説明

発熱体、その製造方法及び利用

【課題】電気伝導性層を含む積層構造のフィルム又はシートの形をした新しい電気発熱体を提供すること。
【解決手段】本発明の発熱体は、新しい発熱体(8)であって、少なくとも一つの基材(1)と、融解温度が当該発熱体の動作温度より高くそして当該基材へ薄い層として付着させることができる少なくとも1種のポリマーの分散液、溶液又は粉体から得られた結合剤(3)により当該基材へ付着している少なくとも一つの電気抵抗層(4)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの電気伝導性層と少なくとも一つの基材を含む、積層構造を備えたフィルム又は薄いシートの形をした新しい電気発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭向け用途、例えばアイロン、グリル等で使用される電気発熱体は、それ自体は金属ケーシング内に配置される絶縁用セラミック材料に埋め込まれた抵抗線により形成される。この種の電気発熱体の一つの欠点は、その熱慣性である。もう一つの欠点は、それが複雑な輪郭に不向きなことである。
更に、それは太くて、それを使用する器具は大きい。
多数の層を有するシートの形をした電気発熱体も知られており、導電層は、熱に耐えるようにされるホットメルト接着剤層で基材へ結合される薄い金属フィルムにより形成される。適当なホットメルト層は、厚さが一般に20μmより厚い押出し成形されたフィルムである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発熱体の一つの欠点は、ホットメルトフィルムの伝導率が小さいことである。更に、この小さい伝導率は押出し成形層に熱伝導性充填剤を取り入れることで実質的に向上させることができない。
本発明は、先に述べた欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、薄いフィルムの形をしていて熱慣性が小さく、そして製造するのが簡単にされた発熱体を提案する。
【0005】
本発明による発熱体は、少なくとも一つの基材と、この基材上へ直接被着する分散液、溶液又は粉体から作られた結合剤により基材に付着する少なくとも一つの電気抵抗層とを含む。
【0006】
本発明による結合剤は、発熱体の動作温度よりも融解温度が高く且つ基材へ、必要とあれば薄い厚みで、付着させることができる少なくとも1種のポリマー(又はコポリマー)の分散液、溶液、又は粉体から選ぶことができる。このポリマーは好ましくは、ペルフッ素化ポリマーから、特にペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、MFA 及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から、選ばれる。
【0007】
本発明の一つの側面によれば、上述のポリマーのうちの少なくとも1種のものの分散液か溶液が選ばれ、この分散液又は溶液には、必要とあれば、熱伝導性且つ電気絶縁性の充填剤、例えば酸化アルミニウムAl2O3 、炭化ケイ素SiC 、マイカ及びガラス粉末、を大量に添加することが可能である。
【0008】
詳しく言えば発熱体を支持する機能も果たし電気絶縁体の機能も果たす、本発明による基材は、発熱体について想定される用途に応じて選ばれる任意の種類のシートでよい。このシートは、熱可塑性もしくは熱硬化性材料、あるいはセルロース系材料、あるいは随意に含浸されたガラス布もしくはウェブ、セラミック繊維を基にした布もしくはウェブ、あるいはまた押出し成形もしくはローラー成形されたシートを基礎材料とすることができる。熱可塑性もしくは熱硬化性材料は、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、MFA 、ペルフルオロ(エチレン−プロピレン)(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE) 、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリイミド(KAPTON)より選ばれる。
【0009】
基材は一般に、用途に応じて20〜500 μmの厚さを有し、あるいは必要とあればそれ以上の厚さを有する。
【0010】
