説明

白色発光装置及びこれを用いた車両用灯具

【課題】
半導体発光素子とこの半導体発光素子の光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いた白色発光装置であって、白色光を高い発光強度で発光可能であり、且つ良好な温度特性を有する白色発光装置、及びこれを用いた車両用灯具を提供することを目的とする。
【解決手段】
白色発光装置及びこれを用いた車両用灯具であって、前記白色発光装置は、370〜480nmの波長域に発光スペクトルのピークを持つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子の発する光により励起され発光する少なくとも2種以上の蛍光体を備えた白色発光装置において、前記蛍光体として、一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.3<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yはx+y<1.0)で表される第一の蛍光体と、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のYAG系蛍光体である第二の蛍光体とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に用いられる白色発光装置、及びこれを用いた車両用灯具に関する。
詳細には、半導体発光素子とこの半導体発光素子の光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いて、車両用灯具に用いられる白色光源の色度規定の範囲内にある視感度の高い白色光を高い発光強度及び高い演色性で発光可能な白色発光装置、及びこれを用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長寿命且つ消費電力が少ない白色発光装置として、青色光を発光する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子と、これらを励起光源とする蛍光体とを組み合わせ、両者から得られる発光の加色混合による合成スペクトルとして白色光を得るように構成された白色発光装置が注目されており、その用途として、車両用灯具、特に車両用前照灯の白色光源としての利用が期待されている。(特許文献1)
ここで、車両用灯具の白色光源は、色度規定により発光スペクトルが所定の色度座標(cx,cy)の範囲内にあることが要求されており、例えば、JIS:D5500によれば図1の色度図に示す領域Aの範囲内にあることが要求される。
尚、領域Aは下記式によって表される。
<車両用前照灯の白色光源の色度規定(JIS:D5500)>
黄色方向 cx≦0.50
青色方向 cx≧0.31
緑色方向 cy≦0.44 及び cy≦0.15+0.64cx
紫色方向 cy≧0.05+0.75cx 及び cy≧0.382
【0003】
このような色度規定に合致した白色光を高い発光強度で発光可能とした白色発光装置の例として、青色波長域(420〜490nm)に発光ピーク波長を持つInGaN系の半導体発光素子と、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系の黄色蛍光体とを組み合わせて白色発光を実現する白色発光装置が知られている。(特許文献2)
【特許文献1】特許公開2004−095480号公報
【特許文献2】特許第3503139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、青色光を発光する半導体発光素子と黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置が再現可能な色度範囲は、半導体発光素子が発光する青色光の色度座標と蛍光体の発光する黄色光の色度座標とを結んだ直線により近似的に表すことができ、両者の発光強度を調整することで当該直線上における任意の色度座標の光を得ることができる。
図1の色度図に示す直線Lは、このような直線の一例であり、発光ピーク波長が450nmの青色半導体発光素子と色度座標がP(cx=0.43,cy= 0.54)である黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置によって再現可能な色度範囲を示す直線である。
【0005】
ここで、人の目が明るさを感じる視感度は、青色光に比べ黄色光は約20倍高いことから、青色光と黄色光を加色混合した白色光の場合、同じ発光強度であっても黄色光成分が多い白色光のほうが人の目には明るく感じられる。このことは、前記直線L上の各色度座標の光は、同じ発光強度であれば黄色蛍光体側に近い方が人の目に明るく感じられることを示す。また、前記領域A(車両用灯具の白色光源の色度規定)の範囲内において最も視感度が高い色度座標は領域Aの黄色蛍光体側境界線と前記直線Lの交差点Xとなる。
【0006】
従って、前記領域A(車両用灯具の白色光源の色度規定)の範囲内において白色光の視感度の高さを追求すると、交差点Xの座標がより黄色蛍光体側(図1中のX’側)へと近くなるように半導体発光素子の発光色と蛍光体の発光色を選択する必要がある。
具体的には、半導体発光素子の発光ピーク波長を450nm前後とした場合に、前記交差点Xの座標が視感度の高い範囲となるのは、黄色蛍光体のドミナント波長が575nm〜590nmの範囲である。
【0007】
しかし、従来知られた青色光を発光する半導体発光素子とYAG系蛍光体を組み合わせた白色発光装置においては、ドミナント波長が575nm〜590nmの範囲内において高い発光強度が得られるYAG系蛍光体が知られていないため、視感度の高い白色光を高い発光強度で発光可能な白色発光装置の実現が困難であった。
【0008】
