発光表示装置の製造方法、発光表示装置、及び発光ディスプレイ
【課題】光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法等を提供する。
【解決手段】発光表示装置の製造方法は、赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属2及び半透明金属8を配設可能な基板1上に、光透過性樹脂材料3,5を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、前記成膜された光透過性樹脂材料3,5のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層3,5を形成する光透過性樹脂層形成工程と、前記反応後の光透過性樹脂層3,5を現像し、光路長調整層3,5を形成する光路長調整層形成工程と、を含む。
【解決手段】発光表示装置の製造方法は、赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属2及び半透明金属8を配設可能な基板1上に、光透過性樹脂材料3,5を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、前記成膜された光透過性樹脂材料3,5のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層3,5を形成する光透過性樹脂層形成工程と、前記反応後の光透過性樹脂層3,5を現像し、光路長調整層3,5を形成する光路長調整層形成工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイが広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器及びインフラの発展により、パーソナル・コンピュータ並びにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。さらに、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへ、フラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスに、有機電界発光素子(有機EL素子)がある。有機EL素子は、電気信号に応じて発光し、かつ、発光物質として有機化合物を用いて構成される素子である。有機EL素子は、生来的に広視野角及び高コントラスト並びに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる素子として注目されている。
【0004】
有機電界発光素子を用いたフルカラー表示装置が種々提案されているが、例えば、フルカラー表現のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3基本色を得る手段として白色有機ELにカラーフィルターを組みあわせる方法があり、この種のフルカラー表示装置においては、更に、上部電極に半透明の陰極を採用し、光反射膜との間での多重干渉効果によって、特定の波長の光のみを有機EL素子の外部に取り出し、高い色再現性を実現するトップエミッション構成のものと、下部電極に半透過又は透明下部電極の下に誘電体多層膜ミラーを用いたボトムエミッションの構成とが検討されている。
【0005】
例えば、光反射材料からなる第1の電極、有機発光層を備えた有機層、光半透明反射層及び透明材料からなる第2の電極が順次積層され、有機層が共振部となるように構成された有機EL素子において、取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、以下の式を満たすように構成した有機EL素子が知られている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(Lは光学的距離(光路長)、λは取り出したい光の波長を示し、mは、整数を示し、Φは、位相シフトを示し、光学的距離Lが正の最小値となるように構成する)
この種の白色有機ELにカラーフィルターを組み合わせるフルカラー表示装置においては、ITO(Indium Tin Oxide)などの無機材料からなる陽極の厚さを変えることにより、各画素毎の光路長Lの長さを調整し、各色の光を取り出すようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、光路長調整層として、ITOなどの無機材料を用いる場合、発光表示装置の製造プロセスが複雑となり、生産コストが嵩むことに加え、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
例えば、以下に従来技術による光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを説明する。
先ず、基板1上に、赤、緑、青に対応する複数の画素に対応して、反射金属2を配する(図12参照)。
次いで、スパッタ法、蒸着法等により、反射金属2が配された基板上に対して、ITO膜10を成膜する(図13参照)。
次いで、ITO膜10上に硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を成膜する(図14参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素上のレジスト層20を選択的に露光し、樹脂を硬化させる(図15参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図16参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図17参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、一つの画素上に、反射金属2とITO膜10とが配された状態とする(図18参照)。
【0008】
次に、多段の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図19参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された画素領域においては、ITO膜10が重ねて蒸着され、他の画素上でのITO膜10との間で、光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図20参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、ITO膜10が重ねて蒸着された画素領域と、該画素領域に隣接する画素領域とに対して、光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図21参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図22参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図23参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、基板1上に、反射金属2と重ねて配されたITO膜10とを有する画素領域、及び、反射金属2とITO膜10とを有する画素領域を形成する(図24参照)。
【0009】
次に、他の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図25参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された2つの画素領域においては、異なる光路長差を有するように、ITO膜10が重ねて蒸着され、それぞれの画素上において、ITO膜10層の厚みによる光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図26参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、ITO膜10部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、各画素上のレジスト層20に光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図27参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図28参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図29参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離する。こうして、基板1上の各画素領域において、反射金属2上に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層が形成されることとなる(図30参照)。
【0010】
次に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層を有する状態で、各光路長調整層上に、有機発光層7と、半透過金属8とをこの順で積層し、発光表示装置400を製造する。
このような発光表示装置400においては、有機発光層7から出射された光が、異なる厚みで形成されたITO膜10の光路長d1、d2、d3に対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透過金属8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd1、d2、d3からなる半透過金属8と反射金属2との間で共振され、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置400から取り出すことを可能とされる。
【0011】
このように、光路長調整層を有する発光表示装置においては、青、緑、赤の3原色による高精細なカラー表示が可能となるが、前記光路長調整層の形成材料として、ITO層などの無機材料を用いる場合には、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が必要であり、また、これらの工程を、光路長差を形成するごとに行わなければならないため、製造プロセスが複雑となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−503093号公報
【特許文献2】特開2006−269329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、前記反応後の光透過性樹脂層を現像し、光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、を含むことを特徴とする発光表示装置の製造方法である。
<2> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料を気相成膜法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<3> 気相成膜法がフラッシュ蒸着法である前記<2>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<4> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をスプレーコート法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<5> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をインクジェット法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<6> 光透過性樹脂材料が光硬化性樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<7> 光硬化性樹脂がラジカル重合性モノマーである前記<6>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<8> ラジカル重合性モノマーがラジカル重合性官能基を2つ以上有する前記<7>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<9> ラジカル重合性モノマーがエチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである前記<7>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<10> エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーがアクリル酸及びメタクリル酸のいずれかである前記<9>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<11> 光透過性樹脂層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う前記<7>から<10>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<12> 光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m2以下である前記<7>から<11>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<13> 光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される前記<1>から<12>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<14> 光透過性樹脂が光溶解性樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<15> 赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置である。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される前記<15>に記載の発光表示装置である。
<17> 前記<15>から<16>のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイである。
<18> フレキシブルディスプレイとして用いられる前記<17>に記載の発光ディスプレイである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図2】図2は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図3】図3は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図4】図4は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図5】図5は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図6】図6は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図7】図7は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図8】図8は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図9】図9は、本発明の発光表示装置の一の構成例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の発光表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の発光表示装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【図12】図12は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図13】図13は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図14】図14は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図15】図15は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図16】図16は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図17】図17は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図18】図18は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図19】図19は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図20】図20は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(9)である。
【図21】図21は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(10)である。
【図22】図22は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(11)である。
【図23】図23は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(12)である。
【図24】図24は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(13)である。
【図25】図25は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(14)である。
【図26】図26は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(15)である。
【図27】図27は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(16)である。
【図28】図28は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(17)である。
【図29】図29は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(18)である。