本発明の一つの態様によれば、電気抵抗層は導電性材料の、特に金属、例として銅、ニッケル、アルミニウムといったもの、あるいは合金、例として青銅、黄銅又はコンスタンタン(Constantan、商標)といったものを基礎材料とするものの、フィルム又は薄いシートである。
【0011】
特に金属の薄い伝導性フィルムの付着を増進することを目的として、それはその二つの面のうちの少なくとも一方に、例えば構造化表面を持つローラー入りのカレンダーでのロール掛けにより得られる構造表面を持つことができ、あるいは例えばサンドブラスチングもしくは研磨処理により得られる粗い表面を持つことができる。
【0012】
別の態様として、伝導性金属シートは、電気伝導性の布と取り替えてもよく、あるいは電気伝導性繊維のマットにより形成された層と取り替えてもよい。
【0013】
伝導性の薄いフィルムの厚みは、導体と、発熱体について想定される用途とを基にして、すなわち所望の電力に応じて、計算することができる。
【0014】
用途に応じて、伝導性フィルムはコイル回路の形状を持つことができる。この種の形状は、例えば、化学エッチングにより、詳しく言えば塩酸と過酸化水素との混合物を使用して、局所的に処理された連続フィルムから得られる。
【0015】
本発明の一つの態様によれば、電気抵抗は、基材上に電気伝導性組成物を例えばスクリーン印刷、ステンシルを使用しての静電吹付け等により付着させることによって、所望の形状で直接得られる。
【0016】
本発明のもう一つの態様によれば、電気抵抗層は結合剤層と一緒になり、この目的のためそれには、電気伝導性材料の粉体の形をした粒子又は繊維、例えば金属粒子又は金属で被覆された粒子、あるいはグラファイト粒子が多量に添加される。
【0017】
本発明による発熱体は一般に、電気抵抗層を覆う電気絶縁被覆を更に含む。この被覆は、例えば、上述の第一の基材と同じタイプの第二の基材であり、これはもう一つの接着剤層により電気抵抗層へ付着することができる。
【0018】
薄いフィルムから発熱体を構成することは、それを薄くして、熱慣性を非常に小さくする。
【0019】
本発明はまた、発熱体を製造する方法にも関する。この方法においては、用いられる基材、結合剤そして電気伝導性層を上述のものから選択する。
【0020】
この方法は、下記の工程を使用する。
・発熱体を製造するため、少なくとも一時的に、支持材として用いられる基材を用意する工程。
・この基材上に結合剤分散液、溶液又は粉体から結合剤を付着させる工程。
・随意の乾燥を行ってから、特に金属フィルムの形をした、導電性層を加圧により、例えばプレス機のプレート間でのプレスによりあるいはローラー間でのカレンダー掛けにより、結合剤を被覆した基材とともに集成する工程。
・伝導性層に電気抵抗体として所望される形状を与えるために、この層を特に化学エッチングにより、化学的に処理する工程。
・予備的に積層した構成要素を得る工程。
・結合剤の層で被覆された第二の基材をこの予備的に積層した構成要素とともに加圧により集成し、同時に第二の基材の結合剤の層を伝導性層と接触させる工程。
・積層構造を有しそして熱慣性が小さい薄い発熱体を最終的に得る工程。
【0021】
結合剤の溶液又は分散液を用いることは、薄いフィルムと、そして積層体の構成要素間の非常に良好な接着力を得るのを可能にし、この付着力は長い時間にわたり且つ最も極端な使用条件下で安定である。
【0022】
加熱用の電気抵抗層として、発熱体がスクリーン印刷又はステンシルを使用する吹付けにより伝導性組成物を直接付着させることにより得られる抵抗体を使用する場合には、この製造方法は下記の操作を使用する。
・電気伝導性組成物を用意された基材上へ印刷スクリーン又はステンシルを使って付着させる操作。
・付着させた層を乾燥させる操作。
・結合剤の層で被覆した第二の基材を加熱抵抗体で被覆された上記基材とともに加圧により集成する操作。電気抵抗体は、最終的には第二の基材の結合剤層と接触する。
【0023】
加熱用電気抵抗層として、発熱体が結合剤に分散させた伝導性粒子から得られる層を使用する場合には、この製造方法は下記の操作を使用することができる。
・結合剤と電気伝導性粒子との分散液を用意された基材上へ付着させる操作。
・付着させた層を随意に乾燥後、金属粒子を含有しているこの層をそれに電気抵抗体として所望される形状を与えるよう化学的に処理する操作。
・結合剤の層で被覆した第二の基材を、電気抵抗体で覆われた先に作製した基材とともに加圧により集成する操作。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のこのほかの特徴と利点は、図面を参照して説明される下記の例から明らかになろう。
