説明

発電システム

【課題】定圧貫流ボイラを使用して過熱器出口蒸気圧力を変圧運転する場合に、さらにプラント効率を向上できる発電システムを提供することである。
【解決手段】過熱器出口蒸気圧力制御装置38は、蒸気タービン17の負荷が定格負荷未満の予め定めた低負荷領域においては、蒸気タービンの負荷に応じて過熱器15の出口蒸気圧力を変圧運転し、蒸気タービンの負荷が低負荷領域を越えた状態から定格負荷までは過熱器の出口蒸気圧力を予め定めた一定圧力の定圧運転を行う。また、火炉出口蒸気圧力制御装置37は、過熱器出口蒸気圧力制御装置38が変圧運転を行う際には、火炉出口蒸気圧力を定圧貫流ボイラの基準圧力未満の許容範囲内の減圧基準圧力に減圧制御し、過熱器出口蒸気圧力制御装置38が過熱器の出口蒸気圧力の定圧運転を行う際には火炉出口蒸気圧力を定圧貫流ボイラの基準圧力に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炉出口蒸気圧力を所定の基準圧力に維持して運転する定圧貫流ボイラを有する発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所の蒸気発生源であるボイラの運転方式として定圧運転方式と変圧運転方式とがある。定圧運転方式とは、例えば定圧貫流ボイラを使用してボイラの主蒸気圧力を一定に保ち、タービン入口の蒸気加減弁を開閉して蒸気流量を調節する運転方式である(例えば、特許文献1)。一方、変圧運転方式とは、例えば変圧貫流ボイラを使用し蒸気加減弁の開度を一定に保ち、ボイラで発生する主蒸気圧力を変えることによりタービン流入蒸気量を調節して出力制御する方式のことである(例えば、特許文献2)。
【0003】
近年においては、火力発電所はピーク負荷やミドル負荷を受け持つ状況となっており、変動負荷での高効率な運用が求められ、これに伴い、定圧貫流ボイラを用いた定圧運転方式の火力発電所においても変動負荷に高効率に対応できるようにすることが求められている。
【0004】
図4は、定圧運転方式での蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフである。横軸の蒸気タービン負荷(発電機出力)は定格負荷(定格出力)に対する百分率で示している。蒸気タービン負荷が0%である状態は、蒸気タービンに連結された発電機が電力系統に併入され、蒸気タービン(発電機)が無負荷状態で電力系統と同期して回転している状態である。この状態では、ボイラの火炉出口蒸気圧力PWは既に基準圧力PW0に維持されており、過熱器出口蒸気圧力PTも所定圧力PT1に保持されている。火炉出口蒸気圧力PWの基準圧力PW0は、例えば超臨界圧の24.1[MPa]である。
【0005】
蒸気タービン負荷が0%〜25%である起動領域A1においては、蒸気加減弁(CV)の開度を開いて負荷を取り始め、ボイラ絞り弁バイパス(BTB)弁、ボイラ絞り(BT)弁を開操作し、最終的に全開として過熱器出口蒸気圧力PTをその基準圧力PT0まで上昇させる。過熱器出口蒸気圧力PTの基準圧力PT0は、例えば火炉出口蒸気圧力PWの基準圧力PW0の24.1[MPa]と同等もしくは少し低い圧力である。
【0006】
そして、蒸気タービン負荷が25%〜100%以上である定圧領域A2においては、ボイラの火炉出口蒸気圧力PW及び過熱器出口蒸気圧力PTの双方が一定圧力(基準圧力PW0、PT0)に保持され、蒸気加減弁(CV)の開度を開いて負荷を増加減する。
【0007】
このように、蒸気タービンに供給される蒸気の圧力(過熱器出口蒸気圧力PT)は、基準圧力PT0(ほぼ超臨界圧)に一定に保持され、蒸気タービンに連結された発電機の発電量は、蒸気タービンに流入する蒸気の圧力と蒸気加減弁の開度との積にほぼ比例することから、蒸気タービンに要求される負荷(発電機の発電量)が低い場合は、蒸気加減弁の開度を大きく絞る必要がある。その結果、蒸気加減弁の開度の絞りに伴って蒸気加減弁の下流側の蒸気の圧力損失によって蒸気タービンの効率が低下する。
【0008】
また、蒸気加減弁の開度の絞り幅が大きくなれば断熱膨張の影響が顕著に現れるため、蒸気タービンに流入する蒸気の温度差も大きくなる。従って、その温度差による蒸気温度の変化率に制約をかける必要が生じ、その場合には、蒸気加減弁の開度変化率にも制約が課されることとなる。その結果、蒸気タービンが要求する負荷に追従することができないことが発生する。
