説明

発振器

【課題】高い発振周波数で動作する場合であっても、十分なストリップライン長を確保することができ、製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止すること。
【解決手段】発振器10は、発振トランジスタ2と、前記発振トランジスタ2のベース−エミッタ間に設けられる第1の帰還コンデンサ4と、前記発振トランジスタ2のコレクタ−エミッタ間に設けられる第2の帰還コンデンサ5と、前記発振トランジスタ2のベースに一端が接続される共振用ストリップライン13と、前記発振トランジスタ2のエミッタ−グラウンド間に設けられるトラップ回路20と、を備え、前記共振用ストリップライン13は、発振周波数において高次共振モードとなる長さを有し、前記トラップ回路20は、前記高次共振モードより低次側の低次共振モードに相当する周波数の信号を減衰させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振周波数決定素子にストリップラインを用いる発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変容量ダイオードに制御電圧を印加して発振周波数を制御する電圧制御発振器として、図6に示す電圧制御発振器が知られている。図6に示す電圧制御発振器1は、発振用トランジスタ2のコレクタがコンデンサ3を介して高周波的に接地され、ベース、エミッタ間およびエミッタ、コレクタ間にそれぞれ帰還コンデンサ4,5が接続されている。発振用トランジスタ2のエミッタは、2つの帰還コンデンサ4,5の接続点に接続されると共にエミッタバイアス抵抗6を介して接地されている。発振用トランジスタ2のコレクタは、電源端子T1に接続されている。発振用トランジスタ2のコレクタと電源端子T1との接続点に分圧用抵抗7,8が直列に接続され、分圧用抵抗7,8の中間接続点が発振用トランジスタ2のベースに接続されている。また、発振用トランジスタ2のエミッタは、直流カットコンデンサ9を介して出力端RFoutに接続され、発振用トランジスタ2のベースには直流カットコンデンサ11を介して共振回路12が接続されている。
【0003】
共振回路12は、インダクタを構成するストリップライン13とコンデンサ14との並列共振回路で構成されている。ストリップライン13の一端とコンデンサ14の一端とが接続され、ストリップライン13の他端は接地されている。コンデンサ14の他端は、可変容量ダイオードとしてのバラクタダイオード15が直列に接続されている。バラクタダイオード15のアノードは接地され、カソードとコンデンサ14との接続点はインダクタ16を介して制御電圧端子T2に接続されている。インダクタ16と制御電圧端子T2との接続点にはコンデンサ17の一端が接続され、コンデンサ17の他端は接地されている。この電圧制御発振器1は、バラクタダイオード15のカソードに制御電圧Vctlを印加することにより、バラクタダイオード15の容量を可変させ共振回路12の共振周波数を変化させている。
【0004】
また、この種の電圧制御発振器のストリップラインは、例えば、1/4波長で形成される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−151275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い発振周波数で動作する電圧制御発振器が求められるようになってきており、従来のように1/4波長のストリップラインを用いた場合には、周波数が高くなるに伴いストリップライン長が短くなるので、ストリップラインの製造誤差によるバラツキが大きくなると共に、Qが低下してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高い発振周波数で動作する場合であっても、十分なストリップライン長を確保することができ、製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発振器は、発振トランジスタと、前記発振トランジスタのベース−エミッタ間に設けられる第1の帰還コンデンサと、前記発振トランジスタのコレクタ−エミッタ間に設けられる第2の帰還コンデンサと、前記発振トランジスタのベースに一端が接続される共振用ストリップラインと、前記発振トランジスタのエミッタ−グラウンド間に設けられるトラップ回路と、を備え、前記共振用ストリップラインは、発振周波数において高次共振モードとなる長さを有し、前記トラップ回路は、前記高次共振モードより低次側の低次共振モードに相当する周波数の信号を減衰させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ストリップラインが発振周波数の高次共振モードとなる長さを有し、トラップ回路が低次共振モードに相当する周波数の信号を減衰させるので、高い発振周波数で発振させる場合に発生する複数の共振モードのうち、低次共振モードの周波数で発振させることなく高次共振モードの周波数で発振することができる。このため、発振周波数を高くした場合でも、従来の発振器と比べて、十分なストリップライン長を確保でき、ストリップラインの製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができる。
【0009】
本発明は、上記発振器において、前記発振トランジスタのコレクタが高周波的に接地され、前記共振用ストリップラインは、他端が接地されると共に、発振周波数の(2n+1)/4波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、共振用ストリップラインが発振周波数の(2n+1)/4波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、トラップ回路は発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させるので、低次共振モードでの発振を防止して高次共振モードでのみ発振することができる。
