説明

白色発光ダイオードおよびその製造方法

【課題】高い発光効率を示し、かつ安定に白色光を実現することができ、照明装置またはディスプレイ装置のバックライトを代替することが可能な高出力、高効率光源として広く活用できる白色発光ダイオードおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】紫外発光ダイオードと、前記紫外発光ダイオードの上面に形成された、緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層と、前記混合蛍光体層の上面に形成された、赤色発光量子ドットを含む赤色発光量子ドット層と、を含むことを特徴とする、白色発光ダイオードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを用いた多層構造の白色発光ダイオードおよびその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
半導体を用いた白色発光ダイオード(white LED)は、寿命が長く、小型化が可能であるうえ、低電圧で駆動可能であるという特徴により、既存の発光素子を代替することが可能な次世代発光素子の一つとして脚光を浴びている。
【0003】
このような白色発光ダイオードを製造する既存の方法としては、三色(赤色、緑色、青色)の発光ダイオード(LED)を使用する方法があるが、製造コストが高く、駆動回路が複雑であるため、製品の大きさが大きくなるという欠点がある。
【0004】
また、発光波長450nmのInGaN系青色LEDにYAG:Ce蛍光体を組み合わせた白色LEDが実用化されている。これは、青色LEDから発生する青色光の一部がYAG:Ce蛍光体を励起して黄緑色の光を発生させ、前記青色の光と黄緑色の光とが合成されて白色を発光する。
【0005】
ところが、青色LEDにYAG:Ce蛍光体を組み合わせた白色LEDの光は、可視光領域の一部分のみのスペクトルを示すため、演色指数(color rendering index)が低く、そのため色の表現が不十分であるという問題点がある。さらに、励起光源として用いる青色LEDの波長が450nm程度なので、チップの効率が低下して全体的に白色LEDの発光効率が低いことも欠点である。
【0006】
前述した白色LEDの問題点を解決するために、励起光源として紫外発光ダイオード(UV−LED)を使用し、赤色、緑色および青色の蛍光体を全て組み合わせて、自然色に近い白色を発光する白色LEDを開発する努力が盛んに展開されている。
【0007】
すなわち、図1に示すように、紫外の短波長LED1の周囲に赤色、緑色、青色の蛍光体2を塗布するように構成することにより、前記赤色、緑色、青色の蛍光体は、高いエネルギーの紫外線LEDによって励起され、それぞれ赤色、緑色、青色のスペクトルを放出するようにし、この3つのスペクトルを合成して白色光を形成させるようにする方式が提案されている。
【0008】
しかし、前述したような従来の技術においては、蛍光体の光変換効率(Phosphor Conversion Efficiency)、自己吸収、温度、長時間使用などによる特性低下、特に赤色蛍光体の低い効率によって白色LED素子の特性が制限されるといった問題点がある。
【0009】
前述した蛍光体を用いた白色LED素子の問題点を解決するために、量子ドットを用いた白色および着色発光ダイオード(colored light emitting diode)が特許文献1および特許文献2などに開示されている。
【0010】
前記量子ドットを用いた白色および着色発光ダイオードは、図2aおよび図2bに示すように、第1光源3、ホストマトリックス4、およびホストマトリックス4に埋め込まれた量子ドット5の集合からなっている。
【0011】
前記量子ドット5の集合は、図2aに示すように、それぞれ特定波長の光を放出する2種類以上の量子ドット5が混合されて1層に構成されてもよく、図2bに示すように、別個の層に構成されてもよい。前述した発光ダイオードは、多数の量子ドット5を含み、実質的に第1光源3からの出射光が実質的に全て吸収され、最終的に放出される発光は量子ドット5の発光によってのみ形成される構造をとってもよく、または、少数の量子ドット5を含み、第1光源3から出射して量子ドット5に吸収されていない光と量子ドット5の発光との混合によって最終的な発光が形成される構造をとってもよい。
【特許文献1】米国特許第6,890,777号明細書
【特許文献2】特開2002−510899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような量子ドットを用いた発光ダイオードは、エネルギーの高い紫外光によって直接量子ドットが励起されて発光するので、紫外線に長時間晒される場合、発光効率が急激に減少し、これにより長時間の使用が必要な装置には適用することができないという問題点がある。
【0013】
したがって、紫外の高出力LEDを用いる場合、高い発光効率を有し、かつ安定に白色光を維持することが可能な発光素子の開発が切実に要求されている。
