線基板3の基板領域17の全周に細長い空洞19を設けた分割領域21を形成することが重要である。空洞19を設けることにより、特殊な装置を使うことなくチョコレートブレイクによって発光素子用連結基板1から個々の発光素子用配線基板3へと容易に分割することができる。
【0023】
そしてまた、金属基体5と、貫通絶縁体9および貫通導体11を同時焼成することが重要である。これらを同時焼成することにより、発光素子用配線基板3の多層化、配線設計の多様化、小型化を低コストで実現することができる。
【0024】
空洞19の断面形状は、特に限定されるものではないが、光素子用連結基板1の主面側に角が向けられた三角形や菱形であることが望ましい。これにより、分割部に応力が集中しやすくなり、より分割が容易となる。
【0025】
そして、図2(a)、(b)に示すように、金属基体5に有底穴23を設け、この有底穴23の底面に発光素子搭載部7が形成されていることが望ましい。有底穴23の底面23aに前記搭載部7を形成することで、有底穴23の内壁面が発光素子搭載部7と配線13とを取り囲むように反射部25を形成することになり、金属基体5からだけでなく反射部25からも発光素子が生じる熱を放散することができる。また、反射部25によって発光素子を保護できるとともに、発光素子の周辺に蛍光体などを容易に配置することができる。そして、反射部25により発光素子が発する光を反射させて光の取り出し効率を増加させ、より輝度を高めることができる。さらに、反射部25は金属基体5、貫通絶縁体9、貫通導体11、および配線13と同時焼成にて作製することができるため、別途作製した金属反射部を接着剤等で金属基体に接続する場合よりも工程数を減らし、コストを低減することができる。
【0026】
さらに、図3に示すように、分割領域21において空洞19が上下に重なって複数形成されていることが望ましい。空洞19が上下に重なって形成されることにより、より分割を容易にし、分割時の金属基体5の変形を抑制し、歩留りを向上させることができる。
【0027】
そしてまた、図4(a)、(b)に示すように、分割領域21の表面に分割溝27を形成することが望ましい。分割領域21表面に分割溝27を形成することにより、より分割を容易にし、金属基体5表面に生じるバリを防ぐことができる。ここで、分割溝27の断面は、V字形状であることが望ましい。V字形状にすることにより、分割部に応力が集中し、より分割が容易となる。
【0028】
また、図5に示すように、金属基体5と貫通絶縁体9との境界は、クラックの発生や隙間の発生が起こりやすいことから、被覆絶縁層29で覆うことが望ましい。なお、この被覆絶縁層29は貫通導体11を露出させて配線13と接続させるため、例えばリング状に形成されている。この被覆絶縁層29は貫通絶縁体9との接合性を考慮すれば、貫通絶縁体9と同様の組成物で作製することが望ましい。
【0029】
また、前記金属基体5の発光素子搭載部7が形成された側の主面5aに金属めっき(図示せず)が施されていることが望ましい。また、反射部25にも金属めっき(図示せず)が施されていることが望ましい。これにより、発光素子から出た光が金属めっきによく反射され、発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。本発明では、金属めっきを施す面が焼結金属で形成されているため、樹脂モールド基板やセラミック基板のようにめっき形成部位への金属層の転写や印刷等を行う必要がなく、工程を簡略化することができる。
【0030】
この金属めっきは、反射率の点からAgめっきとすることが望ましく、安価である点ではNiメッキが望ましい。
【0031】
そして、前記金属基体5が、W、Mo、Cuのうち、少なくとも1種を主成分とすることが望ましい。WおよびMoは高融点金属であるため1300〜1600℃程度の高温焼成セラミックスと同時焼成することができる。さらに、熱膨張率が絶縁層を形成するセラミックスに近いため信頼性の高い発光素子用配線基板を作製することができる。また、Cuは熱伝導率が高く、特に放熱性に優れている。また、例えば、貫通絶縁体3としていわゆるガラスセラミックスを用いて、Cuの含有率を高めた場合には、1000℃程度の低い温度で発光素子用配線基板13を焼成することもできる。また、これらの金属を組み合わせることにより、所望の熱伝導率や熱膨張率をもつ金属基体1を形成することができる。特に放熱性の観点から、金属基体5の熱伝導率が、150W/m・K以上であることが望ましい。これにより、良好な放熱性を実現することができ、発光素子から生じる熱を速やかに放散することができる。
