説明

発光装置及びその製造方法、並びに電子機器

【課題】有機EL素子を構成する電極の低抵抗化が可能な発光装置を提供する。
【解決手段】基板と、当該基板上に形成された画素電極13と、当該画素電極と同一の層として、かつ、該画素電極とは物理的に分断されるように形成された補助電極501と、前記画素電極を覆うように形成された発光機能層18と、当該発光機能層を覆うように形成された対向電極5と、を備え、発光素子8が、前述した画素電極、対向電極、及び、発光機能層から構成され、前記補助電極は、当該補助電極を断面視した場合、前記対向電極と接触する側面をもつ(図中符号“ct”参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL(electro luminescent)素子がある。有機EL素子は、有機材料を含む少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。このうち画素電極は例えば陽極として、対向電極は陰極として機能する。両者間に電流が流されると同時に、前記有機薄膜にも電流が流れ、これにより、当該有機薄膜ないしは有機EL素子は発光する。この場合、その発光の輝度は、有機薄膜に流れる電流の大きさに応じるので、当該電流の制御、言い換えれば、画素電極及び対向電極それぞれについての電位設定等に関しては、十分な注意を払う必要がある。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1乃至3に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2004−207217号公報
【特許文献2】特開2006−261058号公報
【特許文献1】特開2005−235491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、既述の電流制御に関わる問題に関連して、画素電極あるいは対向電極の電気抵抗特性に関する問題がある。すなわち、有機EL素子は、前述のように、これら両電極で有機薄膜を挟持する構成を持つため、当該有機薄膜から発した光を装置外部へと導くためには、これら画素電極及び対向電極の少なくとも一方は、透明でなければならない。したがって、その少なくとも一方の電極は、透明であって導電性がある材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)、あるいは光透過が可能となるまで薄膜化した銀、アルミニウム又は金その他の金属や合金等で作られる必要がある。しかし、このような透明導電性の電極は電気抵抗値が比較的高い。そのため、かかる電極の電位の安定的な設定・維持、ひいては有機薄膜への電流制御、あるいは画像表示面における輝度均一性の維持が困難となってしまうのである。
【0004】
このような問題に対処するため、従来、いわゆる“補助電極”を形成することが行われている。すなわち、前述の構成例で言えば、比較的高抵抗の対向電極の上層又は下層として、かつ、発光領域を避けるように、比較的低抵抗の材料からなる導電性膜(即ち、補助電極)を形成するのである。これにより、当該補助電極が付設された対向電極の全体的な抵抗値は低くなり得る。
【0005】
前記の特許文献1乃至3は、このような補助電極に係る技術を開示する。すなわち、特許文献1は、「下部電極と同一層からなり当該下部電極に対して絶縁性を保って配置された補助配線」(特許文献1の〔請求項1〕)に係る技術を開示し、特許文献2は、積層構造をなす「第1電極」及び「第2電極」のうち「第2電極上に、保護膜」を形成し、更に、この「保護膜上に、前記第2電極に電気的に連結される第3電極」(特許文献2の〔請求項1〕)を備える技術を開示し、特許文献3は、「一対の画素電極のうちの他方の画素電極と電気的に接続された補助配線」(特許文献3の〔請求項1〕)に係る技術を開示する。
【0006】
しかしながら、これらの文献が開示する技術においては、以下に述べるような問題がある。
まず、特許文献1では、「隣接する画素間において端部の一部が重なる」、「有機層」の存在が前提されている(特許文献1の〔請求項1〕。なお、〔0011〕〔0012〕、あるいは〔図4〕から〔図6〕参照)。つまり、この文献においては、例えば白色一色の発光を行う有機薄膜が、基板の全面を覆うかの如く存在する有機EL装置については眼中にない(特に、特許文献1の〔図1〕から〔図4〕参照)。
しかも、この特許文献1は、「補助配線9aの上方が有機層11B,11G,11Rで覆われる」(特許文献1の〔0056〕)形態を、主要な形態として念頭に置く。すなわち、特許文献1において、「補助配線9a」と「上部電極13」との間には、「有機層11B,11G,11R」が介在されているのであり、両者間の電気的な導通は、そのような状態の下で図られるのである(特許文献1の〔0057〕参照。また〔図4〕から〔図6〕参照)。しかしながら、このような形態であると、「有機層」が“抵抗”として働く余地があることは否定できず、したがって、「上部電極13」の十分な低抵抗化が達成されるかどうか問題がある。
【0007】
他方、特許文献2は、前記「第2電極」の「スパッタによる作製時に有機膜が損傷を受け有機EL素子の表示品質」が低下すること(特許文献2の〔0007〕)を防止するため、前述した「保護膜」を、当該「第2電極」上に形成するのであるが、かかる技術では、この「保護膜」を形成する手間に加え、当該「保護膜上に、第2電極に連結される第3電極」を形成する手間が、いわば余計にかかってしまうことがデメリットとして認識される(特許文献2の〔図4〕から〔図5〕等参照)。装置構成の多層化は、生産性(工程数増大、あるいは歩留まりの悪化)の観点からはもちろん、光取り出し効率(特許文献2において、光は、「第1及び第2の保護膜6及び7」を通過して外部に取り出される。〔0021〕参照)等の点からも、なるべくなら回避したい。
【0008】
さらに、特許文献3は、その趣旨が必ずしも明瞭であるとはいえないが、要するに、「シャドーマスクを使用せず、基板側に補助配線を形成すること」を課題とし(特許文献3の〔0006〕)、それを解決するための方策として、補助配線の表面を荒らしたり(特許文献3の〔0029〕。なお〔請求項7〕参照)、「下部画素電極と同一の材料を上部画素電極用補助配線上に形成」したり(特許文献3の〔0031〕)、あるいは当該補助配線上に「構造体を形成」したり(特許文献3の〔0032〕。あるいは〔請求項10〕〔請求項13〕等参照)、するようである。しかしながら、「構造体」や、「下部画素電極と同一の材料」を別途形成するのでは、前述の「保護膜」と同様、余計な手間がかかるという不具合があるし、補助配線の表面を「荒らす」というのでは、例えば、「下部画素電極」の表面をも同時に「荒らす」ことがあり得ることとなって(特許文献3の〔図7〕等参照)、光透過性能の劣化をもたらすおそれもある。
【0009】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決することの可能な発光装置及びその製造方法、並びに、電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる態様の発光装置、その製造方法、あるいは電子機器において生起する課題を解決可能な、発光装置、その製造方法、あるいは電子機器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、当該基板上に形成された第1電極層と、当該第1電極層と同一の層として、かつ、該第1電極層とは物理的に分断されるように形成された補助電極層と、前記第1電極層を覆うように形成された発光機能層と、当該発光機能層を覆うように形成された第2電極層と、を備え、発光素子が、前記第1及び第2電極層、並びに、これらに挟持される前記発光機能層から構成され、前記補助電極層は、当該補助電極層を断面視した場合、前記第2電極層と接触する側面をもつ。
【0011】
本発明によれば、補助電極層は第1電極層と同一層として形成され、第2電極層は第1電極層上の発光機能層の更なる上層の要素として形成されることから、両者間には、基板の法線方向に沿ってみた場合における一定の距離(即ち、少なくとも発光機能層の厚さ分の距離)がおかれる。
補助電極層は、このような立体的配置関係の下、第2電極層と接触する「側面」をもつ。この場合、好適には第2電極層の形成時に、当該第2電極層の一部と、前記側面との間でコンタクトがとられる。例えば、第2電極層が蒸着法によって形成される場合、当該第2電極層を構成することとなる蒸着材料は、発光機能層上に堆積していくとともに、補助電極層の周囲にも堆積していくから、前記「側面」と第2電極層との間には、比較的自然に、コンタクトがとられることになる。
このように、本発明においては、補助電極層の「側面」と第2電極層とが、いわば直接的なコンタクトをもっているので、両者間の電気的な導通は、第2電極層の電気抵抗値を低下させるためには十分な程度確保される。
