説明

発振回路

【課題】発振バッファへの過電圧の印加を防止し、発振起動時間を短縮できる発振回路を提供する。
【解決手段】発振回路10は、PTAT電流源12と、PTAT電流源12と接続されると共に、共振回路46と並列接続された発振バッファ14と、発振バッファ14と並列接続された帰還抵抗Rfと、帰還抵抗Rfよりも抵抗値が小さいバイパス抵抗Rbと、帰還抵抗Rfとバイパス抵抗Rbとの間に接続され、帰還抵抗Rf及びバイパス抵抗Rbの何れかに切り替えるためのPMOSトランジスタ48A、48Bと、PTAT電流源12からの電流が共振回路46へ供給開始されてから予め定めた発振起動期間は、PTAT電流源12からの電流がバイパス抵抗Rbへバイパスされるように、予め定めた発振起動期間経過後は、PTAT電流源12からの電流が帰還抵抗Rfへ流れるようにPMOSトランジスタ48A、48Bを制御するバイパスノード充電回路58と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に係り、特に、半導体集積回路上に形成され、水晶振動子、セラミック振動子、LC回路等を含む共振回路に接続される発振回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体集積回路上に形成され、水晶振動子を接続して発振動作する発振回路が用いられている(例えば特許文献1参照)。このような発振回路において、電池利用時などの電源電圧の低電圧化、広範囲化、及び低消費電流化の要求に伴い、バンドギャップ電流などの参照電流を利用したPTAT(Proportional Absolute Temperature)電流源とインバータ形式の発振バッファとを用いた発振回路がある。
【0003】
このような従来における発振回路として、低電源電圧の下で所望の大きさの発振ゲインを得るために、コアトランジスタで発振反転増幅器を設計する場合がある。
【0004】
コアトランジスタ(例えば電源電圧1.8V)は、入出力回路(Input/Output circuit)を構成するI/Oトランジスタ(例えば電源電圧3.3V)よりもゲート酸化膜の厚さが薄くなっており、I/Oトランジスタよりも耐圧が低いのが通常である。コアトランジスタとI/Oトランジスタとを比較した場合、ゲート酸化膜の大小関係により、I/Oトランジスタよりもコアトランジスタの方が小さい電圧で所望の電流を流すことができるため、所望の大きさの発振ゲインの確保を低電源電圧によって実現することができる。すなわちコアトランジスタの方がI/Oトランジスタよりも低消費電力化に適している。
【0005】
このような発振回路の一例を図12に示した。同図に示すように、発振回路100は、PTAT電流源12、発振バッファ14、NMOSトランジスタ16、帰還抵抗18、スイッチ素子20A、20B、及び出力バッファ22を含んで構成されている。
【0006】
PTAT電流源12は、PMOSトランジスタ24並びにダイオード及びバイポーラ素子で構成されたバンドギャップ電流源26を含んで構成されたバイアス電流発生回路28、PMOSトランジスタ30、32、NMOSトランジスタ34、36を含んで構成されたカレントミラー回路38、PMOSトランジスタ40を含んで構成されている。
【0007】
発振バッファ14は、PMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44によりCMOSインバータを構成している。PMOSトランジスタ42のソースは、PMOSトランジスタ40のドレインに接続されており、NMOSトランジスタ44のソースはNMOSトランジスタ16のドレインに接続されている。NMOSトランジスタ16のソースは接地されている。NMOSトランジスタ16のゲートはイネーブル端子EBに接続されている。
【0008】
帰還抵抗Rfは、発振バッファ14と並列接続されている。帰還抵抗Rfの一端と発振バッファ14の入力側との間にはスイッチ素子20Aが接続されており、帰還抵抗Rfの他端と発振バッファ14の出力側との間にはスイッチ素子20Bが接続されている。
【0009】
スイッチ素子20A、20Bは、例えばNMOSトランジスタで構成され、そのゲートは帰還抵抗イネーブル端子EBFBRと接続されている。なお、スイッチ素子20A、20Bは、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタで構成されたトランスファゲートを用いても良い。
【0010】
発振バッファ14の入力側、すなわちPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44のゲートは入力端子XIに接続され、発振バッファ14の出力側、すなわちPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44のドレインは出力端子XO及び出力バッファ22の入力端に接続されている。
【0011】
入力端子XI及び出力端子XOには、共振回路46が接続される。共振回路46は、水晶振動子Xtal、外付コンデンサCg、Cd、ダンピング抵抗Rdを含んで構成されている。なお、ダンピング抵抗Rdは、発振回路の励振レベル(外付コンデンサCdが充電される際に流れる電流Idによる電力)が、水晶振動子Xtal指定の電力よりも大きくなった場合に水晶振動子Xtalが破壊される可能性を低減することを目的として抵抗値を調整するために設けられている。
【0012】
以下、発振回路100の通常時の発振動作について説明する。
【0013】
発振起動時には、帰還抵抗イネーブル端子EBFBRに入力する制御信号を図13(A)、(B)に示すようにローレベル(以下、Lレベル)からハイレベル(以下、Hレベル)に変化させると共に、イネーブル端子EBに入力する制御信号をLレベルからHレベルに変化させ、PTAT電流源12を起動させる。
【0014】
これにより、NMOSトランジスタ16がオンすると共に、スイッチ素子20A、20Bがオンする。そして、PTAT電流源12は、バイアス電流発生回路28で発生されたバイアス電流Ibgとカレントミラー回路38とにより設定された電流Iallを流す。
【0015】
