説明

皮膚外用乳化組成物

【課題】安定性、使用性、使用感に優れ、保湿感のある皮膚外用乳化組成物を提供。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表されるビフェニル化合物、(B)POEソルビットミツロウ、(C)N−アシルグルタミン酸塩を含有する。


(但し、R、Rは水素又は炭素数1〜8の炭化水素基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れ、高い保湿感を付与し、使用性、使用感に優れた皮膚外用乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物のような皮膚外用剤を形成する成分として、ポリオキシエチレンソルビタンミツロウ、N−アシルグルタミン酸塩、美白作用を持つビフェニル化合物等が、ローション、乳液、ジェル、クリーム、サンスクリーン剤、クレンジング料等に多く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−074784号公報
【特許文献2】特開2007−153771号公報
【特許文献3】特開2008−007433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビフェニル化合物は水や非極性油剤に対する溶解度が極めて低いために、製品中で結晶化することが多く、製品の経時安定性を低下させる懸念があった。そのため、強く望まれているにもかかわらず、この化合物を十分量配合して安定性に優れた乳化組成物を得ることは困難であり、保湿感、使用性、使用感においても満足できる特性のものを得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者等は上記事情に鑑み、鋭意研究した結果、特定のビフェニル化合物、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、N−アシルグルタミン酸塩を組み合わせることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、(A)下記一般式(1)で表されるビフェニル化合物、(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウ及び(C)N−アシルグルタミン酸塩を含有する皮膚外用乳化組成物にある。
【0007】
【化1】

(但し、R、Rは水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状である飽和若しくは不飽和の炭化水素基)
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚外用乳化組成物は、安定性に優れ、高い保湿感を付与し、使用性、使用感に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の構成について詳述する。本発明に用いられる(A)ビフェニル化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0010】
【化2】

(但し、R、Rは水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状である飽和若しくは不飽和の炭化水素基)
【0011】
本発明のビフェニル化合物は、公知の物質であり、容易に得ることができる(日本化学雑誌、第87巻、第6号、603頁、1966年)。その他、モクレン科ホウノキ属植物の樹皮から得られるマグノロールを用いたり、それを更に水素添加することにより容易に得ることができる。
【0012】
上記一般式(1)で表される本発明のビフェニル化合物は、Rが水素原子であっても炭化水素基であってもよく、炭化水素基の場合、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和でも不飽和の炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、安定性の面からは飽和炭化水素基が好ましく、効果の点からはプロピル基、イソプロピル基、アリル基が好ましい。これらのうち、本発明ではRがプロピル基である「2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−プロピルビフェニル」が、特に好ましく用いられる。
【0013】
本発明の皮膚外用乳化組成物における(A)成分の含有量は、乳化組成物の総量を基準として、0.01〜5質量%(以下、単に%と記す。)が好ましく、特に好ましくは0.1〜3%である。これらの範囲であれば、本発明の効果により優れる。
【0014】
本発明に用いられる(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウは公知の物質であり、具体的にはソルビトールに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンソルビトールと、ミツロウを反応させて得られる成分である。(B)成分を配合することにより、ビフェニル化合物を配合した乳化組成物の乳化安定性を高めることができる。(B)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
尚、付加重合される酸化エチレンの付加モル数は特に限定はないが、好ましくは4〜25であり、より好ましくは6〜20である。
【0015】
(B)成分は、市販品を用いることができる。具体的には、酸化エチレンの付加モル数が6であるNIKKOL GBW−25、酸化エチレンの付加モル数が20であるNIKKOL GBW−125(商品名、いずれも日光ケミカルズ社製)等を例示することができる。
【0016】
本発明の皮膚外用乳化組成物における(B)成分の含有量は特に限定されるものではないが、通常乳化組成物の総量を基準として0.1〜5%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3%である。この範囲内であれば乳化系の安定性に特に優れると同時に、べたつきの点でより優れた使用感が得られる。
【0017】
本発明に用いられる(C)N−アシルグルタミン酸塩は公知の物質であり、例えばヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム等を挙げることができる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。本発明では、高温保存時の乳化安定性を飛躍的に向上させることから、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムが好ましく、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムがより好ましい。
【0018】
本発明の皮膚外用乳化組成物における(C)成分の含有量は特に限定されるものではないが、通常乳化組成物の総量を基準として0.1〜3%が好ましく、特に好ましくは0.3〜2%である。この範囲内であれば高温保存時の乳化系の安定性に特に優れると同時に、べたつきの点でより優れた使用感が得られる。
【0019】
本発明の皮膚外用乳化組成物では、上記(A)〜(C)の必須成分に加えて、(D)ダイマー酸のジエステルを併用することにより、本発明の効果をより優れたものとすることができる。本発明に用いられる(D)ダイマー酸のジエステルは、ダイマー酸とダイマージオールとのエステル体等を指し、具体的にはダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジリノレイル(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル等が挙げられ、抱水エモリエント成分として知られている。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用される。上記ダイマー酸のジエステルの中でも、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)が好ましい。
【0020】
市販品としては、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)として「Plandool−S、−H」、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)として「LUSPLAN PI−DA」、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルとして「LUSPLAN DD−DA」、ダイマージリノール酸ジリノレイルとして「Plandool−G」、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイルとして「LISPLAN DD−IS」(以上、日本精化社製)を挙げることができる。
【0021】
本発明の皮膚外用乳化組成物における(D)成分の含有量は特に限定されるものではないが、通常乳化組成物の総量を基準として0.1〜20%が好ましく、特に好ましくは0.5〜10%である。この範囲内であれば特に保湿感に優れ、べたつきの点でより優れた使用感が得られる。
【0022】
本発明の皮膚外用乳化組成物としては、特に限定されないが、クリーム、乳液、美容液、サンスクリーン等が挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚外用乳化組成物は、前記の成分に加え必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される各種の成分を任意で使用することができる。これらの成分としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油分、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、ポリマー類、アミノ酸誘導体、糖誘導体、香料、水、アルコール、増粘剤、色材、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、薬剤等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例、比較例により本発明を詳説するが、本発明はそれらに限定されるものではない。尚、配合組成の%は質量%である。
【0025】
実施例に先立ち、実施例において行った保存安定性試験並び官能評価方法について述べる。
【0026】
(保存安定性試験)
評価試料をガラスビンに入れ、室温で1週間放置し、その外観及び状態の変化を目視にて観察した。分離、析出といった異常が認められる場合を「×」、特に異常が認められない場合を「○」と評価した。
【0027】
(官能評価)
専門判定員10名が評価試料を使用し、「保湿感」、「のび、つき」及び「べたつき感やきしみ感の有無」の各評価項目に関して1点から5点の5段階により評点をつけ(点数が大きい程評価に優れる。)、その平均点により評価した。
【0028】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1記載の配合組成により皮膚外用乳化組成物を常法により作製し、前記の評価試験を実施した。結果を表1に併せて示す。
【0029】
(表1)

