説明

発電機

【課題】小型化および部品点数の削減による低コスト化を図ることができる、発電機を提供する。
【解決手段】ステータ4は、ロータ3の周囲に回転周方向に互いに間隔を空けて配置され、互いに磁気的に独立した2つのステータモジュール9,10からなる。各ステータモジュール9,10は、ステータヨーク11と、ステータヨーク11からロータ3に向けて突出する複数のステータ磁極12と、各ステータ磁極12に集中巻されたステータコイル13とを有している。各ステータモジュール9,10において、相数に応じた数のステータ磁極からなるステータ磁極群14,15が複数形成されている。そして、各ステータモジュール9,10において、各ステータ磁極群14,15の間には、ステータヨーク11に巻回された界磁コイル16が設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に関し、とくに車両に搭載される交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、エンジンの出力軸の動力を電力に変換するオルタネータが備えられている。オルタネータは、交流発電機および交流発電機から出力される交流電力を直流電力に変換するレクチファイア(整流器)を含む。オルタネータで発生する直流電力は、ヘッドライトなどの電気負荷で消費され、また、バッテリに蓄えられる。
【0003】
交流発電機には、ロータと、ロータの周囲を取り囲む円環状のステータとが備えられている。
【0004】
図4は、従来の交流発電機に備えられているロータの模式的な側面図である。
【0005】
ロータ81は、シャフト82に固定されて、シャフト82と一体的に回転可能に設けられている。ロータ81は、シャフト82の周囲に巻回されたロータコイル83と、ロータコイル83を回転軸線方向(シャフト82の軸線方向)の両側から挟み込むように設けられた1対のポールコア84,85とを備えている。
【0006】
ポールコア84,85は、それぞれ鉄を用いて一体に形成されている。ポールコア84,85には、それぞれ互いに対向する方向に突出する複数の爪状磁極86,87が形成されている。爪状磁極86,87は、互いに噛み合って、周方向に交互に並んでいる。
【0007】
シャフト82の一端部には、2個のスリップリング88,89が固定されている。また、2個のブラシ91,92がそれぞれスリップリング88,89と摺擦可能に設けられている。ブラシ91,92は、発電電圧を制御するためのレギュレータを介して、バッテリと電気的に接続されている。バッテリからブラシ91,92およびスリップリング88,89を通してロータコイル83に界磁電流が供給されると、一方のポールコア84の爪状電極86がN極に着磁され、他方のポールコア85の爪状電極87がS極に着磁される。
【0008】
そして、エンジンの出力軸の回転がシャフト82に伝達されて、シャフト82とともにロータ81が回転すると、ステータに備えられているステータコイルに電磁誘導による電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−154262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4に示される構成のロータ81(いわゆるくし型ロータ)では、交流発電機の出力を増大させるためには、ロータ81を回転径方向および回転軸線方向に大型化しなければならず、その設計に自由度がない。たとえば、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から、交流発電機のサイズを回転径方向に縮小したい場合に、交流発電機の回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来と同出力を得るといったことは容易ではない。なぜなら、ポールコア84,85を回転軸線方向につなぐ磁路は、その磁気抵抗の増大を防ぐために、軸長が長くなる分、太くしなければならないからである。
【0011】
また、ロータ81を有する交流発電機では、ロータコイル83への給電のためのスリップリング88,89およびブラシ91,92が設けられているので、回転軸線方向のサイズが大きく、また、部品点数が多いという問題もある。
【0012】
本発明の目的は、小型化および部品点数の削減による低コスト化を図ることができる、発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明に係る発電機は、回転軸と、前記回転軸と一体的に回転可能に設けられるロータと、前記ロータの周囲に設けられるステータとを備えている。前記ロータは、前記回転軸が中心部に相対回転不能に挿通されるロータヨークと、前記ロータヨークから回転径方向に突出し、回転軸線を中心に配置される複数のロータ磁極とを有している。前記ステータは、前記ロータの周囲に回転周方向に互いに間隔を空けて配置され、互いに磁気的に独立した複数のステータモジュールからなる。各ステータモジュールは、ステータヨークと、前記ステータヨークから前記ロータに向けて突出する複数のステータ磁極と、各ステータ磁極に集中巻されたステータコイルとを有している。各ステータモジュールにおいて、相数に応じた数の前記ステータ磁極からなるステータ磁極群が複数形成されている。そして、前記発電機は、各ステータモジュールにおける各ステータ磁極群の間で前記ステータヨークに巻回された界磁コイルを含む。
【0014】
界磁コイルに界磁電流が流れると、界磁コイルの一方側のステータ磁極群がS極に着磁され、その他方側のステータ磁極群がN極に着磁される。そして、ロータの回転に伴って、ロータ磁極がN極に着磁されたステータ磁極と対向し、別のロータ磁極がS極に着磁されたステータ磁極と対向すると、磁束がN極に着磁されたステータ磁極とS極に着磁されたステータ磁極との間をロータ/ステータヨークを経由して通る。その結果、それらのステータ磁極に集中巻されたステータコイルに誘導電流が流れる。
【0015】
