説明

発進制御装置

【課題】ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進をより確実に防止することを可能にする。
【解決手段】アクセル操作許可受け付け部14がメインスイッチ6およびブレーキペダル9とは別体に設けられており、モータ3の始動準備が完了している場合であっても、アクセル操作許可受け付け部14で操作を受け付けるまでは、モータ3を駆動させるだけの変位が生じないようにアクセルペダル11を機械的に固定するロックを解除しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の発進を許可する発進制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、内燃機関のみを走行駆動源として用いる内燃機関車両に代わり、内燃機関と電動機とを走行駆動源として併用するハイブリッド車両や電動機のみを走行駆動源として用いる車両といった電動車両が増えてきている。
【0003】
内燃機関車両では、キー操作または始動スイッチ操作によって内燃機関を始動させると、内燃機関の振動や音によって内燃機関が始動したことを車内のドライバが判別できるが、電動車両では、電動機の静粛性が高いため、走行可能状態となったことを車内のドライバが判別しにくい。
【0004】
また、内燃機関車両では、例えばオフ位置、アクセサリ電装機器に通電させるアクセサリ位置、エンジンの点火系に通電を行うオン位置、エンジンを始動させるためにスタータに通電を行うスタート位置といった4つのキーポジション(キー差し込みを要しない車両では電源ポジション)があるのに対して、電動車両の場合には、このキーポジションも異なったものとなる。例えば、電動車両の場合には、エンジンを始動させる手間がないので、スタート位置は必要なく、オン位置は電動機を動作させるためにインバータに通電を行うためのものとなる。
【0005】
このように、内燃機関車両に対して、電動車両は静粛性が高く、キーポジションも異なったものとなるので、内燃機関車両に慣れたドライバが電動車両に乗り換えた場合に、発進準備が出来ていないものと勘違いした上での不用意な操作によって、意図しない発進が生じる可能性も考えられる。
【0006】
例えば、二輪車の例を挙げると、電動二輪車では、エンジンを始動させる手間がいらず、キーを差し込んで回転させ、キーポジションをオン位置にするだけで発進が可能になる。さらに、内燃機関を走行駆動源にした二輪車では、発進準備が整っていることをエンジンの振動や回転音で判別できるが、電動二輪車では、発進が可能であることは振動や音では判別できない。よって、電動二輪車では、内燃機関を走行駆動源にした従来の二輪車を操作する感覚でキーを差し込んでキーポジションをオン位置にし、エンジン始動の操作をしていないつもりで不用意にアクセルレバーを握るとそのまま発進してしまうことになる。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1には、ブレーキが動作されていないとモータ(電動機)の始動ができないようにする電動スクータの誤発進防止装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、モータの制御回路と回転式のアクセル操作部材であるスロットルとを中継するリレーのオンオフ状態の切替えを、少なくともブレーキの動作状態を検出した信号を論理回路が検出したときにオン状態とし、ブレーキが動作されていないとスロットルを操作しても発進不可能とすることが開示されている。
【0008】
また、電動自動車においても、ガソリン車とキーポジションが異なる場合に、ガソリン車を操作する感覚でキーポジションを意図せずにスタート位置に移行させ、発進準備が出来ていないものと思ってアクセルペダルの位置および踏み込み具合の確認を行ったり、不用意にアクセルペダルに触れたりすることで、意図しないタイミングで車両が発進してしまう可能性があると考えられる。
【0009】
これに対して、例えば既存のハイブリッド自動車では、電源ポジション(オフ位置、ACC位置、オン位置の3つ)の切り替えと電動機の始動とに用いるパワースイッチを備え、ブレーキペダルを踏んだ状態でパワースイッチを押した場合にのみ電動機の始動を行うことによって、ブレーキが動作されていないと電動機の始動を行うことができないようにすることが知られている。また、既存のハイブリッド自動車では、走行可能な状態にあるのか否かを判別しやすくするため、インジケータランプの点灯状態によって走行可能な状態にあるのか否かをドライバが確認できるようになっているものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−328970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、電動スクータを移動させようとしてハンドルを持ったときに、ドライバがブレーキレバーを意図せずに握ってしまった場合であっても、誤発進防止装置側が勝手に発進可能な状態に切り替えてしまう。その状態で、ドライバが、発進準備が出来ていないものと思って不用意にアクセルレバーを握るとそのまま発進してしまうことになる。
【0012】
従って、特許文献1に開示の技術でも、ドライバの意図しないタイミングでの車両の発進が生じてしまうという問題点が残っていた。また、特許文献1に開示の技術では、発進可能な状態であるかは、アクセルレバーを操作して実際に車両を動かしてみないと判らないことになるので、この点でもドライバの意図しないタイミングでの車両の発進が生じやすい。
【0013】
また、前述のハイブリッド自動車においては、操作に慣れていないドライバが、ブレーキペダルの位置および踏み込み具合の確認中やブレーキペダルに触れていることを意識していないときに電源ポジションを切り替えるつもりでパワースイッチを押してしまうと、走行可能な状態になってしまう。そして、発進準備が出来ていないものと思ってアクセルペダルの位置や踏み込み具合の確認を行ったり、不用意にアクセルペダルに触れたりすると、意図しないタイミングで車両が発進してしまうことになる。
【0014】
なお、前述のハイブリッド自動車においては、インジケータランプの点灯状態によって走行可能な状態にあるのか否かをドライバが確認できるようになっているものがあるが、発進準備が出来ていないものとドライバが思っている場合には、インジケータランプをわざわざ確認する可能性は低い。よって、走行可能な状態にあるのか否かを示すインジケータランプが設けられている場合であっても、上述したような理由により意図しないタイミングで車両が発進してしまう状況を回避できないことも考えられる。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進をより確実に防止することを可能にする発進制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発進制御装置によれば、ドライバからの外力が加わっても、駆動制御部で電動機を駆動させるだけの変位が生じないようにアクセル操作部材を機械的に固定して操作を制限するアクセル操作制限機構部を備えるので、始動準備部による電動機の始動準備が完了して、ドライバがアクセル操作部材を操作したとしても、アクセル操作制限機構部によるロックを解除しない限り電動車両の発進自体を行うことはできないことになる。
