説明

発電プラントの所内電源設備

【課題】所内母線の受電先切り替えの際における一時停電時での所内母線の電圧低下幅をさらに低減できる発電プラントの所内電源設備を提供する。
【解決手段】発電機1、及び送電回路2の主変圧器4等で電気事故が発生した場合には、保護装置27によってその電気事故が検知される。保護装置27は、主変圧器遮断器5及び受電遮断器14を開放し、発電機1を停止させる。保護装置27は、同時に、電源制御装置23に回生モード開始指令を出力する。電源制御装置23は、その指令に基づいて静止形可変電圧可変周波数電源装置19を通常運転モードから回生モードに切り替える。静止形可変電圧可変周波数電源装置19は、回生モードで静止形可変電圧可変周波数電源装置19に接続される電動機7の慣性エネルギーを電気エネルギーに変換して所内高圧母線11に電力として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントの所内電源設備に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラント等の原子力発電プラントの適用するのに好適な発電プラントの所内電源設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント等の発電プラントは、プラントの運転に必要な電力を供給する所内電源設備を備えている。この所内電源設備の例が、特開平6−54442号公報に記載されている。原子力発電プラントでは、原子炉で発生した蒸気を用いてタービンを駆動し、タービンに連結された発電機を回転させて電力を発生する。発生した電力は、主変圧器を介して外部の送電線に供給される。発電機で発生した電力の一部は、所内変圧器及び第1受電遮断器を介して所内常用交流母線に供給され、この交流母線に接続された各電動機を回転させる。
【0003】
原子力発電プラントでは、原子炉の炉心に冷却水を供給する再循環ポンプを電動機で駆動している。この電動機は静止形可変電圧可変周波数電源装置を介して所内常用交流母線に接続される。静止形可変電圧可変周波数電源装置は、所内常用交流母線から供給される電力の電圧の周波数を制御することによって電動機の回転数を調節し、再循環ポンプの回転数を変え、炉心に供給する冷却水の流量を調節する機能を有する。
【0004】
例えば、発電機が停止される事故が発生して主変圧器も異常状態になった場合には、所内常用交流母線への電力の供給が途絶えてしまう。このような事態を避けるため、発電プラントの所内電源設備は、バックアップ用として、外部の送電線から電力の供給を受ける所内共用交流母線に、連絡遮断器を介して所内常用交流母線を接続できるように構成されている。所内共用交流母線は、変圧器及び第2受電遮断器を介して送電線に接続される。
【0005】
発電機が停止される事故が発生して主変圧器も異常状態になった場合、特開平6−54442号公報記載の所内電源設備では、第1受電遮断器が開放され、連絡遮断器が閉じられる母線切り替えが行われる。この母線切り替えによって、所内常用交流母線には、第1受電遮断器からではなく連絡遮断器を通して電力が供給される。所内常用交流母線に接続される電動機等の所内負荷に電力を供給することが可能になる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−54442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平6−54442号公報に記載の所内電源設備は、原子力発電プラントの発電機周りに何らかの異常が発生したとき、所内常用交流母線を所内共用交流母線に接続する母線切り替えが行われる。この母線切り替えにおいては、所内常用交流母線に接続される受電遮断器が開放された後に連絡遮断器が閉じられので、所内常用交流母線は一時停電状態になる。このとき、特開平6−54442号公報では、静止形可変電圧可変周波数電源装置が所内常用交流母線から切り離され、所内常用交流母線に接続された他の電動機が有する慣性エネルギーに基づいて所内常用交流母線に電気エネルギーが供給されるので、母線切り替え時における一時停電において所内常用交流母線の残留電圧が急激に減少することを防止している。
【0008】
しかしながら、特開平6−54442号公報では、静止形可変電圧可変周波数電源装置に接続された再循環ポンプの慣性エネルギーに基づいて発生する電気エネルギーを所内常用交流母線に戻すことはできない。
【0009】