また、本発明によれば、補助電極層は、発光素子を構成するのに必要な第1電極層と同一の層として形成されるので、製造上の手間が増大するということも殆どない。さらに同じ理由から、補助電極層を設置するがために、何らかの特別の膜や構造体の設置が要求されるなどということもないので、生産性の更なる向上が図られ、また、光透過性能に影響を与えることなどもない。なお、「補助電極層が、第1電極層と同一の層として形成される」とは、第1電極層を形成する工程と同一の工程で同一の材料で形成されるという意味である。したがって、「同一の層として」とは、同一の工程で同一の材料で形成された層と定義される。
【0012】
なお、本発明において、補助電極層と第2電極層との間でコンタクトがとられている部分には、前述のように当該補助電極層の「側面」が含まれるが、当該のコンタクト部分には更に、補助電極層のその他の部分(例えば、場合により、「上面」等々)が含まれていてもよい。「第2電極層と接触する側面をもつ」とは、少なくとも、当該「側面」が、前述のコンタクト部分に含まれるという趣旨である。
また、本発明にいう「発光機能層」は、例えば基板全面を覆うかのように形成される有機薄膜であってよい。これに関する、より具体的な構成例については、後述する実施形態、あるいはそこで参照される図面の全般を参照されたい。
【0013】
この発明の発光装置では、隣接し合う前記発光素子間を区分する隔壁層を更に備え、前記補助電極層は、前記隔壁層を貫通するように形成された接続孔の底部に位置する、ように構成してもよい。
この態様によれば、隔壁層が、隣接し合う発光素子間を区分するので、これらの間の好ましくない相互干渉等の発生が未然に防止される。なお、「隔壁」というは、当該の「隔壁層」が、基板面の法線方向に沿って突出した部分をもつこと、要するに所定の“高さ”をもつことを含意する。
そして、本態様によれば、そのような隔壁層に形成された接続孔の底部に、補助電極層が存在する。ここで「接続孔の底部」とは、前述した本態様に係る規定ぶりからもわかるように、典型的には、前記層間絶縁膜の表面部分に一致する。
このような形態的特徴から、本態様では、補助電極層は、いわばより奥まった位置に存在するということになる。したがって、例えば発光機能層が蒸着法によって形成される場合であっても、当該発光機能層を構成することとなる蒸着材料が、当該補助電極層の存在位置にまで到達することは比較的に困難となる。この際、とりわけ補助電極層の「側面」の清浄性はよりよく確保される。つまり、このような補助電極層の配置態様によれば、より一般的にいって、発光機能層の形成工程に起因する悪影響の発生可能性が低減されるのである。そして、第2電極層は、そのような補助電極層の、前記「側面」と電気的接触をもつ。
以上により、本態様では、第2電極層と補助電極層との電気的導通がより確実に図られ、当該第2電極層の低抵抗化がより実効的に達成される。
【0014】
この態様では、前記補助電極層は、その平面視した形状が直線形状を含み、その直線の延在方向から臨んだ、前記接続孔の底部の幅は、当該方向から臨んだ、前記補助電極層の幅よりも大きい、ように構成してもよい。
この態様によれば、いわば、接続孔のサイズよりも、補助電極層のサイズが相対的に小さいことになる。したがって、第2電極層は、当該補助電極層の周囲に、より入り込みやすくなり、当該第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
なお、本発明は、「接続孔」の具体的態様ないし形状について特別な限定を加えない。したがって、当該接続孔は、例えば円柱形状であってもよいし、あるいは、後述する実施形態の中で説明されるように平面視して一定程度以上の長さをもつ、いわば“溝”のような形状であってもよい。いずれにせよ、本態様にいう「接続孔の底部の幅」は、本態様の規定に従う限り観念可能であり、また、かかる「幅」と補助電極層についての「幅」とが当該規定を満たすなら、前述同様の作用効果が得られることに変わりはない。
また、本態様において、「補助電極層」が「直線形状」を含むというのは、当該補助電極層それ自体が直線的な配線として設置される場合を当然含むほか、例えば、「線分」状の導電性薄膜の複数が所定の配列秩序に従って配列されているような場合をも含む。
【0015】
この態様では、前記接続孔の開口部からその底部を平面視した場合に、前記補助電極層の両側部が視認可能である、ように構成してもよい。
この態様によれば、第2電極層の形成前の時点でみて、直線形状を含む補助電極層の両側部が、いわば外界に露出されるかの如き状態が作り出される。したがって、第2電極層は、この「両側部」に係る前記「側面」との間でコンタクトをとることが可能になる。これにより、当該第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
【0016】
また、前記「隔壁層」及び「接続孔」を備える態様では、前記接続孔を形作る前記隔壁層の壁面及び前記基板の面間の角度は、所定値以下である、ように構成してもよい。
この態様によれば、接続孔を形作る壁面の角度が所定値以下であるので、第2電極層の形成時、接続孔の開口部付近と底部付近との間で、当該第2電極層の断絶を生ぜしめるおそれが低められる。つまり、それら両部分間の第2電極層はいわば滑らかに繋がりその一体性を保つことが可能になる。
【0017】
また、本発明の発光装置では、前記補助電極層は、その平面視した場合における面内に開口部をもち、前記補助電極層の前記側面は、前記開口部を形作る当該補助電極層の壁面を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、補助電極層が開口部をもち、当該開口部の壁面が、前記「側面」、即ち第2電極層と接触する側面に含まれる。この場合、例えば、形成すべき開口部の数を調整すること等によって、「側面」の面積を実質的にいわば増やすことも可能になる。いずれにせよ、「開口部」の「壁面」が利用されることにより、本態様によれば、第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
【0018】
また、本発明の発光装置では、前記補助電極層の厚さは、前記発光機能層の厚さ以上である、ように構成してもよい。
この態様によれば、補助電極層は発光機能層よりも厚いので、発光機能層形成後も、当該補助電極層の「側面」の露出面積はより大きくなる。したがって、第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
【0019】
また、本発明の発光装置では、前記補助電極層の断面形状は、テーパ形状又は逆テーパ形状を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、補助電極層がテーパ形状、あるいは逆テーパ形状を含むので、その「側面」の面積が、そうでない場合に比べてより大きくなる。したがって、第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
なお、本態様において、「補助電極層の断面形状」が「テーパ形状…を含む」というのは、補助電極層の断面形状中、前記基板に近い側の辺が、それに遠い側の辺に比べて長い概略台形状を、当該断面形状が含む場合をいう。同様に、「逆テーパ形状を含む」というのは、いま述べたのとは逆、即ち前記基板に近い側の辺が、それに遠い側の辺に比べて短い概略台形状を、当該断面形状が含む場合をいう。
【0020】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明によれば、上述した各種の発光装置を備えてなるので、第2電極層の低抵抗化が達成される。したがって、輝度均一性が維持される等、より高品質の画像を表示することが可能である。
【0021】
一方、本発明の発光装置の製造方法は、上記課題を解決するため、基板上に、第1及び第2電極層、並びに、これらに挟持される発光機能層から構成される発光素子を備えた発光装置を製造する発光装置の製造方法であって、前記第1電極層、及び、当該第1電極層とは物理的に分断されるように補助電極層を形成する第1工程と、前記第1電極層を覆うように前記発光機能層を形成する第2工程と、当該発光機能層を覆うように、且つ、前記補助電極層との間で接触部分をもつように前記第2電極層を形成する第3工程と、を含み、前記第2工程は、前記基板に対し一定の方向に沿って飛行する前記発光機能層の原材料が当該基板上に堆積する第1蒸着工程を含み、前記第3工程は、前記基板に対し所定の複数方向に沿って飛行する前記第2電極層の原材料が当該基板上に堆積する第2蒸着工程を含む。
【0022】
本発明によれば、まず、前記第2工程が前記第1蒸着工程を含む、即ち、一定の方向に沿って飛行する原材料が基板上に堆積することによって、発光機能層が形成される。したがって、当該発光機能層が、先に形成されている補助電極層の上に仮に堆積していくとしても、当該発光機能層は、主に、補助電極層のうち前記一定の方向と対向する面の上に、堆積・形成されることになる。つまり、この場合、当該の面以外の面(以下、この〔課題を解決するための手段〕の項においては、「露出面」という。)では、補助電極層の上に、発光機能層が存在し難くなるという状況が好適に作り出されるのである。