【0017】
また、このロックを解除するための操作に用いるアクセル操作許可受け付け部と、走行駆動源としての電動機の始動準備を始動準備部に完了させるための操作に用いる始動要求受け付け部およびドライバからの制動を要求する旨の操作を受け付けるブレーキ操作部材とが別体に設けられる。
【0018】
よって、ドライバが不用意に始動要求受け付け部を操作してしまって電動機の始動準備が完了した状態とブレーキ操作部材が操作されていない状態とが重なってしまい、アクセル操作部材が操作されると発進してしまう可能性がある状況となった場合であっても、ドライバがアクセル操作許可受け付け部を操作しない限り電動車両を発進できるだけのアクセル操作部材の操作を行うことができないようにすることができる。つまり、電動車両の発進のために行わなければならないアクションを1つ増やすことができる。従って、上述のような状況となった場合であっても、電動車両の発進をより確実に防止することが可能になる。
【0019】
また、アクセル操作許可受け付け部をドライバが操作して発進の意思を明確に示さない限りアクセル操作部材を操作しようとしても操作が制限されることから、発進可能な状態にあるのか否かをドライバが容易に判別することができる。よって、この点でも、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進をより確実に防止することが可能になる。
【0020】
また、請求項2の構成によれば、ドライバが片手もしくは片足で、アクセル操作許可受け付け部と一緒に、始動要求受け付け部、ブレーキ操作部材、およびアクセル操作部材のいずれも操作することはできないことになるので、始動要求受け付け部、ブレーキ操作部材、アクセル操作部材の操作中にたまたまアクセル操作許可受け付け部も操作してしまう可能性を排除することができる。
【0021】
また、請求項3の構成によれば、ドライバが片手もしくは片足で、アクセル操作許可受け付け部と一緒に、始動要求受け付け部、ブレーキ操作部材、アクセル操作部材、シフト操作部材のいずれも操作することはできないことになるので、始動要求受け付け部、ブレーキ操作部材、アクセル操作部材、シフト操作部材の操作中にたまたまアクセル操作許可受け付け部も操作してしまう可能性を排除することができる。
【0022】
また、請求項4のように、ロック解除部でのロックの解除後、所定のイベントを検知した場合にアクセル操作制限機構部によるロックを再び行わせる再ロック判定部を備える態様としてもよい。
【0023】
また、請求項4のように、ロックの解除後、所定のイベントを検知した場合にロックを再び行わせる場合であって、電動車両がシフト操作部材を備えている場合には、請求項5のように、シフトポジションとしてパーキングポジションおよびニュートラルポジションのうちのいずれかを検出している状態が所定時間以上続いた場合に、所定のイベントを検知したものとしてロックを再び行わせる態様とすることが好ましい。シフトポジションがパーキングポジションやニュートラルポジションにある状態が続く場合には、例えば信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている可能性が高い。よって、以上の構成によれば、信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている場合に、アクセル操作制限機構部によるロックを再び行わせ、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進を確実に防止することが可能になる。
【0024】
さらに、請求項6のように、運転席にドライバが着座していると検出しなかった場合に、所定のイベントを検知したものとしてロックを再び行わせる態様とすることも好ましい。運転席にドライバが着座していない場合には、例えば信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている可能性が非常に高い。よって、以上の構成によっても、信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている場合に、アクセル操作制限機構部によるロックを再び行わせ、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進を確実に防止することが可能になる。
【0025】
また、請求項7のように、電動機が停止しているとともに電動機の始動準備が完了していない状態にあることを検出した場合に、所定のイベントを検知したものとしてロックを再び行わせる態様とすることも好ましい。電動機が停止しているとともに電動機の始動準備が完了していない状態にある場合には、例えば信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている可能性が非常に高い。よって、以上の構成によっても、信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしている場合に、アクセル操作制限機構部によるロックを再び行わせ、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進を確実に防止することが可能になる。
【0026】
また、請求項8のように、駆動制御部は、始動準備部による電動機の始動準備が完了していた場合、ドライバからの操作によるアクセル操作部材の所定量以上の変位に応じて電動機を駆動させるものであって、アクセル操作制限機構部は、アクセル操作部材を、ドライバからの外力が加わっても、多くとも所定量以上の変位が生じないように機械的に固定するロックを行うことでアクセル操作部材の操作を制限するものである態様としてもよい。これによれば、電動機を駆動させない程度のアクセル操作部材の操作が可能な遊びを設けることが可能になる。
【0027】
また、請求項8のようにする場合には、請求項9のように、アクセル操作制限機構部によるロックが行われている状態において、アクセル操作部材が操作を受けたことをアクセル操作検出部で所定回数または所定時間以上検出した場合に、アクセル操作制限機構部によるロックの解除が必要である旨の報知を行う態様とすることが好ましい。
【0028】
これによれば、本発明の発進制御装置が電動車両に搭載されていることを知らないドライバがその電動車両を発進させようとした場合であっても、発進しようとしてアクセルを所定回数または所定時間操作したところでロックの解除が必要である旨の報知を受けるので、この報知を頼りにアクセル操作許可受け付け部を操作してロックを解除することができる。
【0029】
また、例えば発進制御装置が上述の再ロック判定部を備え、その再ロック判定部によってドライバが気付かないうちに再びロックが行われた場合であっても、発進しようとしてアクセルを所定回数または所定時間操作したところでロックの解除が必要である旨の報知を受けるので、この報知を頼りにアクセル操作許可受け付け部を操作してロックを解除することができる。従って、請求項9の構成によれば、ドライバにとっての利便性が向上する。
