説明

白色LEDの製造方法およびそれを用いたバックライトの製造方法並びに液晶表示装置の製造方法

【課題】 高輝度を維持し、色再現性に優れ、かつ発光色度のばらつきを低減する白色LEDの製造方法およびそれを用いたバックライトの製造方法並びに液晶表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 紫外線発光または紫色発光ダイオードと、3種類以上の可視光発光蛍光体を、予め結合する工程を具備する白色LEDの製造方法において、その発光スペクトルが440nm以上460nm以下の青色部、515nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にピーク値を有することを特徴とする白色LEDの製造方法。また、各色のピークの半値幅が50nm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトに好適な白色LED(発光ダイオード)の製造方法およびそれを用いたバックライトの製造方法並びに液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)は光を放射する半導体ダイオードであり、電気エネルギーを紫外光または可視光に変換するものである。特に可視光を利用するためにGaP、GaAsP、GaAlAs、GaN、InGaAlPなどの発光材料で形成した発光チップを透明樹脂で封止したLEDとして広く使用されている。また、発光材料をプリント基板や金属リードの上面に固定し、数字や文字を形どった樹脂ケースで封止したディスプレィ型のLEDも多用されている。
また、発光チップの前表面あるいは前部樹脂中に各種の蛍光体粉末を含有させることにより、放射光の色を適正に調整することも可能である。すなわちLEDの発光色は、青色から赤色まで使用用途に応じた可視光領域の発光を再現することが出来る。また、発光ダイオードは半導体素子であるため、長寿命、高信頼性で、光源として用いた場合には、その交換頻度も低減されることから、携帯通信機器、パーソナルコンピュータ周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、オーディオ機器、各種スイッチ、バックライト用光源表示板等の各種表示装置の構成部品として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、最近では上記各種表示装置の利用者の色彩感覚が向上し、各種表示装置においても、微妙な色合いをより高精細に再現できる機能や、LEDの均一な外観が要求要求されるようになってきた。特に白色発光のLEDは携帯電話のバックライトや車載用ランプにおいてその拡大は著しく、将来的には、蛍光灯の代替として大きく伸長していくことが期待されるところから、その白色光の高演色性や均一な外観をもとめ種々の改善が試みられている。
現在、普及し、あるいは試行されている白色発光LEDには青色発光ダイオードと黄色発光蛍光体(YAG)場合によっては更に赤色蛍光体を組み合わせたタイプ(タイプ1と呼称)、紫外線あるいは紫光発光ダイオードと青色、黄色、赤色蛍光体を組み合わせたタイプ(タイプ2と呼称)がある。現時点で、タイプ1はタイプ2より高輝度で最も普及しているが、見る方向によっては黄色っぽく見えたり、白色面に投影したとき黄色や青色のムラが現れたりする。そのためタイプ1は擬似白色と呼ばれることもある。白色光の質を表す平均演色指数においてもタイプ1の白色発光LEDでは70〜75(70以上75以下)の範囲に留まっている。一方、後者(タイプ2)は輝度において前者に劣るものの、発光ならびに投影光のムラが少なく、将来的には照明、あるいはバックライト用途の本命として展開が期待され開発が進められている。
【0004】
この方向での改善としては、例えば三菱電線工業時報(2002年7月第99号:非特許文献1)には紫外LEDとユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体またはユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体、緑色発光蛍光体として銅、アルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体またはユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体、赤色発光蛍光体としてユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体を組合せた白色LEDが報告されている。また特開2000−73052号公報(特許文献1)には紫外LEDとユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体またはユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体、緑色発光蛍光体としてユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体、赤色発光成分としてユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体を組合せた白色LEDが報告されている。これらはいずれもタイプ2型の特徴である高い演色性をそなえているものの、輝度の点では未だ不十分であり更なる改善が必要である。
