説明

発電機及び風力発電方法並びに水力発電方法

【課題】大型化した場合であっても軽量性を十分に維持できると共に、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることのできる発電機を提供する。
【解決手段】この発明の発電機は、コアレス型の電機子巻線12を備えた環状の固定子3と、該環状固定子3に対して同心状に配置され、永久磁石11を備えた環状の回転子2と、前記環状回転子2の内側の中空空間Mに配置され、該環状回転子2に固定された回転翼4とを備えてなり、前記環状回転子2は前記回転翼4の回転に連動して回転するものとなされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風力発電や水力発電に特に適した発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば風力発電用の永久磁石型発電機としては、永久磁石による磁極を有する回転子と、電機子巻線を有する固定子鉄心とを具備した構成のものが公知である(特許文献1参照)。風車の回転が増速ギヤを介して回転子に伝達されて該回転子(永久磁石)が回転することによって発電が行われる。
【特許文献1】特開2004−173415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記永久磁石型発電機では、固定子として鉄心を備えているので、発電機としての重量が増大して軽量性に劣るという問題があった。特に発電機を大型化した場合には重量が顕著に増大することは避けられなかった。
【0004】
また、上記のような永久磁石型発電機を用いて風力発電や水力発電を行う場合には、風車や水車の回転は一般に低速回転であるので、十分な出力電圧を得るために、風車や水車の回転を増速機(ギヤチェーン、歯車等)を用いて回転数を高めて回転子に伝達して発電することが一般的に行われているが、このような速度増速機を具備せしめた場合には、故障率が増大する、故障抑止のための保守点検の頻度が増大する、騒音が大きい、等の様々な問題を生じていた。
【0005】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、大型化した場合であっても軽量性を十分に維持できると共に、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることのできる発電機及び風力発電方法並びに水力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]コアレス型の電機子巻線を備えた環状の固定子と、
該環状固定子に対して同心状に配置され、永久磁石を備えた環状の回転子と、
前記環状回転子の内側の中空空間に配置され、該環状回転子に固定された回転翼とを備えてなり、
前記環状回転子は前記回転翼の回転に連動して回転するものとなされていることを特徴とする発電機。
【0008】
[2]前記環状回転子は、該回転子の回転軸線方向に相互に離間して配置された前方側永久磁石及び後方側永久磁石を備え、前記環状固定子は、前記前方側永久磁石と前記後方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする前項1に記載の発電機。
【0009】
[3]前記環状回転子は、該回転子の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石及び径方向内方側永久磁石を備え、前記環状固定子は、前記径方向外方側永久磁石と前記径方向内方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする前項1に記載の発電機。
【0010】
[4]永久磁石を備えた環状の固定子と、
該環状固定子に対して同心状に配置され、コアレス型の電機子巻線を備えた環状の回転子と、
前記環状回転子の内側の中空空間に配置され、該環状回転子に固定された回転翼とを備えてなり、
前記環状回転子は前記回転翼の回転に連動して回転するものとなされていることを特徴とする発電機。
【0011】
[5]前記環状固定子は、前記回転子の回転軸線方向に相互に離間して配置された前方側永久磁石及び後方側永久磁石を備え、前記環状回転子は、前記前方側永久磁石と前記後方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする前項4に記載の発電機。
【0012】
[6]前記環状固定子は、該固定子の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石及び径方向内方側永久磁石を備え、前記環状回転子は、前記径方向外方側永久磁石と前記径方向内方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする前項4に記載の発電機。
【0013】
[7]前記永久磁石として希土類磁石が用いられている前項1〜6のいずれか1項に記載の発電機。
【0014】
[8]前記回転子は、ベアリングを介して前記固定子に回転自在に支持されている前項1〜7のいずれか1項に記載の発電機。
【0015】
[9]前項1〜8のいずれか1項に記載の発電機の回転翼に対して風を当てて回転翼を回転させることによって発電することを特徴とする風力発電方法。
【0016】