尚、前記YAG系の黄色蛍光体においては、ガドリニウムを混合することにより発光スペクトルのドミナント波長が長波長側へシフトすることが知られている。
そこで、発明者らは、ガドリニウムを含有していない一般式YAl12:Ceで表されるYAG系蛍光体(Phosphor Technology社(英)製:QUM58/F−U1、以下Gd非含有蛍光体)と、このYAG系蛍光体にガドリニウムを混入した一般式(Y,Gd)Al12:Ceで表される蛍光体(化成オプトニクス社製:P46−Y3、以下Gd含有蛍光体)について、これらの蛍光体の発光特性を測定したところ、下記の結果が得られた。
【0009】
表1に、450nm励起下における各蛍光体の色度座標(cx, cy)、ピーク波長(nm)、及びドミナント波長(nm)を示す。
【表1】

【0010】
また、図2に、Gd非含有蛍光体の発光スペクトル(実線)、及びGd含有蛍光体の発光スペクトル(点線)を示す。
【0011】
表1及び図2から、Gd含有蛍光体はGd非含有蛍光体に対して、ピーク波長とドミナント波長がいずれも長波長であることが分かる。
【0012】
図1の色度図は、Gd非含有蛍光体の色度座標をPとして、Gd含有蛍光体の色度座標をP´として示したものである。
この図1の色度座標から、色度座標がPからP´へシフトすると、発光ピーク波長が450nmの青色半導体発光素子と組み合わせた場合に再現可能な色度範囲は直線Lから点線L´へ、前記領域Aとの交差点はXからX´へとそれぞれシフトすることが分かる。
このことから、前記領域A内において、Gd含有蛍光体はGd非含有蛍光体よりも視感度の高い白色発光装置を実現可能であることが予想される。
【0013】
しかし、本発明者らの測定結果によれば、前記Gd含有蛍光体は、前記Gd非含有蛍光体蛍光体に比べて、高温下における発光特性が低いことが分かった。
以下、その測定結果を詳述する。
【0014】
図3は、温度条件の変化による蛍光体の発光特性の変化(以下、温度特性)を測定する装置を示す概略図である。
図3に示す測定装置10は、アルミ基板11の上面にサンプルセット用の開口部11aが形成され、アルミ基板内部には前記開口部の直下に位置する熱電対12及び面状ヒーター13が埋設されており、これらの熱電対12及び面状ヒーター13は温度コントローラーに接続されている。
開口部11aの上方には励起光を出射する集光レンズ14と、蛍光体の発光を受光する受光用石英ファイバー17が設置されている。
集光レンズ14には、励起光源としてのキセノンランプが石英ファイバー15及び分光器16aを介して接続されている。
受光用石英ファイバー17には、計測器としてのフォトマルが分光器16bを介して接続されている。
【0015】
上記のように構成された測定装置10において、各蛍光体の温度特性を下記の通り測定した。
まず、サンプルとなる各蛍光体18を開口部11aに充填し、充填表面をスキージ等で平滑面とした。
次に、温度コントローラーにより面状ヒーター13の出力を調整し、その出力に応じて変化するアルミ基板11の温度を熱電対12を介して温度コントローラーにフィードバックし、アルミ基板の温度を所定の温度で維持した。
このアルミ基板の温度を蛍光体18の温度と見なし、アルミ基板の温度が各温度条件に達してから10分経過した後に、キセノンランプ(ウシオ電機製:UXL−150D−O)の光を分光器16a(堀場製作所製:H−20UV)を介して450nmに分光した光を集光レンズ14より励起光として蛍光体18に照射し、発光した蛍光体の光を受光用石英ファイバー17及び分光器16b(堀場製作所:H−20VIS)を介してフォトマル(浜松ホトニクス製:R955−07)で測定した。
【0016】
図4に、450nm励起下における前記Gd含有蛍光体及び前記Gd非含有蛍光体の温度特性を示す。
尚、図4におけるグラフの縦軸は、それぞれの蛍光体について、各温度条件下における積分発光強度を、30℃条件下における積分発光強度を100%とする比率として示したものである。
【0017】
この図4から、前記Gd含有蛍光体及び前記Gd非含有蛍光体は、いずれも温度条件が高温になるに従って積分発光強度が低下するが、Gd含有蛍光体はGd非含有蛍光体に比べてその維持率が低く、200℃条件下においては、Gd非含有蛍光体が80%程度の維持率であるのに対しGd含有蛍光体は50%程度の維持率であり、約1.6倍以上の発光強度の差が生じていることが分かる。
【0018】
以上より、Gd含有蛍光体はガドリニウムの影響により発光スペクトルのドミナント波長が長波長側へシフトするが、高温下における発光特性は低下することが分かった。
そのため、Gd含有蛍光体は大電流を必要とするため発熱量が大きい高出力の白色発光装置での利用が不向きであり、Gd含有蛍光体を利用した高出力の白色発光装置の実現は困難であった。
【0019】
本発明は、上記のような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体発光素子とこの半導体発光素子の光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いた白色発光装置であって、車両用灯具に用いられる白色光源の色度規定の範囲内にある白色光を高い発光強度で発光可能であり、且つ高温下においても発光特性が低下しない良好な温度特性を有する白色発光装置、及びこれを用いた車両用灯具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、一般式がSr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.25<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yは0.3<x+y<1.0の範囲である)で表される蛍光体は、370〜480nmの波長域で効率良く励起され黄色成分を多く含む可視光を高い発光強度で発光すること、及び高温下においても発光特性が