説明

白色硬化性樹脂組成物及びその硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板

【課題】酸化チタンを高含有率で含有しつつ、保存安定性に優れたプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)硬化性樹脂、(B)酸化チタン、及び(C)フタロシアニンを含有するプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物、並びに該白色硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板の絶縁層として好適なプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物、及び当該組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板においては、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、また照明器具の光源など、低電力で発光する発光ダイオード(LED)に直接実装して用いられる用途が増えてきている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
その場合に、プリント配線板に保護膜として被覆形成される絶縁膜には、ソルダーレジスト膜に通常要求される耐溶剤性、硬度、はんだ耐熱性、電気絶縁性等の特性に加え、LEDの発光を有効に利用することができるよう、光の反射率に優れる白色の絶縁性硬化性樹脂組成物が使用されている。そして、白色に着色するために、通常、酸化チタンが使用されている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【0004】
しかしながら、白色に着色するために使用される酸化チタンの添加量は、一般的に用いられる顔料に比較して多く、そのため酸化チタンを含有する白色硬化性樹脂組成物の保存中に酸化チタンの沈降による組成の偏りが起きやすいという問題点があった。
【特許文献1】特開2007−249148号公報(段落0002〜0007)
【特許文献2】特開2007−31514号公報
【特許文献3】特開2007−2096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、酸化チタンを高含有率で含有しつつ、保存安定性に優れたプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、フタロシアニンを含有させることにより、酸化チタンが高含有率で配合されている場合にこれが安定剤として機能し、長期間保存しても酸化チタンの沈降による組成の偏りが抑制され、上記課題が達成し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の第1の側面によれば、(A)酸化チタン、(B)フタロシアニン、及び(C)硬化性樹脂を含有するプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明の一態様において、酸化チタン(A)の配合率は、硬化性樹脂(C)100質量部に対して20〜600質量部であり、フタロシアニン(B)の配合率は、酸化チタン(A)100質量部に対して0.0005〜0.1質量部である。
【0008】
本発明の他の態様において、硬化性樹脂(C)は、(C−1)熱硬化性樹脂、又は(C−2)光硬化性樹脂であり、これらの混合物であってもよい。
【0009】
また、本発明の他の態様において、熱硬化性樹脂(C−1)は、エポキシ化合物、及び/又はオキセタン化合物であり、更に(D−1)硬化剤、及び/又は(D−2)硬化触媒を含有してもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様において、光硬化性樹脂(C−2)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物であり、更に(E)光重合開始剤を含有してもよい。
【0011】
さらに、本発明の第2の側面によれば、上記白色硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
酸化チタンを高含有率で含有しつつ、保存安定性に優れる本発明の白色硬化性樹脂組成物を用いることにより、プリント配線板用絶縁層に一般的に要求される諸特性を満たしつつ、光の反射率に優れる白色のプリント配線板用絶縁層の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の白色硬化性樹脂組成物は、(A)酸化チタン、(B)フタロシアニン、及び(C)硬化性樹脂を含有する。
【0014】
本発明において、白色顔料として用いられる酸化チタン(A)は、ルチル型酸化チタンでもアナターゼ型酸化チタンでもよいが、ルチル型チタンを用いることが好ましい。同じ酸化チタンであるアナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度が高く、白色顔料としてよく使用されるが、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、特にLEDから照射される光により、絶縁性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)が顕著に抑制され、また熱に対しても安定である。このため、LEDが実装されたプリント配線板の絶縁層において白色顔料として用いられた場合に、高反射率を長期にわたり維持することができる。
【0015】
ルチル型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。ルチル型酸化チタンの製造法には、硫酸法と塩素法の2種類あり、本発明では、いずれの製造法により製造されたものも好適に使用することができる。ここで、硫酸法は、イルメナイト鉱石やチタンスラグを原料とし、これを濃硫酸に溶解して鉄分を硫酸鉄として分離し、溶液を加水分解することにより水酸化物の沈殿物を得、これを高温で焼成してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。一方、塩素法は、合成ルチルや天然ルチルを原料とし、これを約1000℃の高温で塩素ガスとカーボンに反応させて四塩化チタンを合成し、これを酸化してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。その中で、塩素法により製造されたルチル型酸化チタンは、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著であり、本発明においてより好適に用いられる。
【0016】
市販されているルチル型酸化チタンとしては、例えば、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン株式会社製)、R−25、R−21、R−32、R−7E、R−5N、R−61N、R−62N、R−42、R−45M、R−44、R−49S、GTR−100、GTR−300、D−918、TCR−29、TCR−52、FTR−700(堺化学工業株式会社製)等を使用することができる。