続いて、前記第3工程は前記第2蒸着工程を含む、即ち、所定の複数方向に沿って飛行する原材料が基板上に堆積することによって、第2電極層が形成されるので、当該第2電極層は、前述した露出面をも含めて、補助電極層を形作る複数の面の上に、堆積・形成されることになる。これにより、当該の露出面と当該第2電極層との間では、いわば直接的なコンタクトが好適にとられることになる(この場合、前記の「接触部分」は、そのようなコンタクト部分を含む。)。
このようにして、本発明によれば、補助電極層と第2電極層との間の、いわば直接的なコンタクトが好適にとられることになるので、両者間の電気的な導通も、第2電極層の電気抵抗値を低下させるためには十分な程度確保される。
また、本発明によれば、補助電極層は、発光素子を構成するのに必要な第1電極層と同一の層として形成されるので、製造上の手間が増大するということも殆どない。さらに同じ理由から、補助電極層を設置するがために、何らかの特別の膜や構造体の設置が要求されるなどということもないので、生産性の更なる向上が図られ、また、光透過性能に影響を与えることなどもない。
【0023】
この発明の発光装置の製造方法では、前記第2蒸着工程は、前記基板及び前記原材料を収納する蒸発源の少なくとも一方を、所定の軸を中心に回転させる工程を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、第2蒸着工程は、基板、あるいは蒸発源が回転しながら行われることになるので、前述の「所定の複数方向」とは、前記所定の軸を中心とした円周上の任意の一点と当該中心とを結ぶ方向(要するに、「全方向」といっても過言でない。)とも言い換えられ得ることになる。
かかる態様によれば、前述した、本発明に係る作用効果がより実効的に奏されることになるのは明白である。
なお、本態様においては、場合により、蒸発源及び基板間の距離が変更可能であるように、又は、蒸発源の中心及び基板の中心間を結ぶ線分と、所定の基準線(例えば、水平線)とのなす角度が変更可能であるように、当該蒸発源及び当該基板の少なくとも一方が移動可能に構成されてもよい。これによれば、前述の作用効果が更に実効的になることは言うまでもない。
【0024】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記第1工程の後に、隣接し合う前記発光素子間を区分する隔壁層を形成する工程と、少なくとも前記第3工程の前に、その開口部からその底部を平面視した場合に前記補助電極層が現れるような接続孔を、前記隔壁層に形成する工程と、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「隔壁層」及び「接続孔」を備える態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
すなわち、本態様においては、補助電極層は、いわばより奥まった位置に存在することになるから、当該位置に発光機能層となるべき蒸着材料が到達することはより困難となり、したがって前記露出面が作り出されやすいということになる。よって、第2電極層と補助電極層との電気的導通はより確実に図られ、当該第2電極層の低抵抗化がより実効的に達成される。
【0025】
この態様では、前記補助電極層は、その平面視した形状が直線形状を含むように形成され、前記接続孔は、前記直線の延在方向から臨んだ、当該接続孔の底部の幅が、当該方向から臨んだ、前記補助電極層の幅よりも大きくなるように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「接続孔」及び「補助電極層」の「幅」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
接続孔が具体的にはどのような形状をもってもよいこと、また、補助電極層が直線形状を含むということの意義についても、前述と同様である。
【0026】
この態様では、前記接続孔は、当該接続孔の開口部からその底部を平面視した場合に、前記補助電極層の両側部が視認可能なように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「補助電極層の両側部」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
すなわち、この場合、前記「両側部」に係る側面が、前述した「露出面」となり得る。これにより、第2電極層と補助電極層との電気的接触は、より確保されやすくなる。
【0027】
また、前記「隔壁層」及び「接続孔」を備える態様では、前記接続孔は、該接続孔を形作る前記隔壁層の壁面及び前記基板の面間の角度が、所定値以下となるように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「接続孔を形作る…壁面」の「角度」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
【0028】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記補助電極層は、当該補助電極層を平面視した場合における面内に開口部をもつように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「開口部」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
すなわち、この場合、前記「開口部」を形作る補助電極層の壁面が、前述した「露出面」となり得る。このようなことから、本態様によれば、第2電極層と補助電極層との電気的接触が、より確保されやすくなるのである。
【0029】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記発光機能層は、その厚さが前記補助電極層の厚さを下回るように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「補助電極層の厚さ」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
すなわち、本態様によれば、発光機能層は、それに先んじて形成される補助電極層の厚さに対して、より小さな厚さを持つものとして、後に、形成される。この場合、それらの厚さの差は、前述した「露出面」を作り出すためには極めて有効である。これにより、第2電極層と補助電極層との間でコンタクトがとられる部分を実質的に増大させ、あるいは両者間のコンタクトの確実性を増大させることができる。
【0030】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記補助電極層は、その断面形状がテーパ形状又は逆テーパ形状を含むように、形成される、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、本発明に係る発光装置のうち、「テーパ形状又は逆テーパ形状」に関する規定を含む態様によって奏されるものとして説明した作用効果と同様の作用効果が奏される。
「テーパ形状」あるいは「逆テーパ形状」の意義についても、前述と同様である。
なお、この態様の場合、「テーパ形状又は逆テーパ形状」を構成する斜辺と、前述した第1蒸着工程における「一定の方向」との関係が好適に設定されているとなお好ましい。具体的には例えば、「逆テーパ形状」の両斜辺のうちの一方の斜辺が延在する方向と、前記「一定の方向」とが平行、あるいはそれに近い関係にあるとか、当該両斜辺に挟まれた前記基板に平行な辺と、前記「一定の方向」とが垂直、あるいはそれに近い関係にある、などといった態様が好適である。
これによれば、当該「逆テーパ形状」による、いわば隠れた部分には、発光機能層を構成することとなる原材料がより一層到達し難くなり、前述した「露出面」が、極めて好適に作り出されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
<有機EL装置の構成>
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図6を参照しながら説明する。なお、ここに言及した図1乃至図6に加え、以下で参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0032】
有機EL装置は、図1に示すように、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素とを備えている。各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、並びに対向電極用電源線201である。
【0033】