【図30】図30は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(19)である。
【図31】図31は、従来例の発光表示装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発光表示装置の製造方法)
本発明の発光表示装置の製造方法は、光透過性樹脂材料成膜工程と、光透過性樹脂層形成工程と、光路長調整層形成工程とを含み、更に、発光表示装置を製造するために必要なその他の工程を含んでなる。
【0018】
<光透過性樹脂材料成膜工程>
前記光透過性樹脂材料成膜工程は、赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する工程としてなる。
【0019】
−光透過性樹脂材料−
前記光透過性樹脂材料としては、光透過性を有ものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光透過性樹脂層における硬化反応を生ずるもの(ネガ型)、光透過性樹脂層における溶解反応を生ずるもの(ポジ型)が挙げられる。
前記光透過性樹脂層における硬化反応を生ずるもの(ネガ型)としては、特に制限はなく、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(本明細書では、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を併せてアクリレート重合物ということがある)、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、ポリシロキサン、その他有機珪素化合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、光透過性樹脂層における溶解反応を生ずるもの(ポジ型:光溶解性樹脂)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポジ型レジストとして一般的に用いられる、フェノール系樹脂、アルカリ可溶性樹脂と感光物としてナフトキノンジアジド置換化合物とを含む組成品等が挙げられ、具体的には、「ノボラック系フェノール樹脂/ナフトキノンジアジド置換化合物」等のジアゾナフトキノン(DNQ)−ノボラック系樹脂、「クレゾール−ホルムアルデヒドよりなるノボラック系樹脂/トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル」等のメタパラクレゾールノボラック系樹脂などが挙げられる。
【0020】
−−光硬化性樹脂(ラジカル重合性モノマー)−−
前記光透過性樹脂としては、前記例示の化合物の中でも、光硬化性樹脂が好ましい。
前記光硬化性樹脂としては、特に制限はないが、少なくとも1つの下記一般式(1)及び下記一般式(2)のいずれかで表されるラジカル重合性モノマーがより好ましい。
これらのラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を2つ以上有することが好ましい。重合性官能基が2つ以上あると3次元的に架橋することができ、機械強度が向上する点で好ましい。
【0021】
一般式(1)
【化1】
(ただし、前記一般式(1)において、R7は、水素又はメチル基を表し、R8は、水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR7及びR8は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
一般式(2)
【化2】
(ただし、前記一般式(2)において、R9は、水素又はメチル基を表し、R10は、水素原子を表し、L2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR9及びR10は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
前記光硬化性樹脂としては、前記一般式(2)で表されるエチレン不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーからなるアクリレート重合体を主成分とするのが特に好ましい。ここで主成分とは、後述する光透過性樹脂層を構成する重合性モノマーのうち、含量が最も多いことをいい、80質量%以上であることをいう。
また、前記アクリレート重合体としては、下記一般式(3)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0024】
一般式(3)
【化3】
(ただし、前記一般式(3)において、Zは、下記一般式(a)、又は、二重結合性基を有する一般式(b)で表され、該下記一般式(a)又は(b)におけるR11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を表し、*は一般式(3)のカルボニル基と結合する位置を表し、Lは、n価の連結基を表す。nは、1〜6の整数を示す。nが2以上の場合において、各繰り返し単位におけるZは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つのZは、下記一般式(a)で表される。
【0025】
【化4】
【0026】
前記一般式(3)において、Lの炭素数は、3〜18が好ましく、4〜17がより好ましく、5〜16が更により好ましく、6〜15が特に好ましい。
nが2の場合、Lは、2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例としては、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及びこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えばポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基等)を挙げることができる。
これらの中で、前記アルキレン基が好ましい。
【0027】
また、前記一般式(3)において、Lは、置換基を有してもよく、Lを置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられる。
中でも、前記置換基としては、含酸素官能基を持たない基が好ましく、このような基としては、アルキル基が挙げられる。
即ち、nが2の場合、Lは、含酸素官能基を持たないアルキレン基が最も好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0028】
前記一般式(3)において、nが3の場合、Lは、3価の連結基を表すが、そのような3価の連結基の例として、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除いて得られる3価残基、又は、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除き、ここにアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、及びこれらを直列に結合した2価基を置換した3価残基を挙げることができる。このうち、アルキレン基から任意の水素原子を1個除いて得られる、含酸素官能基を含まない3価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0029】
前記一般式(3)において、nが4以上の場合、Lは、4価以上の連結基を表すが、そのような4価以上の連結基の例も、同様に挙げられる。好ましい例も同様に挙げられる。特に、アルキレン基から任意の水素原子を2個除いて得られる、含酸素官能基を含まない4価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0030】
また、前記ポリマーは、前記一般式(3)で表されない構造単位を有していても構わない。例えば、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーを共重合したときに形成される構造単位を有していてもよい。
前記ポリマーにおいて、前記一般式(3)で表されない構造単位は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(3)で表される構造単位を有さないポリマーとして、例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が挙げられる。
【0031】
以下において、前記一般式(2)で表されるラジカル重合性モノマーの具体例を示すが、本発明における前記光透過性樹脂は、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
−−酸性モノマー−−
前記光透過性樹脂材料としては、更に、酸性モノマーが含むものであってもよい。
前記酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。
前記酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。
前記酸性モノマーは、カルボン酸基又はリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基又はリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0038】
−−−リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)−−−
前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着がよくなる。
【0039】
一般式(P)
【化10】
(ただし、前記一般式(P)において、Z1は、Ac2−O−X2−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Z2はAc3−O−X3−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Ac1、Ac2及びAc3は、それぞれアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、X1、X2及びX3は、それぞれ2価の連結基を表す。
前記一般式(P)で表される化合物としては、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
【0040】
一般式(P−1)
【化11】
【0041】
一般式(P−2)
【化12】
【0042】
一般式(P−3)
【化13】
【0043】
前記一般式(P−1)〜(P−3)において、Ac1、Ac2、Ac3、X1、X2及びX3の定義は、前記一般式(P)における定義と同じである。前記一般式(P−1)及び(P−2)において、R1は、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、R2は、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X1、X2及びX3は、一般式(2)におけるL1と同様の基である。X1、X2及びX3としては、アルキレン基、アルキレンオキシカルボニルアルキレン基が好ましい。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。
【0044】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
前記アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、直鎖アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
【0045】
前記アリール基の炭素数としては、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、前記一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、前記一般式(P−1)で表される単官能モノマー、前記一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び前記一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、前記リン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0046】
以下に、酸性モノマーの具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。
【0047】
【化14】
【0048】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、耐熱性、ガスバリア性を有するガラス材料やバリアフィルムなどが好ましい。
具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び/又は線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
このような基板の樹脂材料としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0049】
前記基板の光線透過率としては、通常80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
前記光線透過率としては、JIS−K7105に記載された方法、即ち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
前記ガラス材料やバリアフィルムの厚みとしては、特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、10μm〜200μmが好ましい。
【0050】
−−反射金属及び半透明部材−−
前記反射金属は、有機発光層から出射される光を反射する作用を有する。
前記半透明部材は、有機発光層から出射される光を反射乃至透過させる作用を有する。
これら前記反射金属及び半透明部材は、有機発光層を間に有する状態で対向配置され、有機発光層から出射される光を共振する作用を有する。
前記半透明部材としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、半透明金属、半透明性の誘電体多層膜ミラー、及びこれらの組み合わせが好ましい。
前記半透明金属としては、特に制限はなく、後述する陽極を用いて構成することができる。
前記半透明性の誘電体多層膜ミラーとしては、特に制限はなく、例えば、SiO2、SiNの積層等で構成される誘電体多層膜からなるミラー、などが挙げられる。
前記反射金属としては、特に制限はなく、後述する陰極を用いて構成することができる。
【0051】
−成膜−
前記光透過性樹脂の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、気相成膜法、塗布成膜法などが挙げられるが、製造プロセスの簡易化の観点からは、気相成膜方法が好ましい。
【0052】
前記気相成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フラッシュ蒸着法、スプレーコート法などが好ましい。
前記塗布成膜法として、前記光透過性樹脂材料を溶剤に溶かし、スピンコート法などで成膜してもよいが、この場合、パネルの構造(例えば、基板上に配されるTFT回路素子等)の平坦性による影響を受け、膜厚の制御が困難な場合があり、所望の光路長差を得られないことがある。
一方、前記気相成膜方法によれば、パネルの構造の平坦性による影響を受けずに光透過性樹脂材料を成膜することができる。
【0053】
前記フラッシュ蒸着法による成膜条件としては、特に制限はなく、例えば、モノマーの加熱温度としては、100℃から200℃、また、真空度としては、1×10-2〜10Pa程度が好ましい。
【0054】
<光透過性樹脂層形成工程>
前記光透過性樹脂層形成工程は、前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する工程としてなる。
【0055】
−硬化反応−
前記光透過性樹脂を硬化させる反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
中でも、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行うことが好ましい。
【0056】
前記光重合において、照射する光としては、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。
前記照射エネルギーとしては、0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。
前記ラジカル重合性モノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを用いる場合、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。
このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
前記窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1,000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。
また、100Pa以下の減圧条件下で、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
フラッシュ蒸着法で形成した前記ラジカル重合性モノマー被膜を、減圧条件下、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。前記ラジカル重合性モノマーの重合は、前記モノマーの混合物を蒸着により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。
【0057】
前記ラジカル重合性モノマーの重合率としては、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更により好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは、モノマーの混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。前記重合率は、赤外線吸収法によって定量することができる。
【0058】
−−光重合開始剤−−