【0030】
また、請求項10の構成によれば、ブレーキ操作部材で操作を受けたことを検出している最中にアクセル操作許可受け付け部で操作を受け付けたときにロックを解除するので、ブレーキ操作部材を操作しながらでないと、ドライバがアクセル操作許可受け付け部を操作したとしてもロックを解除することができない。よって、ロックを解除するための操作手順が増し、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進をさらに確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発進制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、アクセルペダル11を機械的に固定する方法を説明するための模式図であり、(b)は、アクセルペダル11をロックピンRPで固定する例を示した模式図であり、(c)は、アクセルグリッブAGをロックピンRPで固定する例を示した模式図である。
【図3】アクセル操作許可受け付け部14に用いるスイッチの例を示す模式図である。
【図4】制御装置15でのアクセルペダル11のロックに関する処理のフローを示すフローチャートである。
【図5】発進制御システム100の状態遷移の一例を示す模式図である。
【図6】発進制御システム100を変速機なしの電動二輪車に適用した場合の状態遷移の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された発進制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す発進制御システム100は、電動車両に搭載されるものである。なお、ここで言うところの電動車両とは、電動機(つまり、モータ)のみを走行駆動源として用いる車両であってもよいし、エンジン等の内燃機関とモータとを走行駆動源として併用する車両であってもよい。また、電動車両としては、電動スクータ等の2輪車を想定してもよいし、電機自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)等の自動車を想定してもよい。なお、本実施形態では、一例として、オートマチックトランスミッション(AT)を採用しているEVに本発明を適用した場合の例を挙げて説明を行う。また、発進制御システム100を搭載している車両を以降では自車両と呼ぶ。
【0033】
図1に示すように、発進制御システム100は、バッテリ1、インバータ2、モータ3、表示装置4、音声出力装置5、メインスイッチ6、着座センサ7、シフトポジションセンサ8、ブレーキペダル9、ブレーキスイッチ10、アクセルペダル11、アクセルポジションセンサ12、ロック機構13、アクセル操作許可指示部14、制御装置15、および振動発生装置16を含んでいる。なお、表示装置4、音声出力装置5、着座センサ7、シフトポジションセンサ8、アクセルポジションセンサ12、ロック機構13、アクセル操作許可受け付け部14、制御装置15、および振動発生装置16からなる構成が請求項の発進制御装置に相当する。
【0034】
モータ3には、モータ3の駆動を制御するインバータ2とバッテリ1とが電気的に接続され、インバータ2を介してバッテリ1から供給される電力によってモータ3が駆動されるように構成されている。
【0035】
また、表示装置4は、テキスト表示や画像表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。なお、表示装置4としては、例えば、車載ナビゲーション装置に設けられたディスプレイを利用する構成としてもよいし、車載ナビゲーション装置のディスプレイとは別の、インストゥルメントパネル等に設けたディスプレイを用いる構成としてもよい。
【0036】
音声出力装置5は、メッセージ等を音声出力するものであって、スピーカ等を用いて構成することができる。なお、音声出力装置5としては、例えば、車載ナビゲーション装置に設けられたスピーカを利用する構成としてもよいし、車載ナビゲーション装置のスピーカとは別の、車室内に設けたスピーカを用いる構成としてもよい。
【0037】
振動発生装置16は、振動を発生させるものであって、周知の振動子を用いて構成することができる。振動発生装置16は、例えばステアリングホイールに設けられ、ステアリングホイールを握っているドライバが振動を感じ取ることができるようになっている構成であってもよいし、運転席シートに設けられ、運転席シートに座っているドライバが振動を感じ取ることができるようになっている構成であってもよい。
【0038】
メインスイッチ6は、モータ3の始動準備を完了させるためのスイッチである。また、ここで言うところのモータ3の始動準備の完了とは、インバータ2がバッテリ1と通電し、制御装置15からのモータ3の駆動の指示があり次第モータ3を駆動できる状態となることを指している。例えば、メインスイッチ6はダッシュボードに設けられた押しボタン式のものであって、押下するごとにオン状態とオフ状態とが切り替わるオルタネイトスイッチであるものとして以降の説明を続ける。
【0039】
なお、本実施形態では、オン状態とオフ状態との2つのポジションの切り替えのみが可能なメインスイッチ6を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、オン状態とオフ状態との他にも、アクセサリ電装機器に通電させる状態等の他のポジションへの切り替えも可能な構成となっていてもよい。
【0040】
また、メインスイッチ6は、キーシリンダと一体となっており、キースロットにメカニカルキーが差し込まれたときにオン状態となり、メカニカルキーが差し込まれていないときにオフ状態となる構成であってもよい。他にも、メインスイッチ6は、キーシリンダと一体となったロータリスイッチであって、キースロットに差し込まれたメカニカルキーを回すことによって、上述のオン状態やオフ状態やアクセサリ電装機器に通電させる状態等の他のポジションへの切り替えが行われる構成であってもよい。なお、メインスイッチ6が請求項の始動要求受け付け部に相当する。
【0041】
着座センサ7は、自車両の運転席シートの中に埋め込まれた重量センサであって、運転席シートにドライバが座っている場合にこれを検知する。なお、着座センサ7として重量センサの代わりに圧力センサを用いるなど、他のセンサを用いる構成としてもよい。なお、着座センサ7が請求項の着座検出部に相当する。
【0042】
シフトポジションセンサ8は、自車両の各シフトポジション(ドライビングレンジ)を検出するセンサであって、検出したポジションを示す信号を出力する。シフトポジションとしては、ここでは、パーキングポジション「P」、リバースポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、ドライビングポジション「D」があるものとする。なお、シフトポジションとしてローポジション「L」や強回生ポジション「B」等の他のポジションが存在する構成としてもよい。
【0043】
