説明

発光素子

【課題】出力を向上可能な発光素子及び発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子10において、p側電極体160は、電極層200と、絶縁体層210と、反射層220と、を備える。絶縁体層210は、電極層200上に形成され、電気的絶縁性を有するSiOによって構成されている。反射層220は、絶縁体層210上に形成され、発光層130から放出される出射光を反射するAlCuによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体を備える発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶テレビ用バックライト、照明器具、或いは光通信用デバイスなどの光源として、発光素子(例えば、発光ダイオードやレーザーダイオード)を備える発光装置が広く用いられている。
【0003】
このような発光装置の光量は、発光素子の出力だけでなく、発光素子から出射される光(以下、「出射光」という。)を外部に取り出す効率にも依存している。そのため、発光装置の光量を増大させるには、出射光の取り出し効率を向上させることが効果的である。
【0004】
そこで、特許文献1では、金属材料によって構成される光反射層によって、発光素子の表面に配置される電極層を被覆する手法が提案されている。この手法によれば、出射光のうち発光素子に向かって戻ってくる光の電極層による吸収を抑制することによって、出射光の取り出し効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−210900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発光素子では、光反射層が電極層と直接接触しているので、両者間に発生するエレクトロンマイグレーションによって、光反射層及び電極層が互いに損傷するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、光反射層及び電極層の損傷を抑制可能な発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光素子は、第1導電型半導体層と、第1導電型半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2導電型半導体層と、第2導電型半導体層上に配置される電極体と、を備える。電極体は、第2導電型半導体層上に形成され、金属材料によって構成される電極層と、電極層上に形成され、電気的絶縁性を有する材料によって構成される絶縁体層と、絶縁体層上に形成され、発光層から放出される光を反射する金属材料によって構成される反射層と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光反射層及び電極層の損傷を抑制可能な発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る発光装置1の構成を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る発光素子10の構成を示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線における断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図2のV−V線における断面図である。
【図6】実施形態に係る発光素子10の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】実施例に係る電極体における光反射率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(発光装置の構成)
発光装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る発光装置1の構成を示す断面図である。
【0013】
発光装置1は、発光素子10と、パッケージ20と、を備える。
発光素子10は、パッケージ20にフェイスアップ実装される。発光素子10は、パッケージ20を介して供給される電流によって発光する。発光素子10の構成については後述する。
【0014】
パッケージ20は、発光素子10を収容しており、発光素子10に電流を供給する。パッケージ20は、第1リード21、第2リード22、封止部材23、第1ボンディングワイヤ24、第2ボンディングワイヤ25及びモールド部26を有する。
【0015】
第1リード21は、凹部21aを有する。凹部21aの底面には、発光素子10が載置される。第1リード21は、第1ボンディングワイヤ24を介して発光素子10に接続される。第2リード22は、第1リード21に隣接する。第2リード22は、第2ボンディングワイヤ25を介して発光素子10に接続される。
【0016】
封止部材23は、凹部21aに充填される。封止部材23は、透光性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂)や硝子などによって構成される。封止部材23は、光散乱材23aを包含する。光散乱材23aは、例えば、Ti酸バリウム、酸化Ti、酸化アルミニウム、酸化珪素などによって構成される。第1ボンディングワイヤ24は、発光素子10と第1リード21とに接続される。第2ボンディングワイヤ25は、発光素子10と第2リード22とに接続される。モールド部26は、いわゆる砲弾形状に形成されており、第1リード21及び第2リード22を包み込む。モールド部26は、封止部材23と同様に、透光性樹脂や硝子などによって構成される。