前記重合開始剤としては、光を照射したときにラジカルを発生する化合物であれば、特に制限はないが、気相成膜法が好ましい。特にフラッシュ蒸着法で成膜する場合は、融点が30℃以下である重合開始剤であるか、1気圧30℃で液状であるものが好ましい。ここで、融点とは、固体状態から液体状態に変化する温度をいう。また、液状とは、1気圧30℃において重合開始剤を入れた容器を傾けた時に流動性を示すことをいう。
前記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種併用することにより、液状となる光重合開始剤も好ましく用いることができる。
このような光重合開始剤は、実際に、有機層を真空蒸着する際に、液体状態となるため、少ない量の光重合開始剤で、前記ラジカル重合性モノマーを良好に硬化させることができる。
このように安定した光透過性樹脂層は、残存するラジカル重合性モノマー由来のガスが放出されにくくなり、隣接層へのダメージを低減させることができる。
本発明では、前記光透過性樹脂(後述する光路長調整層)における前記ラジカル残存重合性モノマーの量が、1×10−2g/m2以下であることが好ましく、1×10−4g/m2以下であることがより好ましい。
【0059】
前記光重合開始剤の分子量としては、170以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。このように分子量であると、前記光重合開始剤が揮発しにくくなり、さらに、安定に硬化した光透過性樹脂層が得られやすくなる。なお、前記光重合開始剤の分子量の上限としては、特に定めるものではないが、通常、1,000以下である。
【0060】
前記重合開始剤の添加量としては、前記光透過性樹脂層を形成する組成物としての前記光透過性樹脂材料において、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
前記気相成膜法により前記光透過性樹脂材料を成膜する場合には、該光透過性樹脂材料を溶剤に溶かして塗布し形成する場合よりも、前記光重合開始剤の添加量を少なくしても、前記ラジカル重合性モノマーを十分に反応させることができるので、光重合開始剤の添加量を減らすことができる。
また、前記光重合開始剤の添加量を減らすことにより、前記光透過性樹脂層(光路長調整層)に残存する前記光重合開始剤の量も少なくでき、より光重合開始剤由来のガスの発生を低減でき、隣接する層へのダメージを低減できる。
【0061】
前記光重合開始剤としては、特に制限はないが、気相成膜法を用いる場合、下記一般式(4)で表される化合物、及び下記一般式(5)で表される化合物のいずれかを含む化合物が好ましい。
【0062】
一般式(4)
【化17】
(ただし、前記一般式(4)において、R1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、カルボニル基、及びこれらの基が複数個結合した置換基のいずれかを表し、R2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は、0〜5の整数を表し、n1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR2は、同一であっても異なっていてもよい。)
ここで、R1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、及び炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基のいずれかが好ましく、R2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。R1が炭素数1〜18の置換アルキル基の場合は、カルボニル基に連結する炭素が、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されていることが好ましい。n1は、0〜3が好ましい。
このような化合物として例えば、ダロキュア1173(製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)等の市販品を採用できる。
【0063】
一般式(5)
【化18】
(ただし、前記一般式(5)において、R3は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基のいずれかを表し、R4は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2及びn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2及びn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR3は、同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、各繰り返し単位におけるR4は、同一でも異なっていてもよい。)
R3は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、R4は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。n2は、0〜3であることが好ましく、n3は、0〜3であることが好ましい。
このような化合物として、2−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、例えば、エザキュアTZT(製造元:ランベルティ)等の市販品を採用できる。
【0064】
<光路長調整層形成工程>
前記光路長調整層形成工程は、硬化反応により硬化された光透過性樹脂層を現像し、前記光路長調整層を形成する工程としてなる。
【0065】
−現像−
前記現像の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤を用いた超音波現像が挙げられる。
【0066】
−光路長調整層−
本発明の発光表示装置においては、赤、緑、青の少なくとも一つの画素領域において、前記光路長調整層が内部に導入され、共振構造を有してなる。
前記光路長調整層の厚みとしては、各副画素が所定の波長の光が効率良く共振し得る光学的距離(光路長)となるように調整される。
従って、共振する光学的距離は、光反射膜と光半透過反射膜との間に挟持される材料の屈折率とその組成、厚みによって決定されるので、光路長調整層によって決定される訳ではない。
一般に用いられる有機EL発光層の構成を斟酌すると、前記赤の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、30nm〜1,000nmが好ましく、150nm〜350nmがより好ましく、200nm〜250nmが特に好ましい。
前記緑の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、5nm〜800nmが好ましく、100nm〜250nmがより好ましく、150nm〜200nmが特に好ましい。
前記青の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、0nm〜600nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましく、100nm〜150nmが特に好ましい。
【0067】
前記光路長調整層は、前記基板上に配される前記反射金属又は前記半透明部材の上面に直接配されてよいが、光路長調整層を平坦に配する観点からは、前記反射金属又は前記半透明部材の上面に、該上面形状を平坦化させる平坦化膜を配し、該平坦化膜上に配されることしてもよい。
該平坦化膜としては、特に制限はないが、前記光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0068】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、発光表示装置として必要な有機電界発光素子を形成する工程が挙げられる、以下では、本発明における有機電界発光素子について説明する。
【0069】
−有機電界発光素子−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0070】
前記有機電界発光素子は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0071】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0072】
−−発光層−−
本発明における発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料を含む。発光層は発光材料のみで構成されていても良いし、ホスト材料と発光材料の混合層でも良い(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、2種以上が混合されていても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良い。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
【0073】
前記発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0074】
−−−発光材料−−−
本発明における発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0075】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、さらに好ましくはイリジウム、白金である。
【0076】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0077】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0078】
これらの中でも、燐光発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、さらに好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。さらに、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0079】
本発明に用いうる燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
【化21】
【0083】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0084】
−−−ホスト材料−−−
前記発光層に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0085】
<正孔輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
好ましくは、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であり、より好ましくは、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましい。特に、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が好ましい。
【0086】
<電子輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0087】
本発明に用いうる正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
【化22】
【0089】
【化23】
【0090】
【化24】
【0091】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0092】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0093】
前記正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0094】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0095】
前記電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることがさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0096】
前記電子注入層、前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0097】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0098】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極すなわち陽極と陰極とを含む。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0099】
前記電極としては、特に制限はないが、その陽極、陰極において、前記反射金属、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0100】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0101】
前記陰極を構成する材料の具体例としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0102】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0103】
なお、前記電極を形成する際にパターニングをおこなう場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0104】
−基板−
前記基板としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、及びポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料からなる基板が挙げられる。
【0105】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0106】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0107】
−−保護層−−
本発明において、有機電界発光素子全体は保護層によって保護されていてもよい。保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0108】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0109】
−−封止−−
さらに、前記有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。さらに、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、及び酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。
【0110】
また、下記に示す樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
【0111】
−−−樹脂封止層−−−
前記有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材としては特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、又はエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂封止層の作製方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
【0112】
−−−封止接着剤−−−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が好ましい。
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO2、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)又はSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、又は酸化ストロンチウムが好ましい。封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0113】
<製造プロセス>
このようにしてなる本発明の発光表示装置の製造方法の製造プロセスについて、図1〜図8に示す概略図を用いて説明する。なお、図中の符号3及び5のそれぞれについては、同材料からなるため、光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層、光路長調整層のいずれかを示すようにしている。
【0114】
先ず、基板1上に、赤、緑、青に対応する複数の画素に対応して、反射金属2を配する(図1参照)。
次いで、フラッシュ蒸着法により、反射金属2が配された基板上に対して、光透過性樹脂材料3を成膜する(光透過性樹脂材料成膜工程、図2参照)。
こうして基板1上に、反射金属2と光透過性樹脂材料3とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素領域と該画素に隣接する画素領域における光透過性樹脂材料2を選択的に露光し硬化させ、光透過性樹脂層3を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図3参照)。
これを現像して、光透過性樹脂層3から、露光した部分以外の箇所を取り除き、光路長調整層3を形成する(光路長調整層形成工程、図4参照)。なお、光透過性樹脂として、光溶解性樹脂を用いる場合、ポジ型のパターン転写法により露光した部分を取り除き、反射金属2上に非露光の光路長調整層3を形成することとしてもよい。
【0115】
次に、多段の光路長を形成するために、フラッシュ蒸着法により、光透過性樹脂材料5を蒸着させる(光透過性樹脂材料成膜工程、図5参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2と光路長調整層3とが配された画素領域においては、光透過性樹脂材料5が光路長調整層3に重ねて蒸着され、光路長調整層3が配されていない他の画素領域との間で、光路長差が形成される。
