説明

発電プラントおよびその運転方法

【課題】系統間の相互干渉による蒸気ヘッダの圧力制御の乱れを防止し、蒸気ヘッダの圧力を安定して制御する。
【解決手段】発電プラント1において、間欠運転系統5の蒸気流量を検出する間欠運転蒸気流量検出手段18と、発電システム系統6の蒸気流量を検出する発電システム蒸気流量検出手段11と、間欠運転系統5の蒸気流量と発電システム系統6の蒸気流量に基づいて蒸気ヘッダ4への圧力調節弁7の開度を補正して蒸気ヘッダ4への蒸気流量を調節する弁開度補正手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自家用などの発電プラントにおいて、蒸気ヘッダの圧力を適正な値に制御する蒸気ヘッダ圧力制御装置を備える発電プラントおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自家用発電プラントなどにおける蒸気ヘッダは、蒸気流入源としてのボイラから減圧装置を介して蒸気が直接供給され、その蒸気流出先としては、発電システム用の脱気器および熱交換器や、工場操業用の高圧蒸気、中圧蒸気および低圧蒸気などがあり、それぞれの蒸気流出先に減圧装置を設置し、これらの2段減圧により最適な圧力の蒸気を供給している。
【0003】
従来の蒸気ヘッダ圧力制御装置は、蒸気ヘッダの圧力を監視し、蒸気の流出により低下した蒸気ヘッダ圧力を設定値まで上昇させるため、必要な蒸気量を蒸気流入源から供給することにより、蒸気ヘッダの圧力を一定に保持している。
【0004】
一方、通常の発電システムにおいて補助蒸気ヘッダの圧力低下を防止するための補助蒸気圧力制御装置としては、例えば特許文献1に記載された技術が知られている。この技術では、補助蒸気ヘッダからの補助蒸気消費量を予測するとともに、軸毎の蒸気消費量及び供給可能蒸気量を演算して、供給可能なプラント軸の補助蒸気圧力調節弁を先行的に動作させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−187803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自家用発電プラントにおいて、従来の蒸気ヘッダ圧力制御装置では、蒸気流出先の蒸気消費比率として発電システム用の脱気器および熱交換器への使用量が半分以上を占めているものの、工場操業側からの蒸気要求量が変動することにより、発電システム側の負荷も変動し、ボイラでの蒸気発生量が不安定となるため、発電システムの蒸気圧力制御に影響を及ぼすこととなる。
【0007】
また、従来の蒸気ヘッダ圧力制御装置では、工場操業用の蒸気が間欠的に使用される場合があり、蒸気流出先の蒸気消費量が急激に変化するため、蒸気ヘッダの圧力の変動要因となる。したがって、系統として相互干渉が発生し易い構成となっていることから、蒸気ヘッダの圧力を安定して制御することが困難である。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、系統間の相互干渉による蒸気ヘッダの圧力制御の乱れを防止し、蒸気ヘッダの圧力を安定して制御可能な発電プラントおよびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る発電プラントは、間欠運転系統および発電システム系統に蒸気を供給する蒸気ヘッダの圧力を制御する蒸気ヘッダ圧力制御装置を備える発電プラントにおいて、前記間欠運転系統の蒸気流量を検出する間欠運転蒸気流量検出手段と、前記発電システム系統の蒸気流量を検出する発電システム蒸気流量検出手段と、前記間欠運転系統の蒸気流量と前記発電システム系統の蒸気流量に基づいて前記蒸気ヘッダへの圧力調節弁の開度を補正して前記蒸気ヘッダへの蒸気流量を調節する弁開度補正手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る発電プラントの運転方法は、間欠運転系統および発電システム系統に蒸気を供給する蒸気ヘッダを備える発電プラントの運転方法であって、前記間欠運転系統の蒸気流量を検出する間欠運転蒸気流量検出ステップと、前記発電システム系統の蒸気流量を検出する発電システム蒸気流量検出ステップと、前記間欠運転蒸気流量検出ステップおよび前記発電システム蒸気流量検出ステップの後に、前記間欠運転系統の蒸気流量と前記発電システム系統の蒸気流量に基づいて前記蒸気ヘッダへの圧力調節弁の開度を補正して前記蒸気ヘッダへの蒸気流量を調節する弁開度補正ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、系統間の相互干渉による蒸気ヘッダの圧力制御の乱れを防止し、蒸気ヘッダの圧力を安定して制御可能となる。