タイプ2型の白色発光LEDで高演色、高輝度を達成するには白色光のスペクトルにおいて、人間の色感度のピークがある450nm近辺,560nm近辺,620nm近辺の光がバランス良く含まれていること、青色、緑色、赤色発光成分の蛍光体の効率がいずれも良くバランスのとれていることが必要である。また、発光色が異なる複数の蛍光体を組み合わせて使用していること等に起因した、発光色度におけるばらつきが発生することも分かってきた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−73052号公報
【非特許文献1】三菱電線工業時報(2002年7月第99号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイプ2型の白色LEDの実用化が種々試みられるなか照明用途とバックライト用途ではその開発方向に違いのあることが分かってきた。照明用途の白色LEDは輝度と白色光の質を規定する平均演色指数(Ra)が高いことが重要であるのに対し、バックライト用途では輝度が高く、かつ色再現域が広いことが求められる。照明およびバックライトで輝度が高いことは両者で要求される共通の特性であるが、高平均演色指数、広色再現域はそれぞれのデバイスで要求されるもので必ずしも両立するものではない。
一方、発光色が異なる複数の蛍光体を組み合わせて使用していること等に起因して、発光色度にばらつきが発生することがわかり、このような色度のばらつきは白色LEDを製造する過程において、歩留まりを低下させ、白色LEDを使用したバックライトの色再現性能を低下させることから、色度のばらつきを抑制することが強く求められている。
特に近年成長が著しい液晶テレビ用の白色LEDにおいては従来の冷陰極管で問題となっていた水銀使用の環境問題がなく、かつ色再現域を広げられる可能性のあるところから、その技術開発への期待は大きいものがある。
このような状況下本発明者らは、紫外線あるいは紫色発光ダイオードと、可視光発光蛍光体を3種類以上を組み合わせたタイプ(タイプ2)の開発を進めていくなかで、液晶バックライト用白色LEDランプとして望ましい発光スペクトルおよびそれを実現する蛍光体の組合せ、およびその形態を見出し本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためのものであり、紫外線発光または紫色発光ダイオードと、3種類以上の可視光発光蛍光体を具備する白色LEDの製造方法において、その発光スペクトルが440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にピーク値を有し、かつ前記3種類以上の可視光蛍光体を予め結合剤で結合する工程を具備することを特徴とする白色LEDの製造方法である。
【0008】
また、青色部、緑色部および赤色部のピークの半値幅が50nm以下であることが好ましい。
また、青色発光蛍光体として
一般式1:(Sr1-x-yBaxCayEuz10(PO・Cl
(式中x、y、zはx<0.2、y<0.1、0.005<z<0.1)で表されるユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体であることが好ましい。
また、緑色発光蛍光体として
一般式2:(Ba1−x−y−zSrCaEu)(Mg1−uMnu)Al1017
(式中x、y、z、uはx<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6)で表されるユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体であることが好ましい。
また、赤色発光蛍光体として
一般式3:(La1−x−yEu
(式中Mは元素Sb,Snの少なくとも1種、x及びyは0.01<x<0.15,y<0.03)で表わされるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体であることが好ましい。
【0009】
また、紫外線発光または紫色発光ダイオードの発光波長がそのピーク値において370〜410nmの値を有することが好ましい。
また、本発明の白色LEDの製造方法はバックライトの製造方法およびそれを用いた液晶表示装置の製造方法に好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の白色LEDの製造方法は高輝度を具備し、かつ色再現性も優れ、また発光色度のばらつきを低減する。そのため本発明により製造された白色LEDを用いたバックライトの製造方法並びに本発明により製造されたバックライトを用いた液晶表示装置の製造方法によれば、いずれも高輝度を具備し、色再現性が優れ、かつ発光色度のばらつきが低減されたバックライト並びに液晶表示装置が提供できる。
また、従来の冷陰極管(CCFL)のように水銀を使用する必要もないので環境問題が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明の白色LEDの一例を示す断面図を示した。図1aは発光ダイオード、bは樹脂に埋め込まれた蛍光体層を、cは発光ダイオード及び蛍光体の発光を外部へ導く反射層を、dは発光部を支える樹脂枠を示している。LEDランプに印加された電気エネルギーは発光ダイオードにより紫外光あるいは紫色光に変換され、それらの光が発光ダイオード上部の蛍光体層によりより長波長の光に変換され、総計として白色光がLEDランプ外へ放出される仕組みになっている。