こうして基板1上に、反射金属2と光路長調整層3と光透過性樹脂材料5とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光路長調整層3と光透過性樹脂材料5が重ねて蒸着された2つの画素領域のうち、一つの画素領域に対して、光を照射して露光し硬化させ、光透過性樹脂層5を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図6参照)。
これを現像して、光透過性樹脂層5から露光した部分以外の箇所を取り除き、一つの画素領域に光路長調整層5を形成する(光路長調整層形成工程、図7参照)。この段階で、一つの画素領域において、光路長調整層3、5が重ねて配され、該画素領域に隣接する画素領域において、光路長調整層3が配されることとなる。
【0116】
次に、光路長調整層3、5が配された画素領域において、光路長調整層5上に、透明導電膜6を配する。同時に、光路長調整層3が配された画素領域において、光路長調整層3上に、透明導電膜6を配し、光路長調整層が配されていない画素領域において、反射金属2上に透明導電膜6を配する。
次いで、透明導電膜6が配された3つの画素領域のそれぞれにおいて、透明導電膜6上に、有機発光層7と半透過金属8とをこの順で積層し、発光表示装置100を製造する(図9参照)。
このようにして製造される発光表示装置100においては、有機発光層7から出射された光が、光路長調整層3、5により調整された光路長d1、d2、d3に対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透過金属8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd1、d2、d3からなる半透過金属8と反射金属2との間で共振されることにより、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置100から取り出すことを可能とされる。
【0117】
そして、本発明の発光表示装置100の上記製造プロセスによれば、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が不要であることから、従来の製造プロセスに比べて、製造プロセスを大幅に簡易化することができる。
【0118】
(発光表示装置)
本発明の発光表示装置は、赤、緑、青に対応する複数の画素のうち、少なくとも一の画素に反射金属が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有してなり、他の構成として、発光表示装置を構成するために必要な発光表示素子を有してなる。
【0119】
前記発光表示装置は、前記構成からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記発光表示装置の製造方法により製造されるのが好ましく、本発明の前記発光表示装置の製造方法について説明した事項のすべての事項を適用することができる。
【0120】
前記発光表示装置においては、有機発光層から出射された光が、異なる厚みで形成される前記光路長調整層の光路長に対応して、青、緑、赤に対応する波長の光を取り出すことが可能であるが、前記発光表示装置の観察者側における青、緑、赤の各画素領域において、それぞれの色に対応するカラーフィルターを更に配し、より高精細なフルカラー表示を可能としてもよい。
【0121】
−第1の実施形態−
前記発光表示装置の一構成例を図9を用いて説明する。発光表示装置100は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置100は、基板1上に、赤、緑、青の各画素領域において、反射金属2を有している。
赤の画素領域においては、反射金属2を被覆するように光路長調整層3、5が配され、透明導電膜(陽極)6と有機発光層7と介して、反射金属2に対向する半透明部材(陰極)8が配されている。該赤の画素領域においては、光路長が光路長調整層3、5により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3、5と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、反射金属2を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該緑の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該青の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d1が形成される。
【0122】
このようにして形成される発光表示装置100は、有機発光層7から出射される光が、反射金属2と半透明部材8との間で共振され、光路長d1、d2、d3に応じた波長の光が強められ、それぞれ青、緑、赤の光として半透明部材8側から取り出される。
【0123】
−第2の実施形態−
前記発光表示装置の他の構成例を図10を用いて説明する発光表示装置200は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置200では、赤の画素領域において、反射金属2を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該赤の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該緑の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、有機発光層7を介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該青の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に有機発光層7と有する光路長d1が形成される。
該青の領域において、基板1上に配される反射金属2は、電極材料で形成され、透明導電膜6と同様の電極作用を奏するように構成されている。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0124】
−第3の実施形態−
前記発光表示装置の一構成例を図11を用いて説明する。発光表示装置300は、ボトムエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置300では、基板1上に、赤、緑、青の各画素領域において、半透明部材8を有している。
赤の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように光路長調整層3、5が配され、透明導電膜6と有機発光層7と介して、半透明部材8に対向する反射金属2が配されている。該赤の画素領域においては、光路長が光路長調整層3、5により調整され、半透明部材8と反射金属2との間に光路長調整層3、5と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明部材8に対向する反射金属2が配されている。該緑の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、半透明部材8と反射金属2との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明電極8に対向する反射金属2が配されている。該青の画素領域においては、半透明部材8と反射金属2との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d1が形成される。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0125】
(発光ディスプレイ)
本発明の発光ディスプレイは、本発明の前記発光表示装置を有してなり、必要に応じて、その他の構成を適用することができる。
前記発光ディスプレイとしては、光路長調整層が光透過性樹脂材料により形成され、発光表示部がフレキシブル性を有するため、応力による割れなどが生じず、フレキシブルディスプレイとして用いることができる。
また、前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ディスプレイに必要な事項として、公知の手段すべてを適用することができる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0127】
(実施例1)
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを100nm成膜し、次いで、フォトリソグラフィープロセスにて反射電極(反射金属)を形成した後、該反射電極が形成された基板上にフラッシュ蒸着法にて、光透過性樹脂材料(ラジカル重合性モノマー、製品名:1,10デカンジオールジメタアクリレート、製造元:新中村化学工業)を45nm成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次いで、露光装置(製品名:KP364N2、製造元:大日本スクリーン)により、一の画素領域をマスクを用いた選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次いで、溶剤(溶剤名:2−プロパノール製造元:WAKI)にて現像を行い、厚み45nmで第1段目の光路長を作製した(光路長調整層形成工程)。ラジカルモノマー残量は、3.0×10−3g/m2であった。
【0128】
前記一の画素領域に隣接する画素領域における光路長段差を形成するため、再度、前記光透過性樹脂材料を40nm成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次いで、前記一の画素領域及び隣接する画素領域における光透過性樹脂材料に、前記と同様の選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次いで、前記と同様に現像を行い、前記一の画素領域に対し、厚み40nmで第2段目の光路長を作製し、該画素領域に隣接する画素領域に対し、同厚みの第1段目の光路長を作製した(光路長調整層形成工程)。
【0129】
前記光路長調整層の上面に透明電極(ITO、IZO等よりなる。ここではITOにより形成した)を各副画素毎に電気的に分離形成した。透明電極のパターニングはシャドウマスクを用いた成膜製法を用いて行った。なお、該パターニングは、全面成膜してフォトリソグラフィー法によるパターニングでもよい。
【0130】
前記透明電極の上面に、真空成膜装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)によって、白色有機電界発光層(白色OLED)を形成した。
前記白色OLEDの上面に、光半反射電極として金属電極(アルミニウム)を真空成膜製装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)で形成した。
【0131】
OLED形成領域をガラス缶により封止し、各電極を外部の信号制御装置に接続し、実施例1における発光表示装置を製造した。
【0132】
前記発光表示装置を複数配置することで、実施例1における発光ディスプレイを製造した。
こうして製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0133】
(実施例2)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、スピンコート装置(製品名:SP−40、製造元:三井精機)による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0134】
(実施例3)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、スプレーコーター(製品名:DC110、製造元:三明電子産業)による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0135】
(実施例4)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、インクジェットプリンターDMP−2831(FDMX製)を用いて光透過性樹脂材料を打滴量10plのヘッドカートリッジ、打滴周波数10kHzの条件でインクジェット法による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0136】
(実施例5)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程を以下のように実施したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。
即ち、ノボラック樹脂 EP4000B(旭有機材社製)10g、下記の感光剤2.5g、架橋材TEP−G(旭有機材社製)0.56g、PEGMEA/シロキサン=1/1の混合物53gを溶解し光透過性樹脂材料(ポジ型レジスト材料)を調製した。
前記感光剤としては、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン51質量部(0.12モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド72.5質量部(0.27モル)をテトラヒドロフラン450mLに溶解し、トリエチルアミン28.3質量部(0.28モル)を滴下し、室温で20時間反応させた後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩を濾別除去し、イオン交換水10Lに投入し、沈殿物を得て、この沈殿物を凝集し、室温で48時間真空乾燥したものを用いた。
【0137】
【化25】
【0138】
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを100nm成膜し、次いで、フォトリソグラフィープロセスにて反射電極(反射金属)を形成した後、該反射電極が形成された基板上にこの光透過性樹脂材料をスプレーコーター(製品名:DC110、製造元:三明電子産業)により成膜した。
次いで、露光装置(製品名:KP364N2、製造元:大日本スクリーン)により、一の画素領域をマスクした選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。ラジカルモノマー残量は、2.20×10−3g/m2であった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の発光表示装置の製造方法は、簡易な製造プロセスを有する発光表示装置の製造方法として、広く利用可能であり、また、該製造方法により製造される発光表示装置は、高精細なフルカラー表示が可能であるため、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
【符号の説明】
【0140】
1 基板
2 反射金属
3、5 光路長調整層(光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層)
4 マスク
6 透明導電膜(陽極)
7 有機発光層
8 半透明部材(陰極)
10 ITO膜(光路長調整層)
20 レジスト層
100、200、300、400 発光表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイが広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器及びインフラの発展により、パーソナル・コンピュータ並びにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。さらに、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへ、フラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスに、有機電界発光素子(有機EL素子)がある。有機EL素子は、電気信号に応じて発光し、かつ、発光物質として有機化合物を用いて構成される素子である。有機EL素子は、生来的に広視野角及び高コントラスト並びに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる素子として注目されている。
【0004】
有機電界発光素子を用いたフルカラー表示装置が種々提案されているが、例えば、フルカラー表現のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3基本色を得る手段として白色有機ELにカラーフィルターを組みあわせる方法があり、この種のフルカラー表示装置においては、更に、上部電極に半透明の陰極を採用し、光反射膜との間での多重干渉効果によって、特定の波長の光のみを有機EL素子の外部に取り出し、高い色再現性を実現するトップエミッション構成のものと、下部電極に半透過又は透明下部電極の下に誘電体多層膜ミラーを用いたボトムエミッションの構成とが検討されている。
【0005】
例えば、光反射材料からなる第1の電極、有機発光層を備えた有機層、光半透明反射層及び透明材料からなる第2の電極が順次積層され、有機層が共振部となるように構成された有機EL素子において、取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、以下の式を満たすように構成した有機EL素子が知られている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(Lは光学的距離(光路長)、λは取り出したい光の波長を示し、mは、整数を示し、Φは、位相シフトを示し、光学的距離Lが正の最小値となるように構成する)
この種の白色有機ELにカラーフィルターを組み合わせるフルカラー表示装置においては、ITO(Indium Tin Oxide)などの無機材料からなる陽極の厚さを変えることにより、各画素毎の光路長Lの長さを調整し、各色の光を取り出すようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、光路長調整層として、ITOなどの無機材料を用いる場合、発光表示装置の製造プロセスが複雑となり、生産コストが嵩むことに加え、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
例えば、以下に従来技術による光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを説明する。
先ず、基板1上に、赤、緑、青に対応する複数の画素に対応して、反射金属2を配する(図12参照)。
次いで、スパッタ法、蒸着法等により、反射金属2が配された基板上に対して、ITO膜10を成膜する(図13参照)。
