説明

発泡成形体および発泡成形体の製造方法

【課題】高品質化および低コスト化を図ること。
【解決手段】発泡原料が発泡することにより形成された発泡体2と、積層された複数の不織布層11、12、13、14、15が一体化されてなり、発泡体2が形成されるときに発泡原料が含浸することにより該発泡体2の表面に一体に固着された補強部材3と、を備え、補強部材3は、当該発泡成形体1Aの最も外側に位置する外不織布層11と、最も内側に位置する内不織布層12と、これらの両不織布層11、12の間に位置する中間積層部16と、により構成され、中間積層部16は、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維よりも小径の細繊維で構成された中間不織布層13と、該細繊維よりも大径の補強繊維で構成された補助不織布層14、15と、を有するとともに、これらの不織布層13、14、15が接着により一体化されてなる発泡成形体1Aを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体および発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡原料が発泡することにより形成された発泡体と、発泡体が形成されるときに発泡原料が含浸することにより発泡体の表面に一体に固着された補強部材と、を備えるシート用パッドとして、例えば下記特許文献1に記載されるような構成が知られているが、この種のシート用パッドとして、補強部材が、積層された複数の不織布層が一体化されてなる構成も一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−177198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシート用パッドでは、不織布層に発泡原料が含浸し易く、複数の不織布層のうち、当該シート用パッドの最も外側に位置する外不織布層まで発泡原料が含浸するおそれがあった。このように外不織布層に発泡原料が含浸すると外不織布層が硬くなるため、例えばシート用パッドが固定される車両のシートフレームとの間で擦れ音が発生する等、シート用パッドの品質に影響が生じ易い。
なおこの問題を解決するために、不織布層の目付けを高めて緻密性を向上させることが考えられるが、この場合にはコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高品質化および低コスト化を図ることができる発泡成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る発泡成形体は、発泡原料が発泡することにより形成された発泡体と、積層された複数の不織布層が一体化されてなり、前記発泡体が形成されるときに発泡原料が含浸することにより該発泡体の表面に一体に固着された補強部材と、を備える発泡成形体であって、前記補強部材は、当該発泡成形体の最も外側に位置する外不織布層と、最も内側に位置する内不織布層と、これらの両不織布層の間に位置する中間積層部と、により構成され、該中間積層部は、前記外不織布層および前記内不織布層それぞれを構成する繊維よりも小径の細繊維で構成された中間不織布層と、該細繊維よりも大径の補強繊維で構成された補助不織布層と、を有するとともに、これらの不織布層が接着により一体化されてなることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、中間不織布層を構成する細繊維が、外不織布層および内不織布層それぞれを構成する繊維よりも小径なので、中間不織布層の目付けを抑えつつ緻密性を確保することができる。このように中間不織布層の緻密性を確保することにより、内不織布層に含浸した発泡原料が、中間不織布層よりも当該発泡成形体の外側に位置する外不織布層に中間不織布層を通して含浸するのを抑制することが可能になり、高品質化を図ることができる。また、中間不織布層の目付けを抑えることにより、低コスト化を図ることもできる。
また前述のように、中間不織布層の目付けを抑えつつ緻密性を確保することができるので、中間不織布層が発泡原料の含浸により硬くなることで中間不織布層の強度を確保することが可能になり、補強部材による発泡体の補強を確実に行い、例えば型崩れを効果的に抑制することができる等の更なる高品質化を図ることができる。
【0008】
さらに、中間不織布層および補助不織布層が、機械的交絡法と異なる方法である接着により一体化されているので、これらの不織布層を一体化して中間積層部を形成するときに、中間不織布層が損傷するのを抑えることができる。
また、補助不織布層を構成する補強繊維が、中間不織布層を構成する細繊維よりも大径であるので、細繊維で構成された中間不織布層を、補強繊維で構成された補助不織布層により補強することができる。したがって、例えば外不織布層、内不織布層および中間積層部を一体化するとき等に、中間積層部の中間不織布層が損傷するのを抑えることができる。
以上のように、中間積層部の中間不織布層が損傷するのを抑えることができるので、中間不織布層の緻密性や機械物性が低下するのを抑制することが可能になり、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0009】
また、前記細繊維の繊維径は5μm以下であり、前記補強繊維の繊維径は15μm以上であってもよい。