【0014】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、紫外光を励起光源として用いる白色発光ダイオードにおいて、相対的に効率の低い赤色蛍光体に代えて赤色発光量子ドットを用いることにより、発光効率の高い多層構造の白色発光ダイオードを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記赤色発光量子ドットを、紫外光によって直接励起させる代わりに、紫外光によって励起された青色および緑色の発光体から放出される可視光によって励起させることにより、安定に白色発光を維持することが可能な、多層構造の白色発光ダイオードを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、上述したような特性を有する多層構造の白色発光ダイオードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、紫外発光ダイオード(UV−LED)と、前記紫外発光ダイオードの上面に形成された、緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層と、前記混合蛍光体層の上面に形成された、赤色発光量子ドットを含む赤色発光量子ドット層と、を含むことを特徴とする、白色発光ダイオードを提供する。
【0018】
また、本発明は、紫外発光ダイオードの上面に緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層を形成する段階と、前記混合蛍光体層の上面に赤色発光量子ドット層を形成する段階と、を含むことを特徴とする、白色発光ダイオードの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の多層構造の白色発光ダイオードは、チップの発光効率に最も優れた約400nm付近のUV−LEDを励起光源として使用し、赤色発光材料として、前記波長で発光効率が相対的に低い赤色無機蛍光体の代わりに赤色発光量子ドットを用いるため、発光効率に優れた特性を有する。
【0020】
また、本発明の多層構造の白色発光ダイオードは、前記赤色発光量子ドットが、紫外光によって直接励起される代わりに、UV−LEDから発光する紫外光を吸収する緑色および青色蛍光体から発光する青色および緑色の可視光によって励起されるため、紫外光による赤色発光量子ドットの損傷がなく、安定に白色光を発光させる特性を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多層構造の白色発光ダイオードは、赤色発光量子ドットの励起源を、紫外光ではなく、蛍光体から発光する可視光に代えることにより、高出力を維持し、かつ、発光の安定性を向上させることができる。
【0022】
本発明の多層構造の白色発光ダイオードは、前述した効果により、照明装置またはディスプレイ装置のバックライトに用いることが可能な高出力、高効率光源として広く活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0024】
図3は本発明の一実施形態による多層構造の白色発光ダイオードを概略的に示す断面図である。
【0025】
図3を参照すると、本発明の白色発光ダイオードは、紫外光を発光するUV−LED10と、前記UV−LED10の上面に形成され、前記UV−LEDによって放出される紫外光を吸収してそれぞれ青色光と緑色光とを放出する緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層20と、前記混合蛍光体層20の上面に形成され、前記混合蛍光体層から放出される青色光と緑色光とによって励起されて赤色光を発光する赤色発光量子ドットを含む赤色発光量子ドット層30とから構成される。
【0026】
本発明において、UV−LED10としては、長波長UV領域である390nm〜410nmの範囲で発光特性を持つ公知のLEDチップを使用することができ、最大発光波長λmaxが約400nmのUV−LEDチップを使用することが好ましい。
【0027】
前記混合蛍光体層20は、好ましくは、青色蛍光体、緑色蛍光体および有機バインダを含む。
【0028】
本発明で使用可能な緑色蛍光体としては、好ましくは、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、(Zn,A)SiO:Mn(Aはアルカリ土類金属である)、MgAl:Mn(xは1〜10の整数であり、yは1〜30の整数である)、LaMgAl:Tb(xは1〜14の整数であり、yは8〜47の整数である)、ReBO:Tb(ReはSc、Y、La、Ce、およびGdよりなる群から選択される少なくとも1つの希土類元素である)、および(Y,Gd)BO:Tbよりなる群から少なくとも1種を選択して使用することができる。
【0029】
前記青色蛍光体としては、好ましくは、Sr(POCl:Eu2+、ZnS:Ag,Cl、CaMgSi:Eu、CaWO:Pb、YSiO:Eu、およびSrAl1425:Eu,Dyよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0030】
前記有機バインダとしては、好ましくは、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系高分子、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系高分子、エポキシ系高分子、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系高分子、PDMS(polydimethyl siloxane)などが使用できる。
【0031】
前記赤色発光量子ドットによる可視光の吸収は、緑色の光に比べて青色の光で強く現われるので、前記混合蛍光体層を構成する前記緑色蛍光体と前記青色蛍光体との質量比は、好ましくは1:2〜1:4であり、より好ましくは1:3である。
【0032】