また、シフトポジションセンサ8は、シフトレバーの操作によって選択されたシフトポジションを検出するものであってもよいし、例えば周知のPポジションスイッチのようなポジションスイッチの操作によって選択されたシフトポジションを検出するものであってもよい。なお、シフトポジションセンサ8が請求項のシフトポジション検出部に相当する。
【0044】
ブレーキペダル9は、ドライバが自車両の減速や停止といった制動のために操作するブレーキ操作部材である。また、ブレーキスイッチ10は、ブレーキペダル9の踏み込み操作がなされているときにオン状態となるスイッチである。なお、ブレーキスイッチ10が請求項のブレーキ操作検出部に相当する。
【0045】
なお、本発明を電動2輪車に適用する場合には、ブレーキペダル9の代わりにブレーキレバーを用いる構成にしたり、ブレーキペダル9に加えてブレーキレバーを用いる構成にしたりすることになる。この場合には、ブレーキスイッチ10は、ブレーキレバーの握り操作がなされているときにオン状態となるようにすればよい。
【0046】
アクセルペダル11は、ドライバが自車両の加速のために操作するアクセル操作部材である。また、アクセルポジションセンサ12は、アクセルペダル11の踏み込み量を検出するセンサである。なお、アクセルペダル11の踏み込み量を検出するセンサとしてストロークセンサを用いる構成としてもよい。
【0047】
また、本発明を電動2輪車に適用する場合には、アクセルペダル11の代わりにアクセルグリップAGを用いる構成にしたりすることになる。この場合には、アクセルポジションセンサ12は、アクセルグリップAGの操作量を検出するようにすればよい。
【0048】
ロック機構13は、アクセルペダル11を機械的に固定するロックを行うことでアクセルペダル11の操作を制限するようにするものである。よって、ロック機構13が請求項のアクセル操作制限機構部に相当する。ロック機構13は、ドライバからの外力が加わった場合にアクセルペダル11を全く動かないように固定するものであってもよいが、本実施形態では、ドライバからの外力が加わった場合に所定量以上の変位が生じないように固定するものとして以降の説明を続ける。なお、ここで言うところの所定量については後述する。
【0049】
アクセルペダル11を機械的に固定する方法としては、例えば図2(a)に示すように構造物Xをアクセルペダル11のペダルの裏側に差し込むことによって、ペダルを所定量以上踏み込めないようにする構成とすればよい。なお、図2(a)は、アクセルペダル11を機械的に固定する方法を説明するための模式図である。
【0050】
具体例としては、ソレノイドアクチュエータや油空圧で駆動されるアクチュエータ等で往復運動が可能な金属製のバーなどの高い強度の棒状の部材(以下、ロックピンRPと呼ぶ)を、図2(b)に示すようにアクセルペダル11の裏側(アクセルペダル11と床との間の隙間)に差し込むことによって、ペダルを所定量以上踏み込めないようにすればよい。なお、図2(b)は、アクセルペダル11をロックピンRPで固定する例を示した模式図である。
【0051】
また、構造物Xをアクセルペダル11のペダルの裏側に差し込むことによってペダルを所定量以上踏み込めないようにする構成に限らず、モータ3以外のモータのトルクを利用してアクセルペダル11の踏み込みの作用力に対して反作用力を働かせることによって、ペダルを所定量以上踏み込めないようにする構成としてもよい。
【0052】
さらに、本発明を電動2輪車に適用する場合には、例えば図2(c)に示すように、アクセルグリップAGを所定量以上回すことができないようロックピンRPで固定する構成とすればよい。なお、図2(c)は、アクセルグリッブAGをロックピンRPで固定する例を示した模式図である。なお、アクセルグリップAGを所定量以上回すことができないようにする方法としては、モータのトルクを利用してアクセルグリップAGを回転させる作用力に対して反作用力を働かせる方法を用いてもよい。
【0053】
なお、以降では、ロック機構13は、ソレノイドアクチュエータで往復運動が可能なロックピンRPをアクセルペダル11の裏側に差し込むことによってロックを行うものとして説明を続ける。
【0054】
図1に戻って、アクセル操作許可受け付け部14は、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックを解除させるためのスイッチである。例えば、アクセル操作許可受け付け部14はダッシュボードに設けられた押しボタン式のものであって、押下するごとにオン状態とオフ状態とが切り替わるオルタネイトスイッチであるものとして以降の説明を続ける。また、アクセル操作許可受け付け部14は、メインスイッチ6およびブレーキペダル9とは別体に設けられるものとする。
【0055】
なお、アクセル操作許可受け付け部14は、ボタンの操作面に「アクセル許可」(図3(a)参照)や「アクセル有効」(図3(b)参照)などの、このボタンを操作することでロック機構13によるアクセルペダル11のロックが解除され、アクセルペダル11の自由な操作が可能になることを示す表示を付す構成とすればよい。
【0056】
ここでは、アクセル操作許可受け付け部14として押しボタン式のスイッチを用いる例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、図3(c)に示すようなレバーを切り替えるごとにオン状態とオフ状態とが切り替わるレバー式のスイッチを用いる構成としてもよいし、可動切片をスライドさせるごとにオン状態とオフ状態とが切り替わるスライド式のスイッチを用いる構成としてもよい。
【0057】
制御装置15は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、メインスイッチ6、着座センサ7、シフトポジションセンサ8、ブレーキスイッチ10、アクセルポジションセンサ12、アクセル操作許可受け付け部14から入力された各種情報に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、各種の処理を実行する電子式制御装置である。なお、制御装置15は、1つの電子式制御装置からなるものであってもよいし、機能毎に与えられた複数の電子式制御装置が互いに通信することにより成立するものであってもよい。
【0058】
例えば、制御装置15は、メインスイッチ6がオン状態にあることを示す信号がメインスイッチ6から入力されたときに、インバータ2をバッテリ1に通電させ、モータ3の始動準備を完了させる。よって、制御装置15が請求項の始動準備部に相当する。
【0059】
また、制御装置15は、上記始動準備が完了している状態において、アクセルポジションセンサ12からアクセルペダル11の踏み込み量の情報が入力された場合に、その踏み込み量をもとにしてインバータ2からモータ3への出力電圧を調整し、アクセルペダル11の踏み込み量に応じたモータ3の駆動を行わせる。つまり、制御装置15は、アクセルペダル11の踏み込み量に応じた自車両の加速を行わせる。よって、制御装置15は、請求項の駆動制御部にも相当する。
【0060】