複数のステータモジュールが互いに離れているので、各ステータモジュール間に、空隙部分(ステータヨークが存在しない部分)を形成することができる。よって、ステータヨークが円環状に形成されたステータと比較して、ステータの回転径方向のサイズを縮小することができ、また、ステータの重量を低減することができる。
【0016】
そして、ロータは、いわゆるくし型ロータではないので、回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることができる。よって、ロータおよびステータの回転径方向のサイズを縮小し、それらの回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来の発電機と同出力を確保することができる。
【0017】
また、ロータに界磁コイルが設けられた構成とは異なり、スリップリングおよびブラシが不要である。そのため、ロータの回転軸線方向のサイズを増大させても、そのサイズの増大をスリップリングの配置に必要なスペースの省略で相殺することができ、発電機全体として回転軸線方向のサイズが増大することを防止できる。
【0018】
よって、発電機が自動車に搭載されるオルタネータに用いられる場合に、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から発電機のサイズを回転径方向に縮小しながら、発電機の出力を確保したいという要望に応えることができる。
【0019】
さらに、スリップリングおよびブラシが不要であるので、部品点数を削減することができる。その結果、部品点数の削減によるコストの低減を図ることができる。
【0020】
ステータモジュール間で同相のステータ磁極の電気角がずれるように構成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、相数を増加させた場合と同様に、出力電圧の脈動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ステータの小型化および軽量化により、発電機の小型化および軽量化を図ることができる。また、部品点数の削減により、発電機の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。
【図2】図2は、発電機を回転軸線に沿う断面で切断したときの断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。
【図4】図4は、従来の交流発電機に備えられているロータの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。図2は、発電機を回転軸線に沿う断面で切断したときの断面図である。なお、図1,2では、図面が煩雑になることを回避するため、一部に対するハッチングの付与が省略されている。
【0026】
発電機1は、3相交流発電機である。発電機1は、回転軸2、ロータ3およびステータ4を備えている。
【0027】
ロータ3は、積層鋼板からなり、回転軸2と一体的に回転可能に設けられている。ロータ3は、円柱状のロータヨーク5と、ロータヨーク5の周面から回転径方向に突出する18個のロータ磁極6とを有している。
【0028】
ロータヨーク5には、その中心軸線上に、断面円形状の軸挿通孔7が貫通して形成されている。軸挿通孔7には、回転軸2が相対回転不能に挿通されている。また、ロータヨーク5には、軸挿通孔7の周囲に、4個の断面円弧状の空洞8が回転軸2の中心軸線(回転軸線)方向に貫通して形成されている。これにより、ロータヨーク5の軽量化が図られている。
【0029】
16個のロータ磁極6は、回転軸線を中心に等角度間隔、つまり22.5°間隔で設けられている。各ロータ磁極6は、回転軸線方向に延びる略直方体形状に形成されている。
【0030】
ステータ4は、2個のステータモジュール9,10からなる。
【0031】
ステータモジュール9は、断面円弧状のステータヨーク11と、ステータヨーク11からロータ3に向けて突出する6個のステータ磁極(ティース)12と、各ステータ磁極12に集中巻されたステータコイル13とを備えている。
【0032】
ステータヨーク11およびステータ磁極12は、一体的に形成されている。ステータヨーク11およびステータ磁極12からなる構造体は、積層鋼板からなる。
【0033】
6個のステータ磁極12は、回転軸線を中心とする15°間隔で並ぶ3個ずつに分けられて、2つのステータ磁極群14,15を構成している。また、ロータ3およびステータ磁極12で構成される磁路の長さは、異なる相同士でもほぼ同じ長さにされている。各ステータ磁極12は、ステータヨーク11からロータ3側に回転径方向に突出し、回転軸線方向に延びる略直方体形状に形成されている。
【0034】
そして、2つのステータ磁極群14,15の間には、ロータ磁極ピッチ分(22.5°)の間隔が空けられて、界磁コイル16が設けられている。界磁コイル16は、ステータヨーク11に巻回されている。
【0035】
ステータモジュール10は、ステータモジュール9に対して回転軸線を中心に180°回転対称をなした構成を有している。ステータモジュール10の各部について、ステータモジュール9の各部に相当する部分については、それらの各部と同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
界磁コイル16に界磁電流が流れると、界磁コイル16の一方側のステータ磁極群14がS極に着磁され、その他方側のステータ磁極群15がN極に着磁される。そして、ロータ3の回転に伴って、ロータ磁極6がN極に着磁されたステータ磁極12と対向し、別のロータ磁極6がS極に着磁されたステータ磁極12と対向すると、磁束がN極に着磁されたステータ磁極12とS極に着磁されたステータ磁極12との間をロータ3/ステータヨーク11を経由して通る。その結果、それらのステータ磁極12に集中巻されたステータコイル13に誘導電流が流れる。
2つのステータモジュール9,10が互いに離れていることにより、各ステータモジュール9,10間には、空隙部分、つまりステータヨーク11が存在しない部分が形成されている。よって、ステータヨークが円環状に形成されたステータと比較して、ステータ4の回転径方向のサイズを縮小することができ、また、ステータ4の重量を低減することができる。