本発明の目的は、所内母線の受電先切り替えの際における一時停電時での所内母線の電圧低下幅をさらに低減できる発電プラントの所内電源設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、発電機で発生された電力及び送電線からの電力のいずれかを降圧する第1変圧器及び第1受電遮断器を有する第1給電系統と、送電線からの電力を降圧する第2変圧器及び第2受電遮断器を有するバックアップの第2給電系統と、第1受電遮断器及び第2受電遮断器に接続される所内母線と、所内母線に接続される静止形可変電圧可変周波数電源装置と、発電機、発電機と送電線を接続して主変圧器を含む送電回路、及び所内変圧器のいずれかで電気事故が発生したとき、又は発電機の駆動が停止される発電プラントの事故が発生したとき、静止形可変電圧可変周波数電源装置を、静止形可変電圧可変周波数電源装置に接続される電動機の慣性エネルギーから生成された電気エネルギーを電力として所内母線に供給する回生モードに切り替える電源制御装置とを備えたことにある。
【0011】
電気事故または発電プラントの事故が発生して所内母線の受電先を第1変圧器から第2変圧器に切り替える際、電気事故発生信号または発電プラント事故信号により、静止形可変電圧可変周波数電源装置を回生モードに切り替えるので、静止形可変電圧可変周波数電源装置に接続された電動機の慣性エネルギー及び残留磁束を電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを電力として静止形可変電圧可変周波数電源装置から所内母線に給電することができる。したがって、電気事故または発電プラントの事故が発生した場合において、所内母線の受電先切り替えの際における一時停電時での所内母線の電圧低下幅を、従来の所内電源設備よりもさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所内母線の受電先切り替えの際における一時停電時での所内母線の電圧低下幅をさらに低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明者らは、所内母線の受電先切り替えの際における一時停電時での所内母線の電圧低下幅をさらに低減する方策を検討した。このとき、負荷遮断器及び静止形可変電圧可変周波数電源装置を介して所内母線に接続される電動機(例えば、炉心に冷却水を供給する再循環ポンプを駆動する電動機)の回転エネルギーに基づいて得られる電気エネルギーを所内母線に供給すれば、その一時停電時において所内母線の電圧低下幅をさらに低減できることを発明者らは見出した。そして、静止形可変電圧可変周波数電源装置に接続される電動機の慣性エネルギーを電気エネルギーに変換するため、発明者らは静止形可変電圧可変周波数電源装置を回生モードに切り替えるという技術的思想を適用することを考え付いたのである。
【0014】
このような技術的思想を適用した本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の好適な一実施例である実施例1の発電プラントの所内電源設備を、図1及び図2を用いて説明する。発電プラント、例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントという)は、原子炉で発生した蒸気を用いて回転される発電機1を備えている。送電回路2が発電機1に接続されている。負荷開閉器3、主変圧器4及び主変圧器遮断器5を接続する送電回路2は、外部の送電線6に接続される。BWRプラントは、原子炉の原子炉圧力容器内の炉心に冷却水を供給する再循環ポンプ(例えば、インターナルポンプ)(図示せず)を有し、この再循環ポンプを駆動する電動機7を備えている。複数のインターナルポンプは、原子炉圧力容器の底部に設けられている。
また、原子炉圧力容器に再循環系を設置しているBWRプラントでは、その再循環ポンプは、再循環系を構成する再循環系配管に設置された再循環ポンプである。BWRプラントは、各系統(炉水浄化系、補機冷却系等)に設けられた各ポンプを駆動する電動機(例えば、電動機8A,8B)を有する。
【0016】
本実施例の発電プラントの所内電源設備10は、所内母線である所内高圧母線11、送電回路2及び所内高圧母線11に接続される所内側常時給電回路12、送電線6及び所内高圧母線11に接続されるバックアップ回路15、静止形可変電圧可変周波数電源装置19、電源制御装置23、保護装置27、所内側常時給電回路12に設けられた所内変圧器13及び受電遮断器14、及びバックアップ回路15に設けられた遮断器16、変圧器17及び受電遮断器18を備えている。計器用変圧器28が所内高圧母線11に接続され、計器用変圧器29が変圧器17と受電遮断器18の間でバックアップ回路15に接続される。負荷給電用遮断器30,31A,31Bが所内高圧母線11に接続されている。電動機8Aが負荷給電用遮断器31Aに、電動機8Bが負荷給電用遮断器31Bにそれぞれ接続される。静止形可変電圧可変周波数電源装置19が負荷給電用遮断器30に接続され、電動機7が静止形可変電圧可変周波数電源装置19に接続される。電源制御装置23は、受電遮断器18、保護装置27及び計器用変圧器28,29に接続される。所内電源設備10は低圧同期方式の発電プラントの所内電源設備である。