ただし、制御装置15は、アクセルペダル11の踏み込み量が所定の閾値を超えるまではモータ3の駆動を行わせない「遊び」を設けているものとする。なお、ここで言うところの所定の閾値とは任意に設定可能な値である。また、ロック機構13によってアクセルペダル11を所定量以上の変位が生じないように固定する場合のこの所定量とは、アクセルペダル11の踏み込み量が上記所定の閾値に達しない程度の値であるものとする。これにより、ロック機構13によってロックされたアクセルペダル11にドライバからの外力が加わった場合であっても、モータ3の駆動が行われるだけの操作は行われず、モータ3が駆動されることがない。
【0061】
また、制御装置15は、アクセルペダル11のロックに関する各種の処理を実行する。ここで、図4を用いて、制御装置15でのアクセルペダル11のロックに関する処理のフローについての説明を行う。図4は、制御装置15でのアクセルペダル11のロックに関する処理のフローを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、図示しないキースロットにメカニカルキーが差し込まれることが自車両のモータの始動準備を完了させるための条件の一つである場合を例に挙げて説明を行う。
【0062】
図4のフローは、自車両のキースロットにメカニカルキーが差し込まれことを検出したときに開始される。また、図4のフローは、自車両のキースロットからメカニカルキーが抜き出されたことを検出したときに終了する。
【0063】
なお、本実施形態では、図示しないキースロットにメカニカルキーが差し込まれることが自車両のモータの始動準備を完了させるための条件の一つである場合を例に挙げて説明を行うが、必ずしもこれに限らない。例えば、周知のスマートエントリーシステムやキーレスエントリーシステムを採用する場合には、自車両のキースロットにメカニカルキーが差し込まれことを検出したときでなく、電子キーから送信される信号を受信したときにフローを開始する構成としてもよい。
【0064】
まず、ステップS1では、メインスイッチ6がオン状態であるか否かを判定する。なお、メインスイッチ6がオン状態であるか否かは、オン状態にあることを示す信号がメインスイッチ6から制御装置15に入力されている場合にメインスイッチ6がオン状態であると判定し、入力されていない場合にメインスイッチ6がオン状態でないと判定する構成とすればよい。
【0065】
そして、メインスイッチ6がオン状態であると判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、メインスイッチ6がオン状態であると判定しなかった場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0066】
ステップS2では、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であるか否かを判定する。なお、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であるか否かは、オン状態にあることを示す信号がアクセル操作許可受け付け部14から制御装置15に入力されている場合にアクセル操作許可受け付け部14がオン状態であると判定し、入力されていない場合にアクセル操作許可受け付け部14がオン状態でないと判定する構成とすればよい。
【0067】
そして、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であると判定した場合(ステップS2でYES)には、ステップS6に移る。また、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であると判定しなかった場合(ステップS2でNO)には、ステップS3に移る。
【0068】
ステップS3では、アクセルペダル11が操作されたか否かを判定する。なお、アクセルペダル11が操作されたか否かは、アクセルポジションセンサ12から入力される踏み込み量の情報をもとにして行う構成とすればよい。例えば、踏み込み量が0よりも大きかった場合にアクセルペダル11が操作されたと判定する構成とすればよい。よって、アクセルポジションセンサ12が請求項のアクセル操作検出部に相当する。
【0069】
そして、アクセルペダル11が操作されたと判定した場合(ステップS3でYES)には、アクセルペダル11の操作回数のカウントを1増やして、ステップS4に移る。なお、アクセルペダル11の操作回数はデフォルトでは0であるものとし、操作回数は制御装置15のRAM等の書き換え可能なメモリに記憶しておくものとする。また、アクセルペダル11が操作されたと判定しなかった場合(ステップS3でNO)には、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
【0070】
なお、本実施形態では、アクセルペダル11が操作されたか否かを、アクセルポジションセンサ12から入力される踏み込み量の情報をもとにして行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、アクセルペダル11の踏み込み操作がなされているときにオン状態となるアクセルスイッチの信号をもとにして行う構成としてもよい。
【0071】
ステップS4では、アクセルペダル11の操作回数が所定回数以上であるか否かを判定する。よって、制御装置15は請求項の報知判定部にも相当する。なお、アクセルペダル11の操作回数が所定回数以上であるか否かは、アクセルペダル11の操作回数のカウントをもとに判定する構成とすればよい。また、ここで言うところの所定回数とは任意に設定可能な回数であって、例えば3回などとすればよい。
【0072】
そして、アクセルペダル11の操作回数が所定回数以上であると判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、アクセルペダル11の操作回数が所定回数以上であると判定しなかった場合(ステップS4でNO)には、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
【0073】
ステップS5では、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックの解除が必要である旨のメッセージを表示装置4に表示させたり、音声出力装置5から音声出力させたりすることによって、ロックの解除が必要である旨の報知を行わせる。また、ステアリングホイールや運転席シートに設けた振動発生装置16に振動を発生させることによって、ロックの解除が必要である旨を報知する構成としてもよい。よって、表示装置4、音声出力装置5、および振動発生装置16が請求項の報知部に相当する。そして、アクセルペダル11の操作回数のカウントを0にリセットし、ステップS2に戻って、フローを繰り返す。
【0074】
なお、ロックの解除が必要である旨の報知としては、ロックの解除が必要である旨のメッセージだけなく、アクセル操作許可受け付け部14の設置場所や操作方法等のガイダンスまでも行う構成としてもよい。
【0075】
また、上述した例では、アクセルペダルの操作回数によって報知が必要であるか否かを判定する例について説明したが、その他にも、例えばアクセルペダルの操作時間が所定時間以上であるか否かによって、報知が必要であるか否かを判定するようにしても良い。
【0076】