【0032】
また、貫通導体11や配線13が、W、Mo、Cu、Agのうち少なくとも1種を主成分とすることが望ましい。これにより電気抵抗の低い貫通導体11や配線13を形成できる為、優れた電気特性を有する発光素子用配線基板3を得ることができる。また、他にも多少高価ではあるが、金属基体5や貫通導体11および配線13としてAl、Ag、AuおよびPtなどの金属を用いることができるのは言うまでもない。
【0033】
また、貫通絶縁体9ならびに被覆絶縁層29が、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、カルシア、窒化アルミニウム、窒化珪素、そしてガラスセラミックスのうち、少なくとも1種を主成分とすることが望ましい。絶縁性の優れたこれらの材料を用いることにより、貫通絶縁体9ならびに被覆絶縁層29が薄くても貫通導体11や配線13が金属基体5と充分に絶縁をとることが可能となり、貫通絶縁体9ならびに被覆絶縁層29を高密度で形成する事ができ、さらに金属基体5との同時焼成も容易となる。
【0034】
また、金属基体5は多層であってもよく、反射部25には傾斜が設けられていても良い。
【0035】
そして、例えば、発光素子用配線基板3の内部で平面方向に回路が延設されていてもよい。この場合は発光素子用配線基板3の内部に平面方向に延設された内部配線は金属基体5と絶縁する必要があるため、貫通導体11との接続部を除いた周囲を内部絶縁層で取り囲むことが重要である。この内部絶縁層は貫通絶縁体9と同様の組成とすることが望ましい。また、内部配線は貫通金属体9や配線13と同様の組成とすることが望ましい。
【0036】
そして、例えば図6(a)、(b)、図7(a)、(b)に示すように、以上説明した本発明の発光素子用連結基板1を構成する個々の発光素子用配線基板3の発光素子搭載部7に、金属や樹脂からなる接続層(図示せず)を介して発光素子37を搭載し、この発光素子37の端子(図示せず)と、配線13とをボンディングワイヤ39で接続し、発光素子37、配線13、およびボンディングワイヤ39をモールド材などの透光性の樹脂41で覆うことで、本発明の発光装置連結基板43となる。
【0037】
次いで、この発光装置連結基板43を分割領域21にて分割することにより個々の発光装置45が得られ、発光素子37に給電することにより光を生じる。このとき、金属基体5の熱伝導率が高いため、発光素子37からの発熱を速やかに放出することができ、発熱による輝度低下を抑制できる。また、発光素子37を有底穴23内に搭載することにより、発光素子37を保護することができ、かつ、発光素子37の放射する光を金属基体5や反射部25に反射させて光の取り出し効率を高めることができるため、高効率の発光装置45を実現することができる。
【0038】
なお、図2に示した例では、発光素子37は、接続層により発光素子用配線基板3に固定され、電力の供給はボンディングワイヤ39によりなされているが、発光素子用配線基板3との接続形態は、フリップチップ接続であってもよいことはいうまでもない。
【0039】
また、発光素子37は、モールド材41により被覆されているが、モールド材41を用いずに、蓋体(図示せず)を用いて封止してもよく、また、モールド材41と蓋体とを併用してもよい。蓋体を用いる場合であって、発光素子37を用いる場合には蓋体は、ガラスなどの透光性の素材を用いることが望ましい。
【0040】
また、発光素子37を搭載する場合には、必要に応じて、このモールド材41に発光素子37が放射する光を波長変換するための蛍光体(図示せず)を添加してもよい。
【0041】
また、発光素子37の熱を金属基体5に効率よく伝達するという観点から、接続層として半田、インジウム、AuSn合金などの金属を用いることが望ましい。
【0042】
なお、本発明においてもヒートシンクを設けることで、更に放熱性が向上することはもちろんであり、例えば、ヒートシンクのような冷却装置を設けることを排除するものではない。
【0043】
次に、本発明における発光素子用連結基板1の製造方法について、図8〜図12を用いて具体的に説明する。
