皮膚の状態を評価する方法及びその用途
【課題】低侵襲的であり、且つ客観性の高い評価結果が得られる、皮膚の状態を評価する方法を提供すること。
【解決手段】
被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価する。好ましい一態様では角質から抽出したmRNAを試料として用いる。
【解決手段】
被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価する。好ましい一態様では角質から抽出したmRNAを試料として用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の状態を評価する方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の状態を的確に把握することは、健康的な皮膚を維持するためのスキンケアをする上で重要である。化粧品によるスキンケアを実施するに際しては、例えば目視的な問診などを通じて、化粧品使用者の肌質が評価されてきた。最近では、皮膚の状態または機能をより客観的に評価するために、各種の計測機器を利用して肌質を機器固有のパラーメーターで表記する方法や、肌質に関与するタンパク質の発現レベルあるいは酵素の活性を測定する生化学的・分子生物学的方法なども取り入れられている。また、遺伝学的な検討も行われている。一例として、皮膚に関与する遺伝子の遺伝学的検査をすることによって顧客の皮膚の状態・特徴を評価し、顧客に適した化粧品を提供する方法が提案されている(特許文献1、2)。これらの方法では、皮膚関連遺伝子(又は皮膚関連遺伝子群)に注目し、その情報(DNA配列情報)を基に皮膚の状態等を評価する。確かに皮膚関連遺伝子の遺伝子情報は皮膚の性状を特徴付ける重要な一因となる。しかしながら、DNA配列情報が皮膚機能に貢献又は影響するためには遺伝子の発現が必要であること、及び遺伝子によっては個人の生活習慣などの内的要因や気候などの外的要因のために生涯発現しない可能性も考えられること等を考慮すれば、皮膚関連遺伝子のDNA配列情報だけでは、様々な要因が絡み合った結果として形成される、皮膚の状態を的確に捉えることはできず、特に外的な要因による皮膚の状態変化を理解することは不可能である。
【0003】
ところで、皮膚の上皮組織(即ち、表皮)は数層の細胞層からなる。表皮の中で最外層に位置するのが角質細胞層である。角質細胞は、基底部にある基底細胞が細胞分裂を繰り返し、その一部が基底細胞層を去って上層へ移行する過程で形成される。この過程を角化と呼び、角化を通して細胞は核などの細胞成分を失い主にケラチン繊維の塊へと変化していく。一般に、基底細胞の分裂から角質細胞への分化までに4週間程度を要する。また、役割を終えた角質が角質層の表面から剥がれたものを「体の垢」と呼ぶが、角質細胞が形成されてから剥がれ落ちるまでに約2週間かかる。
【0004】
皮膚の表皮に注目した検討として、表皮の機能解析や、表皮の機能に関与する遺伝子マーカーの同定などの目的で表皮の構成細胞に関する遺伝子発現解析が行われている(例えば特許文献3、非特許文献1)。特許文献3や非特許文献1に開示された方法では、角質層の下に存在する生細胞から抽出したRNAを利用する。従って、その実施に際しては皮膚組織を比較的深層まで採取する必要があり、被験者の苦痛を伴い、しかも傷が残る危険性がある。
【0005】
一方、表皮の最外層を構成する角質に注目した検討も行われている。即ち、皮膚の状態を評価する方法として、皮膚より剥離した角質中のインボルクリンタンパク質の発現を測定することで皮膚のバリア機能を評価する方法(特許文献4)や、デスモソームの分解酵素の活性を測定することにより肌荒れの程度を評価する方法(特許文献5)などが考案されている。このような特定のタンパク質を指標にして皮膚の状態を評価する方法は、皮膚の表現形質からアプローチしたものであるため、皮膚の状態変化の根本的な原因を調べ、その原因に応じた皮膚のトリートメント方法や薬剤などを見つけることには必ずしも有効でない。
【特許文献1】特開2003−260031号公報
【特許文献2】特開2003−271728号公報
【特許文献3】特表2002−523145号公報
【特許文献4】国際公開第WO2002/025272号パンフレット
【特許文献5】特開平8−68791号公報
【非特許文献1】Kirsten Paludan and Kristian Thestrup-Pedersen: Use of the Polymerase Chain Reaction in Quantification of Interleukin 8 mRNA in Minute Epidermal Samples. The Journal of Investigative Dermatology Vol.99, No. 6 December: 830-835, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚の角質層に存在する細胞は脱核していることから、そこでは新生mRNAの合成は行われず、mRNAは存在しないと考えられていた。実際、角質層に存在するmRNAを利用した遺伝子発現解析の報告はない。一方、角質以外の有核細胞組織についてはその遺伝子発現解析が行われている(特許文献3、非特許文献1など)。しかしながら、上記の通り、角質以外の有核細胞組織を利用した遺伝子発現解析には侵襲性の問題や美容上の問題が伴う。また、組織の切除は医師が施術せねばならないことを考慮すれば、角質以外の有核細胞組織を利用した遺伝子発現解析は、スキンケアないし美容の目的で皮膚の状態を評価する方法としては適切といえない。尚、上記の通りいくつかの研究報告はあるものの、遺伝子レベル又は遺伝子発現レベルでのアプローチから皮膚の状態変化の解明を図る研究は十分にはなされていなかった。
本発明は以上の背景に鑑み、低侵襲的であり、且つ客観性の高い評価結果が得られる、皮膚の状態を評価する方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明者らは角質に注目して鋭意検討した。その結果、角質中から十分な量のmRNAを抽出できることが判明した。一方、抽出したmRNAを用いた遺伝子発現解析の結果、皮膚の状態と関連する複数の遺伝子が見出された。このように、角質から抽出されるmRNAを用いた遺伝子発現解析が皮膚の状態を評価する方法として有効であるとの知見が得られるとともに、遺伝子発現解析において注目すべき具体的な遺伝子を同定することにも成功した。本発明は主として当該知見及び成果に基づくものであり、以下に列挙する、皮膚の状態を評価する方法等を提供する。
[1]被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価することを特徴とする、皮膚の状態を評価する方法。
[2]前記遺伝子発現解析が、前記角質から抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析である、[1]に記載の方法。
[3](1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ、
を含む、[2]に記載の方法。
[4]ステップ(3)において、ステップ(2)で算出した発現量を基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する、[3]に記載の方法。
[5]前記特定部位が顔面部である、[3]又は[4]に記載の方法。
[6]前記遺伝子発現解析がマイクロアレイ法又はPCR法によって行われる、[3]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記遺伝子が、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、[3]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記遺伝子が、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、[3]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[9]前記遺伝子が、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFからなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
[10]前記角質が、粘着性のテープを用いて被験対象の皮膚より採取した角質である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記皮膚の状態が、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビからなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関する状態である、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記皮膚の状態が、老化の程度である、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]被験対象に対してトリートメント手段を施す前及び後にそれぞれ、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法を実施し、得られた評価結果を比較することによって該トリートメント手段の有効性を評価することを特徴とする、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の局面は皮膚の状態を評価する方法(以下、「皮膚状態評価法」ともいう)を提供する。本発明の皮膚状態評価法では、被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価する。皮膚の中で最外層に存在する角質を遺伝子発現解析の試料として用いることから、本発明の皮膚状態評価法は低侵襲的であり且つ容易に実施可能なものとなる。
被験対象は典型的にはヒトである。但し、イヌやネコなどのペット動物のようにスキンケアや皮膚のトリートメントの対象となる動物を被験対象としてもよい。つまり、スキンケア等の対象となる限り、角質層をもつヒト又はヒト以外の動物に対して本発明の皮膚状態評価法を適用することが可能である。ヒト以外の動物の具体例として、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等を挙げることができる。
【0009】
皮膚からの角質の採取方法は特に限定されないが、可能な限り非侵襲的な採取方法を採用することが好ましい。つまり、角質の採取の際、顆粒層や有棘細胞層などの角質層以外の部分をできる限り傷つけないことが望まれる。例えば、粘着性のテープや接着剤などを皮膚へ付着させた後に剥がす方法や、粗面の材料(例えば不織布)で皮膚表面を擦る方法によって角質を採取することができる。非常に簡便に実施できる点において前者の方法は特に好ましい。尚、以降に実施される遺伝子発現解析に影響しないものである限り、粘着性のテープや接着剤に用いられる材料(接着成分)は特に限定されない。
【0010】
角質を採取する部位は特に限定されない。例えば、顔面、首、手の甲、及び指など、日常的に露出している部位(本明細書において「露出部位」ともいう)、上腕内側部、前腕内側部、背部、臀部、及び上腿内側部など、日常的に衣服に覆われている部位(本明細書において「被覆部位」ともいう)から角質を採取することができる。原則的には、そこでの皮膚の状態を評価したい部位より角質を採取する。例えば、顔面の皮膚の状態を評価するためには顔面より角質を採取するとよい。但し、ある部位の皮膚の状態を評価する場合に、他の部位から採取した角質を用いることを妨げるものではない。
様々な部位の中でも顔面はスキンケアの対象として最も重要であることから、本発明の好ましい一態様では顔面より角質の採取を行う。
【0011】
一般に、「遺伝子発現解析」とは遺伝子の発現状態を調べることをいう。本発明における「遺伝子発現解析」では、遺伝子の転写産物であるmRNA量、又は遺伝子の発現産物であるタンパク質の量が測定される。このように、タンパク質量の解析を行うようにしてもよい。
【0012】