有機EL素子(発光素子)8は、図1、あるいは図3に示すように、素子基板7上に複数備えられる。それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、画素電極13、発光機能層及び対向電極から構成されている。このうち対向電極には、その機能を補助するための補助電極501が設けられている(図3参照)。これら各要素の詳細に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0034】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(画素回路)Pが設けられている。
【0035】
単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8の画素電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0036】
素子基板7上の周辺領域上には、素子基板7の外形輪郭線にほぼ沿うように、平面視してΠ字状の形状をもつ、対向電極用電源線201(以下、単に「電源線201」という。)が形成されている。この電源線201は、有機EL素子8の対向電極及び前記の補助電極501に例えばグランドレベル等の電源電圧を供給する。
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、並びにデータ線駆動回路106のすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0037】
平面視した場合に以上述べたような構成を備える有機EL装置は、図4に示すような積層構造物250を備えている。この積層構造物250は、図4に示すように、素子基板7を基準として、図中下から順に、回路素子薄膜11、層間絶縁膜301、画素電極13及び補助電極501、発光機能層18、並びに対向電極5を含む。
【0038】
このうち、層間絶縁膜301は、その他の残る導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中の好適な配置を実現するため等に貢献する。層間絶縁膜301は、積層構造物250中、単層のみ設けられるとは限らず、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、その積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。
より具体的には例えば、層間絶縁膜301は、SiO、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
【0039】
回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、図4に示す積層構造物250中には、前述した走査線3及びデータ線6も当然構築されているが、その図示は省略されている。
【0040】
一方、前述の有機EL素子8の各々は、図4に示すように、積層構造物250を構成する前述の各種の要素のうち、画素電極13、発光機能層18、及び対向電極5から構成される。
【0041】
このうち画素電極13は、素子基板7上に、マトリクス状に配列するように形成されている。有機EL素子8がマトリクス状に配列されているということは、このように画素電極13がマトリクス状に配列されているということに相応する(図3参照。なお、図3は、図4を基準としてみた場合、隔壁層340までが形成済みである場合(言い換えると、発光機能層18及び対向電極5が未形成である場合)の、有機EL装置の表面の状態を表している。)。
この画素電極13は、コンタクトホール360を介して、前述の回路素子薄膜11と電気的に接続されている。これにより、この画素電極13は、図2に示した第2トランジスタ9を介して電流供給線113から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。なお、コンタクトホール360は、層間絶縁膜301を貫通するようにして形成されている。
【0042】
このような画素電極13は、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、あるいはAgとITO(Indium Tin Oxide)との積層膜、等々の導電性材料から作られている。この場合、AlやAg等が、図4に示すように、発光機能層18から発せられた光Lを反射する。この反射光は、図中上方に向かって進行する(図4中の矢印参照。)。
このように、本実施形態に係る有機EL装置は、いわゆるトップエミッション型である。なお、このことから、素子基板7は、セラミックスや金属等の不透明材料で作られてよい(これとは反対に、ボトムエミッション型の場合、素子基板7は、透光性材料から作られている必要がある。)。
【0043】
なお、このような画素電極13は、図4に示すように補助電極501と同一層として形成されているが、この点については、後に改めて述べる。
【0044】
隔壁層340は、図3、あるいは図4に示すように、上述したような画素電極13のうち、平面視して隣接する画素電極13間の領域に形成されている。この隔壁層340は、各有機EL素子8を区画する役割を担う。
このような隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料で作られて好適である。
なお、この隔壁層340の詳細については、後述する補助電極501に関する説明の際、改めて触れる。なおまた、この隔壁層340は、場合によっては、一般に“バンク”とも呼称される。
【0045】
発光機能層18は、図4に示すように、画素電極13の上に形成されている。この発光機能層18は、少なくとも有機発光層を含む。有機発光層は、正孔と電子の再結合により生起した励起子が基底状態へと遷移することによって発光する有機EL物質から構成されている。この有機EL物質が例えば低分子材料である場合、当該有機EL物質は、例えばスパッタリング法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等々の蒸着法によって、形成可能である。そして、これによると、当該の発光機能層18は、図示するように、素子基板7の全面を覆うかのように形成されうることになる。
発光機能層18を構成する他の層として、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0046】
対向電極5は、図4に示すように、複数の有機EL素子8の発光機能層18に接触している。この対向電極5は、平面視して、素子基板7の全面を覆うかのような矩形状(その内部に特別な開口、間隙等をもたない、いわゆるベタ状)に形成される(図4ではその一部が図示されている。)。対向電極5の周囲は、図1に示した電源線201に電気的に接続される(その接続態様は不図示)。
このような対向電極5は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性かつ導電性の材料から作られる。あるいは、どのような材料でも、十分に薄い薄膜を形成すれば、それは一定程度以上の透光性をもつので、対向電極5は、ITO以外にも、マグネシウム・銀(MgAg)等の金属材料、合金材料等で作られてよい。
【0047】
以上の構成に加えて、本実施形態に係る有機EL装置は特に、補助電極501を備えている。
補助電極501は、平面視すると、図3に示すように、マトリクス状配列に従って並ぶ画素電極13の行間を縫うように延びる。本実施形態に係る補助電極501は、図示するように、直線形状であり、その両端は、図1に示した電源線201に接続されている。
また、この補助電極501は、断面視すると、図4に示すように、前述した層間絶縁膜301上に形成されている。図からも明らかな通り、補助電極501は、前記の画素電極13と同一層として形成されている。ただし、平面視すると両者間は物理的に分断されており、補助電極501及び画素電極13間は、電気的にほぼ完全に絶縁されている(図3参照)。
【0048】
より詳細に、この補助電極501は、その配置態様等につき、前述した隔壁層340との間で以下のような密接な関係を持つ。
まず、その前提として、隔壁層340の詳細について説明する。
隔壁層340は、平面視すると、図3に示すように、図中左右方向に関してはいわば連続的に形成される一方、図中上下方向に関しては、いわば断続的に形成される。言い換えると、隔壁層340は、マトリクス状配列に従って並ぶ画素電極13の各行を一単位とするように形成されている。
隔壁層340の高さは、図中左右方向に関する限り、ほぼ一定である。より具体的に、この隔壁層340の図4中上下方向の実際上の高さは概ね1〜2μmである。
【0049】
他方、前述の、隔壁層340が断続した部分は、図3、あるいは図4に示すように、接続孔340Hの形成位置に対応する。本実施形態において、この接続孔340Hは、隔壁層340が前記各行を一単位とするように形成されていることに対応して、図中左右方向に延在する溝のようなものとして形成されている。すなわち、この接続孔340は、当該方向に沿って延在する隔壁層340の壁面340Wによって、その形状が形作られる。
図3中上下方向でみた、接続孔340Hの形成間隔(あるいは、ピッチ)Phは、画素電極13の同方向の長さを決定的な基準の1つとして定められる。
