発光装置及びその製造方法、並びに電子機器
【課題】 有機EL装置の視野角特性を改善する。
【解決手段】有機EL装置は、画素電極(13)、発光機能層(18)及び対向電極(5)からなる有機EL素子(8)を複数含む。これら複数の有機EL素子には、反射層(34)及び半透明半反射層たる前記対向電極からなる、複数の共振器が対応する。有機EL素子には、赤色用、緑色用、及び青色用の区別がある。このうち緑色用の有機EL素子は2つあり、そのうちの1つである有機EL素子(8G1)に対応する共振器内の画素電極(13G1)の厚さは、他の1つである有機EL素子(8G2)に対応する共振器内の画素電極(13G2)の厚さと異なる。これにより、両有機EL素子における共振対象波長が異なることになる。かかる状況によると、いわゆる短波長シフトが生じても、正対視する場合と同じ緑色が、視認者に認識されうる。
【解決手段】有機EL装置は、画素電極(13)、発光機能層(18)及び対向電極(5)からなる有機EL素子(8)を複数含む。これら複数の有機EL素子には、反射層(34)及び半透明半反射層たる前記対向電極からなる、複数の共振器が対応する。有機EL素子には、赤色用、緑色用、及び青色用の区別がある。このうち緑色用の有機EL素子は2つあり、そのうちの1つである有機EL素子(8G1)に対応する共振器内の画素電極(13G1)の厚さは、他の1つである有機EL素子(8G2)に対応する共振器内の画素電極(13G2)の厚さと異なる。これにより、両有機EL素子における共振対象波長が異なることになる。かかる状況によると、いわゆる短波長シフトが生じても、正対視する場合と同じ緑色が、視認者に認識されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(electro luminescent)素子等を含む発光装置及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL素子がある。有機EL素子は、有機材料を含む少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。このうち画素電極は例えば陽極として、対向電極は陰極として機能する。両者間に電流が流されると、前記有機薄膜で電子及び正孔間の再結合が生じ、これにより、当該有機薄膜ないしは有機EL素子は発光する。この場合、発した光のうち特定の波長をもつ光だけを強調するため、当該有機EL素子は、前記画素電極及び対向電極等からなる共振器構造を含むことがある。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。また、前記有機薄膜として色付きの光を発するものを利用し、あるいは適当なカラーフィルタを利用する等すれば、カラー画像の表示も可能になる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2008−91323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、視野角特性に関する問題がある。すなわち、例えば、このような画像表示装置に正対してその画像表示面を直視する場合と、斜めに臨んで画像表示面を視認する場合とで、視認者が感じる色合いが異なってしまうということがある。より具体的には、本来は白色に見えるべきものが、斜め45度から画像表示面を臨むと青白色に見えてしまう、などというようである。一般に、画像表示面から、ある波長をもつ光が発せられている場合、それを斜めから臨むと、当該波長よりも短い波長を持つ光として視認される性質があること(短波長シフトがあること)が知られている。
【0004】
前記の特許文献1は、このような問題に対処する技術を開示する。すなわち、特許文献1は、「発光色の異なる有機EL素子」を構成する「半透過電極」の「材料及び膜厚、又は…材料若しくは膜厚」を異ならせる技術を開示し(特許文献1の〔請求項1〕)、さらに、「視野角45度以内での正面との色度ずれが、<式1>Δu’v’<0.025(但し、Δu’v’はu’v’色度図での正面視の色度座標と斜面視の色度座標との距離のことである。)を満たす」技術を開示する(特許文献1の〔請求項4〕)。この場合、前記<式1>を満たすための手段として、特許文献1は当然、「半透過電極」の「膜厚」等を異ならせることだけを眼中に置く(特許文献1の〔請求項4〕は前記〔請求項1〕を引用する。また、〔0044〕以下、特に〔0046〕等参照)。
しかしながら、このように、「半透過電極」の「膜厚」等を調整するだけで、視野角特性の向上が安定的に見込まれるかどうかには問題がある。例えば、このような手法によると、視野角特性の向上を図るべく膜厚の調整を行った結果、共振性能が阻害される、あるいはその逆の現象が生じるということがないではない。また、特許文献1が開示する技術的内容も含めて、より一般的に、前記の共振器構造を含む有機EL素子を製造する場合においては、膜厚の異なる各層を形成するために、フォトリソグラフィ工程がその各層分必要となってしまうことから、製造コストの上昇、あるいは歩留まりの低下といった問題をも生じさせる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決することの可能な発光装置及びその製造方法、並びに、電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる態様の発光装置、その製造方法、あるいは電子機器において生起する課題を解決可能な、発光装置、その製造方法、あるいは電子機器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上にマトリクス状配列に従って並べられ、そのうちの所定数ごとに1個の画素を構成する複数の発光素子と、前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の一方の側に配置され、当該発光素子から発せられた光を反射する反射層と、前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の他方の側に配置され、前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層と、を備え、前記反射層及び前記半透明半反射層は、前記複数の発光素子の各々に対応し、かつ、前記光のうち特定の波長をもつ光を共振させる、複数の共振器を構成し、前記画素の複数のうちの少なくとも1つは、前記反射層及び前記半透明半反射層間の光学的距離が第1光学的距離に一致する前記共振器と、前記第1光学的距離とは異なる第2光学的距離をもつ前記共振器とを、少なくとも含み、当該画素は、これら第1及び第2光学的距離をもつ2つの共振器に対応する第1及び第2発光素子によって、第1の色を表現する。
【0007】
本発明によれば、例えば、4つの「発光素子」が、「1個の画素を構成する」。この場合更に、これら4つの発光素子の少なくとも2つの発光素子のそれぞれは、前述の「第1及び第2発光素子」に該当する。したがって、これら2つの発光素子の各々は、「2つの共振器」に対応し、かつ、これら2つの共振器はそれぞれ「第1光学的距離」及び「第2光学的距離」をもつ。この際、これら第1及び第2光学的距離はそれぞれ異なるから、前記2つの発光素子あるいは2つの共振器の各々においては、共振の対象となる波長が異なることになる。つまり、これら2つの発光素子から発せられた光のそれぞれは、厳密に言えば、相異なる色をもつ。
しかし、これら2つの発光素子はまた同時に、1個の色である「第1の色を表現する」。ここで「表現する」とは、例えば、視認者がこれら2つの発光素子から発せられた光を視認する場合、その視覚能力の制約(例えば、人間の目がもつ空間分解能等)等から、2つの色ではなく、それが合成された1個の色を認識してしまう、という意味を包含する。
このような構成をもつ本発明においても、視認者が、前記の2つの発光素子から発せられた光を斜めから臨む場合、やはり、上述した“短波長シフト”という現象が発生する。しかし、本発明においては、この場合、前述の第1及び第2光学的距離が相異なっているので、前記2つの発光素子から発せられた光を合成した光のもつ色合いを結局は変化させないようにすることが可能である。つまり、視認者がそのような合成光を臨む角度を変えると、その前後で、当該合成光をつくる各光の波長成分は異なることにはなるが、結局は同じ色を認識する、ということが可能になるのである。
このようにして、本発明によれば、前述した視野角特性の改善が可能になる。
【0008】
なお、本発明にいう「発光素子」の具体的な構造や材料は基本的に自由に定められ得るが、例えば、有機EL材料や無機EL材料からなる発光層を電極間に介在させた素子が本発明の発光素子として採用され得る。さらに、LED(Light Emitting Diode)素子や、プラズマの放電により発光する素子など様々な発光素子を本発明に利用することができる。
【0009】
この発明の発光装置では、前記画素は、前記第1及び第2発光素子に加えて、第2の色を表現する第3発光素子と、第3の色を表現する第4発光素子と、を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、「1個の画素」が、「第1発光素子」から「第4発光素子」という4つの発光素子から構成される。そして、このうちの「第1及び第2発光素子」は「第1の色」を、「第3発光素子」は「第2の色」を、「第4発光素子」は「第3の色」を、それぞれ担当する。ここで「第1の色」から「第3の色」のそれぞれは、例えば好適には、赤色、緑色及び青色である。
結局、本態様によれば、このような4つの発光素子による「1個の画素」を一単位とした、好適な(特に、視野角特性が改善された)、カラー画像表示をすることが可能となる。
【0010】
この態様では、前記第3発光素子に対応する前記共振器がもつ第3光学的距離は、前記第1及び第2光学的距離のいずれとも異なり、前記第4発光素子に対応する前記共振器がもつ第4光学的距離は、前記第1,第2及び第3光学的距離のいずれとも異なる、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述の4つの発光素子の各々に対応する、4つの共振器のそれぞれが、すべて相異なる光学的距離をもつ。したがって、典型的には例えば、第3発光素子に対応する共振器は、第2の色を強調する光学的距離をもち、第4発光素子に対応する共振器は、第3の色を強調する光学的距離をもつ、などという構成がとられることになる。
これにより、「1個の画素」を構成する各発光素子は、その各々が分担する色(波長)が強調された光を発するなどということになるから、より色合い豊かなカラー画像を表示することが可能になる。
【0011】
また、「第3発光素子」及び「第4発光素子」を備える態様では、前記第3光学的距離が、(OT1+OT2+OT3+G)〔nm〕(OT1,OT2,OT3,Gは正の実数)で表されるとき、前記第4光学的距離は、(OT3+G)〔nm〕で表され、前記第1光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つで表され、かつ、前記第2光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第1光学的距離を表さないもので表される、ように構成してもよい。
この態様によれば、第1光学的距離が、例えばOT1+OT2+Gで表されるときは、第2光学的距離は、それ以外のOT2+OT3+G(例1)又はOT3+OT1+G(例2)で表され、あるいはまた、第1光学的距離がOT2+OT3+Gで表されるときは、第2光学的距離はそれ以外のOT1+OT2+G(例3)又はOT3+OT1+G(例4)で表される、ということになる。これらの場合、本発明においては、第1及び第2光学的距離が相異なることを大前提とする以上、前記の例1及び例3ではOT1≠OT3が、例2ではOT2≠OT3が、例4ではOT1≠OT2が成立する(逆に言うと、例1及び例3では、例えばOT2=OT3などが、例2では、例えばOT1=OT2などが、例4では、例えばOT2=OT3などが、それぞれ成立してよい。)。
なお、本態様において、第1乃至第4光学的距離の実質を決定しているのはOTn(n=1,2,3)であり、Gは、各光学的距離に共通する。したがって、例えば、OTnは、これら各光学的距離に対応する各共振器に関し可変の光学的距離調整層等の膜厚、Gは、当該各共振器に共通する発光機能層(発光素子を構成する)等の膜厚、などと想定することができる。
このように、本態様によれば、好適に、第1〜第4光学的距離が設定されるので、前述した本発明に係る効果、即ち視野角特性の改善がより実効的に奏される。特に、本態様は、後述する本発明に係る「製造方法」と深い関連性を持ち、製造歩留まりの向上、製造コストの低廉化等の効果も奏される(この点については、後に改めて触れる。)。
【0012】
また、前述の「第3発光素子」を備える態様では、前記画素は、前記第2の色を表現するため、前記第3発光素子に加えて、当該第3発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第5発光素子を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、「第1及び第2発光素子」による「第1の色」の表現によって奏された効果が、「第2の色」についても享受されることになる。すなわち、本態様では、この「第2の色」も、「第3発光素子」及び「第4発光素子」の双方によって表現されるから、これら2つの発光素子から発せられた光が短波長シフトしても、その合成光はなお「第2の色を表現する」、ということが可能となるのである(ちなみに、この場合、「1個の画素」は、少なくとも5つの発光素子を含むということになる。)。
なお、本態様の考え方を更に拡張して、場合によっては、本態様に係る構成に加えて、前記第3の色を表現するため、前記第4発光素子に加えて、当該第4発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第6発光素子を更に含む、態様も想定されるところであるが、言うまでもなく、本発明は、かかる態様についても積極的に排除する意図は有しない(ちなみに、この場合、「1個の画素」は、少なくとも6つの発光素子を含むということになる。)。
【0013】
また、本発明の発光装置では、前記第1の色は、緑色を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した本発明に係る効果が、「緑色」について享受される。一般に、緑色の波長は、その長短に関して、赤色の波長により近く、青色の波長により遠い。また、例えば発光素子が有機EL素子からなる場合、その発光層の発光スペクトルは、緑色表示にとって不利なかたちとなっていることが多い(後に参照する〔図7〕及びその実施形態中における説明、参照)。このようなことからすると、前述した短波長シフトによって視野角特性が劣化する場合、その(悪)影響は、赤色・青色よりも、緑色に関して最も大きくなる可能性がある。
このような事情を背景に、「第1の色」に「緑色」を含む本態様は、本発明に係る効果を最も実効的に享受可能である態様の1つということができる。
【0014】
また、本発明の発光装置では、前記発光素子は、前記法線方向に沿って積層される、第1及び第2電極層と、これら第1及び第2電極層に挟持され、前記光を発する発光機能層と、を含み、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方は、前記反射層及び前記半透明半反射層間に配置され、前記第1及び第2光学的距離は、前記第1又は第2電極層の膜厚の相違によって、相違する、ように構成してもよい。
この態様によれば、「第1及び第2電極層の少なくとも一方」が、反射層及び半透明半反射層の間に配置されるので、当該の電極層は、いわば前記「共振器」の一部を構成するということができる。そして、本態様では、前述した「第1及び第2光学的距離」の相違が、その、反射層及び半透明半反射層間に配置された「第1又は第2電極層の膜厚」の相違によってもたらされるようになっている。
このように、本態様によれば、第1及び第2光学的距離の設定、あるいは前記2つの共振器の構成が、第1又は第2電極層の膜厚の如何によって行われるようになっており、かつ、その膜厚の調整は成膜条件の調整等を通じて比較的簡易に実現可能となっているので、当該の設定ないし構成は、比較的容易に行われ得る。
なお、本態様にいう「発光機能層」は、発光層を初めとして、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層等のうちの全部又は一部を含む。
【0015】
この態様では、前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、共振器を構成する「半透明半反射層」が、発光素子を構成する「第2電極層」を兼ねる。つまり、この場合、両者は、物理的には1個の層を形作るが、機能的には、共振器を構成する一方の鏡、及び、発光機能層に電流を供給する電極、という2つの機能を兼ね備える。
このように、本態様によれば、1個の層が複数の機能を兼ね備えることになるので、装置構造ないしその製造の簡易化・合理化・効率化、等が実現される。
【0016】
また、前述の「第3発光素子」及び「第4発光素子」を備える態様では、前記第3及び第4発光素子は、平面視して、略同一の面積をもち、前記第1及び第2発光素子は、これら第3及び第4発光素子に比べて、略半分の面積をもつ、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の面積(ないしはそれらの関係)が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。すなわち、前述のように、第3及び第4発光素子は、そのそれぞれが各1個の色を担当し、第1及び第2発光素子は、それら2つで1個の色を担当する形態が一典型例であることからすると、発光総量(あるいは、視認者の目に届く光の総量)等の観点から、後者の面積は、前者の面積の半分にするのが好適である。本態様はまさに、かかる一例に言及する態様である。
なお、発光素子がもつ「面積」とは、当該発光素子上において光が発する領域の面積、あるいは、最終的には視認者に到達可能である光が発する領域の面積(実効面積)を意味する。この点についての、より詳細な具体例については、後述する実施形態において、例えば〔図3〕及び〔図4〕等が参照されながら説明される。
【0017】
この態様では、平面視して、前記第1及び第2発光素子は、前記第3及び第4発光素子の間に挟まれるようにして配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の配置関係が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本態様に係る配列態様(以下、この〔課題を解決するための手段〕の欄では特に、「第1配列態様」という。)は、複数の「画素」によって、文字等の静止画像を表示する際に適用されて好適である。
【0018】
この態様では、平面視して、前記第1発光素子は、前記第3発光素子の隣に配置され、前記第2発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置され、かつ、前記第1発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、一方の端から順に、第3,第1,第4,第2発光素子という配列が実現される。このうち第1及び第2発光素子はそれぞれ、前述のように、第3及び第4発光素子それぞれの半分の面積しか持たない。このような配列態様(以下、この〔課題を解決するための手段〕の欄では特に、「第2配列態様」という。)によれば、第1及び第2発光素子がいわば分離されるようなかたちで配置されることになるので、例えば、文字等の静止画像を表示する際に、あるいは、動画像を表示する際に、当該文字の輪郭、あるいは動画の動きがより滑らかに表現される可能性が高まる。
【0019】
この態様では、平面視して、前記第1及び第2発光素子の一組、前記第3発光素子、並びに前記第4発光素子の三者のそれぞれは、三角形の頂点を占めるように配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の配置関係が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本態様に係る配置関係は、複数の「画素」によって、動画像を表示する際に適用されて好適である。
【0020】
なお、本発明は、上述した3つの配列態様を適宜に組み合わせた場合も、その範囲内に含む。例えば、前述した第1配列態様をもつ1個の画素と、第2配列態様をもつ1個の画素とが交互に配列される、などというようである。
また、本発明は、前記第1〜第4発光素子が、上記以外の態様でもって配列された、各種の態様を含むことは言うまでもない。
【0021】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明によれば、上述した各種の発光装置、即ち第1及び第2発光素子によって1個の色である第1の色を表現する発光装置を備えてなるので、視野角特性が改善された、画像表示装置等の電子機器が提供される。
【0022】