mRNA量の測定には、マイクロアレイ解析や、逆転写反応を行った後にポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)を行う方法などを用いることができる。これらの方法は常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコールが報告されており、当業者であれば公知のプロトコールに従い、又は公知のプロトコールを適宜修正・変更したプロトコールによって、適切な測定系を構築し、そして実施することができる。尚、mRNA量の測定による遺伝子発現解析の詳細については後述する。
【0013】
一方、タンパク質量の測定であれば、例えば蛍光物質、色素、酵素などを利用する免疫染色法、ウエスタンブロット法、免疫測定法(例えばELISA法、EIA法)などを用いることができる。これらの方法についても常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコールが報告されており、当業者であれば公知のプロトコールに従い、又は公知のプロトコールを適宜修正・変更したプロトコールによって、適切な測定系を構築し、そして実施することができる。
【0014】
本発明において「皮膚の状態」とは、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビ等、皮膚機能に関わる指標の程度をいう。本発明の皮膚状態評価法では、これらの中の1種又は2種以上について評価する。好ましくは、老化、しわ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、及び皮脂量からなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関して評価する。最も好ましくは、皮膚の状態として老化の程度が評価されることになる。
【0015】
本発明の皮膚評価法は好ましくは以下の一連のステップ(1)〜(3)によって実施される。
(1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ。
【0016】
ステップ(1)では、被験対象の特定部位より採取した角質を用意する。上記の通り、角質の採取部位は特に限定されない。好ましくは顔面より角質を採取する。以下に、角質の採取法及びRNAの抽出法の具体例を示す。
(a)顆粒層や有棘細胞層などを傷つけないように最外層の角質層の一部を剥離する。例えば、粘着性のテープを皮膚へ付着させた後に剥がし(必要に応じて数回繰り返す)、角質を採取する。
(b)採取した角質を、SDSやβ−メルカプトエタノール、グアニジンイソチオシアネートなどを含む溶解性緩衝液に浸した後、タンパク質分解酵素を加え反応させる。
(c)反応終了後、例えば超音波破砕機等の物理的な力によって角質を破砕する。
(d)上清にエタノール溶液を加え、周知の核酸抽出法に準じた方法や市販されたキットを用いた方法によりRNAを抽出する。例えばグアニジンイソチオシアネート、フェノールおよびクロロホルムを用いたRNA抽出法やニッポンジーン社のISOGEN、インビトロジェン社のTRISOL Reagent、あるいはQIAGEN社のRNeasy KitやAmbion社のRNAqueous Kitなどを用いる方法などでRNAを抽出する。
(e)必要に応じて、DNA分解酵素等の核酸分解酵素を用いることで混在するDNAを除去する。
(f)エタノール沈殿等の核酸濃縮法を用いてRNAを濃縮する。
【0017】
ステップ(1)に続くステップ(2)では、採取した角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行う。そして、当該遺伝子発現解析により特定の遺伝子の発現量を算出する。このように本発明の一態様では、角質中に残存するmRNAの量を指標とした遺伝子発現解析を行う。ところで、皮膚の最外層には、表皮の基底層にある細胞が核などの細胞成分を失い、主にケラチン繊維の塊へと変化した角質がある。最外層の角質は、死細胞の塊であり通常新生RNAは生成されない。分解されずに皮膚の最外層(即ち角質)に残存したRNAを用いる点が本発明の最大の特徴の一つである。尚、遺伝子発現解析では、「遺伝子の発現量」は絶対値又は相対値(比較対象又は標準の発現量との比率や差など)として算出される。
【0018】
遺伝子発現解析でその発現量が調べられることになる「特定の遺伝子」とは、皮膚の状態に関連する遺伝子である。皮膚の状態に関連する遺伝子である限り、任意の遺伝子(例えば、角質細胞やメラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞などの皮膚を構成する細胞や、炎症の際などに血液から浸潤してくる免疫系の細胞などが発現する遺伝子)を解析対象とすることができる。皮膚の状態に関連する遺伝子は、後述の実施例に示すように、マクロアレイなどを用いた実験によって同定することが可能である。本発明者らは、老化の程度の評価において特に有効な複数の遺伝子、即ち、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1(以上、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に正の相関が認められた遺伝子群。「第1遺伝子群」とも呼ぶ)、並びにTMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54(以上、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に負の相関が認められた遺伝子群。「第2遺伝子群」とも呼ぶ)を同定することに成功した(実施例の欄を参照)。さらに、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGF(遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群「第3遺伝子群」とも呼ぶ)を同定することに成功した。
本発明では、好ましくは、第1遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量、第2遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量、又は第3遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量を測定する。更に好ましくは、第3遺伝子群より選択されるケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1及びPSMB4)、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB及びVEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6及びNDUFV2)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F及びUPP1)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23及びNDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H及びATP5J)より選択される1種又は2種以上の遺伝子群のmRNA量を測定する。
一般に、解析する遺伝子の数が増加するほど信頼性の高い評価を得ることができるといえる。その一方で、解析する遺伝子の数の増加はデータ処理を複雑にし、簡便性及び迅速性を損ないかねない。また、解析に要する費用の増大をも引き起こす。そこで、解析する遺伝子の数は好ましくは1〜30個、更に好ましくは3〜20個、更に更に好ましくは5〜10個である。
尚、上記の各遺伝子のRefSeq(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)での番号及び説明と、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/index.html)でのアクセッション番号(Accession number)を図1〜5に示す。また、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群はMarenholz I,et al,Genomics,37,295,1996にEpidermal differentiation complexとして定義されており、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群はLeonard MO,et al,J Biol Chem,2003,278(41),40296に、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群はHatefi Y,et al,The Enzymes of Biological Membranes,2nd ed,vol.4,Plenum Press,New York,1985,p.1−70に、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群はJeremy Berg,et al,In Biochemistry 5th ed,W. H. Freeman and Company,USA,2002に、PMLシグナル伝達系遺伝子群はAppella E,et al,Eur. J. Biochem,2001,268,2764、F−TYPE ATPase遺伝子群はSachs G,et al,Biochim. Biophys. Acta.,162,1968,210に定義されている。
【0019】
ここで、角質から抽出したmRNAを用いた遺伝子発現解析法の具体例を以下に示す。1.マイクロアレイを用いた方法
(a)角質の微量RNAからマイクロアレイ用ターゲットあるいはサンプルプローブを調製するために、PCR法あるいはT7 リニア増幅法に基づいた方法でRNAを増幅する。例えば、T7 リニア増幅法を利用したExpress Art Aminoallyl mRNA amplification kit (Artus社、Germany)を用いて行うことができる。参照RNA(リファレンスRNA)や比較対照とする角質の微量RNAの増幅反応も並行して行う。参照RNAは、市販されているマイクロアレイリファレンス用RNAを用いることができる。
(b)目的の皮膚部位から得られた増幅したRNAと、参照RNAまたは比較対照RNAを2種類の蛍光色素でラベル化した後にアルカリ条件下で断片化する。蛍光色素は、2種類のターゲットを識別できる蛍光波長を発するものならばどのような組み合わせでも使用可能であるが、Cy3とCy5、Alexa555とAlexa647などの組み合わせが好ましい。
(c)断片化した蛍光標識RNAを、マイクロアレイにハイブリダイゼーションする。
(d)マイクロアレイを洗浄したのち、スキャニングを行い、各スポットの発現量を測定する。
【0020】
2.RT−PCRを用いた方法
(a)抽出したRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを作製する。
(b)cDNAを鋳型に、ターゲットとなる遺伝子に対応するプライマーを用いてPCR(polymerase chain reaction)反応を行い、目的の遺伝子に対応するDNA断片を得る。
(c)内部標準となるような遺伝子(GAPDHやβ−アクチンなど)の反応も並行して行う。
(d)得られたDNA断片の電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドなどで染色し、バンドの強度を測定し、その遺伝子の発現量とする。
(e)必要に応じて、Syber greenなどの蛍光色素やTaqman probeなどの蛍光プローブを用いて定量PCR反応を行い、発現量を定量する。
(f)内部標準となる遺伝子の発現量に対する目的の遺伝子の発現量の比率を算出する。
【0021】
ステップ(3)では、ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価する。例えば、算出した発現量を、予め設定した基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する。具体的には例えば、皮膚の状態に関する評価と、当該評価に対応する発現量の範囲とが関連付けられた複数の区分を設定しておき、算出した発現量がいずれの区分に該当するのかを調べる。区分の設定に関する具体例(皮膚の状態の指標として「老化の程度」を評価する場合の例)を以下に示す。
