説明

発泡絶縁電線及びその製造方法

【課題】 本発明は、導体の外方に発泡度の異なる少なくとも2層からなる発泡絶縁体を被覆した発泡絶縁電線を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、導体1の外方にその隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる第1の発泡絶縁体3を設けると共に、第1の発泡絶縁体2の外周に発泡度が30〜60%の少なくとも1層の第2の発泡絶縁体3を設けた発泡絶縁電線にあり、これにより、導体側の発泡度が高く、外側の発泡度が低い構造とした、減衰量の小さい優れたケーブル特性の電線が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の外方に発泡度の異なる少なくとも2層からなる発泡絶縁体を被覆することにより、優れた特性を有するようにした発泡絶縁電線(ケーブル)及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年種々の電子機器で使用される絶縁電線の場合、例えば高周波用の同軸ケーブルでは、使用周波数帯域がGHzオーダーに達している。GHz帯域では、低周波数帯域よりも減衰量の小さいケーブル特性が要求されるため、導体(中心導体)上に被覆される絶縁体にあっては、発泡形成することが行われている(特許文献1〜2)。
【特許文献1】特許3227091号
【特許文献2】特許2668198号
【0003】
この絶縁体としては、ポリエチレン系樹脂の他に、熱可塑性フッ素系樹脂、例えばテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)なども用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような絶縁体の発泡にあたっては、押出時の加熱により発泡する化学物質を樹脂コンパウンド中に充填させて行う化学発泡法や、押出時に外部から窒素ガスや炭酸ガスなどを樹脂コンパウンド中に導入させて行う物理発泡法が採用されている。
しかし、これらの方法のみでは、高発泡度で均一かつ微細な発泡絶縁体を得ることは困難な状況にある。
【0005】
このため、従来種々の改良が試みられている。例えば樹脂コンパウンド中に発泡の核となる物質、即ち、発泡核剤を予め添加して発泡を促進することが提案されている。物理発泡法で、発泡核剤として窒化ホウ素(BN)を使用する方法がある(引用文献3)。また、導体の外周に中空コア(長手方向に螺旋状の隔壁を設けて隔壁間に空隙溝を形成してなる構造体)を被覆させる方法もある(引用文献4)。さらに、導体の外周に発泡度をグラデーション(傾斜)を持たせた絶縁体を被覆させる方法もある(引用文献5)。
【特許文献3】特開平01−172431号
【特許文献4】特開2004−055144号
【特許文献5】特願2005−216207号
【0006】
しかしながら、窒化ホウ素の使用による発泡では、高発泡度化などの点に限界があった。一方、中空コア構造の発泡絶縁体による場合、発泡度の向上と低損失化は得られるものの、中空コア構造では後工程における加工性の問題や外部導体の種類が制限されるなどの問題があった。また、中空形状の保持にも問題がある。発泡度のグラデーション構造化の場合も、発泡度の向上と低損失化は可能なものの、グラデーション形成の製造方法が難しく、発泡度の組み合わせ(発泡の傾斜度)には限界があるなどの問題があった。
【0007】
このような状況下にあって、本発明者は、発泡押出において、経験則から押出条件によっては、特異な形状の発泡形態が得られることに着目して、導体の外方にその隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる発泡絶縁体(第1の発泡絶縁体)を設けると共に、この第1の発泡絶縁体の外周に、少なくとも一層の通常の発泡絶縁体、例えば発泡度が30〜60%程度の発泡絶縁体(第2の発泡絶縁体)を設けたところ、良好な結果が得られることを見い出した。
【0008】
ここで、隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる発泡絶縁体とは、経験的にプレッシャー・ダイを備えた押出機を用いて押出した場合、押出条件によっては、樹脂押出物が多数の細長い風船状に押出されて、これらの多数の風船状の樹脂中空体が、発泡絶縁体として、導体の外周に連なって被覆された状態をいう。この場合、風船状の樹脂中空体の隔壁部分以外は、中空となるため、結果として、高い中空度(発泡度)の発泡絶縁体が得られることになる。この発泡度は、押出条件にもよるが、80〜95%程度に達するものを容易に得られることが分った。
【0009】