低下しない良好な温度特性を有することを新たに見出し、この蛍光体を用いて白色発光装置を構成することで本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち本発明の請求項1に係る白色発光装置は、車両用灯具に用いられる白色発光装置であって、370〜480nmの波長域に発光スペクトルのピークを持つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子の発する光により励起され可視光を発光する少なくとも2種以上の蛍光体を備えた白色発光装置において、前記蛍光体として、一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.25<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yは0.3<x+y<1.0の範囲である)で表される第一の蛍光体と、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体である第二の蛍光体とを備えることを特徴とする。
【0022】
ここで、前記第一の蛍光体は、前記一般式で表される蛍光体であればその具体的な化学組成は特に限定されるものではないが、発光装置の色度の観点から、前記一般式のxが0.425≦x≦0.750、yが0.150≦y≦0.200、x+yが0.575≦x+y≦0.950の範囲にある第一の蛍光体を用いることが好ましい。
【0023】
前記第二の蛍光体は、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のYAG系蛍光体であればその具体的な種類は特に限定されるものではないが、ガドリニウムを含有しないYAG系蛍光体であれば、高温化における温度特性の低下が少なく、その優れた発光特性を十分に利用した白色発光装置を得ることができる。
【0024】
前記第一の蛍光体及び第二の蛍光体について、その発光スペクトルのドミナント波長は特に限定されるものではないが、視感度が高く、色温度3000K〜4000Kの暖色系の白色光を発光する白色発光装置を得るためには、前記第一の蛍光体の発光スペクトルのドミナント波長が570〜590nmの波長域にあり、前記第二の蛍光体の発光スペクトルのドミナント波長が565〜573nmの波長域にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白色発光装置。
【0025】
また、同様の理由により、前記第一の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が565〜610nmの波長域にあり、前記第二の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が540〜560nmの波長域にあることがより好ましい。
【0026】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の合成スペクトルのピーク波長及び半減値は特に限定されるものではないが、白色発光装置の演色性の観点から、ピーク波長が570〜585nmの波長域にあり、半値幅が80nm以上であることが好ましい。
【0027】
前記蛍光体の製造方法は特に限定されるものではないが、前記蛍光体の製造方法として、SrCO、BaCO、SiO及びEuの混合物を還元雰囲気中で1次焼成して作製したユーロピウム付活のオルソ珪酸塩を前駆体とし、この前駆体とSi及びNHClの混合物を還元雰囲気中で2次焼成することで、黄〜橙色の波長域に良好な発光強度を持つ蛍光体が得られる。
【0028】
前記半導体発光素子は、370〜480nmの波長域に発光スペクトルのピークを持つものであれば特に限定されるものではないが、前記蛍光体の励起波長域の観点から、発光スペクトルのピークが430nm〜470nmの波長域にあることが好ましく、好適な例として、450nm付近の波長域の発光特性が良好であるInGaN系LEDを挙げることができる。
【0029】
本発明の請求項9に係る車両用灯具は、上記の白色発光装置を光源として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記のように発光装置を構成することにより、車両用灯具に用いられる白色光源の色度規定の範囲内にある白色光を高い発光強度で発光可能であり、且つ高温下においても発光特性が低下しない良好な温度特性を有する白色発光装置、及びこれを用いた車両用灯具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明するが、本発明は以下の例示などによって何ら制限されるものではない。
【0032】
図5は、本発明の白色発光装置の実施形態を示す概略断面図である。
図5に示す白色発光装置20は、基板21上に一対の電極22a(陽極)及び22b(陰極)が形成されている。電極22a上には半導体発光素子23がマウント部材24により固定されている。半導体発光素子23と電極22aは前記マウント部材24により通電されており、半導体発光素子23と電極22bはワイヤー25により通電されている。半導体発光素子の上23には蛍光層26が形成されている。
【0033】
基板21は、導電性を有しないが熱伝導性は高い材料によって形成されることが好ましく、例えば、セラミック基板(窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ムライト基板、ガラスセラミック基板)やガラスエポキシ基板等を用いることができる。
【0034】
電極22a及び22bは、金や銅等の金属材料によって形成された導電層である。
【0035】