前記有機バインダに対して、前記緑色蛍光体および前記青色蛍光体の割合があまり高い場合、紫外光励起によって発光した可視光が前記緑色蛍光体および前記青色蛍光体の粒子により遮断され、前記混合蛍光体層の外部に効果的に放出されない場合がある。よって、本発明の緑色蛍光体および青色蛍光体の合計の質量と有機バインダの質量との比は1:1〜1:3であることが好ましい。
【0033】
前記赤色発光量子ドット層30は、好ましくは、赤色発光特性を有する赤色発光量子ドットと有機バインダとを含む。
【0034】
前記赤色発光量子ドットとしては、例えばCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなどのII−VI族化合物半導体ナノ結晶、例えばGaN、GaP、GaAs、InP、InAsなどのIII−V族化合物半導体ナノ結晶、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0035】
前記有機バインダとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系高分子、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系高分子、エポキシ系高分子、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系高分子、PDMS(polydimethyl siloxane)などを使用することができる。
【0036】
前記赤色発光量子ドットと前記有機バインダとの混合比(質量比)は約1:1000〜1:25000であることが好ましく、約1:10000であることがより好ましい。
【0037】
前記赤色発光量子ドット層は、3mm以下の厚さであることが好ましい。前記赤色発光量子ドット層は、0.1mm以上の厚さであることが好ましい。
【0038】
本発明の白色発光ダイオードは、高輝度特性を示すので、LCDディスプレイのバックライト、照明用光源、車両照明などへの用途展開が可能である。
【0039】
以下、本発明に係る多層構造の白色発光ダイオードの製造方法について説明する。
【0040】
図4は本発明の一実施形態による白色発光ダイオードの製造方法を示す図である。
【0041】
本発明の製造方法に係る白色発光ダイオードは、(a)UV−LEDの上面に緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層を形成する段階と、(b)前記混合蛍光体層の上面に赤色発光量子ドット層を形成する段階とを有する。
【0042】
(a)UV−LEDの上面に緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層を形成する段階
混合蛍光体層は、好ましくは、緑色蛍光体および青色蛍光体を、適切な有機溶媒および有機バインダである有機高分子またはその前駆体を混合した有機バインダ溶液と所定の割合で混合し、その混合物をUV−LEDの上面にコートした後、乾燥させることにより形成される。
【0043】
前記緑色蛍光体としては、例えば、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、(Zn,A)SiO:Mn(Aはアルカリ土類金属である)、MgAl:Mn(xは1〜10の整数であり、yは1〜30の整数である)、LaMgAl:Tb(xは1〜14の整数であり、yは8〜47の整数である)、ReBO:Tb(ReはSc、Y、La、Ce、およびGdよりなる群から選択される少なくとも1つの希土類元素である)、および(Y,Gd)BO:Tbよりなる群から少なくとも1種を選択して使用することができる。
【0044】
本発明の青色蛍光体としては、例えば、Sr(POCl:Eu2+、ZnS:Ag,Cl、CaMgSi:Eu、CaWO:Pb、YSiO:Eu、およびSrAl1425:Eu,Dyよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0045】
前記混合蛍光体層の製造に用いられうる前記溶媒としては、具体的には、α−テルピネオール(α−terpineol)、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、またはこれらの混合物を例示することができる。
【0046】
前記有機バインダとしての有機高分子としては、具体的には、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系高分子、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系高分子、エポキシ系高分子、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系高分子、PDMSなどを例示することができる。
【0047】
前記緑色蛍光体および前記青色蛍光体と前記有機バインダ溶液とを含む混合物をUV−LEDの上面にコートする方法としては、好ましくは、ドロップキャスティング(drop casting)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)を例示することができる。
【0048】
前記混合物を乾燥させる際の乾燥温度は、蛍光体の安定性を保証するために、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜150℃である。
【0049】
(b)混合蛍光体層の上面に赤色発光量子ドット層を形成する段階