【0009】
そこで、出願人は、定圧貫流ボイラを用いてボイラの火炉出口蒸気圧力PWを基準値PW0に保ち、しかも蒸気加減弁の開度調節の際に生じる蒸気タービンの効率低下を防止できる過熱器出口蒸気圧力を可変とした過熱器変圧運転方式を採用した発電システムを開発し、特願2007−91784号として出願した。
【0010】
図5は、特願2007−91784号における過熱器出口蒸気圧力を可変とした過熱器変圧運転方式での蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフである。横軸の蒸気タービン負荷(発電機出力)は定格負荷(定格出力)に対する百分率で示している。図4に示した定圧運転方式の場合と異なる点は、起動領域A1と定圧領域A2との間に変圧領域A3を設け、変圧領域A3において過熱器出口蒸気圧力PTを蒸気タービン負荷に応じて変化させるようにしたものである。変圧領域A3は、蒸気タービン負荷が定格負荷未満の予め定めた低負荷領域(15%〜75%)である。
【0011】
起動領域A1は、蒸気タービン負荷0%〜15%とし、従来の蒸気タービン負荷0%〜25%までよりも狭い範囲としている。そして、変圧領域A3では、ボイラ絞り弁バイパス(BTB)弁及びボイラ絞り(BT)弁を開操作し、蒸気タービン負荷15%〜75%の範囲で負荷に応じて過熱器出口蒸気圧力PTを変化させる。蒸気タービン負荷75%〜100%以上である定圧領域A2においては、ボイラの火炉出口蒸気圧力PW及び過熱器出口蒸気圧力PTの双方が一定圧力(基準圧力PW0、PT0)に保持され、蒸気加減弁(CV)の開度を開いて負荷を増加減する。
【0012】
このように、特願2007−91784号のものでは、変圧領域A3において、蒸気タービン負荷に応じてボイラ絞りバイパス弁とボイラ絞り弁との開度を調節し、火炉出口蒸気圧力PWを維持しつつ過熱器出口蒸気圧力PTを蒸気タービン負荷が小さいときは小さくなるように変化させ、蒸気加減弁の動作幅を小さくする。これにより、蒸気加減弁の下流側の蒸気の圧力損失を小さくして、蒸気タービンの効率を向上させる。また、蒸気加減弁の動作幅を小さくして、蒸気タービンに流入する蒸気の温度変化を低減させ、蒸気タービンの寿命を延長する。さらに、蒸気加減弁の動作幅の制約をなくし、蒸気タービンに流入する蒸気の流量を自由に調節できるようにし、蒸気タービンの要求発電量に対する追従性の向上を図っている。
【特許文献1】特開平9−320504号公報
【特許文献2】特開平5−87303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特願2007−91784号のものでは、蒸気タービンの効率を向上させ、蒸気タービンの寿命を延長でき、さらには、蒸気タービンの要求発電量に対する追従性の向上も図ることができる。しかし、プラント効率向上については、まだ改善の余地がある。すなわち、変圧領域A3においては、ボイラが定圧貫流ボイラであることから火炉出口蒸気圧力PWを基準値PW0に維持しているが、蒸気タービン負荷が小さいときは過熱器出口蒸気圧力PTが小さくなるように変圧運転しているので、蒸気タービン負荷が小さいときは火炉出口蒸気圧力PWを基準値PW0に維持する必要はない。このように、タービン負荷が小さいときであっても火炉出口蒸気圧力PWは基準値PW0に維持するようにしているので、プラント効率向上については、まだ改善の余地がある。
【0014】
本発明の目的は、定圧貫流ボイラを使用して過熱器出口蒸気圧力を変圧運転する場合に、さらにプラント効率を向上させることができる発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明に係わる発電システムは、燃料、水、空気が供給され燃料を燃焼させて蒸気を発生させる定圧貫流ボイラの火炉と、前記火炉で発生した蒸気を過熱する過熱器と、前記火炉と前記過熱器との間の主蒸気管に設けられ前記過熱器に供給される蒸気を調節するボイラ絞り弁と、前記ボイラ絞り弁をバイパスして設けられたボイラ絞り弁バイパス弁と、前記過熱器で過熱された蒸気が供給され連