その後、各ノード(端子)における電位レベルは以下のように変化する。まず、出力端子XOの電位が初期状態で0[V]レベルになっている場合は、外付コンデンサCdに向かってPTAT電流源12からの電流Iallが流れて外付コンデンサCdが充電され、図13(C)の一点鎖線で示すように出力端子XOの電位が上昇する。
【0016】
出力端子XOの電位が上昇すると、PTAT電流源12からの電流は帰還抵抗Rf(例えば抵抗値が約1MΩ)を介して入力端子XI側に流れ、その結果、外付コンデンサCgが充電され、図13(C)の実線で示すように入力端子XIの電位が上昇する。
【0017】
入力端子XIの電位が初期状態(約0[V])から上昇し、その後、入力端子XIにおける電位が、発振バッファ14を構成するNMOSトランジスタ44の閾値電圧Vth付近まで上昇すると、発振バッファ14がONし、図13(C)に示すように、入力端子XI及び出力端子XOの電位が共にバイアスレベルBIASとなる。そして、この状態から水晶振動子Xtalに基づく発振周波数の信号が増幅されることにより、図13(C)に示すように発振が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−303639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記のような従来の発振回路100では、図13(C)に示すように、PTAT電流源12から流れる電流Iallによって出力端子XOの電位が上昇する一方で、帰還抵抗Rf及び外付コンデンサCgの時定数により、入力端子XIの電位の上昇が遅れてしまう。入力端子XIの電位が、発振バッファ14を構成するNMOSの閾値電圧Vth以下となっている場合は、発振バッファ14が動作できないため、PTAT電流源12からの電流Iallは出力端子XO側へ流れ込む。
【0020】
そして、帰還抵抗Rfの抵抗値が大きい場合、コンデンサCgへの充電が遅れて入力端子XIの電位の上昇が遅れるため、出力端子XOの電位がPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44の耐圧レベルVaを超えるレベルまで上昇してしまう場合がある。このように出力端子XOの電位がPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44の耐圧レベルを超えてしまうと、これらのトランジスタが破壊されて常時導通状態となり、発振動作が不可能となってしまう場合がある。これは、PMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44をI/Oトランジスタよりも耐圧が低いコアトランジスタで構成している場合に特に問題となる。
【0021】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、発振バッファに過電圧が印加されるのを防止することができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、電流源と、前記電流源と接続されると共に、共振手段と並列接続された発振増幅手段と、前記発振増幅手段と並列接続された帰還抵抗と、前記帰還抵抗よりも抵抗値が小さいバイパス抵抗と、前記帰還抵抗と前記バイパス抵抗との間に接続され、前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗の何れかに切り替えるための切替手段と、前記電流源からの電流が前記共振手段へ供給開始されてから予め定めた発振起動期間は、前記電流源からの電流が前記バイパス抵抗へバイパスされるように、前記予め定めた発振起動期間経過後は、前記電流源からの電流が前記帰還抵抗へ流れるように前記切替手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項2記載の発明は、前記電流源は、I/Oトランジスタを含んで構成されると共に、前記発振増幅手段は、前記I/Oトランジスタよりも耐圧が低いコアトランジスタであるNチャネルMOSトランジスタ及びPチャネルMOSトランジスタから成るCMOSインバータを含んで構成されたことを特徴とする。
【0024】
請求項3記載の発明は、前記切替手段は、前記帰還抵抗の一端と前記バイパス抵抗の一端との間、前記帰還抵抗の他端と前記バイパス抵抗の他端との間に接続された複数のバイパス用スイッチ素子と、を含み、前記制御手段は、前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端が、前記予め定めた発振起動期間を要して前記複数のバイパス用スイッチ素子がオンからオフに切り替わるように前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端を充電する充電手段を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明は、前記充電手段は、直列接続され且つ接続点が前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に接続された抵抗及び容量素子を含むRC回路と、前記予め定めた発振起動期間に前記RC回路へ電源供給する電源供給手段と、発振停止後に前記容量素子に充電された電荷を放電する放電手段と、を含むことを特徴とする。
【0026】
請求項5記載の発明は、前記電流源は、バイアス電流発生回路と、前記バイアス電流発生手段に接続されたカレントミラー回路と、を含み、前記充電手段は、前記カレントミラー回路の一部であって、前記バイアス電流発生回路からの出力電流の1/M(Mは1より大きい)の電流を供給する電流供給手段と、前記電流供給手段と接続され且つ接続点が前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に接続された容量素子と、発振停止後に前記容量素子に充電された電荷を放電する放電手段と、を含むことを特徴とする。
【0027】
