説明

発電用水風車およびそれを用いた発電方法

【課題】水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えないうえ、風向風速計を別途設ける必要のない直線翼型風水車およびそれを用いた発電方法を提供する。
【解決手段】水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置され、該水平直線翼の周りを風または水流が通過する際に発生する揚力により、前記2枚以上の水平直線翼が前記水平軸を中心として回転することを特徴とする発電用水風車およびそれを用いた発電方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電用水風車およびそれを用いた発電方法に関する。
【0002】
具体的には、2枚以上の直線翼を有する直線翼型風水車およびそれを用いた発電方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2枚以上の直線翼を有する直線翼型風水車は、地球環境保全やエネルギセキュリティの確保、経済成長等の見地から化石燃料等を用いずに風力や水力による発電への適用が検討されており、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、軸線の周囲に配置される主翼と、軸線と主翼とを結ぶ支持翼とをグラスファイバやカーボンファイバ等の軽量で高強度な繊維材で一体に形成することにより、垂直軸水風車の主翼と支持翼との交差部の強度等の向上を図る方法が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、水風車の効率や自己始動性、騒音等を考慮してソリディティ、取付角、翼厚等の適正化を図った直線翼型水風車が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載された従来の直線翼型水風車は、いずれも直線翼を垂直に配置していたため以下のような問題点があった。
【0007】
まず、直線翼を垂直に配置した水風車を水流中に浸漬させることにより水風車を回転させそのエネルギーにより発電することができるが、回転中に水の抵抗が大きくなる部分が生じるため発電効率の制約を受けるうえ、水車を回転させる垂直軸を片持ちの状態で水流中に浸漬させるため、垂直軸に大きなモーメントが働くうえ、腐食の原因となっていた。
【0008】
また、風による災害は台風を含め多大なものが有り、特に交通災害の一つである、車両(車・電車など)の通行で進行方向の左右から吹く風又突風で車両のスムーズな進行を妨げ、事故を誘発する例は多々発生している。直線翼を垂直に配置した風車を用いて発電する場合に、この事故を未然に防止するため風向や風速を計測し表示するには、風車とは別に風向風速計を設置してその測定値を表示する必要があった。
【特許文献1】特開2003−206848号公報
【特許文献2】特開2003−206849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えないうえ、風向風速計を別途設ける必要のない直線翼型風水車およびそれを用いた発電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決すべく鋭意検討の結果、水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置することにより、水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えないうえ、風向風速計を別途設ける必要のない直線翼型風水車およびそれを用いた発電方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置され、該水平直線翼の周りを風または水流が通過する際に発生する揚力により、前記2枚以上の水平直線翼が前記水平軸を中心として回転することを特徴とする発電用水風車。
(2)前記水平直線翼の翼断面の先端に嘴状の突起を設けることにより、該水平直線翼の入水時の抵抗を低減することを特徴とする(1)に記載の発電用水風車。
(3)前記水平直線翼の断面形状は、翼最大厚Wが翼弦長Lの10〜30%であり、先端部の嘴状の突起長Dは、翼最大厚Wの40〜70%であることを特徴とする(2)に記載の発電用水風車。
(4)前記発電用水風車の回転により発生する電力を用いて、水流速度または風向風力を計測し表示する計測表示手段を有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の発電用水風車。