【0010】
この場合、細繊維の繊維径が5μm以下であり、補強繊維の繊維径が15μm以上であるので、前述の作用効果をより確実に奏功させることができる。すなわち、細繊維の繊維径が5μmよりも大きいと、発泡原料が、中間不織布層を通して外不織布層に含浸するのを抑えることができないおそれがある。また、補強繊維の繊維径が15μmより小さいと、補助不織布層により中間不織布層を補強できないおそれがある。
【0011】
また、前記中間不織布層および前記補助不織布層は熱融着により接着され、前記外不織布層、前記内不織布層および前記中間積層部は、機械的交絡法により一体化されていてもよい。
【0012】
この場合、中間不織布層および補助不織布層が熱融着により接着されるとともに、外不織布層、内不織布層および中間積層部が、機械的交絡法により一体化されているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
すなわち、外不織布層、内不織布層および中間積層部を、機械的交絡法により一体化するときには中間不織布層に損傷が生じ易く、中間不織布層の緻密性や機械物性を確保し難くなる。しかしながら、前述のように補助不織布層を構成する補強繊維が、中間不織布層を構成する細繊維よりも大径であるので、補助不織布層により中間不織布層を補強することが可能になり、中間不織布層に損傷が生じるのを確実に抑制することができる。また、中間不織布層および補助不織布層が熱融着により接着されるので、これらの不織布層を一体化するときには繊維が損傷し難く、緻密性や機械物性の低下を抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る発泡成形体の製造方法は、前記発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、前記外不織布層および前記内不織布層それぞれをスパンボンド法により形成する不織布層形成工程と、前記中間不織布層をメルトブローン法により形成するとともに前記補助不織布層をスパンボンド法により形成し、これらの不織布層を接着により一体化して前記中間積層部を形成する積層部形成工程と、前記外不織布層、前記内不織布層および前記中間積層部を一体化して前記補強部材を形成する補強部材形成工程と、該補強部材を金型のキャビティ内に配置するとともに該キャビティ内で発泡原料を発泡させ、発泡原料を前記補強部材に含浸させるとともに前記発泡体を形成する発泡工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、外不織布層および内不織布層それぞれをスパンボンド法により形成するとともに、中間不織布層をメルトブローン法により形成するので、前記細繊維を、外不織布層および内不織布層それぞれを構成する繊維よりも確実に小径に形成することができる。
また、中間不織布層をメルトブローン法により形成するとともに、補助不織布層をスパンボンド法により形成するので、前記補強繊維を前記細繊維より確実に大径に形成することができる。
【0015】
なおスパンボンド法は、不織布層を構成する繊維の原料を、口金から繊維状に押し出し重力等により延伸させて前記繊維を形成し、不織布層を形成する方法であり、メルトブローン法は、前述のように口金から押し出された繊維状の原料の繊維径を、熱風により小さくさせて前記繊維を形成し、不織布層を形成する方法である。メルトブローン法では、スパンボンド法よりも繊維の延伸量が小さくなるため、原料の物理的配向状態の違いにより繊維の機械強度が劣り易い。したがって、メルトブローン法により形成された中間不織布層の機械強度が劣り易くなるため、補助不織布層により中間不織布層を補強する効果が顕著に奏功されることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高品質化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るシート用パッドを用いたシートの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシート用パッドを反転させた状態の斜視図である。
【図3】図2に示すシート用パッドの下面側の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るシート用パッド(発泡成形体)を説明する。
図1に示すように、シート用パッド1A、1Bは、車両のシート1に用いられ、該車両の図示しないシートフレームに固定される。この種のシート用パッド1A、1Bとしては、車両におけるシート1の着座部であるクッションパッドとなるシート用パッド1A、および車両におけるシート1の背もたれ部であるバックパッドとなるシート用パッド1Bが挙げられる。
本実施形態では、クッションパッドとなるシート用パッド1Aを一例として説明する。
【0019】
図2および図3に示すように、シート用パッド1Aは、例えばウレタン原料等からなる発泡原料が発泡することにより形成された発泡体2と、積層された複数の不織布層11、12、13、14、15が一体化されてなり、発泡体2が形成されるときに発泡原料が含浸することにより発泡体2の表面に一体に固着された補強部材3と、を備えている。
【0020】
