説明

発泡成形品およびその成形方法

【課題】主に、ソフト感の不足を解消すると共に、表面形状を自在にコントロールできる発泡成形品及びその成形方法を提供する。
【解決手段】表皮材4と、芯材5と、発泡材6とを有し、表皮材4が、製品形状に賦形され、発泡材6が、発泡成形によって表皮材4と芯材5との間に設けられた発泡成形品3であって、表皮材4と発泡材6との層間に、発泡材6よりも弱い力で弾性変形および復帰が可能なクッション材8が埋設され、クッション材8が、表皮材4の賦形時に、加熱された表皮材4の熱を利用して、予め表皮材4の内面部分に熱融着されると共に、発泡材6の発泡成形時に、表皮材4と一緒に発泡材6に一体化されたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡成形品およびその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内などに、インストルメントパネルやグローブボックスなどの車室内装部品が用いられている。このような車室内装部品には、発泡成形品によって構成されたものが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような発泡成形品には、表皮材と、芯材と、発泡材とを有する三層構造のものが知られている。この場合、表皮材は、製品形状に賦形されたものが使用されることになる。また、発泡材は、表皮材と芯材との間に設けられることになる。
【0004】
上記した発泡成形品は、表皮材と、芯材とを、発泡成形型へセットし、発泡成形型内へ発泡剤(薬液)を注入して発泡剤を発泡させることにより、表皮材と芯材との間に発泡材を設けるようにして成形されている。
【特許文献1】特開平3−69287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記発泡成形品およびその成形方法では、車室内装部品が比較的複雑な形状を呈しているので、複雑な形状をうまく再現できるようにするために、上記した発泡成形品では、発泡材を意図的に硬めに形成するようにしている。そのため、発泡成形品には、ソフト感が不足する、という問題があった。
【0006】
そこで、このようなソフト感の不足を解消するため、上記したような発泡成形品に対し、ソフト感を持たせたい箇所に部分的な凹部を設け、この凹部に、別部材として構成されたソフトパット部材を嵌め込むようなことが行われている。
【0007】
しかし、発泡成形品に設けた凹部に、別部材のソフトパット部材を嵌め込むようにした場合、ソフトパット部材が外部から直接見えてしまうので、外観品質が悪くなるという問題や、ソフトパット部材を用いることによって、製造工程が複雑になったり、製造設備を変更したり、製造コストが増大したりするなどの新たな問題をも生じることになる。
【0008】
また、ソフト感の不足を解消するために、発泡材を低密度で発泡させて柔らかくすることなども考えられるが、このようにすると、発泡成形品の形状再現性が低下することになると共に、発泡材の材質を変更する必要が生じ、更に、材質の変更によって様々な問題が派生することにもなってしまう。
【0009】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが発生することも考えられるが、そのようなものについては、本発明の実施例の中で説明することによって、この欄での記載に代えることができるものとする。但し、必要な場合には、この欄に流用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、表皮材と、芯材と、発泡材とを有し、前記表皮材が、製品形状に賦形され、前記発泡材が、発泡成形によって前記表皮材と芯材との間に設けられた発泡成形品において、前記表皮材と発泡材との層間に、発泡材よりも弱い力で弾性変形および復帰が可能なクッション材が埋設され、該クッション材が、表皮材の賦形時に、加熱された表皮材の熱を利用して、予め表皮材の内面部分に熱融着されると共に、発泡材の発泡成形時に、表皮材と一緒に発泡材に一体化されたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された発明は、表皮材と、芯材とを、発泡成形型へセットし、発泡成形型内へ発泡剤を注入して発泡剤を発泡させることにより、表皮材と芯材との間に発泡材を設けて発泡成形品を成形する発泡成形品の成形方法において、前記発泡成形品の成形前に、表皮材の内面部分に、予めクッション材を熱融着しておくと共に、前記発泡成形品の成形中に、発泡成形型のクッション材と対応する部分に設けられたスライド型を、クッション材の厚み方向へ動かして、スライド型の位置変更・位置調整を行うことにより、発泡成形型から脱型された発泡成形品の、クッション材と対応する部分の表面形状をコントロールすることを特徴としている。