【0037】
そして、ロータ3は、いわゆるくし型ロータではないので、回転径方向のサイズを縮小する一方で、回転軸線方向のサイズを増大させることができる。よって、ロータ3およびステータ4の回転径方向のサイズを縮小し、それらの回転軸線方向のサイズを増大させることにより、従来の発電機と同出力を確保することができる。
【0038】
また、ロータ3に界磁コイル16が設けられた構成とは異なり、スリップリングおよびブラシが不要である。そのため、ロータ3の回転軸線方向のサイズを増大させても、そのサイズの増大をスリップリングの配置に必要なスペースの省略で相殺することができ、発電機1の全体として回転軸線方向のサイズが増大することを防止できる。
【0039】
よって、発電機1が自動車に搭載されるオルタネータに用いられる場合に、オルタネータが配置されるエンジンルーム内のスペースの関係から発電機のサイズを回転径方向に縮小しながら、発電機1の出力を確保したいという要望に応えることができる。
【0040】
さらに、スリップリングおよびブラシが不要であるので、部品点数を削減することができる。その結果、部品点数の削減による発電機1のコストの低減を図ることができる。
【0041】
さらにまた、ロータ3が積層鋼板からなるので、ロータ3の表面での渦電流の発生を抑制することができる。その結果、発電効率を向上させることができる。
【0042】
図3は、本発明の他の実施形態に係る発電機を回転軸線に直交する断面で切断したときの断面図である。図3では、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、図3に示される構成について、図1に示される構成との相違点のみを説明する。
【0043】
図1に示される構成では、ステータモジュール10は、ステータモジュール9に対して回転軸線を中心に180°回転対称をなした構成を有している。
【0044】
これに対し、図3に示される構成では、ステータモジュール10は、図1に示される位置に対して回転軸線を中心に3.75°、つまりステータモジュール10における同相のステータコイル13(ステータ磁極12)のピッチの1/4だけずれた位置に配置されている。
【0045】
これにより、ステータモジュール10のU’相、V’相およびW’相に対応するステータコイル13から出力される交流電圧は、それぞれステータモジュール9のU相、V相およびW相に対応するステータコイル13から出力される交流電圧に対して、その3.75°の位置ずれに対応する電気角だけ位相がずれる。
【0046】
よって、相数を増加させた場合と同様に、出力電圧の脈動を抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0048】
たとえば、3個のステータ磁極12によって各ステータ磁極群14,15が構成される場合を例にとったが、各ステータ磁極群14,15を構成するステータ磁極12の数は、相数に応じて変更されるとよい。たとえば、発電機1が2相交流発電機である場合には、各ステータ磁極群14,15が2個のステータ磁極12によって構成されるとよい。
【0049】
また、2つのステータモジュール9,10が設けられた構成を取り上げたが、3つ以上のステータモジュールが設けられてもよい。
【0050】
さらに、ステータモジュール10の位置は、図1に示される位置に対して回転軸線を中心にステータモジュール10における同相のステータコイル13のピッチの3/4だけずれた位置に配置されてもよい。また、ステータモジュール10の位置は、図1に示される位置に対して回転軸線を中心にステータモジュール10における同相のステータコイル13のピッチの5/4だけずれた位置に配置されてもよい。すなわち、ステータモジュール10の位置は、図1に示される位置に対して回転軸線を中心にステータモジュール10における同相のステータコイル13のピッチの(1+2n)/4(n:0または自然数)だけずれた位置に配置されてもよい。
【0051】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 発電機
2 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
5 ロータヨーク
6 ロータ磁極
9 ステータモジュール
10 ステータモジュール
11 ステータヨーク
12 ステータ磁極
13 ステータコイル
14 ステータ磁極群
15 ステータ磁極群
16 界磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸と一体的に回転可能に設けられるロータと、前記ロータの周囲に設けられるステータとを備える発電機であって、
前記ロータは、前記回転軸が中心部に相対回転不能に挿通されるロータヨークと、前記ロータヨークから回転径方向に突出し、回転軸線を中心に配置される複数のロータ磁極とを有し、
前記ステータは、前記ロータの周囲に回転周方向に互いに間隔を空けて配置され、互いに磁気的に独立した複数のステータモジュールからなり、
各ステータモジュールは、ステータヨークと、前記ステータヨークから前記ロータに向けて突出する複数のステータ磁極と、各ステータ磁極に集中巻されたステータコイルとを有し、
各ステータモジュールにおいて、相数に応じた数の前記ステータ磁極からなるステータ磁極群が複数形成され、
各ステータモジュールにおける各ステータ磁極群の間で前記ステータヨークに巻回された界磁コイルを含む、発電機。
【請求項2】
前記ステータモジュール間で同相の前記ステータ磁極の電気角がずれるように構成されている、請求項1に記載の発電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−116013(P2013−116013A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262790(P2011−262790)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】