請求項6記載の発明は、前記電流源からの電流の供給開始を許可するための許可信号がオフの場合に、前記接続点の電位が前記複数のバイパス用スイッチ素子をオンにする電位であっても、前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端をオフにするためのオフ信号を前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に出力するオフ信号出力手段が、前記充電手段と前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端との間に設けられたことを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の発明は、前記電流供給手段は、MOSトランジスタから成ると共に前記容量素子がコンデンサから成り、前記MOSトランジスタ及び前記コンデンサが隣接して配置されていることを特徴とする。
【0029】
請求項8記載の発明は、前記容量素子は、半導体集積回路上のMIMコンデンサ、MoMコンデンサ、及びトランジスタのゲート容量の何れかであることを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の発明は、前記電流源からの電流が前記共振手段へ供給開始される場合にオンするMOSトランジスタであって、前記帰還抵抗の一端と前記共振手段の一端との間に接続された第1のMOSトランジスタと、前記帰還抵抗の他端と前記共振手段の他端との間に接続された第2のMOSトランジスタと、をさらに備え、前記第1のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記共振手段の一端と接続される端子と、前記第1のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離が、前記第1のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記帰還抵抗の一端と接続される端子と、前記第1のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離よりも長く、前記第2のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記共振手段の他端と接続される端子と、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離が、前記第2のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記帰還抵抗の他端と接続される端子と、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離よりも長いことを特徴とする。
【0031】
請求項10記載の発明は、前記帰還抵抗の一端と前記共振手段の一端との間に第1の保護回路を備えると共に、前記帰還抵抗と前記共振手段の他端との間に第2の保護回路を備え、前記第1の保護回路は、前記共振手段の一端が接続される第1の接続端子に隣接して配置され、前記第2の保護回路は、前記共振手段の他端が接続される第2の接続端子に隣接して配置されたことを特徴とする。
【0032】
請求項11記載の発明は、前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗は、配線抵抗又はトランスファゲートから成ることを特徴とする。
【0033】
請求項12記載の発明は、前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗は、ポリシリコンから成る配線抵抗であり、前記バイパス抵抗の配線幅が、前記帰還抵抗の配線幅よりも太いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、発振バッファに過電圧が印加されるのを防止することができる、という効果を奏する。また、発振起動時に、バイパス抵抗が選択されるようにすることにより、発振回路の入力端子及び出力端子を不安定にさせることができ、発振起動を早くすることができる、という効果を奏する。さらに、発振が安定した後は、抵抗値が高い帰還抵抗に切り替わるため、帰還抵抗を考慮した負性抵抗を求めるための理論式より、安定した負性抵抗が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る発振回路の回路図である。
【図2】トランスファゲートの回路図である。
【図3】入力保護回路及び出力保護回路の回路図である。
【図4】ESD保護回路として機能するMOSトランジスタについて説明するための図である。
【図5】発振回路の発振動作時の各部の波形を示す図である。
【図6】発振回路の各部の波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】発振回路の各部の波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る発振回路の回路図である。
【図9】第2実施形態に係る発振回路の各部のレイアウトを示す図である。
【図10】第2実施形態に係る発振回路のバイパスノードの電位を示す図である。
【図11】第3実施形態に係る発振回路の回路図である。
【図12】従来例に係る発振回路の回路図である。
【図13】従来例に係る発振回路の発振動作時の各部の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る発振回路10の回路構成を示した。なお、図12に示す発振回路100と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では、図12に示す発振回路100と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
図1に示すように、発振回路10は、帰還抵抗Rfよりも抵抗値が小さいバイパス抵抗Rbを備えており、バイパス抵抗Rbは、PMOSトランジスタ48A、48Bを介して帰還抵抗Rfと並列接続されている。一例として、帰還抵抗Rfの抵抗値は数MΩ、バイパス抵抗Rbの抵抗値は数百Ωであり、バイパス抵抗Rbは、発振起動時に出力端子XOの電位が発振バッファ14のPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44の耐圧レベルを越えないような値に設定される。
【0039】