【0012】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、表皮材と発泡材との層間に埋設されたクッション材は、発泡材よりも弱い力で弾性変形および復帰することが可能なので、発泡成形品に対するソフト感の不足を解消することが可能となる。即ち、クッション材の追加のみによって簡単にソフト感を向上することができる。クッション材は、表皮材の真下の浅い位置に設けられるので、ソフト感を直接的に感得することができる。また、クッション材を、表皮材と発泡材との層間に埋設することにより、クッション材は外部からは直接見えないので、外観品質の低下を招くようなことがない。この際、クッション材を、予め表皮材の内面部分に取付けるようにすることにより、表皮材と発泡材との層間に、簡単にクッション材を埋設することができる。そして、クッション材を、予め表皮材の内面部分に取付けるようにすることにより、既存の設備を大きく変更せずにほぼそのまま使用することができ、また、製造工程の複雑化や、製造コストの上昇をほとんど招くことがない。更にまた、賦形するために加熱された表皮材の熱を利用して、クッション材を、表皮材の内面部分に熱融着するようにしたことにより、クッション材の取付けに特別な手間やコストなどがかからず、例えば、クッション材を表皮材に接着する場合などと比べて、製造工程や製造コストを抑えることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、上記と同様の作用効果を得ることができると共に、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、発泡成形品の成形中にスライド型を、クッション材の厚み方向へ動かして、スライド型の位置変更・位置調整を行うことによって、発泡成形型から脱型された発泡成形品の、クッション材と対応する部分の表面形状をコントロールして、例えば、面一形状部や、凸形状部や、凹形状部や、徐変部などの表面意匠部を自在に作ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、主に、ソフト感の不足を解消すると共に、表面形状を自在にコントロールできるようにすることを目的としている。
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0017】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0018】
図1〜図15は、この発明の実施例およびその変形例を説明するものである。
【0019】
自動車などの車両には、車室内などに、図1に示すようなインストルメントパネル1や、グローブボックスなどの車室内装部品2が用いられている。このような車室内装部品2を、以下のような、発泡成形品3によって構成する。
【0020】
(発泡成形品3について)
上記した発泡成形品3を、図2に示すように、表皮材4と、芯材5と、発泡材6とを有する三層構造のものとする。この場合、発泡材6は、発泡成形によって表皮材4と芯材5との間に設けられる。なお、三層構造とは、表皮材4の層(表皮材層)と、芯材5の層(芯材層)と、発泡材6の層(発泡材層)とを有する、という意味である。
【0021】
ここで、表皮材4には、TPO、TPU、PVC/ABSなどの、加熱することによって曲げ変形が可能となる比較的柔軟な樹脂素材が使用される。表皮材4には、単層のシート状のものが用いられる(シート状表皮素材7、図4参照)。このシート状表皮素材7は、製品(表面)形状(車室内装部品2の表面形状)となるように予め賦形されて表皮材4とされる。なお、TPOはサーモプラスチックオレフィン、TPUはサーモプラスチックウレタン、PVCは塩化ビニールである。
【0022】
芯材5には、硬質の樹脂素材が使用される。この芯材5は、予め射出成形によって製品(裏面)形状(車室内装部品2の裏面形状)となるように形成される。芯材5は、可能な限り全体の肉厚が一定となるように構成するのが、射出成形上、強度上などの点で、最も好ましい。
【0023】
発泡材6には、PUなどの弾性変形および(弾性)復帰が可能な発泡性の樹脂素材が使用される。発泡材6は、車室内装部品2の持つ複雑な形状がうまく再現できるようにするために、高密度(硬め)に形成される。発泡材6は、可能な限り全体の肉厚が一定となるように構成するのが、発泡成形上、形状再現性上、クッション性能上などの点で、最も好ましい。なお、PUはポリウレタンである。