【0017】
静止形可変電圧可変周波数電源装置19の詳細な構成を、図2を用いて説明する。静止形可変電圧可変周波数電源装置19は、整流器20、平滑回路21及びインバータ22を有する。BWRプラントの通常運転時で所内電源設備10が正常に機能しているとき、整流器20、平滑回路21及びインバータ22は以下の機能を発揮する。整流器20は所内高圧母線11からの入力電圧(交流)を直流電圧に変換する。平滑回路21は整流器20から出力された直流電圧のリップルを低減する。インバータ22は、平滑回路21から出力された直流電圧をある周波数の交流電圧に変換し、この交流電圧を電動機7に供給する。これにより、電動機7に接続された再循環ポンプ(例えば、インターナルポンプまたは再循環系ポンプ)が駆動され、炉心に冷却水を供給することができる。
【0018】
BWRプラントが正常に運転されている状態では、発電機1で発生した電力が、負荷開閉器3、主変圧器4及び主変圧器遮断器5を介して送電回路2により、送電線6に導かれ、送電線6により工場及び家庭等に送られる。発電機負荷開閉器3及び主変圧器遮断器5は閉じている。発電機1で発生した電力の一部は、所内変圧器13及び閉じている受電遮断器14を介して所内側常時給電回路12により所内高圧母線11に供給される。所内変圧器13は所内高圧母線11側の二次側電圧を送電回路2側の一次側電圧よりも所定値だけ降下させる。負荷給電用遮断器31A,31Bが閉じられているので、所内高圧母線11の電力が電動機8A,8Bに供給され、これらの電動機が回転される。この結果、これらの電動機に連結された各ポンプも回転される。
【0019】
負荷給電用遮断器30も閉じられているので、所内高圧母線11の電力は、静止形可変電圧可変周波数電源装置19に供給される。静止形可変電圧可変周波数電源装置19は電源制御装置23により通常運転モードで制御されており(図2参照)、この通常運転モードでは整流器20、平滑回路21及びインバータ22は前述したように作用する。このとき、電力は図2に示す矢印のように流れ、電動機7にはインバータ22から周波数が調節された交流電圧が供給される。このため、電動機7で駆動される再循環ポンプの回転数を制御することができ、炉心に供給する冷却水流量を調節することができる。BWRプラントの原子炉の出力は、その冷却水流量の調節により制御することができる。
【0020】
発電機1が停止したとき、負荷開閉器3が開放され、主変圧器遮断器4、主変圧器3、所内変圧器5及び受電遮断器6を介して所内側常時給電回路12によって、外部の送電線6から所内高圧母線11への給電が行われる。
【0021】
もし、発電機1、若しくは送電回路2の主変圧器4等で電気事故が発生すると、発電機1及び主変圧器4等の状態を監視する保護装置27によってその電気事故が検知される。保護装置27は、電気事故を検知すると、主変圧器遮断器5及び受電遮断器14に開放指令を出力し、発電機1に停止指令を出力する。開放指令を入力した主変圧器遮断器5及び受電遮断器14は開放され、停止指令の出力によって発電機界磁遮断器(図示せず)が開放されて発電機1の回転が停止される。このとき、主蒸気配管に設けられた蒸気供給用の弁(例えば主蒸気隔離弁等)が閉じられ、タービンへの上記の供給が停止される。保護装置27は、停止指令及び開放指令を出力すると同時に、電源制御装置23にモード切り替え指令である回生モード開始指令(電気事故発生信号)(図2〜図4では「回生運転開始指令」と記載)を出力する。その電気事故の影響は、主変圧器遮断器4の開放によって除去される。しかしながら、保護装置27は、一旦、電気事故を検知した場合には電気事故の要因が除去されたことを確認してオペレータがリセット操作を行うまでその状態を保持する構成になっている。
【0022】
電源制御装置23は、入力した回生モード開始指令に基づいて静止形可変電圧可変周波数電源装置19を通常運転モードの運転から回生モードの運転に切り替える。通常運転モードは所内高圧母線11から受電した電力を電動機7に出力するモードであり(図2参照)、回生モードは電動機7の慣性エネルギーを電気エネルギーに変換して所内高圧母線11に電力を供給するモードである(図3参照)。具体的には、静止形可変電圧可変周波数電源装置19の「通常運転モード」では、整流器20で所内高圧母線11から給電される交流電圧を直流電圧に変換し、インバータ22によりその直流電圧をある周波数の交流電圧に変換して電動機7に供給する。静止形可変電圧可変周波数電源装置19の「回生モード」では、インバータ22を整流器として動作させ、整流器20にインバータとして動作させることにより、誘導発電機として振舞っている電動機7で発生する電力が、図3に示す矢印のように流れ、所内高圧母線11に供給される。インバータ22は、回生モード開始指令の入力によって電源制御装置23で生成される回生モード指令に基づいて整流器として動作する。整流器20はその回生モード指令に基づいてインバータとして動作する。整流器20及びインバータ22は、交流−直流変換及び直流−交流変換の2象限で動作可能である。