【0025】
図1において、支持材として使用される基材1はPTFEを含浸した80μmの厚みのガラス布から作られたシートである。この基材上にPFA の水中分散液の層2を、スクレーパー又はステンシルを使用するコーティング手法により付着させる。
350 ℃の温度で乾燥後、およそ10μmの厚みの層が得られる。
【0026】
この層3の上に50μmの厚みのコンスタンタン(商標)金属シート4を付着させ、これらの構成要素をプレス機のプレート間での、350 ℃で40bar の圧力下に数分間のプレスにより集成する。
【0027】
金属シートの発熱体を形成しようとする部分をスクリーン印刷により付着させたワニスを使って保護してから、発熱体について所望の形状を化学エッチングにより得るため、この集成体を塩酸と過酸化水素の混合物で処理する。予備的に積層された構成要素5が得られる。結合剤の層7で被覆し、先に被覆した基材の場合と同じようにして得られた第二の基材6を、前と同じ条件下での加圧により予備的に積層した発熱体構成要素5とともに集成する。
【0028】
薄い発熱体8が最終的に得られ、そしてこれは所望の寸法に切断することができ、様々な用途で使用することができる。別の態様として、切断を予備的に積層した構成要素で行ってもよく、その場合にはそれは切断された予備的に積層された構成要素となり、そしてこれが第二の基材で被覆される。
【0029】
図2において、支持材として使用される基材9は図1を参照して説明されたものと同じでよい。
【0030】
PFA と電気伝導性金属粒子とを含有している分散液10をこのPTFEを基礎材料とした基材にコーティングにより付着させる。
金属粒子の割合は、乾燥後に基材上に形成される被覆層11において連続の電気的接触が得られるように決定される。この割合は、詳しく言うと、金属粒子の寸法及び形状に依存する。
【0031】
次いで、伝導性被覆層11を化学的にエッチングし、予備的に積層した構成要素12を得る。
次に、この予備的に積層した構成要素12を、この例ではPFA を基礎材料とした結合剤の層14で被覆した第二の基材13とともに集成する。
【0032】
所望の寸法に切断することができる薄い発熱体15が得られる。別の態様として、切断は予備的に製作した(予備的に積層した)構成要素で行ってもよい。
【0033】
本発明による発熱体は、熱慣性の小さい薄い発熱体を使用することを必要とする家庭向け用途でも産業向け用途でも使用することができる。複数の発熱体を組み合わせて使用してもよい。
発熱体は、例えば処理浴の如き腐食性媒体中で有利に使用することもできる。
【0034】
発熱体の柔軟性は、伝導性層と想定される用途とに応じていろいろにすることができる。
発熱体は、特にそれを硬くすることが必要な場合には、平面又は熱成形した形状で使用してもよい。それが薄いという事実のために、それは、例えば管の周りに巻きつけたテープの形で使用してもよい。また、それには随意に、それを加熱しようとする目的物に結合させるように接着剤層を設けてもよい。
【0035】
本発明による発熱体にはまた、基材に隣接した接着剤層に配置した平らな熱電対の形をしたサーモスタットを備えつけてもよい。このタイプの発熱体の態様を模式的に図3と図4に示す。この発熱体16は、第一の基材17、加熱用抵抗体19を含む接着剤層18、第二の基材20、熱電対22を含む第二の接着剤層21、そして第三の基材23を含む。加熱用抵抗体に熱電対22が近接していることが、非常に速やかな温度制御を可能にする。
【0036】
図5は、本発明による発熱体を複数利用する用途を示している。このように、鉄のホットプレート27に三つの発熱体24、25、26が配置される。これらの三つの発熱体は同じ抵抗率を持つことができ、あるいは別の態様として、一定であるか又は温度とともに変化する異なる低効率を持つことができる。各発熱体が、必要とあればサーモスタットにより、あるいは別の態様として抵抗層それ自体により別々に制御することができる、加熱帯域に相当する。この組み合わせの配置は、実際に使用されるアイロン掛けの方法にかかわりなく、ホットプレートの温度を非常に良好に制御するのを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】加熱用電気抵抗体として金属フィルムを使用する、本発明による発熱体の例の製造における種々の工程を説明する図である。