一方、本発明の発光装置の製造方法は、上記課題を解決するため、4つの発光素子の各々に対応し、かつ、基板上の第1乃至第4位置それぞれに、4つの光共振器を備える発光装置を製造する方法であって、前記第1位置に、第1,第2及び第3膜厚をそれぞれもつ第1-1層,第1-2層及び第1-3層(以下、「第A-B層」とは、第A位置における第B層ということを意味する。)を順次形成することで第1光学的距離調整層を形成する工程と、前記第2位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層を形成する工程と同時に、第2-1層及び第2-2層を形成することで第2光学的距離調整層を形成する工程と、前記第3位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層(ただし、当該2層の中には、前記第2-1層及び前記第2-2層と同時に形成されない層が含まれる。)を形成する工程と同時に、第3-1層及び第3-2層を形成することで第3光学的距離調整層を形成する工程と、前記第4位置に、前記第1-3層を形成する工程と同時に、第4-1層を形成することで第4光学的距離調整層を形成する工程と、を含んで、前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層を含む前記4つの光共振器を形成する共振器形成工程を含む。
【0023】
本発明によれば、上述した、本発明に係る発光装置の各種態様のうち、1個の画素が第1〜第4発光素子を備える発光装置(あるいは、その中でも特に、それらの発光素子の各々に対応する第1〜第4光学的距離をもつ共振器を備える発光装置)を好適に製造することができる。
すなわち、本発明に係る製造方法によると、前記第1,第2及び第3膜厚が、それぞれ、OT1,OT2及びOT3(OT1,OT2,OT3は正の実数)であるとき、第1及び第4光学的距離調整層の膜厚は、それぞれ、(OT1+OT2+OT3)〔nm〕及びOT3〔nm〕ということになる。また、第2光学的距離調整層の膜厚は、(OT1+OT2)〔nm〕,(OT2+OT3)〔nm〕及び(OT3+OT1)〔nm〕のうちのいずれか1つとなる一方、第3光学的距離調整層の膜厚は、(OT1+OT2)〔nm〕,(OT2+OT3)〔nm〕及び(OT3+OT1)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第2光学的距離調整層の膜厚でないもの、ということになる。これらOT1〜OT3の各値間の関係については、既述のOT1〜OT3の各値間における関係と同様のことがあてはまる。
ここで、本発明にいう「第1乃至第4位置」のそれぞれは、基板面上で識別可能な別々の位置を意味する。したがって、例えば「第2位置に、…第2‐2層を形成する」というのは、この第2位置以外の位置との区別のため、所定のパターニング処理等、基板面上の当該第2位置に島状の層を形成するための処理が実行されることを含意する。
以上によると結局、本発明においては、より少ないパターニング処理等を経ながら、より多種の光学的距離調整層(ひいてはより多種の光共振器)が形成されることになる。なぜなら、第2乃至第4位置上の第2‐1層、第2‐2層、第3‐1層、第3‐2層及び第4‐1層のそれぞれは結局、第1‐1層、第1‐2層及び第1‐3層の3つの層が形成されていく過程で形成されていくことになるから、前記パターニング処理等は3回行われれば十分であるのに、4種の膜厚をもつ光学的距離調整層が形成されることになるからである。
したがって、本発明によれば、当該光学的距離調整層、あるいは基板等々に対して、前記パターニング処理等によるダメージを与えるおそれが少なく、製造歩留まりの向上が実現されることになる。また、パターニング処理等の必要性の減少は当然に、製造コストの低廉化をも可能にする。
【0024】
この発明の発光装置の製造方法では、前記第2-1層、前記第2-2層、前記第3-1層又は前記第3-2層の上層としてレジストを形成する工程と、前記第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか1層を形成する工程と同時に形成される層であって前記レジストの上層として形成される層を、当該レジストとともに除去する工程と、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した製造方法がよりよくとり行われる。したがって、本態様によれば、前述した、本発明に係る効果、即ち、製造歩留まり向上、あるいは製造コストの低廉化等がより実効的に奏される。
なお、この点について、より詳細な具体例については、後述する実施形態において、例えば〔図13〕乃至〔図16〕等が参照されながら説明される。
【0025】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記基板上の前記第1乃至第4位置に第1及び第2電極層を形成する工程と、これら第1及び第2電極層の間に発光機能層を形成する工程と、を含んで、前記発光素子を形成する工程を更に含み、前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、第1〜第4光学的距離調整層が第1電極層を兼ねる、などということになり、前者が形成されれば即、後者も形成されたことになる(逆もまた然り)、ということになるので、発光装置を、より簡易に、より効率的に、より合理的に製造することができる。
【0026】
この態様では、前記共振器形成工程は更に、前記基板上に前記発光素子から発せられた光を反射する反射層を形成する工程と、前記基板上に前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層を形成する工程と、を含み、前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、第1〜第4光学的距離調整層が第1電極層を兼ね、かつ、半透明半反射層が第2電極層を兼ねる、などということになり、前述した、発光装置の製造工程の簡易化・効率化・合理化がより実効的になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<有機EL装置の構成>
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図4を参照しながら説明する。なお、ここに言及した図1乃至図4に加え、以下で参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0028】
有機EL装置は、図1に示すように、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素とを備えている。各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、並びにデータ線駆動回路106である。
【0029】
有機EL素子(発光素子)8は、図1、あるいは図3に示すように、素子基板7上に複数備えられる。それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、画素電極13、発光機能層及び対向電極から構成されている。これら各要素の詳細に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0030】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(画素回路)Pが設けられている。
【0031】
単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8の画素電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0032】
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、並びにデータ線駆動回路106のすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0033】
平面視した場合に概略以上に述べたような構成を備える有機EL装置は、図4に示すような積層構造物250を備えている。この積層構造物250は、図4に示すように、素子基板7を基準として、図中下から順に、回路素子薄膜11、層間絶縁膜302、反射層34、画素電極13、発光機能層18、並びに対向電極5等を含む。
【0034】
このうち、層間絶縁膜302は、その他の残る導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中の好適な配置を実現するため等に貢献する。層間絶縁膜は、積層構造物250中、単層のみ設けられるとは限らず、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、その積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。
より具体的には例えば、層間絶縁膜302は、SiO2、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
【0035】
回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、図4に示す積層構造物250中には、前述した走査線3及びデータ線6も当然構築されているが、その図示は省略されている。
【0036】
反射層34は、前述の層間絶縁膜302の上に形成されている。この反射層34は、発光機能層18から発せられた光を反射する。この反射光は、図4に示すように、図中上方に向かって進行する。このように、発光機能層18から発せられた光は、素子基板7が存在する側とは反対側に進行するようになっているので、本実施形態の有機EL装置100は、いわゆるトップエミッション型である。このため、素子基板7は、必ずしも、透光性材料から作られている必要はなく、セラミックスや金属等の不透明材料で作られてよい(これとは反対に、ボトムエミッション型の場合、素子基板7は、透光性材料から作られている必要がある。)。
このような反射層34は、上述の反射機能をよりよく発揮するため、光反射性能の比較的高い材料から作られているとよい。例えば、アルミニウムや銀等を利用することができる。
【0037】
一方、前記有機EL素子8の各々は、図4に示すように、積層構造物250を構成する前述の各種の要素のうち、画素電極13、発光機能層18、及び対向電極5から構成される。
【0038】
このうち画素電極13は、素子基板7上に、マトリクス状に配列するように形成されている。有機EL素子8がマトリクス状に配列されているということは、このように画素電極13がマトリクス状に配列されているということに相応する(図3参照)。また、前述の反射層34も、同様な意味でマトリクス状に配列されている(図4参照)。本実施形態では、この平面視した場合における画素電極13ないし有機EL素子8の配列態様、面積、あるいはその膜厚等について特徴があるが、その点については後に改めて触れる。
この画素電極13は、コンタクトホール363を介して、前述の回路素子薄膜11と電気的に接続されている。これにより、この画素電極13は、図2に示した第2トランジスタ9から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。なお、コンタクトホール363は、層間絶縁膜302を貫通するようにして形成されている。
このような画素電極13は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)単層膜、あるいは、極薄のアルミニウム(Al)、銀(Ag)、あるいはAgと、ITOとの積層膜、等々の導電性材料から作られている。
【0039】
隔壁層340は、図3、あるいは図4に示すように、上述したような画素電極13のうち、平面視して隣接する画素電極13間の領域に形成されている。この隔壁層340は、各有機EL素子8を区画する役割を担う。なお、この隔壁層340は、層間絶縁膜304の一部を構成する。
このような隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料で作られて好適である。
なお、この隔壁層340は、場合により一般に“バンク”とも呼称される。
【0040】
発光機能層18は、図4に示すように、画素電極13の上に、素子基板7の全面を覆うかのようにして形成されている。
この発光機能層18は、少なくとも有機発光層を含む。有機発光層は、正孔と電子の再結合により生起した励起子が基底状態へと遷移することによって発光する有機EL物質から構成されている。図4において、発光機能層18は一様に白色光を発する。
前述の有機EL物質が例えば低分子材料である場合、当該有機EL物質は、例えばスパッタリング法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等々の蒸着法によって、形成可能である。そして、これによると、当該の発光機能層18は、既述又は図示のように、容易に、素子基板7の全面を覆うかのように形成されうる。
発光機能層18を構成する他の層として、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0041】
対向電極5は、図4に示すように、複数の有機EL素子8の発光機能層18に接触している。この対向電極5は、平面視して、素子基板7の全面を覆うかのような矩形状に形成される(図4ではその一部が図示されている。)。
このような対向電極5は、例えばMgAl、MgCu、MgAu、MgAg等の合金又は金属材料から作られる。また、この対向電極5は、例えば5〜20〔nm〕程度の厚さ等、そこに到達する光の一部が透過可能であるような厚さをもつ。これにより、対向電極5は、半透明半反射性能を備える。
【0042】
なお、前記隔壁340は、上述のように、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うようにして形成されており当該全面に関して一様に白色光を発するようになっている本実施形態では、必ずしも設ける必要はない。ただ、このような隔壁340は、例えば層間絶縁膜302に適宜形成されたコンタクトホール等の穴埋めを目的とした成膜を実行する結果、半ば必然的に形成される場合もある(これにより、素子基板7上の積層構造物の表面を平坦化することが可能となる。)。
また、このような隔壁340は、発光機能層18から発した光が隣の有機EL素子8の方向へと進行するのを、規制する機能を発揮することが期待できる(例えば、当該光が、隣の有機EL素子8へと進行する際には、隔壁340を透過する場合があるから、その場合、当該光のエネルギは、少なくともその透過に応じた分減少する等)。その意味において、当該隔壁340は有用ということができる。
【0043】
以上に述べた積層構造物250のほか、図4において、有機EL装置100は、対向基板50を備え、更に、この対向基板50の上に前記とは別の積層構造物を備えている。この積層構造物は、図4に示すように、対向基板50を基準として、その図中下側に向かって順に、カラーフィルタ51及び遮光膜591からなる。
【0044】
まず、対向基板50は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
カラーフィルタ51は、平面視して画素電極13の形成領域に対応する領域に形成されている。カラーフィルタ51は、赤色フィルタ51R、緑色フィルタ51G1及び51G2、並びに青色フィルタ51Bを含む。これら各色のフィルタ(51R,51G1,51G2,51B)はマトリクス状に配列されているが、本実施形態では、後述する画素電極13等の配列態様に合わせた配列態様でもって配列されている。この点については、後に述べる。
カラーフィルタ51は、発光機能層18から届く光のうち、所定の波長域の光だけを透過させる。すなわち、例えば、赤色フィルタ51Rは、例えばピーク波長610nm及びその付近の波長域の光を透過させ、緑色フィルタ51G1及び51G2は、ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を透過させ、青色フィルタ51Bは、ピーク波長470nm及びその付近の波長域の光を透過させる。
このようなカラーフィルタ51は、光透過性の樹脂材料等から作られる。当該樹脂材料は、各色に対応する顔料等を含みうる。
【0045】
遮光膜591は、平面視して画素電極13の形成領域を縁取るように、あるいは当該形成領域以外の領域に対応するように形成されている。あるいは、対向基板50側の要素だけでいえば、遮光膜591は、マトリクス状に配列されたカラーフィルタ51間の間隙を埋めるようにして形成されている。
このような遮光膜591は、光吸収性、あるいは光反射性の金属、樹脂等の適当な遮光性材料で作られる。金属材料に関して特に具体的に例示すれば、Cr等が好適に挙げられる。
【0046】
充填材60は、このような対向基板50と、前述の素子基板7との間を接着する機能を果たす(図4参照)。この充填材60は、例えばエポキシ樹脂等の材料から作られる。
【0047】
<有機EL素子・画素電極等>
以上に加えて、本実施形態の有機EL装置100は特に、前述した各種要素のうち有機EL素子8の構成、とりわけそのうちの画素電極13等の構成及び作用について特徴がある。以下では、この点について、既に参照した図1乃至図4に加えて、図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0048】
まず、本実施形態においては、図3に示すように、4個の有機EL素子8を1セットとして1個の画素Pxが構成される。そして、この画素Px内の4個の有機EL素子8は、図3及び図4に示すように、その1個1個が同じ面積をもっていない。このことは図3に比較的よく示されており、平面視して、図中最左方の有機EL素子8Rと最右方の有機EL素子8Bとは同じ面積をもち、これら両有機EL素子8R及び8B間に挟まれた2つの有機EL素子8G1及び8G2は、その約半分の面積をもつ。
なお、ここでいう「面積」とは、より一般的には、有機EL素子8上において光が発する領域の面積、あるいは、有機EL素子8上における、最終的に視認者に到達可能である光が発する領域の面積(実効面積)を意味する。本実施形態では、ここにいう「領域」は、図3に示すように長円形状をもつが、かかる領域の形状(したがって、前記「面積」)は、前述のカラーフィルタ51、遮光膜591、画素電極13、反射層34及び層間絶縁膜304の全部又は一部の形成形態を適宜に定めることにより、基本的には任意に設定することが可能である。例えば、1個1個の画素電極13が、平面視して長円形状をもつように形成されるのであれば、当該画素電極13及び対向電極5間では、基本的には、その長円形状を底面にもつ柱体の中でしか電子及び正孔の再結合が生じない(即ち発光しない)から、この場合、有機EL素子8の「面積」とは、その“長円形状の面積”にほぼ同義、あるいは少なくともそれに基づいて定められる値、ということになる。
【0049】
前述のカラーフィルタ51は、上述のような4個の有機EL素子8の各々に対応して配列されている。すなわち、図3中最左方の有機EL素子8Rに対しては赤色フィルタ51Rが、その右隣の有機EL素子8G1に対しては緑色フィルタ51G1が、そのまた右隣の有機EL素子8G2に対しては緑色フィルタ51G2が、そして最右方の有機EL素子8Bに対しては青色フィルタ51Bが、それぞれ対応している(図4も参照)。この場合、緑色フィルタ51G1及び51G2は、2個の有機EL素子8G1及び8G2に対応するが、後述するように、当該の1個の画素Px内において表現されるべき緑色は、これら2個の有機EL素子8G1及び8G2の共同作用によって表現される。
なお、既に使用した図3及び図4に示されている符号8R,8G1,8G2,8B(あるいは、13R,13G1,13G2,13B)は、これら各色フィルタ(51R,51G1,51G2,51B)の別に対応している意味合いをもつ。本実施形態における説明及びその他の図面においては、簡単のため、符号“8”は、前述の符号8R,8G1,8G2,8Bを総称する符号として、符号“13”は、前述の符号13R,13G1,13G2,13Bを総称する符号として、それぞれ用いられている。
【0050】
有機EL素子8が、前述のような態様で配列されているのに応じて、画素電極13も同じ態様で配列されている(図3参照)。
加えて、1個の画素Px内に存在する4個の画素電極13R,13G1,13G2,13Bについては、以下の特徴がある。すなわち、図4に示すように、これら各画素電極(13R,13G1,13G2,13B)の膜厚をD1,D2,D3,D4とすると、これらの間に、D1>D2>D3>D4が成立する。つまり、赤色フィルタ51Rに対応する画素電極13Rが最も厚く、青色フィルタ51Bに対応する画素電極13Bが最も薄い。また、緑色フィルタ51G1及び51G2に対応する画素電極13G1及び13G2は、これらの間の膜厚をもつが、図4に示すように、画素電極13G1は、画素電極13G2よりも厚い。
このようなことから、ある1個の画素Px内における有機EL素子8についての、反射層34及び対向電極5間の光学的距離は、当該有機EL素子8ごとに異なることになる。
【0051】
光学的距離は、各層がもつ屈折率と物理的厚さによって規定される。すなわち、画素電極13の屈折率及び物理的厚さをそれぞれn1,l1とし、発光機能層18のそれらをn2,l2とすると、その光学的距離Lは、
L=Σ(np・lp) …… (1)
と表現される。ただし、この式中、「Σ」は、順次にp=1,2とした場合のnp・lpの総和を表す記号である。なお、この式(1)のかたちは、発光機能層18が、正孔輸送層、電子輸送層等々を含む場合等でも変化しない(前記n2,l2に代えて、それらの屈折率及び物理的厚さを、新たにn2,l2、n3,l3、…として、その総和を求めればよい。)。
本実施形態では、この光学的距離Lはまた、以下の式で表される条件を満たす。