帰還抵抗Rf及びバイパス抵抗Rbは、例えば、ポリシリコンを材料とする配線抵抗素子(以下、POLY抵抗と言う)として形成される。また、帰還抵抗Rf及びバイパス抵抗Rbを、図2に示すようにPMOSトランジスタ50、NMOSトランジスタ52、及びインバータ回路54から成るトランスファゲート56により構成するようにしてもよい。
【0040】
なお、帰還抵抗Rf及びバイパス抵抗RbをPOLY抵抗で形成する場合、バイパス抵抗Rb(低抵抗)の幅は、溶断防止のために、帰還抵抗Rf(高抵抗)の幅よりも太くする。また、図2に示したトランスファゲート56は、一つのPMOSトランジスタ50とNMOSトランジスタ52とを並列接続した構成とされているが、これに限らず、直列接続した複数のPMOSトランジスタ50と直列接続した複数のNMOSトランジスタ52とを並列接続した構成としてもよい。
【0041】
PMOSトランジスタ48A、48Bのゲート(以下、バイパスノードBYPASSともいう)は、バイパスノード充電回路58に接続されている。
【0042】
バイパスノード充電回路58は、図1に示すように、PMOSトランジスタ60、抵抗Rc、及びコンデンサCcが直列接続されたRC充電回路と、コンデンサCcと並列接続された放電用のNMOSトランジスタ62を含んで構成されている。なお、コンデンサCcは、半導体集積回路上で構成可能な、例えばMIMコンデンサ(Metal−Insulator−Metal)、MoMコンデンサ(Metal−Oxide−Metal)、もしくはトランジスタのゲート容量等で構成することが出来る。
【0043】
PMOSトランジスタ60のゲートは、NAND回路64の出力端に接続されている。NAND回路64の一方の入力端は、イネーブル端子EB及びPMOSトランジスタ66のゲートに接続されており、NAND回路64の他方の入力端は、帰還抵抗イネーブル端子EBFBRに接続されている。
【0044】
また、入力端子XI近傍には、入力保護回路66が設けられており、出力端子XOの近傍には、出力保護回路68が設けられている。
【0045】
具体的には、入力保護回路66は、図3に示すように、PMOSトランジスタ70とNMOSトランジスタ72が直列接続された構成である。また、出力保護回路68も入力保護回路66と同様に、PMOSトランジスタ74とNMOSトランジスタ76が直列接続された構成である。
【0046】
このような入力保護回路66が入力端子XIの近傍に設けられると共に、出力保護回路68が出力端子XOの近傍に設けられることにより、入力端子XI、出力端子XOから入力されるノイズ等により内部回路の動作に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0047】
なお、図3では、入力保護回路66として、PMOSトランジスタ70とNMOSトランジスタ72が直列接続された構成の場合を示したが、PMOSトランジスタ70に代えてダイオードを用いてもよい。この場合、ダイオードのカソードが電源VDDに接続され、カソードがNMOSトランジスタ72に接続されるようにすればよい。また、PMOSトランジスタ70及びNMOSトランジスタ72に代えて、2つのダイオードを直列接続した構成としてもよい。この場合、2つのダイオードのカソードが電源VDD側となるように直列接続すればよい。
【0048】
また、本実施形態では、スイッチ素子20A、20Bは、NMOSトランジスタ20A、20Bで構成されており、これらのNMOSトランジスタは、ESD(Electrostatic discharge)保護トランジスタとして機能する。
【0049】
具体的には、図4に示すように、NMOSトランジスタ20Aの入力端子XI側に接続される例えばソース端子Aと、NMOSトランジスタ20Bのゲート端子Gと、の間の距離aが、NMOSトランジスタ20Aの帰還抵抗Rf側に接続される例えばドレイン端子Bと、NMOSトランジスタ20Aのゲート端子Gと、の間の距離bよりも長い。
【0050】
NMOSトランジスタ20Bについても同様に、NMOSトランジスタ20Bの出力端子XO側に接続される例えばドレイン端子Aと、NMOSトランジスタ20Bのゲート端子と、の間の距離aが、NMOSトランジスタ20Bの帰還抵抗Rf側に接続される例えばソース端子Bと、NMOSトランジスタ20Bのゲート端子Bと、の間の距離bよりも長い。
【0051】
NMOSトランジスタ20A、20Bがこのような構成となっていることにより、静電気放電に対して内部回路を保護することができる。
【0052】
以下、発振回路10の通常時の発振動作について説明する。
【0053】
発振起動時には、帰還抵抗イネーブル端子EBFBRに入力する制御信号を図5(A)、(B)に示すようにローレベル(以下、Lレベル)からハイレベル(以下、Hレベル)に変化させると共に、イネーブル端子EBに入力する制御信号をLレベルからHレベルに変化させ、PTAT電流源12を起動させる。
【0054】
これにより、NMOSトランジスタ16がオンすると共に、スイッチ素子20A、20Bがオンする。そして、PTAT電流源12は、バイアス電流発生回路28で発生されたバイアス電流Ibgとカレントミラー回路38とにより設定された電流Iallを流す。
【0055】
また、帰還抵抗イネーブル端子EBFBR及びイネーブル端子EBがHレベルになることにより、NAND回路64の出力がLレベルになり、PMOSトランジスタ60がオンする。これにより、コンデンサCcへの充電が開始され、バイパスノードBYPASSの電位が図5(C)の点線で示すように急激に上昇するのではなく、実線で示すように徐々に上昇する。
【0056】
その後、各ノード(端子)における電位レベルは以下のように変化する。まず、出力端子XOの電位が初期状態で0[V]レベルになっている場合は、外付コンデンサCdに向かってPTAT電流源12からの電流Iallが流れて外付コンデンサCdが充電され、図5(D)に示すように出力端子XOの電位VOが上昇する。
【0057】
出力端子XOの電位VOが上昇すると、PTAT電流源12からの電流は帰還抵抗Rfよりも抵抗値が小さいバイパス抵抗Rbを介して入力端子XI側に流れ、その結果、外付コンデンサCgが充電され、図5(D)に示すように入力端子XIの電位VIが上昇する。
【0058】