(5)前記水平直線翼と前記水平軸を支持するフレームとを、蝶番状の回転軸で固定することを特徴とする発電用水風車。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の発電用水風車の水平軸より下側の一部分を水流中に浸漬させ、前記水平直線翼に揚力を働かせて前記該水流発電用水車を回転させることにより発電することを特徴とする発電方法。
(7)(4)に記載の発電用水風車を用いることにより、発電用水風車自身の回転により発生する電力を用いて水流速度または風向風力を計測し表示しながら発電することを特徴とする発電方法。
<作用>
(1)の発明によれば、水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置されているので、水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えない。
(2)の発明によれば、水平直線翼の翼断面の先端に嘴状の突起が設けられているので、水平直線翼が着水する際に水面から受ける抵抗を極少化することができる。
(3)の発明によれば、水平直線翼の断面形状を、翼最大厚Wが翼弦長Lの10〜30%であり、先端部の嘴状の突起長Dを、翼最大厚Wの40〜70%とすることにより、揚力を大きくする一方で、水から受ける抵抗を小さくすることができる。
(4)の発明によれば、発電用水風車の回転により発生する電力を用いて、水流速度または風向風力を計測し表示する計測表示手段を設けるので別途風向風速計を設ける必要がない。
(5)の発明によれば、水平直線翼と前記水平軸を支持するフレームとを、蝶番状の回転軸で固定するので、水平直線翼の翼断面が川上に向かう状態でスイングし、水中から水平直線翼が脱出する以前の角度で40度〜60度の範囲でさらに水流の抵抗を低減し推進力を増大することができる。
(6)の発明によれば、発電用水風車の水平軸より下側の一部分を水流中に浸漬させ、前記水平直線翼に揚力を働かせて前記該水流発電用水車を回転させることにより水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えない発電方法を提供できる。
(7)の発明によれば、発電用水風車自身の回転により発生する電力を用いて水流速度または風向風力を計測し表示しながら発電することにより、左右からの風を容易に把握し、的確にまた安価に電光掲示板などで表示し運転者に注意を促し、事前に横風による災害を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置することにより、水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えないうえ、風向風速計を別途設ける必要のない直線翼型風水車およびそれを用いた発電方法を提供することができ、具体的には以下のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えない。
2)水平直線翼が着水する際に水面から受ける抵抗を極少化することができる。
3)揚力を大きくする一方で、水から受ける抵抗を小さくすることができる。
4)別途風向風速計を設ける必要がない。
5)水中から、水平直線翼が脱出する以前の角度で40度〜60度の範囲でさらに水流の抵抗を低減し推進力を増大することができる。
6)水流中に浸漬させても抵抗が少なく回転軸に過度なモーメントや腐食環境を与えない発電方法を提供できる。
7)左右からの風を容易に把握し、的確にまた安価に電光掲示板などで表示し運転者に注意を促し、事前に横風による災害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について図1〜図7を用いて詳細に説明する。
【0013】
図3は、従来の発電用水風車を水流発電に適用した実施形態を例示する側面図(a)および上面図(b)である。
【0014】
図3に示すように、従来の直線翼型水風車は、垂直軸の周囲に2枚以上の直線翼を配置し、水風車を流水中に浸漬させることにより回転させ、ギアユニットを介して発電機を回して発電を行うことができる。
【0015】
このように、従来の直線翼垂直軸型水風車を用いて、水流発電を行う際には、図3(a)に示すように水風車全体を水面下に浸漬する必要があるため、垂直軸が片持ち状態となるので高い強度が必要となるうえ、垂直軸が腐食環境下に置かれるので高い耐食性が要求されていた。
また、垂直軸の周囲に2枚以上の直線翼を配置した従来の直線翼型水風車は、図3(b)に示すように、回転推力を得る翼だけでなく水の抵抗を受ける翼も流水中に浸漬されているため、水の抵抗によって発電効率が低下するという問題があった。
【0016】
図1および図2は、本発明の発電用水風車を水流発電に適用した実施形態を例示する図であり、図1は斜視図、図2(a)は側面図、図2(b)は正面図を示す。
【0017】