L={(2πN+θ1+θ2)・λ}/(4π) …… (2)
ただし、この式中、θ1は反射層34における位相変化量(より正確には、反射層34と画素電極13との界面における位相変化量)、θ2は対向電極5における位相変化量(より正確には、対向電極5と発光機能層18との界面における位相変化量)、λは共振対象波長、Nは適当な整数である(このNは、通常、比較的小さな値、例えば1などとして設定される。)。
以上の2つの式から、本実施形態の有機EL装置100は、一種の光共振器を含むことになる。すなわち、反射層34と、半透明半反射層としての対向電極5との間の光学的距離が適当に設定されることにより、特定の波長成分(前記の共振対象波長λ)をもつ光の強度が増大させられる。
【0052】
画素電極13R,13G1,13G2,13Bの膜厚がそれぞれ異ならせてあるのは、それぞれにおいて着目する共振対象波長λに関して、上述の式(1)及び式(2)に係る条件を満たそうとすることに、その目的がある。例えば、画素電極13Rは、ピーク波長610nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚D1、また、画素電極13Bは、ピーク波長470nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚D4、をそれぞれもつ。
そして、ここで特徴的なのは、緑色フィルタ51G1及び51G2に対応する画素電極13G1及び13G2の膜厚が異なっていることである。この場合、両者とも、ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚(D2,D3)をもっていると一応はいえるが、これら両膜厚の値が異なっている(D2≠D3)ことにより、厳密には、これら画素電極13G1及び13G2の各々を含む、2つの光共振器の各々においては、共振の対象となる波長は異なることになる。つまり、有機EL素子8G1及び8G2の各々から発せられた光のそれぞれは、厳密に言えば、相異なる色をもつことになる。
【0053】
このような構成をもつ有機EL素子8、画素電極13、ないしは画素Px等によると、以下に述べる作用効果が奏される。
まず、説明の前提として、図5(あるいは、図8)について説明する。
この図5(あるいは、図8)は、いわゆるxy色度図である。この図において、概ね砲弾型の形で囲われた領域は、人間の認識可能な色の範囲(色域)を表している。その領域の中心付近から周辺に行くほど彩度が大きくなる。また、その領域の周囲を巡る数値は色相を表している。
他方、当該領域内において、三角形で囲われた領域は、RGB表色系で表現可能な色域を表している。このうち、符号Ctが付された点は、ホワイト・ポイントである。また、図中記された「赤」、「緑」等々の文字は、そのそれぞれが位置する場所の色を視認者が認識した場合に感じるであろう、概ねの色名を表している。例えば、x=0.2、y=0.1あたりの色を視認者が認識する場合、その者は、それを「青」と判断する蓋然性が高い、ということである。
【0054】
このような前提の下、まず、図5は、有機EL装置100に正対してその画像表示領域7aを直視する場合を表現している。ここで図5中に示された点G1及びG2は、前記の画素電極13G1及び13G2の膜厚の相違に対応している。すなわち、前述のように、画素電極13G1及び13G2それぞれの膜厚D2及びD3の間にはD2>D3が成立することにより、両者を含む有機EL素子8G1及び8G2は、それぞれ、共振対象波長λG1及びλG2(ただし、λG1>λG2)をもつ光、即ち点G1及びG2に相当する色をもつ光を発する。
しかし、視認者がこれら2つの有機EL素子8G1及び8G2から発せられた光を視認する場合、その視覚能力の制約(例えば、人間の目がもつ空間分解能等)等から、2つの色ではなく、それらが合成された1個の色を認識する。つまり、図5に示すように、点G1及びG2間を結ぶ線分の中点である点VCの色を認識することになる。
【0055】
一方、図6に示すように、視認者Eが、有機EL装置100を斜めの方向(図6では、素子基板7又は対向基板50の法線方向を基準とした角度φの方向)から臨んで画像表示領域7aを視認すると、いわゆる“短波長シフト”が生じる。
仮に、1個の画素Px内における緑色が、本実施形態のように2個の有機EL素子8G1及び8G2によって表現されるのではなく、1個の有機EL素子によって表現され、かつ、それに対応する光共振器の光学的距離が共振対象波長520nmという前提で上記式(1)及び式(2)によって定められているとすれば、正対視する場合は、図5と同様、視認者は点VCに相当する色をもつ光を認識する。しかし、図6に示すように斜めから臨む場合、視認者は、図8の点VCが短波長側にシフトした点VSに相当する色をもつ光を認識してしまう。つまり、この場合、正対視する場合と斜めから臨む場合とで、視認者Eは異なる色合いを認識してしまうことになる。
【0056】
このような不具合は、緑色に関して特に深刻である。
というのも、緑色のピーク波長は、波長の長短に関して、青色のピーク波長により近く、赤色のピーク波長により遠いからである(図7参照。ただし、図7では赤色のピークは不図示)。また、図7は、本実施形態に係る発光機能層18から発せられる光の発光スペクトルであるが、これをみると、緑色のピークは、青色のピークのように鋭いかたちをもつわけではなく、当該青色のピークからなだらかに続く稜線の途中の盛り上がりといった程度のかたちをもつに過ぎないことがわかる。このような場合であって、なお前述したような1個の有機EL素子で緑色を表現する場合を前提とすると、短波長シフトが生じた場合の悪影響が緑色に関して最も顕著になることが懸念される。
【0057】
しかるに、本実施形態では、以上のような不具合の発生がかなりの程度未然に防止される。
図8において、点G1及びG2は、図5における点G1及びG2と同じである。このような状況で、有機EL装置100を斜めから臨むと、これらの点G1及びG2も、上述したような短波長シフトを被る。図8では、点G1’及びG2’が、短波長シフト後の点G1及びG2を表現している。
しかし、この場合、上述のように、視認者は、これらの点G1’及びG2’をいわば生で認識するのではなく、これらの間を結ぶ線分の中点に相当する色をもつ光を認識する。つまり、図8に示すように、視認者は、点VC’に相当する色をもつ光を認識するのである。
そして、この点VC’は、図示するところから明らかなように、図5に示す点VCから然程大きくずれてはいない。
このように、本実施形態によれば、短波長シフトは生ずるものの、視認者は、あたかもそれがなかったような色をもつ光を認識することが可能となるのである。
【0058】
以上述べた有機EL装置100によれば、次のような効果が奏される。
(1) まず、既に述べたように、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、視認者は、当該有機EL装置100に正対するか斜めに臨むかに関わらず、常に、ほぼ同じ色合いをもつ光を認識することが可能である。すなわち、この有機EL装置100の視野角特性は格段に改善している。
また、このことから当然に、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、画素Pxによる、より高品質のカラー画像が表示可能である。
【0059】
(2) また、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、緑色を担当する有機EL素子8G1及び8G2の面積は、赤色及び青色を担当する有機EL素子8R及び8Bの面積の約半分となっているが(図3参照)、これは、発光総量(あるいは、視認者の目に届く光の総量)等の観点からみて好適である。これにより、視認者は、違和感のないカラー画像を認識することができる。
また、これに関連して、当該有機EL装置100によれば、平面視した場合における、有機EL素子8R,8G1,8G2,8Bの配置関係が、図3に示すようにバランスよく設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本実施形態に係る配列態様は、複数の画素Pxによって、文字等の静止画像を表示する際に適用されて好適である。
【0060】
<実施例1>
以下に示す表1は、視野角特性の改善を図った、より具体的な一例(シミュレーション結果)であり、表2は、それに対する比較例である。
【表1】
【表2】
【0061】
これらの表においては、前述の発光機能層18が、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層・注入層から構成されていることが前提されており、かつ、画素電極13はITO、正孔注入層はPEDOT−PSS、正孔輸送層はNPD(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD))、発光層は8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq3)、電子輸送層・注入層はAlq3にLiFを積層したもの、から、それぞれ構成されることが前提されている。また特に、正孔注入層の膜厚が“48nm”であることが前提されている。
また、これらの表中、「輝度比」とは、有機EL装置100に正対した場合における輝度と図6中の角度φが75度である場合における輝度との比を意味する。さらに、「Δx」及び「Δy」とは、有機EL装置100に正対した場合と図6中の角度φが75度である場合との間における、色度図上のx及びyの値のずれ(言い換えると、短波長シフトの影響によって、視認者が認識する色が受けている“ずれ”の程度)を意味する(図8の点VC及び点VC’参照)。
【0062】
これらの表のうち、まず、比較例1(表2)は、従来のように赤色、緑色及び青色の各色に1個ずつの有機EL素子が対応している場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この比較例1のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.095、0.093及び0.248となっている。
他方、実施例1(表1)は、比較例1に対して、画素電極13G1の膜厚D2を60nm、画素電極13G2の膜厚D2を43nmと変化させた場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この実施例1のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.124、0.109及び0.189となっている。
【0063】
この結果によると、Δxは、比較例1では0.093であるのが、実施例1では0.109となって若干シフト量が増大しているものの、Δyは、比較例1では0.248であるのが、実施例1では0.189となって、シフト量が効果的に抑制されている。つまり、この実施例1に係る有機EL装置を視認する視認者は、正対視から75度視へと視点を変化させても、比較例1に対して、より小さなΔyの変化しか受けていない緑色光を認識する。このように、実施例1は、比較例1に対して、視野角特性が改善している。
なお、上述では、Δxの変化量が増大している点が若干気になるが、視認者が最終的に認識する色合いという観点からみた場合、図5及び図8の三角形のかたち、あるいは色名の配置等から推測されるように、Δxの変化量よりも、Δyの変化量のほうを重視したほうが好ましい(即ち、視認者は、Δyの遷移に対して、より敏感に画質の変化を感じるから、Δxが若干増えたとしても、Δyをおさえるほうが、視野角特性改善にとってはより効果的、ということである。)。その意味で、この実施例1は、極めて好適な具体例を提供している。
【0064】
<実施例2>
以下に示す表3は、視野角特性の改善を図った、より具体的な他の例(シミュレーション結果)であり、表4は、それに対する比較例である。
【表3】
【表4】
【0065】
これらの表において前提されているところは、前記の表1及び表2と変わりない。
ただし、これら表3及び表4では、正孔注入層の膜厚が“48nm”ではなく、“32nm”であることが前提されている。
【0066】
これらの表のうち、まず、比較例2(表4)は、従来のように赤色、緑色及び青色の各色に1個ずつの有機EL素子が対応している場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この比較例2のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.102、0.099及び0.235となっている。
他方、実施例2(表3)は、比較例2に対して、画素電極13G1の膜厚D2を76nm、画素電極13G2の膜厚D2を65nmと変化させた場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この実施例2のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.145、0.134及び0.165となっている。
【0067】
この結果によると、Δxは、比較例2では0.099であるのが、実施例2では0.134となって若干シフト量が増大しているものの、Δyは、比較例2では0.235であるのが、実施例2では0.165となって、シフト量が効果的に抑制されている。
つまり、この実施例2においても、正孔注入層、並びに、画素電極13G1及び13G2の膜厚についての変更はあるものの、前記実施例1と同様、視野角特性が改善している。
【0068】
<有機EL装置の製造方法>
次に、以上に述べた本実施形態に係る有機EL装置100の製造方法について、既に参照した図1乃至図8に加えて、図9乃至図12を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係る製造方法は、図4に示すような、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bが形成されることに関して特徴があるので、以下では、その点に関して重点的に説明を行う。
【0069】
まず、素子基板7の上に、回路素子薄膜11、層間絶縁膜302及び反射層34が形成される。これらのいずれの成膜においても、既知であるところの、例えばPVD法、CVD法やスパッタ法等の成膜方法や、あるいはフォトリソグラフィ法等が適宜利用される。その際、回路素子薄膜11の成膜では、第1トランジスタ68等のTFTの製造が含まれるから、その半導体層へのドーピング工程等も行われ、層間絶縁膜302の成膜では、そこにコンタクトホール363を形成するために、適当なエッチング工程等も行われる。
なお、図9乃至図12においては、簡単のため、この反射層34までが形成された段階の構築物をまとめて、符号“SSF”でもって表している。これは、後続する画素電極13形成のための下地膜となる(以下、「下地膜SSF」ということがある。なお、図においては、この下地膜SSFにおいて、前記のコンタクトホール363、反射層34等の図示は一切省略されている(図4と対比参照))。
【0070】
続いて、画素電極13(=13R,13G1,13G2,13B)が形成される。この画素電極13の形成工程は、以下に述べるように、第1から第3の画素電極層131,132,133の形成工程を含む。
まず、図9に示すように、第1・画素電極層131が形成される。
この第1・画素電極層131は、例えば、スパッタ法、CVD法等で膜厚d1=55nm程度となるように形成されたITOの原膜に対して、フォトリソグラフィ及び酸性の混合液等を用いたパターニング処理を実施することによって形成される。この場合、パターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13のうち、大きいものから数えて2番目までの膜厚(即ち、D1、D2)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13R,13G1)が形成されるべき位置だけに、当該第1・画素電極層131が残るように行われる(図9と、例えば図12あるいは図4等とを対比参照)。
これにより、平面視して図3に示すような長円形状及び配列態様をもつ画素電極13R,13G1が、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
なお、このITOからなる第1・画素電極層131を形成する前には、前記反射層34の上に、SiN等からなる電食防止用の薄膜が形成されてもよい。この薄膜の厚さは、例えば50nm程度とするとよい。
【0071】
続いて、図10に示すように、レジスト90及び第2・画素電極層132が形成される。
まず、レジストが塗布される。この場合、図10に示すように、その塗布後のレジストのうち、最終的に形成しようとする画素電極13のうち、大きいものから数えて2番目の膜厚(即ち、D2)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13G1)が形成されるべき位置上のレジスト90を除いたレジストは除去される。この結果、当該の位置にだけレジスト90が残る。
次に、第2・画素電極層131が、前記の第1・画素電極層131と同様にして形成される。
ただし、この場合の膜厚d2は、第1・画素電極層131とは異なって、d2=35nm程度となるようにする。また、この場合におけるパターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13のうち、大きいものから数えて3番目までの膜厚(即ち、D1、D2、D3)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13R,13G1,13G2)が形成されるべき位置だけに、当該第2・画素電極層132が残るように行われる(図10と、例えば図12あるいは図4等とを対比参照)。
これにより、平面視して図3に示すような長円形状及び配列態様をもつ画素電極13R,13G1,13G2が、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
【0072】
続いて、図11に示すように、レジスト90の除去が行われる。
この際、前述のように、第2・画素電極層132が、最終的に膜厚D2をもつこととなる画素電極13G1の形成位置についても形成されていることから、当該の第2・画素電極層132は、レジスト90の上にも形成されていることになる(図10参照)。したがって、この第2・画素電極層132は、レジスト90の除去とともに除去されることになる(図11中の破線参照)。
【0073】
続いて、図12に示すように、第3・画素電極層133が形成される。
これも、前述の第1・画素電極層131と同様にして形成される。
ただし、この場合の膜厚d3は、第1・画素電極層131、あるいは第2・画素電極層132とは異なって、d3=30nm程度となるようにする。また、この場合におけるパターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13の全部が形成されるべき位置だけに、当該第3・画素電極層133が残るように行われる(図12と、例えば図4あるいは図3等と対比参照)。
これにより、平面視して、まさに図3に示すような画素電極13R,13G1,13G2,13Bが、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
【0074】
以上の処理を経ると、図12に示すように、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13が、3回のパターニング処理を経るだけで形成されることになる。すなわち、画素電極13Rは、第1・画素電極層131〜第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚120nm(=d1+d2+d3=55+35+30)をもつものとして形成され、画素電極13G1は、第1・画素電極層131及び第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚85nm(=d1+d3=55+30)をもつものとして形成され、画素電極13G2は、第2・画素電極層132及び第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚65nm(=d2+d3=35+30)をもつものとして形成され、画素電極13Bは、第3・画素電極層133の膜厚たる、膜厚30nm(=d3)をもつものとして形成されることになる。
【0075】
後は、これに続いて、層間絶縁膜304、発光機能層18等々の各層が形成される。これも、前記の反射層34等々と同様、CVD法等々の公知の方法により形成される。
【0076】
以上述べたような有機EL装置の製造方法によれば、次のような効果が奏される。
すなわち、既に述べたように、この製造方法では、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bを形成するに当たって、パターニング処理が3回しか行われていない。
このように、本実施形態によれば、より少ないパターニング処理等を経ながら、より多種の画素電極13R,13G1,13G2,13B(ひいては、より多種の光共振器)が形成されることになるから、当該画素電極13、下地膜SSF、あるいは素子基板7、等々に対して、当該パターニング処理等によるダメージを与えるおそれが少なく、したがって、製造歩留まりの向上が実現される。また、パターニング処理等の必要性の減少は当然に、製造コストも低廉化する。