【0023】
本実施例は、電動機8A,8Bの慣性エネルギー及び残留磁束からだけでなく電動機7の慣性エネルギー及び残留磁束から発生する電気エネルギーも所内高圧母線11に供給することができる。したがって、発電機1、及び送電回路2の主変圧器4等で電気事故が発生し、受電遮断器14が開放されて受電遮断器18が閉じるまでの間、所内高圧母線11の電圧の低減幅は、特開平6−54442号公報に記載された所内電源設備におけるそれよりも小さくなる。
【0024】
電動機7,8A,8Bの慣性エネルギー及び残留磁束は電気エネルギーへの変換に伴って低下し、所内高圧母線11の電圧値及び電圧位相が変化する。しかしながら、本実施例では、計器用変圧器28により得られる所内高圧母線11の電圧位相の情報(母線電圧位相信号)、及び計器用変圧器29により得られる変圧器17の二次側の電圧位相の情報(変圧器二次電圧位相信号)が、電源制御装置23に入力される。電源制御装置23は、静止形可変電圧可変周波数電源装置19の回生モードにおいて、インバータとして機能している整流器20を所内高圧母線11の電圧位相及び変圧器17の二次側の電圧位相に基づいて制御し、回生モード終了時において、所内高圧母線11の電圧位相を変圧器17の二次側の電圧位相と同期させるように、回生により整流器20から出力される交流電圧の位相を制御する。このように、電源制御装置23によって電圧位相が調節された電力がインバータとして機能している整流器20から所内高圧母線7に供給される。
【0025】
保護装置27は、開放指令の出力後に受電遮断器14の開放が検知されたとき、受電遮断器18に対して閉路指令を出力する。受電遮断器18は閉路指令を入力することによって閉じられる。受電遮断器14は開放及び閉路時に動作する接点(図示せず)を有しており、この接点の動作により受電遮断器14の開放及び閉路が検知される。送電線6の電力が、閉じられた遮断器16、変圧器17及び閉じられた受電遮断器18を介してバックアップ回路15により所内高圧母線11に供給される。変圧器17は所内高圧母線11側の二次側電圧を送電線6側の一次側電圧よりも所定値だけ降下させる。受電遮断器18が閉じられることによって、所内高圧母線11への電力の供給先がバックアップ回路15に切り替えられ、電動機8A,8Bが再起動される。受電遮断器18が閉じられたときに発生する閉信号(回生モード終了指令)(図2〜図4では「回生運転終了指令」と記載)が電源制御装置23に入力される。受電遮断器18も開放及び閉路時に動作する接点(図示せず)を有しており、この接点の動作により受電遮断器18の開放及び閉路が検知される。回生モード終了指令はその接点が閉じられたときに発生する。電源制御装置23は、入力した回生モード終了指令に基づいて静止形可変電圧可変周波数電源装置19を回生モードから通常運転モードに切り替える(図4参照)。このモード切り替えによって、電力は図4に示す矢印のように流れる。すなわち、整流器20は所内高圧母線11からの交流電圧を直流電圧に変換し、インバータ22はその直流電圧をある周波数の交流電圧に変換する。電動機7はその交流電圧を入力して回転され、電動機7に接続された再循環ポンプが再起動される。
【0026】
本実施例は、発電機1、若しくは送電回路2の主変圧器4等で電気事故が発生して所内高圧母線11の受電先を所内変圧器13から変圧器17に切り替える際、電気事故発生信号により、静止形可変電圧可変周波数電源装置19を通常運転モードから回生モードに切り替えることができる。このため、静止形可変電圧可変周波数電源装置19に接続された電動機7の慣性エネルギー及び残留磁束を電気エネルギーに変換し、静止形可変電圧可変周波数電源装置19より所内高圧母線11に給電することができるので、電気事故時の所内高圧母線11の受電先切り替えの際における一時停電時での所内高圧母線11の電圧低下幅を、特開平6−54442号公報に記載された所内電源設備よりもさらに低減することができる。
【0027】