続いて、ステップS6では、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックの解除を行って、ステップS7に移る。よって、制御装置15は、請求項のロック解除部にも相当する。具体的には、ソレノイドアクチュエータに信号を送ってソレノイドアクチュエータを駆動させ、アクセルペダル11の裏側に差し込んでいたロックピンRPを引っ込めさせることでロックを解除する。
【0077】
なお、ロックを解除した場合には、ロックを解除済みである旨のメッセージを表示装置4に表示させたり、音声出力装置5から音声出力させたりすることが好ましい。また、ステアリングホイールや運転席シートに設けた振動子を振動させることによって、ロックを解除済みである旨を報知する構成としてもよい。さらに、アクセル操作許可受け付け部14の操作面においてLED等でインジケータ表示を行わせることによって、ロックを解除済みである旨を報知する構成としてもよい。
【0078】
ステップS7では、所定のイベントを検出したか否かを判定する。なお、ここで言うところの所定のイベントとは、自車両が例えば信号待ち等の一時的な停車を超えた停車や駐車をしていることを示すイベントを指している。
【0079】
例えば、制御装置15は、メインスイッチ6がオフ状態にあることを示す信号がメインスイッチ6から制御装置15に入力されていることをもとに、モータ3が停止しているとともにモータ3の始動準備が完了していない状態にあることを検出した場合に、上記所定のイベントを検出したものとすればよい。よって、制御装置15は、請求項の停止検出部にも相当する。
【0080】
また、制御装置15は、シフトポジションが「P」か「N」にあることを示す信号がシフトポジションセンサ8から制御装置15に入力されている状態が所定時間以上続いた場合に、上記所定のイベントを検出したものとしてもよい。なお、ここで言うところの所定時間とは、任意に設定可能なものであって、例えば1分などとすればよい。
【0081】
さらに、制御装置15は、運転席シートにドライバが座っていることを示す信号が着座センサ7から制御装置15に入力されていないことをもとに、運転席シートにドライバが座っていないことを検出した場合に、上記所定のイベントを検出したものとしてもよい。
【0082】
そして、所定のイベントを検出したと判定した場合(ステップS7でYES)には、ステップS8に移る。また、所定のイベントを検出したと判定しなかった場合(ステップS7でNO)には、ステップS7のフローを繰り返す。
【0083】
ステップS8では、ロック機構13によるアクセルペダル11の再ロックを行って、ステップS2に戻り、フローを繰り返す。よって、制御装置15が請求項の再ロック判定部に相当する。具体的には、ソレノイドアクチュエータに信号を送ってソレノイドアクチュエータを駆動させ、アクセルペダル11のロックピンRPを差し込むことでアクセルペダル11のロックを行う。なお、再ロックを行った場合には、制御装置15がアクチュエータ等を介してアクセル操作許可受け付け部14をオフ状態に移行させるものとする。
【0084】
続いて、図5を用いて、発進制御システム100の状態遷移についての説明を行う。なお、図5は、発進制御システム100の状態遷移の一例を示す模式図である。
【0085】
まず、図5のA1で示す、施錠・停車中(乗員なし)状態は、自車両が施錠されて停車しており、乗員が乗車していない状態である。この場合には、メインスイッチ6はオフ状態(図中のメインスイッチオフ)であり、シフトは「P」のポジションでロック(図中のシフト「P」ロック)されている。なお、ここで言うところのロックは、ロック機構13によるロックとは異なり、ブレーキペダル9を操作しながらでないとシフトを「P」や「N」から移行させることができないようにする周知のシフトロックを示している。また、アクセルペダル11は、ロック機構13によってロック(図中のアクセルペダルロック)されている。
【0086】
施錠・停車中(乗員なし)状態において、自車両が開錠され、乗員が乗車すると、B1で示す、開錠・停車中(乗員あり)状態に移行する。この場合には、メインスイッチ6はオフ状態、アクセルペダル11はロックされた状態であり、シフトは「P」または「N」のポジションでロック(図中のシフト「P」or「N」ロック)されている。なお、開錠・停車中(乗員あり)状態において、乗員が降車していなくなり、自車両が施錠されると施錠・停車中(乗員なし)状態に戻る。
【0087】
開錠・停車中(乗員あり)状態において、メインスイッチ6が操作されてオン状態になると、C1で示す、モータ始動準備完了状態に移行する。モータ始動準備完了状態は、前述したモータ3の始動準備が完了された状態である。この場合には、アクセルペダル11がロックされていること、およびシフトが「P」または「N」のポジションでロックされていることは開錠・停車中(乗員あり)状態と変わらないが、メインスイッチ6がオン状態となる。
【0088】
モータ始動準備完了状態において、ブレーキペダル9の操作が行われつつ、アクセル操作許可受け付け部14が操作されてオン状態になると、Dで示すアクセルペダルロック解除状態に移行する。アクセルペダルロック解除状態は、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックが解除された状態である。この場合には、メインスイッチ6がオン状態であること、およびシフトが「P」または「N」のポジションでロックされていることはモータ始動準備完了状態と変わらないが、アクセルペダル11のロックが解除された状態(図中のアクセルペダルロック解除)となる。
【0089】
なお、アクセルペダルロック解除状態において、前述の所定のイベントを制御装置15で検出した場合には、ロック機構13によってアクセルペダル11が再ロックされ、モータ始動準備完了状態に戻る。
【0090】
また、アクセルペダルロック解除状態において、ブレーキペダル9の操作(図中のブレーキ操作)をしながらシフトを「P」や「N」のポジションから「D」や「R」のポジションに切り替える操作(図中のシフト操作「P」or「N」から「D」or「R」)が行われると、Eで示す停車状態に移行する。この場合には、メインスイッチ6がオン状態であること、およびアクセルペダル11のロックが解除された状態であることはアクセルペダルロック解除状態と変わらないが、シフトが「D」または「R」のポジションに変わる。
【0091】
なお、停車状態において、ブレーキペダル9の操作をしながらシフトを「D」や「R」のポジションから「P」や「N」のポジションに切り替える操作(図中のシフト操作「D」or「R」から「P」or「N」)が行われると、アクセルペダルロック解除状態に戻る。
【0092】
また、停車状態において、アクセルペダル11が操作(図中のアクセル操作)されると、F1で示す、走行状態に移行する。走行状態は、自車両が発進して走行している状態である。この場合でも、メインスイッチ6がオン状態であること、アクセルペダル11のロックが解除された状態であること、およびシフトが「D」または「R」のポジションにあることは停車状態と変わらない。
【0093】