本発明は、この観点に立ってなされたもので、発泡度の異なる少なくとも2層からなる発泡絶縁体、即ち、風船状の樹脂中空体からなる第1の発泡絶縁体と、通常の発泡度の第2の発泡絶縁体からなる、優れた特性の発泡絶縁電線及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明は、導体の外方にその隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる第1の発泡絶縁体を設けると共に、前記第1の発泡絶縁体の外周に発泡度が30〜60%程度である少なくとも1層の第2の発泡絶縁体を設けたことを特徴とする発泡絶縁電線にある。
【0011】
請求項2記載の本発明は、前記第1及び第2の発泡絶縁体の熱可塑性樹脂コンパウンドのベース樹脂が、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、又はポリテトラフルオロエチレンなどの熱可塑性フッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発泡絶縁電線にある。
【0012】
請求項3記載の本発明は、前記第1及び第2の発泡絶縁体の発泡剤が、窒素ガス、炭酸ガス、ブタン、イソブタン、プロパン、代替フロンなどの物理発泡剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡絶縁電線にある。
【0013】
請求項4記載の本発明は、前記第1及び第2の発泡絶縁体の発泡核剤が、窒化ホウ素、タルク、クレイ、ゼオライト、カープレックス、シリカ、ホウ酸金属塩などの物理発泡核剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡絶縁電線にある。
【0014】
請求項5記載の本発明は、請求項1〜4のいずれかの発泡絶縁電線において、前記第1及び第2の発泡絶縁体を、押出機の発泡押出条件を適宜制御して、当該押出機のプレッシャー・ダイから導体の外方の長手方向に同時押出により被覆させることを特徴とする発泡絶縁電線の製造方法にある。
【0015】
請求項6記載の本発明は、前記押出機の樹脂圧が、8〜25MPaであることを特徴とする請求項5記載の発泡絶縁電線の製造方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡絶縁電線及びその製造方法によると、その構成から、発泡度の高い、隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる第1の発泡絶縁体と、通常の発泡度、例えば発泡度が30〜60%である少なくとも1層の第2の発泡絶縁体を、押出機での発泡押出により、簡単に設けることができる。そして、第1の発泡絶縁体の発泡度は、80〜95%程度の高発泡度で、第2の発泡絶縁体の発泡度は、30〜60%程度の発泡度であるため、得られる発泡絶縁電線(ケーブル)としては、導体側の発泡度が高く、良好な特性、即ち減衰量の小さいケーブル特性が確保される。
【0017】
また、特に第1の発泡絶縁体は、上記したように、特異な形状として多数の風船状の樹脂中空体が、発泡絶縁体として、導体の外周に連なって被覆された状態となるが、全体の形状保持力も高く、容易に潰れたりすることもない。従って、後処理(加工)なども容易に行える。高周波用の同軸ケーブルでは、編組導体などの外部導体やシースなどの被覆が何ら問題なく行える。
【0018】
また、発泡絶縁体の熱可塑性樹脂コンパウンドのベース樹脂として、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの熱可塑性フッ素系樹脂を用いた場合、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに比較して、耐熱性、耐薬品性、屈曲性、難燃性などにおいて良好な特性が得られる。
【0019】
そして、その製造方法にあっては、第1及び第2の発泡絶縁体を成形するにおいて、押出機の発泡押出条件を適宜制御して、押出機のプレッシャー・ダイから導体の外方の長手方向に同時押出により被覆させるため、良好な生産性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明電線の発泡絶縁体に用いる熱可塑性樹脂コンパウンドのベース樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば、特に問わない。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなども使用することができる。しかし、好ましくは、耐熱性、耐薬品性、屈曲性、難燃性などの特性に優れた熱可塑性フッ素系樹脂、例えばテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いるものとする。