[10]前項1〜8のいずれか1項に記載の発電機の回転翼に対して水流を当てて回転翼を回転させることによって発電することを特徴とする水力発電方法。
【発明の効果】
【0017】
[1][2][3]の発明では、電機子巻線は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、大型化した場合であっても軽量性を十分に維持できる。また、発電機の直径を大きくして大型化した場合であっても、環状回転子及び環状固定子は、いずれもその内側が中空であるから、顕著に重量が増大することはなく軽量性を維持できると共に、軽量であるから環状回転子の回転駆動負荷は小さくて済み例えば弱い風や水流であっても環状回転子を回転させることができる。また、永久磁石を備えた環状の回転子を回転翼の外周領域に固定せしめた構成を採用しているので、回転翼自体は低速回転であったとしてもその外周部に固定された環状回転子(永久磁石)の回転による移動速度(外周での移動速度)は十分に大きなものとなるから、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる(より大きな電力を発生させることができる)。更に、増速機を使用しないから、故障率が低下する、保守点検の頻度が少なくて済む、騒音を軽減できる等の利点が得られる。
【0018】
なお、[2]の発明では、前方側永久磁石と後方側永久磁石とで形成される磁束の方向が、環状回転子の回転軸線に対して略平行である。また、[3]の発明では、径方向外方側永久磁石と径方向内方側永久磁石とで形成される磁束の方向が、環状回転子の径方向に対して略平行である。
【0019】
[4][5][6]の発明では、電機子巻線は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、大型化した場合であっても軽量性を十分に維持できる。また、発電機の直径を大きくして大型化した場合であっても、環状回転子及び環状固定子は、いずれもその内側が中空であるから、顕著に重量が増大することはなく軽量性を維持できると共に、軽量であるから環状回転子の回転駆動負荷は小さくて済み例えば弱い風や水流であっても環状回転子を回転させることができる。また、電機子巻線を備えた環状の回転子を回転翼の外周領域に固定せしめた構成を採用しているので、回転翼自体は低速回転であったとしてもその外周部に固定された環状回転子(電機子巻線)の回転による移動速度(外周での移動速度)は十分に大きなものとなるから、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる(より大きな電力を発生させることができる)。更に、増速機を使用しないから、故障率が低下する、保守点検の頻度が少なくて済む、騒音を軽減できる等の利点が得られる。
【0020】
なお、[5]の発明では、前方側永久磁石と後方側永久磁石とで形成される磁束の方向が、環状回転子の回転軸線に対して略平行である。また、[6]の発明では、径方向外方側永久磁石と径方向内方側永久磁石とで形成される磁束の方向が、環状回転子の径方向に対して略平行である。
【0021】
[7]の発明では、永久磁石として希土類磁石が用いられているから、より一層大きな容量の電力を得ることができる。
【0022】
[8]の発明では、回転子は、ベアリングを介して固定子に回転自在に支持されているから、回転子は固定子に対して十分に円滑に回転することが可能となり、環状回転子の回転による移動速度(外周での移動速度)をさらに向上させることができて更に大きな容量の電力を得ることができる。更に、ベアリングを介して支持されているので、軸ぶれに強く、大型化した場合に特に有利な構造である。
【0023】
[9]の発明では、風力を用いて発電するに際し、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる。また、増速機を用いなくて済むから、故障が少なくて高寿命化を実現できると共に保守のための人件費も抑制できて、自然エネルギー発電として低コスト化を図り得る。
【0024】
[10]の発明では、水力を用いて発電するに際し、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる。また、増速機を用いなくて済むから、故障が少なくて高寿命化を実現できると共に保守のための人件費も抑制できて、自然エネルギー発電として低コスト化を図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明に係る発電機(1)の一実施形態を図1〜3に示す。これらの図において、(2)は回転子、(3)は固定子、(4)は回転翼である。
【0026】
前記回転子(2)は、環状に形成されている。即ち、図2に示すように、前記回転子(2)は、短筒状の環状基部(14)と、該環状基部(14)の前面側位置から径方向外方に向けて延ばされた前面側外方突出部(15)と、前記環状基部(14)の背面側位置から径方向外方に向けて延ばされた背面側外方突出部(16)と、前記前面側外方突出部(15)の内面に固定された前方側永久磁石(11A)と、前記背面側外方突出部(16)の内面に固定された後方側永久磁石(11B)とを備えてなる。前記前方側永久磁石(11A)と前記後方側永久磁石(11B)とは前記回転子(2)の回転軸線方向(J)に相互に離間して配置されている(図2参照)。
【0027】