【0017】
この中で塩素法により製造されたタイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン株式会社製)がより好ましく使用され得る。
【0018】
また、アナターゼ型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。市販されているアナターゼ型酸化チタンとしては、TITON A−110、TITON TCA−123E、TITON A−190、TITON A−197、TITON SA−1、TITON SA−1L(堺化学工業株式会社製)、TA−100、TA−200、TA−300、TA−400、TA−500、TP−2(富士チタン工業株式会社製)、TITANIX JA−1、TITANIX JA−3、TITANIX JA−4、TITANIX JA−5、TITANIX JA−C(テイカ株式会社製)、KA−10、KA−15、KA−20、KA−30(チタン工業株式会社製)、タイペーク A−100、タイペークA−220、タイペークW−10(石原産業株式会社製)等を使用することができる。
【0019】
酸化チタン(A)の配合率は、硬化性樹脂(C)100質量部に対して、好ましくは20〜600質量部、より好ましくは20〜400質量部である。配合率が600質量部を超えると、酸化チタンの分散性が悪化し、分散不良となり好ましくない。一方、20質量部未満であると、隠ぺい力が小さく、高反射率の絶縁膜を得ることが困難となるため好ましくない。
【0020】
次に、(B)フタロシアニンについて説明する。
本発明においてフタロシアニン(B)は、白色顔料として酸化チタン(A)が高含有率で配合されている場合に安定剤として機能する。本発明において使用することができるフタロシアニン(B)としては、4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造をもつ環状化合物であればよく、変性物や、塩素や臭素などでハロゲン化されたものでもよく、銅などの金属錯体でもよい。市販されているフタロシアニンとしては、例えば、LIONOL BLUE 7185−PM、CYANINE BLUE MG−7、COSMOS BLUE PRPL−A、COSMOS BLUE AD−6、LIONOL BLUE RF−42704、LIONOL BLUE 7255−PS、LIONOL BLUE 7265−PS、LIONOL BLUE FG−7330PA、LIONOL BLUE FG−7400G、NO.700−10 FG CY.BLUE、LIONOL BLUE ESP−S、LIONOL BLUE ES、LIONOL GREEN Y−101、 LIONOL GREEN 6Y−503、LIONOL GREEN 6Y−600、No.4447 CYANINE GREEN、LIONOL GREEN 2YS、LIONOL GREEN 6YK、CYANINE BLUE K(東洋インキ製造株式会社製)、シアニングリーン2GO、シアニンブルー5028T(大日精化工業株式会社製)、FASTOGEN Green S、FASTOGEN Blue 5380(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、HELIOGEN BLUE L 6975 F、HELIOGEN BLUE L 7080、HELIOGEN BLUE D 7490、HELIOGEN GREEN L 8690、HELIOGEN GREEN D 9360、HELIOGEN GREEN L 8605、HELIOGEN BLUE K 6902、HELIOGEN BLUE D 7100、HELIOGEN BLUE L 6700 F(BASF社製)、MONASTRAL BLUE FNX、MONASTRAL BLUE FBN、MONASTRAL BLUE FGX、MONASTRAL GREEN GN−C、VYNAMON GREEN 6YFWC(HEUBACH社製)、IRGAZIN BLUE ATC、IRGALITE GREEN GFNP、CROMOPHTAL BLUE 4GN−P、IRGAZIN BLUE X−3367(Ciba Specialty Chemicals社製)等を使用することができる。
【0021】
フタロシアニン(B)の配合率は、酸化チタン(A)100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.1質量部、より好ましくは0.001〜0.05質量部である。配合率が0.1質量部を超えると、フタロシアニンによる着色が見られるので好ましくない。一方、0.0005質量部未満であると、沈降防止効果が劣るため好ましくない。
【0022】
次に、(C)硬化性樹脂について説明する。
本発明において用いられる(C)硬化性樹脂は、(C−1)熱硬化性樹脂、又は(C−2)光硬化性樹脂であり、これらの混合物であってもよい。
【0023】
(C−1)熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、本発明においては、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物が好ましく用いられる。
【0024】
上記エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、中でも2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物などのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。
これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
次に、オキセタン化合物について説明する。
下記一般式(I):
【化1】

【0026】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
により表されるオキセタン環を含有するオキセタン化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。
上記オキセタン化合物は、前記エポキシ化合物と併用または単独で使用することができる。
【0027】
次に、(C−2)光硬化性樹脂について説明する。本発明において使用し得る光硬化性樹脂(C−2)としては、活性エネルギー線照射により硬化して電気絶縁性を示す樹脂であればよく、特に、本発明においては、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。
【0028】
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、及び光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
前記光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0030】