発泡体2は、例えばポリウレタンフォーム等で形成され、発泡体2の上面は着座可能に形成されている。そして図2に示すように、発泡体2の表面のうち、前記シートフレームに取り付けられる面である下面に、補強部材3が固着されている。
図3に示すように、補強部材3は、当該シート用パッド1Aの最も外側に位置する外不織布層11と、最も内側に位置する内不織布層12と、外不織布層11と内不織布層12との間に位置する中間積層部16と、により構成されている。本実施形態では、中間積層部16は、3層の不織布層13、14、15が積層されてなり、補強部材3は全体で5層構造となっている。
【0021】
中間積層部16は、中間不織布層13と、該中間不織布層13の両側に配置されるとともに該中間不織布層13に熱融着により接着された一対の補助不織布層14、15と、からなり、中間積層部16において、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの外側に位置する不織布層の数と、内側に位置する不織布層の数と、が等しくなっている。
【0022】
外不織布層11、内不織布層12および中間積層部16は、ニードルパンチ針を挿抜することで各不織布層11、12、13、14、15の繊維同士を交絡させるニードルパンチ加工により一体化されている。なお、このように繊維同士が交絡させられることにより、例えば補助不織布層14、15の繊維等が、外不織布層11および内不織布層12を突き抜けて外部に露出してもよい。
【0023】
ここで、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径は互いに同等とされるとともに、一対の補助不織布層14、15それぞれを構成する繊維の繊維径は互いに同等となっている。
そして本実施形態では、中間不織布層13を構成する細繊維は、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維よりも小径になっている。また、補助不織布層14、15を構成する補強繊維は、前記細繊維よりも大径になっている。
【0024】
また前記補強繊維の繊維径は、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径と同等であったり、大きかったり、小さかったりしてもよい。これらのうち、前記補強繊維の繊維径が、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径よりも大きい場合には、複数の不織布層11、12、13、14、15のうち、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの内側に位置する各不織布層12、13、15を構成する繊維が、内不織布層12から中間不織布層13に向かう層毎に漸次、小径になる。
【0025】
なお本実施形態では、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径は、例えば約15μm以上程度とされ、約15μm〜50μm程度が好ましく、補助不織布層14、15を構成する補強繊維の繊維径は、例えば約15μm以上程度とされ、約15μm〜30μm程度が好ましく、中間不織布層13を構成する細繊維の繊維径は、例えば約5μm以下程度とされ、約1μm〜5μm程度が好ましい。
【0026】
また、外不織布層11および内不織布層12の目付けは互いに同等とされるとともに、一対の補助不織布層14、15同士の目付けは互いに同等となっている。本実施形態では、外不織布層11および内不織布層12の目付けは、例えば約20g/m〜60g/m程度とされ、補助不織布層14、15の目付けは、例えば約5g/m〜10g/m程度とされ、中間不織布層13の目付けは、例えば約0.5g/m〜3g/m程度となっている。
【0027】
以上のように構成された補強部材3では、外不織布層11および内不織布層12、補助不織布層14、15、並びに中間不織布層13の順に緻密性が漸次、高くなっており、補強部材3の通気度は、例えば約20cm/(cm・sec)〜150cm/(cm・sec)程度となっている。
【0028】
ここで、前記シート用パッド1Aを形成するシート用パッドの製造方法(発泡成形体の製造方法)について説明する。
はじめに、外不織布層11および内不織布層12それぞれをスパンボンド法により形成する不織布層形成工程を行う。スパンボンド法は、不織布層を構成する繊維の原料となる例えば熱可塑性樹脂などを、口金から繊維状に押し出し重力等により延伸させて前記繊維を形成し、不織布層を形成する方法である。このスパンボンド法により、繊維径が例えば約15μm以上の不織布層を形成することができる。
【0029】
また、中間積層部16を形成する積層部形成工程を行う。
この工程では、まず、中間不織布層13をメルトブローン法により形成するとともに補助不織布層14、15をスパンボンド法により形成する。ここでメルトブローン法は、スパンボンド法と同様にして口金から押し出された繊維状の原料の繊維径を、温度が例えば約120〜300℃程度の熱風により小さくさせて前記繊維を形成し、不織布層を形成する方法である。このように熱風を利用することにより、中間不織布層13の繊維径を、例えば約5μm以下にすることができる。なおメルトブローン法では、スパンボンド法よりも繊維の延伸量が小さくなるため、樹脂の物理的配向状態の違いにより繊維の機械強度が劣り易い。
【0030】