次いで、ITO膜10上に硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を成膜する(図14参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素上のレジスト層20を選択的に露光し、樹脂を硬化させる(図15参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図16参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図17参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、一つの画素上に、反射金属2とITO膜10とが配された状態とする(図18参照)。
【0008】
次に、多段の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図19参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された画素領域においては、ITO膜10が重ねて蒸着され、他の画素上でのITO膜10との間で、光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図20参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、ITO膜10が重ねて蒸着された画素領域と、該画素領域に隣接する画素領域とに対して、光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図21参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図22参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図23参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、基板1上に、反射金属2と重ねて配されたITO膜10とを有する画素領域、及び、反射金属2とITO膜10とを有する画素領域を形成する(図24参照)。
【0009】
次に、他の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図25参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された2つの画素領域においては、異なる光路長差を有するように、ITO膜10が重ねて蒸着され、それぞれの画素上において、ITO膜10層の厚みによる光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図26参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、ITO膜10部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、各画素上のレジスト層20に光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図27参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図28参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図29参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離する。こうして、基板1上の各画素領域において、反射金属2上に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層が形成されることとなる(図30参照)。
【0010】
次に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層を有する状態で、各光路長調整層上に、有機発光層7と、半透過金属8とをこの順で積層し、発光表示装置400を製造する。
このような発光表示装置400においては、有機発光層7から出射された光が、異なる厚みで形成されたITO膜10の光路長d1、d2、d3に対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透過金属8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd1、d2、d3からなる半透過金属8と反射金属2との間で共振され、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置400から取り出すことを可能とされる。
【0011】
このように、光路長調整層を有する発光表示装置においては、青、緑、赤の3原色による高精細なカラー表示が可能となるが、前記光路長調整層の形成材料として、ITO層などの無機材料を用いる場合には、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が必要であり、また、これらの工程を、光路長差を形成するごとに行わなければならないため、製造プロセスが複雑となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−503093号公報
【特許文献2】特開2006−269329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、前記反応後の光透過性樹脂層を現像し、光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、を含むことを特徴とする発光表示装置の製造方法である。
<2> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料を気相成膜法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<3> 気相成膜法がフラッシュ蒸着法である前記<2>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<4> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をスプレーコート法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<5> 光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をインクジェット法により成膜する工程である前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<6> 光透過性樹脂材料が光硬化性樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<7> 光硬化性樹脂がラジカル重合性モノマーである前記<6>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<8> ラジカル重合性モノマーがラジカル重合性官能基を2つ以上有する前記<7>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<9> ラジカル重合性モノマーがエチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである前記<7>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<10> エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーがアクリル酸及びメタクリル酸のいずれかである前記<9>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<11> 光透過性樹脂層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う前記<7>から<10>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<12> 光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m2以下である前記<7>から<11>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<13> 光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される前記<1>から<12>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<14> 光透過性樹脂が光溶解性樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<15> 赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置である。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される前記<15>に記載の発光表示装置である。
<17> 前記<15>から<16>のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイである。
<18> フレキシブルディスプレイとして用いられる前記<17>に記載の発光ディスプレイである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図2】図2は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図3】図3は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図4】図4は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図5】図5は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図6】図6は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図7】図7は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図8】図8は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図9】図9は、本発明の発光表示装置の一の構成例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の発光表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の発光表示装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【図12】図12は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図13】図13は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図14】図14は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図15】図15は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図16】図16は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図17】図17は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図18】図18は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図19】図19は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図20】図20は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(9)である。
【図21】図21は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(10)である。
【図22】図22は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(11)である。
【図23】図23は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(12)である。
【図24】図24は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(13)である。
【図25】図25は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(14)である。
【図26】図26は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(15)である。
【図27】図27は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(16)である。
【図28】図28は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(17)である。
【図29】図29は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(18)である。
【図30】図30は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(19)である。
【図31】図31は、従来例の発光表示装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発光表示装置の製造方法)
本発明の発光表示装置の製造方法は、光透過性樹脂材料成膜工程と、光透過性樹脂層形成工程と、光路長調整層形成工程とを含み、更に、発光表示装置を製造するために必要なその他の工程を含んでなる。
【0018】
<光透過性樹脂材料成膜工程>
前記光透過性樹脂材料成膜工程は、赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する工程としてなる。
【0019】
−光透過性樹脂材料−
前記光透過性樹脂材料としては、光透過性を有ものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光透過性樹脂層における硬化反応を生ずるもの(ネガ型)、光透過性樹脂層における溶解反応を生ずるもの(ポジ型)が挙げられる。
前記光透過性樹脂層における硬化反応を生ずるもの(ネガ型)としては、特に制限はなく、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(本明細書では、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を併せてアクリレート重合物ということがある)、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、ポリシロキサン、その他有機珪素化合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、光透過性樹脂層における溶解反応を生ずるもの(ポジ型:光溶解性樹脂)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポジ型レジストとして一般的に用いられる、フェノール系樹脂、アルカリ可溶性樹脂と感光物としてナフトキノンジアジド置換化合物とを含む組成品等が挙げられ、具体的には、「ノボラック系フェノール樹脂/ナフトキノンジアジド置換化合物」等のジアゾナフトキノン(DNQ)−ノボラック系樹脂、「クレゾール−ホルムアルデヒドよりなるノボラック系樹脂/トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル」等のメタパラクレゾールノボラック系樹脂などが挙げられる。
【0020】
−−光硬化性樹脂(ラジカル重合性モノマー)−−
前記光透過性樹脂としては、前記例示の化合物の中でも、光硬化性樹脂が好ましい。
前記光硬化性樹脂としては、特に制限はないが、少なくとも1つの下記一般式(1)及び下記一般式(2)のいずれかで表されるラジカル重合性モノマーがより好ましい。
これらのラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を2つ以上有することが好ましい。重合性官能基が2つ以上あると3次元的に架橋することができ、機械強度が向上する点で好ましい。
【0021】
一般式(1)
【化1】
(ただし、前記一般式(1)において、R7は、水素又はメチル基を表し、R8は、水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR7及びR8は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
一般式(2)
【化2】
(ただし、前記一般式(2)において、R9は、水素又はメチル基を表し、R10は、水素原子を表し、L2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR9及びR10は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
前記光硬化性樹脂としては、前記一般式(2)で表されるエチレン不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーからなるアクリレート重合体を主成分とするのが特に好ましい。ここで主成分とは、後述する光透過性樹脂層を構成する重合性モノマーのうち、含量が最も多いことをいい、80質量%以上であることをいう。
また、前記アクリレート重合体としては、下記一般式(3)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0024】
一般式(3)
【化3】
(ただし、前記一般式(3)において、Zは、下記一般式(a)、又は、二重結合性基を有する一般式(b)で表され、該下記一般式(a)又は(b)におけるR11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を表し、*は一般式(3)のカルボニル基と結合する位置を表し、Lは、n価の連結基を表す。nは、1〜6の整数を示す。nが2以上の場合において、各繰り返し単位におけるZは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つのZは、下記一般式(a)で表される。