本実施例は、その一時停電時において所内高圧母線11の電圧低下幅を低減できるので、所内高圧母線11に接続されている補助継電器(図示せず)が開放され、所内高圧母線11から電力の供給を受けている補機の予定外の停止及び電源喪失による警報の発報を防止することができる。上記した補機としては、所内高圧母線11に接続されて所内高圧母線11から給電されている低圧母線に配線用遮断器(MCCB)を介して接続された負荷(小型の空調機器、大型補機の油供給用のポンプ等)がある。受電先の切り替え完了後におけるBWRプラントの状態維持に対する悪影響を解消することができる。
【0028】
電源制御装置23が、所内高圧母線11に接続した計器用変圧器28、及びバックアップ回路15に接続された計器用変圧器29のそれぞれから得られる各電圧位相の情報に基づいて、回生モード終了時において、所内高圧母線11の電圧位相が変圧器17の二次側の電圧位相と同期するように、整流器20から出力される交流電圧の位相を制御するので、本実施例は、バックアップ回路15から所内高圧母線11への給電が開始されたとき、所内高圧母線11の電圧位相と変圧器17の二次側の電圧位相の位相差によって発生する過渡電圧及び突入電流の発生を抑制することができる。このため、本実施例の所内電源設備では、電動機及び関連設備における過渡電圧及び突入電流に対する対応策が不要になる。
【実施例2】
【0029】
本発明の他の実施例である実施例2の発電プラントの所内電源設備を、図5を用いて説明する。本実施例の発電プラントの所内電源設備10Aも、BWRプラントに適用される低圧同期方式の発電プラントの所内電源設備である。所内電源設備10Aは、所内電源設備10において電源制御装置23を電源制御装置23Aに替え、さらに計器用変圧器29を削除した構成を有する。電源制御装置23Aは、受電遮断器18、保護装置27及び計器用変圧器28に接続される。所内電源設備10Aの他の構成は所内電源設備10と同じである。
【0030】
本実施例も、発電機1、及び送電回路2の主変圧器4等で電気事故が発生して所内高圧母線11の受電先を所内変圧器13から変圧器17に切替える際において、保護装置27から回生モード開始指令が出力されたとき、実施例1と同様に、静止形可変電圧可変周波数電源装置19が回生モードに切り替えられる。これによって、電動機7の慣性エネルギー及び残留磁束を電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを、静止形可変電圧可変周波数電源装置19を介して所内高圧母線11に供給することができる。
【0031】
この回生モードにおいて、電源制御装置23Aは、計器用変圧器28で得られた所内高圧母線11の電圧位相を入力する。電源制御装置23Aは、実施例1における電源制御装置23のように計器用変圧器29で得られる電圧位相の情報を入力していない。電源制御装置23Aは、静止形可変電圧可変周波数電源装置19が回生モードになっているとき、計器用変圧器28で得られた電圧位相に基づいて、インバータとして機能している整流器20を制御する。その電圧位相と同期した電圧位相を有する電力がインバータとして機能している整流器20から所内高圧母線11に給電される。
【0032】
本実施例は、実施例1と同様に、電気事故時の所内高圧母線11の受電先切り替えの際における一時停電時での所内高圧母線11の電圧低下幅を、特開平6−54442号公報に記載された所内電源設備よりもさらに低減することができる。
【実施例3】
【0033】
本発明の他の実施例である実施例3の発電プラントの所内電源設備を、図6を用いて説明する。本実施例の発電プラントの所内電源設備10Bも、BWRプラントに適用される低圧同期方式の発電プラントの所内電源設備である。所内電源設備10Bは、所内電源設備10において電源制御装置23を電源制御装置23Bに替え、さらに計器用変圧器28を削除した構成を有する。電源制御装置23Bは、受電遮断器18、保護装置27及び計器用変圧器29に接続される。所内電源設備10Bの他の構成は所内電源設備10と同じである。
【0034】
本実施例も、保護装置27から回生モード開始指令が出力されたとき、実施例1と同様に、静止形可変電圧可変周波数電源装置19が回生モードに切り替えられ、電動機7の慣性エネルギー及び残留磁束から生成された電気エネルギーが、静止形可変電圧可変周波数電源装置19を介して所内高圧母線11に供給される。
【0035】
この回生モードにおいて、電源制御装置23Bは、計器用変圧器29で得られた変圧器17の二次側の電圧位相を入力する。電源制御装置23Bは、実施例1における電源制御装置23のように計器用変圧器28で得られる電圧位相の情報を入力していない。電源制御装置23Bは、静止形可変電圧可変周波数電源装置19が回生モードになっているとき、計器用変圧器29で得られた電圧位相に基づいて、インバータとして機能している整流器20を制御する。この結果、その電圧位相と同期した電圧位相を有する電力がインバータとして機能している整流器20から所内高圧母線11に給電される。