結された発電機を駆動する蒸気タービンと、前記過熱器と前記蒸気タービンとの間の主蒸気管に設けられ前記蒸気タービンに供給される蒸気流量を制御する蒸気加減弁と、前記蒸気タービンの負荷が定格負荷未満の予め定めた低負荷領域においては前記蒸気タービンの負荷に応じて前記ボイラ絞り弁及び前記ボイラ絞り弁バイパス弁の開度を調節して前記過熱器の出口蒸気圧力を変圧運転し、前記蒸気タービンの負荷が低負荷領域を越えた状態から定格負荷までは前記過熱器の出口蒸気圧力を予め定めた一定圧力の定圧運転を行う火炉出口蒸気圧力制御装置と、前記火炉出口蒸気圧力制御装置が変圧運転を行う際には前記火炉出口蒸気圧力を前記定圧貫流ボイラの基準圧力未満の許容範囲内の減圧基準圧力に減圧制御し、前記火炉出口蒸気圧力制御装置が前記過熱器の出口蒸気圧力の定圧運転を行う際には前記火炉出口蒸気圧力を前記定圧貫流ボイラの基準圧力に制御する過熱器出口蒸気圧力制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係わる発電システムは、請求項1の発明において、前記過熱器出口蒸気圧力制御装置は、前記火炉出口蒸気圧力を減圧制御する際には、前記火炉出口蒸気圧力が前記定圧貫流ボイラの基準圧力と圧力低警報値との間の圧力となるように減圧制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過熱器出口蒸気圧力が小さくなるように変圧運転されているときは、火炉出口蒸気圧力を定圧貫流ボイラの基準圧力未満の許容範囲内の減圧基準圧力に減圧制御するので、火炉に供給する給水流量を低減できる。従って、給水流量を供給するボイラ給水ポンプの軸動力を軽減でき、プラント効率を向上させることができる。
【0018】
また、火炉出口蒸気圧力の減圧制御は、火炉出口蒸気圧力が定圧貫流ボイラの基準圧力と圧力低警報値との間の圧力となるように減圧制御するので、定圧貫流ボイラの運転許容範囲内での運転が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係わる発電システムの構成図である。定圧貫流ボイラの火炉11には、燃料、水、空気が供給され、火炉11は燃料を燃焼させて水管内の水を蒸発させて蒸気を発生させる。燃料は、LNGやLPGなどの気体燃料、石炭やバイオ燃料などの固体燃料または石油などの液体燃料であり、火炉11のバーナにより燃焼する。また、水は後述の復水器で凝縮された凝縮水がボイラ給水ポンプにより火炉11内の水管に供給され、ボイラ循環ポンプ12により火炉11内の水管を流通させる。
【0020】
火炉11で発生した蒸気はボイラ絞り弁(BT弁)13またはボイラ絞り弁バイパス弁(BTB弁)14を介して、第1過熱器15a及び第2過熱器15bに導かれる。第1過熱器15aと第2過熱器15bとの間には減温器16が設けられ、減温器16にて第1過熱器15aで過熱された過熱蒸気を冷却する。第2過熱器15bで温度調節された過熱蒸気は、主蒸気止め弁(MSV)35及び蒸気加減弁(CV)36を介して蒸気タービン17のうちの高圧蒸気タービン17aに導かれる。高圧蒸気タービン17aで仕事を終えた蒸気は再熱器18で再過熱されて中圧蒸気タービン17bに導かれ、さらに、中圧蒸気タービン17bで仕事を終えた蒸気は低圧蒸気タービン17cに導かれる。高圧蒸気タービン17a、中圧蒸気タービン17b、低圧蒸気タービン17cは、発電機19を駆動する。そして、低圧蒸気タービン17cで仕事を終えた蒸気は復水器20で凝縮され水に戻される。
【0021】
復水器20で凝縮された水は、復水ポンプ21で低圧給水加熱器22及び脱気器23に供給され、脱気器23で脱気された給水はボイラ給水ポンプ24で高圧給水加熱器25に供給される。高圧給水加熱器25で加熱された給水は、過熱器スプレー圧力調節弁(ISPR弁)26及び過熱器スプレー調節弁27を介して減温器16に圧送される。減温器16では、過熱蒸気に水を注入することによって過熱蒸気の温度制御を行うが、水を注入するためには給水圧力を蒸気圧力より高くする必要がある。そこで、可動ノズル28の開閉により、減温器16に供給される水の圧力を過熱蒸気圧力よりも高く維持することになる。また、可動ノズル28を介して節炭器29へ圧送された水は、ボイラ循環ポンプ12によって火炉11へ導かれ、再び蒸気として利用される。