【0025】
【化4】
【0026】
前記一般式(3)において、Lの炭素数は、3〜18が好ましく、4〜17がより好ましく、5〜16が更により好ましく、6〜15が特に好ましい。
nが2の場合、Lは、2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例としては、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及びこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えばポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基等)を挙げることができる。
これらの中で、前記アルキレン基が好ましい。
【0027】
また、前記一般式(3)において、Lは、置換基を有してもよく、Lを置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられる。
中でも、前記置換基としては、含酸素官能基を持たない基が好ましく、このような基としては、アルキル基が挙げられる。
即ち、nが2の場合、Lは、含酸素官能基を持たないアルキレン基が最も好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0028】
前記一般式(3)において、nが3の場合、Lは、3価の連結基を表すが、そのような3価の連結基の例として、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除いて得られる3価残基、又は、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除き、ここにアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、及びこれらを直列に結合した2価基を置換した3価残基を挙げることができる。このうち、アルキレン基から任意の水素原子を1個除いて得られる、含酸素官能基を含まない3価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0029】
前記一般式(3)において、nが4以上の場合、Lは、4価以上の連結基を表すが、そのような4価以上の連結基の例も、同様に挙げられる。好ましい例も同様に挙げられる。特に、アルキレン基から任意の水素原子を2個除いて得られる、含酸素官能基を含まない4価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0030】
また、前記ポリマーは、前記一般式(3)で表されない構造単位を有していても構わない。例えば、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーを共重合したときに形成される構造単位を有していてもよい。
前記ポリマーにおいて、前記一般式(3)で表されない構造単位は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(3)で表される構造単位を有さないポリマーとして、例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が挙げられる。
【0031】
以下において、前記一般式(2)で表されるラジカル重合性モノマーの具体例を示すが、本発明における前記光透過性樹脂は、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
−−酸性モノマー−−
前記光透過性樹脂材料としては、更に、酸性モノマーが含むものであってもよい。
前記酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。
前記酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。
前記酸性モノマーは、カルボン酸基又はリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基又はリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0038】
−−−リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)−−−
前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着がよくなる。
【0039】
一般式(P)
【化10】
(ただし、前記一般式(P)において、Z1は、Ac2−O−X2−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Z2はAc3−O−X3−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Ac1、Ac2及びAc3は、それぞれアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、X1、X2及びX3は、それぞれ2価の連結基を表す。
前記一般式(P)で表される化合物としては、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
【0040】
一般式(P−1)
【化11】
【0041】
一般式(P−2)
【化12】
【0042】
一般式(P−3)
【化13】
【0043】
前記一般式(P−1)〜(P−3)において、Ac1、Ac2、Ac3、X1、X2及びX3の定義は、前記一般式(P)における定義と同じである。前記一般式(P−1)及び(P−2)において、R1は、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、R2は、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X1、X2及びX3は、一般式(2)におけるL1と同様の基である。X1、X2及びX3としては、アルキレン基、アルキレンオキシカルボニルアルキレン基が好ましい。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。
【0044】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
前記アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、直鎖アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
【0045】
前記アリール基の炭素数としては、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、前記一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、前記一般式(P−1)で表される単官能モノマー、前記一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び前記一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、前記リン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0046】
以下に、酸性モノマーの具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。
【0047】
【化14】
【0048】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、耐熱性、ガスバリア性を有するガラス材料やバリアフィルムなどが好ましい。
具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び/又は線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
このような基板の樹脂材料としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0049】
前記基板の光線透過率としては、通常80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
前記光線透過率としては、JIS−K7105に記載された方法、即ち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
前記ガラス材料やバリアフィルムの厚みとしては、特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、10μm〜200μmが好ましい。
【0050】
−−反射金属及び半透明部材−−
前記反射金属は、有機発光層から出射される光を反射する作用を有する。
前記半透明部材は、有機発光層から出射される光を反射乃至透過させる作用を有する。
これら前記反射金属及び半透明部材は、有機発光層を間に有する状態で対向配置され、有機発光層から出射される光を共振する作用を有する。
前記半透明部材としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、半透明金属、半透明性の誘電体多層膜ミラー、及びこれらの組み合わせが好ましい。
前記半透明金属としては、特に制限はなく、後述する陽極を用いて構成することができる。
前記半透明性の誘電体多層膜ミラーとしては、特に制限はなく、例えば、SiO2、SiNの積層等で構成される誘電体多層膜からなるミラー、などが挙げられる。
前記反射金属としては、特に制限はなく、後述する陰極を用いて構成することができる。
【0051】
−成膜−
前記光透過性樹脂の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、気相成膜法、塗布成膜法などが挙げられるが、製造プロセスの簡易化の観点からは、気相成膜方法が好ましい。
【0052】
前記気相成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フラッシュ蒸着法、スプレーコート法などが好ましい。
前記塗布成膜法として、前記光透過性樹脂材料を溶剤に溶かし、スピンコート法などで成膜してもよいが、この場合、パネルの構造(例えば、基板上に配されるTFT回路素子等)の平坦性による影響を受け、膜厚の制御が困難な場合があり、所望の光路長差を得られないことがある。
一方、前記気相成膜方法によれば、パネルの構造の平坦性による影響を受けずに光透過性樹脂材料を成膜することができる。
【0053】
前記フラッシュ蒸着法による成膜条件としては、特に制限はなく、例えば、モノマーの加熱温度としては、100℃から200℃、また、真空度としては、1×10-2〜10Pa程度が好ましい。
【0054】
<光透過性樹脂層形成工程>
前記光透過性樹脂層形成工程は、前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する工程としてなる。
【0055】
−硬化反応−
前記光透過性樹脂を硬化させる反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
中でも、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行うことが好ましい。
【0056】
前記光重合において、照射する光としては、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。
前記照射エネルギーとしては、0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。
前記ラジカル重合性モノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを用いる場合、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。
このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
前記窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1,000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。
また、100Pa以下の減圧条件下で、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
フラッシュ蒸着法で形成した前記ラジカル重合性モノマー被膜を、減圧条件下、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。前記ラジカル重合性モノマーの重合は、前記モノマーの混合物を蒸着により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。
【0057】
前記ラジカル重合性モノマーの重合率としては、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更により好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは、モノマーの混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。前記重合率は、赤外線吸収法によって定量することができる。
【0058】
−−光重合開始剤−−
前記重合開始剤としては、光を照射したときにラジカルを発生する化合物であれば、特に制限はないが、気相成膜法が好ましい。特にフラッシュ蒸着法で成膜する場合は、融点が30℃以下である重合開始剤であるか、1気圧30℃で液状であるものが好ましい。ここで、融点とは、固体状態から液体状態に変化する温度をいう。また、液状とは、1気圧30℃において重合開始剤を入れた容器を傾けた時に流動性を示すことをいう。
前記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種併用することにより、液状となる光重合開始剤も好ましく用いることができる。
このような光重合開始剤は、実際に、有機層を真空蒸着する際に、液体状態となるため、少ない量の光重合開始剤で、前記ラジカル重合性モノマーを良好に硬化させることができる。
このように安定した光透過性樹脂層は、残存するラジカル重合性モノマー由来のガスが放出されにくくなり、隣接層へのダメージを低減させることができる。
本発明では、前記光透過性樹脂(後述する光路長調整層)における前記ラジカル残存重合性モノマーの量が、1×10−2g/m2以下であることが好ましく、1×10−4g/m2以下であることがより好ましい。
【0059】
前記光重合開始剤の分子量としては、170以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。このように分子量であると、前記光重合開始剤が揮発しにくくなり、さらに、安定に硬化した光透過性樹脂層が得られやすくなる。なお、前記光重合開始剤の分子量の上限としては、特に定めるものではないが、通常、1,000以下である。
【0060】
前記重合開始剤の添加量としては、前記光透過性樹脂層を形成する組成物としての前記光透過性樹脂材料において、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
前記気相成膜法により前記光透過性樹脂材料を成膜する場合には、該光透過性樹脂材料を溶剤に溶かして塗布し形成する場合よりも、前記光重合開始剤の添加量を少なくしても、前記ラジカル重合性モノマーを十分に反応させることができるので、光重合開始剤の添加量を減らすことができる。
また、前記光重合開始剤の添加量を減らすことにより、前記光透過性樹脂層(光路長調整層)に残存する前記光重合開始剤の量も少なくでき、より光重合開始剤由来のガスの発生を低減でき、隣接する層へのダメージを低減できる。
【0061】
前記光重合開始剤としては、特に制限はないが、気相成膜法を用いる場合、下記一般式(4)で表される化合物、及び下記一般式(5)で表される化合物のいずれかを含む化合物が好ましい。
【0062】
一般式(4)
【化17】
(ただし、前記一般式(4)において、R1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、カルボニル基、及びこれらの基が複数個結合した置換基のいずれかを表し、R2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は、0〜5の整数を表し、n1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR2は、同一であっても異なっていてもよい。)
ここで、R1は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、及び炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基のいずれかが好ましく、R2は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。R1が炭素数1〜18の置換アルキル基の場合は、カルボニル基に連結する炭素が、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されていることが好ましい。n1は、0〜3が好ましい。
このような化合物として例えば、ダロキュア1173(製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)等の市販品を採用できる。
【0063】
一般式(5)
【化18】
(ただし、前記一般式(5)において、R3は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基のいずれかを表し、R4は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2及びn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2及びn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR3は、同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、各繰り返し単位におけるR4は、同一でも異なっていてもよい。)