(例1:遺伝子発現量の増加が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(低度):発現量<a、老化度2(中程度):a≦発現量<b、老化度3(高度):b≦発現量
(例2:遺伝子発現量の減少が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(20代相当):a<発現量、老化度2(30代相当)b<発現量≦a、老化度3(40代相当):c<発現量≦b、老化度4(50代相当):d<発現量≦c、老化度5(60代相当):発現量≦d
【0022】
本発明の一態様では二つの部位から角質を採取することにし、各角質の遺伝子発現解析を行う。そして、各角質に関して算出された発現量を比較し、比較結果に基づき皮膚の状態を評価する。即ち、この態様の皮膚状態評価法では、以下の一連のステップ(i)〜(iii)が実施されることになる。
(i)被験対象の第1部位から採取した角質と、該被験対象の第2部位から採取した角質とを用意するステップ
(ii)前記各角質について、そこから抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(iii)ステップ(ii)で算出した二つの発現量を比較し、第1部位の皮膚の状態を評価するステップ。
【0023】
ステップ(iii)では算出した二つの発現量が比較される。例えば、第2発現量に対する第1発現量の比率、又は第1発現量と第2発現量の差(第1発現量−第2発現量)を計算する。そして、計算値が、皮膚の状態に関する評価が関連付けられた複数の区分の中のいずれに該当するのかを調べる。区分の設定に関する具体例(第2発現量に対する第1発現量の比率を用い、皮膚の状態の指標として「老化の程度」を評価する場合の例)を以下に示す。
(例3:発現量の比率の増加が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(低度):比率<a、老化度2(中程度):a≦比率<b、老化度3(高度):b≦比率
(例4:発現量の比率の減少が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(20代相当):a<比率、老化度2(30代相当)b<比率≦a、老化度3(40代相当):c<比率≦b、老化度4(50代相当):d<比率≦c、老化度5(60代相当):比率≦d
【0024】
以上の例1〜4では区分の数を3(例1、3)又は5(例2、4)としているが、区分の数は特に限定されるものではない。例えば、区分数を2〜10のいずれかにすることができる。区分の数、及び各区分に関連付けられる基準値の範囲は、予備実験の結果を基に任意に設定可能である。
【0025】
ところで、皮膚の被覆部位は外界に曝されることが少なく、露出部に比較すればその状態(老化の程度、しわの量など)の加齢に伴う変化及び個人間の相違は格段に小さい。従って、被覆部位を基準(コントロール)とした比較によって露出部位を評価すれば、露出部位の状態をより適切かつ正確に把握することが可能である。そこで本発明では、露出部位を第1部位とし、被覆部位を第2部位として用いることが好ましい。さらに好ましくは、露出部位の中でも顔面部を第1部位として採用する一方で、被覆部の中でも上腕内側部や前腕内側部など、角質の採取が比較的容易で且つ加齢に伴う変化及び個人間の相違が比較的小さい部位を第2部位として採用する。これによって操作の簡便化、及び評価の確度の向上などが達成される。
【0026】
外部環境の影響や日常の生活習慣の違いにより、皮膚の状態には個人差が存在する。したがって、皮膚の状態の特徴となる、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビなどの指標となる遺伝子発現量を測定することにより、被験者の肌の特徴を評価することができる。それらの特徴をもとに、顧客の皮膚に適合した化粧品/皮膚外用剤の選択やその使用法など、スキンケアないしトリートメント方法の選択が可能となる。
【0027】
本発明は第2の局面として、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法(以下、「トリートメント手段評価法」ともいう)を提供する。
本発明のトリートメント手段評価法では、本発明の皮膚状態評価法を利用する。具体的には、被験対象に対してトリートメント手段を施す前と後にそれぞれ、本発明の皮膚状態評価法を実施し、得られた評価結果を比較することによって、当該トリートメント手段の有効性を評価する。本発明のトリートメント手段評価法は、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量という科学的根拠に基づいた評価を行うことから、その客観性及び信頼性が高い。
「トリートメント手段」とは、皮膚の状態の改善又は回復を目的として皮膚に施される手段をいい、その代表例は化粧品の使用である。用語「トリートメント手段」が表す概念の中にスキンケア方法、トリートメント方法が含まれる。
【実施例】
【0028】
1.角質に含まれるRNAの抽出
被験者の頬部皮膚に半径1cmの円状のテープ(3M、Blenderm)を一枚貼付し、十分に接着していることを確認した後、テープを剥がし取り、角質を含むテープを得た。得られた角質に含まれるRNAをRNA抽出キット(Ambion社製、RNAqueous−4PCR Kit)を用いて抽出した。すなわち、角質の付着したテープをテープごと350μLのLysis/Binding Solutionに入れ、proteinase K(Invitrogen社製)を添加し、56℃で1時間インキュベートした。その後、超音波破砕機を用いて、分散させた後、350μLの64%エタノールを加えて攪拌し、テープを取り除き、角質抽出液を得た。付属のFilter CartrigeにRNAを吸着させた後に、100μLの溶出液でRNAを溶出した。得られた溶出液にDNaseIを加え、残存しているDNAを完全に除去した後、エタノールを用いてRNAを沈殿させてRNAを濃縮した。得られたRNAのペレットを必要量の水に溶解して、角質に含まれる残存RNAを得た。
【0029】
2.角質に含まれるRNAのマイクロアレイ解析
(1)材料及び方法
年齢20代被験者3名および50代被験者3名の頬部および上腕内側部皮膚の角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。当該各RNAをExpress Art Aminoallyl mRNA amplification kit (Artus社、 Germany)により増幅し、Cy3とCy5の蛍光色素でラベル化した後にアルカリ条件下で断片化した。次に、断片化したターゲットをヒトオリゴヌクレオチドマイクロアレイHuman 35K (フィルジェン社、名古屋)に42℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、洗浄し、マイクロアレイスキャナースキャンアレイGx(パーキンエルマー)で画像データを読み取った。画像データから、各スポットのシグナル強度をマイクロアレイ解析ソフトウエアであるスキャンアレイエクスプレスで数値化した。顔面部と上腕内側部のテープストリップサンプル6人分のマイクロアレイデータを解析し、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率(log(顔面部の発現値)/(上腕内側部の発現値))を算出した。そして、t検定で20歳代と50歳代で発現差のある遺伝子を検定した。t検定を通過した遺伝子からデータベースでアノテーション情報が得られる遺伝子をさらに選択した。選択した遺伝子を発現様式に応じてk−meanクラスタリング法で分類した。
【0030】
(2)解析結果
クラスタリングの結果、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子(即ち、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に正の相関が認められた遺伝子)を33個、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子(即ち、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に負の相関が認められた遺伝子)を88個、同定することができた(図6〜8)。このように、皮膚の老化の程度(老化度、老化の進行)を評価するために有用な遺伝子を見出すことに成功した。これらの遺伝子の発現量に注目すれば皮膚の老化の程度を評価できるといえる。また、これらの遺伝子の発現量の増減に注目すれば、老化の進行を評価できるといえる。
【0031】
上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群(第1遺伝子群)の中には、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、CYP2S1が含まれていた(図1を参照)。また、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群(第2遺伝子群)の中には、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、USP54が含まれていた(図2〜4を参照)。
【0032】
一般に、加齢に伴いしわ、たるみ、色素沈着等の量は増え、弾力性、水分量、保湿力等は低下する。このように皮膚の状態を表す指標のいくつかは加齢と相関関係にある。この事実に基づけば、20代被験者と50代被験者との比較によって同定された以上の各遺伝子は、老化の程度を評価する指標としてのみならず、加齢と相関関係にある様々な指標の評価にも有用と考えられる。
また、皮膚は生体の最外層にある臓器であり、外部環境の影響や日常の生活習慣の違いにより、皮膚の状態には個人差や時期的な変化が存在する。したがって、皮膚の状態の特徴となる、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビなどの指標となる遺伝子発現量を測定することにより、被験者の肌の特徴を評価することができる。
【0033】
3.角質に含まれるRNAのPCR解析1
20歳代被験者3名と50歳代被験者3名の頬部および上腕内側部の皮膚角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。各RNAをRT−PCRキット(Invitrogen社製、 SuperScript III Platinum SYBR Green Two−step qRT−PCR kit)を用いた定量PCR反応に供し、FLG、FGFR1およびZNF10の発現量を定量した。すべての遺伝子の発現量はβ−アクチンの発現量で規格化(ノーマライズ)した。尚、各遺伝子の発現の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0034】
FLG用のプライマーセット
AGCCTGGCCAACTTAGTGAAAC(配列番号1)
GTGCCACCATGCCTGGATA(配列番号2)
FGFR1用のプライマーセット
GGAGTCCCGGAAGTGTATCCA(配列番号3)
CCAGCCCAAAGTCAGCAATC(配列番号4)
ZNF10用のプライマーセット
ACACCATGCCCACATACAACA(配列番号5)
GAGCCCCAGTTAAGTGACTATTCTACTC(配列番号6)
β−アクチン用のプライマーセット
CACTCTTCCAGCCTTCCTTCC(配列番号7)
GTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(配列番号8)
【0035】
定量化はΔΔCt法にて行い、腕の角質の遺伝子発現量に対する顔の角質の遺伝子発現量を算出した。その結果を図9に示す。図示の通り、FLG及びFGFR1は、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い。また、ZNF10については上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い。このように、FLG、FGFR1、及びZNF10の遺伝子発現量が老化の程度の評価・予測に有用であることが示された。