なお、前述の壁面340Wと素子基板7の面とのなす角度φ(図4参照)は、例えば80度以下、より好ましくは60度以下とされて好適である(その意義については、後の製造方法の説明の際に触れる。)。
【0050】
隔壁層340及び接続孔340Hが以上のような構造をとることを前提に、前述した補助電極501は、当該接続孔340Hの内部、より正確には、その底部に位置付けられるように配置されている(したがって同時に、層間絶縁膜301上に存在するということにもなる。)。
この場合、直線形状である補助電極501の延在方向は、接続孔340Hのそれに一致する。したがって、前述のように、補助電極501も、接続孔340Hも、画素電極13あるいは有機EL素子8の行間を縫うように延在する(図3参照)。
また、補助電極501の幅Weは、接続孔340Hの底部の幅Whに比べて小さい(We<Wh。なお、We及びWhともに、図3では、図中上下方向に沿って測った長さである。)。
本実施形態においては、かかる条件が満たされるほか、図3に示すように、接続孔340の開口部からその底部を臨んだ場合、補助電極501の両側部が視認可能である。例えば、図3における、ある1つの接続孔340H内において、補助電極501を表す図中上辺部分と、図中上方の壁面340Wと層間絶縁膜301の面とが交わる部分との間には一定の距離がある。補助電極501を表す図中下辺部分と、図中下方の壁面340Wに係る同様の部分についても、同様である。本実施形態においては特に、これら両距離は等しい(つまり、この距離はいずれも、“(Wh−We)/2”に等しい。)。要するに、補助電極501は、溝としての接続孔340Hの真ん中を貫くようにして延在する。
【0051】
加えて、本実施形態に係る補助電極501は、その厚さTが、図5に示すように、前記の発光機能層18の厚さDよりも大きい。したがって、その厚さの差(=T−D)に対応する部分は、素子基板7上に対向電極5が形成される前であれば、いわば外部に露出されるかの如き状態に置かれることになる(図9参照。同図については後述する製造方法の説明の際に改めて触れる。)。この露出される部分は、図4、あるいは図5に示すように、補助電極501を断面視した場合における両側面である。
対向電極5が形成された後では、この補助電極501の両側面に当該対向電極5が接触する(図5においては、両者の接触部分に符合“ct”を付している。)。これにより、補助電極501及び対向電極5間は導通状態におかれ、一方が所定の電位にあるならば、少なくとも原理的には、他方も瞬時にその電位をとることになる。
【0052】
以上述べたような補助電極501は、少なくとも対向電極5の抵抗値よりは低い抵抗値をもつ材料で作られて好適である。画素電極13を構成すべき材料として前述したAl、あるいはAgは、かかる条件をよく満たす(それぞれの電気抵抗値(比抵抗)は、2.62〔μΩ・cm〕、1.62〔μΩ・cm〕と、いずれも極めて低い。)。
また、この補助電極501(と、これに加えて画素電極13と)は、場合により、金(Au)や銅(Cu)等々で作られてもよい(これらの電気抵抗値(比抵抗)は、2.4〔μΩ・cm〕、1.69〔μΩ・cm〕である。)。
【0053】
なお、上記においては、補助電極501の断面形状が長方形状となっているが、場合によっては、図6に示す補助電極502のように、その断面形状がテーパ形状となっていてもよい。このようであれば、補助電極502の側面の面積が、図5の場合に比べてより大きくなる。したがって、補助電極502と対向電極5の電気的接触が、より確保されやすくなる。
あるいは、当該断面形状は、後述する図18に示す逆テーパ形状となっていてもよい。この場合でも、いま述べた面積増大による効果は得られるが、それに加えて、製造方法を実行する上での効果も得られる。この点については、後に、この図18を参照しながら改めて触れる。
ちなみに、補助電極502が、図6に示すような断面形状をもつとき、そのテーパ角度、即ち図6に示す角度θの値は、70度以上であることが好ましい。70度を下回ると、補助電極502の断面積の減少による電気抵抗値の増大、あるいは、その抵抗値減少を回避しようと補助電極502の幅を大きくすれば画素開口率が減少すること、といった好ましからざる影響が出てくるからである。
なお、前記で、70度「以上」というのは、前述した「逆テーパ形状」をも視野に入れる趣旨である。すなわち、図6の破線及び破線矢印で表されるところからも明らかなように、「70度以上」のうち90度を超える部分は、補助電極502が逆テーパ形状になる場合を考えている。ちなみに、その上限を画する特別な事情は特に存在しないが、強いて言えば、逆テーパ形状を形作ることが可能な限界値が、「70度以上」の上限値にあたるということはできる。
【0054】
<有機EL装置の製造方法>
次に、以上に述べた本実施形態に係る有機EL装置の製造方法について、既に参照した図1乃至図6に加えて、図7乃至図13を参照しながら説明する。
まず、素子基板7の上に、回路素子薄膜11及び層間絶縁膜301が形成される。これらのいずれの成膜においても、既知であるところの、例えばPVD法、CVD法やスパッタ法等の成膜方法や、あるいはフォトリソグラフィ法等が適宜利用される。その際、回路素子薄膜11の成膜では、第1トランジスタ68等のTFT(Thin Film Transistor)の製造が含まれるから、その半導体層へのドーピング工程等も行われ、絶縁膜301及び302の成膜では、そこにコンタクトホール360を形成するために、適当なエッチング工程等も行われる。
【0055】
続いて、図7に示すように、画素電極13及び補助電極501が形成される。
これらの電極(13,501)は、例えばスパッタ法で厚さ200nm程度に形成されたAlの原膜に対して、フォトリソグラフィ及び酸性の混合液等を用いたパターニング処理を実施することで形成される。これにより、平面視して図3に示すような、マトリクス状配列に従って並ぶ画素電極13と、これら画素電極13とは物理的に分断された、前記マトリクス状配列の行間を縫うように延びる補助電極501とが同時に形成される(図7参照)。
【0056】
なお、この工程では、前記Alに代えて、AlNd、Ag、あるいはITO/Ag/ITO等の積層膜が形成されてもよい。
また、この工程では、前述したAl等の各種の材料からなる薄膜の上に、ITO等の薄膜を形成してもよい。この場合、当該ITO等の薄膜の厚さは、30〜150nm程度とするとよく、更に好適には、当該の厚さは、画素電極13及び対向電極5(図4参照)が光共振器を構成する2つの反射鏡を構成するが如くこれら両電極(5,13)間の距離が定まるように、定められるとよい。図4に示した光L(即ち、発光機能層18を発した光)は、これにより適当な程度増幅される。
さらに、この、Al等の上層としてのITO等の薄膜が形成される場合、当該ITO等の薄膜の上に更に、SiN等からなる電食防止用の薄膜が形成されてもよい。この薄膜の厚さは、例えば50nm程度とするとよい。
以上のITO等の薄膜、あるいは電食防止用の薄膜は、前述の画素電極13と同様、例えばCVD法等によって形成されてよく、更に、フォトリソグラフィ及びエッチング工程の実施を伴うパターニング処理を経て形成されてよい。
【0057】
続いて、図8に示すように、隔壁層340及び接続孔340Hが形成される。
隔壁層340は、例えば感光性ポリイミドの塗布後、露光工程、現像工程を経て、その外形形状が形成される。
この際、隔壁層340となるべき原薄膜は特に、先の工程において形成済みのコンタクトホール360を埋めるようにして塗布される(図4参照)。これによれば、最終的に形成される積層構造物250の表面において、極端に陥没しているかの如き部分が作り出されることが防止される。
また、隔壁層340は、その断面形状が、図8、あるいは図4等に示すようなテーパ形状に形作られる。前記現像工程では、そのような隔壁層340の間の部分が除去されるが(図8中符号340’参照)、この除去部分は、画素電極13及び補助電極501の形成領域にほぼ対応する(図3も参照)。これにより、図8に示すように、画素電極13の図中上面に、該画素電極13を外部に曝す開口部340Kが形成され、かつ、補助電極501の全部を外界に曝す接続孔340Hが形成される(これらと同時に、隔壁層340それ自体も形作られる。)。
このうち接続孔340Hは、その開口部から底部を臨むと補助電極501の両側部が視認可能となるような大きさを持つ。すなわち、図8に示す、補助電極501の左右方向の幅Weは、接続孔340Hの底部の同方向の幅Whよりも小さい(図3も参照)。また、この接続孔340Hを形作る壁面340Wと素子基板7の面とのなす角度φ(図4参照)は、既に述べたように、80度以下、より好ましくは60度以下とされて好適であるが、これは、後に述べる対向電極5の形成に関わる。この点については、その際に触れる。
【0058】
なお、上述においては、隔壁層340となるべき原薄膜が感光性材料で作られている場合の製造方法について説明しているが、これとは若干異なり、隔壁層340となるべき原薄膜が感光性材料でない場合には、当該原薄膜に対してフォトリソグラフィ及びエッチング工程を実施することにより、当該隔壁層340並びに接続孔340H及び開口部340Kが形成される方法が採用されてよい。