【0077】
なお、上記製造方法においては、第1・画素電極層131の膜厚d1と、第2・画素電極層132の膜厚d2との間に差がある限り、最終的に、4種の膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bが形成されることになる。逆に言えば、この場合、第1及び第3・画素電極層131及び133の膜厚は同じ(d1=d3)であってよく、あるいは、第2及び第3・画素電極層132及び133の膜厚は同じ(d2=d3)であってよい(ただし、これら両者が、同時に満たされてはいけない。)。
【0078】
また、上記製造方法は、本発明に係る「発光装置の製造方法」の一具体例を呈示しているに止まる。上記以外にも、例えば、図13乃至図16に示すような順序で、画素電極13は製造されてよい。
この製造方法は、各画素電極層131〜133及びレジスト90の形成タイミングや、当該レジスト90とともに除去される画素電極層の相違(上記製造方法では第2・画素電極層132が除去され、本製造方法では第3・画素電極層133が除去される。)等があるものの、本質的に上記製造方法と同じである。特に、本製造方法におけるパターニング処理は、図13で2回、図14で1回の合計3回行われることになるから、該パターニング処理の回数も、本製造方法と上記製造方法との間で変わらない。
ただし、本製造方法では、最終的に形成される画素電極13G1の膜厚D2がd1+d2(上記製造方法ではd1+d3)となり、画素電極13GG2の膜厚D3がd2+d3となって、その点で、上記製造方法とは異なることになる。
これ以外にも、画素電極13G1及び13G2の膜厚D2及びD3が、それぞれ、d1+d2及びd1+d3となる場合等もあり得る。
いずれにせよ、これらの製造方法によっても、より少ないパターニング処理で、より多種の画素電極13が形成されることに変わりはなく、したがって、前述した効果が同様に奏される。
【0079】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る有機EL装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
(1-i) 上記実施形態では、図3に示したように、有機EL素子8G1及び8G2が、有機EL素子8R及び8Bの間に挟まれるように配置される形態について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図17に示すように、緑色を担当する有機EL素子8G1−1が赤色を担当する有機EL素子8R−1の図中右隣に配置され、同じく緑色担当する有機EL素子8G2−1が青色を担当する有機EL素子8B−1の図中右隣に配置され、かつ、前記有機EL素子8G1−1が前記有機EL素子8B−1と隣り合うように配置される、という形態も、本発明の範囲内にある。この形態では、これら4つの有機EL素子8R−1,8G1−1,8B−1,8G2−1をもって、1個の画素Px1が構成される。
このような形態によれば、緑色を担当する有機EL素子8G1−1及び8G2−1が、いわば分離されるようなかたちで配置されることになるので、例えば、文字等の静止画像を表示する際に、あるいは、動画像を表示する際に、当該文字の輪郭、あるいは動画の動きがより滑らかに表現される可能性が高まる。
【0080】
(1-ii) あるいは、図18に示すように、有機EL素子8は、いわば千鳥足状に配列されてもよい。すなわち、この図において、緑色担当の有機EL素子8G1−2及び8G2−2の一組、赤色担当の有機EL素子8R−2、及び青色担当の有機EL素子8B−2の三者のそれぞれが、図中破線で示す三角形の頂点を占めるように配置される。この形態では、これら4つの有機EL素子8G1−2,8G2−2,8R−2,8B−2をもって、1個の画素Px2が構成される。また、この形態では、この画素Px2の複数が、いわば市松模様状に配列される(以上のような配列態様も、当然、本発明にいう「マトリクス状配列」に含まれる。)。
このような形態によれば、動画像をより滑らかに表示することが可能である。
【0081】
(1-iii) あるいは、図19に示すように、異なる配列機序をもつ画素Px1及びPxが交互に配置される、という形態も、本発明の範囲内にある。なお、図から明らかなように、画素Px1は、図17に示した有機EL素子8G1−1等からなる画素であり、画素Pxは上記実施形態において説明した画素(図3に示した画素)である。
【0082】
(2) 上記実施形態では、図3に示したように、緑色担当の有機EL素子8のみが、2個の有機EL素子8G1及び8G2からなる形態について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図20に示すように、緑色担当の有機EL素子8G1―3及び8G2−3に加えて、赤色担当の有機EL素子も、2個の有機EL素子8R1−3及び8R2−3からなるような形態も、本発明の範囲内にある。
このような形態によると、図5及び図8の色度図を参照して説明したと同様の作用効果が、赤色光についても享受されることになる。
なお、場合によっては、図20の構成を更に変更して、青色担当の有機EL素子をも、前記の有機EL素子8R1−3及び8R2−3のようにいわば分割してよい。
【0083】
<実施例3>
以下に示す表5は、上述のように、緑色に加えて、赤色に関しても視野角特性の改善を図った、より具体的な一例(シミュレーション結果)である。
【表5】
【0084】
この表において前提されているところは、前記の表3及び表4と変わりない。
この表において、画素電極13R1−3(前記有機EL素子8R1−3に含まれる画素電極を意味する)の膜厚は118.8nm、画素電極13R2−3(前記有機EL素子8R2−3に含まれる画素電極を意味する)の膜厚は124.2nmとされている。この表5のうち特に、赤色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.125、0.032及び−0.075となっている。
【0085】
この実施例3は、その条件が、赤色担当の有機EL素子8R1−3及び8R2−3に関する相違を除いて、前記の比較例2(表4)の条件と同一であるので、これと比較可能である。それによると、Δxは、前記の比較例2では0.049であるのが、この実施例3では0.032となり、Δyは、比較例2では−0.078であるのが、実施例3では−0.075となって、いずれもシフト量が抑制されている。
このように、この実施例3においては、緑色に関する視野角特性の改善のほか、赤色に関する視野角特性の改善も実現される。
【0086】
(3) 上記実施形態では、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うかのように形成される態様について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、前述の隔壁層340を利用して、当該隔壁層340により区画された、画素電極13上の空間ごとに有機EL物質を供給する製造方法が採用されてもよい。この場合、蒸着法、インクジェット法等が好適に利用可能である。かかる態様によると、発光機能層18を、色毎に、区別して設けることができる。すなわち、当該隔壁340で区画された空間ごとに、例えば、赤色光、緑色光及び青色光それぞれ専用の有機EL物質を含む発光機能層を形成することが可能である。
なお、このような場合、前述のカラーフィルタ51を設ける必要は必ずしもなくなるが、このような場合においても、カラーフィルタ51はそのまま設けておいてよい。かかる形態では、各表示色の色純度が高められるという効果が得られる。
【0087】
なお、これに関連して、上記実施形態においては、緑色フィルタ51G1及び51G2は、いずれも、「ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を透過させ」るものであるが、この場合、これら緑色フィルタ51G1及び51G2は、例えば全く同じ材料から作られること等によって、原理的には全く同じ波長をもつ光を透過させるように構成されてよいし、あるいは、若干異なる材料から作られること等によって、双方間で微妙に異なる波長をもつ光を透過させるように構成されてもよい。後者の場合は、例えば、その微妙に異なる波長は、図5又は図8に示す点G1及びG2に基づいて定められると好適であるのは言うまでもない。
【0088】
(4) 上記実施形態の有機EL装置100は、図4に示したように、素子基板7の側から見て、順に、反射層34、画素電極13、発光機能層18、及び対向電極5、という積層構造をもち、かつ、このうちの対向電極5は、本発明にいう「半透明半反射層」としての機能を、また、画素電極13は、本発明にいう「光学的距離調整層」としての機能をもつ、という構成をもっているが、本発明は、かかる形態に限定されるわけでは勿論ない。
例えば、本発明にいう「光学的距離調整層」は、場合によっては、共振器内の光学的距離を調整するためだけの機能をもつ層として、「発光装置」の一部を構成し得る(つまり、画素電極13と「光学的距離調整層」とが機能分離されると同時に、それぞれ物理的に別個の層として形成される。)。その場合、当該の光学的距離調整層は、例えば、図4でいう画素電極13及び反射層34間に配置されることも可能である。
また、上記実施形態の有機EL装置100はトップエミッション型であるが、本発明は、ボトムエミッション型、あるいはデュアルエミッション型に対して適用可能である。このような場合、本発明にいう「反射層」及び「半透明半反射層」と「基板」との配置関係は上記実施形態とは異なることとなって、図4の構造はとり得ない場合がありえ、また、図4に示す対向電極5が半透明半反射機能をもつことが不都合となる、などといった様々な変更必要点が生じることになる。が、例えば、ボトムエミッション型を前提とすれば、当該対向電極5に本発明にいう「反射層」としての機能を兼ねさせる、等々の適当な変更を上記実施形態に加えれば、容易に本発明の適用が可能である。
いずれにせよ、上記実施形態は、本発明の一具体例を呈示しているに止まる。
なお、上記実施形態のように、対向電極5が「半透明半反射層」としての機能をもつ場合は、「発光素子」の構成要素である対向電極5が、同時に、共振器の構成要素である「半透明半反射層」を兼ねているということができるが、このような態様であっても、本発明において、「半透明半反射層」が、「基板の法線方向に沿ってみて…発光素子…の他方の側に配置され」る、といわれる場合に該当する。前述した、対向電極5が「反射層」を兼ねる場合も同様に、「反射層」が、「基板の法線方向に沿ってみて…発光素子の一方の側に配置され」る、といわれる場合に該当する。
【0089】
<応用>
次に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した電子機器について説明する。
図21は、上記実施形態に係る有機EL装置100を画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置100と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図22に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置100に表示される画面がスクロールされる。
図23に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置100に表示される。
【0090】
本発明に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図21から図23に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図2】図1の有機EL装置を構成する単位回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1の有機EL装置の一部拡大平面図であって、特に画素(Px)の構成を示す平面図である。
【図4】図3のX‐X’線断面図である。
【図5】xy色度図であって、図3及び図4に示す、緑色発光を担当する有機EL素子(8G1・8G2)の発する光の色度(点G1・G2)等を併せて示す図である。
【図6】正対視の場合と角度φでもって斜めから臨む場合とを図示した説明図である。
【図7】図4に示す発光機能層(18)から発せられる光の発光スペクトルであって、短波長シフトの様子を説明するための説明図である。
【図8】xy色度図であって、図3及び図4に示す、緑色発光を担当する有機EL素子(8G1・8G2)の発する光が短波長シフトを受けた場合の色度(点G1’・G2’)等を併せて示す図である。
【図9】図1の有機EL装置を構成する画素電極(13)の製造工程(その1)を示す図である。
【図10】図9に続く製造工程(その2)を示す図である。
【図11】図10に続く製造工程(その3)を示す図である。
【図12】図11に続く製造工程(その4)を示す図である。
【図13】図1の有機EL装置を構成する画素電極(13)の、図9乃至図12とは異なる製造工程(その1)を示す図である。
【図14】図13に続く製造工程(その2)を示す図である。
【図15】図14に続く製造工程(その3)を示す図である。
【図16】図15に続く製造工程(その4)を示す図である。
【図17】図3と同趣旨の図であって、画素(Px1)内の有機EL素子の配列態様がそれとは異なる例を示す平面図である。
【図18】図3及び図17と同趣旨の図であって、画素(Px2)内の有機EL素子の配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図19】図3、図17及び図18と同趣旨の図であって、有機EL素子の全体的な配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図20】図3、図17乃至図19と同趣旨の図であって、画素(Px3)内の有機EL素子の配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図21】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図22】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図23】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
7……素子基板、8(8R,8G1,8G2,8B)……有機EL素子、13(13R,13G1,13G2,13B)……画素電極、18……発光機能層、5……対向電極、Px,Px1,Px2,Px3……画素、51(51R,51G1,51G2,51B)……カラーフィルタ、131,132,133……第1〜第3・画素電極層、d1,d2,d3……(第1〜第3・画素電極層の)膜厚、D1,D2,D3,D4……(画素電極13R,13G1,13G2,13Bの)膜厚、90……レジスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(electro luminescent)素子等を含む発光装置及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL素子がある。有機EL素子は、有機材料を含む少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。このうち画素電極は例えば陽極として、対向電極は陰極として機能する。両者間に電流が流されると、前記有機薄膜で電子及び正孔間の再結合が生じ、これにより、当該有機薄膜ないしは有機EL素子は発光する。この場合、発した光のうち特定の波長をもつ光だけを強調するため、当該有機EL素子は、前記画素電極及び対向電極等からなる共振器構造を含むことがある。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。また、前記有機薄膜として色付きの光を発するものを利用し、あるいは適当なカラーフィルタを利用する等すれば、カラー画像の表示も可能になる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2008−91323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、視野角特性に関する問題がある。すなわち、例えば、このような画像表示装置に正対してその画像表示面を直視する場合と、斜めに臨んで画像表示面を視認する場合とで、視認者が感じる色合いが異なってしまうということがある。より具体的には、本来は白色に見えるべきものが、斜め45度から画像表示面を臨むと青白色に見えてしまう、などというようである。一般に、画像表示面から、ある波長をもつ光が発せられている場合、それを斜めから臨むと、当該波長よりも短い波長を持つ光として視認される性質があること(短波長シフトがあること)が知られている。
【0004】
前記の特許文献1は、このような問題に対処する技術を開示する。すなわち、特許文献1は、「発光色の異なる有機EL素子」を構成する「半透過電極」の「材料及び膜厚、又は…材料若しくは膜厚」を異ならせる技術を開示し(特許文献1の〔請求項1〕)、さらに、「視野角45度以内での正面との色度ずれが、<式1>Δu’v’<0.025(但し、Δu’v’はu’v’色度図での正面視の色度座標と斜面視の色度座標との距離のことである。)を満たす」技術を開示する(特許文献1の〔請求項4〕)。この場合、前記<式1>を満たすための手段として、特許文献1は当然、「半透過電極」の「膜厚」等を異ならせることだけを眼中に置く(特許文献1の〔請求項4〕は前記〔請求項1〕を引用する。また、〔0044〕以下、特に〔0046〕等参照)。
しかしながら、このように、「半透過電極」の「膜厚」等を調整するだけで、視野角特性の向上が安定的に見込まれるかどうかには問題がある。例えば、このような手法によると、視野角特性の向上を図るべく膜厚の調整を行った結果、共振性能が阻害される、あるいはその逆の現象が生じるということがないではない。また、特許文献1が開示する技術的内容も含めて、より一般的に、前記の共振器構造を含む有機EL素子を製造する場合においては、膜厚の異なる各層を形成するために、フォトリソグラフィ工程がその各層分必要となってしまうことから、製造コストの上昇、あるいは歩留まりの低下といった問題をも生じさせる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決することの可能な発光装置及びその製造方法、並びに、電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる態様の発光装置、その製造方法、あるいは電子機器において生起する課題を解決可能な、発光装置、その製造方法、あるいは電子機器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上にマトリクス状配列に従って並べられ、そのうちの所定数ごとに1個の画素を構成する複数の発光素子と、前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の一方の側に配置され、当該発光素子から発せられた光を反射する反射層と、前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の他方の側に配置され、前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層と、を備え、前記反射層及び前記半透明半反射層は、前記複数の発光素子の各々に対応し、かつ、前記光のうち特定の波長をもつ光を共振させる、複数の共振器を構成し、前記画素の複数のうちの少なくとも1つは、前記反射層及び前記半透明半反射層間の光学的距離が第1光学的距離に一致する前記共振器と、前記第1光学的距離とは異なる第2光学的距離をもつ前記共振器とを、少なくとも含み、当該画素は、これら第1及び第2光学的距離をもつ2つの共振器に対応する第1及び第2発光素子によって、第1の色を表現する。
【0007】
本発明によれば、例えば、4つの「発光素子」が、「1個の画素を構成する」。この場合更に、これら4つの発光素子の少なくとも2つの発光素子のそれぞれは、前述の「第1及び第2発光素子」に該当する。したがって、これら2つの発光素子の各々は、「2つの共振器」に対応し、かつ、これら2つの共振器はそれぞれ「第1光学的距離」及び「第2光学的距離」をもつ。この際、これら第1及び第2光学的距離はそれぞれ異なるから、前記2つの発光素子あるいは2つの共振器の各々においては、共振の対象となる波長が異なることになる。つまり、これら2つの発光素子から発せられた光のそれぞれは、厳密に言えば、相異なる色をもつ。
しかし、これら2つの発光素子はまた同時に、1個の色である「第1の色を表現する」。ここで「表現する」とは、例えば、視認者がこれら2つの発光素子から発せられた光を視認する場合、その視覚能力の制約(例えば、人間の目がもつ空間分解能等)等から、2つの色ではなく、それが合成された1個の色を認識してしまう、という意味を包含する。
このような構成をもつ本発明においても、視認者が、前記の2つの発光素子から発せられた光を斜めから臨む場合、やはり、上述した“短波長シフト”という現象が発生する。しかし、本発明においては、この場合、前述の第1及び第2光学的距離が相異なっているので、前記2つの発光素子から発せられた光を合成した光のもつ色合いを結局は変化させないようにすることが可能である。つまり、視認者がそのような合成光を臨む角度を変えると、その前後で、当該合成光をつくる各光の波長成分は異なることにはなるが、結局は同じ色を認識する、ということが可能になるのである。
