説明

発振回路

【課題】 発振周波数帯の切替に連動して各周波数帯に最適なバイアス電圧を発振トランジスタに印加する。
【解決手段】 発振トランジスタ1と、互いに異なる発振周波数帯にそれぞれ対応して設けられた共振回路9、11と、1つの共振回路を選択して発振トランジスタ1のベースとコレクタとの間に結合する切替手段12とを備え、選択された共振回路に対応したバイアス電圧を切換手段12によって発振トランジスタ1のベースに印加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数バンドで安定に発振させることができる発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発振回路は図3に示すように電圧制御可変同調回路部31と発振回路部34とから構成される。電圧制御可変同調回路部31はバラクタダイオード37と、第1のコンデンサ39と、直列接続の第1のマイクロストリップ線路40及び第2のマイクロストリップ線路41と、それらの接続点に接続された第2のコンデンサ42と、第2のコンデンサ42に直列接続され、カソードが接地されたスイッチダイオード43とを有し、図示のように接続されている。バラクタダイオード37のカソードには抵抗を介して同調制御電圧端子33から制御電圧が印加される。
【0003】
発振回路部34は、電源端子46から所定のベースバイアス電圧が印加され、帰還コンデンサが接続された発振トランジスタ44を有し、コレクタは高周波的に接地される。そして、電圧制御可変同調回路部31は発振トランジスタ44のベースに結合され、発振信号は発振トランジスタ44のエミッタから発振信号出力端子に与えられる。
【0004】
また、第2のコンデンサ42とスイッチダイオード43との接続点には周波数帯域切替電圧供給端子36から周波数帯域切替電圧が印加される。周波数帯域切替電圧によってスイッチダイオード43がオフとされれば2つのマイクロストリップ線路40、41は有効に機能して低域側の周波数帯で発振する。また、スイッチダイオード43がオンとされれば第2のマイクロストリップ線路41が無効とされ、高域側の周波数帯で発振する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平09−148888号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来構成では、2つのマイクロストリップ線路又は1つのマイクロストリップ線路を使用することで発振周波数バンドを切り替えているが、発振トランジスタのバイアス電圧は同じになっているので、各バンドに最適なバイアス電圧で発振トランジスタを駆動できない。そのため、何れのバンドでも安定に発振させることができなかった。
【0007】
本発明は、発振周波数帯の切替に連動して各周波数帯に最適なバイアス電圧を発振トランジスタに印加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の解決手段として、発振トランジスタと、互いに異なる発振周波数帯にそれぞれ対応して設けられた共振回路と、1つの前記共振回路を選択して前記発振トランジスタのベースとコレクタとの間に結合する切替手段とを備え、選択された前記共振回路に対応したバイアス電圧を前記切換手段によって前記発振トランジスタのベースに印加した。
【0009】
また、第2の解決手段として、前記共振回路は第1の共振回路と第2の共振回路とを有し、電源側から前記発振トランジスタのベースに電圧を印加するための第1の抵抗及び第2の抵抗を設け、前記第1の共振回路を前記第1の抵抗に直列接続された状態で前記第1の抵抗と前記発振トランジスタのコレクタとの間に設けると共に、前記第2の共振回路を前記第2の抵抗に直列接続された状態で前記第2の抵抗と前記発振トランジスタのコレクタとの間に設け、前記発振トランジスタのベースを第3の抵抗を介して接地し、前記第1の抵抗と前記第1の共振回路との接続点又は前記第2の抵抗と前記第2の共振回路との接続点を前記切替手段によって前記発振回路のベースに接続した。
【0010】
また、第3の解決手段として、前記切替手段はコレクタが共に前記発振トランジスタのベースに接続された第1のPNPトランジスタと第2のPNPトランジスタを有し、前記第1のPNPトランジスタのエミッタを前記第1の抵抗によって電源にプルアップすると共に、前記第2のPNPトランジスタのエミッタを前記第2の抵抗によって電源にプルアップし、前記第1のPNPトランジスタのベースを前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続し、前記第2のPNPトランジスタのベースに切替電圧を印加した。
【0011】
また、第4の解決手段として、前記発振トランジスタのコレクタを高周波的に接地し、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路にそれぞれバラクタダイオードを設け、前記各バラクタダイオードに発振周波数を変えるための制御を印加した。
【発明の効果】
【0012】
第1の解決手段によれば、発振トランジスタと、互いに異なる発振周波数帯にそれぞれ対応して設けられた共振回路と、1つの共振回路を選択して発振トランジスタのベースとコレクタとの間に結合する切替手段とを備え、選択された共振回路に対応したバイアス電圧を切換手段によって発振トランジスタのベースに印加したので、各発振周波数帯に最適なバイアス電圧で発振トランジスタを動作させることができる。