【0044】
まず以下に説明するように、焼成することによって金属基体5となる金属シート101と貫通絶縁体9となるセラミックグリーンシート103および貫通金属体11となる導体ペースト105を予め、作製する。また、必要に応じセラミックペースト107を作製する。
【0045】
金属シート101は、金属粉末と樹脂と溶剤とを所定の割合で混合して調整した金属スラリーから、従来周知のドクターブレード法などによりシート上に形成される。なお、金属スラリーには必要に応じてセラミック粉末を含有させてもよい。
【0046】
また、セラミックグリーンシート103も、セラミック粉末、樹脂および溶剤などから形成されるセラミックスラリーからドクターブレード法などによりシート状に形成される。
【0047】
金属シート101並びにセラミックグリーンシート103に用いるセラミック粉末、金属粉末の粒径は平均粒径で0.01〜10μm程度のものが好適に用いられ、特に、1〜5μmの範囲の粉末が取り扱いや焼結性に優れている。
【0048】
また、望ましくはW、Mo、Cu、Agのうち少なくとも1種を主成分とする導体ペースト105を作製する。金属粉末、樹脂および溶剤を所定の割合で混合し、溶剤を減圧過熱等によって除くことにより作製される。また、導体ペースト105は必要に応じてセラミック粉末を含有させてもよい。
【0049】
そして、セラミックペースト107は導体ペースト105と同様にセラミック粉末、樹脂および溶剤を混合し、溶剤を除くことによって作製される。
【0050】
導体ペースト105およびセラミックペースト107に用いる金属粉末、セラミック粉末の粒径は平均粒径で0.01〜10μm程度のものが好適に用いられ、特に、1〜5μmの範囲の粉末が取り扱いや焼結性に優れている。
【0051】
まず、図8(a)に示すように、セラミックグリーンシート103にマイクロドリル、レーザー等により直径50〜250μmのビアホール109を形成し、図8(b)に示すように、このビアホール109に導体ペースト105を印刷等により埋め込んで貫通導体成形体105aを形成し、導体埋め込みシート111を作製する。
【0052】
また、図8(c)に示すように、打ち抜き穴113を具備する金型115の上面に、金属シート101を配置し、図8(d)に示すように、押し金型117で金属シート101を打ち抜く。
【0053】
さらに図9(a)に示すように打ち抜いた金属シート101の上に、予めセラミックグリーンシート103に導体ペースト105を埋め込んでおいた導体埋め込みシート111を配置し、図9(b)に示すように、押し金型117で導体埋め込みシート111を打ち抜くと同時に、導体埋め込みシート111の一部を金属シート101に形成された穴に挿入した。金属シート101と導体埋め込みシート111の不要な部分を除去することにより、図9(c)に示すような焼成後に貫通導体11や貫通絶縁体9および金属基体5となる複合成形体119を作製することができる。なお、金属シート101とセラミックグリーンシート103は略同一厚みであることが望ましい。
【0054】
そして、例えば、図9(d)に示すように、この複合成形体119の表面に配線用導体ペースト121を印刷等により形成することで、焼成後に配線13となる配線成形体123を形成することができる。また、導体ペーストによって形成された配線成形体123は、例えば焼成後に外部接続端子15や内部配線31とすることもできることはいうまでもない。ここで、配線用導体ペースト121は、導体ペースト105と同じペーストを用いることもできるし、導体ペースト105と同様の方法で違う組成のペーストを別途作製してもよい。
【0055】
また、この配線成形体123は貫通絶縁体9と貫通導体11との境界にクラックや隙間が発生することを抑制するために、セラミックグリーンシート103と貫通導体成形体105aとの境界を覆うように形成することが望ましい。
【0056】
そして、例えば、図10(a)に示すように、配線成形体123を形成する前に、図9(c)で作製した複合成形体119の表面にセラミックペースト107を塗布して、焼成後に被覆絶縁層29となる被覆絶縁層成形体127を、貫通導体成形体105aを露出させるとともに金属シート101とセラミックグリーンシート103との境界を覆うように形成することが望ましい。これにより、金属基体5と貫通絶縁体9との境界にクラックや隙間が発生することを抑制することができる。なお、貫通導体成形体105aを露出させるためには、被覆絶縁層成形体127をリング状あるいはドーナツ状に形成すればよい。