このようにして、本発明によれば、前述した視野角特性の改善が可能になる。
【0008】
なお、本発明にいう「発光素子」の具体的な構造や材料は基本的に自由に定められ得るが、例えば、有機EL材料や無機EL材料からなる発光層を電極間に介在させた素子が本発明の発光素子として採用され得る。さらに、LED(Light Emitting Diode)素子や、プラズマの放電により発光する素子など様々な発光素子を本発明に利用することができる。
【0009】
この発明の発光装置では、前記画素は、前記第1及び第2発光素子に加えて、第2の色を表現する第3発光素子と、第3の色を表現する第4発光素子と、を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、「1個の画素」が、「第1発光素子」から「第4発光素子」という4つの発光素子から構成される。そして、このうちの「第1及び第2発光素子」は「第1の色」を、「第3発光素子」は「第2の色」を、「第4発光素子」は「第3の色」を、それぞれ担当する。ここで「第1の色」から「第3の色」のそれぞれは、例えば好適には、赤色、緑色及び青色である。
結局、本態様によれば、このような4つの発光素子による「1個の画素」を一単位とした、好適な(特に、視野角特性が改善された)、カラー画像表示をすることが可能となる。
【0010】
この態様では、前記第3発光素子に対応する前記共振器がもつ第3光学的距離は、前記第1及び第2光学的距離のいずれとも異なり、前記第4発光素子に対応する前記共振器がもつ第4光学的距離は、前記第1,第2及び第3光学的距離のいずれとも異なる、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述の4つの発光素子の各々に対応する、4つの共振器のそれぞれが、すべて相異なる光学的距離をもつ。したがって、典型的には例えば、第3発光素子に対応する共振器は、第2の色を強調する光学的距離をもち、第4発光素子に対応する共振器は、第3の色を強調する光学的距離をもつ、などという構成がとられることになる。
これにより、「1個の画素」を構成する各発光素子は、その各々が分担する色(波長)が強調された光を発するなどということになるから、より色合い豊かなカラー画像を表示することが可能になる。
【0011】
また、「第3発光素子」及び「第4発光素子」を備える態様では、前記第3光学的距離が、(OT1+OT2+OT3+G)〔nm〕(OT1,OT2,OT3,Gは正の実数)で表されるとき、前記第4光学的距離は、(OT3+G)〔nm〕で表され、前記第1光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つで表され、かつ、前記第2光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第1光学的距離を表さないもので表される、ように構成してもよい。
この態様によれば、第1光学的距離が、例えばOT1+OT2+Gで表されるときは、第2光学的距離は、それ以外のOT2+OT3+G(例1)又はOT3+OT1+G(例2)で表され、あるいはまた、第1光学的距離がOT2+OT3+Gで表されるときは、第2光学的距離はそれ以外のOT1+OT2+G(例3)又はOT3+OT1+G(例4)で表される、ということになる。これらの場合、本発明においては、第1及び第2光学的距離が相異なることを大前提とする以上、前記の例1及び例3ではOT1≠OT3が、例2ではOT2≠OT3が、例4ではOT1≠OT2が成立する(逆に言うと、例1及び例3では、例えばOT2=OT3などが、例2では、例えばOT1=OT2などが、例4では、例えばOT2=OT3などが、それぞれ成立してよい。)。
なお、本態様において、第1乃至第4光学的距離の実質を決定しているのはOTn(n=1,2,3)であり、Gは、各光学的距離に共通する。したがって、例えば、OTnは、これら各光学的距離に対応する各共振器に関し可変の光学的距離調整層等の膜厚、Gは、当該各共振器に共通する発光機能層(発光素子を構成する)等の膜厚、などと想定することができる。
このように、本態様によれば、好適に、第1〜第4光学的距離が設定されるので、前述した本発明に係る効果、即ち視野角特性の改善がより実効的に奏される。特に、本態様は、後述する本発明に係る「製造方法」と深い関連性を持ち、製造歩留まりの向上、製造コストの低廉化等の効果も奏される(この点については、後に改めて触れる。)。
【0012】
また、前述の「第3発光素子」を備える態様では、前記画素は、前記第2の色を表現するため、前記第3発光素子に加えて、当該第3発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第5発光素子を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した、「第1及び第2発光素子」による「第1の色」の表現によって奏された効果が、「第2の色」についても享受されることになる。すなわち、本態様では、この「第2の色」も、「第3発光素子」及び「第4発光素子」の双方によって表現されるから、これら2つの発光素子から発せられた光が短波長シフトしても、その合成光はなお「第2の色を表現する」、ということが可能となるのである(ちなみに、この場合、「1個の画素」は、少なくとも5つの発光素子を含むということになる。)。
なお、本態様の考え方を更に拡張して、場合によっては、本態様に係る構成に加えて、前記第3の色を表現するため、前記第4発光素子に加えて、当該第4発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第6発光素子を更に含む、態様も想定されるところであるが、言うまでもなく、本発明は、かかる態様についても積極的に排除する意図は有しない(ちなみに、この場合、「1個の画素」は、少なくとも6つの発光素子を含むということになる。)。
【0013】
また、本発明の発光装置では、前記第1の色は、緑色を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した本発明に係る効果が、「緑色」について享受される。一般に、緑色の波長は、その長短に関して、赤色の波長により近く、青色の波長により遠い。また、例えば発光素子が有機EL素子からなる場合、その発光層の発光スペクトルは、緑色表示にとって不利なかたちとなっていることが多い(後に参照する〔図7〕及びその実施形態中における説明、参照)。このようなことからすると、前述した短波長シフトによって視野角特性が劣化する場合、その(悪)影響は、赤色・青色よりも、緑色に関して最も大きくなる可能性がある。
このような事情を背景に、「第1の色」に「緑色」を含む本態様は、本発明に係る効果を最も実効的に享受可能である態様の1つということができる。
【0014】
また、本発明の発光装置では、前記発光素子は、前記法線方向に沿って積層される、第1及び第2電極層と、これら第1及び第2電極層に挟持され、前記光を発する発光機能層と、を含み、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方は、前記反射層及び前記半透明半反射層間に配置され、前記第1及び第2光学的距離は、前記第1又は第2電極層の膜厚の相違によって、相違する、ように構成してもよい。
この態様によれば、「第1及び第2電極層の少なくとも一方」が、反射層及び半透明半反射層の間に配置されるので、当該の電極層は、いわば前記「共振器」の一部を構成するということができる。そして、本態様では、前述した「第1及び第2光学的距離」の相違が、その、反射層及び半透明半反射層間に配置された「第1又は第2電極層の膜厚」の相違によってもたらされるようになっている。
このように、本態様によれば、第1及び第2光学的距離の設定、あるいは前記2つの共振器の構成が、第1又は第2電極層の膜厚の如何によって行われるようになっており、かつ、その膜厚の調整は成膜条件の調整等を通じて比較的簡易に実現可能となっているので、当該の設定ないし構成は、比較的容易に行われ得る。
なお、本態様にいう「発光機能層」は、発光層を初めとして、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層等のうちの全部又は一部を含む。
【0015】
この態様では、前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、共振器を構成する「半透明半反射層」が、発光素子を構成する「第2電極層」を兼ねる。つまり、この場合、両者は、物理的には1個の層を形作るが、機能的には、共振器を構成する一方の鏡、及び、発光機能層に電流を供給する電極、という2つの機能を兼ね備える。
このように、本態様によれば、1個の層が複数の機能を兼ね備えることになるので、装置構造ないしその製造の簡易化・合理化・効率化、等が実現される。
【0016】
また、前述の「第3発光素子」及び「第4発光素子」を備える態様では、前記第3及び第4発光素子は、平面視して、略同一の面積をもち、前記第1及び第2発光素子は、これら第3及び第4発光素子に比べて、略半分の面積をもつ、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の面積(ないしはそれらの関係)が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。すなわち、前述のように、第3及び第4発光素子は、そのそれぞれが各1個の色を担当し、第1及び第2発光素子は、それら2つで1個の色を担当する形態が一典型例であることからすると、発光総量(あるいは、視認者の目に届く光の総量)等の観点から、後者の面積は、前者の面積の半分にするのが好適である。本態様はまさに、かかる一例に言及する態様である。
なお、発光素子がもつ「面積」とは、当該発光素子上において光が発する領域の面積、あるいは、最終的には視認者に到達可能である光が発する領域の面積(実効面積)を意味する。この点についての、より詳細な具体例については、後述する実施形態において、例えば〔図3〕及び〔図4〕等が参照されながら説明される。
【0017】
この態様では、平面視して、前記第1及び第2発光素子は、前記第3及び第4発光素子の間に挟まれるようにして配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の配置関係が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本態様に係る配列態様(以下、この〔課題を解決するための手段〕の欄では特に、「第1配列態様」という。)は、複数の「画素」によって、文字等の静止画像を表示する際に適用されて好適である。
【0018】
この態様では、平面視して、前記第1発光素子は、前記第3発光素子の隣に配置され、前記第2発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置され、かつ、前記第1発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、一方の端から順に、第3,第1,第4,第2発光素子という配列が実現される。このうち第1及び第2発光素子はそれぞれ、前述のように、第3及び第4発光素子それぞれの半分の面積しか持たない。このような配列態様(以下、この〔課題を解決するための手段〕の欄では特に、「第2配列態様」という。)によれば、第1及び第2発光素子がいわば分離されるようなかたちで配置されることになるので、例えば、文字等の静止画像を表示する際に、あるいは、動画像を表示する際に、当該文字の輪郭、あるいは動画の動きがより滑らかに表現される可能性が高まる。
【0019】
この態様では、平面視して、前記第1及び第2発光素子の一組、前記第3発光素子、並びに前記第4発光素子の三者のそれぞれは、三角形の頂点を占めるように配置される、ように構成してもよい。
この態様によれば、平面視した場合における、第1〜第4発光素子の配置関係が好適に設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本態様に係る配置関係は、複数の「画素」によって、動画像を表示する際に適用されて好適である。
【0020】
なお、本発明は、上述した3つの配列態様を適宜に組み合わせた場合も、その範囲内に含む。例えば、前述した第1配列態様をもつ1個の画素と、第2配列態様をもつ1個の画素とが交互に配列される、などというようである。
また、本発明は、前記第1〜第4発光素子が、上記以外の態様でもって配列された、各種の態様を含むことは言うまでもない。
【0021】
また、本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述した各種の発光装置を備える。
本発明によれば、上述した各種の発光装置、即ち第1及び第2発光素子によって1個の色である第1の色を表現する発光装置を備えてなるので、視野角特性が改善された、画像表示装置等の電子機器が提供される。
【0022】
一方、本発明の発光装置の製造方法は、上記課題を解決するため、4つの発光素子の各々に対応し、かつ、基板上の第1乃至第4位置それぞれに、4つの光共振器を備える発光装置を製造する方法であって、前記第1位置に、第1,第2及び第3膜厚をそれぞれもつ第1-1層,第1-2層及び第1-3層(以下、「第A-B層」とは、第A位置における第B層ということを意味する。)を順次形成することで第1光学的距離調整層を形成する工程と、前記第2位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層を形成する工程と同時に、第2-1層及び第2-2層を形成することで第2光学的距離調整層を形成する工程と、前記第3位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層(ただし、当該2層の中には、前記第2-1層及び前記第2-2層と同時に形成されない層が含まれる。)を形成する工程と同時に、第3-1層及び第3-2層を形成することで第3光学的距離調整層を形成する工程と、前記第4位置に、前記第1-3層を形成する工程と同時に、第4-1層を形成することで第4光学的距離調整層を形成する工程と、を含んで、前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層を含む前記4つの光共振器を形成する共振器形成工程を含む。
【0023】
本発明によれば、上述した、本発明に係る発光装置の各種態様のうち、1個の画素が第1〜第4発光素子を備える発光装置(あるいは、その中でも特に、それらの発光素子の各々に対応する第1〜第4光学的距離をもつ共振器を備える発光装置)を好適に製造することができる。
すなわち、本発明に係る製造方法によると、前記第1,第2及び第3膜厚が、それぞれ、OT1,OT2及びOT3(OT1,OT2,OT3は正の実数)であるとき、第1及び第4光学的距離調整層の膜厚は、それぞれ、(OT1+OT2+OT3)〔nm〕及びOT3〔nm〕ということになる。また、第2光学的距離調整層の膜厚は、(OT1+OT2)〔nm〕,(OT2+OT3)〔nm〕及び(OT3+OT1)〔nm〕のうちのいずれか1つとなる一方、第3光学的距離調整層の膜厚は、(OT1+OT2)〔nm〕,(OT2+OT3)〔nm〕及び(OT3+OT1)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第2光学的距離調整層の膜厚でないもの、ということになる。これらOT1〜OT3の各値間の関係については、既述のOT1〜OT3の各値間における関係と同様のことがあてはまる。
ここで、本発明にいう「第1乃至第4位置」のそれぞれは、基板面上で識別可能な別々の位置を意味する。したがって、例えば「第2位置に、…第2‐2層を形成する」というのは、この第2位置以外の位置との区別のため、所定のパターニング処理等、基板面上の当該第2位置に島状の層を形成するための処理が実行されることを含意する。
以上によると結局、本発明においては、より少ないパターニング処理等を経ながら、より多種の光学的距離調整層(ひいてはより多種の光共振器)が形成されることになる。なぜなら、第2乃至第4位置上の第2‐1層、第2‐2層、第3‐1層、第3‐2層及び第4‐1層のそれぞれは結局、第1‐1層、第1‐2層及び第1‐3層の3つの層が形成されていく過程で形成されていくことになるから、前記パターニング処理等は3回行われれば十分であるのに、4種の膜厚をもつ光学的距離調整層が形成されることになるからである。
したがって、本発明によれば、当該光学的距離調整層、あるいは基板等々に対して、前記パターニング処理等によるダメージを与えるおそれが少なく、製造歩留まりの向上が実現されることになる。また、パターニング処理等の必要性の減少は当然に、製造コストの低廉化をも可能にする。
【0024】
この発明の発光装置の製造方法では、前記第2-1層、前記第2-2層、前記第3-1層又は前記第3-2層の上層としてレジストを形成する工程と、前記第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか1層を形成する工程と同時に形成される層であって前記レジストの上層として形成される層を、当該レジストとともに除去する工程と、を更に含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述した製造方法がよりよくとり行われる。したがって、本態様によれば、前述した、本発明に係る効果、即ち、製造歩留まり向上、あるいは製造コストの低廉化等がより実効的に奏される。
なお、この点について、より詳細な具体例については、後述する実施形態において、例えば〔図13〕乃至〔図16〕等が参照されながら説明される。
【0025】
また、本発明の発光装置の製造方法では、前記基板上の前記第1乃至第4位置に第1及び第2電極層を形成する工程と、これら第1及び第2電極層の間に発光機能層を形成する工程と、を含んで、前記発光素子を形成する工程を更に含み、前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、第1〜第4光学的距離調整層が第1電極層を兼ねる、などということになり、前者が形成されれば即、後者も形成されたことになる(逆もまた然り)、ということになるので、発光装置を、より簡易に、より効率的に、より合理的に製造することができる。
【0026】
この態様では、前記共振器形成工程は更に、前記基板上に前記発光素子から発せられた光を反射する反射層を形成する工程と、前記基板上に前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層を形成する工程と、を含み、前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、第1〜第4光学的距離調整層が第1電極層を兼ね、かつ、半透明半反射層が第2電極層を兼ねる、などということになり、前述した、発光装置の製造工程の簡易化・効率化・合理化がより実効的になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<有機EL装置の構成>
以下では、本発明に係る実施の形態について図1乃至図4を参照しながら説明する。なお、ここに言及した図1乃至図4に加え、以下で参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0028】
有機EL装置は、図1に示すように、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素とを備えている。各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、並びにデータ線駆動回路106である。
【0029】
有機EL素子(発光素子)8は、図1、あるいは図3に示すように、素子基板7上に複数備えられる。それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、画素電極13、発光機能層及び対向電極から構成されている。これら各要素の詳細に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0030】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(画素回路)Pが設けられている。
【0031】
単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8の画素電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0032】
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、並びにデータ線駆動回路106のすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0033】
平面視した場合に概略以上に述べたような構成を備える有機EL装置は、図4に示すような積層構造物250を備えている。この積層構造物250は、図4に示すように、素子基板7を基準として、図中下から順に、回路素子薄膜11、層間絶縁膜302、反射層34、画素電極13、発光機能層18、並びに対向電極5等を含む。
【0034】