これにより、末端の機器に安定した蒸気を供給することができるため、プラントの効率的な運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る発電プラントの蒸気ヘッダ圧力制御装置の一実施形態を示す配管系統図である。
【図2】図1に示した系統図によって実現される自家用発電プラントにおける蒸気ヘッダ圧力制御装置を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る発電プラントの蒸気ヘッダ圧力制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る発電プラントの蒸気ヘッダ圧力制御装置の一実施形態を示す配管系統図である。
【0015】
図1に示すように、自家用発電プラント1は、主としてボイラ2、タービン3、蒸気ヘッダ4、工場操業用の間欠運転系統5、発電システム系統6、これらを接続する蒸気配管などから構成されている。
【0016】
ボイラ2によって供給される高圧蒸気は、タービン3によって消費されるほか、蒸気ヘッダ4を通して工場操業用の間欠運転系統5および発電システム系統6で消費される。蒸気ヘッダ4に流入する蒸気量は、蒸気ヘッダ圧力調節弁7によって制御されている。また、蒸気ヘッダ4には、蒸気ヘッダ圧力検出器8が取り付けられ、この蒸気ヘッダ圧力検出器8により蒸気ヘッダ6の圧力を検出している。
【0017】
蒸気ヘッダ4からの2本の分岐系統のうち、蒸気使用量の多い発電システム系統6では、脱気器圧力制御弁9によって脱気器圧力が調節され、その脱気器10への流量を発電システム流量検出手段としての流量検出器11が検出している。脱気器10には、復水器流量計12、3台の熱交換器13a〜13c、ポンプ14を介して復水器15が順次接続されている。
【0018】
この復水器15には、タービン3からの排気蒸気が供給されて、この水蒸気を復水とし、ポンプ14を駆動されることにより、復水を熱交換器13a〜13c、復水器流量計12を経て脱気器10に供給する。この脱気器10では、復水中の溶存酸素が除去された後、その水が3台の熱交換器16a〜16cを経てボイラ2に供給される。
【0019】
なお、発電システム系統6に供給される蒸気は、上述した脱気器10、3台の熱交換器13a〜13c、3台の熱交換器16a〜16cの他、図示しない蒸気タービンのグランド蒸気用、エゼクタ蒸気用およびウォーミング蒸気用として供給される。
【0020】
一方、間欠運転機器に蒸気を供給する間欠運転系統5では、間欠運転系統制御弁17によって蒸気流量が制御され、それにより生じる流量を間欠運転流量検出手段としての流量検出器18が検出している。この間欠運転系統5では、蒸気ヘッダ4から流入した蒸気が高圧蒸気、中圧蒸気および低圧蒸気として消費される。
【0021】
図2は図1に示した配管系統図によって実現される自家用発電プラントにおける蒸気ヘッダ圧力制御装置を示す制御ブロック図である。なお、図1と同一の部分には、同一の符号を付して説明する。
【0022】
図2に示すように、脱気器10の流量検出器11は、上記のように脱気器10に流入する蒸気流量を検出し、流量制御回路20に蒸気流量の値を出力する。この流量制御回路20は、流量制御演算を行い、弁開度値として必要蒸気量補正回路21に出力する。
【0023】
この必要蒸気量補正回路21は、復水器流量計12による脱気器10の入口復水流量の値と発電負荷を取り込み、その値を元に演算を行い、脱気器10で必要とされる蒸気量を演算する。そして、この蒸気量以上の蒸気が流れることによる蒸気ヘッダ4の圧力の降下を引き起こさないように、弁開度に上限制限をかけ、その弁開度値を開度値信号として脱気器圧力制御弁9に出力する。この脱気器圧力制御弁9は、その弁開度値に従って脱気器10に流入する蒸気量を調節する。
【0024】