【0011】
本発明は、上記発振器において、前記共振用ストリップラインは、発振周波数の3/4波長の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、共振用ストリップラインが発振周波数の3/4波長の長さで形成され、トラップ回路が発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させるので、Qの向上と共に、より高次の共振モードによる発振周波数で安定した発振を実現することができる。
【0013】
本発明は、上記発振器において、前記共振用ストリップラインと並列に第1のバラクタダイオードが設けられ、前記トラップ回路に第2のバラクタダイオードが設けられ、前記第1のバラクタダイオード及び前記第2のバラクタダイオードに同一の制御電圧が印加され、前記発振周波数の変化に連動して前記トラップ回路が減衰する周波数が変化することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1のバラクタダイオード及び第2のバラクタダイオードに同一の制御電圧が印加されるので、発振振周波数の変化に連動してトラップ回路の減衰する周波数が変化するので、発振周波数の可変範囲が広い場合でもトラップ周波数を追従させることができる。
【0015】
本発明は、上記発振器において、前記トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成することが可能である。この場合には、簡単な構成によりトラップ回路を構成することができる。
【0016】
本発明は、上記発振器において、前記共振用ストリップラインは、他端が開放され、発振周波数の(2n+1)/2波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、共振用ストリップラインが発振周波数の(2n+1)/2波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、トラップ回路は前記発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させるので、低次共振モードでの発振を防止して高次共振モードでのみ発振することができる。
【0018】
本発明は、上記発振器において、前記共振用ストリップラインは、発振周波数の3/2波長の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、共振用ストリップラインが発振周波数の3/2波長の長さを有し、トラップ回路が発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させるので、Qの向上と共に、より高次の共振モードによる発振周波数で安定した発振を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い発振周波数で動作する場合であっても、十分なストリップライン長を確保でき、ストリップラインの製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の回路構成図である。本実施の形態に係る電圧制御発振器は、可変容量ダイオードに制御電圧を印加して発振周波数(例えば、3GHz)を制御する発振器であり、発振周波数に対してストリップラインで発生する複数の共振モードのうち、高次側の共振モード(高次共振モード)の周波数で発振し、低次側の共振モード(低次共振モード)では発振しないように構成したものである。なお、以下では、高次共振モードの発振周波数を3GHzにした場合を例に説明をする。
【0022】
図1に示す電圧制御発振器10は、発振用トランジスタ(NPN型バイポーラトランジスタ)2のコレクタが接地用コンデンサ(バイパスコンデンサ)3を介して高周波的に接地され、ベース、エミッタ間およびエミッタ、コレクタ間にそれぞれ帰還コンデンサ4,5が接続されている。発振用トランジスタ2のエミッタは、2つの帰還コンデンサ4,5の接続点に接続されると共にエミッタバイアス抵抗6を介して接地されている。発振用トランジスタ2のコレクタは、電源電圧が印加される電圧端子T1に接続されている。発振用トランジスタ2のコレクタと電圧端子T1との接続点に分圧用抵抗7,8が直列に接続され、分圧用抵抗7と分圧用抵抗8との中間接続点が発振用トランジスタ2のベースに接続されている。発振用トランジスタ2のエミッタは、直流カットコンデンサ(結合用コンデンサ)9を介して出力端RFoutに接続され、直流カットコンデンサを介して発振信号が出力される。また、発振用トランジスタ2のベースは、直流カットコンデンサ11を介して共振回路12に接続されている。
【0023】
共振回路12は、インダクタを構成するストリップライン(共振用ストリップライン)13とコンデンサ14との並列共振回路で構成されている。ストリップライン13の一端とコンデンサ14の一端とが接続され、インダクタ13の他端は接地されている。ストリップライン13は、発振周波数に対して高次共振モードとなる長さを有している。高次モードとは、発振周波数に対して複数発生する共振モードのうち高次側の共振モードをいう(詳細は後述する)。具体的には、ストリップライン13は、発振周波数の(2n+1)/4波長(nは1以上の自然数)の長さで形成され、本実施の形態のストリップライン長は、発振周波数3GHzの3/4波長の長さで形成されている。