【0024】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0025】
発泡成形品3の内部、特に、表皮材4と発泡材6との層間に、発泡材6よりも弱い力で弾性変形および(弾性)復帰が可能なクッション材8が埋設されるようにする。
【0026】
そして、このクッション材8を、表皮材4の賦形時に、(賦形のために)加熱された表皮材4の熱を利用して、予め表皮材4の内面部分に熱融着されたものとする(熱融着部および熱融着クッション材)。
【0027】
また、クッション材8を、発泡材6の発泡成形時に、表皮材4と一緒に発泡材6に一体化されたものとする(一体埋設型クッション材)。
【0028】
ここで、クッション材8には、上記したような材質の表皮材4に対して、熱融着可能な樹脂素材が使用される。しかも、この樹脂素材は、賦形時の表皮材4が持つ熱によって熱融着可能な材質のものとされる。この場合、クッション材8には、融着温度が200℃前後(例えば、150℃〜230℃、但し、熱ラミ材の場合には、150℃〜200℃)のものなどが用いられる。
【0029】
より具体的な組合せとしては、表皮材4が、上記したTPO、PVC/ABSなどの場合、クッション材8には、PPF、PEFなどを用いることができる。また、表皮材4が、上記したTPUなどの場合、クッション材8には、PPF、PEF、PUFなどを用いることができる。なお、PPFはポリプロピレンフォーム、PEFはポリエチレンフォーム、PUFはポリウレタンフォームである。
【0030】
クッション材8は、材質上、および、製造上、発泡材6のように自由な形状や肉厚に形成して使用することが難しいので、予め形成されているシート状または板状のものなどを使用するのが好ましい。
【0031】
このクッション材8は、表皮材4と発泡材6との層間の全面に対して設置することができる(全面設置クッション材)。このように、クッション材8を全面に設ける場合には、クッション材8は、表皮材4とほぼ同じ大きさのものを、表皮材4と重ねて使用する。
【0032】
また、クッション材8は、表皮材4と発泡材6との層間に対して、例えば、図1の破線(後述する線状加飾部81など)の内側の部分の内部などに、部分的に設置することができる(部分設置クッション材)。このように、クッション材8を部分的に設ける場合には、クッション材8は、原則として自由な形状や大きさのものを使用することができる。例えば、クッション材8は、矩形状や、円形状や、環状や、円弧状のものなどとすることができる。但し、クッション材8は、設置する部分の形状に合わせた形状にするのは言うまでもない。
【0033】
更に、好ましくは、図2に示すように、芯材5の、クッション材8と対応する部分に、クッション材8の厚みとほぼ同じ(または一回り程度大きい)大きさおよび深さの凹部9を形成しておくようにする。
【0034】
(表皮材4の賦形について)
上記した表皮材4は、真空成形によって賦形されるようにする。例えば、表皮材4は、図3〜図5に示すような真空成形装置(真空凹引装置11)を用いて賦形(真空凹引成形)される。
【0035】
この場合、真空凹引装置11は、図3に示すように、一対の上型12と下型13とを有している。上型12と下型13とは、上下方向14に対して相対的に近接離反動可能に構成されている。この場合、上型12が昇降可能に設置されると共に、下型13が固定配置とされている(または、昇降可能としても良い)。そして、上型12は、下面側に凸形状の成形面15を有するコア型16とされ、下型13は、上面側に凹形状の成形面17を有するキャビティ型18とされている。但し、コア型16とキャビティ型18とについては、この構成に限るものではなく、例えば、左右方向に対して相対的に近接離反動可能に構成された左右型などとしても良い。
【0036】
そして、コア型16には、内部の上面側に真空室21が形成され、この真空室21と、成形面15のクッション材8を設置する部分(クッション材設置部)との間には、クッション材8を真空吸着および吸着解除可能な真空引用孔部22が連通形成されている。この真空引用孔部22は、クッション材8の形状や大きさなどに合わせて、適宜位置に適数設けられる。真空室21には、図示しない真空源が接続されている。そして、これらにより、真空凹引装置11に、クッション材吸着機構部24が構成される。このクッション材吸着機構部24は、上記したように、意匠面を持たないコア型16に対して設けられる。なお、特に図示しないが、成形面15のクッション材8を設置する部分に対し、クッション材8を位置決可能な位置決部を設けるようにしても良い。この位置決部は、例えば、クッション材8と同じ形状を有する軽い窪みなどとすることができる。