このように、発振起動時には、抵抗値が低いバイパス抵抗RbにPTAT電流源12からの電流が流れるため、入力端子XIの電位VIが、図12に示した従来の発振回路100における入力端子XIの電位VI2の場合のように緩やかに上昇するのではなく、速やかに上昇する。これにより、出力端子XOの電位VOが、図12に示した従来の発振回路100における出力端子XOの電位VO2のように急激に上昇するのではなく、緩やかに上昇する。これにより、従来のように出力端子XOの電位VO2が発振バッファ14のコアトランジスタであるPMOSトランジスタ42及びNMOSトランジスタ44の耐圧レベルVaを越えることがなく、これらのトランジスタが破壊されるのを防ぐことができる。
【0059】
入力端子XIの電位が初期状態(約0[V])から上昇し、その後、入力端子XIにおける電位が、発振バッファ14を構成するNMOSトランジスタ44の閾値電圧Vth付近まで上昇すると、発振バッファ14のNMOSトランジスタ44がONし、その結果、出力端子XOから、NMOSトランジスタ44、16を介して、接地電位GNDに向かってバイアス電流が流れ込む。この時、PTAT電流源12から発振バッファ14のNMOSトランジスタ44へ流れ込む電流Iallと、出力端子XOから発振バッファのNMOSトランジスタ44へ流れ込むバイアス電流とによって、発振バッファ14のPMOSトランジスタ42のソースであるノードVCCにおける電位が固定される。
【0060】
そして、入力端子XI及び出力端子XO共に、発振バッファ14のバイアスレベル(同電位)になる。ここで、水晶振動子Xtalによる発振起動待ち状態となる。
【0061】
また、抵抗Rc及びコンデンサCcから成るRC充電回路によりコンデンサCcの充電が完了した後、すなわち、バイパスノードBYPASSの電位がPMOSトランジスタ48A、48Bの閾値電圧を越えると、PMOSトランジスタ48A、48Bが非導通状態となり、出力端子XOからバイパス抵抗Rbを介して入力端子XIへの電流経路が遮断される。この結果、入力端子XIと出力端子XOとの間の抵抗は、バイパス抵抗Rbから帰還抵抗Rfに切り替わる。
【0062】
そして、この状態から水晶振動子Xtalに基づく発振周波数の信号が増幅されることにより、図5(D)に示すように発振が開始される。
【0063】
このように、小さな抵抗値のバイパス抵抗Rbから大きな抵抗値の帰還抵抗Rfに切り替わることにより、発振起動を安定的に開始させることができる。
【0064】
なお、発振を終了させる場合には、イネーブル端子EB及び帰還抵抗イネーブル端子EBFBRをLレベルにする。これにより、帰還抵抗Rfへの電流経路が遮断され、発振が停止する。また、バイパスノード充電回路58のNMOSトランジスタ62がオンすることにより、コンデンサCcに充電されていた電荷が放電される。
【0065】
次に、バイパス抵抗Rbの抵抗値及びコンデンサCdの容量値Cdで定まる時定数τXO、バイパス抵抗Rbの抵抗値及びコンデンサCgの容量値Cgで定まる時定数τXIについて説明する。なお、容量値Cd、Cgは一例として16(pF)とする。
【0066】
出力端子XOの充電に必要な時間は、例えばPTAT電流源12から流れる電流Iallの電流値を200μAとすると、出力抵抗値Rは約16.5kΩのため、時定数τXOは次式のように算出される。
【0067】
τXO=2.2×R×Cd=2.2×16.5(kΩ)×16(pF)≒580(ns)
ここで、2.2は、波形の遷移時間(10%⇔90%)を求める際の理論式の定数であり、log0.9−log0.1で求められる値である。
【0068】
ここで、バイパス抵抗Rbの抵抗値を例えば700Ωとし、入力端子XIの電位が十分上昇し、発振バッファ14がオンするまでの時間を発振電圧の振幅の70%以上とすると、時定数τXIは次式のように算出される。
【0069】
τXI=1.9×Rb×Cg=1.9×700×16(pF)=21ns
ここで、1.9は、時定数を求める際の理論式の定数であり、発振バッファ14がオンするまでの時間を発振電圧の振幅の70%以上としていることから、log0.7−log0.1で求められる値である。
【0070】
以上より、出力端子XO及び入力端子XIの充電に必要な期間、すなわち、バイパス抵抗RbにPTAT電流源12からの電流をバイパスさせる期間τは、次式で算出される。
【0071】
τ=τXO+τXI≒600(ns)
PMOSトランジスタ48A、48BによりPTAT電流源12からの電流をバイパス抵抗Rbへバイパスさせる場合、例えばPMOSトランジスタ48A、48Bのゲートが0Vから0.6V程度になるまでτで表わされる期間が必要となる。この期間を確保するためのバイパスノード充電回路58の抵抗Rcの抵抗値Rcは、コンデンサCcの容量値Ccを例えば約1pF程度とすると、次式で算出される。
【0072】
Rc≧τ/Cc=600(ns)/1(pF)≧600(kΩ)
マージン確保として、τを2(μs)以上とする場合は、抵抗Rcは次式で算出される。
【0073】
Rc=2(μs)/1(pF)=2(MΩ)
以下、本発明者が行ったシミュレーション結果について説明する。
【0074】
まず、Rc=1(kΩ)、Cc=1.2(pF)とした場合について説明する。
【0075】
この場合、バイパスノードBYPASSの時定数τbは、次式で算出される。
【0076】
τb=2.2×τb=Rc×Cc=1(kΩ)×1.2(pF)=1.2(ns)
図6には、この場合のシミュレーション結果を示した。同図(A)は入力端子XI及び出力端子XOの電位を示し、同図(B)は、バイパスノードBYPASSの電位を示し、同図(C)は、PTAT電流源12からの電流を示している。
【0077】
同図(B)に示すように、バイパスノードBYPASSの電位がすぐに上昇してPMOSトランジスタ48A、48Bがオンしてしまうため、すぐにバイパス抵抗Rbから帰還抵抗Rfに切り替わってしまう。これにより、同図(A)に示すように、入力端子XIの充電が遅れるため、出力端子XOが過電圧レベルである耐圧2.0Vを越えてしまっている。
【0078】
次に、Rc=2(MΩ)、Cc=1.2(pF)とした場合について説明する。
【0079】
この場合、バイパスノードBYPASSの時定数τbは、次式で算出される。
【0080】