このうち、層間絶縁膜302は、その他の残る導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中の好適な配置を実現するため等に貢献する。層間絶縁膜は、積層構造物250中、単層のみ設けられるとは限らず、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、その積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。
より具体的には例えば、層間絶縁膜302は、SiO2、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
【0035】
回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、図4に示す積層構造物250中には、前述した走査線3及びデータ線6も当然構築されているが、その図示は省略されている。
【0036】
反射層34は、前述の層間絶縁膜302の上に形成されている。この反射層34は、発光機能層18から発せられた光を反射する。この反射光は、図4に示すように、図中上方に向かって進行する。このように、発光機能層18から発せられた光は、素子基板7が存在する側とは反対側に進行するようになっているので、本実施形態の有機EL装置100は、いわゆるトップエミッション型である。このため、素子基板7は、必ずしも、透光性材料から作られている必要はなく、セラミックスや金属等の不透明材料で作られてよい(これとは反対に、ボトムエミッション型の場合、素子基板7は、透光性材料から作られている必要がある。)。
このような反射層34は、上述の反射機能をよりよく発揮するため、光反射性能の比較的高い材料から作られているとよい。例えば、アルミニウムや銀等を利用することができる。
【0037】
一方、前記有機EL素子8の各々は、図4に示すように、積層構造物250を構成する前述の各種の要素のうち、画素電極13、発光機能層18、及び対向電極5から構成される。
【0038】
このうち画素電極13は、素子基板7上に、マトリクス状に配列するように形成されている。有機EL素子8がマトリクス状に配列されているということは、このように画素電極13がマトリクス状に配列されているということに相応する(図3参照)。また、前述の反射層34も、同様な意味でマトリクス状に配列されている(図4参照)。本実施形態では、この平面視した場合における画素電極13ないし有機EL素子8の配列態様、面積、あるいはその膜厚等について特徴があるが、その点については後に改めて触れる。
この画素電極13は、コンタクトホール363を介して、前述の回路素子薄膜11と電気的に接続されている。これにより、この画素電極13は、図2に示した第2トランジスタ9から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。なお、コンタクトホール363は、層間絶縁膜302を貫通するようにして形成されている。
このような画素電極13は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)単層膜、あるいは、極薄のアルミニウム(Al)、銀(Ag)、あるいはAgと、ITOとの積層膜、等々の導電性材料から作られている。
【0039】
隔壁層340は、図3、あるいは図4に示すように、上述したような画素電極13のうち、平面視して隣接する画素電極13間の領域に形成されている。この隔壁層340は、各有機EL素子8を区画する役割を担う。なお、この隔壁層340は、層間絶縁膜304の一部を構成する。
このような隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料で作られて好適である。
なお、この隔壁層340は、場合により一般に“バンク”とも呼称される。
【0040】
発光機能層18は、図4に示すように、画素電極13の上に、素子基板7の全面を覆うかのようにして形成されている。
この発光機能層18は、少なくとも有機発光層を含む。有機発光層は、正孔と電子の再結合により生起した励起子が基底状態へと遷移することによって発光する有機EL物質から構成されている。図4において、発光機能層18は一様に白色光を発する。
前述の有機EL物質が例えば低分子材料である場合、当該有機EL物質は、例えばスパッタリング法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等々の蒸着法によって、形成可能である。そして、これによると、当該の発光機能層18は、既述又は図示のように、容易に、素子基板7の全面を覆うかのように形成されうる。
発光機能層18を構成する他の層として、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0041】
対向電極5は、図4に示すように、複数の有機EL素子8の発光機能層18に接触している。この対向電極5は、平面視して、素子基板7の全面を覆うかのような矩形状に形成される(図4ではその一部が図示されている。)。
このような対向電極5は、例えばMgAl、MgCu、MgAu、MgAg等の合金又は金属材料から作られる。また、この対向電極5は、例えば5〜20〔nm〕程度の厚さ等、そこに到達する光の一部が透過可能であるような厚さをもつ。これにより、対向電極5は、半透明半反射性能を備える。
【0042】
なお、前記隔壁340は、上述のように、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うようにして形成されており当該全面に関して一様に白色光を発するようになっている本実施形態では、必ずしも設ける必要はない。ただ、このような隔壁340は、例えば層間絶縁膜302に適宜形成されたコンタクトホール等の穴埋めを目的とした成膜を実行する結果、半ば必然的に形成される場合もある(これにより、素子基板7上の積層構造物の表面を平坦化することが可能となる。)。
また、このような隔壁340は、発光機能層18から発した光が隣の有機EL素子8の方向へと進行するのを、規制する機能を発揮することが期待できる(例えば、当該光が、隣の有機EL素子8へと進行する際には、隔壁340を透過する場合があるから、その場合、当該光のエネルギは、少なくともその透過に応じた分減少する等)。その意味において、当該隔壁340は有用ということができる。
【0043】
以上に述べた積層構造物250のほか、図4において、有機EL装置100は、対向基板50を備え、更に、この対向基板50の上に前記とは別の積層構造物を備えている。この積層構造物は、図4に示すように、対向基板50を基準として、その図中下側に向かって順に、カラーフィルタ51及び遮光膜591からなる。
【0044】
まず、対向基板50は、例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。
カラーフィルタ51は、平面視して画素電極13の形成領域に対応する領域に形成されている。カラーフィルタ51は、赤色フィルタ51R、緑色フィルタ51G1及び51G2、並びに青色フィルタ51Bを含む。これら各色のフィルタ(51R,51G1,51G2,51B)はマトリクス状に配列されているが、本実施形態では、後述する画素電極13等の配列態様に合わせた配列態様でもって配列されている。この点については、後に述べる。
カラーフィルタ51は、発光機能層18から届く光のうち、所定の波長域の光だけを透過させる。すなわち、例えば、赤色フィルタ51Rは、例えばピーク波長610nm及びその付近の波長域の光を透過させ、緑色フィルタ51G1及び51G2は、ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を透過させ、青色フィルタ51Bは、ピーク波長470nm及びその付近の波長域の光を透過させる。
このようなカラーフィルタ51は、光透過性の樹脂材料等から作られる。当該樹脂材料は、各色に対応する顔料等を含みうる。
【0045】
遮光膜591は、平面視して画素電極13の形成領域を縁取るように、あるいは当該形成領域以外の領域に対応するように形成されている。あるいは、対向基板50側の要素だけでいえば、遮光膜591は、マトリクス状に配列されたカラーフィルタ51間の間隙を埋めるようにして形成されている。
このような遮光膜591は、光吸収性、あるいは光反射性の金属、樹脂等の適当な遮光性材料で作られる。金属材料に関して特に具体的に例示すれば、Cr等が好適に挙げられる。
【0046】
充填材60は、このような対向基板50と、前述の素子基板7との間を接着する機能を果たす(図4参照)。この充填材60は、例えばエポキシ樹脂等の材料から作られる。
【0047】
<有機EL素子・画素電極等>
以上に加えて、本実施形態の有機EL装置100は特に、前述した各種要素のうち有機EL素子8の構成、とりわけそのうちの画素電極13等の構成及び作用について特徴がある。以下では、この点について、既に参照した図1乃至図4に加えて、図5乃至図8を参照しながら説明する。
【0048】
まず、本実施形態においては、図3に示すように、4個の有機EL素子8を1セットとして1個の画素Pxが構成される。そして、この画素Px内の4個の有機EL素子8は、図3及び図4に示すように、その1個1個が同じ面積をもっていない。このことは図3に比較的よく示されており、平面視して、図中最左方の有機EL素子8Rと最右方の有機EL素子8Bとは同じ面積をもち、これら両有機EL素子8R及び8B間に挟まれた2つの有機EL素子8G1及び8G2は、その約半分の面積をもつ。
なお、ここでいう「面積」とは、より一般的には、有機EL素子8上において光が発する領域の面積、あるいは、有機EL素子8上における、最終的に視認者に到達可能である光が発する領域の面積(実効面積)を意味する。本実施形態では、ここにいう「領域」は、図3に示すように長円形状をもつが、かかる領域の形状(したがって、前記「面積」)は、前述のカラーフィルタ51、遮光膜591、画素電極13、反射層34及び層間絶縁膜304の全部又は一部の形成形態を適宜に定めることにより、基本的には任意に設定することが可能である。例えば、1個1個の画素電極13が、平面視して長円形状をもつように形成されるのであれば、当該画素電極13及び対向電極5間では、基本的には、その長円形状を底面にもつ柱体の中でしか電子及び正孔の再結合が生じない(即ち発光しない)から、この場合、有機EL素子8の「面積」とは、その“長円形状の面積”にほぼ同義、あるいは少なくともそれに基づいて定められる値、ということになる。
【0049】
前述のカラーフィルタ51は、上述のような4個の有機EL素子8の各々に対応して配列されている。すなわち、図3中最左方の有機EL素子8Rに対しては赤色フィルタ51Rが、その右隣の有機EL素子8G1に対しては緑色フィルタ51G1が、そのまた右隣の有機EL素子8G2に対しては緑色フィルタ51G2が、そして最右方の有機EL素子8Bに対しては青色フィルタ51Bが、それぞれ対応している(図4も参照)。この場合、緑色フィルタ51G1及び51G2は、2個の有機EL素子8G1及び8G2に対応するが、後述するように、当該の1個の画素Px内において表現されるべき緑色は、これら2個の有機EL素子8G1及び8G2の共同作用によって表現される。
なお、既に使用した図3及び図4に示されている符号8R,8G1,8G2,8B(あるいは、13R,13G1,13G2,13B)は、これら各色フィルタ(51R,51G1,51G2,51B)の別に対応している意味合いをもつ。本実施形態における説明及びその他の図面においては、簡単のため、符号“8”は、前述の符号8R,8G1,8G2,8Bを総称する符号として、符号“13”は、前述の符号13R,13G1,13G2,13Bを総称する符号として、それぞれ用いられている。
【0050】
有機EL素子8が、前述のような態様で配列されているのに応じて、画素電極13も同じ態様で配列されている(図3参照)。
加えて、1個の画素Px内に存在する4個の画素電極13R,13G1,13G2,13Bについては、以下の特徴がある。すなわち、図4に示すように、これら各画素電極(13R,13G1,13G2,13B)の膜厚をD1,D2,D3,D4とすると、これらの間に、D1>D2>D3>D4が成立する。つまり、赤色フィルタ51Rに対応する画素電極13Rが最も厚く、青色フィルタ51Bに対応する画素電極13Bが最も薄い。また、緑色フィルタ51G1及び51G2に対応する画素電極13G1及び13G2は、これらの間の膜厚をもつが、図4に示すように、画素電極13G1は、画素電極13G2よりも厚い。
このようなことから、ある1個の画素Px内における有機EL素子8についての、反射層34及び対向電極5間の光学的距離は、当該有機EL素子8ごとに異なることになる。
【0051】
光学的距離は、各層がもつ屈折率と物理的厚さによって規定される。すなわち、画素電極13の屈折率及び物理的厚さをそれぞれn1,l1とし、発光機能層18のそれらをn2,l2とすると、その光学的距離Lは、
L=Σ(np・lp) …… (1)
と表現される。ただし、この式中、「Σ」は、順次にp=1,2とした場合のnp・lpの総和を表す記号である。なお、この式(1)のかたちは、発光機能層18が、正孔輸送層、電子輸送層等々を含む場合等でも変化しない(前記n2,l2に代えて、それらの屈折率及び物理的厚さを、新たにn2,l2、n3,l3、…として、その総和を求めればよい。)。
本実施形態では、この光学的距離Lはまた、以下の式で表される条件を満たす。
L={(2πN+θ1+θ2)・λ}/(4π) …… (2)
ただし、この式中、θ1は反射層34における位相変化量(より正確には、反射層34と画素電極13との界面における位相変化量)、θ2は対向電極5における位相変化量(より正確には、対向電極5と発光機能層18との界面における位相変化量)、λは共振対象波長、Nは適当な整数である(このNは、通常、比較的小さな値、例えば1などとして設定される。)。
以上の2つの式から、本実施形態の有機EL装置100は、一種の光共振器を含むことになる。すなわち、反射層34と、半透明半反射層としての対向電極5との間の光学的距離が適当に設定されることにより、特定の波長成分(前記の共振対象波長λ)をもつ光の強度が増大させられる。
【0052】
画素電極13R,13G1,13G2,13Bの膜厚がそれぞれ異ならせてあるのは、それぞれにおいて着目する共振対象波長λに関して、上述の式(1)及び式(2)に係る条件を満たそうとすることに、その目的がある。例えば、画素電極13Rは、ピーク波長610nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚D1、また、画素電極13Bは、ピーク波長470nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚D4、をそれぞれもつ。
そして、ここで特徴的なのは、緑色フィルタ51G1及び51G2に対応する画素電極13G1及び13G2の膜厚が異なっていることである。この場合、両者とも、ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を強調するための膜厚(D2,D3)をもっていると一応はいえるが、これら両膜厚の値が異なっている(D2≠D3)ことにより、厳密には、これら画素電極13G1及び13G2の各々を含む、2つの光共振器の各々においては、共振の対象となる波長は異なることになる。つまり、有機EL素子8G1及び8G2の各々から発せられた光のそれぞれは、厳密に言えば、相異なる色をもつことになる。
【0053】
このような構成をもつ有機EL素子8、画素電極13、ないしは画素Px等によると、以下に述べる作用効果が奏される。
まず、説明の前提として、図5(あるいは、図8)について説明する。
この図5(あるいは、図8)は、いわゆるxy色度図である。この図において、概ね砲弾型の形で囲われた領域は、人間の認識可能な色の範囲(色域)を表している。その領域の中心付近から周辺に行くほど彩度が大きくなる。また、その領域の周囲を巡る数値は色相を表している。
他方、当該領域内において、三角形で囲われた領域は、RGB表色系で表現可能な色域を表している。このうち、符号Ctが付された点は、ホワイト・ポイントである。また、図中記された「赤」、「緑」等々の文字は、そのそれぞれが位置する場所の色を視認者が認識した場合に感じるであろう、概ねの色名を表している。例えば、x=0.2、y=0.1あたりの色を視認者が認識する場合、その者は、それを「青」と判断する蓋然性が高い、ということである。
【0054】
このような前提の下、まず、図5は、有機EL装置100に正対してその画像表示領域7aを直視する場合を表現している。ここで図5中に示された点G1及びG2は、前記の画素電極13G1及び13G2の膜厚の相違に対応している。すなわち、前述のように、画素電極13G1及び13G2それぞれの膜厚D2及びD3の間にはD2>D3が成立することにより、両者を含む有機EL素子8G1及び8G2は、それぞれ、共振対象波長λG1及びλG2(ただし、λG1>λG2)をもつ光、即ち点G1及びG2に相当する色をもつ光を発する。
しかし、視認者がこれら2つの有機EL素子8G1及び8G2から発せられた光を視認する場合、その視覚能力の制約(例えば、人間の目がもつ空間分解能等)等から、2つの色ではなく、それらが合成された1個の色を認識する。つまり、図5に示すように、点G1及びG2間を結ぶ線分の中点である点VCの色を認識することになる。
【0055】
一方、図6に示すように、視認者Eが、有機EL装置100を斜めの方向(図6では、素子基板7又は対向基板50の法線方向を基準とした角度φの方向)から臨んで画像表示領域7aを視認すると、いわゆる“短波長シフト”が生じる。
仮に、1個の画素Px内における緑色が、本実施形態のように2個の有機EL素子8G1及び8G2によって表現されるのではなく、1個の有機EL素子によって表現され、かつ、それに対応する光共振器の光学的距離が共振対象波長520nmという前提で上記式(1)及び式(2)によって定められているとすれば、正対視する場合は、図5と同様、視認者は点VCに相当する色をもつ光を認識する。しかし、図6に示すように斜めから臨む場合、視認者は、図8の点VCが短波長側にシフトした点VSに相当する色をもつ光を認識してしまう。つまり、この場合、正対視する場合と斜めから臨む場合とで、視認者Eは異なる色合いを認識してしまうことになる。
【0056】
このような不具合は、緑色に関して特に深刻である。
というのも、緑色のピーク波長は、波長の長短に関して、青色のピーク波長により近く、赤色のピーク波長により遠いからである(図7参照。ただし、図7では赤色のピークは不図示)。また、図7は、本実施形態に係る発光機能層18から発せられる光の発光スペクトルであるが、これをみると、緑色のピークは、青色のピークのように鋭いかたちをもつわけではなく、当該青色のピークからなだらかに続く稜線の途中の盛り上がりといった程度のかたちをもつに過ぎないことがわかる。このような場合であって、なお前述したような1個の有機EL素子で緑色を表現する場合を前提とすると、短波長シフトが生じた場合の悪影響が緑色に関して最も顕著になることが懸念される。
【0057】
しかるに、本実施形態では、以上のような不具合の発生がかなりの程度未然に防止される。
図8において、点G1及びG2は、図5における点G1及びG2と同じである。このような状況で、有機EL装置100を斜めから臨むと、これらの点G1及びG2も、上述したような短波長シフトを被る。図8では、点G1’及びG2’が、短波長シフト後の点G1及びG2を表現している。
しかし、この場合、上述のように、視認者は、これらの点G1’及びG2’をいわば生で認識するのではなく、これらの間を結ぶ線分の中点に相当する色をもつ光を認識する。つまり、図8に示すように、視認者は、点VC’に相当する色をもつ光を認識するのである。
そして、この点VC’は、図示するところから明らかなように、図5に示す点VCから然程大きくずれてはいない。
このように、本実施形態によれば、短波長シフトは生ずるものの、視認者は、あたかもそれがなかったような色をもつ光を認識することが可能となるのである。
【0058】
以上述べた有機EL装置100によれば、次のような効果が奏される。
(1) まず、既に述べたように、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、視認者は、当該有機EL装置100に正対するか斜めに臨むかに関わらず、常に、ほぼ同じ色合いをもつ光を認識することが可能である。すなわち、この有機EL装置100の視野角特性は格段に改善している。
また、このことから当然に、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、画素Pxによる、より高品質のカラー画像が表示可能である。
【0059】
(2) また、本実施形態に係る有機EL装置100によれば、緑色を担当する有機EL素子8G1及び8G2の面積は、赤色及び青色を担当する有機EL素子8R及び8Bの面積の約半分となっているが(図3参照)、これは、発光総量(あるいは、視認者の目に届く光の総量)等の観点からみて好適である。これにより、視認者は、違和感のないカラー画像を認識することができる。
また、これに関連して、当該有機EL装置100によれば、平面視した場合における、有機EL素子8R,8G1,8G2,8Bの配置関係が、図3に示すようにバランスよく設定されることで、より高品質な画像表示が可能になる。特に、本実施形態に係る配列態様は、複数の画素Pxによって、文字等の静止画像を表示する際に適用されて好適である。
【0060】
<実施例1>
以下に示す表1は、視野角特性の改善を図った、より具体的な一例(シミュレーション結果)であり、表2は、それに対する比較例である。
【表1】
【表2】
【0061】