ここで、発泡に適する特性としては、ASDTM−D1238−99に従って測定したメルトフローレイト(MFR)が10〜30g/10min程度のものが好ましい。このような特性のFEPの市販品としては、三井デュポンフロロケミカル社製のFR5030〔商品名、MFR=14〜24g/10min(372℃、2.16Kg)〕、PFAの市販品としては、三井デュポンフロロケミカル社製の440HP−J〔商品名、MFR=18〜22g/10min(372℃、5.0Kg)〕などを挙げることができる。
【0021】
これらのベース樹脂に添加される発泡核剤としては、窒化ホウ素、タルク、クレイ、ゼオライト、カープレックス、シリカ、ホウ酸金属塩などの物理発泡核剤などが使用できる。電線用絶縁体の場合、これらの物質の大きさ(粒径)は、メデアン径(d50)で1〜10μm、好ましくは1〜5μmのものがよい。その理由は、1μm未満のサブミクロンになると、二次凝集が生じて実質的に発泡に寄与する粒子数が減少するため、良好な発泡が得られなくなるからである。また、逆に10μmを超えるようになると、二次凝集の場合と同様単位体積中の発泡に寄与する粒子数が減少するため、やはり良好な発泡が得られなくなるからである。そして、発泡核剤の比表面積にもよるが、ベース樹脂に対する添加量としては、0.1〜1.5質量%程度が望ましい。
【0022】
この発泡核剤が添加されたベース樹脂は、熱可塑性樹脂コンパウンドとして、押出の前に混合するわけであるが、その際十分乾燥させることが望ましい。発泡核剤に水分が付着したままであると、発泡セル径の微細化が得られなくなる。また、発泡核剤の機能、即ち窒素ガスや炭酸ガスなどの発泡剤(発泡ガス)の吸着作用も低下するようになる。さらに、吸着された水分が発泡時蒸発して発泡作用に影響を及ぼすようになるため、発泡制御自体が困難となるからである。水分の蒸発があると、発泡ガス注入のガス圧の制御も困難となり、結果として発泡度の大きな変動が生じるようになる。さらに、水分吸着は季節や日時などによっても変動するため、この点でも安定した発泡度の確保が困難となる。さらにまた、電線では絶縁体中に水分が残存するようなことになると、種々の特定低下を招く原因ともなる。
【0023】
このような発泡核剤の添加された熱可塑性樹脂コンパウンドに対しては、必要により、その他の添加物、例えば、酸化防止剤、銅害防止剤、難燃剤、分散剤、無機フィラー、架橋剤、架橋助剤などを適宜添加することができる。
【0024】
このような熱可塑性樹脂コンパウンドを押し出し発泡させる際には、発泡剤として、押出機側に外部から、窒素ガス、炭酸ガス、ブタン、イソブタン、プロパン、代替フロンなどの物理発泡剤を注入する。その際用いる押出機としては、プレッシャー・ダイを備えた押出機を用いるものとする。そして、押出機の線速やスクリュー回転数などに依存する樹脂圧(押出機クロスヘッド〜プレッシャー・ダイ間圧)としては、8〜25MPaで調整するものとする。
【0025】
図1〜図2は、本発明に係る発泡絶縁電線の一例を示したものである。この発泡絶縁電線は発泡同軸ケーブルの場合で、図中、1は撚線導体などの導体(内部導体)、2はFEP、PFA又はPTFEなどの熱可塑性フッ素系樹脂をベース樹脂とし、その隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁2aからなる第1の発泡絶縁体、3はFEP、PFA又はPTFEなどの熱可塑性フッ素系樹脂をベース樹脂とし、例えば発泡度が30〜60%程度である第2の発泡絶縁体、4は金属編組やコルゲート銅パイプなどからなる金属層(外部導体)、5はポリエチレンなどからなるシース、6a,6bは必要により施される、厚さ50μm程度の内スキン層、外スキン層である。このケーブル外径は、特に限定されないが、約3〜50mm程度のものとして形成される。なお、必要に応じて絶縁体2と金属層3の間にアルミテープなどを入れることもできる。
【0026】
この発泡同軸ケーブルの製造方法の場合は、特に限定されいなが、必要により内部導体1の外周に内スキン層を設け、この上に、図3に示すような、プレッシャー・ダイ10を備えた押出機により第1及び第2の発泡絶縁体2、3を同時押出により被覆させる。
このプレッシャー・ダイ10は、クロスヘッドの先端部(電線走行部)をなすもので、押出ダイス部(口金)11とこの中に内蔵された円錐台形状のニップル(芯金)12とからなり、このニップル12は導体位置決め用の機能を有し、このセンター穴から走行導体(内スキン層6aの被覆された導体1)が送り出されるようになっている。
【0027】
通常熱可塑性フッ素系樹脂をベース樹脂とする樹脂コンパウンドの場合、図4に示すような、押出ダイス部21内に内蔵されたニップル22の形状として、円錐台形状部22aの先端に円筒部22bを設ける一方、さらに、円筒部22bの先端に円錐形状のガイド部23を設けた構造のチューピング・ダイ20を備えた押出機により行っている。その理由は樹脂の剪断速度をスーパーシア領域に合わせることが可能で、滑らかな外観の発泡絶縁体を高線速で得ることができるからである。