τb=Rc×Cc=2(MΩ)×1.2(pF)=2.4μs
また、バイパスノードBYPASSの立ち上がり時間tは、次式で算出される。
【0081】
t=2.2×Rc×Cc≒5.3(μs)
ここで、2.2は上記と同様に、log0.9−log0.1で求められる値である。
【0082】
図7には、この場合のシミュレーション結果を示した。同図(A)は入力端子XI及び出力端子XOの電位を示し、同図(B)は、バイパスノードBYPASSの電位を示し、同図(C)は、PTAT電流源12からの電流を示している。
【0083】
同図(B)に示すように、バイパスノードBYPASSの電位がすぐに上昇せずに、徐々に上昇してPMOSトランジスタ48A、48Bがオンするため、すぐにはバイパス抵抗Rbから帰還抵抗Rfに切り替わることがなく、入力端子XIが速やかに充電される。この入力端子XIの充電中には、PTAT電流源12からの電流がバイパス抵抗Rbへバイパスされる状態が保持される。これにより、同図(A)に示すように、出力端子XOの電位が、過電圧レベルである耐圧2.0V以下となることが確認できた。
【0084】
なお、発振起動時に、抵抗値が低いバイパス抵抗Rbが選択されるようにすることにより、入力端子XI及び出力端子XOを不安定にさせることができ、発振起動を早くすることができる。発振が安定した後は、抵抗値が高い帰還抵抗Rfに切り替わるため、帰還抵抗Rfを考慮した以下の負性抵抗Rを求めるための理論式より、安定した負性抵抗が得られる。
【0085】
R=−[gm・ω・Cg・Cd−gm・Rf−ω(Cg+Cd)/Rf]/[(−ωCg・Cd+gm/Rf)(Cg+Cd)/Rf
ここで、gmは発振バッファ14の相互コンダクタンス、ωは発振角周波数である。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0087】
図8には、本実施形態に係る発振回路10Aの回路構成を示した。同図に示すように、発振回路10Aは、図1に示した発振回路10のバイパスノード充電回路58に代えて、カレントミラー回路78を設け、このカレントミラー回路78の一部を構成するバイパスノード充電回路80によりバイパスノードBYPASSを充電する構成としている。
【0088】
カレントミラー回路78は、その前段のカレントミラー回路38から出力されたバイアス電流Ibgの1/N(Nは1より大きい)の電流がPMOSトランジスタ82及びNMOSトランジスタ84に流れるように設計されている。なお、本実施形態では、Nは一例として5としている。また、バイパスノード充電回路80を構成するPMOSトランジスタ86には、バイアス電流Ibgの1/M(MはNより大きい)の電流が流れるように設計されている。なお、本実施形態では、Mは一例として25としている。
【0089】
ところで、バイパスノード充電回路80を流れる電流Ibは、数μA程度の小さな電流である。このため、コンデンサCcとPMOSトランジスタ86とが離間して配置及び配線された場合、すなわち、コンデンサCcとPMOSトランジスタ86とを接続する配線が長くなった場合、発振回路の動作中に、電源電位の変動や他の回路からのノイズ等によってバイパスノード充電回路80が誤動作してしまう可能性がある。また、PMOSトランジスタ86は、PTAT電流源を参照しているため、同一ウェル上に形成する。
【0090】
従って、バイパスノード充電回路80のPMOSトランジスタ86とコンデンサCcとを、例えば図9に示すように半導体基板88上において隣接して配置することが好ましい。
【0091】
これにより、コンデンサCcとPMOSトランジスタ86とを接続する配線が短くなるため、電源電位の変動やノイズ等の影響をうける領域が少なくなり、その結果、バイパスノード充電回路80が誤動作してしまう可能性を低減することができる。
【0092】
以下、発振回路10Aの通常時の発振動作について説明する。なお、各部の電位については、バイパスノードBYPASSを除いて第1実施形態とほぼ同様である。
【0093】
発振起動時には、帰還抵抗イネーブル端子EBFBRに入力する制御信号を図5(A)、(B)に示すようにローレベル(以下、Lレベル)からハイレベル(以下、Hレベル)に変化させると共に、イネーブル端子EBに入力する制御信号をLレベルからHレベルに変化させ、PTAT電流源12を起動させる。
【0094】
これにより、NMOSトランジスタ16がオンすると共に、スイッチ素子20A、20Bがオンする。そして、バイアス電流発生回路28で発生されたバイアス電流Ibgの1/M(ここでは、M=25)の電流IbがPMOSトランジスタ86を流れることによりコンデンサCcが充電される。これにより、バイパスノードBYPASSの電位が図10の点線で示すように徐々に上昇する。
【0095】
その後、各ノード(端子)における電位レベルは以下のように変化する。まず、出力端子XOの電位が初期状態で0[V]レベルになっている場合は、外付コンデンサCdに向かってPTAT電流源12からの電流Iallが流れて外付コンデンサCdが充電され、図5(C)に示すように出力端子XOの電位VOが上昇する。
【0096】
出力端子XOの電位が上昇すると、PTAT電流源12からの電流は帰還抵抗Rfよりも抵抗値が小さいバイパス抵抗Rbを介して入力端子XI側に流れ、その結果、外付コンデンサCgが充電され、図5(C)に示すように入力端子XIの電位VIが上昇する。
【0097】
入力端子XIの電位が初期状態(約0[V])から上昇し、その後、入力端子XIにおける電位が、発振バッファ14を構成するNMOSトランジスタ44の閾値電圧Vth付近まで上昇すると、発振バッファ14のNMOSトランジスタ44がONし、その結果、出力端子XOから、NMOSトランジスタ44、16を介して、接地電位GNDに向かってバイアス電流が流れ込む。この時、PTAT電流源12から発振バッファ14のNMOSトランジスタ44へ流れ込む電流Iallと、出力端子XOから発振バッファのNMOSトランジスタ44へ流れ込むバイアス電流とによって、発振バッファ14のPMOSトランジスタ42のソースであるノードVCCにおける電位が固定される。
【0098】
そして、入力端子XI及び出力端子XO共に、発振バッファ14のバイアスレベル(同電位)になる。ここで、水晶振動子Xtalによる発振起動待ち状態となる。