以上のようにPCR解析の結果はマイクロアレイ解析の結果と同様の傾向を示した。これによって、マイクロアレイ解析によって見出された遺伝子群の有用性が裏付けられると同時に、マイクロアレイ解析での知見は解析法の種類に依存したものではないことが証明された。
【0036】
4.角質に含まれるRNAのPCR解析2
20歳代被験者7名と50歳代被験者4名の頬部の皮膚角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。また、リファレンスとしてHuman skin RNA(Cat.No.R1234218−P,コスモバイオ)を用いた。角質の採取の際に、被験者の頬部のキメをレプリカによる6段階評価により、明度をL値としてSpectrophotometer(コニカミノルタ、CM−2600d)により、弾力性を皮膚粘弾性計(Courage+Khazaka社、CW−E&S−001)により測定した。キメの評価点は、少ないほどキメが粗く、多いほどキメが細かいことを示す。また、明度は、少ないほど色素沈着の程度が高く、多いほど色素沈着の程度が低いことを示す。弾力性は、少ないほど皮膚の弾力がなく、色素沈着の程度が皮膚の弾力があることを示す。
当該各RNAをExpress Art mRNA amplification kit (Artus社、 Germany)により増幅し、RT−PCRキット(Invitrogen社製、 SuperScript III Platinum SYBR Green Two−step qRT−PCR kit)を用いた定量PCR反応に供し、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFの発現量を定量した。すべての遺伝子の発現量はリファレンスのKRT6B遺伝子の発現量で規格化(ノーマライズ)した。尚、各遺伝子の発現の測定に使用したプライマーを図10に示す。
【0037】
定量化はΔΔCt法にて行い、遺伝子発現量をリファレンスの遺伝子発現量に対する顔の角質の遺伝子発現量の比率として算出した。
ΔΔCt=(サンプルのターゲット遺伝子のCt値―リファレンスのターゲット遺伝子のCt値)―(サンプルのKRT6B遺伝子のCt値―リファレンスのKRT6B遺伝子のCt値)
遺伝子発現量=2−ΔΔCt
その結果を図11に示す。図示の通り、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFは、顔面部の遺伝子発現量が20歳代で高く、50歳代で低い。このように、これらの遺伝子発現量が老化の程度の評価・予測に有用であることが示された。
【0038】
5.角質に含まれるRNAのPCR解析による皮膚性状の評価
上記4.の方法で測定した20歳代被験者7名と50歳代被験者4名の頬部の皮膚角質より残存RNAのPCR解析結果から得られたΔΔCt値を、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB、VEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、UPP1)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23、NDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5J)ごとに標準化(平均=0、標準偏差=1)した。ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群のΔΔCt値と被験者の皮膚明度およびキメの程度は負の相関関係が認められた。同様に、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の弾力性、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の弾力性、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の明度、PMLシグナル伝達系遺伝子群のΔΔCt値と皮膚のキメの程度、F−TYPE ATPase遺伝子群のΔΔCt値と皮膚のキメの程度に負の相関が認められた(図12〜17)。ΔΔCtが低いほど遺伝子の発現量が大きいことを示しており、キメの評価点が大きいほどキメが細かい、明度が高いほど色素沈着の程度が低い、弾力性の数値が高いほど皮膚に弾力性があることを示している。すなわち、いずれの遺伝子群もキメが細かい、色素沈着が少ない、弾力性があるほど遺伝子発現が高くなることがわかった。したがって、被験者の角質RNAに含まれるケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23、NDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5J)の発現を測定することにより、被験者のキメの状態を評価・予測することが可能となる。さらに、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、UPP1)の発現を測定することにより被験者の色素沈着の程度を、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB、VEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2)の遺伝子の発現を測定することにより、被験者の弾力性を評価・予測することが可能となる。また、その結果から、被験者の皮膚の性状にあったスキンケアないしトリートメント方法の選択を選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の皮膚状態評価法によれば、低侵襲的に皮膚の状態を評価することができる。また、客観性の高い評価結果を得ることができる。本発明は、顧客の皮膚に適合した化粧品/皮膚外用剤の選択やその使用法など、スキンケアないしトリートメント方法の選択を可能とする。
【0040】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】マイクロアレイ解析で同定された、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群。
【図2】マイクロアレイ解析で同定された、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群。
【図3】図2の続き。
【図4】図3の続き。
【図5】PCR解析で同定された遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群
【図6】上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群についてのマイクロアレイ解析の結果。
【図7】上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群についてのマイクロアレイ解析の結果。
【図8】図7の続き。
【図9】マイクロアレイ解析で同定された3種の遺伝子を用いたPCR解析の結果。
【図10】PCR解析に用いたプライマー配列
【図11】遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群のPCR解析結果
【図12】ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群の発現と皮膚明度およびキメの状態の関係
【図13】酸素状態において発現が上昇する遺伝子群の発現と皮膚弾力性の関係
【図14】NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群の発現と皮膚弾力性の関係
【図15】ピリミジン代謝に関与する遺伝子群の発現と皮膚明度の関係
【図16】PMLシグナル伝達系遺伝子群の発現と皮膚のキメの状態の関係
【図17】F−TYPE ATPase遺伝子群の発現と皮膚のキメの状態の関係
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の状態を評価する方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の状態を的確に把握することは、健康的な皮膚を維持するためのスキンケアをする上で重要である。化粧品によるスキンケアを実施するに際しては、例えば目視的な問診などを通じて、化粧品使用者の肌質が評価されてきた。最近では、皮膚の状態または機能をより客観的に評価するために、各種の計測機器を利用して肌質を機器固有のパラーメーターで表記する方法や、肌質に関与するタンパク質の発現レベルあるいは酵素の活性を測定する生化学的・分子生物学的方法なども取り入れられている。また、遺伝学的な検討も行われている。一例として、皮膚に関与する遺伝子の遺伝学的検査をすることによって顧客の皮膚の状態・特徴を評価し、顧客に適した化粧品を提供する方法が提案されている(特許文献1、2)。これらの方法では、皮膚関連遺伝子(又は皮膚関連遺伝子群)に注目し、その情報(DNA配列情報)を基に皮膚の状態等を評価する。確かに皮膚関連遺伝子の遺伝子情報は皮膚の性状を特徴付ける重要な一因となる。しかしながら、DNA配列情報が皮膚機能に貢献又は影響するためには遺伝子の発現が必要であること、及び遺伝子によっては個人の生活習慣などの内的要因や気候などの外的要因のために生涯発現しない可能性も考えられること等を考慮すれば、皮膚関連遺伝子のDNA配列情報だけでは、様々な要因が絡み合った結果として形成される、皮膚の状態を的確に捉えることはできず、特に外的な要因による皮膚の状態変化を理解することは不可能である。
【0003】
ところで、皮膚の上皮組織(即ち、表皮)は数層の細胞層からなる。表皮の中で最外層に位置するのが角質細胞層である。角質細胞は、基底部にある基底細胞が細胞分裂を繰り返し、その一部が基底細胞層を去って上層へ移行する過程で形成される。この過程を角化と呼び、角化を通して細胞は核などの細胞成分を失い主にケラチン繊維の塊へと変化していく。一般に、基底細胞の分裂から角質細胞への分化までに4週間程度を要する。また、役割を終えた角質が角質層の表面から剥がれたものを「体の垢」と呼ぶが、角質細胞が形成されてから剥がれ落ちるまでに約2週間かかる。
【0004】
皮膚の表皮に注目した検討として、表皮の機能解析や、表皮の機能に関与する遺伝子マーカーの同定などの目的で表皮の構成細胞に関する遺伝子発現解析が行われている(例えば特許文献3、非特許文献1)。特許文献3や非特許文献1に開示された方法では、角質層の下に存在する生細胞から抽出したRNAを利用する。従って、その実施に際しては皮膚組織を比較的深層まで採取する必要があり、被験者の苦痛を伴い、しかも傷が残る危険性がある。
【0005】
一方、表皮の最外層を構成する角質に注目した検討も行われている。即ち、皮膚の状態を評価する方法として、皮膚より剥離した角質中のインボルクリンタンパク質の発現を測定することで皮膚のバリア機能を評価する方法(特許文献4)や、デスモソームの分解酵素の活性を測定することにより肌荒れの程度を評価する方法(特許文献5)などが考案されている。このような特定のタンパク質を指標にして皮膚の状態を評価する方法は、皮膚の表現形質からアプローチしたものであるため、皮膚の状態変化の根本的な原因を調べ、その原因に応じた皮膚のトリートメント方法や薬剤などを見つけることには必ずしも有効でない。
【特許文献1】特開2003−260031号公報
【特許文献2】特開2003−271728号公報
【特許文献3】特表2002−523145号公報
【特許文献4】国際公開第WO2002/025272号パンフレット
【特許文献5】特開平8−68791号公報