【0017】
ここで、発光素子10から出射される光(以下、「出射光」という。)は、封止部材23及びモールド部26を通過して、発光装置1の外部に取り出される。この際、出射光の一部は、凹部21aの内周面や光散乱材23aに反射され、発光素子10に向かって戻ってくる。発光素子10に向かって戻ってくる光(以下、「戻り光」という。)の一部は、後述するp側電極体160及びn側電極体170(図2、図3参照)によって反射される。このように、本実施形態では、p側電極体160及びn側電極体170による戻り光の吸収を抑制することによって、出射光の取り出し効率の向上が図られている。
【0018】
(発光素子の構成)
次に、発光素子の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、実施形態に係る発光素子10の構成を示す平面図である。図3は、図2のIII-III線における断面図である。
【0019】
発光素子10は、成長基板110、n型半導体層120、発光層130、p型半導体層140、透光性導電膜150、一対のp側電極体160、一対のn側電極体170及び保護層180を備える。
【0020】
成長基板110は、n型半導体層120をエピタキシャル成長可能な格子整合性を有する材料によって構成される。このような材料としては、例えば、サファイアやスピネルなどの絶縁性材料や、炭化ケイ素、SiO2、ZnS、ZnO、Si、GaAs及びダイヤモンドなどの酸化物材料などが挙げられる。本実施形態に係る成長基板110は、サファイアによって構成されているものとする。
【0021】
n型半導体層120、発光層130及びp型半導体層140は、成長基板110上に順次積層されている。n型半導体層120、発光層130及びp型半導体層140は、窒化物半導体層(例えば、GaN、AlN、InN、或いはこれらの混晶であるIII-V族窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1))などによって構成される。n型半導体層120、発光層130及びp型半導体層140の結晶成長法としては、例えば、MOCVD法、MOVPE法、HVPE法、ハイドライドCVD法などが挙げられる。なお、発光層130は、n型半導体層120及びp型半導体層140から注入される電子及び正孔の再結合によって生成されるエネルギーを光として放出する。すなわち、発光素子10の出射光は、発光層130から放出される。
【0022】
透光性導電膜150は、p型半導体層140上に積層される。透光性導電膜150は、p型半導体層140の略全面(外縁を除く)を覆う。透光性導電膜150は、発光層130から放出される出射光を透過する材料によって構成される。このような材料としては、In、Zn、Sn、Gaのうち少なくとも1つの元素を含む酸化物(例えば、ITO、ZnO、In、SnOなど)が挙げられる。
【0023】
一対のp側電極体160は、透光性導電膜150上に形成される。各p側電極体160は、図2に示すように、p側パッド電極161と、p側補助電極162と、を有する。p側パッド電極161は、第1ボンディングワイヤ24を接続するための端子である。p側パッド電極161は、図3に示すように、第1ボンディングワイヤ24の先端を収容するp側凹部160aを有する。p側補助電極162は、第1ボンディングワイヤ24から供給される電流を透光性導電膜150全体に拡散する。なお、一対のp側電極体160は、p側補助電極163を共有している。p側補助電極162及びp側補助電極163の平面形状は、図2に示す形状には限られない。
【0024】
一対のn側電極体170は、n型半導体層120上に形成される。各n側電極体170は、図2に示すように、n側パッド電極171と、n側補助電極172と、を有する。n側パッド電極171は、第2ボンディングワイヤ25を接続するための端子である。n側パッド電極171は、図3に示すように、第2ボンディングワイヤ25の先端を収容するn側凹部170aを有する。n側補助電極172は、n型半導体層120全体から電流を収集する。ただし、n側補助電極172の平面形状は、図2に示す形状には限られない。
【0025】
ここで、発光素子10の上面視において、一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170それぞれの面積の和は、一般的に、発光素子10全体の面積の10%前後を占めている(図2参照)。一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170それぞれの面積の和を小さくすると発光素子10からの光の取り出し効率を向上することができる。一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170に遮られる光を低減することができるからである。一方、発光素子10から射出された光は光散乱材23aによって発光素子10側に戻り光がある。一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170によって戻り光が反射されるので、一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170の面積が大きいほど、出射光の取り出し効率の向上を図ることができる。p側電極体160及びn側電極体170の内部構造については後述する。