【0059】
続いて、図9に示すように、発行機能層18が形成される。この発光機能層18は、素子基板7の全面を覆うかのように形成される。
【0060】
発光機能層18は、図10及び図11に示すように、インライン方式の蒸着方法によって形成される(なお、図11では、素子基板7上、発光機能層18以外の要素の図示が全て省略されている。)。図11において、蒸着装置は、蒸発源2及び基板設置テーブル4を備えるが、蒸発源2内に収納された蒸着材料は、適当な加熱手段によって加熱されることによって溶融・蒸発し、基板設置テーブル4上の素子基板7に向かって飛散・飛行し、当該基板7上に堆積していく。なお、この場合の蒸着材料は、例えば低分子材料たる有機EL物質である。低分子材料としては、Alq3、DPVBiなどのホスト材料、これにナイルレッド、DCM、ルブレン、ぺリレン、ローダミンなどをドープした材料、又は、ホスト単独の材料、等が利用可能である。
この際、素子基板7ないし基板設置テーブル4は、図中左右方向に移動可能である(蒸着実行中の移動速度は、例えば0.2〜0.5cm/sec程度とされて好適である。)。したがって、発光機能層18となるべき蒸着材料は、図10の矢印に示すように、素子基板7をめがけ、一定の方向に沿って飛行してくる。これによると、当該蒸着材料は、素子基板7上の前記補助電極501等のうち当該一定の方向と対向する面の上に、主に堆積していくことになる(図10及び図8を対比参照)。つまり、この場合、図10の符号Vによって指示された領域によって端的に表現されているように、いわゆる付き回りの悪い部分が生じるのである(以下、この符号Vが付された“付き回りの悪い部分”を、便宜上、「陰部分V」と呼ぶことにする。)。この際、補助電極501が、接続孔304の底部、即ち蒸発源2からみていわばより奥まった位置に存在するということも、このような陰部分Vの作出にとっての促進事由になる。当該蒸着材料が、当該補助電極501の存在位置にまで到達することが比較的に困難となるからである。
また、このような蒸着工程は、発光機能層18の厚さが150nm程度となるまで行われる。前述のように、画素電極13及び補助電極501が例えばAl及びITOの積層膜からなる場合、その厚さの最小値は230nm(=200nm(Al薄膜)+30nm(ITO薄膜))であるので、この150nm程度という厚さは、当該補助電極501等の厚さを下回る。
以上のようにして、図9に示す発光機能層18が形成される。
なお、この図9においては、蒸着後の発光機能層18の様子について、前記の陰部分V等の付き回りの悪い部分の存在に配慮した、より厳密な図示がなされているが、前述した図4乃至図6においては、そのような配慮、ないしそれに基づく厳密な図示は省略されている。
【0061】
続いて、対向電極5が形成される。この対向電極5は、前記発光機能層18と同様、素子基板7の全面を覆うかのように形成される。
【0062】
対向電極5は、図12及び図13に示すように、回転方式の蒸着方法によって形成される(なお、図13では、素子基板7上、発光機能層18及び対向電極5以外の要素の図示が全て省略されている。)。ここで回転方式とは、図13に概念的に示されているように、蒸発源2が素子基板7に対して、所定の軸を中心に回転しながら、蒸着が実行される方式である(蒸着実行中の回転速度は、例えば20rpm程度とされて好適である。)。なお、この場合の蒸着材料は、例えばMgAgである。
かかる方式によれば、対向電極5となるべき蒸着材料は、図12の矢印に示すように、素子基板7をめがけ、複数の方向に沿って、より正確に言えば、前記所定の軸を中心とした円周上の任意の一点と当該中心とを結ぶ方向(要するに、当該軸を中心にしてみた周囲360度の方向、あるいは「全方向」といっても過言でない。)に沿って飛行してくることになる。これによると、当該蒸着材料は、前記の陰部分Vをも埋めるように、素子基板7上に堆積していく(図12及び図10を対比参照)。このような蒸着工程は、対向電極5の厚さが10nm程度となるまで行われる。
このようにして、最終的に図12、あるいは図5等に示す対向電極5が形成される。この場合、かかる対向電極5は、補助電極501の側面と極めて良好に接触する。すなわち、対向電極5となるべき蒸着材料は、前記陰部分Vにも好適に回り込んでくるので、その陰部分Vに対応して外界に露出されていた補助電極501の側面と対向電極5とは、より幅広い面積でもって、直接的に接触する。また、陰部分Vとは反対側の補助電極501の側面(図12でいえば、左側の側面)においても、両者間の接触は好適に確保される。これは、前述のように当該補助電極501の厚さが発光機能層18の厚さ以上とされているため、当該側面のうち、その厚さの差に対応する部分が、対向電極5の形成前において、やはり好適に外界に露出するからである(いずれの場合も、図12中の符号ct参照。また、この図12と図9とを対比参照。)。
【0063】
ちなみに、この対向電極5の形成の際には、上で説明を後回しにしてきた、壁面340Wの角度φの効果が発揮される。すなわち、当該の角度φが、80度以下、好ましくは60度以下とされていれば、対向電極5の形成の際に、隔壁層340の角部分に対応した当該対向電極5の断絶(いわゆる段切れ)が極めて生じ難くなるのである。
【0064】
なお、本実施形態では、前述のように、発光機能層18について、前記陰部分Vのような付き回りの悪い部分を積極的に作り出すことを考慮すると、そのような場合における当該発光機能層18の「厚さ」は、素子基板7の面上において、まちまちになることが考えられる。そのような場合を前提に、補助電極501の厚さと発光機能層18の厚さとを比べることを考えると、その比較対象となる発光機能層18の「厚さ」とは、“素子基板7全面に関する平均的な厚さ”、“最大厚さ”、あるいは“画素電極13上に存在することとなる当該発光機能層18の厚さ、ないしはその平均的な厚さ”、等々を意味すると考えるのが好適である。
また、上で参照した図13は、「複数の方向に沿って」蒸着材料が飛行する様子を、よりよく説明するための概念図であって、必ずしも、実際の蒸発源2の回転の様子を表すものではない。実際の蒸着装置上では、例えば、蒸発源2及び素子基板7がともに、図13に示す中心軸にのるように配置されるとともに、素子基板7の側が当該中心軸を中心にして回転するような構成が採用されてもよい。この場合でも、前記と同様の効果は得られる。
【0065】
以上述べたような有機EL装置の構成及び製造方法によれば、次のような効果が奏される。
(1) まず、本実施形態に係る有機EL装置によれば、補助電極501の側面と対向電極5とが、いわば直接的なコンタクトをもっているので(図5、あるいは図12に示した接触部分ct、参照)、両者間の電気的な導通は、当該対向電極5の電気抵抗値を低下させるためには十分な程度確保される。したがって、発光機能層18への電流制御は安定的に行われ、また、表示される画像の輝度均一性の維持が容易となる。
【0066】
(2) そして、本実施形態では、このような効果が以下の各事情に基づいてより実効的に享受可能である。
(2‐1) 本実施形態において、補助電極501の厚さは、発光機能層18の厚さ以上を持つものとして形成される。この両者の厚さの差は、前述の構成及び製造方法で述べたように、補助電極501及び対向電極5間の好適な接触部分ctを実現するための基礎の1つとなる。
【0067】
(2‐2) 本実施形態において、補助電極501の幅Weは、これに対応する接続孔340Hの幅Whに比べて小さく、しかも、当該接続孔340Hの開口部からその底部を臨むと当該補助電極501の両側部が視認可能である(図3参照)。したがって、対向電極5となるべき蒸着材料は、補助電極501の周囲に、より入り込みやすく、また、前記両側部に係る側面との間でより好適に補助電極501及び対向電極5間のコンタクトをとることが可能になる。
【0068】
(2‐3) 本実施形態に係る製造方法に関しては特に、既述のように、発光機能層18及び対向電極5を形成する場合の蒸着法式が、そのそれぞれの場合において異なる。前者によれば、前記陰部分Vが形成されやすく、後者によれば、対向電極5となるべき蒸着材料によって当該陰部分Vが埋められ易い。この場合、後者の方式が回転方式であることは、陰部分Vを埋めるために、より効果的である(図12参照)。
また、そもそも、補助電極501が接続孔340Hの底部に形成されるということも、既述のように、当該補助電極501の存在位置への、発光機能層18となるべき蒸着材料の到達を困難にすることから、前記の蒸着方式の差異に基づく効果の差をより強調する。また、このことは、発光機能層18の残渣等が、補助電極501に、あるいは、補助電極501及び対向電極5間の電気的接触に、悪影響を及ぼす影響を小さくする。
【0069】
(3) 本実施形態に係る有機EL装置によれば、補助電極501は、有機EL素子8を構成するのに必要な画素電極13と同一の層として形成されるので、製造上の手間が増大するということは殆どない。さらに同じ理由から、補助電極501を設置するがために、何らかの特別の膜や構造体の設置が要求されるなどということもないので、生産性の更なる向上が図られ、また、光透過性能に影響を与えることなどもない。