【0028】
しかし、今回、プレッシャー・ダイ10を備えた押出機を用いたのは、プレッシャー・ダイ10の場合、ニップル先端と押出ダイス部のダイス穴の間の樹脂圧を、チューピング・ダイ20に比較して、ダイス穴内のスペースが狭小であることから、大きな圧力(好ましくは8〜25MPaの圧力)として設定することができるからである。
この樹脂圧が高めに設定されたプレッシャー・ダイ10に対して、第1及び第2の発泡絶縁体2、3のベース樹脂を供給すると、ダイス穴から吐出されたベース樹脂は、導体側とその外側とに自然に分かれて2層となる。つまり、ダイス穴から吐出されたベース樹脂と大気力との圧力差が大きく、ベース樹脂の導体側では、大きく膨張してその隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる第1の発泡絶縁体2となり、その外側では通常の発泡度(30〜60〜%程度の)の第2の発泡絶縁体3となる。言い換えれば、第1の発泡絶縁体2は、多数の細長い風船状の樹脂中空体が連なった発泡体形状となる。従って、この風船状の樹脂中空体は、その隔壁部分以外は中空となるため、結果として、高い中空度の発泡絶縁体が得られることになる。その発泡度は、押出条件にもよるが、80〜95%程度とすることができる。なお、ここで、樹脂圧が小さ過ぎると(8MPa未満であると)、後述するデータ(比較列1、3)から明らかなように、全体が通常の発泡度からなる発泡絶縁体となり、逆に、樹脂圧が大き過ぎると(25MPaを超えると)、後述するデータ(比較列2、4)から明らかなように、断面形状及び外観に問題が生じると同時に、発泡セル径も大きくなる。
【0029】
この第1及び第2の発泡絶縁体2、3の外周には、その後は、上記した外スキン層6b、金属層(外部導体)4、シース5を通常の方法により順次設ければよい。
【0030】
本発明に係る発泡絶縁電線の製造方法による場合、上記発泡同軸ケーブルに限定されず、通常の発泡絶縁電線を製造することができる。また、上述製造方法では、1台のプレッシャー・ダイ10のダイス穴に、第1及び第2の発泡絶縁体のベース樹脂を一緒に供給して自然に2層に分かれる方法であったが、本発明はこれに限定されない。原理的には、1台のプレッシャー・ダイにおいて、二重構造のダイス穴を設け、内側のダイス穴で第1の発泡絶縁体を形成させると共に、外側のダイス穴で第2の発泡絶縁体を形成させることも可能である。また、プレッシャー・ダイを有する押出機を2台連設させ、前側の押出機で第1の発泡絶縁体を形成させると共に、後側の押出機で第2の発泡絶縁体を形成させることも可能である。
【0031】
〈実施例、比較例〉
表1〜表2に示す熱可塑性樹脂コンパウンド(実施例1〜7、比較例1〜4)を用いて、図1とほぼ同構造からなる、各サンプルの発泡同軸ケーブルを製造した。各サンプルケーブルの製造にあたっては、図3に示した如き、プレッシャー・ダイを備えた押出機を用いた。そして、クロスヘッド〜プレッシャー・ダイ間の樹脂圧を、4.5〜36MPaの範囲で種々変えて、第1の発泡絶縁体を押し出し被覆させた。ここで、導体(内部導体)の外径は0.9mm、発泡絶縁体(第1及び第2の発泡絶縁体)の外径は2.3〜2.4mm、ケーブル全体の外径は3.0mmである。より具体的には、窒素ガスによるガス発泡により第1及び第2の発泡絶縁体を被覆した後、コルゲート構造の外部導体とポリオレフィン又はPVCなどのシースを施した。そして、内部導体の外周にFPE又はPFAの内スキン層を設け、発泡絶縁体の外周にはFPE又はPFAの外スキン層を設けた。なお、熱可塑性樹脂コンパウンドは十分乾燥させた状態で使用した。
【0032】
また、用いたベース樹脂である熱可塑性樹脂は、熱可塑性フッ素系樹脂のテトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体〔FEP、FR5030(商品名)、MFR=18〜24g/10min(372℃、2.16Kg)、三井デュポンフロロケミカル社製〕、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体〔PFA、440HP−J(商品名)、MFR=15〜22g/10min(372℃、5.0Kg))、三井デュポンフロロケミカル社製〕である。用いた発泡核剤はゼオライト〔メジアン径1〜10μm、旭ガラス社製〕である。なお、上記内外スキン層も発泡絶縁体と同材料を用いた。また、表1〜表2中で用いた熱可塑性フッ素系樹脂を「○」で表示した。
【0033】
各サンプルケーブルについて、表1〜表2に示す評価及び試験を行い、その結果〔断面形状、外観、発泡セル径〕を併記した。
【0034】
〈断面形状評価〉
サンプルケーブルの第1の発泡絶縁体の断面形状を目視により次のように評価した。