【0099】
また、バイアス電流Ibgの1/Mの電流である電流IbによりコンデンサCcの充電が完了した後、すなわち、バイパスノードBYPASSの電位がPMOSトランジスタ48A、48Bの閾値電圧を越えると、PMOSトランジスタ48A、48Bが非導通状態となり、出力端子XOからバイパス抵抗Rbを介して入力端子XIへの電流経路が遮断される。この結果、入力端子XIと出力端子XOとの間の抵抗は、バイパス抵抗Rbから帰還抵抗Rfに切り替わる。
【0100】
そして、この状態から水晶振動子Xtalに基づく発振周波数の信号が増幅されることにより、図5(C)に示すように発振が開始される。
【0101】
このように、小さな抵抗値のバイパス抵抗Rbから大きな抵抗値の帰還抵抗Rfに切り替わることにより、発振起動を安定的に開始させることができる。
【0102】
また、第1実施形態の発振回路10におけるバイパスノードBYPASSの電位は、図10の実線で示すように緩やかなカーブを描くように上昇しているが、本実施形態の発振回路10AにおけるバイパスノードBYPASSの電位は、図10の点線で示すように線形に変化する。これは、電流源から一定の電流IbがコンデンサCcに流れ込むためである。これにより、第1実施形態の場合と比較して、バイパス抵抗Rbと帰還抵抗Rfとの切替タイミングが安定する。
【0103】
なお、発振を終了させる場合には、イネーブル端子EB及び帰還抵抗イネーブル端子EBFBRをLレベルにする。これにより、帰還抵抗Rfへの電流経路が遮断され、発振が停止する。また、バイパスノード充電回路80のNMOSトランジスタ62がオンすることにより、コンデンサCcに充電されていた電荷が放電される。
【0104】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上記各実施形態と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略し、上記各実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0105】
帰還抵抗Rfは、発振動作安定の特性を示す前述した負性抵抗Rに対してR∝Rfの関係を有するが、帰還抵抗Rfの抵抗値が設計値よりも低くなってしまった場合、不発振又は発振不安定(周期が一定しない)等の問題が発生する場合がある。このため、製品出荷前等において帰還抵抗Rfを予め測定することにより、不良品が流出するのを防止する必要がある。
【0106】
従って、発振動作している状態では通常動作時以外、すなわちイネーブル端子EBにLレベルが入力された状態で帰還抵抗Rfを測定する必要がある。しかしながら、第1実施形態及び第2実施形態で説明した発振回路10、10Aでは、イネーブル端子EBがLレベルの場合、バイパスノードBYPASSがLレベルとなるためPMOSトランジスタ48A、48Bがオンとなり、バイパス抵抗Rbが選択された状態となってしまい、帰還抵抗Rfの抵抗値の測定ができない。
【0107】
そこで、本実施形態では、イネーブル端子EBがLレベルの場合であっても、バイパスノードBYPASSがHレベルとなり、PMOSトランジスタ48A、48Bがオフとなって帰還抵抗Rfが選択されるような発振回路について説明する。
【0108】
図11には、このような発振回路10Bの回路構成を示した。発振回路10Bが図8に示した発振回路10Aと異なる点は、NAND回路90及びインバータ92を備えた点である。NAND回路90の一方の入力端はイネーブル端子EBに接続されると共に他方の入力端がインバータ92を介してバイパスノードBYPASSに接続され、出力端はMOSトランジスタ48A、48Bのゲートに接続されている。
【0109】
このような構成となっているため、イネーブル端子EBがLレベルでバイパスノードBYPASSがLレベルであっても、NAND回路90の出力がHレベルとなってPMOSトランジスタ48A、48Bがオフするため、帰還抵抗イネーブル端子EBFBRをHレベルとすればスイッチ素子20A、20Bがオンして帰還抵抗Rfに切り替えることができる。
【0110】
これにより、イネーブル端子EBがLレベルでバイパスノードBYPASSがLレベルであっても、帰還抵抗Rfの抵抗値を測定することが可能となる。
【0111】
なお、上記各実施形態では、帰還抵抗Rfが発振回路に内蔵された場合について説明したが、これに限らず、発振回路が形成された半導体集積回路の外側で帰還抵抗Rfを接続するようにし、バイパス抵抗Rbのみを発振回路に内蔵するようにしてもよい。この場合も、前述したのと同様の効果が得られる。
【0112】
このとき、バイパス抵抗Rbの実効抵抗Rb’は、帰還抵抗Rfが並列に接続されたままなので、Rb≪Rfの場合、
Rb’= Rf×Rb/(Rf+Rb)≒Rf×Rb/(Rf)≒Rb
となる。
【符号の説明】
【0113】
10、10A、10B 発振回路
12 PTAT電流源
14 発振バッファ
20A、20B スイッチ素子
28 バイアス電流発生回路
38 カレントミラー回路
46 共振回路
48A、48B PMOSトランジスタ
58、80 バイパスノード充電回路
66 入力保護回路
68 出力保護回路
Rf 帰還抵抗
Rb バイパス抵抗
Cc コンデンサ
Rc 抵抗
Rd ダンピング抵抗
Xtal 水晶振動子
Cg、Cd 外付コンデンサ
VDD 電源
GND 接地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源と、
前記電流源と接続されると共に、共振手段と並列接続された発振増幅手段と、
前記発振増幅手段と並列接続された帰還抵抗と、
前記帰還抵抗よりも抵抗値が小さいバイパス抵抗と、
前記帰還抵抗と前記バイパス抵抗との間に接続され、前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗の何れかに切り替えるための切替手段と、
前記電流源からの電流が前記共振手段へ供給開始されてから予め定めた発振起動期間は、前記電流源からの電流が前記バイパス抵抗へバイパスされるように、前記予め定めた発振起動期間経過後は、前記電流源からの電流が前記帰還抵抗へ流れるように前記切替手段を制御する制御手段と、
を備えた発振回路。
【請求項2】