走行状態では、アクセルペダル11が操作されると、その踏み込み量に応じた自車両の加速が行われることになる。また、走行状態において、ブレーキペダル9が操作(図中のブレーキ操作)されると、G1で示す、制動状態に移行する。制動状態は、ブレーキペダル9の操作に応じて自車両の減速が行われている状態である。なお、ブレーキペダル9の操作に応じた減速は、回生ブレーキによるものであってもよいし、ブレーキパッドなどによるものであってもよい。
【0094】
制動状態に移行した場合でも、メインスイッチ6がオン状態であること、アクセルペダル11のロックが解除された状態であること、およびシフトが「D」または「R」のポジションにあることは走行状態と変わらない。制動状態では、ブレーキペダル9の踏み込み量に応じた自車両の減速が行われることになる。なお、制動状態において、アクセルペダル11が操作されると走行状態に戻る。また、制動状態において、ブレーキペダル9の操作によって自車両の速度が0(図中の速度ゼロ)になると停車状態に移行する。
【0095】
なお、変速機(トランスミッション)付の電動二輪車に発進制御システム100を適用した場合であっても、図5に示すのと同様の状態遷移を示すことになる。また、マニュアルトランスミッション(MT)を採用している電動車両に発進制御システム100を適用した場合には、シフトの切り替え時にクラッチ操作が必要となることを除けば、図5に示すのと同様の状態遷移を示すことになる。
【0096】
続いて、図6を用いて、電動スクータなどの変速機なしの電動二輪車に発進制御システム100を適用した場合の状態遷移についての説明を行う。なお、図6は、発進制御システム100を変速機なしの電動二輪車に適用した場合の状態遷移の一例を示す模式図である。
【0097】
発進制御システム100を変速機なしの電動二輪車に適用した場合も、シフトの操作がなくなることを除けば図5に示した例と同様になる。詳しくは、図6中のA2で示す施錠・停車中(乗員なし)状態は、図5中のA1で示す施錠・停車中(乗員なし)状態からシフトが「P」のポジションでロックされている点を除いた状態である。また、図6中のB2で示す開錠・停車中(乗員あり)状態は、図5中のB1で示す開錠・停車中(乗員あり)状態からシフトが「P」または「N」のポジションでロックされている点を除いた状態である。さらに、図6中のC2で示すモータ始動準備完了状態は、図5中のC1で示すモータ始動準備完了状態からシフトが「P」または「N」のポジションでロックされている点を除いた状態である。
【0098】
また、図6中のHで示すアクセルペダルロック解除停車状態は、図5中のDで示すアクセルペダルロック解除状態と図5中のEで示す停車状態とを合わせた状態からシフトが「P」、「N」または「D」、「R」のポジションにある点を除いた状態である。さらに、図6中のF2で示す走行状態は、図5中のF1で示す走行状態からシフトが「D」または「R」のポジションにある点を除いた状態である。また、図6中のG2で示す停車状態は、図5中のG1で示す停車状態からシフトが「D」または「R」のポジションにある点を除いた状態である。
【0099】
このように、本実施形態の構成によれば、アクセル操作許可受け付け部14を操作して、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックを解除しない限り、自車両が発進することはない。
【0100】
また、以上の構成によれば、アクセル操作許可受け付け部14とメインスイッチ6およびブレーキペダル9とが別体に設けられるので、ドライバが不用意にメインスイッチ6を操作してしまってモータ3の始動準備が完了した状態とブレーキペダル9が操作されていない状態とが重なってしまった場合であっても、ドライバがアクセル操作許可受け付け部14を操作しない限り自車両の発進を行うことができない。従って、上述のような状況となった場合であっても、電動車両の発進をより確実に防止することが可能になる。
【0101】
さらに、アクセル操作許可受け付け部14をドライバが操作して発進の意思を明確に示さない限りアクセルペダル11を操作しようとしてもロック機構13のロックによって自由に踏み込めず、操作が制限されることから、発進可能な状態にあるのか否かをドライバが容易に判別することができる。よって、この点でも、ドライバの意図しないタイミングでの電動車両の発進をより確実に防止することが可能になる。
【0102】
また、以上の構成によれば、ドライバが気付かないうちに再びロックが行われた場合など、ロック機構13によってアクセルペダル11のロックが行われていることを知らないドライバが自車両を発進させようとした場合であっても、発進しようとしてアクセルペダル11を所定回数操作したところでロックの解除が必要である旨の報知を受けるので、この報知を頼りにアクセル操作許可受け付け部14を操作してロックを解除することができる。従って、ドライバにとっての利便性が向上する。
【0103】
なお、前述の実施形態では、制御装置15は、ブレーキスイッチ10から入力される信号をもとにブレーキペダル9が操作を受けたことを検出しているときに、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であると判定した場合に、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックの解除を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、制御装置15は、単に、アクセル操作許可受け付け部14がオン状態であると判定した場合に、ロック機構13によるアクセルペダル11のロックの解除を行う構成としてもよい。
【0104】
また、前述の実施形態では、アクセル操作許可受け付け部14が操作された場合に、制御装置15を介して電気信号によってロック機構13にアクセルペダル11のロックの解除を行わせる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、アクセル操作許可受け付け部14とロック機構13とを、1本のワイヤやクランク等の伝達部品を介したワイヤ等で機械的に接続し、アクセル操作許可受け付け部14に対する操作をロック機構13に伝達してロック機構13にアクセルペダル11のロックの解除を行わせる構成としてもよい。
【0105】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 バッテリ、2 インバータ、3 モータ(電動機)、4 表示装置(報知部)、5 音声出力装置(報知部)、6 メインスイッチ(始動要求受け付け部)、7 着座センサ(着座検出部)、8 シフトポジションセンサ(シフトポジション検出部)、9 ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、10 ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出部)、11 アクセルペダル(アクセル操作部材)、12 アクセルポジションセンサ(アクセル操作検出部)、13 ロック機構(アクセル操作制限機構部)、14 アクセル操作許可受け付け部、15 制御装置(始動準備部、駆動制御部、停止検出部、報知判定部、ロック解除部、再ロック判定部)、16 振動発生装置(報知部)、100 発進制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源としての電動機と、