図1および図2において、1は水平軸、2は水平直線翼、3は支持翼、4はフレーム、5は発電機、6は発電機軸受け、7は伝動Vベルト又はギアユニットを示す。
【0018】
図1および図2に示すように、本発明の発電用水風車は、水平軸1を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼2が配置され、図7に示すように水平直線翼2の周りを風または水流が通過する際に水平直線翼2の後部に負圧が生じて発生する揚力によって、前記2枚以上の水平直線翼2が前記水平軸1を中心として水の流れに向かって図2に示す回転方向に回転する。
【0019】
本発明の発電用水風車は、水平軸1を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼2が配置され、水流により水平直線翼2に働く揚力により回転推力を得て回転し、伝動Vベルト又はギアユニット7を介して発電機5を回すことにより発電することができる。
【0020】
本発明の発電用水風車は、水平軸1を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼2が配置されているので、水風車全体を水流中に浸漬させる必要がなく、回転推力を得ることができる水平軸1より下部の一部分のみ水流中に浸漬させることにより、水の抵抗を受ける回転角にある翼は水面より上に露出させておくことができるので、水の抵抗による発電効率の低下を防止することができる。
【0021】
また、本発明の発電用水風車は、水平軸1を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼2が配置されているので、水平軸1の両端をフレーム4によって支えることができるため回転軸に過度なモーメントが働かないうえ、水平軸が水面から露出しているので腐食環境を与えにくい。
【0022】
本発明における発電用水風車の浸漬深さは問わないが、図2に示すように、発電用水車の半径rの2/3以下の部分を水面下に浸漬することにより、回転推力を有する回転角にある翼を水流中に浸漬し、水の抵抗を受ける回転角にある翼は水面より上に露出させておくことができる。
【0023】
CO2削減はもちろん自然エネルギーの活用が要望される中、日本国内には農業用水路が40万km有りその他の用水路を加えると莫大な長さの水の流れが有る、但し農業用水路は季節により7ヶ月は水位が下がり水深は500mm以下になる、この状況下で用水路の有効活用が必要とされている。一般的には効果的な発電は望めないため、水深の浅い状況でも効果的な発電できる方法が必要とされており、水力発電においてダムや特別な水路を造ることなく、水深が300mmから500mmの浅い水深の流れで発電を可能にすることが望まれている。
【0024】
本発明における発電用水風車は、発電用水風車の水平軸より下側の一部分を水流中に浸漬させ、前記水平直線翼に揚力を働かせて前記該水流発電用水車を回転させることにより発電することにとり、水深が300mm以上あれば設置可能であり水車の軸両端に軸受けを配置でき、かつ水中に浸漬しないことから、製作も容易であり、耐久性も確保できる。
【0025】
図7は、本発明に用いる直線翼の好ましい実施形態を例示する図である。
【0026】
本発明に用いる直線翼の断面形状は問わないが、図7に示すように、水平直線翼の翼断面の先端に嘴状の突起を設けることにより、該水平直線翼の入水時の抵抗を低減することができ、最大幅Wが翼長Lの10〜30%であり、先端部の嘴状の突起長Dは、翼最大厚Wの40〜70%とすることにより、垂直翼の回転推進力を維持しつつ水平直線翼の入水時の抵抗を効果的に低減することができる。
【0027】
図5および図6は、従来の発電用水風車を風力発電に適用した実施形態を例示する側面図である。
【0028】
図5に示すように、従来の直線翼垂直軸型風水車を風力発電に適用する場合には、図6に示すようなプロペラ型風車と異なり、360°方向の風に対して方向性を持たないことを特徴としており尾翼や風向制御が不要で有ることを最大の利点としていた。
【0029】
しかし、従来の直線翼垂直軸型風水車を風力発電に適用する場合に、風向および風速を測定し表示するためには、別途、風向風速計を設置する必要があった。
【0030】
図4は、本発明の発電用水風車を風力発電に適用した実施形態を例示する上面図および正面図である。
【0031】
図4(a)に示すように、本発明の直線翼水平軸型風水車の水平軸を車道と平行に配置した場合、車道の左右から吹く風によって水風車が揚力を得て回転し、車の進行方向の風では回転しないため道路上の進行方向の左右の方向からの風にのみ回転し発電が可能であり、前記発電用水風車の回転により発生する電力を用いて、風向風力を計測し表示する計測表示手段を設けることにより、道路交通上危険な横風を感知し注意を喚起することができる。
【0032】