【0070】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る有機EL装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
(1) 上記実施形態では、補助電極501が、図3、あるいは図5等に示すような構造をもつものについて説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、本発明にいう「補助電極層」は、図14及び図15に示すような構造をもってもよい。これらの図において、まず、補助電極503が、直線形状をもつことは図3等に示した補助電極501と同様である。しかし、その幅Weは接続孔340Hの底部の幅Whよりも小さいのではなく、その逆に大きい(We>Wh)。つまり、補助電極503の両側部は、図15に示すように、画素電極13と同様、隔壁層340と層間絶縁膜301との間に位置しており、したがって、当該両側部は接続孔340の開口部から臨んでも視認することができない(図14参照)。
【0071】
そして、この補助電極503は、その平面視した面内に開口部503Hをもつ。
より詳細に、この開口部503Hは、図14に示すように平面視して長円形状をもつ。1個1個の開口部503Hは、その延在方向を補助電極503の延在方向に一致させるように、また、当該延在方向と直交する方向には当該開口部503Hが2つ並ぶように、配置される。
【0072】
このような形態によっても、上記実施形態によって奏された作用効果と本質的に異ならない作用効果が奏されることは明白である。
すなわち、このような形態に、上記実施形態に係る製造方法を適用すると、開口部503Hを形作る補助電極503の壁面が、対向電極5を形成する前の露出面となり得る。したがって、前述した上記実施形態の効果として記載した(2‐3)のような効果は、本形態において、この開口部503Hにおいて享受可能なのである(図15中の接触部分ct参照)。
しかも、本形態では、開口部503Hが、図14中上下方向に沿って2つ並んで配置されているので、接触部分ctは、上記実施形態の場合に比べて増大しているとみることが可能である(図15と図5とを対比参照)。このようなことから、本形態によれば、対向電極5と補助電極503との電気的接触が、より確保されやすくなるのである。
【0073】
なお、図14及び図15に示す形態では、補助電極503の両側部が隔壁層340の下層として位置付けられる形態について説明しているが、場合によっては、当該両側部が、上記実施形態と同様、接続孔340Hの開口部から視認可能となっていてもよい。要するに、上記実施形態におけるような補助電極501が、そのままの形で、すぐ上で述べたような開口部503Hをもってもよいのである。
この場合における補助電極501は、その本来的な側面に加えて、当該開口部503Hの壁面としての「側面」をも持つことになり、したがって前記露出面が増大することになるので、前述した実施形態に係る効果はより実効的に奏されることになる。
【0074】
(2) あるいは、上記とは別の例として、本発明にいう「補助電極層」は、例えば図16及び図17に示すような構造をもってもよい。これらの図においても、補助電極504が、直線形状をもつことは図3等に示した補助電極501と同様である。また、補助電極504の幅Weが、接続孔340Hの幅Whよりも小さいことも同様である。ただ、この補助電極504は、その「両」側部が接続孔340Hの開口部からは視認可能なのではなく、そのうちの一方の側部だけが視認可能である。
【0075】
このような形態によっても、上記実施形態によって奏された作用効果と本質的に異ならない作用効果が奏されることは明白である(図17参照)。
【0076】
なお、これら図14乃至図17に示すような態様においては、補助電極503及び504の両側部、あるいはその一方の側部が、隔壁層340の下層として、いわば埋もれてしまうことを許容するので、接続孔340Hの底部の幅Whを、上記実施形態に比べてより小さくすることを可能にする。このことは同時に、図14、図16、あるいは図3等に示す、図中上下方向に並ぶ画素電極13間の距離(つまり、行間距離)を狭めることを可能にする。このようなことから、上述のような補助電極503及び504を備える態様では、一定の面積を持つ画像表示領域7aを基準とした場合、そこに並べることの可能な画素電極13ないし有機EL素子8の数を増やすことができるので、上記実施形態に比べて、精細度をより向上させることが可能になる。
【0077】
(3) 上記実施形態では、補助電極501が、図5等に示すように、その断面形状が長方形状となっているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図18に示すように、その断面形状が逆テーパ形状であるような補助電極505が備えられてもよい(なお、図に表されているところから、あるいは後の説明からも明らかな通り、図18〔A〕は前述の図10に、図18〔B〕は前述の図12に、それぞれ対応している。)。
【0078】
このような形態によると、図5等に比べて、接触部分ctの面積増大による効果が得られることについては、図6を参照しながら既に述べた(図18〔B〕参照)。
加えて、本形態では、以下のような効果も得られる。
すなわち、この形態では、上記実施形態に係る製造方法の説明の際に参照した図10に関連し、発光機能層18となるべき蒸着材料の飛行経路と、前記逆テーパ形状を形作る両斜辺のうちの一方の斜辺が延在する方向とが、平行、あるいはそれに近い関係にあるように設定されると、好ましい。このようであると、図18〔A〕からも明らかなように、陰部分Vに前記蒸着材料が回り込んでくることが、図10に比べても更に困難となるからである。
このようにして結局、本形態によれば、接触部分ctの面積が、上記実施形態に比べても、さらに言えば図6に比べてさえも、更に増大する可能性があり(図18〔B〕、あるいは図6も参照)、もって、上記実施形態よって奏された作用効果が、より実効的に奏されることになるのである。
【0079】
なお、蒸着材料の飛行経路と、補助電極505との好適な関係は、上記以外の場合も考えられる。例えば、逆テーパ形状たる補助電極505を形作る両斜辺に挟まれた素子基板7に平行な辺と、前記飛行経路とが、垂直、あるいはそれに近い関係にある、などといった態様である(図18〔A〕で言えば、図中真上から蒸着物質が降り注いでくるかの如き状態である。)。
【0080】
(4) 上記実施形態では、接続孔340Hが溝のようなものとして形成される態様について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、本発明にいう「接続孔」は、例えば、一般にコンタクトホールの形状として想定される、円柱形状や直方体形状であってもよい。
加えて、上記実施形態では、補助電極501が、溝のような接続孔340Hの延在方向に一致して延びる直線形状をもっている態様について説明しているが、本発明は、かかる形態にも限定されない。
例えば、本発明にいう「補助電極層」は、「線分」状の導電性薄膜の複数が所定の配列秩序に従って配列されていてもよい。
【0081】
(5) 上記実施形態では、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うかのように形成される態様について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、前述の隔壁層340を利用して、当該隔壁層340により区画された、画素電極13上の空間ごとに有機EL物質を供給する製造方法が採用されてもよい。この場合、その供給には、インクジェット法等が好適に利用可能である。かかる態様によると、発光機能層18を、色毎に、区別して設けることができる(以下では、かかる態様を「個別形成態様」という。)。
本発明は、上記実施形態のように、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うかのように形成される態様についても何らの障害なく適用可能なものではあるが、上述した個別形成態様を積極的に排除するわけではない。
【0082】
<応用>
次に、本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器について説明する。図19は、上記実施形態に係る有機EL装置を画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図20に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置に表示される画面がスクロールされる。
図21に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置に表示される。
【0083】