【0013】
また、第2の解決手段によれば、共振回路は第1の共振回路と第2の共振回路とを有し、電源側から発振トランジスタのベースに電圧を印加するための第1の抵抗及び第2の抵抗を設け、第1の共振回路を第1の抵抗に直列接続された状態で第1の抵抗と発振トランジスタのコレクタとの間に設けると共に、第2の共振回路を第2の抵抗に直列接続された状態で第2の抵抗と発振トランジスタのコレクタとの間に設け、発振トランジスタのベースを第3の抵抗を介して接地し、第1の抵抗と第1の共振回路との接続点又は第2の抵抗と第2の共振回路との接続点を切替手段によって発振回路のベースに接続したので、切替手段によって第1の共振回路又は第2の共振回路の切替とバイアス電圧の切替とを可能とした2バンドの発振回路が構成できる。
【0014】
また、第3の解決手段によれば、切替手段はコレクタが共に発振トランジスタのベースに接続された第1のPNPトランジスタと第2のPNPトランジスタを有し、第1のPNPトランジスタのエミッタを第1の抵抗によって電源にプルアップすると共に、第2のPNPトランジスタのエミッタを第2の抵抗によって電源にプルアップし、第1のPNPトランジスタのベースを第2のPNPトランジスタのコレクタに接続し、第2のPNPトランジスタのベースに切替電圧を印加したので、第2のPNPトランジスタのベースにハイ又はローの切替電圧を印加するだけで共振回路の切替とバイアス電圧の切替が同時に行える。
【0015】
また、第4の解決手段によれば、発振トランジスタのコレクタを高周波的に接地し、第1の共振回路及び第2の共振回路にそれぞれバラクタダイオードを設け、各バラクタダイオードに発振周波数を変えるための制御を印加したので、2バンドの電圧制御発振回路を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発振回路の基本構成を図1に示す。ここでは周波数帯の異なる2バンドで発振する発振回路について説明する。発振トランジスタ1のコレクタは電源Bに接続されて高周波的に接地される。ベースとエミッタとの間に帰還コンデンサ2が接続され、エミッタとコレクタ(接地電位)との間にも帰還コンデンサ3が接続される。エミッタはエミッタバイアス抵抗4とインダクタンス素子5との直列回路を介してグランドに接続される。発振トランジスタ1のエミッタはバッファアンプ6に結合される。また、ベースも第3の抵抗7を介してグランドに接続される。
【0017】
電源B側から発振トランジスタ1のベースにバイアス電圧を供給する第1の抵抗7は第1の共振回路9と直列に接続され、この共振回路9の他端は接地(コレクタに接続)される。また、電源B側から発振トランジスタ1のベースにバイアス電圧を供給する第2の抵抗10は第2の共振回路11と直列に接続され、この共振回路11の他端は接地(コレクタに接続)される。そして、第1の抵抗8と第1の共振回路9との接続点又は第2の抵抗10と第2の共振回路11との接続点の何れかが切換手段12によって発振トランジスタ1のベースに接続される。
【0018】
以上の構成によれば、第1の抵抗8と第1の共振回路9との接続点が発振トランジスタ1のベースに接続されると、第1の抵抗8と第3の抵抗7とによって分圧された電圧が発振トランジスタ1のベースにバイアス電圧として印加される。そして、第1の共振回路9が発振トランジスタ1のベースとコレクタとの間に接続されてコレクタ接地型のコルピッツ発振回路が構成される。この時の発振周波数帯に最適なベースバイアス電圧は第1の抵抗8によって設定できる。
【0019】
同様に、第2の抵抗10と第2の共振回路11との接続点が発振トランジスタ1のベースに接続されると、第2の抵抗10と第3の抵抗7とによって分圧された電圧が発振トランジスタ1のベースにバイアス電圧として印加される。そして、第2の共振回路11が発振トランジスタ1のベースとコレクタとの間に接続されてコレクタ接地型のコルピッツ発振回路が構成される。この時の発振周波数帯に最適なベースバイアス電圧は第2の抵抗10によって設定できる。
【0020】
発振信号は発振トランジスタ1のベースから出力され、バッファアンプ6に与えられる。
【0021】
以上のように、本発明では切替手段12によって共振回路の切換とバイアス電圧の切換とが同時に行えるメリットがある。
【0022】
図2に具体回路を示す。図1と同じ構成については説明を省く。発振トランジスタ1のコレクタはバイパスコンデンサ13によって高周波的に接地される。第1の共振回路9は、カソードが接地された第1のバラクタダイオード9aと第1のインダクタンス素子(ストリップラインで構成されている)9bとを有し、第1のバラクタダイオード9aのアノードが結合コンデンサ9cによって第1のインダクタンス素子9bに並列接続される。
【0023】
また、第2の共振回路11は、第2のバラクタダイオード11aと第2のインダクタンス素子(ストリップラインで構成されている)11bとの直列接続回路で構成され、第2のバラクタダイオード11aのアノードが第2のインダクタンス素子11bによって直流的に接地されている。
【0024】
第1のバラクタダイオード9aのカソードと第2のバラクタダイオード11aのカソードにはそれぞれチョークインダクタ14、15を介して制御電圧端子Tから制御電圧が印加される。よって、制御電圧によって発振周波数が変化する電圧制御発振回路が構成される。なお、制御電圧端子Tはバイパスコンデンサ16によって高周波的に接地されている。
【0025】