これらの表においては、前述の発光機能層18が、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層・注入層から構成されていることが前提されており、かつ、画素電極13はITO、正孔注入層はPEDOT−PSS、正孔輸送層はNPD(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD))、発光層は8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq3)、電子輸送層・注入層はAlq3にLiFを積層したもの、から、それぞれ構成されることが前提されている。また特に、正孔注入層の膜厚が“48nm”であることが前提されている。
また、これらの表中、「輝度比」とは、有機EL装置100に正対した場合における輝度と図6中の角度φが75度である場合における輝度との比を意味する。さらに、「Δx」及び「Δy」とは、有機EL装置100に正対した場合と図6中の角度φが75度である場合との間における、色度図上のx及びyの値のずれ(言い換えると、短波長シフトの影響によって、視認者が認識する色が受けている“ずれ”の程度)を意味する(図8の点VC及び点VC’参照)。
【0062】
これらの表のうち、まず、比較例1(表2)は、従来のように赤色、緑色及び青色の各色に1個ずつの有機EL素子が対応している場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この比較例1のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.095、0.093及び0.248となっている。
他方、実施例1(表1)は、比較例1に対して、画素電極13G1の膜厚D2を60nm、画素電極13G2の膜厚D2を43nmと変化させた場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この実施例1のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.124、0.109及び0.189となっている。
【0063】
この結果によると、Δxは、比較例1では0.093であるのが、実施例1では0.109となって若干シフト量が増大しているものの、Δyは、比較例1では0.248であるのが、実施例1では0.189となって、シフト量が効果的に抑制されている。つまり、この実施例1に係る有機EL装置を視認する視認者は、正対視から75度視へと視点を変化させても、比較例1に対して、より小さなΔyの変化しか受けていない緑色光を認識する。このように、実施例1は、比較例1に対して、視野角特性が改善している。
なお、上述では、Δxの変化量が増大している点が若干気になるが、視認者が最終的に認識する色合いという観点からみた場合、図5及び図8の三角形のかたち、あるいは色名の配置等から推測されるように、Δxの変化量よりも、Δyの変化量のほうを重視したほうが好ましい(即ち、視認者は、Δyの遷移に対して、より敏感に画質の変化を感じるから、Δxが若干増えたとしても、Δyをおさえるほうが、視野角特性改善にとってはより効果的、ということである。)。その意味で、この実施例1は、極めて好適な具体例を提供している。
【0064】
<実施例2>
以下に示す表3は、視野角特性の改善を図った、より具体的な他の例(シミュレーション結果)であり、表4は、それに対する比較例である。
【表3】
【表4】
【0065】
これらの表において前提されているところは、前記の表1及び表2と変わりない。
ただし、これら表3及び表4では、正孔注入層の膜厚が“48nm”ではなく、“32nm”であることが前提されている。
【0066】
これらの表のうち、まず、比較例2(表4)は、従来のように赤色、緑色及び青色の各色に1個ずつの有機EL素子が対応している場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この比較例2のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.102、0.099及び0.235となっている。
他方、実施例2(表3)は、比較例2に対して、画素電極13G1の膜厚D2を76nm、画素電極13G2の膜厚D2を65nmと変化させた場合の、輝度比、Δx及びΔyを表す。この実施例2のうち特に、緑色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.145、0.134及び0.165となっている。
【0067】
この結果によると、Δxは、比較例2では0.099であるのが、実施例2では0.134となって若干シフト量が増大しているものの、Δyは、比較例2では0.235であるのが、実施例2では0.165となって、シフト量が効果的に抑制されている。
つまり、この実施例2においても、正孔注入層、並びに、画素電極13G1及び13G2の膜厚についての変更はあるものの、前記実施例1と同様、視野角特性が改善している。
【0068】
<有機EL装置の製造方法>
次に、以上に述べた本実施形態に係る有機EL装置100の製造方法について、既に参照した図1乃至図8に加えて、図9乃至図12を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係る製造方法は、図4に示すような、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bが形成されることに関して特徴があるので、以下では、その点に関して重点的に説明を行う。
【0069】
まず、素子基板7の上に、回路素子薄膜11、層間絶縁膜302及び反射層34が形成される。これらのいずれの成膜においても、既知であるところの、例えばPVD法、CVD法やスパッタ法等の成膜方法や、あるいはフォトリソグラフィ法等が適宜利用される。その際、回路素子薄膜11の成膜では、第1トランジスタ68等のTFTの製造が含まれるから、その半導体層へのドーピング工程等も行われ、層間絶縁膜302の成膜では、そこにコンタクトホール363を形成するために、適当なエッチング工程等も行われる。
なお、図9乃至図12においては、簡単のため、この反射層34までが形成された段階の構築物をまとめて、符号“SSF”でもって表している。これは、後続する画素電極13形成のための下地膜となる(以下、「下地膜SSF」ということがある。なお、図においては、この下地膜SSFにおいて、前記のコンタクトホール363、反射層34等の図示は一切省略されている(図4と対比参照))。
【0070】
続いて、画素電極13(=13R,13G1,13G2,13B)が形成される。この画素電極13の形成工程は、以下に述べるように、第1から第3の画素電極層131,132,133の形成工程を含む。
まず、図9に示すように、第1・画素電極層131が形成される。
この第1・画素電極層131は、例えば、スパッタ法、CVD法等で膜厚d1=55nm程度となるように形成されたITOの原膜に対して、フォトリソグラフィ及び酸性の混合液等を用いたパターニング処理を実施することによって形成される。この場合、パターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13のうち、大きいものから数えて2番目までの膜厚(即ち、D1、D2)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13R,13G1)が形成されるべき位置だけに、当該第1・画素電極層131が残るように行われる(図9と、例えば図12あるいは図4等とを対比参照)。
これにより、平面視して図3に示すような長円形状及び配列態様をもつ画素電極13R,13G1が、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
なお、このITOからなる第1・画素電極層131を形成する前には、前記反射層34の上に、SiN等からなる電食防止用の薄膜が形成されてもよい。この薄膜の厚さは、例えば50nm程度とするとよい。
【0071】
続いて、図10に示すように、レジスト90及び第2・画素電極層132が形成される。
まず、レジストが塗布される。この場合、図10に示すように、その塗布後のレジストのうち、最終的に形成しようとする画素電極13のうち、大きいものから数えて2番目の膜厚(即ち、D2)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13G1)が形成されるべき位置上のレジスト90を除いたレジストは除去される。この結果、当該の位置にだけレジスト90が残る。
次に、第2・画素電極層131が、前記の第1・画素電極層131と同様にして形成される。
ただし、この場合の膜厚d2は、第1・画素電極層131とは異なって、d2=35nm程度となるようにする。また、この場合におけるパターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13のうち、大きいものから数えて3番目までの膜厚(即ち、D1、D2、D3)をもつ画素電極13(即ち、画素電極13R,13G1,13G2)が形成されるべき位置だけに、当該第2・画素電極層132が残るように行われる(図10と、例えば図12あるいは図4等とを対比参照)。
これにより、平面視して図3に示すような長円形状及び配列態様をもつ画素電極13R,13G1,13G2が、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
【0072】
続いて、図11に示すように、レジスト90の除去が行われる。
この際、前述のように、第2・画素電極層132が、最終的に膜厚D2をもつこととなる画素電極13G1の形成位置についても形成されていることから、当該の第2・画素電極層132は、レジスト90の上にも形成されていることになる(図10参照)。したがって、この第2・画素電極層132は、レジスト90の除去とともに除去されることになる(図11中の破線参照)。
【0073】
続いて、図12に示すように、第3・画素電極層133が形成される。
これも、前述の第1・画素電極層131と同様にして形成される。
ただし、この場合の膜厚d3は、第1・画素電極層131、あるいは第2・画素電極層132とは異なって、d3=30nm程度となるようにする。また、この場合におけるパターニング処理は、最終的に形成しようとする4種の画素電極13の全部が形成されるべき位置だけに、当該第3・画素電極層133が残るように行われる(図12と、例えば図4あるいは図3等と対比参照)。
これにより、平面視して、まさに図3に示すような画素電極13R,13G1,13G2,13Bが、素子基板7上でマトリクス状配列に従って並ぶようにして形成される。
【0074】
以上の処理を経ると、図12に示すように、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13が、3回のパターニング処理を経るだけで形成されることになる。すなわち、画素電極13Rは、第1・画素電極層131〜第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚120nm(=d1+d2+d3=55+35+30)をもつものとして形成され、画素電極13G1は、第1・画素電極層131及び第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚85nm(=d1+d3=55+30)をもつものとして形成され、画素電極13G2は、第2・画素電極層132及び第3・画素電極層133の膜厚の総計たる、膜厚65nm(=d2+d3=35+30)をもつものとして形成され、画素電極13Bは、第3・画素電極層133の膜厚たる、膜厚30nm(=d3)をもつものとして形成されることになる。
【0075】
後は、これに続いて、層間絶縁膜304、発光機能層18等々の各層が形成される。これも、前記の反射層34等々と同様、CVD法等々の公知の方法により形成される。
【0076】
以上述べたような有機EL装置の製造方法によれば、次のような効果が奏される。
すなわち、既に述べたように、この製造方法では、4つの膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bを形成するに当たって、パターニング処理が3回しか行われていない。
このように、本実施形態によれば、より少ないパターニング処理等を経ながら、より多種の画素電極13R,13G1,13G2,13B(ひいては、より多種の光共振器)が形成されることになるから、当該画素電極13、下地膜SSF、あるいは素子基板7、等々に対して、当該パターニング処理等によるダメージを与えるおそれが少なく、したがって、製造歩留まりの向上が実現される。また、パターニング処理等の必要性の減少は当然に、製造コストも低廉化する。
【0077】
なお、上記製造方法においては、第1・画素電極層131の膜厚d1と、第2・画素電極層132の膜厚d2との間に差がある限り、最終的に、4種の膜厚D1〜D4をもつ画素電極13R,13G1,13G2,13Bが形成されることになる。逆に言えば、この場合、第1及び第3・画素電極層131及び133の膜厚は同じ(d1=d3)であってよく、あるいは、第2及び第3・画素電極層132及び133の膜厚は同じ(d2=d3)であってよい(ただし、これら両者が、同時に満たされてはいけない。)。
【0078】
また、上記製造方法は、本発明に係る「発光装置の製造方法」の一具体例を呈示しているに止まる。上記以外にも、例えば、図13乃至図16に示すような順序で、画素電極13は製造されてよい。
この製造方法は、各画素電極層131〜133及びレジスト90の形成タイミングや、当該レジスト90とともに除去される画素電極層の相違(上記製造方法では第2・画素電極層132が除去され、本製造方法では第3・画素電極層133が除去される。)等があるものの、本質的に上記製造方法と同じである。特に、本製造方法におけるパターニング処理は、図13で2回、図14で1回の合計3回行われることになるから、該パターニング処理の回数も、本製造方法と上記製造方法との間で変わらない。
ただし、本製造方法では、最終的に形成される画素電極13G1の膜厚D2がd1+d2(上記製造方法ではd1+d3)となり、画素電極13GG2の膜厚D3がd2+d3となって、その点で、上記製造方法とは異なることになる。
これ以外にも、画素電極13G1及び13G2の膜厚D2及びD3が、それぞれ、d1+d2及びd1+d3となる場合等もあり得る。
いずれにせよ、これらの製造方法によっても、より少ないパターニング処理で、より多種の画素電極13が形成されることに変わりはなく、したがって、前述した効果が同様に奏される。
【0079】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る有機EL装置は、上述した形態に限定されることはなく、各種の変形が可能である。
(1-i) 上記実施形態では、図3に示したように、有機EL素子8G1及び8G2が、有機EL素子8R及び8Bの間に挟まれるように配置される形態について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図17に示すように、緑色を担当する有機EL素子8G1−1が赤色を担当する有機EL素子8R−1の図中右隣に配置され、同じく緑色担当する有機EL素子8G2−1が青色を担当する有機EL素子8B−1の図中右隣に配置され、かつ、前記有機EL素子8G1−1が前記有機EL素子8B−1と隣り合うように配置される、という形態も、本発明の範囲内にある。この形態では、これら4つの有機EL素子8R−1,8G1−1,8B−1,8G2−1をもって、1個の画素Px1が構成される。
このような形態によれば、緑色を担当する有機EL素子8G1−1及び8G2−1が、いわば分離されるようなかたちで配置されることになるので、例えば、文字等の静止画像を表示する際に、あるいは、動画像を表示する際に、当該文字の輪郭、あるいは動画の動きがより滑らかに表現される可能性が高まる。
【0080】
(1-ii) あるいは、図18に示すように、有機EL素子8は、いわば千鳥足状に配列されてもよい。すなわち、この図において、緑色担当の有機EL素子8G1−2及び8G2−2の一組、赤色担当の有機EL素子8R−2、及び青色担当の有機EL素子8B−2の三者のそれぞれが、図中破線で示す三角形の頂点を占めるように配置される。この形態では、これら4つの有機EL素子8G1−2,8G2−2,8R−2,8B−2をもって、1個の画素Px2が構成される。また、この形態では、この画素Px2の複数が、いわば市松模様状に配列される(以上のような配列態様も、当然、本発明にいう「マトリクス状配列」に含まれる。)。
このような形態によれば、動画像をより滑らかに表示することが可能である。
【0081】
(1-iii) あるいは、図19に示すように、異なる配列機序をもつ画素Px1及びPxが交互に配置される、という形態も、本発明の範囲内にある。なお、図から明らかなように、画素Px1は、図17に示した有機EL素子8G1−1等からなる画素であり、画素Pxは上記実施形態において説明した画素(図3に示した画素)である。
【0082】
(2) 上記実施形態では、図3に示したように、緑色担当の有機EL素子8のみが、2個の有機EL素子8G1及び8G2からなる形態について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、図20に示すように、緑色担当の有機EL素子8G1―3及び8G2−3に加えて、赤色担当の有機EL素子も、2個の有機EL素子8R1−3及び8R2−3からなるような形態も、本発明の範囲内にある。
このような形態によると、図5及び図8の色度図を参照して説明したと同様の作用効果が、赤色光についても享受されることになる。
なお、場合によっては、図20の構成を更に変更して、青色担当の有機EL素子をも、前記の有機EL素子8R1−3及び8R2−3のようにいわば分割してよい。
【0083】
<実施例3>
以下に示す表5は、上述のように、緑色に加えて、赤色に関しても視野角特性の改善を図った、より具体的な一例(シミュレーション結果)である。
【表5】
【0084】
この表において前提されているところは、前記の表3及び表4と変わりない。
この表において、画素電極13R1−3(前記有機EL素子8R1−3に含まれる画素電極を意味する)の膜厚は118.8nm、画素電極13R2−3(前記有機EL素子8R2−3に含まれる画素電極を意味する)の膜厚は124.2nmとされている。この表5のうち特に、赤色に着目すると、輝度比、Δx及びΔyのそれぞれは、0.125、0.032及び−0.075となっている。
【0085】
この実施例3は、その条件が、赤色担当の有機EL素子8R1−3及び8R2−3に関する相違を除いて、前記の比較例2(表4)の条件と同一であるので、これと比較可能である。それによると、Δxは、前記の比較例2では0.049であるのが、この実施例3では0.032となり、Δyは、比較例2では−0.078であるのが、実施例3では−0.075となって、いずれもシフト量が抑制されている。
このように、この実施例3においては、緑色に関する視野角特性の改善のほか、赤色に関する視野角特性の改善も実現される。
【0086】
(3) 上記実施形態では、発光機能層18が素子基板7の全面を覆うかのように形成される態様について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。
例えば、前述の隔壁層340を利用して、当該隔壁層340により区画された、画素電極13上の空間ごとに有機EL物質を供給する製造方法が採用されてもよい。この場合、蒸着法、インクジェット法等が好適に利用可能である。かかる態様によると、発光機能層18を、色毎に、区別して設けることができる。すなわち、当該隔壁340で区画された空間ごとに、例えば、赤色光、緑色光及び青色光それぞれ専用の有機EL物質を含む発光機能層を形成することが可能である。
なお、このような場合、前述のカラーフィルタ51を設ける必要は必ずしもなくなるが、このような場合においても、カラーフィルタ51はそのまま設けておいてよい。かかる形態では、各表示色の色純度が高められるという効果が得られる。
【0087】
なお、これに関連して、上記実施形態においては、緑色フィルタ51G1及び51G2は、いずれも、「ピーク波長520nm及びその付近の波長域の光を透過させ」るものであるが、この場合、これら緑色フィルタ51G1及び51G2は、例えば全く同じ材料から作られること等によって、原理的には全く同じ波長をもつ光を透過させるように構成されてよいし、あるいは、若干異なる材料から作られること等によって、双方間で微妙に異なる波長をもつ光を透過させるように構成されてもよい。後者の場合は、例えば、その微妙に異なる波長は、図5又は図8に示す点G1及びG2に基づいて定められると好適であるのは言うまでもない。
【0088】
(4) 上記実施形態の有機EL装置100は、図4に示したように、素子基板7の側から見て、順に、反射層34、画素電極13、発光機能層18、及び対向電極5、という積層構造をもち、かつ、このうちの対向電極5は、本発明にいう「半透明半反射層」としての機能を、また、画素電極13は、本発明にいう「光学的距離調整層」としての機能をもつ、という構成をもっているが、本発明は、かかる形態に限定されるわけでは勿論ない。
例えば、本発明にいう「光学的距離調整層」は、場合によっては、共振器内の光学的距離を調整するためだけの機能をもつ層として、「発光装置」の一部を構成し得る(つまり、画素電極13と「光学的距離調整層」とが機能分離されると同時に、それぞれ物理的に別個の層として形成される。)。その場合、当該の光学的距離調整層は、例えば、図4でいう画素電極13及び反射層34間に配置されることも可能である。