【0057】
そしてさらに、図10(b)に示すように、貫通導体成形体105aと接続させ、金属シート101と接続しないように配線成形体123を形成することで、被覆絶縁層成形体127と配線成形体123とを備えた複合成形体119を作製することができる。
【0058】
なお、例えば配線成形体123や被覆絶縁層成形体127を備えた複数の複合成形体119を積層した場合には配線成形体123は焼成後に内部配線31となる場合があり、また、被覆絶縁層成形体127は焼成後に内部絶縁層33となる場合がある。
【0059】
次に、空洞19および分割溝27の形成方法について説明する。図11(a)に示すように以上のようにして作製した複合成形体119に、焼成後に基板領域21となる領域の全周に、金属刃によって分割領域溝125を設けたのち、図11(b)に示すように、分割領域溝125が内部に空洞を形成するようにして各複合成形体119を積層した。このとき、積層によって内層に設けられた分割領域溝125は、焼成後に空洞19となり、表層に設けられた分割領域溝125は、焼成後に分割溝27となる。このとき、例えば、鋭角の金属刃を用いた場合は、V字形状の分割領域溝125を形成することができ、回転刃を用いた場合は、矩形や底部に曲率を持った分割領域溝125を形成することができる。
【0060】
また、最表層となる第1層複合成形体119以外のすべての複合成形体119(第2層〜第n層)を積層し、この積層体の第2層から第(n−1)層まで貫通する分割領域溝125を形成した後に、第1層を積層することにより、焼成後に空洞19を形成することができる。さらに第1層の表と第n層の裏に焼成後に分割溝27となる分割領域溝125を形成することも可能である。以上のように分割領域溝125を形成する工程と積層工程を組み合わせることにより、所望の形状の空洞19や分割溝27を形成することが可能である。
【0061】
次に有底穴23の形成方法について説明する。まず、図12(a)に示すように、焼成後に有底穴23となるように、金属シート101に貫通孔129を設け、有穴成形体131を作製し、図12(b)に示すように、この有穴成形体131と図11(a)に示す複合成形体119とを積層し、焼成することで有底穴23を有する発光素子用配線基板3が複数連結してなる発光素子用連結基板1を作製することができる。
【0062】
なお、反射部25は、図1(a)に示すように金属基体に対して垂直に配設されていてもよいし、図2のように傾斜を有するように配設されてもよい。反射部25が垂直な場合は、通常の金型で打ち抜いて作製すればよく、また、反射部25が傾斜を有する場合は、例えばパンチの外径よりもダイスの内径が0.05〜1mm程度大きな打ち抜き金型を用いて金属シート101を打ち抜き加工して作製することができる。
【0063】
なお、貫通導体成形体105aは金属シート101に複数形成してもよい。
【0064】
そして、貫通絶縁体9や貫通導体11の形状は、四角や角柱形状でも良いし、その他円形あるいは円柱形状など所望の形状にすることが可能である。
【0065】
また、配線成形体123は、薄膜法により形成したり、金属箔を成形体の表面に転写するなどして形成することもできる。
【実施例】
【0066】
純度99%以上、平均粒径2.0μmのW粉末を70質量%と、純度99%以上、平均粒径2.0μmのCu粉末を30質量%で混合し、さらに成形用有機樹脂(バインダ)としてアクリル系バインダと、トルエンを溶媒として添加し、金属シートとなるスラリーを調整した。しかる後に、焼成後に厚みが0.2mmとなるようにドクターブレード法にて金属シートを作製した。
【0067】
また、純度99%以上、平均粒子径2μmのW粉末70質量%および純度99%以上、平均粒子径2μmのCu粉末30質量%にアクリル系バインダおよび溶媒としてアセトンを混合したのち、減圧過熱によりアセトンを取り除いて導体ペーストを作製した。
【0068】