【0037】
一方、キャビティ型18には、内部の下面側に真空室25が形成され、この真空室25と、成形面17との間には、表皮材4を真空凹引きおよび解除可能な真空引用孔部26が連通形成されている。真空引用孔部26は、表皮材4の形状や大きさなどに合わせて複数設けられ、要所ごとに分散配置されている。真空室25には、図示しない上記とは別の真空源が接続されている。
【0038】
なお、型締め時、コア型16の成形面15と、キャビティ型18の成形面17との間には、所要のプレス用空間28が形成される。また、成形面15と成形面17との縁部間などには、位置決ピン31およびピン受孔32などの位置決部33が設けられる。
【0039】
また、コア型16とキャビティ型18との内部には、加熱冷却用媒体を流すための加熱冷却用媒体流路34,35が、それぞれ設けられている。加熱冷却用媒体流路34,35は、特に、成形面15、成形面17の周辺に対して、適宜分散配置されている。
【0040】
そして、図3に示すように、キャビティ型18に対しコア型16を上昇させた型開き状態にして、真空室21および真空引用孔部22に真空圧を作用させることにより、コア型16の成形面15にクッション材8を真空吸着させる。
【0041】
次に、図4に示すように、上記型開き状態にて、シート状表皮素材7の端部をクランプ装置37で掴み、外部に設けられた図示しない加熱装置の位置へ搬送して、加熱装置でシート状表皮素材7を上記したような所定の温度まで加熱、軟化させ、その後、クランプ装置37を用いて加熱、軟化されたシート状表皮素材7を、キャビティ型18の成形面17上へと移動させるようにする。なお、上記の他に、型開き状態にて、キャビティ型18の成形面17上にシート状表皮素材7を配置した後、図示しない加熱装置をキャビティ型18とコア型16との間へ移動し、加熱装置を用いてシート状表皮素材7を上記したような所定の温度まで加熱、軟化させた後に、加熱装置を元の位置に退避させるようにすることなどもできる。
【0042】
その後、図5に示すように、キャビティ型18に対しコア型16を下降させた型締め状態にして、シート状表皮素材7にプレス圧を作用させる。この時、真空室25および真空引用孔部26に真空圧を作用させることにより、表皮材4を真空凹引きする。更に、必要に応じて、コア型16とキャビティ型18との内部にそれぞれ設けた加熱冷却用媒体流路34,35に、加熱冷却用媒体を流すことにより、コア型16とキャビティ型18との内部の温度を管理する。
【0043】
そして、型締めにより、上記したように、表皮材4の内面部分に、クッション材8が圧接され、加熱された表皮材4の熱によって、予め表皮材4の内面部分にクッション材8が熱融着される。
【0044】
こうして、表皮材4が車室内装部品2の形状に賦形され、表皮材4にクッション材8が熱融着されたら、表皮材4およびクッション材8に対する吸着を解除し、型開き状態にして、クッション材8が一体化された表皮材4を脱型する。この時、表皮材4には、上記した位置決ピン31と対応する位置決部38も形成される。
【0045】
このように、加熱した表皮材4を真空成形によって賦形する場合に、表皮材4の賦形時に、賦形のために加熱された表皮材4の熱を利用して、予め表皮材4の内面部分に発泡材6よりも弱い力で弾性変形および復帰が可能なクッション材8を熱融着することにより、上記したように、クッション材8の取付けに特別な手間やコストなどがかからず、例えば、クッション材8を表皮材4に接着する場合などと比べて、製造工程や製造コストを抑えることができる。
【0046】
(発泡材6の発泡成形、或いは、発泡成形品3の成形について)
上記した発泡成形品3は、例えば、図6〜図8に示すような発泡成形装置41を用いて成形される。
【0047】
この場合、発泡成形装置41は、発泡成形型42として、一対の上型43と下型44とを有している。上型43と下型44とは、上下方向14に対して相対的に近接離反動可能に構成されている。この場合、上型43が昇降可能に設置されると共に、下型44が固定配置とされている(または、昇降可能としても良い)。そして、上型43は、下面側に凸形状の成形面45を有するコア型46とされ、下型44は、上面側に凹形状の成形面47を有するキャビティ型48とされている。但し、コア型46とキャビティ型48とについては、この構成に限るものではなく、例えば、左右方向に対して相対的に近接離反動可能に構成された左右型などとしても良い。
【0048】
そして、コア型46には、発泡剤51(薬液、図7参照)を注入するための、発泡剤注入装置部52が設置されている。なお、図7では、発泡剤51の注入経路になどについては、都合により図示を省略しているが、この部分の詳細構造は、周知のものと同じにすれば良い。