紫外線発光ダイオードまたは紫色発光ダイオードはInGaN系、GaN系、AlGaN系のダイオードなど様々なものが適用可能である。特に発光波長のピーク値が360〜420nmの発光ダイオードであると、後述の蛍光体との組合せにより、高輝度かつ色再現性のより優れた白色LEDを為し得ることができる。
【0012】
蛍光体層bに用いる蛍光体としては可視光発光蛍光体を3種以上用い、予め結合剤で結合されていることが重要である。具体的には、その発光スペクトルが440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にそれぞれピーク値を有する蛍光体を用い、結合剤で結合する。つまり、ピーク波長440nm以上460nm以下の青色蛍光体、ピーク波長510nm以上530nm以下の緑色蛍光体、ピーク波長620nm以上640nm以下の赤色蛍光体をそれぞれ用いることにより可視光発光蛍光体が3種となり、これらを結合剤で結合する。また、同じ色の蛍光体を2種以上用いれば、可視光発光蛍光体が3種以上となる。
例えば図1のような白色LEDの場合、発光ダイオードaに印加された電気エネルギーは発光ダイオードにより紫外光(あるいは紫色光)に変換され、それらの光が発光ダイオード上部の蛍光体層によりより長波長の光に変換され、総計として白色光がLED外へ放出される仕組みになっている。
なお、本発明では発光ダイオードaに用いられる紫外線発光ダイオードまたは紫色発光ダイオードは発光ダイオードと表記し、完成した白色発光ダイオードに関しては白色LEDと表記する。
【0013】
図2に、図1のような構成の本発明の白色LEDの発光スペクトルの一例を示した。電流値20mAでピーク値400nm紫外線発光ダイオードを発光させ蛍光体により色度(0.253,0.238)の白色光に変換した時のものである。447nmの青色部、518nmの緑色部、623nmの赤色部にピーク値を有し、さらに各ピークの半値幅がそれぞれ50nm以下であることを特徴としている。
図3には本発明の白色LEDの発光を液晶ディスプレイ(液晶表示装置)で使われる一般的な青色、緑色、赤色のカラーフィルターを通しその発光色をCIE色度図にプロットしたものである。その色度図において青色、緑色、赤色の発光点を結んで得られる三角形の内部の色度の光をその液晶ディスプレイは表現できることを意味している。
三角形の面積が広いほうが多くの色度の光を表現でき、その液晶ディスプレイは色再現域が広い(色再現性が良い)ことになる。図3には従来の冷陰極管を用いた液晶ディスプレイの色再現域も示されているが、明らかに本発明の色再現域の方が広く優れたものであることが分かる。
【0014】
図3には同時に理想的な色再現域を示す国際標準(NTSC)も示した。色再現域の広さはこのNTSCの三角形の面積を100としたときの相対値で示され、本発明の液晶ディスプレイの色再現域は98であるのに対し従来の冷陰極管液晶ディスプレイのそれは65であった。
上記のように青色部、緑色部、赤色部のピーク値の半値幅が50nm以下であることが好ましい。例えば、図4に、本発明の蛍光体を組合せて得られる白色LEDにおいて、青色・緑色・赤色のピーク値の半値幅が50nm以下のもの(製品1)と一部の半値幅が50nmを超えたもの(製品2)を用意し、その発光スペクトルを比較した。また、製品1および製品2を用いた液晶ディスプレイの色再現域を図5に示した。これらの色再現域は対NTSCで製品1が98であり、製品2が87であった。
製品2の色再現域は冷陰極管のそれよりは優れているものの、製品1の色再現域よりは劣っている。その理由は製品2のスペクトルが本発明と同様447nmの青色部、518nmの緑色部、623nmの赤色部にピーク値を有しているものの、青色ピークの半値幅が60nmと広く青色成分の純度が悪いためである。なお、各ピークの半値幅はすべてが50nm以下であることが最も好ましいが、半値幅の最大値は80nm以下であれば実用に値する。特に青色・緑色・赤色のうち1種のみが半値幅80nmで、残り2種が50nm以下であれば色再現域は対NTSCで80以上とすることができる。従って、各ピーク値の半値幅は、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下となる。
上記のように、440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部の各ピーク値を具備し、その半値幅が70nm以下、さらには50nm以下の特性を具備する蛍光体を用いることにより、高輝度を具備し、かつ色再現性の優れた白色LEDを為し得ることができる。
【0015】
次に、蛍光体について説明する。蛍光体の組成については、上記特性を具備するものであれば特に限定されるものではないが、好ましい一例として次のものが挙げられる。
青色発光蛍光体としては
一般式1:(Sr1-x-yBaxCayEuz10(PO・Cl
(式中x、y、zはx<0.2、y<0.1、0.005<z<0.1)で表されるユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体が挙げられる。一般式1においてx値およびy値は0(ゼロ)を含むものとする。
また、緑色発光蛍光体としては
一般式2:(Ba1−x−y−zSrCaEu)(Mg1−uMnu)Al1017
(式中x、y、z、uはx<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6)で表されるユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。なお、一般式2においてx値およびy値は0(ゼロ)を含むものとする。