また、原料粉末として純度99%以上、平均粒径が1.5μmのAl粉末を90質量%と、純度99%以上、平均粒子径1.3μmのMn粉末を5質量%と、純度99%以上、平均粒径1.0μmのSiO粉末を5質量%の割合で混合して、金属シートと同様に、アクリル系バインダとトルエンを混合し、スラリーを調整した。しかる後に、ドクターブレード法にてAlを主成分とし、金属シートと略同一厚みのセラミックグリーンシートを作製した。
【0069】
また、セラミックグリーンシートと同様の比率で、Al粉末とMn粉末とSiO粉末とを混合し、これにアクリル系バインダおよびアセトンを添加し、その後減圧過熱することにより溶剤を除き、セラミックペーストを作製した。
【0070】
これらの部材を用いて、0.2mm×5層からなる外形寸法50×100×1mmの本発明の発光素子用連結基板および本発明の範囲外の発光素子用連結基板を作製した。これらの発光素子用連結基板は、8行×18列、合計144個の発光素子用配線基板を含む。個々の発光素子用配線基板の構造は外形5mm×5mm×1mm、有底穴φ3.0mm×0.4mmである。
【0071】
上記のセラミックグリーンシートに対して、打ち抜き加工を施し、直径が200μmのビアホールを形成し、このビアホール内に、導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、導体埋め込みシートを作製した。
【0072】
ここで、焼成後に有底穴を形成する金属シートには、打抜き加工を施し、焼成後に直径3.0mmとなるような穴を設けた。
【0073】
そして、金属シートの所定箇所に貫通孔を形成し、金属シートにおける貫通孔形成部分を導体埋め込みシートから押圧することによって、導体埋め込みシートの一部を貫通孔内に嵌め込み、金属シートと導体埋め込みシートとを一体化し、複合成形体を形成した。
【0074】
そしてまた、セラミックペーストを用いてスクリーン印刷により複合成形体の主面側、および対向面側に、金属シートとセラミックグリーンシートとの境界を覆うように被覆絶縁層成形体をリング状に形成した。なお、このとき複合成形体に設けられたビアホールに充填された貫通導体となる導体ペーストが露出するようにした。さらに、導体ペーストを配線用導体ペーストとしても用い、貫通導体成形体を覆うように、被覆絶縁層成形体上に、導体ペーストを印刷塗布し、焼成後に配線および接続端子となるように配線成形体を形成した。
【0075】
以上のようにして得られた被覆絶縁層および配線成形体が形成された複合成形体に、次のように分割領域溝の形成と、積層を行い、発光素子用連結基板の成形体を作製した。
【0076】
本発明の発光素子用連結基板は、金属刃を用いて上から第1層から第4層の複合成形体には表面に、第5層の複合成形体には裏面に、焼成後の深さが0.1mmとなるような分割領域溝を設けた後、各層を位置あわせし、積層圧着して一体化した。
【0077】
また、本発明の範囲外の発光素子用連結基板は、第1層から第5層の複合成形体を積層した後、比較例1は、最表面と最裏面にそれぞれ焼成後の深さが0.4mmとなるような分割領域溝を設け、比較例2は、同様に最表面と最裏面にそれぞれ焼成後の深さが0.25mmとなるような分割領域溝を設けた。
【0078】
そして、以上のようにして得られた発光素子用連結基板の成形体を露点+25℃の窒素水素混合雰囲気にて脱脂を行った後、引き続き、露点+25℃の窒素水素混合雰囲気にて1300℃の最高温度で2時間焼成した。
【0079】
その後、金属基体、配線、接続端子並びに外部電極端子の表面にNi、AuおよびAgめっきを順次施し、図1に示すような本発明の発光素子用連結基板および比較例となる発光素子用連結基板を作製した。
【0080】
これらの発光素子用連結基板に接続層として半田を用いて出力1.5Wの発光素子である□1mmのLED素子を発光素子搭載部に実装し、ボンディングワイヤによりLED素子と配線とを接続し、さらに、LED素子と配線とをエポキシ樹脂からなるモールド材で覆い、発光装置連結基板を得た。
【0081】
得られた発光素子用連結基板について形状維持性と分割性の評価を行った。本発明の発光装置連結基板は、分割領域に沿って曲げ応力を負荷した結果、分割領域が破断し、容易に個片に分割することができた。
【0082】
一方、本発明の範囲外である比較例1は、分割性は良好であったが、製造工程途中の焼成前の段階で、分割領域での分離が見られた。
【0083】