【0022】
次に、ボイラ起動用抽気弁(BE弁)30及びボイラ起動用抽気弁バイパス弁(BEB弁)31は、ボイラの起動過程で使用されるものである。ボイラの起動時には、ボイラ絞り弁13、ボイラ絞り弁バイパス弁14、ボイラ起動用抽気弁30、ボイラ起動用抽気弁バイパス弁31はすべて閉じている。まず、ボイラの火炉11のバーナ点火後にボイラ起動用抽気弁バイパス弁31を開き、火炉11からの蒸気を気水分離器(WS)32に供給しつつ火炉出口蒸気温度を上昇させる。この場合、気水分離器32で分離された水はウォータドレン弁(WD弁)を介して復水器20に排出され、また、調節弁(SP弁)34で気水分離器32の圧力制御を行う。そして、火炉出口蒸気温度が所定温度(例えば、250℃)になると、ボイラ起動用抽気弁バイパス弁31を閉じてボイラ起動用抽気弁30を開き、弁の切り替えを行う。さらに、火炉出口蒸気温度が所定温度(例えば、400℃)になると、ボイラ起動用抽気弁30を閉じてボイラ絞り弁バイパス弁14を開く。
【0023】
次に、火炉出口蒸気圧力制御装置37は、ボイラ絞り弁13及びボイラ絞り弁バイパス弁14の開度を調節して火炉出口蒸気圧力PWを調節するものである。一方、過熱器出口蒸気圧力制御装置38は、ボイラの火炉11に供給される燃料流量、給水流量、空気流量を調節して、過熱器出口蒸気圧力PTを調節するものである。燃料流量や空気流量の調節は火炉11のバーナに供給される燃料流量や空気流量を調節して行う。給水流量の調節はボイラ給水ポンプ24の回転数を制御して行う。
【0024】
過熱器出口蒸気圧力制御装置38は、蒸気タービン17の負荷が定格負荷未満の予め定めた低負荷領域においては、過熱器15の出口蒸気圧力PTを変化させる変圧運転を行う。また、蒸気タービン17の負荷が低負荷領域を越えた状態から定格負荷までは、過熱器の出口蒸気圧力PTを予め定めた一定圧力(基準圧力PT0)の定圧運転を行う。
【0025】
そして、火炉出口蒸気圧力制御装置37は、過熱器出口蒸気圧力制御装置38が変圧運転を行う際には火炉出口蒸気圧力PWを定圧貫流ボイラの基準圧力PW0未満の許容範囲内の減圧基準圧力に減圧制御する。また、過熱器出口蒸気圧力制御装置38が過熱器出口蒸気圧力PTの定圧運転を行う際には火炉出口蒸気圧力PWを定圧貫流ボイラの基準圧力PW0に制御する。
【0026】
図2は本発明の実施の形態に係わる発電システムでの蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフである。横軸の蒸気タービン負荷(発電機出力)は定格負荷(定格出力)に対する百分率で示している。図5に示した過熱器変圧運転方式の場合と異なる点は、起動領域A1及び変圧領域A3において、火炉出口蒸気圧力PWを定圧貫流ボイラの基準圧力PW0未満の許容範囲内の減圧基準圧力PW1に減圧制御するようにしたものである。
【0027】
蒸気タービン負荷が0%〜15%の起動領域A1では、火炉出口蒸気圧力PWは減圧基準圧力PW1に保持されている。減圧基準圧力PW1は後述するように定圧貫流ボイラの基準圧力PW0未満の許容範囲内の圧力である。蒸気タービン負荷が0%である状態は、蒸気タービン17に連結された発電機18が電力系統に併入され、蒸気タービン(発電機)が無負荷状態で電力系統と同期して回転している状態である。
【0028】
また、蒸気タービン負荷が0%である状態では、ボイラ絞り弁13及びボイラ絞り弁バイパス弁14は全閉であり、ボイラ起動用抽気弁30が開いており、調節弁34で気水分離器32の圧力制御を行っている。これにより、過熱器出口蒸気圧力PTは所定圧力PT1に保持されている。
【0029】
この起動領域A1においては、蒸気加減弁36の開度を開いて負荷を取り始め、蒸気タービン負荷が5%程度になるとボイラ起動用抽気弁30及び調節弁34を閉じる。火炉出口蒸気圧力制御装置37は、ボイラ起動用抽気弁30及び調節弁34が閉じられると、ボイラ絞り弁バイパス弁14を開操作して火炉出口蒸気圧力PWを減圧基準圧力PW1に保ちつつ火炉11からの蒸気を過熱器15に供給する。一方、過熱器出口蒸気圧力制御装置38は、ボイラの火炉11に供給される燃料流量、給水流量、空気流量を調節して、過熱器出口蒸気圧力PTを上昇させる。これにより、タービン負荷も増加する。