【0026】
保護層180は、発光素子10の最表面に形成される。保護層180は、p側凹部160aに繋がるp側開口180aと、n側凹部170aに繋がるn側開口180bと、を有する。p側開口180aには、第1ボンディングワイヤ24の先端が挿通される。n側開口180bには、第2ボンディングワイヤ25の先端が挿通される。保護層180は、電気的絶縁性を有する材料によって構成される。このような材料としては、例えばSiO、TiO、Al、ポリイミドなどが挙げられる。本実施形態に係る保護層180は、SiOによって構成されているものとする。
【0027】
(電極体の構成)
電極体の構成について、図面を参照しながら説明する。具体的には、p側電極体160を構成するp側パッド電極161及びp側補助電極162の構成について説明する。
【0028】
なお、n側パッド電極171については、p側パッド電極161と同様の層構成、材質を有するので説明を省略する。また、p側補助電極162及びn側補助電極172については、p側パッド電極163と同様の層構成、材質を有するので説明を省略する。
【0029】
〔p側パッド電極161の構成〕
図4は、図3の部分拡大図であり、p側パッド電極161の内部構造を示している。
p側パッド電極161は、電極層200と、絶縁体層210と、反射層220と、を備える。
【0030】
電極層200は、p型半導体層140上に形成される。電極層200は、導電性を有する金属材料によって構成される。具体的に、電極層200は、Ti層201、Rh層202、第1W(タングステン)層203、Au層204、第2W(タングステン)層205及びNi層206がp型半導体層140上に順次積層された構造を有する。
【0031】
Ti層201は、発光層130から放出される出射光のうち、p型半導体層140及び透光性導電膜150を通過してきた光(以下、「ダイレクト光」という。)を透過させる。Rh層202は、Ti層201を透過したダイレクト光をTi層201側に反射する。これにより、電極層200によるダイレクト光の吸収が抑制されている。第1W層203は、Rh層202とAu層204との間における材料拡散を抑制する。Au層204は、p側凹部160aの底面を構成し、第1ボンディングワイヤ24lと接続される。第2W層205は、Au層204とNi層206との間における材料拡散を抑制する。Ni層206は、Au層204に比べて絶縁体層210との高い密着性を有する。これにより、電極層200と絶縁体層210との密着性の向上が図られている。
【0032】
絶縁体層210は、電極層200上に形成される。絶縁体層210は、電気的絶縁性を有する材料によって構成されており、電極層200と反射層220とを電気的かつ物理的に離間させている。絶縁体層210を構成する材料としては、保護層180と同様に、例えばSiO、TiO、Al、ポリイミドなどが挙げられる。本実施形態に係る絶縁体層210は、保護層180と同様に、SiOによって構成されているものとする。そのため、絶縁体層210は、保護層180と一体的に形成されている。絶縁体層210の層厚は、構成材料に応じて適宜変更されうるが、30nm〜200nm程度に設定することができる。
【0033】
反射層220は、絶縁体層210上に形成される。反射層220は、発光層130から放出される出射光を反射する。具体的に、反射層220は、発光層130から放出される出射光のうち発光素子10に戻ってきた戻り光を、発光装置1の外部に向かけて反射する。このような反射層220は、発光層130から放出される出射光の波長(例えば、約300nm〜約800nm程度)に対応する光を反射可能な材料によって構成される。このような材料としては、Al、Rh、Ag、或いはこれらのうち少なくとも1つの元素を含む合金(例えば、AlCu、ASC(アルミシリコン銅)など)が挙げられる。本実施形形態に係る反射層220は、AlCu(Al:Cu=98:2)によって構成されているものとする。反射層220の層厚は、構成材料に応じて適宜変更されうるが、50nm〜200nm程度に設定することができる。
【0034】
〔p側補助電極163の構成〕
図5は、図2のV−V線における断面図であり、p側補助電極163の構成を示している。
【0035】
p側補助電極163は、ボンディングワイヤを挿入するための凹部が形成されない点において、p側パッド電極161と相違している。その他の点において、p側補助電極163は、p側パッド電極161と同様の層構成、材質を有するので、p側補助電極163の詳細な構成については説明を省略する。
【0036】
(発光素子の製造方法)
発光素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図6(a)〜図6(d)は、実施形態に係る発光素子10の製造方法を説明するための断面図である。
【0037】
図6(a)に示すように、まず、サファイアによって構成される成長基板110上に、例えばMOCVD法によってn型半導体層120、発光層130及びp型半導体層140を順次積層する。次に、発光層130及びp型半導体層140の一部をエッチングすることによって、n型半導体層120を露出させる。次に、p型半導体層140上に、例えばスパッタ法によってITOによって構成される透光性導電膜150を形成する。次に、エッチングによって露出されたn型半導体層120上及び透光性導電膜150上に電極層200、絶縁体層210及び反射層220を順次積層した後に、例えばリフトオフ法によってパターニングする。これによって、一対のp側電極体160及び一対のn側電極体170の概要が形成される。