図6に示すようにプロペラ型風車を左右に一台ずつ自転しないように固定することで同様の機能を果たすが、この場合二台のプロペラ風車が必要になり、費用が増加するデメリットがある。風向だけの測定であれば既成の風向計を設置すればよいが、発電しその電力を活用することはできない。
【0033】
図8は、本発明に用いる直線翼とフレームの好ましい取り付け固定の実施形態を例示する図であり、図8(a)は斜視図、図8(b)は側面図である。
【0034】
図8(a)に示すように、水平軸を支持するフレーム4と水平直線翼2とを、蝶番型の回転軸からなるスイング軸で固定することにより、図8(b)に示すように水平直線翼2の翼断面が川上に向かう状態でスイングし、水中から、水平直線翼が脱出する以前の角度で40度〜60度の範囲でさらに水流の抵抗を低減し推進力を増大することができる一方、完全固定の場合はA〜Bの範囲で水流の抵抗が大きい。
【0035】
なお、本発明においては、前記スイング軸の位置は問わないが、水平直線翼2の翼先端から翼弦長の1/4の位置とすることにより水流の抵抗をさらに低減することができる。
【0036】
また、過度のスイングを防止するため図8(a)に示すようにスイング範囲規制ガイドを設けることが好ましい。
【実施例】
【0037】
本発明の風水車を下記条件にて水流発電に適用したところ効率よく発電することができ、本発明の効果が確認された。
<実施条件>
・ 水風車の半径r:700mm
・ 水風車の浸漬深さ:480mm
・ 直線翼枚数:5枚
・ 翼弦長L:300mm
・ 翼最大幅W:80mm
・ 突起長D:40mm
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の発電用水風車を水流発電に適用した実施形態を例示する斜視図である。
【図2】本発明の発電用水風車を水流発電に適用した実施形態を例示する側面図および正面図である。
【図3】従来の発電用水風車を水流発電に適用した実施形態を例示する側面図および上面図である。
【図4】本発明の発電用水風車を風力発電に適用した実施形態を例示する上面図および正面図である。
【図5】従来の発電用水風車を風力発電に適用した実施形態を例示する側面図である。
【図6】従来の発電用水風車を風力発電に適用した実施形態を例示する側面図である。
【図7】本発明に用いる直線翼の好ましい実施形態を例示する図である。
【図8】本発明に用いる直線翼とフレームの好ましい取り付け固定の実施形態を例示する図である。
【符号の説明】
【0039】
1 水平軸
2 水平直線翼
3 支持翼
4 フレーム
5 発電機
6 発電機軸受け
7 伝動Vベルト又はギアユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸を中心とする円周上に2枚以上の水平直線翼が配置され、該水平直線翼の周りを風または水流が通過する際に発生する揚力により、前記2枚以上の水平直線翼が前記水平軸を中心として回転することを特徴とする発電用水風車。
【請求項2】
前記水平直線翼の翼断面の先端に嘴状の突起を設けることにより、該水平直線翼の入水時の抵抗を低減することを特徴とする請求項1に記載の発電用水風車。
【請求項3】
前記水平直線翼の断面形状は、翼最大厚Wが翼弦長Lの10〜30%であり、先端部の嘴状の突起長Dは、翼最大厚Wの40〜70%であることを特徴とする請求項2に記載の発電用水風車。
【請求項4】
前記発電用水風車の回転により発生する電力を用いて、水流速度または風向風力を計測し表示する計測表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発電用水風車。
【請求項5】
前記水平直線翼と前記水平軸を支持するフレームとを、蝶番状の回転軸で固定することを特徴とする発電用水風車。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の発電用水風車の水平軸より下側の一部分を水流中に浸漬させ、前記水平直線翼に揚力を働かせて前記該水流発電用水車を回転させることにより発電することを特徴とする発電方法。
【請求項7】
請求項4に記載の発電用水風車を用いることにより、発電用水風車自身の回転により発生する電力を用いて水流速度または風向風力を計測し表示しながら発電することを特徴とする発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−175147(P2008−175147A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9654(P2007−9654)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000115360)ヨシモトポール株式会社 (27)
【Fターム(参考)】