また、赤色発光蛍光体として一般式3:(La1−x−yEu
(式中Mは元素Sb,Snの少なくとも1種、x及びyは0.01<x<0.15,y<0.03)で表わされるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体が挙げられる。なお、一般式3においてy値は0(ゼロ)を含むものとする。
【0016】
蛍光体の平均粒径は特に限定されるものではないが平均粒径3μm以上が好ましい。平均粒径が3μm以上、つまりは粒径が大きい方が高輝度を得やすい。平均粒径の上限については特に限定は無く、白色LEDの構造に合わせて適宜決めるものとするが、あまり大きすぎると均一に混ざり難いことから上限は平均粒径50μm以下が好ましい。また、各蛍光体の混合比率については目的とする色度になるような比率であれば任意であるが、白色LEDを得るためには青色蛍光体を15〜25wt%、緑色蛍光体を15〜25wt%、赤色蛍光体が残部(青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体の合計が100wt%)が好ましい。
【0017】
これらの可視光発光蛍光体を予め結合剤で結合してから樹脂と混ぜ合わせて混合蛍光体を作製し、出来上がった混合蛍光体を、発光ダイオード上に塗布し、樹脂を固めることにより、白色LEDを形成することができる。予め蛍光体を結合してから用いることで、色度のばらつきを低減することができる。例えば、白色LEDランプを構成する青色、緑色、および赤色発光蛍光体のうち、赤色発光蛍光体が青色および緑色発光蛍光体に比べて比重が大きい場合、これら3色の蛍光体を単に混合しただけでは、樹脂の硬化処理前に赤色発光蛍光体だけが早く沈降してしまう。このような沈降速度の差に起因する蛍光体の分散状態の不均一性が、発光色度のばらつきを生じさせていたものと考えられる。そこで、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を予め一体化した状態で、透明樹脂に分散させることによって、各蛍光体の透明樹脂中での分散状態を均一化させることができる。
上述した青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を予め結合した蛍光体は、例えば以下のようにして得ることができる。まず、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を水に投入して懸濁液とする。この懸濁液を撹拌しながら、無機結合剤として微粉化したアルカリ土類ホウ酸塩等を加え、この状態で一定時間撹拌する。無機結合剤は青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体の合計量に対して0.01〜0.3質量%の割合で添加することが好ましい。この後、撹拌を停止して蛍光体を沈降させ、ろ過、乾燥、さらに300℃以上の温度で数時間ベーキングしたものに篩分け等の処理を施すことによって、複数の蛍光体を結合した蛍光体を得ることができる。また、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体にアクリル樹脂等の有機結合剤を各色発光蛍光体の合計量に対して、例えば0.01〜0.3質量%の割合で添加、混合し、乾燥後篩分け等の処理を施すことによっても得ることができる。
なお、白色LEDに用いる基板や金属枠等の構成は任意である。
以上のような本発明の白色LEDの製造方法は高輝度を維持しつつ色再現性も優れており、発光色度のばらつきを低減することから、携帯電話やモバイル等の携帯通信機器、パーソナルコンピュータ周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、オーディオ機器、各種スイッチ、バックライト用光源表示板等の各種表示装置に用いられる液晶表示装置のバックライトの製造方法に有効であり、それを用いた液晶表示装置の製造方法は高輝度かつ色再現性が優れ、発光色度のばらつきを低減した、高品質な製品が提供できる。特に、色度ばらつきが小さいことから白色LEDランプを複数個用いるバックライトの製造方法に用いたとしても均一な白色を有する面光源を得ることができる。従って、それを用いた液晶表示装置の特性も向上する。また、本発明のバックライトの製造方法は、サイドライト方式、直下型方式どちらでも適用できる。
【実施例】
【0018】
次に実施例について説明する。
本実施例の白色LEDの評価は、横断面が図1のような構造を採用した。発光ダイオードはサイズ300μm四方のチップを配し、60mAの電流値にて発光させ、液晶ディスプレイで一般に使われる青色、緑色、赤色のカラーフィルターを通した。その光を積分球に導き青色、緑色、赤色の発光色を評価し、ディスプレイにしたときの色再現域(色再現性)を評価した。色再現性については前述の通り対NTSCとの面積比で示した。また白色LEDの輝度はフィルターを通さずに評価した。
色再現性評価はInstrument Systems社製CAS 140 COMPACT ARRAY SPECTROMETER、白色LEDの輝度は大塚電子社製MCPD装置を使い行った。
【0019】
<LEDランプの作製方法>
3種類以上の蛍光体は、LEDランプの色度がx=0.250−0.255,y=0.235−0.240の範囲に入るように調合され、予め結合する。この結合された蛍光体をシリコーン樹脂と30質量%、または40質量%の比率で混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーの一部を抜取り、図1のように配置されたLEDに滴下し、100〜150℃の温度で熱処理、シリコーン樹脂を硬化し白色LEDランプを得た。