一方、間欠運転系統5における流量検出器18は、間欠運転する蒸気使用時に系統に流入する蒸気量を検出し、その蒸気量を制御弁開度演算回路23に出力する。この制御弁開度演算回路23は、流量検出器18からの出力信号と、制御弁開閉回路24からの開閉指令信号とを受け取り、これらの信号から制御弁開度信号を出力する回路である。間欠運転系統制御弁17は、その弁開度値で、間欠運転系統5において使用する蒸気を制御する。
【0025】
脱気器10の必要蒸気量補正回路21からの制御弁開度出力信号は、蒸気使用量先行演算回路25に出力される。この蒸気使用量先行演算回路25は、脱気器10における蒸気使用量を先行演算し、先行蒸気使用量の値として出力する。
【0026】
一方、間欠運転系統5において、制御弁開度演算回路23からの制御弁開度出力信号は、蒸気使用量先行演算回路26に出力され、この蒸気使用量先行演算回路26は、間欠運転により使用する蒸気量を先行演算し、先行蒸気使用量の値として出力する。
【0027】
蒸気使用量先行演算回路25および蒸気使用量先行演算回路26からのそれぞれの先行蒸気使用量の値は、データとして先行蒸気量加算回路27に出力され、この先行蒸気量加算回路27は、これらを加算した値を演算し、さらにその値から、蒸気ヘッダ圧力調節弁開度の補正値信号の形態で出力する。
【0028】
蒸気ヘッダ圧力検出器8は、蒸気ヘッダ4に取り付けられ、この蒸気ヘッダ4の圧力値信号を蒸気ヘッダ圧力制御回路28に出力する。この蒸気ヘッダ圧力制御回路28は、蒸気ヘッダ圧力検出器8からの圧力値信号を受け取って演算し、弁開度値信号として弁開度補正手段である圧力調節弁開度補正回路29に出力する。この圧力調節弁開度補正回路29は、圧力制御回路28および、先行蒸気量加算回路27からの弁開度値を用いて、適正な制御弁開度を演算する。この出力信号は、制御弁開度信号として蒸気ヘッダ圧力制御弁7に出力され、この蒸気ヘッダ圧力調節弁7は、その制御弁開度信号に基づいて蒸気ヘッダ4に流入する蒸気量を調節することにより、蒸気ヘッダ4の圧力を安定して制御することが可能となる。
【0029】
また、上記において蒸気ヘッダ4の圧力を安定して制御するために、蒸気使用量に制限を持たせる必要が生じた場合、圧力調節弁開度補正回路29は、必要蒸気量補正回路21に対して、必要蒸気量を超えて流すことのないよう弁開度に上限制限をかけ、その弁開度値を開度値信号として脱気器圧力制御弁9に出力する。この脱気器圧力制御弁9は、その開度値信号に基づいて脱気器10に流入する蒸気量を調節する。
【0030】
以上説明した本実施形態による蒸気ヘッダ圧力制御装置および方法によれば、間欠運転系統5の蒸気流量を流量検出器18により検出する一方、発電システム系統6の蒸気流量を流量検出器11により検出し、間欠運転系統5の蒸気流量と発電システム系統6の蒸気流量に基づいて圧力調節弁開度補正回路29により蒸気ヘッダ4への蒸気ヘッダ圧力調節弁7の開度を補正して蒸気ヘッダ4への蒸気流量を調節することにより、間欠運転系統5と発電システム系統6間の相互干渉による蒸気ヘッダ4の圧力制御の乱れを防止し、蒸気ヘッダ4の圧力が安定して制御可能となる。これにより、末端の機器に安定した蒸気を供給することができるため、プラントの効率的な運転が可能となる。
【0031】
すなわち、本実施形態によれば、蒸気ヘッダ4の圧力変動に大きく影響を与える要素を考慮し、その影響度を演算し、蒸気ヘッダ圧力制御の先行要素として取り込むことにより、圧力変動を未然に防止する。その結果、蒸気ヘッダ圧力調節弁7の制御可能範囲内に変動を抑えることができ、よって、蒸気ヘッダ4の圧力を安定させ、安定した蒸気供給が可能となる。
【0032】
したがって、末端機器の蒸気使用量が変動を起こしても、自動的に蒸気ヘッダ圧力が一定になるように制御を行うので、運転員のスキルに関係なく、安定したプラント操業と安定した製品品質が実現可能となる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態の蒸気ヘッダ圧力制御装置は、図1に示した配管系統以外にも適用可能であり、また間欠運転する系統が複数ある場合および、蒸気使用量の多い系統が複数ある場合、流入源としてタービン3の抽気系統を有する場合においても、同様に適用可能である。
【0034】