前記後方側永久磁石(11B)は、図3に示すように、周方向において磁極性の反転を交互に繰り返すように配列されている。図示しないが、前記前方側永久磁石(11A)についても同様に周方向において磁極性の反転を交互に繰り返すように配列されている。また、図2に示すように、対向する後方側永久磁石(11B)及び前方側永久磁石(11A)において、対向面側の極性は互いに異なるように配置されている。例えば、一方の永久磁石の対向面側がN極であれば、対向する他方の永久磁石の対向面側はS極となるように配置されている(図2参照)。従って、前記前方側永久磁石(11A)と後方側永久磁石(11B)とで形成される磁束の方向は、前記環状回転子(2)の回転軸線(J)に対して略平行である(図2参照)。且つ、周方向に沿って、磁束の方向は、交互に反転する。例えば、任意の位置での前後一対の永久磁石(11A)(11B)において前記回転軸線(J)に沿って前から後へ向かう磁束が形成されていれば、該一対の永久磁石に対して周方向に隣り合う前後一対の永久磁石間では前記回転軸線(J)に沿って後から前へ向かう磁束が形成されている。
【0028】
前記回転翼(4)は前記環状回転子(2)の内側の中空空間(M)に配置されると共に、該回転翼(4)は前記環状回転子(2)に固定されている。即ち、前記回転翼(4)は、前記中空空間(M)の中央部に配置された中央連結部(6)から径方向外方に向けて放射状に3つの翼体(7)(7)(7)が延設されたものからなり、これら翼体(7)(7)(7)の先端が前記環状回転子(2)の環状基部(14)に接合されることによって、前記回転翼(4)は前記環状回転子(2)に固定されている(図1、2参照)。
【0029】
前記固定子(3)は、環状に形成されている。即ち、図2に示すように、前記固定子(3)は、前記環状回転子(2)の径方向の外側に離間して配置された短筒状の環状基部(17)と、該環状基部(17)の前後方向の中央位置から径方向内方に向けて延ばされた内方突出部(18)と、該内方突出部(18)の内部に埋設されたコアレス型の電機子巻線(12)とを備えてなる。前記固定子(3)の内方突出部(18)は、前記前方側永久磁石(11A)と前記後方側永久磁石(11B)の間の間隙に配置されている。即ち、前記コアレス型の電機子巻線(12)は、前記前方側永久磁石(11A)と前記後方側永久磁石(11B)の間の間隙に配置されている。換言すれば、前記コアレス型の電機子巻線(12)の前方側の近傍位置に前方側永久磁石(11A)が配置され、前記電機子巻線(12)の後方側の近傍位置に後方側永久磁石(11B)が配置されている。前記環状回転子(2)と前記環状固定子(3)は互いに同心状(同心円状)に配置されており、これら環状回転子(2)及び環状固定子(3)から形成される発電機構部は環状形状である。なお、前記固定子(3)の下方部に支柱(5)の一端部が連接されている(図1参照)。前記支柱(5)の他端部が、例えば地面等の固定体に固定される。
【0030】
また、前記回転子(2)は、ベアリング(19)を介して前記固定子(3)に回転自在に支持されている。即ち、前記固定子(3)の環状基部(17)の前面側と前記前方側永久磁石(11A)の間にベアリング(19)が配置され、前記固定子(3)の環状基部(17)の背面側と前記後方側永久磁石(11B)の間にベアリング(19)が配置されている(図2参照)。
【0031】
しかして、上記発電機(1)の支柱(5)の下端部を地面等の固定体に固定した状態で、発電機(1)の回転翼(4)に風又は水流等を当てると、回転翼(4)が回転し、これにより回転翼(4)に固定された回転子(2)も同期回転する。即ち、回転子(2)の永久磁石(11A)(11B)は、前記回転翼(4)の回転に同期して回転する。これにより、前記固定子(3)に埋設された固定状態の電機子巻線(12)に対して前記永久磁石(11A)(11B)が回転移動するので、前記電機子巻線(12)に電流が発生し、該電流が配線を通じて他の電機機器等に送電される。配線を蓄電器に接続すれば蓄電することもできる。
【0032】
上記発電機(1)では、電機子巻線(12)は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、軽量性を十分に維持できる。また、発電機の直径を大きくして大型化した場合であっても、環状回転子(2)及び環状固定子(3)は、いずれもその内側が中空(回転翼を除いて)であるから、顕著に重量が増大することはなく軽量性を維持できると共に、軽量であるから環状回転子(2)の回転駆動負荷は小さくて済み例えば弱い風や水流が回転翼(4)に当たっても環状回転子(2)を回転させることができる。また、永久磁石を備えた環状回転子(2)を回転翼(4)の外周領域に固定せしめた構成を採用しているので、回転翼(4)自体は低速回転であったとしてもその外周部に固定された環状回転子(永久磁石)の回転による移動速度(外周での移動速度)は十分に大きなものとなるから、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる(より大きな電力を発生させることができる)。
【0033】