【0024】
コンデンサ14の他端には、可変容量ダイオードとしてのバラクタダイオード(第1のバラクタダイオード)15が直列に接続されている。バラクタダイオード15のアノードは接地され、カソードとコンデンサ14との接続点はインダクタ16を介して制御電圧端子T2に接続されている。インダクタ16と制御電圧端子T2との接続点にはコンデンサ17の一端が接続され、コンデンサ17の他端は高周波的に接地されている。バラクタダイオード15のカソードに制御電圧Vctlを印加することにより、バラクタダイオード15の容量を可変させ、つまりコンデンサ14及びバラクタダイオード15の合成容量を可変させ、共振回路11の発振周波数を変化させている。本実施の形態の場合、コンデンサ14とバラクタダイオード15との合成容量は、バラクタダイオード14のカソードに制御電圧Vctlが印加された場合に、発振周波数3GHzで発振するように調整されている。
【0025】
一方、帰還コンデンサ4,5の接続点には、トラップ回路20が接続されている。トラップ回路20は、発振周波数において高次共振モードより低次側の低次共振モード(基本共振モード)の周波数信号を減衰するものであり、インダクタ21と直流カットコンデンサ22との直列共振回路で構成されている。インダクタ21の一端は帰還コンデンサ4,5の接続点に接続され、他端は直流カットコンデンサ22の一端に接続されている。直流カットコンデンサ22の他端には、可変容量ダイオードとしてのバラクタダイオード(第2のバラクタダイオード)23が接続されている。バラクタダイオード23のアノードは接地され、バラクタダイオード23のカソードと直流カットコンデンサ22との接続点には、インダクタ24を介して制御電圧端子T3が接続されている。インダクタ24と制御電圧端子T3との接続点にはコンデンサ25の一端が接続され、コンデンサ25の他端は高周波的に接地されている。この制御電圧端子T3には、上記バラクタダイオード14のカソードに印加される制御電圧Vctlが印加される。コンデンサ22とバラクタダイオード23との合成容量は、発振周波数に対して低次共振モードでの共振によって発生する周波数信号に同調するように調整されている。具体的には、トラップ回路20は、発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数信号を減衰させ(nは1以上の自然数)、本実施の形態では、発振周波数3GHzの1/3倍の周波数の信号を減衰させるよう調整されている。
【0026】
次に、図2を用いて、発振周波数における高次共振モードについて説明する。図2(a)は、1/4波長の長さLで形成されたストリップラインを示し、図2(b)は、発振周波数1GHzにおける共振モード(λ/4モード)を示している。図2(c)は、発振周波数3GHzにした場合の共振モード(3/4λモード)を示している。図2(a)に示す1/4波長のストリップライン長において、発振周波数を1GHzにした場合、図2(b)に示すように、1/4波長が共振モードM1での最大振幅となる。すなわち、発振周波数1GHzの場合、基本共振モードからなる共振モードM1が発生し、この共振モードM1で共振する。通常、発振周波数が高くなるに伴い波長は短くなるため、1/4波長の共振モードとすると、発振周波数を3倍の3GHzにした場合には、ストリップライン長が極端に短くなる(図2(a)に示すLの略1/3の長さ)。一方、ストリップライン長を図2(a)に示すLとし、発振周波数を3倍にした場合、図2(c)に示すように、λ/4と3/4λの共振モードが存在する。高次共振モードである3/4波長で共振させる場合、低次共振モードである1/4波長でも共振可能である。本実施の形態では、トラップ回路20で低次共振モードM2での共振によって発生する周波数の信号を減衰させることにより、高次共振モードM3での共振による信号のみを取り出せる構成にしている。これにより、発振周波数を3倍にした場合でも、低次共振モードM2での共振により発生する周波数の信号を減衰して高次共振モードM3での共振により発生する周波数の信号で発振するので、発振周波数を高くしても、十分な長さのストリップライン長を確保することができる。従って、発振周波数を高くするに伴いストリップライン長が極端に短くなる従来の発振器と比べて、ストリップラインの製造誤差やバラツキ等を防止して、これに伴うQの低下を防止することができる。
【0027】
次に、本実施の形態に係る電圧制御発振器10の作用について説明する。ここでは、共振回路12が発振周波数3GHzに設定されると共に、トラップ回路20が低次共振モードで発生する周波数信号を減衰可能な周波数(トラップ周波数)1GHzに設定されたものとして説明する。バラクタダイオード15のカソードに制御電圧Vctlを印加されると、コンデンサ14及びバラクタダイオード15の合成容量が変化して共振回路11の発振周波数が3GHzに調整される。一方、バラクタダイオード23のカソードにも同一の制御電圧Vctlが印加され、コンデンサ22及びバラクタダイオード23の合成容量が変化し、発振周波数3GHzにおいて低次共振モードに相当する周波数1GHzに同調される。すなわち、発振周波数3GHzに調整した場合、図2(c)に示すように、低次共振モードM2及び高次共振モードM3が発生するものの、トラップ回路20のインピーダンスが、低次共振モードM2(1/4波長)で発生する周波数信号に対して0となって、低次共振モードM2での共振により発生した周波数の信号は、発振用トランジスタ2のベースに入力されることなくグラウンドに流れていく。従って、発振用トランジスタ2のベースには、高次共振モードM3で生成した周波数信号のみが入力され、発振周波数3GHzの高次共振モードM3(3/4波長)で発振して、出力端RFoutから発振信号を出力する。