中間不織布層13および補助不織布層14、15を形成した後、これらの不織布層13、14、15を熱融着により接着して一体化する。このとき、例えば熱エンボスロール等により、中間不織布層13および一対の補助不織布層14、15を互いに熱融着させる。
以上で積層部形成工程が終了する。
【0031】
そして、不織布層形成工程および積層部形成工程の後、外不織布層11、内不織布層12および中間積層部16を一体化して補強部材3を形成する補強部材形成工程を行う。このとき、前述のようにニードルパンチ加工により一体化する。
その後、補強部材3を図示しない金型のキャビティ内に配置するとともに該キャビティ内で発泡原料を発泡させ、発泡原料を補強部材3に含浸させるとともに発泡体2を形成する発泡工程を行う。これにより、補強部材3が発泡体2の表面に一体に固着され、シート用パッド1Aが形成される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るシート用パッド1Aによれば、中間不織布層13を構成する細繊維が、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維よりも小径なので、中間不織布層13の目付けを抑えつつ緻密性を確保することができる。このように中間不織布層13の緻密性を確保することにより、内不織布層12に含浸した発泡原料が、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの外側に位置する外不織布層11に中間不織布層13を通して含浸するのを抑制することが可能になり、高品質化を図ることができる。また、中間不織布層13の目付けを抑えることにより、低コスト化を図ることもできる。なお、含浸が抑制された外不織布層11は、例えば前記シートフレームに対する緩衝材として作用させること等ができる。
【0033】
また前述のように、中間不織布層13の目付けを抑えつつ緻密性を確保することができるので、中間不織布層13が発泡原料の含浸により硬くなることで中間不織布層13の強度を確保することが可能になり、補強部材3による発泡体2の補強を確実に行い、例えば型崩れを効果的に抑制することができる等の更なる高品質化を図ることができる。
【0034】
また、細繊維の繊維径が5μm以下であり、補強繊維の繊維径が15μm以上であるので、前述の作用効果をより確実に奏功させることができる。すなわち、細繊維の繊維径が5μmよりも大きいと、発泡原料が、中間不織布層13を通して外不織布層11に含浸するのを抑えることができないおそれがある。また、補強繊維の繊維径が15μmより小さいと、補助不織布層14、15により中間不織布層13を補強できないおそれがある。
【0035】
さらに、中間不織布層13および補助不織布層14、15が、機械的交絡法と異なる方法である接着により一体化されているので、これらの不織布層13、14、15を一体化して中間積層部16を形成するときに、中間不織布層13が損傷するのを抑えることができる。
また、補助不織布層14、15を構成する補強繊維が、中間不織布層13を構成する細繊維よりも大径であるので、細繊維で構成された中間不織布層13を、補強繊維で構成された一対の補助不織布層14、15により補強することができる。したがって、中間積層部16の中間不織布層13が損傷するのを抑えることができる。
以上のように、中間積層部16の中間不織布層13が損傷するのを抑えることができるので、中間不織布層13の緻密性や機械物性が低下するのを抑制することが可能になり、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0036】
なお本実施形態では、積層部形成工程の際、中間不織布層13および補助不織布層14、15が熱融着により接着されるので、これらの不織布層13、14、15を一体化するときに、中間不織布層13が損傷するのを確実に抑えることができる。
さらに、補強部材形成工程の際、外不織布層11、内不織布層12および中間積層部16を、機械的交絡法であるニードルパンチ加工により一体化しているため、中間不織布層13に損傷が生じ易くなっている。
以上より、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0037】
また、複数の不織布層11、12、13、14、15のうち、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの内側に位置する各不織布層12、13、15を構成する繊維が、内不織布層12から中間不織布層13に向かう層毎に漸次、小径になっている場合には、各不織布層12、13、15の緻密性を、内不織布層12から中間不織布層13に向かう層毎に漸次、高め易くすることが可能になり、各不織布層12、13、15における発泡原料の含浸の程度を漸次、低めることができる。これにより、互いに隣り合う不織布層12、13、15間で発泡原料の含浸の程度が急激に変化するのを抑えることが可能になり、不織布層12、13、15同士の一体性を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るシート用パッド1Aの製造方法によれば、外不織布層11および内不織布層12それぞれをスパンボンド法により形成するとともに、中間不織布層13をメルトブローン法により形成するので、前記細繊維を、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維よりも確実に小径に形成することができる。