【非特許文献1】Kirsten Paludan and Kristian Thestrup-Pedersen: Use of the Polymerase Chain Reaction in Quantification of Interleukin 8 mRNA in Minute Epidermal Samples. The Journal of Investigative Dermatology Vol.99, No. 6 December: 830-835, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚の角質層に存在する細胞は脱核していることから、そこでは新生mRNAの合成は行われず、mRNAは存在しないと考えられていた。実際、角質層に存在するmRNAを利用した遺伝子発現解析の報告はない。一方、角質以外の有核細胞組織についてはその遺伝子発現解析が行われている(特許文献3、非特許文献1など)。しかしながら、上記の通り、角質以外の有核細胞組織を利用した遺伝子発現解析には侵襲性の問題や美容上の問題が伴う。また、組織の切除は医師が施術せねばならないことを考慮すれば、角質以外の有核細胞組織を利用した遺伝子発現解析は、スキンケアないし美容の目的で皮膚の状態を評価する方法としては適切といえない。尚、上記の通りいくつかの研究報告はあるものの、遺伝子レベル又は遺伝子発現レベルでのアプローチから皮膚の状態変化の解明を図る研究は十分にはなされていなかった。
本発明は以上の背景に鑑み、低侵襲的であり、且つ客観性の高い評価結果が得られる、皮膚の状態を評価する方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題の下、本発明者らは角質に注目して鋭意検討した。その結果、角質中から十分な量のmRNAを抽出できることが判明した。一方、抽出したmRNAを用いた遺伝子発現解析の結果、皮膚の状態と関連する複数の遺伝子が見出された。このように、角質から抽出されるmRNAを用いた遺伝子発現解析が皮膚の状態を評価する方法として有効であるとの知見が得られるとともに、遺伝子発現解析において注目すべき具体的な遺伝子を同定することにも成功した。本発明は主として当該知見及び成果に基づくものであり、以下に列挙する、皮膚の状態を評価する方法等を提供する。
[1]被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価することを特徴とする、皮膚の状態を評価する方法。
[2]前記遺伝子発現解析が、前記角質から抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析である、[1]に記載の方法。
[3](1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ、
を含む、[2]に記載の方法。
[4]ステップ(3)において、ステップ(2)で算出した発現量を基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する、[3]に記載の方法。
[5]前記特定部位が顔面部である、[3]又は[4]に記載の方法。
[6]前記遺伝子発現解析がマイクロアレイ法又はPCR法によって行われる、[3]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記遺伝子が、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、[3]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記遺伝子が、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、[3]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[9]前記遺伝子が、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFからなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
[10]前記角質が、粘着性のテープを用いて被験対象の皮膚より採取した角質である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記皮膚の状態が、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビからなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関する状態である、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記皮膚の状態が、老化の程度である、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]被験対象に対してトリートメント手段を施す前及び後にそれぞれ、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法を実施し、得られた評価結果を比較することによって該トリートメント手段の有効性を評価することを特徴とする、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の局面は皮膚の状態を評価する方法(以下、「皮膚状態評価法」ともいう)を提供する。本発明の皮膚状態評価法では、被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価する。皮膚の中で最外層に存在する角質を遺伝子発現解析の試料として用いることから、本発明の皮膚状態評価法は低侵襲的であり且つ容易に実施可能なものとなる。
被験対象は典型的にはヒトである。但し、イヌやネコなどのペット動物のようにスキンケアや皮膚のトリートメントの対象となる動物を被験対象としてもよい。つまり、スキンケア等の対象となる限り、角質層をもつヒト又はヒト以外の動物に対して本発明の皮膚状態評価法を適用することが可能である。ヒト以外の動物の具体例として、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等を挙げることができる。
【0009】
皮膚からの角質の採取方法は特に限定されないが、可能な限り非侵襲的な採取方法を採用することが好ましい。つまり、角質の採取の際、顆粒層や有棘細胞層などの角質層以外の部分をできる限り傷つけないことが望まれる。例えば、粘着性のテープや接着剤などを皮膚へ付着させた後に剥がす方法や、粗面の材料(例えば不織布)で皮膚表面を擦る方法によって角質を採取することができる。非常に簡便に実施できる点において前者の方法は特に好ましい。尚、以降に実施される遺伝子発現解析に影響しないものである限り、粘着性のテープや接着剤に用いられる材料(接着成分)は特に限定されない。
【0010】
角質を採取する部位は特に限定されない。例えば、顔面、首、手の甲、及び指など、日常的に露出している部位(本明細書において「露出部位」ともいう)、上腕内側部、前腕内側部、背部、臀部、及び上腿内側部など、日常的に衣服に覆われている部位(本明細書において「被覆部位」ともいう)から角質を採取することができる。原則的には、そこでの皮膚の状態を評価したい部位より角質を採取する。例えば、顔面の皮膚の状態を評価するためには顔面より角質を採取するとよい。但し、ある部位の皮膚の状態を評価する場合に、他の部位から採取した角質を用いることを妨げるものではない。
様々な部位の中でも顔面はスキンケアの対象として最も重要であることから、本発明の好ましい一態様では顔面より角質の採取を行う。
【0011】
一般に、「遺伝子発現解析」とは遺伝子の発現状態を調べることをいう。本発明における「遺伝子発現解析」では、遺伝子の転写産物であるmRNA量、又は遺伝子の発現産物であるタンパク質の量が測定される。このように、タンパク質量の解析を行うようにしてもよい。
【0012】
mRNA量の測定には、マイクロアレイ解析や、逆転写反応を行った後にポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)を行う方法などを用いることができる。これらの方法は常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコールが報告されており、当業者であれば公知のプロトコールに従い、又は公知のプロトコールを適宜修正・変更したプロトコールによって、適切な測定系を構築し、そして実施することができる。尚、mRNA量の測定による遺伝子発現解析の詳細については後述する。
【0013】
一方、タンパク質量の測定であれば、例えば蛍光物質、色素、酵素などを利用する免疫染色法、ウエスタンブロット法、免疫測定法(例えばELISA法、EIA法)などを用いることができる。これらの方法についても常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコールが報告されており、当業者であれば公知のプロトコールに従い、又は公知のプロトコールを適宜修正・変更したプロトコールによって、適切な測定系を構築し、そして実施することができる。
【0014】
本発明において「皮膚の状態」とは、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビ等、皮膚機能に関わる指標の程度をいう。本発明の皮膚状態評価法では、これらの中の1種又は2種以上について評価する。好ましくは、老化、しわ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、及び皮脂量からなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関して評価する。最も好ましくは、皮膚の状態として老化の程度が評価されることになる。
【0015】
本発明の皮膚評価法は好ましくは以下の一連のステップ(1)〜(3)によって実施される。
(1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ。
【0016】
ステップ(1)では、被験対象の特定部位より採取した角質を用意する。上記の通り、角質の採取部位は特に限定されない。好ましくは顔面より角質を採取する。以下に、角質の採取法及びRNAの抽出法の具体例を示す。
(a)顆粒層や有棘細胞層などを傷つけないように最外層の角質層の一部を剥離する。例えば、粘着性のテープを皮膚へ付着させた後に剥がし(必要に応じて数回繰り返す)、角質を採取する。
(b)採取した角質を、SDSやβ−メルカプトエタノール、グアニジンイソチオシアネートなどを含む溶解性緩衝液に浸した後、タンパク質分解酵素を加え反応させる。
(c)反応終了後、例えば超音波破砕機等の物理的な力によって角質を破砕する。
(d)上清にエタノール溶液を加え、周知の核酸抽出法に準じた方法や市販されたキットを用いた方法によりRNAを抽出する。例えばグアニジンイソチオシアネート、フェノールおよびクロロホルムを用いたRNA抽出法やニッポンジーン社のISOGEN、インビトロジェン社のTRISOL Reagent、あるいはQIAGEN社のRNeasy KitやAmbion社のRNAqueous Kitなどを用いる方法などでRNAを抽出する。
(e)必要に応じて、DNA分解酵素等の核酸分解酵素を用いることで混在するDNAを除去する。
(f)エタノール沈殿等の核酸濃縮法を用いてRNAを濃縮する。
【0017】
ステップ(1)に続くステップ(2)では、採取した角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行う。そして、当該遺伝子発現解析により特定の遺伝子の発現量を算出する。このように本発明の一態様では、角質中に残存するmRNAの量を指標とした遺伝子発現解析を行う。ところで、皮膚の最外層には、表皮の基底層にある細胞が核などの細胞成分を失い、主にケラチン繊維の塊へと変化した角質がある。最外層の角質は、死細胞の塊であり通常新生RNAは生成されない。分解されずに皮膚の最外層(即ち角質)に残存したRNAを用いる点が本発明の最大の特徴の一つである。尚、遺伝子発現解析では、「遺伝子の発現量」は絶対値又は相対値(比較対象又は標準の発現量との比率や差など)として算出される。
【0018】