なお、実施例、比較例においては発光ダイオードの発光波長のピーク値が399nmにある発光ダイオードを使用した。
【0020】
(実施例1)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.99Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.726Eu0.274)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sb0.002Eu0.11522Sを20.1%、19.5%、60.4%の割合で予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。ここで、結合した3色混合蛍光体は以下の工程により得た。まず、各色発光蛍光体を水に投入して懸濁液とし、この懸濁液を撹拌しながらホウ酸バリウム・カルシウム(3(Ba,Ca)O・B)を各色発光蛍光体の合計量に対して0.1重量%の割合で添加した。撹拌を30分間継続した後に停止し、蛍光体を沈降させた。次いで、これをろ過してベーキングした後に200メッシュのナイロン篩にかけて、結合された3色混合蛍光体を得た。
【0021】
(実施例2)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.97Ca0.02Eu10(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.726Eu0.274)(Mg0.50Mn0.50)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.884Sb0.001Eu0.11522Sを18.8%、19.4%、61.8%の割合で予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。ここで、結合した3色混合蛍光体は以下の工程により得た。まず各色発光蛍光体にアクリル樹脂エマルジョンを各色発光蛍光体の合計量に対して固形分で0.1質量%の割合で添加し、これらを混合した。次いで、この混合物を120℃で乾燥させた後、ナイロンメッシュにかけて結合された3色混合蛍光体を得た。
【0022】
(実施例3)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.99Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.25Sr0.475Eu0.275)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sn0.002Eu0.11522Sを18.7%、19.5%、61.8%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0023】
(実施例4)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.75Ba0.23Ca0.01Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.756Eu0.274)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体としてユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sn0.002Eu0.11522Sを18.9%、19.5%、61.6%の割合で実施例1による結合工程により、予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0024】
(実施例5)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.98Eu0.0210(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.756Eu0.274)(Mg0.60Mn0.40)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sb0.002Eu0.11522Sを18.8%、19.4%、61.8%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0025】
(実施例6)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.97Ca0.02Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.35Sr0.375Eu0.275)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.884Sb0.001Eu0.11522Sを18.5%、19.2%、62.3%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0026】