なお、上記実施形態(図1〜3)では、前記環状回転子(2)は、該回転子(2)の回転軸線方向(J)に相互に離間して配置された前方側永久磁石(11A)及び後方側永久磁石(11B)を備えると共に、前記環状固定子(3)は、前記前方側永久磁石(11A)と前記後方側永久磁石(11B)の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線(12)を備えた構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、環状回転子(2)は、該回転子(2)の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石(41A)及び径方向内方側永久磁石(41B)を備えると共に、環状固定子(3)は、前記径方向外方側永久磁石(41A)と前記径方向内方側永久磁石(41B)の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線(42)を備えた構成を採用することもできる。この図7では、前記実施形態(図1〜3)と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0034】
また、永久磁石を備えた環状回転子(2)の構成は、図1〜3、7のような構成に特に限定されるものではなく、種々設計変更可能である。また、電機子巻線を備えた環状固定子(3)の構成も、図1〜3、7のような構成に特に限定されるものではなく、種々設計変更可能である。例えば、前記環状回転子(2)を前後方向に2層積層一体化した構成とする一方、前記環状固定子(3)も前後方向に2層積層一体化した構成とし、前記各環状固定子(3)の内方突出部(18)を前記各環状回転子(2)の前方側永久磁石(11A)と後方側永久磁石(11B)の間の間隙に配置せしめたタンデム型(積層型)構造を採用しても良い。勿論3層以上の積層構造を採用することもできる。
【0035】
次に、この発明に係る発電機(1)の他の実施形態を図4〜6に示す。これらの図において、(22)は回転子、(23)は固定子、(24)は回転翼である。
【0036】
前記固定子(23)は、環状に形成されている。即ち、図5に示すように、前記固定子(23)は、短筒状の環状基部(34)と、該環状基部(34)の前面側位置から径方向内方に向けて延ばされた前面側内方突出部(35)と、前記環状基部(34)の背面側位置から径方向内方に向けて延ばされた背面側内方突出部(36)と、前記前面側内方突出部(35)の内面に固定された前方側永久磁石(31A)と、前記背面側内方突出部(36)の内面に固定された後方側永久磁石(31B)とを備えてなる。前記前方側永久磁石(31A)と前記後方側永久磁石(31B)とは前記回転子(22)の回転軸線方向(J)に相互に離間して配置されている(図5参照)。
【0037】
前記後方側永久磁石(31B)は、図6に示すように、周方向において磁極性の反転を交互に繰り返すように配列されている。図示しないが、前記前方側永久磁石(31A)についても同様に周方向において磁極性の反転を交互に繰り返すように配列されている。また、図5に示すように、対向する後方側永久磁石(31B)及び前方側永久磁石(31A)において、対向面側の極性は互いに異なるように配置されている。例えば、一方の永久磁石の対向面側がN極であれば、対向する他方の永久磁石の対向面側はS極となるように配置されている(図5参照)。従って、前記前方側永久磁石(31A)と後方側永久磁石(31B)とで形成される磁束の方向は、前記環状回転子(2)の回転軸線(J)に対して略平行である(図5参照)。且つ、周方向に沿って、磁束の方向は、交互に反転する。例えば、任意の位置での前後一対の永久磁石(31A)(31B)において前記回転軸線(J)に沿って前から後へ向かう磁束が形成されていれば、該一対の永久磁石に対して周方向に隣り合う前後一対の永久磁石間では前記回転軸線(J)に沿って後から前へ向かう磁束が形成されている。
【0038】
前記回転子(22)は、環状に形成されている。即ち、図5に示すように、前記回転子(22)は、前記環状固定子(23)の径方向の内側に離間して配置された短筒状の環状基部(37)と、該環状基部(37)の前後方向の中央位置から径方向外方に向けて延ばされた外方突出部(38)と、該外方突出部(38)の内部に埋設されたコアレス型の電機子巻線(32)とを備えてなる。前記回転子(22)の外方突出部(38)は、前記前方側永久磁石(31A)と前記後方側永久磁石(31B)の間の間隙に配置されている。即ち、前記コアレス型の電機子巻線(32)は、前記前方側永久磁石(31A)と前記後方側永久磁石(31B)の間の間隙に配置されている。換言すれば、前記コアレス型の電機子巻線(32)の前方側の近傍位置に前方側永久磁石(31A)が配置され、前記電機子巻線(32)の後方側の近傍位置に後方側永久磁石(31B)が配置されている。前記環状回転子(22)と前記環状固定子(23)は互いに同心状(同心円状)に配置されており、これら環状回転子(22)及び環状固定子(23)から形成される発電機構部は環状形状である。なお、前記固定子(23)の下方部に支柱(5)の一端部が連接されている(図4参照)。前記支柱(5)の他端部が、例えば地面等の固定体に固定される。
【0039】
前記回転翼(24)は前記環状回転子(22)の内側の中空空間(M)に配置されると共に、該回転翼(24)は前記環状回転子(22)に固定されている。即ち、前記回転翼(24)は、前記中空空間(M)の中央部に配置された中央連結部(26)から径方向外方に向けて放射状に3つの翼体(27)(27)(27)が延設されたものからなり、これら翼体(27)(27)(27)の先端が前記環状回転子(22)の環状基部(37)に接合されることによって、前記回転翼(24)は前記環状回転子(22)に固定されている。