赤色発光量子ドット層は、好ましくは、赤色発光特性を有する赤色発光量子ドットをシリコン系分散剤を用いて有機バインダを含む溶液に分散させ、前記混合蛍光体層の上面にコートして形成される。
【0050】
前記赤色発光量子ドットの合成方法は、特に限定されず、公知の全ての技術が適用可能であるが、以下に、化学的湿式合成法によって赤色発光量子ドットを製造する方法について詳細に説明する。
【0051】
化学的湿式合成法によって赤色発光量子ドットを製造する工程は、好ましくは、量子ドット前駆体を窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で適切な溶媒に入れて反応させて合成することにより行う。
【0052】
前記量子ドット前駆体は、一般に、金属前駆体(metal precursor)とカルコゲニド前駆体(chalcogenide precursor)とを別々の溶媒に添加してそれらを反応させるか、或いは単一の前駆体を用いることにより得られることが知られている。
【0053】
前記化学的湿式合成法に用いられる溶媒としては、好ましくは、炭素数6〜22のアルキルホスフィン、炭素数6〜22のアルキルホスフィンオキサイド、炭素数6〜22のアルキルアミン、またはこれらの混合物を例示することができる。炭素数6〜22のアルキルホスフィンとしては、例えばトリオクチルホスフィンなどが挙げられる。炭素数6〜22のアルキルアミンとしては、例えば、トリオクチルアミンが挙げられる。
【0054】
前記化学的湿式合成法によって製造される量子ドットとしては、例えばCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなどのII−VI族化合物半導体ナノ結晶、例えばGaN、GaP、GaAs、InP、InAsなどのIII−V族化合物半導体ナノ結晶、またはこれらの混合物を使用することができる。本発明において、前記量子ドットが2つ以上の物質の混合物で存在する場合、単純な混合物の形態で存在してもよく、各物質の結晶構造が部分に分けられて同一の粒子内に存在してもよく、または合金の形で存在してもよい。
【0055】
前記化学的湿式合成法において、結晶の成長を容易にしながら溶媒の安定性を保証するための好ましい反応温度の範囲は、150℃〜460℃、より好ましくは200℃〜420℃、最も好ましくは230℃〜400℃である。
【0056】
また、前記化学的湿式合成法において、反応時間は、好ましくは1分〜4時間、より好ましくは2分〜3時間、よりさらに好ましくは3分〜2時間である。
【0057】
上述の化学的湿式合成法によって製造された赤色発光量子ドットは、コロイド状態で溶媒に分散しているので、好ましくは遠心分離によって溶媒から分離する。
【0058】
前述したように分離した赤色発光量子ドットを、例えばトルエン、ヘキサンなどの適切な溶媒に溶解させ混合蛍光体層上に塗布した後、焼成して赤色発光量子ドット層を形成する。
【0059】
または、前記赤色発光量子ドットを、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系高分子、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系高分子、エポキシ系高分子、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系高分子、PDMSなどの有機バインダ、シリコン系分散剤とともに溶媒に加えた混合物を、混合蛍光体層上にコートし、好ましくは、その後焼成する。
【0060】
前記赤色発光量子ドットと前記有機バインダ溶液とを含む混合物を混合蛍光体層上にコートする方法としては、好ましくは、ドロップキャスティング(drop casting)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、スプレーコーティング(spray coating)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)を例示することができる。
【0061】
前記赤色発光量子ドットと前記有機バインダとの混合比(質量比)は約1:1000〜1:25000であることが好ましく、約1:10000であることがより好ましい。
【0062】
前記赤色発光量子ドット層は、好ましくは、3mm以下の厚さに形成される。前記赤色発光量子ドット層は、0.1mm以上の厚さであることが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、好適な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0064】
製造例1:赤色発光量子ドットの合成
トリオクチルアミン(Trioctyl amine、以下「TOA」という)16g、オレイン酸(Oleic acid、以下「OA」という)0.5gおよびカルコゲン前駆体である酸化カドミウム0.4mmolを125mLの還流コンデンサ付きフラスコに仕込み、真空状態に維持しながら、反応温度を約150℃まで上昇させた。この際、混合物を700rpm以上で攪拌した。150℃になると、真空雰囲気から窒素雰囲気に変え、温度を300℃まで上昇させた。これとは別に、窒素雰囲気下でSe粉末を溶媒である純度97%のトリオクチルホスフィン(Trioctyl phosphine、以下「TOP」という)に溶かしてSe濃度約0.2M程度のSe−TOP錯体(金属前駆体)溶液を調製した。攪拌しながら300℃の混合物にSe−TOP錯体溶液1mLを速やかに注入し、約4分間反応させた。その後、n−オクタンチオール(n−octane thiol)をTOAに溶かして0.2Mの濃度にした溶液1mLを反応混合物に速やかに注入して約30分間反応させた。反応中では攪拌速度と窒素雰囲気を保持した。