【0049】
一方、キャビティ型48には、クッション材8と対応する部分に、貫通孔部53)が形成され、この貫通孔部53にスライド型54が、クッション材8の厚み方向(この場合には上下方向となっている)へ移動自在に設けられている。そして、キャビティ型48の内部には、このスライド型54を、上記した厚み方向へ移動させるシリンダ装置などのアクチュエータ55(スライド型移動装置)が設けられている。そして、これらにより、発泡成形品3のクッション材8と対応する部分の表面形状をコントロール可能な表面形状コントロール機構部56が構成されている。
【0050】
なお、型締め時、コア型46の成形面45と、キャビティ型48の成形面47との間には、所要の成形空間57が形成される。また、成形面45と成形面47との縁部間などには、上記した真空凹引装置11の場合と同様の、位置決ピン61およびピン受孔62などの位置決部63が設けられる。なお、位置決ピン61は、表皮材4の位置決部38と対応する位置に設けられる。また、芯材5の位置決部63と対応する部分には、表皮材4の位置決部38と対応する位置決部64が予め形成されている。
【0051】
また、コア型46とキャビティ型48との内部には、加熱冷却用媒体を流すための加熱冷却用媒体流路65,66が、それぞれ設けられている。加熱冷却用媒体流路65,66は、特に、成形面45、成形面47の周辺に対して、適宜分散配置されている。
【0052】
更に、発泡成形品3の形状が複雑な場合には、必要に応じて、キャビティ型48に対して、表皮材吸着機構部67を設けるようにすることもできる。この表皮材吸着機構部67は、キャビティ型48の内部の下面側に形成した真空室68と、この真空室25と成形面17との間に連通形成した、表皮材4を真空凹引きおよび解除可能な真空引用孔部69とによって構成される。真空引用孔部26は、表皮材4の形状や大きさなどに合わせて複数設けられ、要所ごとに分散配置される。真空室25には、図示しない真空源が接続される。なお、上記した貫通孔部53とスライド型54との隙間も、真空引用孔部26として使用することが可能である。
【0053】
そして、図6に示すように、キャビティ型48に対しコア型46を上昇させた型開き状態にして、コア型46の成形面45に芯材5をセットすると共に、キャビティ型48の成形面47に表皮材4をセットする。必要な場合には、表皮材吸着機構部67を用いて、表皮材4を真空吸着させるようにする。この際、表皮材4には、上記のようにして、車室内装部品2の形状に賦形されると共に、その内面部分に、クッション材8が一体に熱融着されたものを使用する。
【0054】
次に、図7に示すように、キャビティ型48に対しコア型46を下降させた型締め状態にする。そして、発泡剤注入装置部52から成形空間57内の表皮材4と芯材5との間の部分へ発泡剤51を注入して、発泡剤51を発泡させることにより、表皮材4と芯材5との間に発泡材6を設けて発泡成形品3を成形する。なお、キャビティ型48に対し、コア型46を開いた状態で 発泡剤51を注入する場合もある。この時、必要に応じて、コア型46とキャビティ型48との内部にそれぞれ設けた加熱冷却用媒体流路65,66に、加熱冷却用媒体を流すことにより、コア型46とキャビティ型48との内部の温度を管理する。
【0055】
この際、図2に示すように、芯材5の、クッション材8と対応する部分に、クッション材8の厚みとほぼ同じ大きさおよび深さの凹部9を形成しておくようにすると、この部分の成形空間57の幅(発泡材6の厚み)が、他の部分の厚みと等しくなるので、発泡剤51の流れを阻害することがなくなり、流れの阻害による不具合の発生を低減または防止することができる。また、発泡材6の厚みが他の部分と等しくなるので、発泡材6の厚み減少による触感の低下を防止することができる。
【0056】
こうして、表皮材4と芯材5との間に発泡材6が設けられたら(発泡材6が固まったら)、図8に示すように、型開き状態にして、発泡成形品3を脱型する。
【0057】
なお、表面形状コントロール機構部56としてのスライド型54を備えていない発泡成形装置41の場合には、発泡時に、発泡剤51の発泡圧力(最大で0.20MPa程度)によってクッション材8が押し潰されると共に、脱型後に、キャビティ型48による押えがなくなることによって、押し潰されたクッション材8が弾性復帰するので、得られる発泡成形品3は、クッション材8が弾性復帰した分だけ、不用意に部分的に表面に突出したものとなる。即ち、設計とは異なる表面形状を有する不具合品になってしまう。
【0058】