半導体発光素子23は、本発明の白色発光装置に用いられる発光素子の一例であり、例えば、紫外線又は短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。具体例として、InGaN系の化合物半導体を挙げることができる。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長域が変化する。Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ない場合は短波長となる傾向を示す。
【0036】
マウント部材24は、例えば銀ペースト等の導電性接着材または金錫共晶はんだ等であり、半導体発光素子23の下面を電極22aに固定し、半導体発光素子23の下面側電極と基板21上の電極22aを電気的に接続する。
【0037】
ワイヤー25は、金ワイヤー等の導電部材であり、例えば超音波熱圧着等により半導体発光素子23の上面側電極及び電極22bに接合され、両者を電気的に接続する。
【0038】
蛍光層26には、後述する蛍光体がバインダー部材によって半導体発光素子23の上面を覆う膜状に封止されている。このような蛍光層26は、例えば、液状又はゲル状のバインダー部材に蛍光体を混入した蛍光体ペーストを作製した後、当該蛍光体ペーストを半導体発光素子23の上面に塗布し、その後に塗布した蛍光体ペーストのバインダー部材を硬化することにより形成することができる。
バインダー部材としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を用いることができる。
【0039】
本発明の白色発光装置に用いられる第一の蛍光体は、一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.25<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yは0.3<x+y<1.0の範囲である)で表される蛍光体である。
この第一の蛍光体は、例えば、SrCO、BaCO、SiO、Euの混合粉末を還元雰囲気中で焼成し、ユーロピウム付活のオルソ珪酸塩を前駆体として作製する。この前駆体を粉砕し、SiとNHClを加え、還元雰囲気中で焼成することで得ることができる。
【0040】
本発明の白色発光装置に用いられる第ニの蛍光体は、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体であり、例えば、一般式(Y1−x−y,Gd)Al12:Ce(但し、xは0≦x<0.9、yは0<y<0.1の範囲である)で表される蛍光体等である。
この第二の蛍光体は、例えば、Al、Y、Gd、CeOの混合粉末を大気雰囲気中で焼成することで得ることができる。
【0041】
蛍光層26には、上記第一の蛍光体及び第二の蛍光体に加え、これらとは異なる発光特性を有する1種又は複数種類の蛍光体を混入することができる。これらの蛍光体の配合量を変化させることにより白色発光装置から得られる白色光の色度を調整することができる。
【0042】
また、蛍光層26には、種々の物性を有する蛍光体以外の物質を混入することもできる。例えば、金属酸化物、フッ素化合物、硫化物等のバインダー部材よりも屈折率の高い物質を蛍光層26に混入することにより、蛍光層26の屈折率を高めることができる。これにより、半導体発光素子23から発生する光が蛍光層26入射する際に生ずる全反射を低減させ、蛍光層26への励起光の取り込み効率を向上させるという効果が得られる。更に、混入する物質の粒子径をナノサイズにすることで、蛍光層26の透明度を低下させることなく屈折率を高めることができる。
また、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の平均粒径0.3〜2μm程度の白色粉末を光散乱剤として蛍光層26に混入することもできる。これにより、発光面の輝度、色度むらを防止することができる。
【0043】
以上のように構成された白色発光装置において、電極22a、22bに対し駆動電流を印加すると、半導体発光素子23が通電され、半導体発光素子23は蛍光層26へ向けて青色光を含む固有の波長域の光を照射する。この光の一部は蛍光層26内の蛍光体の励起に用いられ、残りの光は蛍光層26を透過してそのまま外部へと照射される。蛍光体は半導体発光素子23からの光により励起され固有の波長域の光を照射する。蛍光層26を透過した半導体発光素子23からの光と蛍光体が発する光を加色混合することにより白色光を得ることができる。
【実施例】
【0044】
以上のように構成された発光装置について、以下、実施例を用いて更に具体的に説明するが、下記の発光装置の原料、製造方法、蛍光体の化学組成等の記載は本発明の発光装置の実施形態を何ら制限するものではない。
【0045】
まず、本実施例の発光装置において用いた蛍光体について詳述する。
【0046】
<第一の蛍光体1>
Sr0.05Ba0.75Si:Eu2+0.2で表される蛍光体。
本蛍光体の製造は、まず、SrCOを0.114g、BaCOを2.277g、Euを0.541g、SiOを0.462gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1100℃の電気炉で3時間焼成し、前駆体Sr0.1Ba1.5SiO:Eu2+0.4を得た。
次に、上記前駆体を2.451g、Siを0.935g、NHClをフラックスとして0.034gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1200〜1400℃で6時間焼成し、第一の蛍光体1を得た。
【0047】
<第一の蛍光体2>
Sr0.425Ba0.425Si:Eu2+0.15で表される蛍光体。
本蛍光体の製造は、まず、SrCOを1.321g、BaCOを1.766g、Euを0.556g、SiOを0.632gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1100℃の電気炉で3時間焼成し、前駆体Sr0.85Ba0.85SiO:Eu2+0.3を得た。