前記光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
これらは、塗膜の特性上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
また、本発明の白色硬化性樹脂組成物において、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物とする場合は、上記光硬化性樹脂(C−2)として上記光硬化性樹脂にカルボキシル基を導入した化合物を用いたり、上記光硬化性樹脂(C−2)に加えてエチレン性不飽和結合を有しないカルボキシル基含有樹脂を用いることができる。
【0032】
本発明の白色硬化性樹脂組成物には、光硬化性樹脂(C−2)を用いる場合は、(E)光重合開始剤を添加することが好ましい。この光重合開始剤(E)としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、ベンジルメチルケタ−ルなどのベンゾイン化合物とそのアルキルエ−テル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタ−ル、ベンジルジメチルケタ−ルなどのケタ−ル類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、さらにトリエタノ−ルアミン、メチルジエタノ−ルアミン等の第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光重合開始助剤等と組み合わせて使用することができる。
【0033】
光重合開始剤(E)の配合率は、通常用いられる量的割合で充分であり、例えば光硬化性樹脂(C−2)100質量部当たり、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部が適当である。
【0034】
また、本発明の白色硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(C−1)を用いる場合は、さらに、(D−1)硬化剤、及び/又は(D−2)硬化触媒を添加し得る。
【0035】
硬化剤(D−1)としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸及びその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、及びポリカルボン酸及びその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
【0036】
これらの硬化剤のうち、多官能フェノール化合物は、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であればよく、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。 このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物とも付加反応する。
【0037】
前記ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、BASF社製のジョンクリル(商品群名)、サートマー社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理化社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0038】
これら硬化剤(D−1)の配合率は、通常用いられる量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂(C−1)100質量部当たり、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部が適当である。
【0039】
次に、硬化触媒(D−2)について説明する。
この硬化触媒は、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物等と、上記硬化剤(D−1)との反応において硬化触媒となり得る化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物であり、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ−A、2E4MZ−A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ−OK、2PZ−OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業社製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(商品名DBU、サンアプロ社製)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素社製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
【0041】
これら硬化触媒の配合率は、通常の量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂(B−1)100質量部当たり、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部が適当である。
【0042】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有し得る。有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明の白色硬化性樹脂組成物は、更に必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができ、また本発明の硬化性樹脂組成物の白色を損なわない範囲において着色剤を配合することができる。
【0044】
本発明の白色熱硬化性樹脂組成物は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。塗布後、例えば140℃〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0045】
次に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
実施例1
表1及び表2に従って各成分を3本ロールミルで混練し、各硬化性樹脂組成物(組成物例1〜24)を得た。表中の数字は、質量部を表す。組成物例1〜24中、例9〜13、21〜24は、フタロシアニンを含有しない。
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
〔沈降性試験〕
・評価方法
硬化性樹脂組成物例1〜24の各々を、容量約1150mlの黒色ポリエチレン製容器(近畿容器製ハイベッセルNo.1100)に深さ6cmになるように入れ、蓋をして密封し、20℃の暗所に90日間保管した。保管後の各組成物について、ビックガードナー社製 ダイノメーターを使用して沈降の様子を以下のように測定した。