遺伝子発現解析でその発現量が調べられることになる「特定の遺伝子」とは、皮膚の状態に関連する遺伝子である。皮膚の状態に関連する遺伝子である限り、任意の遺伝子(例えば、角質細胞やメラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞などの皮膚を構成する細胞や、炎症の際などに血液から浸潤してくる免疫系の細胞などが発現する遺伝子)を解析対象とすることができる。皮膚の状態に関連する遺伝子は、後述の実施例に示すように、マクロアレイなどを用いた実験によって同定することが可能である。本発明者らは、老化の程度の評価において特に有効な複数の遺伝子、即ち、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1(以上、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に正の相関が認められた遺伝子群。「第1遺伝子群」とも呼ぶ)、並びにTMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54(以上、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に負の相関が認められた遺伝子群。「第2遺伝子群」とも呼ぶ)を同定することに成功した(実施例の欄を参照)。さらに、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGF(遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群「第3遺伝子群」とも呼ぶ)を同定することに成功した。
本発明では、好ましくは、第1遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量、第2遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量、又は第3遺伝子群より選択される1種又は2種以上の遺伝子のmRNA量を測定する。更に好ましくは、第3遺伝子群より選択されるケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1及びPSMB4)、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB及びVEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6及びNDUFV2)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F及びUPP1)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23及びNDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H及びATP5J)より選択される1種又は2種以上の遺伝子群のmRNA量を測定する。
一般に、解析する遺伝子の数が増加するほど信頼性の高い評価を得ることができるといえる。その一方で、解析する遺伝子の数の増加はデータ処理を複雑にし、簡便性及び迅速性を損ないかねない。また、解析に要する費用の増大をも引き起こす。そこで、解析する遺伝子の数は好ましくは1〜30個、更に好ましくは3〜20個、更に更に好ましくは5〜10個である。
尚、上記の各遺伝子のRefSeq(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)での番号及び説明と、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/index.html)でのアクセッション番号(Accession number)を図1〜5に示す。また、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群はMarenholz I,et al,Genomics,37,295,1996にEpidermal differentiation complexとして定義されており、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群はLeonard MO,et al,J Biol Chem,2003,278(41),40296に、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群はHatefi Y,et al,The Enzymes of Biological Membranes,2nd ed,vol.4,Plenum Press,New York,1985,p.1−70に、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群はJeremy Berg,et al,In Biochemistry 5th ed,W. H. Freeman and Company,USA,2002に、PMLシグナル伝達系遺伝子群はAppella E,et al,Eur. J. Biochem,2001,268,2764、F−TYPE ATPase遺伝子群はSachs G,et al,Biochim. Biophys. Acta.,162,1968,210に定義されている。
【0019】
ここで、角質から抽出したmRNAを用いた遺伝子発現解析法の具体例を以下に示す。1.マイクロアレイを用いた方法
(a)角質の微量RNAからマイクロアレイ用ターゲットあるいはサンプルプローブを調製するために、PCR法あるいはT7 リニア増幅法に基づいた方法でRNAを増幅する。例えば、T7 リニア増幅法を利用したExpress Art Aminoallyl mRNA amplification kit (Artus社、Germany)を用いて行うことができる。参照RNA(リファレンスRNA)や比較対照とする角質の微量RNAの増幅反応も並行して行う。参照RNAは、市販されているマイクロアレイリファレンス用RNAを用いることができる。
(b)目的の皮膚部位から得られた増幅したRNAと、参照RNAまたは比較対照RNAを2種類の蛍光色素でラベル化した後にアルカリ条件下で断片化する。蛍光色素は、2種類のターゲットを識別できる蛍光波長を発するものならばどのような組み合わせでも使用可能であるが、Cy3とCy5、Alexa555とAlexa647などの組み合わせが好ましい。
(c)断片化した蛍光標識RNAを、マイクロアレイにハイブリダイゼーションする。
(d)マイクロアレイを洗浄したのち、スキャニングを行い、各スポットの発現量を測定する。
【0020】
2.RT−PCRを用いた方法
(a)抽出したRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを作製する。
(b)cDNAを鋳型に、ターゲットとなる遺伝子に対応するプライマーを用いてPCR(polymerase chain reaction)反応を行い、目的の遺伝子に対応するDNA断片を得る。
(c)内部標準となるような遺伝子(GAPDHやβ−アクチンなど)の反応も並行して行う。
(d)得られたDNA断片の電気泳動を行った後、エチジウムブロマイドなどで染色し、バンドの強度を測定し、その遺伝子の発現量とする。
(e)必要に応じて、Syber greenなどの蛍光色素やTaqman probeなどの蛍光プローブを用いて定量PCR反応を行い、発現量を定量する。
(f)内部標準となる遺伝子の発現量に対する目的の遺伝子の発現量の比率を算出する。
【0021】
ステップ(3)では、ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価する。例えば、算出した発現量を、予め設定した基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する。具体的には例えば、皮膚の状態に関する評価と、当該評価に対応する発現量の範囲とが関連付けられた複数の区分を設定しておき、算出した発現量がいずれの区分に該当するのかを調べる。区分の設定に関する具体例(皮膚の状態の指標として「老化の程度」を評価する場合の例)を以下に示す。
(例1:遺伝子発現量の増加が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(低度):発現量<a、老化度2(中程度):a≦発現量<b、老化度3(高度):b≦発現量
(例2:遺伝子発現量の減少が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(20代相当):a<発現量、老化度2(30代相当)b<発現量≦a、老化度3(40代相当):c<発現量≦b、老化度4(50代相当):d<発現量≦c、老化度5(60代相当):発現量≦d
【0022】
本発明の一態様では二つの部位から角質を採取することにし、各角質の遺伝子発現解析を行う。そして、各角質に関して算出された発現量を比較し、比較結果に基づき皮膚の状態を評価する。即ち、この態様の皮膚状態評価法では、以下の一連のステップ(i)〜(iii)が実施されることになる。
(i)被験対象の第1部位から採取した角質と、該被験対象の第2部位から採取した角質とを用意するステップ
(ii)前記各角質について、そこから抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(iii)ステップ(ii)で算出した二つの発現量を比較し、第1部位の皮膚の状態を評価するステップ。
【0023】
ステップ(iii)では算出した二つの発現量が比較される。例えば、第2発現量に対する第1発現量の比率、又は第1発現量と第2発現量の差(第1発現量−第2発現量)を計算する。そして、計算値が、皮膚の状態に関する評価が関連付けられた複数の区分の中のいずれに該当するのかを調べる。区分の設定に関する具体例(第2発現量に対する第1発現量の比率を用い、皮膚の状態の指標として「老化の程度」を評価する場合の例)を以下に示す。
(例3:発現量の比率の増加が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(低度):比率<a、老化度2(中程度):a≦比率<b、老化度3(高度):b≦比率
(例4:発現量の比率の減少が老化の進行と相関する遺伝子を利用した場合の例)
老化度1(20代相当):a<比率、老化度2(30代相当)b<比率≦a、老化度3(40代相当):c<比率≦b、老化度4(50代相当):d<比率≦c、老化度5(60代相当):比率≦d
【0024】
以上の例1〜4では区分の数を3(例1、3)又は5(例2、4)としているが、区分の数は特に限定されるものではない。例えば、区分数を2〜10のいずれかにすることができる。区分の数、及び各区分に関連付けられる基準値の範囲は、予備実験の結果を基に任意に設定可能である。
【0025】
ところで、皮膚の被覆部位は外界に曝されることが少なく、露出部に比較すればその状態(老化の程度、しわの量など)の加齢に伴う変化及び個人間の相違は格段に小さい。従って、被覆部位を基準(コントロール)とした比較によって露出部位を評価すれば、露出部位の状態をより適切かつ正確に把握することが可能である。そこで本発明では、露出部位を第1部位とし、被覆部位を第2部位として用いることが好ましい。さらに好ましくは、露出部位の中でも顔面部を第1部位として採用する一方で、被覆部の中でも上腕内側部や前腕内側部など、角質の採取が比較的容易で且つ加齢に伴う変化及び個人間の相違が比較的小さい部位を第2部位として採用する。これによって操作の簡便化、及び評価の確度の向上などが達成される。
【0026】
外部環境の影響や日常の生活習慣の違いにより、皮膚の状態には個人差が存在する。したがって、皮膚の状態の特徴となる、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビなどの指標となる遺伝子発現量を測定することにより、被験者の肌の特徴を評価することができる。それらの特徴をもとに、顧客の皮膚に適合した化粧品/皮膚外用剤の選択やその使用法など、スキンケアないしトリートメント方法の選択が可能となる。
【0027】
本発明は第2の局面として、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法(以下、「トリートメント手段評価法」ともいう)を提供する。
本発明のトリートメント手段評価法では、本発明の皮膚状態評価法を利用する。具体的には、被験対象に対してトリートメント手段を施す前と後にそれぞれ、本発明の皮膚状態評価法を実施し、得られた評価結果を比較することによって、当該トリートメント手段の有効性を評価する。本発明のトリートメント手段評価法は、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量という科学的根拠に基づいた評価を行うことから、その客観性及び信頼性が高い。