【0030】
そして、タービン負荷が15%以上となり、蒸気タービン負荷15%〜75%の変圧領域A3となると、火炉出口蒸気圧力制御装置37は、ボイラ絞り弁バイパス弁14を全開とはせず、過熱器出口蒸気圧力PTが急激に上昇しない程度の開度(例えば50%)で保持する。この際には、火炉出口蒸気圧力PWの減圧基準圧力PW1と過熱器出口蒸気圧力PTとの差圧がボイラ絞り弁13の許容差圧以内となるように、ボイラ絞り弁バイパス弁14の開度を調節する。
【0031】
ボイラ絞り弁バイパス弁14の開度を一定開度(例えば50%)で保持することにより、過熱器出口蒸気圧力PTは緩やかに上昇する。その後、タービン負荷がある程度上昇すると、火炉出口蒸気圧力制御装置37は火炉出口蒸気圧力PWを減圧基準圧力PW1に保ちつつボイラ絞り弁13を開き始める。
【0032】
このように、変圧領域A3では、火炉出口蒸気圧力制御装置37により、ボイラの火炉出口蒸気圧力PWが減圧基準圧力PW1に維持された状態で、ボイラ絞り弁バイパス弁14及びボイラ絞り弁13を開操作し、過熱器出口蒸気圧力制御装置38により、蒸気タービン負荷15%〜75%の範囲で蒸気タービン負荷に応じて過熱器出口蒸気圧力PTを変化させる変圧運転を行う。
【0033】
次に、蒸気タービン負荷75%〜100%以上である定圧領域A2においては、ボイラの火炉出口蒸気圧力PWを減圧基準圧力PW1から基準圧力PW0に昇圧し、火炉出口蒸気圧力PWを基準圧力PW0に保持するとともに過熱器出口蒸気圧力PTも基準圧力PT0に保持し定圧運転に移行する。
【0034】
火炉出口蒸気圧力制御装置37は、タービン負荷が75%に近づいてくると、例えばタービン負荷が70%程度になると、ボイラの火炉出口蒸気圧力PWが基準値PW0となるように、ボイラ絞り弁バイパス弁14及びボイラ絞り弁13を開操作し、最終的に全開として、タービン負荷が75%〜100%においては火炉出口蒸気圧力PWが基準値PW0となる定圧運転を行う。また、過熱器出口蒸気圧力制御装置38は、タービン負荷が75%に近づいてくると、火炉11への燃料流量、給水流量、空気流量を調節し、過熱器出口蒸気圧力PTをその基準圧力PT0まで上昇させ、タービン負荷が75%〜100%においては過熱器出口蒸気圧力PTが基準圧力PT0となる定圧運転を行う。
【0035】
次に、図3は、火炉出口蒸気圧力PWの基準値PW0、減圧基準圧力PW1、圧力低警報値ANN、火炉出口蒸気圧力PWの低下によるトリップ値TRIPの説明図である。火炉出口蒸気圧力PWの基準値PW0が、例えば、超臨界圧の24.1[MPa]である場合の定圧貫流ボイラは、その圧力低警報値ANNは23.0[MPa]であり、火炉出口蒸気圧力PWの低下によるトリップ値TRIPは22.1[MPa]である。この圧力低警報値ANN(23.0[MPa])及びトリップ値TRIP(22.1[MPa])を遵守して定圧貫流ボイラを運転するには、火炉出口蒸気圧力PWが圧力低警報値ANN(23.0[MPa])以下とならないように運転すればよいことになる。この場合の減圧制御運転の許容範囲ΔPWは、基準値PW0(24.1[MPa])から圧力低警報値ANN(23.0[MPa])までの範囲である。
【0036】
そこで、本発明の実施の形態では、変圧領域A3で過熱器出口蒸気圧力PTの変圧運転を行う際に、火炉出口蒸気圧力PWを減圧制御するにあたり、火炉出口蒸気圧力PWが圧力低警報値ANN(23.0[MPa])以下とならない許容範囲ΔPW内の減圧基準圧力PW1で減圧制御を行う。減圧基準圧力PW1としては、例えば、基準値PW0(24.1[MPa])〜圧力低警報値ANN(23.0[MPa])を満たす23.6[MPa]を採用する。
【0037】
本発明の実施の形態によれば、蒸気タービン負荷が小さいときは過熱器出口蒸気圧力PTが小さくなるように、過熱器出口蒸気圧力PTが変圧運転されているときは、火炉出口蒸気圧力PWが圧力低警報値ANN(23.0[MPa])以下とならない許容範囲ΔPW内の減圧基準圧力PW1で減圧制御を行うので、減圧された火炉出口蒸気圧力PWを賄うにあたり、火炉11に供給する給水流量を低減できる。すなわち、給水流量を供給するボイラ給水ポンプ24の軸動力を軽減できるので、全体としてプラント効率を向上させることができる。