【0038】
続いて、図6(b)に示すように、SiOによって構成される保護層180によって、積層体の上面全体を覆う。
続いて、図6(c)に示すように、保護層180上にフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜を形成した後、ウェットエッチング法によって絶縁体層210及び反射層220の一部を選択的に除去することによって、電極層200の一部を露出させる。その後、レジスト膜を剥離しておく。
【0039】
続いて、図6(d)に示すように、例えばArスパッタエッチング法によって電極層200に窪み200aを形成する。これによって、p側凹部160a及びn側凹部170aが形成される(図3参照)。
【0040】
(作用及び効果)
(1)本実施形態に係る発光素子10において、p側電極体160(「電極体」の一例であり、p側パッド電極161及びp側補助電極163を含む。)は、電極層200と、絶縁体層210と、反射層220と、を備える。絶縁体層210は、電極層200上に形成され、電気的絶縁性を有するSiOによって構成されている。反射層220は、絶縁体層210上に形成され、発光層130から放出される出射光を反射するAlCuによって構成される。
【0041】
従って、反射層220によって戻り光を反射することができるので、出射光の取り出し効率を向上させることができる。さらに、電極層200と反射層220との間に絶縁体層210が介挿されているので、電極層200と反射層220との間にエレクトロンマイグレーションが発生することを抑制できる。そのため、電極層200と反射層220との損傷を抑制することができる。
【0042】
(2)本実施形態において、絶縁体層210は、保護層180と同様に、SiOによって構成されている。
従って、p側電極体160と保護層180との密着性を向上させることができる。
【0043】
(3)本実施形態において、反射層220は、AlCu(すなわち、Alを含む合金)によって構成されている。
ここで、Alの硬度は、RhやRhを含む合金の硬度に比べて小さい。そのため、反射層220がRhやRhを含む合金によって構成される場合に比べて、p側凹部160aを容易に形成することができる。さらに、Alは、Agに比べて、他の金属材料との間にイオンマイグレーションを発生しにくい。そのため、反射層220がAgやAgを含む合金によって構成される場合に比べて、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0044】
なお、以上の効果は、p側電極体160に限らず、n側電極体170(「電極体」の一例であり、n側パッド電極171及びn側補助電極173を含む。)においても同様に得ることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0046】
(A)上記実施形態では、発光素子10は、成長基板110を備えることとしたが、これに限られるものではない。成長基板110は、半導体層を形成した後に除去されてもよい。
【0047】
(B)上記実施形態では、発光素子10は、保護層180を備えることとしたが、保護層180を備えていなくてもよい。
(C)上記実施形態では、p側電極体160及びn側電極体170のそれぞれが、絶縁体層210及び反射層220を備えることとしたが、いずれか一方のみが絶縁体層210及び反射層220を備えていればよい。
【0048】
(D)上記実施形態では、発光素子10が有する半導体構造として、n型半導体層120、発光層130及びp型半導体層140が積層された構造について説明したが、これに限られるものではない。発光素子10が有する半導体構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合等を有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構造を適用することができる。
【0049】
(E)上記実施形態では特に触れていないが、電極層200の形成後に、SiO層を全面に形成することによって、絶縁体層210と保護層180とを一体形成することができる。この場合、SiO層の形成後に、反射層220を積層すればよい。
【0050】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0051】
以下、本発明に係る発光素子の実施例について具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0052】
(実施例1)
以下のように、実施例1に係る発光素子を作製した。
まず、800μm×800μmサイズのサファイア基板上に、MOCVD法によってn型窒化物半導体層、窒化物半導体層(発光層)及びp型窒化物半導体層を順次積層した。
【0053】
次に、発光層及びp型窒化物半導体層の一部をエッチングすることによって、n型窒化物半導体層を露出させた。
次に、p型窒化物半導体層上に、スパッタ法によってITO層を形成した。
【0054】
次に、エッチングによって露出されたn型窒化物半導体層上及びITO層上にTi層、Rh層、W層、Au層、W層、Ni層、SiO層及び反射層(以下、「電極体」と総称する。)を順次積層した。なお、反射層の構成材料としては、Al:Cu=98:2を満たすAlCu材料を用いた。次に、反射層に対してアニール処理を施した。