本発明に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図19から図21に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図2】図1の有機EL装置を構成する単位回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1の有機EL装置の一部拡大平面図であって、図4を基準とした場合、隔壁層(340)までが形成済みの状態(換言すると、発光機能層(18)及び対向電極(5)が未形成の状態)の平面図である。
【図4】図3のX1‐X1’線断面図である。
【図5】図4のうち補助電極(501)及びその周囲を拡大して示す一部拡大図である。
【図6】図5と同趣旨の一部拡大図であって、補助電極の断面形状が異なる態様(テーパ形状)となる場合の図である。
【図7】図1の有機EL装置の製造工程(その1;画素電極(13)及び補助電極(501)の形成)を示す図である。
【図8】図1の有機EL装置の製造工程(その2;隔壁層(340)及び接続孔(340H)の形成)を示す図である。
【図9】図1の有機EL装置の製造工程(その3;発光機能層(18)の形成)を示す図である。
【図10】図8の蒸着工程において蒸着材料が描く軌跡(一定の方向に沿った飛行)を模式的に示す説明図である。
【図11】図8の製造工程において実施される蒸着方式(インライン方式)を説明するための概念図である。
【図12】図9の蒸着工程において蒸着材料が描く軌跡(複数方向に沿った飛行)を模式的に示す説明図である。
【図13】図9の製造工程において実施される蒸着方式(回転方式)を説明するための概念図である。
【図14】図3と同趣旨の図であって、補助電極の構造が異なる態様(開口部(503H)の形成等)となる場合の図である。
【図15】図14のY1‐Y1’線断面図である。
【図16】図3と同趣旨の図であって、補助電極の構造が異なる態様(一方の側部・隔壁層(340)下に埋没)となる場合の図である。
【図17】図16のY2‐Y2’線断面図である。
【図18】図5及び図6と同趣旨の図であって、補助電極の断面形状が異なる態様(逆テーパ形状)となる場合の図である。
【図19】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図20】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図21】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
7……素子基板、8……有機EL素子、13……画素電極、18……発光機能層、5……対向電極、301……層間絶縁膜、340……隔壁層、340H……接続孔、340K……開口部、340W……(接続孔を形作る)壁面、501,502,503,504,505……補助電極、503H……開口部、ct……接触部分、We……(補助電極の)幅、Wh……(接続孔の底部の)幅、T……(補助電極の)厚さ、D……(発光機能層の)厚さ、φ……(壁面340Wと基板面とのなす)角度、θ……(補助電極の側面と基板面とのなす)角度、3……走査線、6……データ線、113……電流供給線、103A,103B……走査線駆動回路、106……データ線駆動回路、201……対向電極用電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
当該基板上に形成された第1電極層と、
当該第1電極層と同一の層として、かつ、該第1電極層とは物理的に分断されるように形成された補助電極層と、
前記第1電極層を覆うように形成された発光機能層と、
当該発光機能層を覆うように形成された第2電極層と、
を備え、
発光素子が、
前記第1及び第2電極層、並びに、これらに挟持される前記発光機能層から構成され、
前記補助電極層は、
当該補助電極層を断面視した場合、前記第2電極層と接触する側面をもつ、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
隣接し合う前記発光素子間を区分する隔壁層を更に備え、
前記補助電極層は、
前記隔壁層を貫通するように形成された接続孔の底部に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記補助電極層は、その平面視した形状が直線形状を含み、
その直線の延在方向から臨んだ、前記接続孔の底部の幅は、
当該方向から臨んだ、前記補助電極層の幅よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記接続孔の開口部からその底部を平面視した場合に、前記補助電極層の両側部が視認可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記接続孔を形作る前記隔壁層の壁面及び前記基板の面間の角度は、所定値以下である
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記補助電極層は、その平面視した場合における面内に開口部をもち、
前記補助電極層の前記側面は、
前記開口部を形作る当該補助電極層の壁面を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記補助電極層の厚さは、前記発光機能層の厚さ以上である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記補助電極層の断面形状は、テーパ形状又は逆テーパ形状を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
基板上に、第1及び第2電極層、並びに、これらに挟持される発光機能層から構成される発光素子を備えた発光装置を製造する発光装置の製造方法であって、
前記第1電極層、及び、当該第1電極層とは物理的に分断されるように補助電極層を形成する第1工程と、
前記第1電極層を覆うように前記発光機能層を形成する第2工程と、
当該発光機能層を覆うように、且つ、前記補助電極層との間で接触部分をもつように前記第2電極層を形成する第3工程と、
を含み、
前記第2工程は、
前記基板に対し一定の方向に沿って飛行する前記発光機能層の原材料が当該基板上に堆積する第1蒸着工程を含み、
前記第3工程は、
前記基板に対し所定の複数方向に沿って飛行する前記第2電極層の原材料が当該基板上に堆積する第2蒸着工程を含む、
ことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2蒸着工程は、
前記基板及び前記原材料を収納する蒸発源の少なくとも一方を、
所定の軸を中心に回転させる工程を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程の後に、
隣接し合う前記発光素子間を区分する隔壁層を形成する工程と、
少なくとも前記第3工程の前に、
その開口部からその底部を平面視した場合に前記補助電極層が現れるような接続孔を、前記隔壁層に形成する工程と、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記補助電極層は、その平面視した形状が直線形状を含むように形成され、
前記接続孔は、
前記直線の延在方向から臨んだ、当該接続孔の底部の幅が、
当該方向から臨んだ、前記補助電極層の幅よりも大きくなるように、
形成される
ことを特徴とする請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記接続孔は、
当該接続孔の開口部からその底部を平面視した場合に、前記補助電極層の両側部が視認可能なように、
形成される、
ことを特徴とする請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記接続孔は、
該接続孔を形作る前記隔壁層の壁面及び前記基板の面間の角度が、所定値以下となるように、
形成される、
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記補助電極層は、
当該補助電極層を平面視した場合における面内に開口部をもつように、形成される、
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記発光機能層は、その厚さが前記補助電極層の厚さを下回るように、形成される、
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記補助電極層は、その断面形状がテーパ形状又は逆テーパ形状を含むように、形成される、
ことを特徴とする請求項10乃至17のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−283304(P2009−283304A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134476(P2008−134476)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】