(実施例7)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.99Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.75Eu0.25)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sb0.002Eu0.11522Sを18.8%、19.5%、61.7%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0027】
(実施例8)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.99Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.726Eu0.274)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sb0.002Eu0.11522Sを18.7%、19.6%、61.7%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と30質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0028】
(実施例9)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.97Eu0.0310(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.75Eu0.25)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.883Sn0.002Eu0.11522Sを18.9%、19.5%、61.6%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と40質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0029】
(実施例10)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.99Eu0.0110(PO46・Cl2、緑色蛍光体ユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体(Ba0.726Eu0.274)(Mg0.55Mn0.45)Al1017、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La0.882Sb0.003Eu0.11522Sを18.8%、19.4%、61.8%の割合で実施例1による結合工程により予め結合し、シリコーン樹脂と30質量%の濃度で混合しスラリーを作製した。このスラリーを発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、本実施例の白色LEDを得た。
【0030】
(比較例1)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.59Ba0.39Ca0.01Eu0.0110(PO・Cl、緑色蛍光体銅、アルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体ZnS:Cu,Al、赤色蛍光体としてユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y0.94Eu0.06Sをそれぞれシリコーン樹脂と30質量%の濃度で混合した。次にこれらのスラリーを18,8%、19.4%、61.8%の割合で混ぜた後、発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化、比較例1の白色LEDを得た。なお、比較例1では蛍光体の結合工程は行わなかった。
(比較例2)
青色蛍光体ユーロピウム付活アルカリ土類クロロリン酸塩(Sr0.59Ba0.39Ca0.01Eu0.0110(PO・Cl、緑色発光蛍光体としてユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体緑色蛍光体(Ba0.864Eu0.136)(Mg0.74Mn0.26)Al1017赤色蛍光体としてユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y0.94Eu0.06Sをそれぞれシリコーン樹脂と30質量%の濃度で混合した。次にこれらのスラリーを18.7%、19,5%、61.8%の割合で混ぜた後、発光ダイオード上に塗布し、140℃の熱処理で樹脂を硬化し、比較例2の白色LEDを得た。なお、比較例2では蛍光体の結合工程は行わなかった。
【0031】
表1には、得られた白色LEDおよびそれをバックライトに用いた液晶ディスプレイ(液晶表示装置)に40mAの電流を流し点灯させ、その発光の色再現域および輝度を測定した。さらに従来例(比較例3)として冷陰極管をバックライトに用いた場合の色再現域および輝度を同時に示した。
なお、各白色LEDの発光スペクトルを測定したところ、本実施例に係る白色LEDはいずれも440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にピーク値を具備し、各色のピーク波長の半値幅は50nm以下であった。
それに対し、比較例1のものは緑色部および赤色部の波長ピークが本発明の範囲外であり、比較例2は赤色部の波長ピークのみが本発明の範囲外であった。
【0032】
【表1】

【0033】
表から分かる通り、本実施例に係る白色LEDおよびそれをバックライトに用いた液晶表示装置は、色再現性が90以上、輝度390mcd以上の優れた特性を示すことが分かった。