次に、上記前駆体を3.289g、Siを1.403g、NHClをフラックスとして0.047gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1200〜1400℃で6時間焼成し、第一の蛍光体2を得た。
【0048】
<第一の蛍光体3>
Sr0.225Ba0.675Si:Eu2+0.1で表される蛍光体。
本蛍光体の製造は、まず、SrCOを0.511g、BaCOを2.049g、Euを0.271g、SiOを0.462gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1100℃の電気炉で3時間焼成し、前駆体Sr0.45Ba1.35SiO:Eu2+0.20を得た。
次に、上記前駆体を2.315g、Siを0.935g、NHClをフラックスとして0.03gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1200〜1400℃で6時間焼成し、第一の蛍光体3を得た。
【0049】
<参考用蛍光体1>
Sr0.93Si:Eu2+0.07表される蛍光体。
本蛍光体の製造は、まず、SrCOを3.051g、Euを0.274g、SiOを0.668gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1100℃の電気炉で3時間焼成し、前駆体Sr1.86SiO:Eu2+0.14を得た。
次に、上記前駆体を2.763g、Siを1.403g、NHClをフラックスとして0.04gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1200〜1400℃で6時間焼成し、参考用蛍光体1を得た。
【0050】
<参考用蛍光体2>
Sr0.67Ba0.25Si:Eu2+0.08で表される蛍光体。
本蛍光体の製造は、まず、SrCOを0.152g、BaCOを0.759g、Euを0.217g、SiOを0.462gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1100℃の電気炉で3時間焼成し、前駆体Sr1.34Ba0.5SiO:Eu2+0.16を得た。
次に、上記前駆体を2.017g、Siを0.935g、NHClをフラックスとして0.03gそれぞれ秤量し、各原料をアルミナ乳鉢に入れ約20分混合粉砕し、この混合物をアルミナ坩堝に入れ蓋をし、還元雰囲気H/N(5/95)、1200〜1400℃で6時間焼成し、参考用蛍光体2を得た。
【0051】
<第二の蛍光体1>
第二の蛍光体1として、YAl12:Ceで表される蛍光体(Phosphor Technology社(英)製:QUM58/F−U1)を用いた。
この蛍光体は、ガドリニウムを含有していないYAG系蛍光体の一例である。
【0052】
<第二の蛍光体2>
第二の蛍光体2として、(Y,Gd)Al12:Ceで表される蛍光体(化成オプトニクス社製:P46−Y3)を用いた。
この蛍光体は、ガドリニウムを含有しているYAG系蛍光体の一例である。
【0053】
<混合蛍光体1>
前記第1の蛍光体1及び前記第二の蛍光体1を、これらの重量比が第1の蛍光体1:第二の蛍光体1=1:2.5となるように混合した混合蛍光体1を作製した。
【0054】
<蛍光体の発光特性の評価結果>
以下、第一の蛍光体1〜5、第二の蛍光体1〜2、及び混合蛍光体1について測定した450nm励起下における各種の発光特性を詳述する。
【0055】
図6に第一の蛍光体1の励起スペクトルを示す。
この図6から、第一の蛍光体1は、励起スペクトルのピークが400〜470nmにブロードに存在することが分かる。
このことから、第一の蛍光体1は、370〜480nmの波長域に発光スペクトルのピークを持つ半導体発光素子の光により効率良く励起され、発光可能であることが分かる。
【0056】
表1に、450nm励起下における各蛍光体の積分発光強度比、色度座標(cx,cy)、及びドミナント波長(nm)を示す。
尚、積分発光強度比は、第二の蛍光体2の積分発光強度を100としたときの相対値として示す。
【表2】

【0057】
表2から、第一の蛍光体1〜3は、いずれも第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)より強い積分発光強度を示しており、色度座標がcx=0.47〜0.52、cy=0.47〜0.51の範囲内にあることが分かる。
また、第一の蛍光体1〜3、及び参考用蛍光体1〜2は、いずれも一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.25<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yは0.3<x+y<1.0の範囲である)で表されるで示される蛍光体であるが、いずれも第二の蛍光体1(Gd非含有蛍光体)より発光スペクトルのドミナント波長が長波長となることが分かる。
【0058】
図7に、450nm励起下における第一の蛍光体1の発光スペクトル(点線)、第一の蛍光体2の発光スペクトル(実線)、第一の蛍光体3の発光スペクトル(一点鎖線)、及び第二の蛍光体1(Gd非含有蛍光体)の発光スペクトル(二点鎖線)を示す。
尚、図7におけるグラフの縦軸は各蛍光体の相対的な発光強度を示すものである。
【0059】
この図7から、各蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は、第一の蛍光体1が585〜595nm、第一の蛍光体2が565〜580nm、第一の蛍光体3が565〜580nm、第二の蛍光体1(Gd非含有蛍光体)が540〜550nmの波長域にあり、第一の蛍光体1〜3はいずれも第二の蛍光体1より発光スペクトルのピーク波長が長波長側にあることが分かる。
【0060】