【0065】
反応が終結した後、反応混合物の温度をできる限り速く常温に降温し、非溶媒(non−solvent)であるエタノールを付加して遠心分離した。遠心分離された沈殿物を除いた溶液の上澄み液を捨て、沈殿をトルエンに分散させた。
【0066】
実施例1:多層構造の白色発光ダイオードの製作
UV−LEDチップとして約400nmの最大発光波長(λmax)のチップ(Photonix社製)を使用した。
【0067】
緑色蛍光体であるBaMgAl1017:Eu,Mn(Kasei Optonix社製)と青色蛍光体であるSrAl1425:Eu,Dy(Nemoto&Co.社製)を1:3の質量比で混合した蛍光体とPDMS(polydimethyl siloxane、Dow Corning社製EG6301)とを1:1の質量比で混合し、UV−LED上に塗布して混合蛍光体膜(1次膜)を形成した。混合蛍光体膜は、シリンジタイプのディスペンサを用いて塗布し、その後150℃で1時間加熱して乾燥させた。
【0068】
その後、前記製造例1によって製造されたCdSe赤色発光量子ドット(λmax=589nm)をシリコン系分散剤で1:10000(赤色発光量子ドット:PDMS)の質量比でPDMS(Dow Crning社製EG6301)に分散させ、混合蛍光体膜上に塗布した後、焼成して2次膜を形成した。混合蛍光体層および赤色発光量子ドット層の厚さはそれぞれ1.5mmであった。
【0069】
実験例1:多層構造の白色発光ダイオードの発光特性
前記実施例1によって製造された多層構造の白色発光ダイオードに対し、下記の条件下でスペクトルの経時変化の測定を行い、その結果を図5に示した。
【0070】
*駆動電流:350mA
*冷却:熱電冷却器(Thermo Electro Cooler)で十分に冷却
*測定:1分間隔で38時間測定
図5を参照すると、実施例1の多層構造の白色発光ダイオードの発光は、赤色発光材料を紫外光励起する場合のような効率の減少が見られず、むしろ時間経過に伴って赤色光の発光強度が増加した後、安定化する現象を示した。すなわち、紫外光による量子ドットの大きさの減少に起因するブルーシフトは観察されなかった。
【0071】
本発明に係る白色発光ダイオードは、図5から分かるように、青色、緑色、赤色のそれぞれの波長帯が明確に観察され、赤色発光量子ドットが青色および緑色蛍光体から発光する可視光によって励起されて赤色光を放出するため、安定して白色光を形成することができる。
【0072】
実験例2:紫外光に対する赤色発光量子ドットの安定性の評価
図6は紫外光に対する赤色発光量子ドットの安定性を評価するために、赤色発光量子ドットをPDMSに混合してUV−LED上に塗布し、400nm付近の近紫外光励起の際の、初期駆動時と100時間駆動後との赤色発光量子ドットの発光強度の変化を測定したグラフである。ここで、CdSe赤色発光量子ドットとPDMSとの混合比は、質量比で約1:10000であった。
【0073】
図6に示すように、100時間駆動後の紫外光領域の強度の変化は全くないが、赤色発光量子ドットの発光が著しく減少し、最大発光波長がブルーシフトすることを確認することができる。
【0074】
すなわち、CdSeコアを有する半導体ナノ粒子の場合、390〜410nmの紫外光励起によって、最大発光波長の変化や発光効率の低下など、安定性の問題を生じることが分かる。
【0075】
実験例3:可視光に対する赤色発光量子ドットの発光および安定性の評価
紫外光よりエネルギーが相対的に低い青色光を用いて赤色発光量子ドットの発光および安定性を評価した。
【0076】
図7は前記評価に用いられた装置を示す写真である。
【0077】
評価条件および評価に用いられた試料の仕様は、次の通りである。
【0078】
*青色発光LED:OSRAM LB W5SG
*駆動電流:500mA
*Emission Imax=462nm
*試料:赤色発光量子ドット(CdSe)トルエン溶液
*赤色発光量子ドット(2種):自作(SAIT−1)、市販品(エヴィデントテクノロジーズ社製Evidots)
前述した条件の下における時間経過による赤色発光量子ドットの発光強度の変化を図8aおよび図8bに示した。
【0079】
図8aは、自作(SAIT−1)の赤色発光量子ドットの時間による発光の変化(71.5時間観察)を示すグラフである。図8aを参照すると、赤色発光量子ドットによる462nm励起光の吸収のわずかな減少(吸収されていない光の増加)が観察されたが、発光は、初期の光強度の減少以後、約6nmブルーシフトした状態で発光強度を回復した。すなわち、紫外光励起の場合のような大きな発光強度の減少は見られなかった。
【0080】
図8bは、市販品(Evidots)の赤色発光量子ドットの時間による発光の変化(86時間観察)を示すグラフである。図8bを参照すると、赤色発光量子ドットによる462nm励起光の吸収のわずかな減少(吸収されていない光の増加)が観察されたが、発光は、初期の光強度の減少以後、約3nmブルーシフトした状態で発光強度を回復した。すなわち、紫外光励起の場合のような大きな発光強度の減少は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来の蛍光体を用いた白色発光ダイオードの概略断面図である。
【図2a】従来の量子ドットを用いた白色発光ダイオードの概略図である。