【0040】
また、前記回転子(22)は、ベアリング(39)を介して前記固定子(23)に回転自在に支持されている。即ち、前記回転子(22)の環状基部(37)の前面側と前記前方側永久磁石(31A)の間にベアリング(39)が配置され、前記回転子(22)の環状基部(37)の背面側と前記後方側永久磁石(31B)の間にベアリング(39)が配置されている(図5参照)。
【0041】
しかして、上記発電機(1)の支柱(25)の下端部を地面等の固定体に固定した状態で、発電機(1)の回転翼(24)に風又は水流等を当てると、回転翼(24)が回転し、これにより回転翼(24)に固定された回転子(22)も同期回転する。即ち、回転子(22)に埋設された電機子巻線(32)は、前記回転翼(24)の回転に同期して回転する。これにより、前記固定子(23)に固定された永久磁石(31A)(31B)に対して前記電機子巻線(32)が回転移動するので、前記電機子巻線(32)に電流が発生し、該電流が配線を通じて他の電機機器等に送電される。配線を蓄電器に接続すれば蓄電することもできる。
【0042】
上記発電機(1)では、電機子巻線(32)は、コアレス型(鉄芯を有しない構成)であるから、軽量性を十分に維持できる。また、発電機の直径を大きくして大型化した場合であっても、環状回転子(22)及び環状固定子(23)は、いずれもその内側が中空(回転翼を除いて)であるから、顕著に重量が増大することはなく軽量性を維持できると共に、軽量であるから環状回転子(22)の回転駆動負荷は小さくて済み例えば弱い風や水流が回転翼に当たっても環状回転子(22)を回転させることができる。また、電機子巻線(32)を備えた環状回転子(22)を回転翼(24)の外周領域に固定せしめた構成を採用しているので、回転翼(24)自体は低速回転であったとしてもその外周部に固定された環状回転子(電機子巻線)の回転による移動速度(外周での移動速度)は十分に大きなものとなるから、増速機を用いなくても十分に高い出力電圧で電力を発生させることができる(より大きな電力を発生させることができる)。
【0043】
なお、上記実施形態(図4〜6)では、前記環状固定子(23)は、前記回転子(22)の回転軸線方向(J)に相互に離間して配置された前方側永久磁石(31A)及び後方側永久磁石(31B)を備えると共に、前記環状回転子(22)は、前記前方側永久磁石(31A)と前記後方側永久磁石(31B)の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線(32)を備え構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば図8に示すように、環状固定子(23)は、該固定子(23)の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石(51A)及び径方向内方側永久磁石(51B)を備えると共に、環状回転子(22)は、前記径方向外方側永久磁石(51A)と前記径方向内方側永久磁石(51B)の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線(52)を備えた構成を採用することもできる。この図8では、前記実施形態(図4〜6)と同一の構成部については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0044】
また、永久磁石を備えた環状固定子(23)の構成は、図4〜6、8のような構成に特に限定されるものではなく、種々設計変更可能である。また、電機子巻線を備えた環状回転子(22)の構成も、図4〜6、8のような構成に特に限定されるものではなく、種々設計変更可能である。例えば、前記環状回転子(22)を前後方向に2層積層一体化した構成とする一方、前記環状固定子(23)も前後方向に2層積層一体化した構成とし、前記各環状回転子(22)の外方突出部(38)を前記各環状固定子(23)の前方側永久磁石(31A)と後方側永久磁石(31B)の間の間隙に配置せしめたタンデム型(積層型)構造を採用しても良い。勿論3層以上の積層構造を採用することもできる。
【0045】
この発明において、前記永久磁石(11A)(11B)(31A)(31B)としては、特に限定されるものではないが、希土類磁石が好適に用いられる。希土類磁石を用いれば、より一層大きな容量の電力を得ることができる。前記希土類磁石としては、特に限定されないが、例えばSm−Co磁石、Nd−Fe−B磁石等が挙げられる。
【0046】
また、前記実施形態では、前記回転翼(4)(24)の翼体の枚数は3枚であるが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば翼体の枚数は2枚、4枚、5枚、或いは6枚以上であっても良い。また、前記回転翼(4)(24)の翼体の形状は、風や水流等を受けて回転翼が回転し得る形状であれば特に限定されない。
【0047】