また、図7から、第一の蛍光体1〜3の発光スペクトルは、波形においては目立った違いが無く、いずれも半値幅は80〜110であることが分かる。
【0061】
図8に、450nm励起下における第一の蛍光体1の発光スペクトル(点線)、第二の蛍光体1の発光スペクトル(一点鎖線)、及び混合蛍光体1の発光スペクトル(実線)を示す。
尚、図8におけるグラフの縦軸は各蛍光体の相対的な発光強度を示すものである。
【0062】
この図8から、混合蛍光体1は、発光スペクトルが第一の蛍光体1と第二の蛍光体1の中間に位置し、ピーク波長は第一の蛍光体1よりも短波長側で第二の蛍光体1よりも長波長側にあることが分かる。
また、図8より、混合蛍光体1の発光スペクトルは第一の蛍光体1及び第二の蛍光体1よりもブロードな波形であることが分かる。
また、表2より、混合蛍光体1の発光色度は第二の蛍光体2より長波長にあることが判る。
【0063】
図9の色度図に、第一の蛍光体1〜3の色度座標Y1〜Y3と、及び参考用蛍光体1〜2の色度座標Y4〜Y5を示す。
この図9の色度図から、Y1〜Y5は仮想の直線である点線D上にほぼ並んで位置していることがわかる。
このことから、一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+で示される蛍光体の色度座標は、前記点線D上において前記一般式のx及びyの値に応じたいずれかの地点に位置し、前記一般式のxの値が0.425≦x≦0.75であり、x+yが0.575≦x+y≦0.95の範囲内にある蛍光体の色度座標はY3よりもY1側に位置し、前記一般式のxの値が0≦x<0.425でx+yが0.07≦x+y<0.575の範囲内にある蛍光体の色度座標はY2よりもY5側に位置することが予想される。
【0064】
図10の色度図に、第一の蛍光体1の色度座標Y1、第二の蛍光体1〜2の色度座標Y6〜7、及び混合蛍光体の色度座標Y8を示す。
【0065】
この図10の色度図及び表1から、混合蛍光体1の色度座標Y8は、混合されている第一の蛍光体1の影響により第二の蛍光体1単独の色度座標Y6よりも長波長側へシフトしており、混合蛍光体1は第二の蛍光体1単独よりも長波のドミナント波長を有している。
このことから、第二の蛍光体1よりも長波のドミナント波長を示している第一の蛍光体1〜3は、いずれも第二の蛍光体1と混合することにより、第二の蛍光体1単独よりも長波のドミナント波長を有する合成スペクトルを得られることが予想される。
【0066】
<加色混合による白色光化の検討>
前述の通り、発光スペクトルのピーク波長が450nmである半導体発光素子と各蛍光体の加色混合によって再現可能な色度範囲は、図9及び図10の色度図における当該半導体発光素子の色度座標ポイントBと各蛍光体の色度座標ポイントY1〜Y8とを結んだ直線L1〜L8により近似的に表すことができる。
この図9及び図10の色度図より、直線L4〜5(参考用蛍光体1〜2)は車両用前照灯の白色光源の色度規定(JISD5500)の範囲を示す領域Aの範囲を通過しないため、これらの参考用蛍光体1〜2を単独で青色発光の半導体発光素子と組み合わせた場合には、前記色度規定を満たす白色光の発光は不可能であることが予想される。
【0067】
一方、上記以外の直線L1〜3(第一の蛍光体1〜3)、L6〜7(第二の蛍光体1〜2)及びL8(混合蛍光体)は、いずれも領域Aの範囲を通過するため、これらの蛍光体と青色発光の半導体発光素子とを組み合わせることにより前記色度規定を満たす白色光の発光が可能であることが予想される。
【0068】
これらの蛍光体について、領域Aの黄色蛍光体側境界線との交差点であるポイントX1〜3及びポイントX6〜8を比較すると、第二の蛍光体1(Gd非含有蛍光体)は、そのポイントX6が他の蛍光体のポイントよりも黄色蛍光体から離れた位置にあることから、これを用いた白色発光装置は他の蛍光体よりも得られる白色光の視感度が低いことが予想される。
第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)は、そのポイントX7が第二の蛍光体1のポイントX
6よりも黄色蛍光体側に位置していることから、第二の蛍光体1よりも視感度の高い白色光が得られる可能性があるが、上述の通り温度特性が低いという問題がある。
【0069】
これらの蛍光体に対し、第一の蛍光体1と第二の蛍光体1を混合した混合蛍光体1は、そのポイントX8がX6(第二の蛍光体1)やX7(第二の蛍光体2)よりも黄色蛍光体側に位置しており、これを用いた白色発光装置は第二の蛍光体1及び2よりも視感度が高い白色光を得られることが予想される。
更に、後述するように、第1の蛍光体は優れた温度特性を備えていることから、混合蛍光体1は、第二の蛍光体1(Gd非含有蛍光体)単独では困難であった視感度の高い白色光を得ることができ、且つ第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)が問題とする温度特性についても優れた白色発光装置を得ることができると予想される。
【0070】
図11及び図12は、上記した図3に示す測定装置10を用いて測定した、450nm励起下における各蛍光体の温度特性を示すグラフである。
尚、図11及び図12におけるグラフの縦軸は、それぞれの蛍光体について、各温度条件下における積分発光強度を、30℃条件下における積分発光強度を100%とする比率として示したものである。
【0071】
図11は第一の蛍光体1〜3と第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)との温度特性を比較したグラフである。このグラフから、第一の蛍光体1〜3は第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)に比べて温度条件の上昇に伴う積分発光強度の低下率が低く、優れた温度特性を有することが分かる。特に、200℃条件下においては、第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)が50%程度まで低下しているのに対し、第一の蛍光体1〜3はいずれも75%以上を維持していることが分かる。