【0028】
図3に、発振用トランジスタ2の入力部−出力部間のKファクタのシミュレーション結果を示す。ここでは、1/4波長で1GHz、3/4波長で3GHzで共振する共振素子を使用し、トラップ回路20のトラップ周波数を1GHzに調整した場合を前提としている。Kファクタは、1以上の場合に発振が停止し、1以下の場合に発振することを示すものである。図3に示すように、1GHz付近では、Kファクタが約6程度であり発振停止状態となっている。それに対して、3GHz付近では、Kファクタが十分に小さいため、発振が可能であることが示されている。従って、電圧制御発振器10に、低次共振モードで1GHz及び高次共振モードで3GHzで共振する共振素子(共振回路)を設けると共に、トラップ周波数を1GHzとするトラップ回路20を設けることにより、1GHzの周波数を減衰して、3GHzの発振出力のみを取り出すことが確認できた。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、共振用ストリップライン13が発振周波数の高次共振モードとなる長さを有し、トラップ回路20が低次共振モードでの共振により発生する周波数の信号を減衰させるので、所要の発振周波数で発振させる場合に発生する複数の共振モードのうち、低次共振モードで発振させることなく高次共振モードの周波数で発振することができる。このため、発振周波数を高くした場合でも、十分な長さのストリップライン長を確保することができ、ストリップラインの製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができる。特に、本実施の形態では、共振用ストリップライン13が発振周波数の3/4波長の長さを有し、トラップ回路20が発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させるので、より高次の共振モードによる発振周波数で安定した発振を実現することができる。
【0030】
また、発振周波数を調整するバラクタダイオード15及びトラップ周波数を調整するバラクタダイオード23に同一の制御電圧が印加されるので、発振振周波数の変化に連動してトラップ回路20のトラップ周波数が変化するので、発振周波数の可変範囲が広い場合でもトラップ周波数を追従させることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御発振器は、上述した第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の共振回路のストリップラインの構成においてのみ相違している。なお、本実施の形態においても、高次共振モードの発振周波数を3GHzに制御した場合を例に説明をする。
【0032】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御発振器10aの回路構成図である。図4に示すように、共振回路12aにおいて、ストリップライン13aの一端とコンデンサ14の一端とが接続され、ストリップライン13aの他端は開放されている。ストリップライン13aは、発振周波数の(2n+1)/2波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、本実施の形態のストリップライン長は、発振周波数の3/2波長の長さを有している。トラップ回路20は、上記第1の実施の形態同様に、発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数信号を減衰させ(nは1以上の自然数)、本実施の形態では、発振周波数3GHzの1/3倍の周波数の信号を減衰させるよう調整されている。
【0033】
次に、図5を用いて、発振周波数における高次共振モードについて説明する。図5(a)は、1/2波長の長さLで形成されたストリップラインを示している。図5(a)に示す1/2波長のストリップライン長において、発振周波数を1GHzにした場合、図5(b)に示すように、両端の振幅が最大となる定在波が発生し、この定在波の最大振幅となるストリップラインの両端部で1/2波長の共振モードM4となる。一方、ストリップライン長Lを変えずに発振周波数のみを3倍にした場合、図5(c)に示すように、λ/2,λ,3/2λの共振モードが存在する。高次共振モードM6である3/2波長で共振させようとしても、低次共振モードM5である1/2波長でも共振可能である。本実施の形態では、トラップ回路20で低次共振モードM5(1/2波長)での共振によって発生する周波数の信号を減衰させることにより、高次共振モードM6(3/2波長)での共振による発振信号のみを取り出せるように構成している。これにより、発振周波数を3倍にした場合でも、低次共振モードの周波数の信号を減衰して高次共振モードで発振するので、発振周波数を高くしても十分な長さのストリップライン長を確保することができる。従って、ストリップラインの製造誤差やバラツキ等を防止して、これに伴うQの低下を防止することができる。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、共振用ストリップライン13aが発振周波数の(2n+1)/2波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、トラップ回路20は発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数信号を減衰させるので、低次共振モードでの発振を防止して高次共振モードでのみ発振することができる。このため、発振周波数を高くした場合でも、十分な長さのストリップライン長を確保でき、ストリップラインの製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができる。特に、本実施の形態では、共振用ストリップライン13aが発振周波数の3/2波長の長さを有し、トラップ回路20が発振周波数の1/3倍の周波数信号を減衰させるので、より高次の共振モードによる発振周波数で安定した発振を実現することができる。