評価「A」:風船状の樹脂中空体からなる発泡絶縁体が良好に形成されている場合、評価「B」:通常の発泡絶縁体と同様に形成されている場合、評価「C」:評価「A」の断面形状と同様であるが中心導体周りでは隔壁がなくパイプ状に形成されている場合。
【0035】
〈外観評価〉
サンプルケーブルの第1の発泡絶縁体の外観を目視により次のように評価した。
評価「◎」:表面が滑らかで光沢がある場合、評価「○」:光沢はないが表面が滑らかな場合、評価「△」:見た目は滑らかであるが手触りに凹凸(ザラ付き)がある場合、評価「×」:見た目も明らかな肌荒れのメルトフラクチャー状になっている場合。
【0036】
〈発泡セル径試験〉
サンプルケーブルの第1の発泡絶縁体断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により画像撮影して観察し、コンピュータプログラムで発泡セルを認識させ、統計データ処理により平均発泡セル径(μm)を求めた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記の表1〜表2から明らかなように、本発明の発泡同軸ケーブルの場合(実施例1〜7)、外観の面で若干のバラツキがあるものの、その他の評価、試験特性では全て良好であることが分かる。
【0040】
これに対して、本発明の条件を欠く発泡同軸ケーブルの場合(比較例1〜4)、いずれの点において問題があることが分る。
比較例1、3では樹脂圧が低く過ぎて(4.5MPa、6.5MPa)、通常の発泡絶縁体状のものしか形成されていないことが分る。比較例2、4では樹脂圧が高過ぎて(27MPa、36MPa)、断面形状及び外観に問題があると同時に、発泡セル径も大きくなっている(145μm、133μm)ことが分る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る発泡絶縁電線の一例を示した縦断端面図である。
【図2】図1の発泡絶縁電線の縦断面図である。
【図3】押出機のプレッシャー・ダイの概略縦断面図である。
【図4】押出機のチューピング・ダイの概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・導体(内部導体)、2・・・第1の発泡絶縁体、3・・・第2の発泡絶縁体、4・・・金属層(外部導体)、5・・・シース、6a・・・内スキン層、6b・・・外スキン層、10・・・プレッシャー・ダイ、11・・・押出ダイス部(口金)、12・・・ニップル(芯金)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外方にその隔壁がランダムに形成される発泡空隙壁からなる第1の発泡絶縁体を設けると共に、前記第1の発泡絶縁体の外周に発泡度が30〜60%程度である少なくとも1層の第2の発泡絶縁体を設けたことを特徴とする発泡絶縁電線。
【請求項2】
前記第1及び第2の発泡絶縁体の熱可塑性樹脂コンパウンドのベース樹脂が、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体、又はポリテトラフルオロエチレンなどの熱可塑性フッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の発泡絶縁電線。
【請求項3】
前記第1及び第2の発泡絶縁体の発泡剤が、窒素ガス、炭酸ガス、ブタン、イソブタン、プロパン、代替フロンなどの物理発泡剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡絶縁電線。
【請求項4】
前記第1及び第2の発泡絶縁体の発泡核剤が、窒化ホウ素、タルク、クレイ、ゼオライト、カープレックス、シリカ、ホウ酸金属塩などの物理発泡核剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の発泡絶縁電線。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの発泡絶縁電線において、前記第1及び第2の発泡絶縁体を、押出機の発泡押出条件を適宜制御して、当該押出機のプレッシャー・ダイから導体の外方の長手方向に同時押出により被覆させることを特徴とする発泡絶縁電線の製造方法。
【請求項6】
前記押出機の樹脂圧が、8〜25MPaであることを特徴とする請求項5記載の発泡絶縁電線の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−188742(P2007−188742A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5562(P2006−5562)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】