また、中間不織布層13をメルトブローン法により形成するとともに、補助不織布層14、15をスパンボンド法により形成するので、前記補強繊維を前記細繊維より確実に大径に形成することができる。
【0039】
さらに、中間不織布層13が、繊維の機械強度が劣り易いメルトブローン法により形成されているので、補助不織布層14、15により中間不織布層13を補強する効果が顕著に奏功されることとなる。
【0040】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、複数の不織布層11、12、13、14、15のうち、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの内側に位置する各不織布層12、13、15を構成する繊維は、内不織布層12から中間不織布層13に向かう層毎に漸次、小径になっていなくてもよい。
【0041】
また前記実施形態では、中間積層部16が、中間不織布層13と、一対の補助不織布層14、15と、により構成される3層構造であるものとしたが、これに限られない。例えば、中間積層部16は、中間不織布層13と、一対の補助不織布層14、15と、からなる3層の積層構造体が、3層積層されることにより構成される9層構造であってもよい。
【0042】
さらに前記実施形態では、中間積層部16において、中間不織布層13よりも当該シート用パッド1Aの外側に位置する不織布層の数と、内側に位置する不織布層の数と、が等しくなっているものしたが、異なっていてもよい。例えば、中間積層部16が、中間不織布層と、1つの補助不織布層と、からなる2層構造であってもよい。
【0043】
また前記実施形態では、一対の補助不織布層14、15それぞれを構成する繊維の繊維径は、互いに同等となっているものとしたが、互いに異なっていてもよい。さらに、一対の補助不織布層14、15同士の目付けも互いに同等となっているものとしたが、互いに異なっていてもよい。
【0044】
また前記実施形態では、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径が互いに同等となっているものとしたが、これに限られない。さらに、外不織布層11および内不織布層12の目付けも互いに同等となっているものとしたが、これに限られない。
【0045】
また前記実施形態では、外不織布層11、内不織布層12および中間不織布層13が、ニードルパンチ加工により一体化されているものとしたが、これに限られず、例えばニードルパンチ加工とは異なる機械的交絡法である水流交絡法などにより一体化されたものであってもよい。
【0046】
また前記実施形態では、中間不織布層13と、補助不織布層14、15と、が熱融着により接着されているものとしたが、機械的交絡法とは異なる方法により接着されていれば、これに限られるものではない。例えば、中間不織布層13と、補助不織布層14、15と、が接着剤により接着されていてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、発泡成形体としてシート用パッド1Aを採用したが、発泡原料が発泡することにより形成された発泡体と、積層された複数の不織布層が一体化されてなり、発泡体が形成されるときに発泡原料が含浸することにより発泡体の表面に一体に固着された補強部材と、を備える構成であれば、採用することが可能である。例えば、発泡成形体として、シート1のバックパッドとなるシート用パッド1Bを採用してもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
次に、前述した作用効果についての検証試験を実施した。
この検証試験では、比較例1および実施例1〜5の計6種類の補強部材3を準備した。
比較例1の補強部材3は、外不織布層11と内不織布層12との間に、中間積層部16に代えて、スパンボンド法により形成された単層のスパンボンド不織布層を設けた。
【0050】
また、実施例1、3、5の補強部材3は、図2および図3に示したものと同様の構成とし、各補強部材3における中間積層部16を、中間不織布層13と、一対の補助不織布層14、15と、により構成される3層構造とした。
さらに、実施例2、4では、各補強部材3における中間積層部16を、中間不織布層13と、一対の補助不織布層14、15と、からなる3層の積層構造体が、3層積層されることにより構成される9層構造とした。
【0051】
ここで、前記した各補強部材3における全体の総目付け、外不織布層11および内不織布層12それぞれを構成する繊維の繊維径と目付け、並びにスパンボンド不織布層または中間積層部16の目付けを、表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
なお表1において、行見出し「中間積層部」の比較例1における目付けは、スパンボンド不織布層の目付けを表す。
【0054】
表1に示されるように、実施例1は、本願発明を適用した上で、比較例1に対して中間積層部16の目付けを抑えることにより、総目付けを下げている。
さらに実施例2は、本願発明を適用した上で、比較例1に対して中間積層部16の目付けを同等なものに維持している。
【0055】
また実施例3は、実施例1に対して外不織布層11および内不織布層12の各繊維径を小径にしている。