【0030】
表1より明らかなように、本発明の乳化組成物(実施例1〜7)は、比較例1〜4と比
べて、優れた保存安定性が認められた。また、本発明の乳化組成物は、官能評価のいずれの項目においても優れた性能を有していたが、必須成分を書いた比較例では、官能評価のいずれかの項目において劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0031】
実施例8(乳液)
原 料 名 配合量(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2,2'−ジヒドロキシ−5,5'−ジ−n−プロピルビフェニル 0.5
ポリオキシエチレンソルビットミツロウ(注1) 0.5
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.7
カルボキシビニルポリマー 0.2
水酸化ナトリウム 0.1
グリセリン 5.0
スクワラン 3.0
セバシン酸ジイソプロピル 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル 3.0
/セチル/ステアリル/ベヘニル)(注4)
火棘抽出物(注5) 0.1
アンズ果汁(注6) 0.1
キョウニンエキス(注7) 0.1
加水分解コンキオリン液(注8) 0.1
加水分解シルク液(注9) 0.1
紫蘭根エキス(注10) 0.1
オウバクエキス(注11) 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
エデト酸二ナトリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.4
キサンタンガム 0.1
香料 0.1
精製水 残 部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
注5:火棘(サントリー社製)
注6:アプリコットエキスK(エスペリス社製)
注7:キョウニン抽出液LA(丸善製薬社製)
注8:真珠タンパク抽出液(丸善製薬社製)
注9:シルクプロテインエキスK(一丸ファルコス社製)
注10:ランヴェール−EX(テクノーブル社製)
注11:オウバク抽出液J(丸善製薬社製)
【0032】
上記組成の皮膚外用乳化組成物(乳液)を常法により調製し評価した結果、保存安定性、官能評価のいずれの項目においても優れていた。
【0033】
実施例9(クリーム)
原 料 名 配合量(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2,2'−ジヒドロキシ−5,5'−ジ−n−プロピルビフェニル 0.5
ポリオキシエチレンソルビットミツロウ(注1) 2.0
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 1.2
ジプロピレングリコール 6.0
ベヘニルアルコール 2.5
マイクロクリスタリンワックス 3.0
グリセリン 5.0
セバシン酸ジイソプロピル 4.0
流動パラフィン 8.0
メチルフェニルポリシロキサン 2.0
ジメチルポリシロキサン(0.1m/s;25℃) 1.0
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル 3.0
/セチル/ステアリル/ベヘニル)(注4)
オレス−2 0.5
オレンジ果汁(注12) 0.1
オウバクエキス(注13) 0.1
酵母エキス(注14) 0.1
チョウジエキス(注15) 0.1
海草エキス(注16) 0.1
キイチゴエキス(注17) 0.1
ディオスコレアコンポジタエキス(注18) 0.1
豆乳発酵液(注19) 0.1
ユズエキス(注20) 0.1
岩白菜エキス(注21) 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
エデト酸二ナトリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.4
クロロフェネシン 0.1
キサンタンガム 0.15
香料 0.1
精製水 残 部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
注12:ホモフルーツ(オレンジ)N(香栄興業社製)
注13:オウバク抽出液J(丸善製薬社製)
注14:ディスムチンBTJ(ペンタファーム社製)
注15:チョウジ抽出液(丸善製薬社製)
注16:マリンパージ(一丸ファルコス社製)
注17:ファルコレックスキイチゴB(一丸ファルコス社製)
注18:ディオスコレアコンポジタ根エキス(三井化学社製)
注19:豆乳発酵液(三省製薬社製)
注20:ユズ抽出液(丸善製薬社製)
注21:厚葉岩白菜抽出液BG(丸善製薬社製)
【0034】
上記組成の皮膚外用乳化組成物(クリーム)を常法により調製し評価した結果、保存安定性、官能評価のいずれの項目においても優れていた。
【0035】
尚、上記の実施例において使用した香料の組成を表2に示す。
【0036】
(表2)

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上記載の如く、本発明により、安定性に優れ、高い保湿感を付与し、使用性、使用感に優れた皮膚外用乳化組成物(クリーム、乳液、美容液、サンスクリーン等)を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるビフェニル化合物、(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウ及び(C)N−アシルグルタミン酸塩を含有する皮膚外用乳化組成物。
【化1】

(但し、R、Rは水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状である飽和若しくは不飽和の炭化水素基)
【請求項2】
さらに(D)ダイマー酸のジエステルを含有する、請求項1に記載の皮膚外用乳化組成物。

【公開番号】特開2010−111601(P2010−111601A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283775(P2008−283775)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】