前記電流源は、I/Oトランジスタを含んで構成されると共に、前記発振増幅手段は、前記I/Oトランジスタよりも耐圧が低いコアトランジスタであるNチャネルMOSトランジスタ及びPチャネルMOSトランジスタから成るCMOSインバータを含んで構成された
請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記切替手段は、前記帰還抵抗の一端と前記バイパス抵抗の一端との間、前記帰還抵抗の他端と前記バイパス抵抗の他端との間に接続された複数のバイパス用スイッチ素子と、を含み、
前記制御手段は、前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端が、前記予め定めた発振起動期間を要して前記複数のバイパス用スイッチ素子がオンからオフに切り替わるように前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端を充電する充電手段を含む
請求項1又は請求項2記載の発振回路。
【請求項4】
前記充電手段は、
直列接続され且つ接続点が前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に接続された抵抗及び容量素子を含むRC回路と、
前記予め定めた発振起動期間に前記RC回路へ電源供給する電源供給手段と、
発振停止後に前記容量素子に充電された電荷を放電する放電手段と、
を含む請求項3記載の発振回路。
【請求項5】
前記電流源は、バイアス電流発生回路と、前記バイアス電流発生手段に接続されたカレントミラー回路と、を含み、
前記充電手段は、前記カレントミラー回路の一部であって、前記バイアス電流発生回路からの出力電流の1/M(Mは1より大きい)の電流を供給する電流供給手段と、前記電流供給手段と接続され且つ接続点が前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に接続された容量素子と、発振停止後に前記容量素子に充電された電荷を放電する放電手段と、を含む
請求項3記載の発振回路。
【請求項6】
前記電流源からの電流の供給開始を許可するための許可信号がオフの場合に、前記接続点の電位が前記複数のバイパス用スイッチ素子をオンにする電位であっても、前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端をオフにするためのオフ信号を前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端に出力するオフ信号出力手段が、前記充電手段と前記複数のバイパス用スイッチ素子の制御端との間に設けられた
請求項4又は請求項5記載の発振回路。
【請求項7】
前記電流供給手段は、MOSトランジスタから成ると共に前記容量素子がコンデンサから成り、前記MOSトランジスタ及び前記コンデンサが隣接して配置されている
請求項5又は請求項6記載の発振回路。
【請求項8】
前記容量素子は、半導体集積回路上のMIMコンデンサ、MoMコンデンサ、及びトランジスタのゲート容量の何れかである
請求項4〜請求項7の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項9】
前記電流源からの電流が前記共振手段へ供給開始される場合にオンするMOSトランジスタであって、前記帰還抵抗の一端と前記共振手段の一端との間に接続された第1のMOSトランジスタと、前記帰還抵抗の他端と前記共振手段の他端との間に接続された第2のMOSトランジスタと、をさらに備え、
前記第1のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記共振手段の一端と接続される端子と、前記第1のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離が、前記第1のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記帰還抵抗の一端と接続される端子と、前記第1のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離よりも長く、前記第2のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記共振手段の他端と接続される端子と、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離が、前記第2のMOSトランジスタのソース端子及びドレイン端子のうち前記帰還抵抗の他端と接続される端子と、前記第2のMOSトランジスタのゲート端子と、の間の距離よりも長い
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項10】
前記帰還抵抗の一端と前記共振手段の一端との間に第1の保護回路を備えると共に、前記帰還抵抗と前記共振手段の他端との間に第2の保護回路を備え、前記第1の保護回路は、前記共振手段の一端が接続される第1の接続端子に隣接して配置され、前記第2の保護回路は、前記共振手段の他端が接続される第2の接続端子に隣接して配置された
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項11】
前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗は、配線抵抗又はトランスファゲートから成る
請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の発振回路。
【請求項12】
前記帰還抵抗及び前記バイパス抵抗は、ポリシリコンから成る配線抵抗であり、前記バイパス抵抗の配線幅が、前記帰還抵抗の配線幅よりも太い
請求項11記載の発振回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−177852(P2010−177852A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16437(P2009−16437)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】