しかして、この発明に係る環状発電機(1)の回転翼(4)(24)に対して風を当てて又は水流を当てて回転翼(4)(24)を回転させると、前記環状回転子(2)(22)が前記環状固定子(3)(23)に対して相対移動するので、前記電機子巻線(12)(32)に電流が発生して発電することができる。前記電流を配線を通じて他の電機機器等に送電すればこれら電機機器等を運転駆動させることができるし、配線を蓄電器に接続すれば蓄電することもできる。前記風、水流以外に、その他の流体の流れを前記回転翼(4)(24)に当てて該回転翼(4)(24)を回転させることによって発電するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明に係る発電機は、例えば、風力発電機、水力発電機として好適に用いられる。また、空気、水のみならず、その他の流体の流れを利用して発電する発電機としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明に係る発電機の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1におけるA−A線の断面図である。
【図3】図2におけるB−B線の断面図である。
【図4】この発明に係る発電機の他の実施形態を示す正面図である。
【図5】図4におけるC−C線の断面図である。
【図6】図5におけるD−D線の断面図である。
【図7】この発明に係る発電機のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図8】この発明に係る発電機のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…発電機
2…回転子
3…固定子
4…回転翼
11A…前方側永久磁石
11B…後方側永久磁石
12…電機子巻線
19…ベアリング
22…回転子
23…固定子
24…回転翼
31A…前方側永久磁石
31B…後方側永久磁石
32…電機子巻線
39…ベアリング
41A…径方向外方側永久磁石
41B…径方向内方側永久磁石
42…電機子巻線
51A…径方向外方側永久磁石
51B…径方向内方側永久磁石
52…電機子巻線
J…回転子の回転軸線方向
M…中空空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアレス型の電機子巻線を備えた環状の固定子と、
該環状固定子に対して同心状に配置され、永久磁石を備えた環状の回転子と、
前記環状回転子の内側の中空空間に配置され、該環状回転子に固定された回転翼とを備えてなり、
前記環状回転子は前記回転翼の回転に連動して回転するものとなされていることを特徴とする発電機。
【請求項2】
前記環状回転子は、該回転子の回転軸線方向に相互に離間して配置された前方側永久磁石及び後方側永久磁石を備え、
前記環状固定子は、前記前方側永久磁石と前記後方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記環状回転子は、該回転子の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石及び径方向内方側永久磁石を備え、
前記環状固定子は、前記径方向外方側永久磁石と前記径方向内方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
永久磁石を備えた環状の固定子と、
該環状固定子に対して同心状に配置され、コアレス型の電機子巻線を備えた環状の回転子と、
前記環状回転子の内側の中空空間に配置され、該環状回転子に固定された回転翼とを備えてなり、
前記環状回転子は前記回転翼の回転に連動して回転するものとなされていることを特徴とする発電機。
【請求項5】
前記環状固定子は、前記回転子の回転軸線方向に相互に離間して配置された前方側永久磁石及び後方側永久磁石を備え、
前記環状回転子は、前記前方側永久磁石と前記後方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする請求項4に記載の発電機。
【請求項6】
前記環状固定子は、該固定子の径方向に相互に離間して配置された径方向外方側永久磁石及び径方向内方側永久磁石を備え、
前記環状回転子は、前記径方向外方側永久磁石と前記径方向内方側永久磁石の間の間隙に配置されたコアレス型の電機子巻線を備えていることを特徴とする請求項4に記載の発電機。
【請求項7】
前記永久磁石として希土類磁石が用いられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の発電機。
【請求項8】
前記回転子は、ベアリングを介して前記固定子に回転自在に支持されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の発電機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発電機の回転翼に対して風を当てて回転翼を回転させることによって発電することを特徴とする風力発電方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発電機の回転翼に対して水流を当てて回転翼を回転させることによって発電することを特徴とする水力発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−336783(P2007−336783A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169079(P2006−169079)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】