また、比較例2は、製造工程中に分割領域で分離することはなかったが、分割領域に沿って曲げ応力を負荷しても分割できず、無理に分割すると、個々の発光素子用配線基板に変形が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)は、本発明の発光素子用連結基板の平面図であり、(b)は、本発明の発光素子用連結基板の断面図である。
【図2】(a)は、本発明の発光素子用連結基板の他の形態の平面図であり、(b)は、本発明の発光素子用連結基板の他の形態の断面図である。
【図3】、本発明の発光素子用連結基板の他の形態の断面図である。
【図4】a)は、本発明の発光素子用連結基板の他の形態の平面図であり、(b)は、本発明の発光素子用連結基板の他の形態の断面図である。
【図5】本発明の発光素子用連結基板の要部拡大断面図である。
【図6】(a)は、本発明の発光装置連結基板の平面図であり、(b)は、本発明の発光装置連結基板の断面図である。
【図7】(a)は、本発明の発光装置連結基板の他の形態の平面図であり、(b)は、本発明の発光装置連結基板の他の形態の断面図である。
【図8】本発明の発光素子用配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】本発明の発光素子用配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】本発明の発光素子用配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図11】本発明の発光素子用配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図12】本発明の発光素子用配線基板の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・発光素子用連結基板
3・・・発光素子用配線基板
5・・・金属基体
7・・・搭載部
9・・・貫通絶縁体
11・・・貫通導体
13・・・配線
15・・・外部接続端子
17・・・基板領域
19・・・空洞
21・・・分割領域
23・・・有底穴
25・・・反射部
27・・・分割溝
29・・・被覆絶縁層
37・・・発光素子
39・・・ボンディングワイヤ
41・・・モールド材
43・・・発光装置連結基板
45・・・発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子用配線基板が分割領域を挟んで縦横の並びに整列した発光素子用連結基板において、前記発光素子用配線基板が、焼結金属からなる平板状の金属基体と、該金属基体の上面に形成された発光素子を搭載する搭載部と、前記金属基体を厚み方向に貫通するセラミックスからなる貫通絶縁体と、前記金属基体と電気的に絶縁されるとともに前記貫通絶縁体の内側を厚み方向に貫通する貫通導体と、該貫通導体と電気的に接続されるとともに前記金属基体と絶縁され前記搭載部の周囲に設けられた配線とを備え、前記分割領域に前記発光素子用配線基板の基板領域の全周に沿って細長い空洞を設けたことを特徴とする発光素子用連結基板。
【請求項2】
前記金属基体に有底穴が設けられ、該有底穴の底面に前記搭載部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子用連結基板。
【請求項3】
前記分割領域において、前記空洞が上下に重なって複数形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子用連結基板。
【請求項4】
前記分割領域の表面に分割溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子用連結基板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の発光素子用連結基板の前記搭載部に発光素子が搭載されたことを特徴とする発光装置連結基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−135525(P2008−135525A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319955(P2006−319955)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】