さらに実施例4は、実施例2に対して外不織布層11および内不織布層12の各繊維径を小径にしている。
さらにまた、実施例5は、実施例3に対して外不織布層11および内不織布層12の各目付けを抑えることで、総目付けを一層下げている。
【0056】
以上のような比較例1、および実施例1〜5の補強部材3をそれぞれ準備し、各補強部材3の単品物性としての通気度および引張強度を測定した。さらに、各補強部材3を、幅が400mmの扁平直方体状の発泡体テストピースの表面に一体に固着させ、この状態における物性である複合物性としての引張強度も測定した。
結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示した通気度について検討すると、実施例1および比較例1の通気度は、ほぼ同等であるとともに、実施例2の通気度は比較例1の通気度よりも低くなっている。
この結果から、本願発明を適用した上で、中間積層部16の目付けを抑えることにより総目付けを下げても、通気度を同等のものとすることができ、また本願発明を適用した上で、中間積層部16の目付けを同等なものに維持すると、通気度を低下させることができることが確認された。
【0059】
また、実施例3の通気度は実施例1の通気度よりも低くなっているとともに、実施例4の通気度は実施例2の通気度よりも低くなっている。
この結果から、本願発明を適用した上で、外不織布層11および内不織布層12の各繊維径を小径にすることで、通気度をさらに低下させることができることが確認された。
【0060】
さらに、実施例5および比較例1の通気度は、ほぼ同等となっている。
この結果から、本願発明を適用し、かつ外不織布層11および内不織布層12の各繊維径を小径にした上で、中間積層部16、外不織布層11および内不織布層12の各目付けを抑えることにより総目付けを下げても、通気度を同等のものとすることができることが確認された。
【0061】
次に、表2に示した複合物性における引張強度について検討すると、比較例1と、実施例1〜5と、で、複合物性における引張強度がほぼ同等になっていることが確認された。
また、表2に示した複合物性における引張強度と単品物性における引張強度について検討すると、実施例1、2、4、5のように、単品物性における引張強度が比較例1に比べて低い場合であっても、複合物性における引張強度が比較例1とほぼ同等にまで高められることが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1A、1B シート用パッド(発泡成形体)
2 発泡体
3 補強部材
11 外不織布層
12 内不織布層
13 中間不織布層
14、15 補助不織布層
16 中間積層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡原料が発泡することにより形成された発泡体と、
積層された複数の不織布層が一体化されてなり、前記発泡体が形成されるときに発泡原料が含浸することにより該発泡体の表面に一体に固着された補強部材と、を備える発泡成形体であって、
前記補強部材は、当該発泡成形体の最も外側に位置する外不織布層と、最も内側に位置する内不織布層と、これらの両不織布層の間に位置する中間積層部と、により構成され、
該中間積層部は、前記外不織布層および前記内不織布層それぞれを構成する繊維よりも小径の細繊維で構成された中間不織布層と、該細繊維よりも大径の補強繊維で構成された補助不織布層と、を有するとともに、これらの不織布層が接着により一体化されてなることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
請求項1記載の発泡成形体であって、
前記細繊維の繊維径は5μm以下であり、前記補強繊維の繊維径は15μm以上であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発泡成形体であって、
前記中間不織布層および前記補助不織布層は熱融着により接着され、
前記外不織布層、前記内不織布層および前記中間積層部は、機械的交絡法により一体化されていることを特徴とする発泡成形体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、
前記外不織布層および前記内不織布層それぞれをスパンボンド法により形成する不織布層形成工程と、
前記中間不織布層をメルトブローン法により形成するとともに前記補助不織布層をスパンボンド法により形成し、これらの不織布層を接着により一体化して前記中間積層部を形成する積層部形成工程と、
前記外不織布層、前記内不織布層および前記中間積層部を一体化して前記補強部材を形成する補強部材形成工程と、
該補強部材を金型のキャビティ内に配置するとともに該キャビティ内で発泡原料を発泡させ、発泡原料を前記補強部材に含浸させるとともに前記発泡体を形成する発泡工程と、を有することを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131032(P2012−131032A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282358(P2010−282358)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】