(実施例11〜14)
次に、発光ダイオードの発光波長を表2のように変えた以外は実施例1と同様の白色LEDを作製し、同様の測定を行った。但し青色、緑色、赤色蛍光体の配合比率は色度がx=0.250−0.255,y=0.235−0.240の範囲に入るよう調整した。
【0034】
【表2】

【0035】
表から分かる通り、発光ダイオードの発光波長は370nm以上410nm以下が好ましいことが分かった。
【0036】
次に、実施例1〜10の白色発光LEDランプの色度ばらつきを測定した。色度は各実施例にかかる白色LEDを各20個用意し、各LEDの真上で色度(CIE色度座標)を測定し、x座標、y座標の最大値と最小値の差(Δx、Δy)を測定した。なお、参考例として結合工程を行わない以外は実施例1と同様のものを用意した。その結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

表3から分かる通り、本実施例にかかる白色LEDは色度ばらつきが小さいことが分かる。このような白色LEDランプは、携帯通信機器、PC周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、各種スイッチ類、バックライト型表示板等の各種表示装置の構成部品、さらには一般照明装置等として有効に利用することができる。
特に、色度ばらつきが小さいことから白色LEDランプを複数個用いるバックライトに用いたとしても均一な白色を有する面光源を得ることができる。従って、それを用いた液晶表示装置の特性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の白色LEDの一例を示す断面図
【図2】本発明の白色LEDの発光スペクトルの一例を示す図
【図3】本発明の白色LEDと現行のCCFLを液晶ディスプレイのバックライトとして用いたときの色再現域の比較を示す図
【図4】本発明の白色LEDにおいて、発光スペクトル(半値幅)を変えた場合の一例を示す図
【図5】図4の白色LEDを液晶ディスプレイのバックライトとして用いたときの色再現域を示す図
【符号の説明】
【0039】
a…発光ダイオード
b…蛍光体層
c…反射層
d…樹脂枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線発光または紫色発光ダイオードと、3種類以上の可視光発光蛍光体を具備する白色LEDの製造方法において、その発光スペクトルが440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にピーク値を有し、かつ前記3種類以上の可視光蛍光体を予め結合剤で結合する工程を具備することを特徴とする白色LEDの製造方法。
【請求項2】
請求項1項記載の白色LEDの製造方法において、青色部、緑色部および赤色部のピークの半値幅が50nm以下であることを特徴とする白色LEDの製造方法。
【請求項3】
請求項1項記載の白色LEDランプの製造方法において、前記可視光発光蛍光体は以下の一般式を満たすことを特徴とする白色LEDの製造方法。
青色発光蛍光体として一般式1:(Sr1-x-yBaxCayEuz10(PO・Cl
(式中x、y、zはx<0.2、y<0.1、0.005<z<0.1)で表されるユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体。
【請求項4】
請求項1項記載の白色LEDランプの製造方法において、前記可視光発光蛍光体は以下の一般式を満たすことを特徴とする白色LEDの製造方法。
緑色発光蛍光体として一般式2:(Ba1−x−y−zSrCaEu)(Mg1−uMnu)Al1017
(式中x、y、z、uはx<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6)で表されるユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体。
【請求項5】
請求項1項記載の白色LEDランプの製造方法において、前記可視光発光蛍光体は以下の一般式を満たすことを特徴とする白色LEDの製造方法。
赤色発光蛍光体として一般式3:(La1−x−yEu
(式中Mは元素Sb,Snの少なくとも1種、x及びyは0.01<x<0.15,y<0.03)で表わされるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体。
【請求項6】
請求項1項記載の白色LEDの製造方法において、前記紫外線発光または紫色発光ダイオードの発光波長がそのピーク値において370〜410nmの値を有することを特徴とする白色LEDの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の白色LEDを用いたことを特徴とするバックライトの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載のバックライトを用いたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−96133(P2007−96133A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285624(P2005−285624)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】