【0055】
次に、リフトオフ法によって電極体の平面形状を図2に示す形状にパターニングした。
次に、積層体の全体をSiO膜によって覆った。
次に、フォトリソグラフィー法によってSiO膜をパターニングした後、ウェットエッチング法によってSiO層及びAlCu層の一部を選択的に除去することによって、Ni層の一部を露出させた。
【0056】
次に、Arスパッタエッチング法によってNi層、W層及びAu層をエッチングして、Au層を露出させた。
次に、露出されたAu層上にAu製ボンディングワイヤを接続した。
【0057】
(実施例2)
反射層の構成材料としてAl材料を用いて、実施例2に係る発光素子を作製した。それ以外の製法は、上述の実施例1に係る発光素子と同様とした。
【0058】
(比較例)
SiO層及び反射層を備えない電極体を形成することによって、比較例に係る発光素子を作製した。それ以外の製法は、上述の実施例1に係る発光素子と同様とした。
【0059】
(電極体における光反射率の測定)
実施例1、実施例2及び比較例それぞれに係る発光素子について、電極体表面における光反射率を測定した。具体的には、入射角5°、波長約300nm〜約800nmの光を照射して、各発光素子15個についての光反射率の平均値を算出した。
【0060】
その結果、図7に示すように、実施例1及び実施例2に係る発光素子では、比較例に係る発光素子に比べて極めて高い反射率を得ることができた。従って、Al又はAlを含む合金によって構成される反射層を設けることによって、電極体による出射光の吸収を抑制できることが確認された。
【0061】
(発光装置としての出力の測定)
実施例1及び比較例に係る発光素子を用いて図1に示す構成の発光装置を作製し、青色光を放出させた場合の光出力を測定した。
【0062】
その結果、実施例1に係る発光素子を用いた場合、比較例に係る発光素子を用いた場合に比べて、光出力を約1.8%向上させることができた。従って、Alを含む合金によって構成される反射層で戻り光の吸収を抑制することで、発光装置の出力を増大させられることが確認された。
【0063】
(発光装置としての光束及び効率の測定)
実施例1及び比較例に係る発光素子を用いて図1に示す構成の発光装置を作製し、白色光を放出させた場合の光束及び効率を測定した。
【0064】
その結果、実施例1に係る発光素子を用いた場合、比較例に係る発光素子を用いた場合に比べて、光束を約3.4%増大させられるとともに、変換効率を2.9%向上させることができた。従って、Alを含む合金によって構成される反射層で戻り光の吸収を抑制することで、発光装置の光束及び効率を向上させられることが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1…発光装置
10…発光素子
20…パッケージ
21…第1リード
21a…凹部
22…第2リード
23…封止部材
23a…光散乱材
24…第1ボンディングワイヤ
25…第2ボンディングワイヤ
26…モールド部
110…成長基板
120…n型半導体層
130…発光層
140…p型半導体層
150…透光性導電膜
160…一対のp側電極体
160a…p側凹部
161…p側パッド電極
162…p側補助電極
163…p側補助電極
170…n側電極体
170a…n側凹部
171…n側パッド電極
172…n側補助電極
180…保護層
180a…p側開口
180b…n側開口
200…電極層
201…Ti層
202…Rh層
203…第1W層
204…Au層
205…第2W層
206…Ni層
210…絶縁体層
220…反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層上に形成される発光層と、
前記発光層上に形成される第2導電型半導体層と、
前記第2導電型半導体層上に配置される電極体と、
を備え、
前記電極体は、
前記第2導電型半導体層上に形成され、金属材料によって構成される電極層と、
前記電極層上に形成され、電気的絶縁性を有する材料によって構成される絶縁体層と、
前記絶縁体層上に形成され、前記発光層から放出される光を反射する金属材料によって構成される反射層と、
を有する発光素子。
【請求項2】
前記電極体を覆い、電気的絶縁性を有する材料によって構成される保護層をさらに備える請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記絶縁体層と前記保護層とは、同一の材料によって構成される、
請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記絶縁体層と前記保護層とは、SiOによって構成される、
請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記反射層は、Al又はAlを含む合金によって構成される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記反射層は、AlとCuとの合金によって構成される、
請求項5に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−222196(P2012−222196A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87312(P2011−87312)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】