【図2】加熱用電気抵抗体として金属粒子を基にした層を使用する、本発明による発熱体の例の製造における種々の工程を説明する図である。
【図3】サーモスタットを取り付けた本発明による発熱体を示す図である。
【図4】サーモスタットを取り付けた本発明による発熱体を示す図である。
【図5】本発明による発熱体についての利用を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基材
2 水中分散液層
4 金属シート
5 予備積層構成要素
6 第二の基材
7 結合剤層
8 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの基材(1,6;9,13;17,20,23)と、融解温度が発熱体の動作温度より高く且つ当該基材上に薄いフィルムでもって付着させることができる少なくとも1種のポリマーの分散液、溶液又は粉体から形成された結合剤(3;11;18,21)により当該基材に付着する少なくとも一つの電気抵抗層(4;11;19)を含むことを特徴とする、薄い発熱体(8;15;16)。
【請求項2】
前記結合剤がペルフッ素化ポリマーを基礎材料としていることを特徴とする、請求の範囲第1項記載の発熱体。
【請求項3】
前記ペルフッ素化ポリマーがPFA 、MFA 及びPTFEから選ばれることを特徴とする、請求の範囲第2項記載の発熱体。
【請求項4】
前記基材がペルフッ素化ポリマーを含浸したウェブ又は布であることを特徴とする、請求の範囲第1項から第3項までの一つに記載の発熱体。
【請求項5】
前記ペルフッ素化ポリマーがPTFEであることを特徴とする、請求の範囲第4項記載の発熱体。
【請求項6】
前記電気抵抗層が金属シートを基礎材料としていることを特徴とする、請求の範囲第1項から第5項までの一つに記載の発熱体。
【請求項7】
前記電気抵抗層が結合剤中に分散した電気伝導性粒子を基礎材料としていることを特徴とする、請求の範囲第1項から第5項までの一つに記載の発熱体。
【請求項8】
前記電気抵抗層が電気伝導性組成物を、特にスクリーン印刷により付着させることにより所望の形状で直接得られることを特徴とする、請求の範囲第1項から第5項までの一つに記載の発熱体。
【請求項9】
サーモスタット(22)が取り付けられていることを特徴とする、請求の範囲第1項から第8項までの一つに記載の発熱体。
【請求項10】
下記の工程を特徴とする、請求の範囲第1項から第6項までの一つに記載の発熱体の製造方法。
・発熱体を製造するための支持材として使用する基材を用意する工程
・この基材上へ分散液、溶液又は粉体から結合剤を付着させる工程
・随意の乾燥後、伝導性層を基材とともに加圧により集成する工程
・この伝導性層に電気抵抗体として所望の形状を与えるためそれを化学的に処理する工程
・この予備的に積層したものと共に、結合剤の層で被覆した第二の基材を集成する工程
・積層構造を持つ発熱体を得る工程
【請求項11】
結合剤と電気伝導性粒子との分散液を基材へ付着させ、伝導性層に所望の形状を与えるようそれを化学的に処理し、結合剤の層で被覆した第二の基材を上記の基材と共にローラー掛けして集成することを特徴とする、請求の範囲第7項記載の発熱体の製造方法。
【請求項12】
伝導性組成物を基材へ、特にスクリーン印刷により付着させ、そして結合剤の層で被覆した第二の基材を上記の基材と共に加圧により集成することを特徴とする、請求の範囲第8項記載の発熱体の製造方法。
【請求項13】
家庭用具への請求の範囲第1項から第9項までの一つに記載の発熱体の利用。
【請求項14】
複数の発熱体(24,25,26)を組み合わせて使用することを特徴とする、請求の範囲第1項から第9項までの一つに記載の発熱体の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−115702(P2007−115702A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318838(P2006−318838)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願平8−533154の分割
【原出願日】平成8年4月30日(1996.4.30)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】