R3は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、R4は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。n2は、0〜3であることが好ましく、n3は、0〜3であることが好ましい。
このような化合物として、2−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、例えば、エザキュアTZT(製造元:ランベルティ)等の市販品を採用できる。
【0064】
<光路長調整層形成工程>
前記光路長調整層形成工程は、硬化反応により硬化された光透過性樹脂層を現像し、前記光路長調整層を形成する工程としてなる。
【0065】
−現像−
前記現像の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤を用いた超音波現像が挙げられる。
【0066】
−光路長調整層−
本発明の発光表示装置においては、赤、緑、青の少なくとも一つの画素領域において、前記光路長調整層が内部に導入され、共振構造を有してなる。
前記光路長調整層の厚みとしては、各副画素が所定の波長の光が効率良く共振し得る光学的距離(光路長)となるように調整される。
従って、共振する光学的距離は、光反射膜と光半透過反射膜との間に挟持される材料の屈折率とその組成、厚みによって決定されるので、光路長調整層によって決定される訳ではない。
一般に用いられる有機EL発光層の構成を斟酌すると、前記赤の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、30nm〜1,000nmが好ましく、150nm〜350nmがより好ましく、200nm〜250nmが特に好ましい。
前記緑の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、5nm〜800nmが好ましく、100nm〜250nmがより好ましく、150nm〜200nmが特に好ましい。
前記青の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、0nm〜600nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましく、100nm〜150nmが特に好ましい。
【0067】
前記光路長調整層は、前記基板上に配される前記反射金属又は前記半透明部材の上面に直接配されてよいが、光路長調整層を平坦に配する観点からは、前記反射金属又は前記半透明部材の上面に、該上面形状を平坦化させる平坦化膜を配し、該平坦化膜上に配されることしてもよい。
該平坦化膜としては、特に制限はないが、前記光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0068】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、発光表示装置として必要な有機電界発光素子を形成する工程が挙げられる、以下では、本発明における有機電界発光素子について説明する。
【0069】
−有機電界発光素子−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0070】
前記有機電界発光素子は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0071】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0072】
−−発光層−−
本発明における発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料を含む。発光層は発光材料のみで構成されていても良いし、ホスト材料と発光材料の混合層でも良い(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、2種以上が混合されていても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良い。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
【0073】
前記発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0074】
−−−発光材料−−−
本発明における発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0075】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、さらに好ましくはイリジウム、白金である。
【0076】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0077】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0078】
これらの中でも、燐光発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、さらに好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。さらに、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0079】
本発明に用いうる燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
【化19】
【0081】
【化20】
【0082】
【化21】
【0083】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0084】
−−−ホスト材料−−−
前記発光層に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0085】
<正孔輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
好ましくは、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であり、より好ましくは、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましい。特に、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が好ましい。
【0086】
<電子輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0087】
本発明に用いうる正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
【化22】
【0089】
【化23】
【0090】
【化24】
【0091】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0092】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0093】
前記正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0094】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0095】
前記電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることがさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0096】
前記電子注入層、前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0097】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0098】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極すなわち陽極と陰極とを含む。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0099】
前記電極としては、特に制限はないが、その陽極、陰極において、前記反射金属、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0100】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0101】
前記陰極を構成する材料の具体例としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0102】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0103】
なお、前記電極を形成する際にパターニングをおこなう場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0104】
−基板−
前記基板としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、及びポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料からなる基板が挙げられる。
【0105】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0106】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0107】
−−保護層−−
本発明において、有機電界発光素子全体は保護層によって保護されていてもよい。保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0108】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0109】
−−封止−−
さらに、前記有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。さらに、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、及び酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。
【0110】
また、下記に示す樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
【0111】
−−−樹脂封止層−−−
前記有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材としては特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、又はエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂封止層の作製方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
【0112】
−−−封止接着剤−−−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が好ましい。
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO2、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)又はSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、又は酸化ストロンチウムが好ましい。封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0113】
<製造プロセス>
このようにしてなる本発明の発光表示装置の製造方法の製造プロセスについて、図1〜図8に示す概略図を用いて説明する。なお、図中の符号3及び5のそれぞれについては、同材料からなるため、光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層、光路長調整層のいずれかを示すようにしている。
【0114】
先ず、基板1上に、赤、緑、青に対応する複数の画素に対応して、反射金属2を配する(図1参照)。
次いで、フラッシュ蒸着法により、反射金属2が配された基板上に対して、光透過性樹脂材料3を成膜する(光透過性樹脂材料成膜工程、図2参照)。
こうして基板1上に、反射金属2と光透過性樹脂材料3とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素領域と該画素に隣接する画素領域における光透過性樹脂材料2を選択的に露光し硬化させ、光透過性樹脂層3を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図3参照)。
これを現像して、光透過性樹脂層3から、露光した部分以外の箇所を取り除き、光路長調整層3を形成する(光路長調整層形成工程、図4参照)。なお、光透過性樹脂として、光溶解性樹脂を用いる場合、ポジ型のパターン転写法により露光した部分を取り除き、反射金属2上に非露光の光路長調整層3を形成することとしてもよい。
【0115】
次に、多段の光路長を形成するために、フラッシュ蒸着法により、光透過性樹脂材料5を蒸着させる(光透過性樹脂材料成膜工程、図5参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2と光路長調整層3とが配された画素領域においては、光透過性樹脂材料5が光路長調整層3に重ねて蒸着され、光路長調整層3が配されていない他の画素領域との間で、光路長差が形成される。
こうして基板1上に、反射金属2と光路長調整層3と光透過性樹脂材料5とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光路長調整層3と光透過性樹脂材料5が重ねて蒸着された2つの画素領域のうち、一つの画素領域に対して、光を照射して露光し硬化させ、光透過性樹脂層5を形成する(光透過性樹脂層形成工程、図6参照)。
これを現像して、光透過性樹脂層5から露光した部分以外の箇所を取り除き、一つの画素領域に光路長調整層5を形成する(光路長調整層形成工程、図7参照)。この段階で、一つの画素領域において、光路長調整層3、5が重ねて配され、該画素領域に隣接する画素領域において、光路長調整層3が配されることとなる。
【0116】
次に、光路長調整層3、5が配された画素領域において、光路長調整層5上に、透明導電膜6を配する。同時に、光路長調整層3が配された画素領域において、光路長調整層3上に、透明導電膜6を配し、光路長調整層が配されていない画素領域において、反射金属2上に透明導電膜6を配する。
次いで、透明導電膜6が配された3つの画素領域のそれぞれにおいて、透明導電膜6上に、有機発光層7と半透過金属8とをこの順で積層し、発光表示装置100を製造する(図9参照)。
このようにして製造される発光表示装置100においては、有機発光層7から出射された光が、光路長調整層3、5により調整された光路長d1、d2、d3に対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透過金属8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd1、d2、d3からなる半透過金属8と反射金属2との間で共振されることにより、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置100から取り出すことを可能とされる。
【0117】
そして、本発明の発光表示装置100の上記製造プロセスによれば、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が不要であることから、従来の製造プロセスに比べて、製造プロセスを大幅に簡易化することができる。
【0118】
(発光表示装置)
本発明の発光表示装置は、赤、緑、青に対応する複数の画素のうち、少なくとも一の画素に反射金属が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有してなり、他の構成として、発光表示装置を構成するために必要な発光表示素子を有してなる。
【0119】
前記発光表示装置は、前記構成からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記発光表示装置の製造方法により製造されるのが好ましく、本発明の前記発光表示装置の製造方法について説明した事項のすべての事項を適用することができる。
【0120】
前記発光表示装置においては、有機発光層から出射された光が、異なる厚みで形成される前記光路長調整層の光路長に対応して、青、緑、赤に対応する波長の光を取り出すことが可能であるが、前記発光表示装置の観察者側における青、緑、赤の各画素領域において、それぞれの色に対応するカラーフィルターを更に配し、より高精細なフルカラー表示を可能としてもよい。
【0121】
−第1の実施形態−
前記発光表示装置の一構成例を図9を用いて説明する。発光表示装置100は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置100は、基板1上に、赤、緑、青の各画素領域において、反射金属2を有している。
赤の画素領域においては、反射金属2を被覆するように光路長調整層3、5が配され、透明導電膜(陽極)6と有機発光層7と介して、反射金属2に対向する半透明部材(陰極)8が配されている。該赤の画素領域においては、光路長が光路長調整層3、5により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3、5と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、反射金属2を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該緑の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該青の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d1が形成される。
【0122】
このようにして形成される発光表示装置100は、有機発光層7から出射される光が、反射金属2と半透明部材8との間で共振され、光路長d1、d2、d3に応じた波長の光が強められ、それぞれ青、緑、赤の光として半透明部材8側から取り出される。
【0123】
−第2の実施形態−