【0038】
また、火炉出口蒸気圧力PWの減圧制御は、火炉出口蒸気圧力PWが定圧貫流ボイラの基準圧力PW0と圧力低警報値ANNとの間の圧力となるように減圧制御するので、定圧貫流ボイラの運転許容範囲内での運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係わる発電システムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる発電システムでの蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフ。
【図3】本発明の実施の形態に係わる発電システムでの火炉出口蒸気圧力PWの基準値PW0、減圧基準圧力PW1、圧力低警報値ANN、トリップ値TRIPの説明図。
【図4】定圧貫流ボイラの定圧運転方式での蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフ。
【図5】定圧貫流ボイラの過熱器出口蒸気圧力を可変とした過熱器変圧運転方式での蒸気タービン負荷と蒸気圧力との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0040】
11…火炉、12…ボイラ循環ポンプ、13…ボイラ絞り弁、14…ボイラ絞り弁バイパス弁、15…過熱器、16…減温器、17…蒸気タービン、18…再熱器、19…発電機、20…復水器、21…復水ポンプ、22…低圧給水加熱器、23…脱気器、24…ボイラ給水ポンプ、25…高圧給水加熱器、26…過熱器スプレー圧力調節弁、27…過熱器スプレー調節弁、28…可動ノズル、29…節炭器、30…ボイラ起動用抽気弁、31…ボイラ起動用抽気弁バイパス弁、32…気水分離器、33…ウォータドレン弁、34…調節弁、35…主蒸気止め弁、36…蒸気加減弁、37…火炉出口蒸気圧力制御装置、38…過熱器出口蒸気圧力制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料、水、空気が供給され燃料を燃焼させて蒸気を発生させる定圧貫流ボイラの火炉と、
前記火炉で発生した蒸気を過熱する過熱器と、
前記火炉と前記過熱器との間の主蒸気管に設けられ前記過熱器に供給される蒸気を調節するボイラ絞り弁と、
前記ボイラ絞り弁をバイパスして設けられたボイラ絞り弁バイパス弁と、
前記過熱器で過熱された蒸気が供給され連結された発電機を駆動する蒸気タービンと、
前記過熱器と前記蒸気タービンとの間の主蒸気管に設けられ前記蒸気タービンに供給される蒸気流量を制御する蒸気加減弁と、
前記蒸気タービンの負荷が定格負荷未満の予め定めた低負荷領域においては前記蒸気タービンの負荷に応じて前記過熱器の出口蒸気圧力を変圧運転し、前記蒸気タービンの負荷が低負荷領域を越えた状態から定格負荷までは前記過熱器の出口蒸気圧力を予め定めた一定圧力の定圧運転を行う過熱器出口蒸気圧力制御装置と、
前記過熱器出口蒸気圧力制御装置が変圧運転を行う際には前記ボイラ絞り弁及び前記ボイラ絞り弁バイパス弁の開度を調節して前記火炉出口蒸気圧力を前記定圧貫流ボイラの基準圧力未満の許容範囲内の減圧基準圧力に減圧制御し、前記火炉出口蒸気圧力制御装置が前記過熱器の出口蒸気圧力の定圧運転を行う際には前記火炉出口蒸気圧力を前記定圧貫流ボイラの基準圧力に制御する火炉出口蒸気圧力制御装置とを備えたことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記過熱器出口蒸気圧力制御装置は、前記火炉出口蒸気圧力を減圧制御する際には、前記火炉出口蒸気圧力が前記定圧貫流ボイラの基準圧力と圧力低警報値との間の圧力となるように減圧制御することを特徴とする請求項1記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−19449(P2010−19449A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178347(P2008−178347)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】