【0048】
ロードセルに棒状プローブ(高感度用)を取り付け、リフティングテーブルに蓋をあけた状態の容器に入った組成物を乗せ、1.5mm/分の速度でリフティングテーブルを上昇させ、組成物中にプローブを差し込む形で抵抗値(N)を測定した。
【0049】
測定結果を表3及び表4に示す。
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
例1と例9について、上記測定結果をグラフにしたものを図1に示す。
例1のように、プローブが容器の底に着いて抵抗値が急激に上昇するタイプをA(沈降物なし)、例9のように、容器の底近辺において抵抗値が緩やかに上昇するタイプをB(沈降物あり)として評価した。結果を表5及び表6に示す。
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
上記評価結果より、フタロシアニンを含有する例1〜8、14〜20の白色硬化性樹脂組成物は、保存安定性に優れることがわかった。
【0054】
〔レベリング試験〕
・評価方法
熱硬化性樹脂組成物例1〜13の各々を、沈降性試験後に、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷して150℃で60分間硬化させた。得られた基板の塗膜表面を目視にて観察した。
【0055】
また、光硬化性組成物例14〜24の各々を、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmを中心とする測定波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。得られた基板の塗膜表面を目視にて観察した。
【0056】
○:良好
×:ゆず肌状
××:ピンホールがあり、ゆず肌状
評価結果を表7及び表8に示す。
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
上記評価結果より、フタロシアニンを含有する例1〜8、14〜20の白色硬化性樹脂組成物は、レベリング性に優れることがわかった。
【0059】
実施例2(熱硬化組成物の物性)
フタロシアニンを含有する例1〜8の各熱硬化組成物を、沈降性試験後に、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させて特性試験用基板を作製した。
耐溶剤性試験として特性試験用基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色がないことで耐溶剤性があることを確認した。
【0060】
次に耐熱性試験として特性評価用基板にロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽で10秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれがないことで耐熱性を確認した。
そして、硬度試験として特性評価用基板の表面にて、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押しつけて塗膜が剥がれない鉛筆の最高の硬さが6H以上であったことで、十分な硬度があることを確認した。
【0061】
また、電気絶縁性試験として例1〜8の熱硬化組成物を、IPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させて特性試験用基板を作製した。得られた基板の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定したところ、1013Ω以上であったことで十分な電気絶縁性があることを確認した。
以上の評価結果から、例1〜8の熱硬化組成物はソルダーレジスト等のプリント配線板の絶縁層として好適に使用できることが確認された。
【0062】
実施例3(光硬化組成物の物性)
フタロシアニンを含有する例14〜20の各光硬化組成物を、沈降性試験後に、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmを中心とする測定波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。
【0063】
耐溶剤性試験として特性試験用基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色がないことで耐溶剤性があることを確認した。
次に耐熱性試験として特性評価用基板にロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽で10秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれがないことで耐熱性を確認した。
【0064】
そして、硬度試験として特性評価用基板の表面にて、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押しつけて塗膜が剥がれない鉛筆の最高の硬さが5H以上であったことで、十分な硬度があることを確認した。
また、電気絶縁性試験として例1〜8の熱硬化組成物を、IPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmを中心とする測定波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。得られた基板の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定したところ、1012Ω以上であったことで十分な電気絶縁性があることを確認した。
以上の評価結果から、例14〜20の光硬化組成物はソルダーレジスト等のプリント配線板の絶縁層として好適に使用できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】保存後における白色硬化性樹脂組成物の沈降性の試験結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化チタン、(B)フタロシアニン、及び(C)硬化性樹脂を含有するプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)酸化チタンの配合率が、(C)硬化性樹脂100質量部に対して20〜600質量部であり、(B)フタロシアニンの配合率が、(A)酸化チタン100質量部に対して0.0005〜0.1質量部である、請求項1に記載のプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の白色硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−238771(P2009−238771A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78881(P2008−78881)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】