これに対し、この実施例では、発泡成形品3の成形中に、図7に示すように、発泡成形型42のクッション材8と対応する部分に設けられた表面形状コントロール機構部56のスライド型54を、クッション材8の厚み方向へ動かして、スライド型54の位置変更・位置調整を行うようにすることにより、発泡成形型42から脱型された発泡成形品3の、クッション材8と対応する部分の表面形状をコントロール(自在に設定、調整など)して、表面意匠部71を任意に形成し得るようにする。
【0059】
即ち、先ず、上記した発泡圧力によってクッション材8が押し潰される量だけ、スライド型54を芯材5側へ押込むようにすることにより、脱型後に、図2に示すように、発泡成形品3の弾性復帰したクッション材8の部分を、意図的に発泡成形品3の表面と面一にする(面一形状部72などの表面意匠部71を形成する)ことができる。
【0060】
或いは、上記した発泡圧力によってクッション材8が押し潰される量よりも、スライド型54を芯材5側へ押込む量を少なくしたり、或いは、スライド型54を芯材5とは反対側へ引き戻すことにより、脱型後に、図9に示すように、発泡成形品3の弾性復帰したクッション材8の部分を、意図的に発泡成形品3の表面よりも突出させる(凸形状部73などの表面意匠部71を形成する)ことができる。
【0061】
反対に、上記した発泡圧力によってクッション材8が押し潰される量よりも多く、スライド型54を芯材5側へ押込むことにより、脱型後に、特に図示しないが、発泡成形品3の弾性復帰したクッション材8の部分を、意図的に発泡成形品3の表面よりも凹ませる(凹形状部などの表面意匠部71を形成する)ことができる。
【0062】
なお、上記した表面形状コントロール機構部56としてのスライド型54を備えていない発泡成形装置41の場合にできる突出した形状と、表面形状コントロール機構部56としてのスライド型54を備えた発泡成形装置41によって形成される凸形状部73とは、不用意に形成されてしまった形の整わないものであるか(設計とは異なる不具合形状)、意図的に最適に設定された不たちの整ったものであるか(設計通りの良好形状)の違いにより、質的に全く異なるものとなることは言うまでもない。
【0063】
この際、図10に示すように、発泡成形型42のキャビティ型48と、キャビティ型48に設けられたスライド型54との(成形面47)間に、面方向に対する伸縮が可能な弾性を有するシート状の型跡防止用部材74を設けて(張設して)、キャビティ型48とスライド型54との間の段差発生を解消させることにより、発泡成形品3の表面にスライド型54の痕跡が発生するといった見栄えの低下を防止または低減し得るようにすることができる。なお、型跡防止用部材74は、例えば、スライド型54よりも一回りか二回り程度大きくなるように形成すると共に、その周縁部を、キャビティ型48におけるスライド型54の周囲に形成した差込溝75へ差込み固定するようにして設置する。この際、キャビティ型48の上面は、型跡防止用部材74に固定せずに、接し得る状態にしておくようにする。
【0064】
更に、図11に示すように、クッション材8の端縁部に緩やかな傾斜カット部77を適宜設けることにより、凸形状部73や凹形状部の周縁部を徐変形状(徐変部78)として、凸形状部73や凹形状部の存在を外部から目立ち難くすることができる。なお、クッション材8は、変形容易であるため、傾斜カット部77は、クッション材8の表面側および裏面側のどちらに形成しても同様の作用効果を得ることが可能である。また、徐変部78は、クッション材8の位置ズレを外部目立たなくするという効果をも有している。
【0065】
或いは、反対に、図9に示すように、クッション材8の端縁部に上記した傾斜カット部77を設けないようにしたり(矩形カット部76)、傾斜カット部77を急角度のものとしたりすることにより、凸形状部73や凹形状部の周縁部を急変形状(急変部79)として、凹形状部や凸形状部73の存在を目立たせて、そのソフト感を際立たせる(演出したり強調したりする)ようにすることもできる。
【0066】
更に、特に、急変部79とした場合になどに、図1に示すように、表皮材4に、クッション材8の周縁部を囲む、スティッチ(縫目線)やキャラクターラインなどの線状加飾部81または枠状加飾部を入れることにより、凹形状部や凸形状部73によるソフト感の演出を、より一層を際立たせるようにすることもできる。
【0067】
なお、発泡成形品3の表面形状を上記したように設計通りにコントロールするために、発泡成形装置41内でスライド型54を移動するタイミングは、型締めから型開きまでの間に行うようにする。好ましくは、発泡剤51の注入開始と同時、または、発泡剤51の注入中、或いは、発泡剤51の注入完了後、発泡剤51の発泡によって発泡空間が充満されるまで、などとするのが良い。また、スライド型54は、型開時には、初期位置(キャビティ型48の成形面47と面一の状態)に戻しておくようにする。