【0036】
本実施例は、実施例1と同様に、電気事故時の所内高圧母線11の受電先切り替えの際における一時停電時での所内高圧母線11の電圧低下幅を、特開平6−54442号公報に記載された所内電源設備よりもさらに低減することができる。
【0037】
所内高圧母線11に接続されている電動機が少ない場合、所内高圧母線11への給電先を所内側常時給電回路12からバックアップ回路15に切り替えている間、(1)所内高圧母線11の電圧位相が、静止形可変電圧可変周波数電源装置19の回生モードによって供給される電力に大きく支配されており、及び(2)その切り替え操作の前において所内高圧母線11が受電していた所内変圧器13の二次側の電圧位相が変圧器17の二次側の電圧位相にほぼ同期するので、切り替え後に接続されるバックアップ回路15の変圧器17の二次側の電圧位相を計器変圧器29によって検知し、その電圧位相と同期した電圧位相を有する電力がインバータとして機能している整流器20から所内高圧母線11に給電される。
【0038】
したがって、本実施例は、バックアップ回路15から所内高圧母線11への電力の供給が開始されたときにおける所内高圧母線11の電圧位相と変圧器17の二次側の電圧位相の位相差によって発生する過渡電圧及び突入電流の発生を抑制することができる。本実施例は、実施例1と同様に、電動機及び関連設備における過渡電圧及び突入電流に対する対応策が不要になる。
【実施例4】
【0039】
本発明の他の実施例である実施例4の発電プラントの所内電源設備を、図7を用いて説明する。本実施例の発電プラントの所内電源設備10Cは、実施例1〜3と異なり、BWRプラントに適用される高圧同期方式の発電プラントの所内電源設備である。所内電源設備10Cは、所内電源設備10において電源制御装置23を電源制御装置23Cに替えた構成を有する。電源制御装置23Cは、受電遮断器18及び保護装置27に接続される。電源制御装置23Cは、実施例1で述べた回生モード開始指令及び閉路指令だけでなく、BWRプラントの保護装置27から出力されるプラント事故信号を入力する。所内電源設備10Cの他の構成は所内電源設備10と同じである。
【0040】
高圧同期方式の所内電源設備は、発電機1、及び送電回路2の主変圧器4等での電気事故以外に、発電機1が停止する発電プラントの事故(発電機1を駆動するタービンの回転を停止させる事故、及びタービンに蒸気を供給する原子炉(火力発電プラントではボイラ)の運転を停止させる事故)が発生した場合に、所内高圧母線11の受電先を所内変圧器13から変圧器17に切り替える。
【0041】
上記の発電プラントの事故、すなわちBWRプラントでの事故発生を示すプラント事故信号が、保護装置27から出力されたとき、そのプラント事故信号は電源制御装置23Cに入力される。電源制御装置23Cは、入力したプラント事故信号に基づいて回生モード指令を生成し、この回生モード指令を静止形可変電圧可変周波数電源装置19の整流器20及びインバータ22に出力する。回生モード指令を入力した静止形可変電圧可変周波数電源装置19は、実施例1と同様に、通常運転モードから回生モードに切り替えられる。電源制御装置23Cは回生モード開始指令及びプラント事故信号のいずれかを入力したとき、回生モード指令を静止形可変電圧可変周波数電源装置19に出力する。
【0042】
本実施例は、電気事故のときだけでなく、タービンが回転できなくなるBWRプラントの事故においても、所内高圧母線11の受電先切り替えの際における一時停電時での所内高圧母線11の電圧低下幅をさらに低減することができる。本実施例は、実施例1と同様に、所内高圧母線11の電圧位相と変圧器17の二次側の電圧位相の位相差によって発生する過渡電圧及び突入電流の発生を抑制することができる。
【0043】
実施例2において電源制御装置23Aを電源制御装置23Cに替え、実施例3において電源制御装置23Bを電源制御装置23Cに替え、それぞれの電源制御装置23Cにプラント事故信号を入力させる構成を採用することによって、それぞれの実施例に対応した高圧同期方式の発電プラントの所内電源設備を得ることができる。
【0044】
以上に述べた各実施例は、BWRプラントに適用した例であるが、加圧水型原子力発電プラント等の他の原子力発電プラント、火力発電プラント及び水力発電プラントにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の発電プラントの所内電源設備の構成図である。
【図2】図1に示す静止形可変電圧可変周波数電源装置の詳細構成、及び通常運転時における電源制御装置の制御状態を示す説明図である。