ドライバからの始動のための操作を受け付ける始動要求受け付け部と、
前記始動要求受け付け部で操作を受け付けたことに応じて、前記電動機の始動準備を完了させる始動準備部と、
ドライバからの制動を要求する旨の操作を受け付けるブレーキ操作部材と、
ドライバからの加速を要求する旨の操作を受け付けるアクセル操作部材と、
前記始動準備部による前記電動機の始動準備が完了していた場合、前記操作による前記アクセル操作部材の変位に応じて前記電動機を駆動させる駆動制御部とを備えた電動車両に搭載される発進制御装置であって、
前記アクセル操作部材を、ドライバからの外力が加わっても、前記駆動制御部で前記電動機を駆動させるだけの前記変位が生じないように機械的に固定するロックを行うことで前記アクセル操作部材の操作を制限するアクセル操作制限機構部と、
ドライバによるアクセル操作部材のロックを解除するための操作を受け付けるアクセル操作許可受け付け部と、
前記アクセル操作許可受け付け部で操作を受け付けたことをもとに、前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを解除するロック解除部と、を備え、
前記アクセル操作許可受け付け部は、前記始動要求受け付け部および前記ブレーキ操作部材とは別体に設けられており、
前記始動準備部による前記電動機の始動準備が完了している場合であっても、前記アクセル操作許可受け付け部で操作を受け付けるまでは、前記ロック解除部で前記ロックを解除しないことを特徴とする発進制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセル操作許可受け付け部は、ドライバが片手もしくは片足で、前記アクセル操作許可受け付け部と、前記始動要求受け付け部、前記ブレーキ操作部材、および前記アクセル操作部材のいずれともが同時に操作できない位置関係となるように、前記始動要求受け付け部、前記ブレーキ操作部材、および前記アクセル操作部材とは別体に設けられていることを特徴とする発進制御装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電動車両は、ドライバからのシフトポジションを変更する旨の操作を受け付けるシフト操作部材を備えるものであって、
前記アクセル操作許可受け付け部は、ドライバが片手もしくは片足で、前記アクセル操作許可受け付け部と、前記始動要求受け付け部、前記ブレーキ操作部材、前記アクセル操作部材、および前記シフト操作部材のいずれともが同時に操作できない位置関係となるように、前記始動要求受け付け部、前記ブレーキ操作部材、前記アクセル操作部材、および前記シフト操作部材とは別体に設けられていることを特徴とする発進制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記ロック解除部での前記ロックの解除後、所定のイベントを検知した場合に前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを再び行わせる再ロック判定部を備えることを特徴とする発進制御装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記電動車両は、ドライバからのシフトポジションを変更する旨の操作を受け付けるシフト操作部材を備えるものであって、
前記電動車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部を備え、
前記再ロック判定部は、前記シフトポジション検出部でシフトポジションとしてパーキングポジションおよびニュートラルポジションのうちのいずれかを検出している状態が所定時間以上続いた場合に、前記所定のイベントを検知したものとして前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを再び行わせることを特徴とする発進制御装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記電動車両の運転席にドライバが着座しているか否かを検出する着座検出部を備え、
前記再ロック判定部は、前記着座検出部で前記運転席にドライバが着座していると検出しなかった場合に、前記所定のイベントを検知したものとして前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを再び行わせることを特徴とする発進制御装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項において、
前記電動機が停止しているとともに前記電動機の始動準備が完了していない状態にあることを検出する停止検出部を備え、
前記再ロック判定部は、前記停止検出部で前記電動機が停止しているとともに前記電動機の始動準備が完了していない状態にあることを検出した場合に、前記所定のイベントを検知したものとして前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを再び行わせることを特徴とする発進制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項において、
前記加速部は、前記始動準備部による前記電動機の始動準備が完了していた場合、前記操作による前記アクセル操作部材の所定量以上の変位に応じて前記電動機を駆動させるものであって、
前記アクセル操作制限機構部は、前記アクセル操作部材を、ドライバからの外力が加わっても、多くとも前記所定量以上の変位が生じないように機械的に固定するロックを行うことで前記アクセル操作部材の操作を制限するものであることを特徴とする発進制御装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記アクセル操作部材が操作を受けたことを検出するアクセル操作検出部と、
前記アクセル操作制限機構部による前記ロックが行われている状態において、前記アクセル操作部材が操作を受けたことを前記アクセル操作検出部で所定回数または所定時間以上検出したか否かを判定する報知判定部と、
前記報知判定部で肯定判定した場合に、前記アクセル操作制限機構部による前記ロックの解除が必要である旨の報知を行う報知部と、を備えることを特徴とする発進制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項において、
前記ブレーキ操作部材が操作を受けたことを検出するブレーキ操作検出部を備え、
前記ロック解除部は、前記ブレーキ操作検出部でブレーキ操作部材が操作を受けたことを検出している最中に前記アクセル操作許可受け付け部で操作を受け付けたときに、前記アクセル操作制限機構部による前記ロックを解除することを特徴とする発進制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−60768(P2012−60768A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201313(P2010−201313)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】