切替手段12は2つのPNPトランジスタ12a、12bによって構成される。第1のPNPトランジスタ12aのコレクタと第2のPNPトランジスタ12bのコレクタとは、共に発振トランジスタ1のベースに接続されている。また、第1のPNPトランジスタ12aのエミッタは第1の抵抗8に接続され、第2のPNPトランジスタ12bのエミッタは第2の抵抗10に接続される。そして、第1の共振回路9が結合コンデンサ17によって第1のPNPトランジスタ12aのエミッタと第1の抵抗8との接続点に結合され、第2の共振回路11が結合コンデンサ18によって第2のPNPトランジスタ12bのエミッタと第2の抵抗10との接続点に結合される。また、第1のPNPトランジスタ12aのベースが第2のPNPトランジスタ12bのコレクタに接続され、第2のPNPトランジスタ12bのベースに切替電圧が印加される。
【0026】
この構成において、第2のPNPトランジスタ12bのベースにハイの切替電圧(電源Bと同じ電圧)を印加すれば、第1のPNPトランジスタ12aのみがオンとなり、第1の抵抗8と第3の抵抗7とが接続状態とされ、第1の共振回路9が発振トランジスタ1のベースに結合される。また、第2のPNPトランジスタ12bのベースにローの切替電圧(0ボルト)を印加すれば、第2のPNPトランジスタ12bのみがオンとなり、第2の抵抗10と第3の抵抗7とが接続状態とされ、第2の共振回路11が発振トランジスタ1のベースに結合される。
【0027】
何れの場合においても、第1のバラクタダイオード9a及び第2のバラクタダイオード11aのカソードに制御電圧端子Tから制御電圧が印加されているので、制御電圧を変えることで発振周波数を変えることができる。この切替手段12によれば第2のPNPトランジスタ12bのベースにハイ又はローの切替電圧を印加するだけで共振回路の切替とバイアス電圧の切替が同時に行える。
【0028】
なお、2つの共振回路9、11の構成は図2に示すものに限らず、種々変更が可能であることは勿論である。また、発振回路の形式としてコレクタ接地型以外の発振回路も構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の発振回路の基本構成を示す回路図である。
【図2】本発明の発振回路の具体構成を示す回路図である。
【図3】従来の発振回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0030】
1:発振トランジスタ
2、3:帰還コンデンサ
4:エミッタバイアス抵抗
5:インダクタンス素子
6:バッファアンプ
7:第3の抵抗
8:第1の抵抗
9:第1の共振回路
9a:第1のバラクタダイオード
9b:第1のインダクタンス素子
9c:結合コンデンサ
10:第2の抵抗
11:第2の共振回路
12:切替手段
12a:第1のPNPトランジスタ
12b:第2のPNPトランジスタ
13、16:バイパスコンデンサ
14、15:チョークインダクタ
17、18:結合コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振トランジスタと、互いに異なる発振周波数帯にそれぞれ対応して設けられた共振回路と、1つの前記共振回路を選択して前記発振トランジスタのベースとコレクタとの間に結合する切替手段とを備え、選択された前記共振回路に対応したバイアス電圧を前記切換手段によって前記発振トランジスタのベースに印加したことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記共振回路は第1の共振回路と第2の共振回路とを有し、電源側から前記発振トランジスタのベースに電圧を印加するための第1の抵抗及び第2の抵抗を設け、前記第1の共振回路を前記第1の抵抗に直列接続された状態で前記第1の抵抗と前記発振トランジスタのコレクタとの間に設けると共に、前記第2の共振回路を前記第2の抵抗に直列接続された状態で前記第2の抵抗と前記発振トランジスタのコレクタとの間に設け、前記発振トランジスタのベースを第3の抵抗を介して接地し、前記第1の抵抗と前記第1の共振回路との接続点又は前記第2の抵抗と前記第2の共振回路との接続点を前記切替手段によって前記発振回路のベースに接続したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記切替手段はコレクタが共に前記発振トランジスタのベースに接続された第1のPNPトランジスタと第2のPNPトランジスタを有し、前記第1のPNPトランジスタのエミッタを前記第1の抵抗によって電源にプルアップすると共に、前記第2のPNPトランジスタのエミッタを前記第2の抵抗によって電源にプルアップし、前記第1のPNPトランジスタのベースを前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続し、前記第2のPNPトランジスタのベースに切替電圧を印加したことを特徴とする請求項2に記載の発振器。
【請求項4】
前記発振トランジスタのコレクタを高周波的に接地し、前記第1の共振回路及び前記第2の共振回路にそれぞれバラクタダイオードを設け、前記各バラクタダイオードに発振周波数を変えるための制御を印加したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−261822(P2006−261822A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73692(P2005−73692)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】