【0035】
また、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態にいて、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、高い発振周波数で動作する場合であっても、十分な長さのストリップライン長を確保でき製造誤差によるバラつきを防止すると共に、Qの低下を防止することができるという効果を有し、例えば、テレビジョンチューナ等において発振周波数を制御する発振器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の回路構成図である。
【図2】本実施の形態に係る発振周波数における高次共振モードについて説明するための図である。
【図3】発振用トランジスタの入力部−出力部間のKファクタのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御発回器の回路構成図である。
【図5】第2の実施の形態に係る発振周波数における高次共振モードについて説明するための図である。
【図6】従来の電圧制御発振器の回路構成図である。
【符号の説明】
【0038】
10,10a 電圧制御発振器(発振器)
2 発振用トランジスタ
3 コンデンサ
4 帰還コンデンサ(第1の帰還コンデンサ)
5 帰還コンデンサ(第2の帰還コンデンサ)
6 エミッタバイアス抵抗
7,8 分圧用抵抗
9,11 直流カットコンデンサ
12,12a 共振回路
13,13a ストリップライン
14,22 コンデンサ
15 バラクタダイオード(第1のバラクタダイオード)
21 インダクタ
23 バラクタダイオード(第2のバラクタダイオード)
T2,T3 制御電圧端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振トランジスタと、
前記発振トランジスタのベース−エミッタ間に設けられる第1の帰還コンデンサと、
前記発振トランジスタのコレクタ−エミッタ間に設けられる第2の帰還コンデンサと、
前記発振トランジスタのベースに一端が接続される共振用ストリップラインと、
前記発振トランジスタのエミッタ−グラウンド間に設けられるトラップ回路と、を備え、
前記共振用ストリップラインは、発振周波数において高次共振モードとなる長さを有し、
前記トラップ回路は、前記高次共振モードより低次側の低次共振モードに相当する周波数の信号を減衰させることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記発振トランジスタのコレクタが高周波的に接地され、前記共振用ストリップラインは、他端が接地されると共に、発振周波数の(2n+1)/4波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
前記共振用ストリップラインは、発振周波数の3/4波長の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の発振器。
【請求項4】
前記共振用ストリップラインと並列に第1のバラクタダイオードが設けられ、前記トラップ回路に第2のバラクタダイオードが設けられ、前記第1のバラクタダイオード及び前記第2のバラクタダイオードに同一の制御電圧が印加され、前記発振周波数の変化に連動して前記トラップ回路が減衰する周波数が変化することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の発振器。
【請求項5】
前記トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されることを特徴とする請求項4記載の発振器。
【請求項6】
前記共振用ストリップラインは、他端が開放され、発振周波数の(2n+1)/2波長(nは1以上の自然数)の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/(2n+1)倍の周波数の信号を減衰させることを特徴とする請求項1に記載の発振器。
【請求項7】
前記共振用ストリップラインは、発振周波数の3/2波長の長さを有し、前記トラップ回路は、前記発振周波数の1/3倍の周波数の信号を減衰させることを特徴とする請求項1又は請求項6記載の発振器。
【請求項8】
前記共振用ストリップラインと並列に第1のバラクタダイオードが設けられ、前記トラップ回路に第2のバラクタダイオードが設けられ、前記第1のバラクタダイオード及び前記第2のバラクタダイオードに同一の制御電圧が印加され、前記発振周波数の変化に連動して前記トラップ回路が減衰する周波数が変化することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の発振器。
【請求項9】
前記トラップ回路は、インダクタとコンデンサとの直列共振回路で構成されることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−130072(P2010−130072A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299604(P2008−299604)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】