「トリートメント手段」とは、皮膚の状態の改善又は回復を目的として皮膚に施される手段をいい、その代表例は化粧品の使用である。用語「トリートメント手段」が表す概念の中にスキンケア方法、トリートメント方法が含まれる。
【実施例】
【0028】
1.角質に含まれるRNAの抽出
被験者の頬部皮膚に半径1cmの円状のテープ(3M、Blenderm)を一枚貼付し、十分に接着していることを確認した後、テープを剥がし取り、角質を含むテープを得た。得られた角質に含まれるRNAをRNA抽出キット(Ambion社製、RNAqueous−4PCR Kit)を用いて抽出した。すなわち、角質の付着したテープをテープごと350μLのLysis/Binding Solutionに入れ、proteinase K(Invitrogen社製)を添加し、56℃で1時間インキュベートした。その後、超音波破砕機を用いて、分散させた後、350μLの64%エタノールを加えて攪拌し、テープを取り除き、角質抽出液を得た。付属のFilter CartrigeにRNAを吸着させた後に、100μLの溶出液でRNAを溶出した。得られた溶出液にDNaseIを加え、残存しているDNAを完全に除去した後、エタノールを用いてRNAを沈殿させてRNAを濃縮した。得られたRNAのペレットを必要量の水に溶解して、角質に含まれる残存RNAを得た。
【0029】
2.角質に含まれるRNAのマイクロアレイ解析
(1)材料及び方法
年齢20代被験者3名および50代被験者3名の頬部および上腕内側部皮膚の角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。当該各RNAをExpress Art Aminoallyl mRNA amplification kit (Artus社、 Germany)により増幅し、Cy3とCy5の蛍光色素でラベル化した後にアルカリ条件下で断片化した。次に、断片化したターゲットをヒトオリゴヌクレオチドマイクロアレイHuman 35K (フィルジェン社、名古屋)に42℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、洗浄し、マイクロアレイスキャナースキャンアレイGx(パーキンエルマー)で画像データを読み取った。画像データから、各スポットのシグナル強度をマイクロアレイ解析ソフトウエアであるスキャンアレイエクスプレスで数値化した。顔面部と上腕内側部のテープストリップサンプル6人分のマイクロアレイデータを解析し、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率(log(顔面部の発現値)/(上腕内側部の発現値))を算出した。そして、t検定で20歳代と50歳代で発現差のある遺伝子を検定した。t検定を通過した遺伝子からデータベースでアノテーション情報が得られる遺伝子をさらに選択した。選択した遺伝子を発現様式に応じてk−meanクラスタリング法で分類した。
【0030】
(2)解析結果
クラスタリングの結果、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子(即ち、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に正の相関が認められた遺伝子)を33個、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子(即ち、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率と加齢との間に負の相関が認められた遺伝子)を88個、同定することができた(図6〜8)。このように、皮膚の老化の程度(老化度、老化の進行)を評価するために有用な遺伝子を見出すことに成功した。これらの遺伝子の発現量に注目すれば皮膚の老化の程度を評価できるといえる。また、これらの遺伝子の発現量の増減に注目すれば、老化の進行を評価できるといえる。
【0031】
上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群(第1遺伝子群)の中には、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、CYP2S1が含まれていた(図1を参照)。また、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群(第2遺伝子群)の中には、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、USP54が含まれていた(図2〜4を参照)。
【0032】
一般に、加齢に伴いしわ、たるみ、色素沈着等の量は増え、弾力性、水分量、保湿力等は低下する。このように皮膚の状態を表す指標のいくつかは加齢と相関関係にある。この事実に基づけば、20代被験者と50代被験者との比較によって同定された以上の各遺伝子は、老化の程度を評価する指標としてのみならず、加齢と相関関係にある様々な指標の評価にも有用と考えられる。
また、皮膚は生体の最外層にある臓器であり、外部環境の影響や日常の生活習慣の違いにより、皮膚の状態には個人差や時期的な変化が存在する。したがって、皮膚の状態の特徴となる、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビなどの指標となる遺伝子発現量を測定することにより、被験者の肌の特徴を評価することができる。
【0033】
3.角質に含まれるRNAのPCR解析1
20歳代被験者3名と50歳代被験者3名の頬部および上腕内側部の皮膚角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。各RNAをRT−PCRキット(Invitrogen社製、 SuperScript III Platinum SYBR Green Two−step qRT−PCR kit)を用いた定量PCR反応に供し、FLG、FGFR1およびZNF10の発現量を定量した。すべての遺伝子の発現量はβ−アクチンの発現量で規格化(ノーマライズ)した。尚、各遺伝子の発現の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0034】
FLG用のプライマーセット
AGCCTGGCCAACTTAGTGAAAC(配列番号1)
GTGCCACCATGCCTGGATA(配列番号2)
FGFR1用のプライマーセット
GGAGTCCCGGAAGTGTATCCA(配列番号3)
CCAGCCCAAAGTCAGCAATC(配列番号4)
ZNF10用のプライマーセット
ACACCATGCCCACATACAACA(配列番号5)
GAGCCCCAGTTAAGTGACTATTCTACTC(配列番号6)
β−アクチン用のプライマーセット
CACTCTTCCAGCCTTCCTTCC(配列番号7)
GTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(配列番号8)
【0035】
定量化はΔΔCt法にて行い、腕の角質の遺伝子発現量に対する顔の角質の遺伝子発現量を算出した。その結果を図9に示す。図示の通り、FLG及びFGFR1は、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い。また、ZNF10については上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い。このように、FLG、FGFR1、及びZNF10の遺伝子発現量が老化の程度の評価・予測に有用であることが示された。
以上のようにPCR解析の結果はマイクロアレイ解析の結果と同様の傾向を示した。これによって、マイクロアレイ解析によって見出された遺伝子群の有用性が裏付けられると同時に、マイクロアレイ解析での知見は解析法の種類に依存したものではないことが証明された。
【0036】
4.角質に含まれるRNAのPCR解析2
20歳代被験者7名と50歳代被験者4名の頬部の皮膚角質より上記1.の方法で残存RNAを得た。また、リファレンスとしてHuman skin RNA(Cat.No.R1234218−P,コスモバイオ)を用いた。角質の採取の際に、被験者の頬部のキメをレプリカによる6段階評価により、明度をL値としてSpectrophotometer(コニカミノルタ、CM−2600d)により、弾力性を皮膚粘弾性計(Courage+Khazaka社、CW−E&S−001)により測定した。キメの評価点は、少ないほどキメが粗く、多いほどキメが細かいことを示す。また、明度は、少ないほど色素沈着の程度が高く、多いほど色素沈着の程度が低いことを示す。弾力性は、少ないほど皮膚の弾力がなく、色素沈着の程度が皮膚の弾力があることを示す。
当該各RNAをExpress Art mRNA amplification kit (Artus社、 Germany)により増幅し、RT−PCRキット(Invitrogen社製、 SuperScript III Platinum SYBR Green Two−step qRT−PCR kit)を用いた定量PCR反応に供し、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFの発現量を定量した。すべての遺伝子の発現量はリファレンスのKRT6B遺伝子の発現量で規格化(ノーマライズ)した。尚、各遺伝子の発現の測定に使用したプライマーを図10に示す。
【0037】
定量化はΔΔCt法にて行い、遺伝子発現量をリファレンスの遺伝子発現量に対する顔の角質の遺伝子発現量の比率として算出した。
ΔΔCt=(サンプルのターゲット遺伝子のCt値―リファレンスのターゲット遺伝子のCt値)―(サンプルのKRT6B遺伝子のCt値―リファレンスのKRT6B遺伝子のCt値)
遺伝子発現量=2−ΔΔCt
その結果を図11に示す。図示の通り、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFは、顔面部の遺伝子発現量が20歳代で高く、50歳代で低い。このように、これらの遺伝子発現量が老化の程度の評価・予測に有用であることが示された。
【0038】
5.角質に含まれるRNAのPCR解析による皮膚性状の評価
上記4.の方法で測定した20歳代被験者7名と50歳代被験者4名の頬部の皮膚角質より残存RNAのPCR解析結果から得られたΔΔCt値を、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB、VEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、UPP1)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23、NDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5J)ごとに標準化(平均=0、標準偏差=1)した。ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群のΔΔCt値と被験者の皮膚明度およびキメの程度は負の相関関係が認められた。同様に、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の弾力性、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の弾力性、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群のΔΔCt値と皮膚の明度、PMLシグナル伝達系遺伝子群のΔΔCt値と皮膚のキメの程度、F−TYPE ATPase遺伝子群のΔΔCt値と皮膚のキメの程度に負の相関が認められた(図12〜17)。ΔΔCtが低いほど遺伝子の発現量が大きいことを示しており、キメの評価点が大きいほどキメが細かい、明度が高いほど色素沈着の程度が低い、弾力性の数値が高いほど皮膚に弾力性があることを示している。すなわち、いずれの遺伝子群もキメが細かい、色素沈着が少ない、弾力性があるほど遺伝子発現が高くなることがわかった。したがって、被験者の角質RNAに含まれるケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、PMLシグナル伝達系遺伝子群(ATP5I、COX7C、CST6、NOL7、NR4A2、RPL37A、RPS23、NDUFA1)、F−TYPE ATPase遺伝子群(ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5J)の発現を測定することにより、被験者のキメの状態を評価・予測することが可能となる。