【0072】
また、図12は混合蛍光体1と第二の蛍光体2(Gd含有蛍光体)との温度特性を比較したグラフである。このグラフから、混合蛍光体1は200℃の条件下においても80%以上の維持率を確保しており、第二の蛍光体2よりも優れた温度特性を有することが分かる。
【0073】
次に、実施例の発光装置の構成について詳述する。
尚、下記発光装置の構成は、用いた蛍光体の種類を除き、実施例及び比較例について共通の構成である。
【0074】
<発光装置の構成>
本実施例の発光装置は、上記の実施形態において下記の具体的な構成を用いたものである。
まず、基板21として窒化アルミニウム基板を用い、その表面に金を用いて電極22a(陽極)及び電極22b(陰極)を形成した。
また、半導体発光素子23として、455nmに発光ピークを持つ1mm四方のLED(Cree社製:C460−EZ1000)を用い、前記電極22a(陽極)上にディスペンサーを用いて滴下した銀ペースト(エイブルスティック社製:84−1LMISR4)の上に当該LEDの下面を接着させ、当該銀ペーストを175℃環境下で1時間硬化させた。
また、ワイヤー25としてΦ45μmの金ワイヤーを用い、この金ワイヤーを超音波熱圧着にてLEDの上面側電極及び電極22b(陰極)に接合した。
また、バインダー部材としてシリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製:JCR6126)を用い、これに各種蛍光体を混入した30vol%蛍光体ペーストを作製し、当該蛍光体ペーストを半導体発光素子23の上面に塗布した。塗布量は所望の色度が得られるように膜厚を調整しながら塗布した。
塗布した蛍光体ペーストを80℃環境下で40分、その後に150℃環境下で60分のステップ硬化にて固定化することで蛍光層26を形成した。
【0075】
以上の蛍光体及び発光装置の構成に基づいて下記実施例及び比較例を作製した。
<実施例>
本実施例は、前記混合蛍光体1を用いて蛍光体ペーストを作製し、当該蛍光体ペーストを用いて塗布量を図10の色度図における領域Aの範囲内に入るように調整した発光装置を作製した。
<比較例>
本比較例は、前記第二の蛍光体2を用いて蛍光体ペーストを作製し、当該蛍光体ペーストを用いて塗布量を図10の色度図における領域Aの範囲内に入るように調整した発光装置を作製した。
【0076】
<実施例の評価>
以下、実施例及び比較例について行った各種発光特性の測定結果を示す。
まず、各発光装置に積分球内で電流100mAを10m秒間投入し発光させ、分光器(Instrument System社製:CAS140B−152)で光束比、色度座標(cx,cy)、及び演色性(Ra)を測定した。その結果を表3に示す。
尚、光束比は、比較例の発光装置に100mA通電したときの光束を1.00としたときの相対値として示す。
【表3】

【0077】
この表3から、実施例は比較例に比べて光束が20%大きく、且つ演色性はほぼ同等の性能を確保していることが分かる。また、実施例の発光色度は黄色寄りの白色であり、良好な視感度が得られることが分かる。
【0078】
次に、各発光装置の温度特性を評価するため、図12に示すように、実施例及び比較例の発光装置20をアルミ製ヒートシンク27上に設置し、この発光装置に100mAの駆動電流を印加して恒温槽内において各雰囲気温度下で20分間放置した後、発光強度を瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製:MCPD−1000)で測定した。その測定結果を以下に示す。
【0079】
表4は、各雰囲気温度下で測定した積分発光強度を、発光装置の全発光波長域(380〜780nm)と、蛍光体の発光波長域(500〜780nm)とに分け、それぞれの発光装置について0℃条件下における積分発光強度を100%とする比率として示したものである。
【表4】

【0080】
この表4から、発光装置の全発光波長域、及び蛍光体の発光波長域のいずれについても、実施例は比較例よりも高い維持率を示しており、実施例は良好な温度特性を有することが分かる。
【0081】
図14に、実施例の発光装置について、100mAの駆動電流における0℃条件下の発光スペクトル(実線)と80℃条件下の発光スペクトル(点線)を示す。
【0082】
図15に、比較例の発光装置について、100mAの駆動電流における0℃条件下の発光スペクトル(実線)と80℃条件下の発光スペクトル(点線)を示す。
【0083】
図14及び図15から、いずれの発光装置も温度上昇により発光強度が低下するが、実施例の発光装置は比較例の発光装置に比べて高い発光強度を維持していることが分かる。
【0084】
以上、本発明の蛍光体を実施例に沿って説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、種々の変更、改良、組み合わせ、利用形態等が考えられることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の白色発光装置は、白色光源を用いた車両用灯具であって機能色が白色系のもの、例えばヘッドランプ、フォグランプ、コーナーリングランプ、ライセンスプレートランプ、バックアップランプ、ルームランプ等に利用することができる。
また、本発明の白色発光装置は、白色光源とカラーフィルター等を組み合わせた車両用灯具であって機能色が白色系以外のもの、例えばテールランプ、ストップランプ、ターンシグナルランプ等に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】Gd非含有蛍光体及びGd含有蛍光体の色度座標、並びにこれらの蛍光体を用いた白色発光装置の再現可能な色度範囲等を示す色度図である。