【図3】回生モードにおける電源制御装置の制御状態を示す説明図である。
【図4】所内高圧母線の受電先の切り替えが完了した後における電源制御装置の制御状態を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施例である実施例2の発電プラントの所内電源設備の構成図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例3の発電プラントの所内電源設備の構成図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例4の発電プラントの所内電源設備の構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1…発電機、2…送電回路、3,30,31A,31B…負荷開閉器、4…主変圧器、5…主変圧器遮断器、7,8A,8B…電動機、10,10A,10B,10C…発電プラントの所内電源設備、11…所内高圧母線、12…所内側常時給電回路、13…所内変圧器、14,18…受電遮断器、15…バックアップ回路、17…変圧器、19…静止形可変電圧可変周波数電源装置、20…整流器、22…インバータ、23,23A,23B,23C…電源制御装置、27…保護装置、28,29…計器用変圧器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機で発生された電力及び送電線からの電力のいずれかを降圧する第1変圧器及び第1受電遮断器を有する第1給電系統と、
送電線からの電力を降圧する第2変圧器及び第2受電遮断器を有するバックアップの第2給電系統と、
前記第1受電遮断器及び前記第2受電遮断器に接続される所内母線と、
前記所内母線に接続される静止形可変電圧可変周波数電源装置と、
前記発電機、前記発電機と前記送電線を接続して主変圧器を含む送電回路、及び前記第1変圧器のいずれかで電気事故が発生したとき、又は前記発電機の駆動が停止される発電プラントの事故が発生したとき、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置を、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置に接続される電動機の慣性エネルギーから生成された電気エネルギーを電力として前記所内母線に供給する回生モードに切り替える電源制御装置とを備えたことを特徴とする発電プラントの所内電源設備。
【請求項2】
前記所内母線の第1電圧位相を検知する第1計器用変圧器と、前記第2受電遮断器の二次側における前記第2給電系統の第2電圧位相を検知する第2計器用変圧器とを備え、
前記電源制御装置は、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置が前記回生モードになっているとき、入力した前記第1電圧位相及び前記第2電圧位相に基づいて前記第1電圧位相が前記第2電圧位相と同期するように、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置から前記所内母線に供給する電力の電圧位相を制御する請求項1に記載の発電プラントの所内電源設備。
【請求項3】
前記所内母線の電圧位相を検知する計器用変圧器を備え、
前記電源制御装置は、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置が前記回生モードになっているとき、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置から前記所内母線に供給する電力の電圧位相を、入力した前記電圧位相に同期するように制御する請求項1に記載の発電プラントの所内電源設備。
【請求項4】
前記第2受電遮断器の二次側における前記第2給電系統の電圧位相を検知する計器用変圧器を備え、
前記電源制御装置は、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置が前記回生モードになっているとき、前記静止形可変電圧可変周波数電源装置から前記所内母線に供給する電力の電圧位相を、入力した前記電圧位相に同期するように制御する請求項1に記載の発電プラントの所内電源設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−77489(P2009−77489A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242309(P2007−242309)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】