さらに、ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群(ADAMTSL4、CKS1B、CRCT1、CRTC2、DAP3、ECM1、HIST2H2AA3、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NIT1、NOTCH2NL、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、PSMB4)、ピリミジン代謝に関与する遺伝子群(DCTD、DUT、ENTPD1、NT5E、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、UPP1)の発現を測定することにより被験者の色素沈着の程度を、低酸素状態において発現が上昇する遺伝子群(ADFP、DUSP1、HNRPA1、JMJD1A、PDGFB、VEGF)、NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群(NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2)の遺伝子の発現を測定することにより、被験者の弾力性を評価・予測することが可能となる。また、その結果から、被験者の皮膚の性状にあったスキンケアないしトリートメント方法の選択を選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の皮膚状態評価法によれば、低侵襲的に皮膚の状態を評価することができる。また、客観性の高い評価結果を得ることができる。本発明は、顧客の皮膚に適合した化粧品/皮膚外用剤の選択やその使用法など、スキンケアないしトリートメント方法の選択を可能とする。
【0040】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】マイクロアレイ解析で同定された、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群。
【図2】マイクロアレイ解析で同定された、上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群。
【図3】図2の続き。
【図4】図3の続き。
【図5】PCR解析で同定された遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群
【図6】上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で低く、50歳代で高い遺伝子群についてのマイクロアレイ解析の結果。
【図7】上腕内側部に対する顔面部の遺伝子発現比率が20歳代で高く、50歳代で低い遺伝子群についてのマイクロアレイ解析の結果。
【図8】図7の続き。
【図9】マイクロアレイ解析で同定された3種の遺伝子を用いたPCR解析の結果。
【図10】PCR解析に用いたプライマー配列
【図11】遺伝子の発現量と年齢との間に負の相関が認められた遺伝子群のPCR解析結果
【図12】ケラチノサイト分化に関わる遺伝子群の発現と皮膚明度およびキメの状態の関係
【図13】酸素状態において発現が上昇する遺伝子群の発現と皮膚弾力性の関係
【図14】NADHデヒドロゲナーゼ遺伝子群の発現と皮膚弾力性の関係
【図15】ピリミジン代謝に関与する遺伝子群の発現と皮膚明度の関係
【図16】PMLシグナル伝達系遺伝子群の発現と皮膚のキメの状態の関係
【図17】F−TYPE ATPase遺伝子群の発現と皮膚のキメの状態の関係
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価することを特徴とする、皮膚の状態を評価する方法。
【請求項2】
前記遺伝子発現解析が、前記角質から抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)において、ステップ(2)で算出した発現量を基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定部位が顔面部である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子発現解析がマイクロアレイ法又はPCR法によって行われる、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子が、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子が、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子が、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFからなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記角質が、粘着性のテープを用いて被験対象の皮膚より採取した角質である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚の状態が、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビからなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関する状態である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記皮膚の状態が、老化の程度である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
被験対象に対してトリートメント手段を施す前及び後にそれぞれ、請求項1〜12のいずれかに記載の方法を実施し、得られた評価結果を比較することによって該トリートメント手段の有効性を評価することを特徴とする、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法。
【請求項1】
被験対象の皮膚より採取した角質を用いて遺伝子発現解析を行い、その結果によって皮膚の状態を評価することを特徴とする、皮膚の状態を評価する方法。
【請求項2】
前記遺伝子発現解析が、前記角質から抽出したmRNAを試料とした遺伝子発現解析である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)被験対象の特定部位の皮膚より採取した角質を用意するステップ、
(2)前記角質から抽出したmRNAを試料として遺伝子発現解析を行い、皮膚の状態に関連する遺伝子の発現量を算出するステップ、及び
(3)ステップ(2)で算出した発現量を用いて皮膚の状態を評価するステップ、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)において、ステップ(2)で算出した発現量を基準発現量に照合して皮膚の状態を評価する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定部位が顔面部である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子発現解析がマイクロアレイ法又はPCR法によって行われる、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子が、UNC5CL、KIAA0251、ECOP、PTGES2、ZNF135、SYT3、C12orf25、FOXA3、TMEM14C、PHF13、CLNS1A、RHOT2、FLG、NUP155、SLC7A6、CYHR1、ZNF304、FGFR4、RNF6、EIF3S7、RPS15、MRPS2、SERGEF、HVCN1、FGFR1、GRK7、TP53I3、RPUSD4、F7、MFHAS1、BOLL、RNF20、及びCYP2S1からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子が、TMEM47、SCAND2、SCML2、RFX4、GM2A、ZNF10、ABCD3、C13orf7、MICB、MPP1LC3C、PARP14、TMEM163、KIAA1467、SLC25A16、YARS2、FAM60A、CGNL1、CLN3、HSFY1、PLSCR3、LRRC37A3、C18orf4、ARSD、PITX2、TUBGCP5、RPL36、SMYD4、C3orf39、KBTBD6、MGC4655、PLK1、APOLD1、DDX47、DENND1C、ABTB1、GORASP1、TRERF1、PKMYT1、AKAP9、FZD7、DENND1B、HEL308、PIGO、DCAKD、SEPW1、RTCD1、FBXO21、MLZE、FUT4、MR1、NBPF11、RPL36AL、DFFB、MFAP3L、RDH16、NSF、HLA−DMA、ARHGEF6、RNF38、U2AF1L4、CTBP2、CDK6、GNG10、WDR73、MTMR11、C16orf51、IL6、C21orf58、REEP4、TMEM107、FCHO2、NCAPG2、BAG3、MAP6、AFF3、EBP、ATM、AQP4、CRNKL1、ZFP91、SARDH、TMEM16H、UNKL、TXNDC1、AKT2、BAG1、GATAD2A、及びUSP54からなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子が、ADAMTLS4、ADFP、ATP5A1、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5H、ATP5I、ATP5J、CKS1B、COX7C、CRCT1、CRTC2、CST6、DAP3、DCTD、DUSP1、DUT、ECM1、ENTPD1、HIST2H2AA3、NHNRNPA1、JMJD1A、LCE1C、LCE2A、LCE3A、LCE3E、LCE5A、LMNA、NDUFA1、NDUFA13、NDUFB1、NDUFB10、NDUFB7、NDUFB9、NDUFC1、NDUFC2、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS5、NDUFS6、NDUFV2、NIT1、NOL7、NOTCH2NL、NR4A2、NT5E、PDGFB、POLG、POLR2B、POLR2C、POLR2F、PSMB7、RPL37A、RPS23、S100A13、S100A2、SHC1、TPM3、TUFT1、UPP1、及びVEGFからなる群より選択される1種又は2種以上の遺伝子である、請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記角質が、粘着性のテープを用いて被験対象の皮膚より採取した角質である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚の状態が、老化、しわ、たるみ、弾力性、炎症、色素沈着、乾燥状態、バリア機能、皮脂量、皮膚の新陳代謝、きめの粗さ、透明感、くすみ、血行、日焼け、毛穴の目立ち、知覚過敏、及びニキビからなる群より選択される1種又は2種以上の指標に関する状態である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記皮膚の状態が、老化の程度である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
被験対象に対してトリートメント手段を施す前及び後にそれぞれ、請求項1〜12のいずれかに記載の方法を実施し、得られた評価結果を比較することによって該トリートメント手段の有効性を評価することを特徴とする、皮膚に対するトリートメント手段を評価する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−178390(P2008−178390A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300505(P2007−300505)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
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