【図2】Gd非含有蛍光体の発光スペクトル(実線)及びGd含有蛍光体の発光スペクトル(点線)を示す図面である。
【図3】蛍光体の温度特性を測定する装置を示す概略図である。
【図4】Gd含有蛍光体及びGd非含有蛍光体の温度特性を示す図面である。
【図5】本発明の発光装置の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】第一の蛍光体1の励起スペクトルを示す図面である。
【図7】第一の蛍光体1の発光スペクトル(点線)、第一の蛍光体2の発光スペクトル(実線)、第一の蛍光体3の発光スペクトル(一点鎖線)、及び第二の蛍光体1の発光スペクトル(二点鎖線)を示す図面である。
【図8】第一の蛍光体1の発光スペクトル(点線)、第二の蛍光体1の発光スペクトル(一点鎖線)、及び混合蛍光体1の発光スペクトル(実線)を示す図面である。
【図9】各蛍光体の色度座標及びこれらの蛍光体を用いた白色発光装置の再現可能な色度範囲等を示す色度図である。
【図10】各蛍光体の色度座標及びこれらの蛍光体を用いた白色発光装置の再現可能な色度範囲等を示す色度図である。
【図11】各蛍光体の温度特性を示す図面である。
【図12】混合蛍光体1及び第二の蛍光体2の温度特性を示す図面である。
【図13】温度特性を測定する際における発光装置を示す概略断面図である。
【図14】実施例の発光スペクトルを示す図である。
【図15】比較例の発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10:測定装置
11:アルミ基板
11a:開口部
12:熱電対
13:面状ヒーター
14:集光レンズ
15:石英ファイバー
16a、16b:分光器
17:受光用石英ファイバー
18:蛍光体
20:白色発光装置
21:基板
22a:電極(陽極)
22b:電極(陰極)
23:半導体発光素子
24:マウント部材
25:ワイヤー
26:蛍光層
27:ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる白色発光装置であって、
370〜480nmの波長域に発光スペクトルのピークを持つ半導体発光素子と、前記半導体発光素子の発する光により励起され可視光を発光する少なくとも2種以上の蛍光体を備え、
前記蛍光体として、一般式Sr1−x−yBaSi:Eu2+(但し、xは0.25<x<1.0、yは0.03<y<0.3 x+yは0.3<x+y<1.0の範囲である)で表される第一の蛍光体と、510〜600nmの間に発光ピーク波長を持つセリウム付活のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体である第二の蛍光体とを備えることを特徴とする白色発光装置。
【請求項2】
前記一般式のxが0.425≦x≦0.750、yが0.150≦y≦0.200、x+yが0.575≦x+y≦0.950の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の白色発光装置。
【請求項3】
前記第二の蛍光体がガドリニウムを含有しないことを特徴とする請求項2に記載の白色発光装置。
【請求項4】
前記第一の蛍光体の発光スペクトルのドミナント波長が570〜590nmの波長域にあり、前記第二の蛍光体の発光スペクトルのドミナント波長が565〜573nmの波長域にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の白色発光装置。
【請求項5】
前記第一の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が565〜610nmの波長域にあり、前記第二の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が540〜560nmの波長域にあることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の白色発光装置。
【請求項6】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の合成スペクトルのドミナント波長が570〜585nmの波長域にあり、半値幅が80nm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の白色発光装置。
【請求項7】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体は、SrCO、BaCO、SiO及びEuの混合物を還元雰囲気中で1次焼成して作製したユーロピウム付活のオルソ珪酸塩を前駆体とし、この前駆体とSi及びNHClの混合物を還元雰囲気中で2次焼成することで得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の白色発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子のピーク波長が430nm〜470nmの波長域にあるInGaN系LEDであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の白色発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の白色発光装置を光源とした車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−108672(P2011−108672A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35462(P2008−35462)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】