【0068】
こうして得られた、この実施例の発泡成形品3は、図12に示すように、表皮材4の上からクッション材8の部分に触れると、図13のグラフに示すように、最初に最も柔らかいクッション材8が潰れるため、その間は、力を入れなくても簡単に窪む、非常にソフトな感じを得ることができる(図中A部参照)。そして、クッション材8が潰れた後は、押すに従って発泡材6が圧縮されて行くため、徐々に硬さが増すが、発泡材6の硬さの増し方の感触によって、芯材5に突き当たる感じが起こらず、十分な厚み感を得ることができる(図中B部参照)。なお発泡成形装置41からの脱型後のクッション材8の復元によって、表皮材4が僅かに伸ばされて部分的に若干薄くなることによる、ソフト感の向上も僅かではあるが加えられるので更に良好なものとなる。
【0069】
これに対し、クッション材8を備えていない、表皮材4と、発泡材6と、芯材5とからなる従来の発泡成形品3の場合は、表皮材4の上から触れると、図14のグラフに示すように、最初から硬めの発泡材6を押す感じがする。そして、発泡材6に窪みが生じるまでにある程度の力を要するので、ソフト感が劣るように感じられる。更に押すと、発泡材6が圧縮されて行くため、徐々に硬さが増すが、発泡材6の硬さの増し方の感触によって、芯材5に突き当たる感じが起こらないので、十分な厚み感は得ることができる。
【0070】
また、試しに、表皮材4とクッション材8と発泡材6とを備えて、発泡材6がないものを作って比べて見ると、表皮材4の上から触れた時に、図15に示すように、クッション材8がすぐに潰れるので、力を入れなくても簡単に窪む、非常にソフトな感じを得ることができる。そして、押してみると、すぐにクッション材8が潰れきってしまうので、いきなり芯材5に突き当たる感じがし(底付き感)、全く厚み感を得ることができない。
【0071】
このように、この実施例の発泡成形品3は、ソフト感と、厚み感とを両立させることができるので、これまでにはなかった、高級な感触を得ることができる。
【0072】
そして、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0073】
(1)表皮材4と、芯材5と、発泡材6とを有し、表皮材4が、製品形状に賦形され、発泡材6が、発泡成形によって表皮材4と芯材5との間に設けられた発泡成形品3であって、表皮材4と発泡材6との層間に、発泡材6よりも弱い力で弾性変形および復帰が可能なクッション材8が埋設され、クッション材8が、表皮材4の賦形時に、加熱された表皮材4の熱を利用して、予め表皮材4の内面部分に熱融着されると共に、発泡材6の発泡成形時に、表皮材4と一緒に発泡材6に一体化されたものとすることによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0074】
以下、箇条書きにする。
・表皮材4と発泡材6との層間に埋設されたクッション材8は、発泡材6よりも弱い力で弾性変形および復帰することが可能なので、発泡成形品3に対するソフト感の不足を解消することが可能となる。即ち、クッション材8の追加のみによって簡単にソフト感を向上することができる。
・クッション材8は、表皮材4の真下の浅い位置に設けられるので、ソフト感を直接的に感得することができる。
・また、クッション材8を、表皮材4と発泡材6との層間に埋設することにより、クッション材8は外部からは直接見えないので、外観品質の低下を招くようなことがない。
・この際、クッション材8を、予め表皮材4の内面部分に取付けるようにすることにより、表皮材4と発泡材6との層間に、簡単にクッション材8を埋設することができる。
・そして、クッション材8を、予め表皮材4の内面部分に取付けるようにすることにより、既存の設備を大きく変更せずにほぼそのまま使用することができ、また、製造工程の複雑化や、製造コストの上昇をほとんど招くことがない。
・更にまた、賦形するために加熱された表皮材4の熱を利用して、クッション材8を、表皮材4の内面部分に熱融着するようにしたことにより、クッション材8の取付けに特別な手間やコストなどがかからず、例えば、クッション材8を表皮材4に接着する場合などと比べて、製造工程や製造コストを抑えることができる。
【0075】