また、上記実施形態では、発電システム系統6の蒸気流量を発電負荷や、復水器15から脱気器10に流入する復水流量をに基づいて検出するようにしたが、これに限らず脱気器圧力制御弁9の開度信号、実開度計測値の信号、または通過流量に基づいて使用蒸気流量を検出するようにしてもよい。
【0035】
同様に、間欠運転系統5では、流量検出器18により間欠運転系統5における蒸気量を検出するようにしたが、これに限らず間欠運転系統制御弁17の開度信号または実開度計測値の信号に基づいて使用蒸気流量を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…自家用発電プラント
2…ボイラ
3…タービン
4…蒸気ヘッダ
5…間欠運転系統
6…発電システム系統
7…蒸気ヘッダ圧力調節弁
8…蒸気ヘッダ圧力検出器
9…脱気器圧力制御弁
10…脱気器
11…流量検出器(発電システム流量検出手段)
12…復水器流量計
13a〜13c…熱交換器
14…ポンプ
15…復水器
16a〜16c…熱交換器
17…間欠運転系統制御弁
18…流量検出器(間欠運転流量検出手段)
20…流量制御回路
21…必要蒸気量補正回路
22…流量検出器
23…制御弁開度演算回路
24…制御弁開閉回路
25…蒸気使用量先行演算回路
26…蒸気使用量先行演算回路
27…先行蒸気量加算回路
28…蒸気ヘッダ圧力制御回路
29…圧力調節弁開度補正回路(弁開度補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠運転系統および発電システム系統に蒸気を供給する蒸気ヘッダの圧力を制御する蒸気ヘッダ圧力制御装置を備える発電プラントにおいて、
前記間欠運転系統の蒸気流量を検出する間欠運転蒸気流量検出手段と、
前記発電システム系統の蒸気流量を検出する発電システム蒸気流量検出手段と、
前記間欠運転系統の蒸気流量と前記発電システム系統の蒸気流量に基づいて前記蒸気ヘッダへの圧力調節弁の開度を補正して前記蒸気ヘッダへの蒸気流量を調節する弁開度補正手段と、
を有することを特徴とする発電プラント。
【請求項2】
前記発電システム蒸気流量検出手段は、発電負荷に基づいて蒸気流量を検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の発電プラント。
【請求項3】
前記発電システム系統は、復水器と、この復水器からの復水を脱気する脱気器とを有し、前記復水器から前記脱気器に流入する復水流量を検出して前記発電システムの蒸気流量を検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の発電プラント。
【請求項4】
前記発電システム系統は、制御弁を有し、この制御弁の開度に基づいて発電システム蒸気流量を検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の発電プラント。
【請求項5】
前記間欠運転系統は、制御弁を有し、この制御弁の開度に基づいて間欠運転蒸気流量を検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の発電プラント。
【請求項6】
間欠運転系統および発電システム系統に蒸気を供給する蒸気ヘッダの圧力を制御する蒸気ヘッダを備える発電プラントの運転方法において、
前記間欠運転系統の蒸気流量を検出する間欠運転蒸気流量検出ステップと、
前記発電システム系統の蒸気流量を検出する発電システム蒸気流量検出ステップと、
前記間欠運転蒸気流量検出ステップおよび前記発電システム蒸気流量検出ステップの後に、前記間欠運転系統の蒸気流量と前記発電システム系統の蒸気流量に基づいて前記蒸気ヘッダへの圧力調節弁の開度を補正して前記蒸気ヘッダへの蒸気流量を調節する弁開度補正ステップと、
を有することを特徴とする発電プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−111952(P2011−111952A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267915(P2009−267915)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】