また、上記実施形態の有機EL装置100はトップエミッション型であるが、本発明は、ボトムエミッション型、あるいはデュアルエミッション型に対して適用可能である。このような場合、本発明にいう「反射層」及び「半透明半反射層」と「基板」との配置関係は上記実施形態とは異なることとなって、図4の構造はとり得ない場合がありえ、また、図4に示す対向電極5が半透明半反射機能をもつことが不都合となる、などといった様々な変更必要点が生じることになる。が、例えば、ボトムエミッション型を前提とすれば、当該対向電極5に本発明にいう「反射層」としての機能を兼ねさせる、等々の適当な変更を上記実施形態に加えれば、容易に本発明の適用が可能である。
いずれにせよ、上記実施形態は、本発明の一具体例を呈示しているに止まる。
なお、上記実施形態のように、対向電極5が「半透明半反射層」としての機能をもつ場合は、「発光素子」の構成要素である対向電極5が、同時に、共振器の構成要素である「半透明半反射層」を兼ねているということができるが、このような態様であっても、本発明において、「半透明半反射層」が、「基板の法線方向に沿ってみて…発光素子…の他方の側に配置され」る、といわれる場合に該当する。前述した、対向電極5が「反射層」を兼ねる場合も同様に、「反射層」が、「基板の法線方向に沿ってみて…発光素子の一方の側に配置され」る、といわれる場合に該当する。
【0089】
<応用>
次に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した電子機器について説明する。
図21は、上記実施形態に係る有機EL装置100を画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置100と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図22に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置100に表示される画面がスクロールされる。
図23に、上記実施形態に係る有機EL装置100を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置100に表示される。
【0090】
本発明に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図21から図23に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図2】図1の有機EL装置を構成する単位回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1の有機EL装置の一部拡大平面図であって、特に画素(Px)の構成を示す平面図である。
【図4】図3のX‐X’線断面図である。
【図5】xy色度図であって、図3及び図4に示す、緑色発光を担当する有機EL素子(8G1・8G2)の発する光の色度(点G1・G2)等を併せて示す図である。
【図6】正対視の場合と角度φでもって斜めから臨む場合とを図示した説明図である。
【図7】図4に示す発光機能層(18)から発せられる光の発光スペクトルであって、短波長シフトの様子を説明するための説明図である。
【図8】xy色度図であって、図3及び図4に示す、緑色発光を担当する有機EL素子(8G1・8G2)の発する光が短波長シフトを受けた場合の色度(点G1’・G2’)等を併せて示す図である。
【図9】図1の有機EL装置を構成する画素電極(13)の製造工程(その1)を示す図である。
【図10】図9に続く製造工程(その2)を示す図である。
【図11】図10に続く製造工程(その3)を示す図である。
【図12】図11に続く製造工程(その4)を示す図である。
【図13】図1の有機EL装置を構成する画素電極(13)の、図9乃至図12とは異なる製造工程(その1)を示す図である。
【図14】図13に続く製造工程(その2)を示す図である。
【図15】図14に続く製造工程(その3)を示す図である。
【図16】図15に続く製造工程(その4)を示す図である。
【図17】図3と同趣旨の図であって、画素(Px1)内の有機EL素子の配列態様がそれとは異なる例を示す平面図である。
【図18】図3及び図17と同趣旨の図であって、画素(Px2)内の有機EL素子の配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図19】図3、図17及び図18と同趣旨の図であって、有機EL素子の全体的な配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図20】図3、図17乃至図19と同趣旨の図であって、画素(Px3)内の有機EL素子の配列態様がそれらとは異なる例を示す平面図である。
【図21】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図22】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図23】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
7……素子基板、8(8R,8G1,8G2,8B)……有機EL素子、13(13R,13G1,13G2,13B)……画素電極、18……発光機能層、5……対向電極、Px,Px1,Px2,Px3……画素、51(51R,51G1,51G2,51B)……カラーフィルタ、131,132,133……第1〜第3・画素電極層、d1,d2,d3……(第1〜第3・画素電極層の)膜厚、D1,D2,D3,D4……(画素電極13R,13G1,13G2,13Bの)膜厚、90……レジスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上にマトリクス状配列に従って並べられ、そのうちの所定数ごとに1個の画素を構成する複数の発光素子と、
前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の一方の側に配置され、当該発光素子から発せられた光を反射する反射層と、
前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の他方の側に配置され、前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層と、
を備え、
前記反射層及び前記半透明半反射層は、
前記複数の発光素子の各々に対応し、かつ、前記光のうち特定の波長をもつ光を共振させる、複数の共振器を構成し、
前記画素の複数のうちの少なくとも1つは、
前記反射層及び前記半透明半反射層間の光学的距離が第1光学的距離に一致する前記共振器と、前記第1光学的距離とは異なる第2光学的距離をもつ前記共振器とを、少なくとも含み、
当該画素は、
これら第1及び第2光学的距離をもつ2つの共振器に対応する第1及び第2発光素子によって、
第1の色を表現する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記画素は、前記第1及び第2発光素子に加えて、
第2の色を表現する第3発光素子と、
第3の色を表現する第4発光素子と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第3発光素子に対応する前記共振器がもつ第3光学的距離は、前記第1及び第2光学的距離のいずれとも異なり、
前記第4発光素子に対応する前記共振器がもつ第4光学的距離は、前記第1,第2及び第3光学的距離のいずれとも異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第3光学的距離が、(OT1+OT2+OT3+G)〔nm〕(OT1,OT2,OT3,Gは正の実数)で表されるとき、
前記第4光学的距離は、(OT3+G)〔nm〕で表され、
前記第1光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つで表され、かつ、
前記第2光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第1光学的距離を表さないもので表される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記画素は、
前記第2の色を表現するため、前記第3発光素子に加えて、
当該第3発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第5発光素子を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の色は、緑色を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、
前記法線方向に沿って積層される、第1及び第2電極層と、
これら第1及び第2電極層に挟持され、前記光を発する発光機能層と、
を含み、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方は、
前記反射層及び前記半透明半反射層間に配置され、
前記第1及び第2光学的距離は、
前記第1又は第2電極層の膜厚の相違によって、相違する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第3及び第4発光素子は、平面視して、略同一の面積をもち、
前記第1及び第2発光素子は、これら第3及び第4発光素子に比べて、略半分の面積をもつ、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
平面視して、前記第1及び第2発光素子は、
前記第3及び第4発光素子の間に挟まれるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
平面視して、前記第1発光素子は、前記第3発光素子の隣に配置され、
前記第2発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置され、かつ、
前記第1発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項12】
平面視して、
前記第1及び第2発光素子の一組、前記第3発光素子、並びに前記第4発光素子の三者のそれぞれは、三角形の頂点を占めるように配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
4つの発光素子の各々に対応し、かつ、基板上の第1乃至第4位置それぞれに、4つの光共振器を備える発光装置を製造する方法であって、
前記第1位置に、第1,第2及び第3膜厚をそれぞれもつ第1-1層,第1-2層及び第1-3層(以下、「第A-B層」とは、第A位置における第B層ということを意味する。)を順次形成することで第1光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第2位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層を形成する工程と同時に、第2-1層及び第2-2層を形成することで第2光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第3位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層(ただし、当該2層の中には、前記第2-1層及び前記第2-2層と同時に形成されない層が含まれる。)を形成する工程と同時に、第3-1層及び第3-2層を形成することで第3光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第4位置に、前記第1-3層を形成する工程と同時に、第4-1層を形成することで第4光学的距離調整層を形成する工程と、
を含んで、
前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層を含む前記4つの光共振器を形成する共振器形成工程を含む、
ことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2-1層、前記第2-2層、前記第3-1層又は前記第3-2層の上層としてレジストを形成する工程と、
前記第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか1層を形成する工程と同時に形成される層であって前記レジストの上層として形成される層を、当該レジストとともに除去する工程と、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板上の前記第1乃至第4位置に第1及び第2電極層を形成する工程と、
これら第1及び第2電極層の間に発光機能層を形成する工程と、を含んで、
前記発光素子を形成する工程を更に含み、
前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記共振器形成工程は更に、
前記基板上に前記発光素子から発せられた光を反射する反射層を形成する工程と、
前記基板上に前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層を形成する工程と、
を含み、
前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上にマトリクス状配列に従って並べられ、そのうちの所定数ごとに1個の画素を構成する複数の発光素子と、
前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の一方の側に配置され、当該発光素子から発せられた光を反射する反射層と、
前記基板の法線方向に沿ってみて前記発光素子の他方の側に配置され、前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層と、
を備え、
前記反射層及び前記半透明半反射層は、
前記複数の発光素子の各々に対応し、かつ、前記光のうち特定の波長をもつ光を共振させる、複数の共振器を構成し、
前記画素の複数のうちの少なくとも1つは、
前記反射層及び前記半透明半反射層間の光学的距離が第1光学的距離に一致する前記共振器と、前記第1光学的距離とは異なる第2光学的距離をもつ前記共振器とを、少なくとも含み、
当該画素は、
これら第1及び第2光学的距離をもつ2つの共振器に対応する第1及び第2発光素子によって、
第1の色を表現する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記画素は、前記第1及び第2発光素子に加えて、
第2の色を表現する第3発光素子と、
第3の色を表現する第4発光素子と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第3発光素子に対応する前記共振器がもつ第3光学的距離は、前記第1及び第2光学的距離のいずれとも異なり、
前記第4発光素子に対応する前記共振器がもつ第4光学的距離は、前記第1,第2及び第3光学的距離のいずれとも異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第3光学的距離が、(OT1+OT2+OT3+G)〔nm〕(OT1,OT2,OT3,Gは正の実数)で表されるとき、
前記第4光学的距離は、(OT3+G)〔nm〕で表され、
前記第1光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つで表され、かつ、
前記第2光学的距離は、(OT1+OT2+G)〔nm〕,(OT2+OT3+G)〔nm〕及び(OT3+OT1+G)〔nm〕のうちのいずれか1つであって前記第1光学的距離を表さないもので表される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記画素は、
前記第2の色を表現するため、前記第3発光素子に加えて、
当該第3発光素子に対応する前記共振器がもつ光学的距離とは異なる光学的距離をもつ共振器に対応する第5発光素子を更に含む、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の色は、緑色を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、
前記法線方向に沿って積層される、第1及び第2電極層と、
これら第1及び第2電極層に挟持され、前記光を発する発光機能層と、
を含み、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方は、
前記反射層及び前記半透明半反射層間に配置され、
前記第1及び第2光学的距離は、
前記第1又は第2電極層の膜厚の相違によって、相違する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第3及び第4発光素子は、平面視して、略同一の面積をもち、
前記第1及び第2発光素子は、これら第3及び第4発光素子に比べて、略半分の面積をもつ、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
平面視して、前記第1及び第2発光素子は、
前記第3及び第4発光素子の間に挟まれるようにして配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
平面視して、前記第1発光素子は、前記第3発光素子の隣に配置され、
前記第2発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置され、かつ、
前記第1発光素子は、前記第4発光素子の隣に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項12】
平面視して、
前記第1及び第2発光素子の一組、前記第3発光素子、並びに前記第4発光素子の三者のそれぞれは、三角形の頂点を占めるように配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
4つの発光素子の各々に対応し、かつ、基板上の第1乃至第4位置それぞれに、4つの光共振器を備える発光装置を製造する方法であって、
前記第1位置に、第1,第2及び第3膜厚をそれぞれもつ第1-1層,第1-2層及び第1-3層(以下、「第A-B層」とは、第A位置における第B層ということを意味する。)を順次形成することで第1光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第2位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層を形成する工程と同時に、第2-1層及び第2-2層を形成することで第2光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第3位置に、前記第1-1層、第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか2層(ただし、当該2層の中には、前記第2-1層及び前記第2-2層と同時に形成されない層が含まれる。)を形成する工程と同時に、第3-1層及び第3-2層を形成することで第3光学的距離調整層を形成する工程と、
前記第4位置に、前記第1-3層を形成する工程と同時に、第4-1層を形成することで第4光学的距離調整層を形成する工程と、
を含んで、
前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層を含む前記4つの光共振器を形成する共振器形成工程を含む、
ことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2-1層、前記第2-2層、前記第3-1層又は前記第3-2層の上層としてレジストを形成する工程と、
前記第1-2層及び第1-3層のうちのいずれか1層を形成する工程と同時に形成される層であって前記レジストの上層として形成される層を、当該レジストとともに除去する工程と、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板上の前記第1乃至第4位置に第1及び第2電極層を形成する工程と、
これら第1及び第2電極層の間に発光機能層を形成する工程と、を含んで、
前記発光素子を形成する工程を更に含み、
前記第1,第2,第3及び第4光学的距離調整層は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記共振器形成工程は更に、
前記基板上に前記発光素子から発せられた光を反射する反射層を形成する工程と、
前記基板上に前記光の一部を反射し他の部分を透過させる半透明半反射層を形成する工程と、
を含み、
前記反射層及び前記半透明半反射層の少なくとも一方は、
前記第1及び第2電極層の少なくとも一方を兼ねる、
ことを特徴とする請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−140787(P2010−140787A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316541(P2008−316541)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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