前記発光表示装置の他の構成例を図10を用いて説明する発光表示装置200は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置200では、赤の画素領域において、反射金属2を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該赤の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、反射金属2と半透明部材8との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該緑の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、有機発光層7を介して、反射金属2に対向する半透明部材8が配されている。該青の画素領域においては、反射金属2と半透明部材8との間に有機発光層7と有する光路長d1が形成される。
該青の領域において、基板1上に配される反射金属2は、電極材料で形成され、透明導電膜6と同様の電極作用を奏するように構成されている。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0124】
−第3の実施形態−
前記発光表示装置の一構成例を図11を用いて説明する。発光表示装置300は、ボトムエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置300では、基板1上に、赤、緑、青の各画素領域において、半透明部材8を有している。
赤の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように光路長調整層3、5が配され、透明導電膜6と有機発光層7と介して、半透明部材8に対向する反射金属2が配されている。該赤の画素領域においては、光路長が光路長調整層3、5により調整され、半透明部材8と反射金属2との間に光路長調整層3、5と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d3が形成される。
緑の画素領域においては、半透明部材8を被覆するように光路長調整層3が配され、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明部材8に対向する反射金属2が配されている。該緑の画素領域においては、光路が光路長調整層3により調整され、半透明部材8と反射金属2との間に光路長調整層3と透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d2が形成される。
青の画素領域においては、透明導電膜6と有機発光層7とを介して、半透明電極8に対向する反射金属2が配されている。該青の画素領域においては、半透明部材8と反射金属2との間に透明導電膜6と有機発光層7とを有する光路長d1が形成される。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0125】
(発光ディスプレイ)
本発明の発光ディスプレイは、本発明の前記発光表示装置を有してなり、必要に応じて、その他の構成を適用することができる。
前記発光ディスプレイとしては、光路長調整層が光透過性樹脂材料により形成され、発光表示部がフレキシブル性を有するため、応力による割れなどが生じず、フレキシブルディスプレイとして用いることができる。
また、前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ディスプレイに必要な事項として、公知の手段すべてを適用することができる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0127】
(実施例1)
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを100nm成膜し、次いで、フォトリソグラフィープロセスにて反射電極(反射金属)を形成した後、該反射電極が形成された基板上にフラッシュ蒸着法にて、光透過性樹脂材料(ラジカル重合性モノマー、製品名:1,10デカンジオールジメタアクリレート、製造元:新中村化学工業)を45nm成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次いで、露光装置(製品名:KP364N2、製造元:大日本スクリーン)により、一の画素領域をマスクを用いた選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次いで、溶剤(溶剤名:2−プロパノール製造元:WAKI)にて現像を行い、厚み45nmで第1段目の光路長を作製した(光路長調整層形成工程)。ラジカルモノマー残量は、3.0×10−3g/m2であった。
【0128】
前記一の画素領域に隣接する画素領域における光路長段差を形成するため、再度、前記光透過性樹脂材料を40nm成膜した(光透過性樹脂材料成膜工程)。
次いで、前記一の画素領域及び隣接する画素領域における光透過性樹脂材料に、前記と同様の選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。
次いで、前記と同様に現像を行い、前記一の画素領域に対し、厚み40nmで第2段目の光路長を作製し、該画素領域に隣接する画素領域に対し、同厚みの第1段目の光路長を作製した(光路長調整層形成工程)。
【0129】
前記光路長調整層の上面に透明電極(ITO、IZO等よりなる。ここではITOにより形成した)を各副画素毎に電気的に分離形成した。透明電極のパターニングはシャドウマスクを用いた成膜製法を用いて行った。なお、該パターニングは、全面成膜してフォトリソグラフィー法によるパターニングでもよい。
【0130】
前記透明電極の上面に、真空成膜装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)によって、白色有機電界発光層(白色OLED)を形成した。
前記白色OLEDの上面に、光半反射電極として金属電極(アルミニウム)を真空成膜製装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)で形成した。
【0131】
OLED形成領域をガラス缶により封止し、各電極を外部の信号制御装置に接続し、実施例1における発光表示装置を製造した。
【0132】
前記発光表示装置を複数配置することで、実施例1における発光ディスプレイを製造した。
こうして製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0133】
(実施例2)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、スピンコート装置(製品名:SP−40、製造元:三井精機)による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0134】
(実施例3)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、スプレーコーター(製品名:DC110、製造元:三明電子産業)による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0135】
(実施例4)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程において、フラッシュ蒸着法による成膜に代えて、インクジェットプリンターDMP−2831(FDMX製)を用いて光透過性樹脂材料を打滴量10plのヘッドカートリッジ、打滴周波数10kHzの条件でインクジェット法による成膜を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。なお、第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【0136】
(実施例5)
実施例1の光透過性樹脂材料成膜工程を以下のように実施したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における発光表示装置、及び発光ディスプレイを製造した。
即ち、ノボラック樹脂 EP4000B(旭有機材社製)10g、下記の感光剤2.5g、架橋材TEP−G(旭有機材社製)0.56g、PEGMEA/シロキサン=1/1の混合物53gを溶解し光透過性樹脂材料(ポジ型レジスト材料)を調製した。
前記感光剤としては、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン51質量部(0.12モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド72.5質量部(0.27モル)をテトラヒドロフラン450mLに溶解し、トリエチルアミン28.3質量部(0.28モル)を滴下し、室温で20時間反応させた後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩を濾別除去し、イオン交換水10Lに投入し、沈殿物を得て、この沈殿物を凝集し、室温で48時間真空乾燥したものを用いた。
【0137】
【化25】
【0138】
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを100nm成膜し、次いで、フォトリソグラフィープロセスにて反射電極(反射金属)を形成した後、該反射電極が形成された基板上にこの光透過性樹脂材料をスプレーコーター(製品名:DC110、製造元:三明電子産業)により成膜した。
次いで、露光装置(製品名:KP364N2、製造元:大日本スクリーン)により、一の画素領域をマスクした選択的な露光を行い、光透過性樹脂層を形成した(光透過性樹脂層形成工程)。第1段目の光路長の厚みは、45nmであり、第2段目の光路長(及び第1段目の光路長)の厚みは、40nmであった。ラジカルモノマー残量は、2.20×10−3g/m2であった。
製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の発光表示装置の製造方法は、簡易な製造プロセスを有する発光表示装置の製造方法として、広く利用可能であり、また、該製造方法により製造される発光表示装置は、高精細なフルカラー表示が可能であるため、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
【符号の説明】
【0140】
1 基板
2 反射金属
3、5 光路長調整層(光透過性樹脂材料、光透過性樹脂層)
4 マスク
6 透明導電膜(陽極)
7 有機発光層
8 半透明部材(陰極)
10 ITO膜(光路長調整層)
20 レジスト層
100、200、300、400 発光表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、
前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、
前記反応後の光透過性樹脂層を現像し、光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、を含むことを特徴とする発光表示装置の製造方法。
【請求項2】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料を気相成膜法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項3】
気相成膜法がフラッシュ蒸着法である請求項2に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項4】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をスプレーコート法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項5】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をインクジェット法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項6】
光透過性樹脂材料が光硬化性樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
光硬化性樹脂がラジカル重合性モノマーである請求項6に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
ラジカル重合性モノマーがラジカル重合性官能基を2つ以上有する請求項7に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
ラジカル重合性モノマーがエチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである請求項7に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーがアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれかである請求項9に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
光透過性樹脂層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う請求項7から10のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m2以下である請求項7から11のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される請求項1から12に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
光透過性樹脂が光溶解性樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される請求項15に記載の発光表示装置。
【請求項17】
請求項15から16のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイ。
【請求項18】
フレキシブルディスプレイとして用いられる請求項17に記載の発光ディスプレイ。
【請求項1】
赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材を配設可能な基板上に、光透過性樹脂材料を成膜する光透過性樹脂材料成膜工程と、
前記成膜された光透過性樹脂材料のうち、前記一の画素領域を含む領域を硬化反応させ、光透過性樹脂層を形成する光透過性樹脂層形成工程と、
前記反応後の光透過性樹脂層を現像し、光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、を含むことを特徴とする発光表示装置の製造方法。
【請求項2】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料を気相成膜法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項3】
気相成膜法がフラッシュ蒸着法である請求項2に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項4】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をスプレーコート法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項5】
光透過性樹脂材料成膜工程が光透過性樹脂材料をインクジェット法により成膜する工程である請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項6】
光透過性樹脂材料が光硬化性樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
光硬化性樹脂がラジカル重合性モノマーである請求項6に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
ラジカル重合性モノマーがラジカル重合性官能基を2つ以上有する請求項7に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
ラジカル重合性モノマーがエチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである請求項7に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーがアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれかである請求項9に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
光透過性樹脂層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う請求項7から10のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m2以下である請求項7から11のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性樹脂材料と同じ光透過性樹脂材料で形成される請求項1から12に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
光透過性樹脂が光溶解性樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
赤、緑、青に対応する複数の画素領域のうち、少なくとも一の画素領域に反射金属及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性樹脂材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される請求項15に記載の発光表示装置。
【請求項17】
請求項15から16のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイ。
【請求項18】
フレキシブルディスプレイとして用いられる請求項17に記載の発光ディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−232163(P2010−232163A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294999(P2009−294999)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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