【図2b】従来の量子ドットを用いた白色発光ダイオードの概略図である。
【図3】本発明の白色発光ダイオードの概略断面図である。
【図4】本発明の白色発光ダイオードの製造過程を示す図である。
【図5】本発明の白色発光ダイオードの発光スペクトルの時間経過を示すグラフである。
【図6】紫外光励起による赤色発光量子ドットの発光の時間変化を示すグラフである。
【図7】青色光励起による赤色発光量子ドットの発光および安定性を評価するための実験装置の写真である。
【図8a】青色光励起による赤色発光量子ドットの発光の時間変化を示すグラフである。
【図8b】青色光励起による赤色発光量子ドットの発光の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0082】
1 LED、
2 蛍光体、
3 第1光源、
4 ホストマトリックス、
5 量子ドット、
10 UV−LED、
20 混合蛍光体層、
30 赤色発光量子ドット層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外発光ダイオードと、
前記紫外発光ダイオードの上面に形成された、緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層と、
前記混合蛍光体層の上面に形成された、赤色発光量子ドットを含む赤色発光量子ドット層と、
を含むことを特徴とする、白色発光ダイオード。
【請求項2】
前記緑色蛍光体は、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、(Zn,A)SiO:Mn(Aはアルカリ土類金属である)、MgAl:Mn(xは1〜10の整数であり、yは1〜30の整数である)、LaMgAl:Tb(xは1〜14の整数であり、yは8〜47の整数である)、ReBO:Tb(ReはSc、Y、La、Ce、およびGdよりなる群から選択される1以上の希土類元素である)、および(Y,Gd)BO:Tbよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の白色発光ダイオード。
【請求項3】
前記青色蛍光体は、Sr(POCl:Eu2+、ZnS:Ag,Cl、CaMgSi:Eu、CaWO:Pb、YSiO:Eu、およびSrAl1425:Eu,Dyよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の白色発光ダイオード。
【請求項4】
前記青色蛍光体と前記緑色蛍光体との質量比は2:1〜4:1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色発光ダイオード。
【請求項5】
前記赤色発光量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeよりなる群から選択される少なくとも1種のII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsよりなる群から選択される少なくとも1種のIII−V族化合物半導体ナノ結晶、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白色発光ダイオード。
【請求項6】
前記赤色発光量子ドット層は、3mm以下の厚さであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の白色発光ダイオード。
【請求項7】
紫外発光ダイオードの上面に緑色蛍光体と青色蛍光体とを含む混合蛍光体層を形成する段階と、
前記混合蛍光体層の上面に赤色発光量子ドット層を形成する段階と、
を含むことを特徴とする、白色発光ダイオードの製造方法。
【請求項8】
前記混合蛍光体層は、有機バインダをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合蛍光体層を形成する方法は、ドロップキャスティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法、またはスクリーン印刷法であることを特徴とする、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記混合蛍光体層を形成する段階は、前記緑色蛍光体および前記青色蛍光体を含む混合物を前記紫外発光ダイオードの上面にコートした後、乾燥させることを含み、前記混合物の乾燥温度は100〜150℃であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記青色蛍光体および緑色蛍光体の合計の質量と有機バインダの質量との比は1:1〜1:3であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記赤色発光量子ドット層は、赤色発光量子ドットと有機バインダとを含むことを特徴とする、請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記赤色発光量子ドットと前記有機バインダとの質量比は1:1000〜1:25000であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2007−281484(P2007−281484A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102125(P2007−102125)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】