(2)表皮材4と、芯材5とを、発泡成形型42へセットし、発泡成形型42内へ発泡剤51を注入して発泡剤51を発泡させることにより、表皮材4と芯材5との間に発泡材6を設けて発泡成形品3を成形する発泡成形品3の成形方法において、発泡成形品3の成形前に、表皮材4の内面部分に、予めクッション材8を熱融着しておくと共に、発泡成形品3の成形中に、発泡成形型42のクッション材8と対応する部分に設けられたスライド型54を、クッション材8の厚み方向へ動かして、スライド型54の位置変更・位置調整を行うことにより、発泡成形型42から脱型された発泡成形品3の、クッション材8と対応する部分の表面形状をコントロールすることによって、上記と同様の作用効果を得ることができる。更に、以下のような作用効果を得ることができる。
【0076】
以下、箇条書きにする。
・発泡成形品3の成形中にスライド型54を、クッション材8の厚み方向へ動かして、スライド型54の位置変更・位置調整を行うことによって、発泡成形型42から脱型された発泡成形品3の、クッション材8と対応する部分の表面形状をコントロールして、例えば、面一形状部72や、凸形状部73や、凹形状部や、徐変部78などの表面意匠部71を自在に作ることができるようになる。
・これにより、これまでは、コントロールができずに不具合品と看做されてきた凸形状部73や凹形状部を、自在且つ積極的に再現して製品に利用することが可能となる。
・即ち、スライド型54の位置変更・位置調整によって、簡単に、表面形状に様々なバリエーションを有する発泡成形品3を作り分けることができるようになる。
・なお、スライド型54の位置変更・位置調整を行わないようにすれば、これまで通りの、クッション材8のない発泡成形品3を成形することもできる。
【0077】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例にかかる発泡成形品としてのインストルメントパネル概略斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の発泡成形品の製造に使用される真空凹引装置の側面図である。
【図4】図3の作動図である。
【図5】図4に続く作動図である。
【図6】図1の発泡成形品の製造に使用される発泡成形装置の側面図である。
【図7】図6の作動図である。
【図8】図7に続く作動図である。
【図9】図1の発泡成形品のクッション材部分(凸形状部、徐変部)の拡大断面図である。
【図10】型跡防止用部材を設けたスライド型部分の拡大断面図である。
【図11】図1の発泡成形品のクッション材部分(凸形状部、急変部)の拡大断面図である。
【図12】図1の発泡成形品に対する感触テストの状態示す断面図である。
【図13】発泡材とクッション材とを有する発泡成形品の場合の荷重と変位との関係を示すグラフである。
【図14】発泡材のみを有する発泡成形品の場合の荷重と変位との関係を示すグラフである。
【図15】クッション材のみを有する発泡成形品の場合の荷重と変位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
3 発泡成形品
4 表皮材
5 芯材
6 発泡材
8 クッション材
42 発泡成形型
51 発泡剤
54 スライド型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材と、芯材と、発泡材とを有し、
前記表皮材が、製品形状に賦形され、前記発泡材が、発泡成形によって前記表皮材と芯材との間に設けられた発泡成形品において、
前記表皮材と発泡材との層間に、発泡材よりも弱い力で弾性変形および復帰が可能なクッション材が埋設され、
該クッション材が、表皮材の賦形時に、加熱された表皮材の熱を利用して、予め表皮材の内面部分に熱融着されると共に、発泡材の発泡成形時に、表皮材と一緒に発泡材に一体化されたことを特徴とする発泡成形品。
【請求項2】
表皮材と、芯材とを、発泡成形型へセットし、発泡成形型内へ発泡剤を注入して発泡剤を発泡させることにより、表皮材と芯材との間に発泡材を設けて発泡成形品を成形する発泡成形品の成形方法において、
前記発泡成形品の成形前に、表皮材の内面部分に、予めクッション材を熱融着しておくと共に、
前記発泡成形品の成形中に、発泡成形型のクッション材と対応する部分に設けられたスライド型を、クッション材の厚み方向へ動かして、スライド型の位置変更・位置調整を行うことにより、
発泡成形型から脱型された発泡成形品の、クッション材と対応する部分の表面形状をコントロールすることを特徴とする発泡成形品の成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−76239(P2010−76239A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246740(P2008−246740)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】