説明

皮膚外用剤

【課題】
コエンザイムQ10と生体成分類似高分子を共存させ、コエンザイムQ10の皮膚貯留性の優れた皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
一般式(II)で表される部分構造を有する生体成分類似高分子とコエンザイムQ10とを含有することにより、コエンザイムQ10の皮膚貯留性が向上した。
【化2】


一般式(II)
(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Rは−(OC)−R又は、アミノ酸残基。Rはホスホリルコリン基、又は糖残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関するものである。詳しくは、コエンザイムQ10と生体成分類似高分子を含む皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、ユビキノン類の側鎖のイソプレン単位が10のものであり、ユビデカレノンとも言われている補酵素の1種である。コエンザイムQ10は、虚血性心不全に対する作用があり医薬品としても使用されている。このコエンザイムQ10の生物活性は、活性酸素より細胞膜を守る抗酸化作用およびフリーラジカル捕捉作用があると考えられている。また、ミトコンドリア呼吸およびATP産生を刺激することにより、病的細胞が細胞修復のために十分なエネルギーを生産できないことを相殺する能力に関係があると考えられて自然の皮膚老化過程を遅くする薬剤として化粧品にも利用されている。その他にも美肌作用・肌荒れ防止効果(例えば特許文献1を参照)があることが知られており、さらに抗酸化剤として化粧料への配合(例えば、特許文献2を参照)や美白剤としての使用(例えば、特許文献3,特許文献4を参照)も知られている。このような種々の作用を有するコエンザイムQ10ではあるが、それを皮膚に適用したときにその経皮での吸収性が低いという欠点があった。このため製剤系に多量に、安定に含有させることを目的としたもの(例えば、特許文献5,特許文献6,特許文献7、特許文献8を参照)が知られている。一方、生体成分類似高分子としては、ホスホリルコリン構造を有するもの(例えば、特許文献9,特許文献10,特許文献11を参照)、糖構造を有するもの(例えば、特許文献12を参照)、アミノ酸構造を有するもの(例えば、特許文献13を参照)などが知られており、肌に対する保護効果などを有することが知られている。また、高分子化合物が、薬効成分などの経皮吸収性を増強することも知られている(例えば、特許文献14を参照)。しかし、このような生体成分類似重合体が、薬剤の皮膚貯留性を向上させる作用を有していることは知られておらず、さらにコエンザイムQ10の皮膚貯留性を向上させることは全く知られていない。
【0003】
【特許文献1】特公昭62−121号公報
【特許文献2】特開平07−196534号公報
【特許文献3】特開昭61−289029号公報
【特許文献4】特開2004−107262号公報
【特許文献5】特公平07−74145号公報
【特許文献6】特公平06−86374号公報
【特許文献7】特表2002−541216号公報
【特許文献8】特開2003−238396号公報
【特許文献9】特開平06−157269号公報
【特許文献10】特開平05−70321号公報
【特許文献11】特開平09−315949号公報
【特許文献12】特開平06−122609号公報
【特許文献13】再表2000−325600号公報
【特許文献14】特開平06−183946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コエンザイムQ10の皮膚貯留性を向上した皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、コエンザイムQ10と生体成分類似高分子を共存させることにより、コエンザイムQ10の皮膚貯留性が向上することを見いだし、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
【0006】
(1) (1)下記一般式(I)で表される化合物をその構成単量体として、重合又は共重合することによって得られる生体成分類似高分子と(2)コエンザイムQ10を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0007】
【化1】

一般式(I)
(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Rは−(OC)−R、又はアミノ酸残基。Rはホスホリルコリン基、又は糖残基を表す。)
(2) 前記生体成分類似高分子が、下記一般式(II)で表される部分構造を有するものであることを特徴とする(1)に記載の皮膚外用剤。
【0008】
【化2】

一般式(II)
(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Rは−(OC)−R、又はアミノ酸残基。Rはホスホリルコリン基、又は糖残基を表す。)
【0009】
(3) 前記生体成分類似高分子が、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルとの共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシド、ポリメタクリロイル−L−リジンから選ばれる1種乃至2種以上である(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) 前記メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルとの共重合体、におけるメタクリル酸アルキルのアルキル基がn−ブチル基であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) コエンザイムQ10の皮膚内貯留性を向上させることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6) 化粧料乃至は医薬部外品であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コエンザイムQ10の皮膚貯留性を向上した皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の必須成分である生体成分類似高分子
本発明の皮膚外用剤は、一般式(I)で表される化合物をその構成単量体として、重合又は共重合ことによって得られる生体成分類似高分子、言い換えれば一般式(II)に示される部分構造を有する生体成分類似高分子を含有することを特徴とする。本発明の生体成分類似高分子とは、側鎖にホスホリルコリン基、糖残基、アミノ酸残基などの生体成分を含有している重合体若しくは他の単量体との共重合体である。この様な重合体(ホモ重合体)、共重合体において生体成分を主鎖に直接結合させることもできるし、エチレングリコール(オキシエチレン基)などの2官能性基を介して結合させることもできる。また、主鎖としては、メタクリル酸乃至はそのエステル、アクリル酸乃至はそのエステル、ビニルアルコール乃至はそのエステルなどの重合体、共重合体が例示できる。中でも、メタクリル酸乃至はそのエステル、アクリル酸乃至はそのエステルの重合体乃至は共重合体が好ましく例示できる。また、共重合体において、重合様式はランダム共重合、交互共重合、ブロック重合などが挙げられるが、これらの共重合体における重合様式は何れでも良く、重合様式にはとらわれない。この様な生体成分類似高分子の例として、ホスホリルコリン基を有するものとしてはメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体乃至は共重合体を例示できる。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体乃至は共重合体は、皮膚上に保湿膜を形成して肌を保護する作用があることから、敏感な肌状態のヒトに使用するのに向いているものである。このようなメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体(ホモ重合体)としては、市販品(日本油脂社製「Lipidure−HMシリーズ」)があるので、これらを入手して使用することが可能であり、好ましい。また、メタクリルオキシエチルホスホリルコリンと共重合するメタクリル酸アルキルとしては、通常入手できるメタクリル酸アルキルが使用可能であるが、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸ステアリルなどが例示できる。これらの単量体の内、メタクリル酸ブチルが特に好ましい。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルの共重合体の単量体の組成比は97:3〜45:55が好ましく例示できる。これより、メタクリル酸アルキル組成比が少なくなると、共重合体とする効果が無くなるし、逆に多くなると、水への馴染みが少なくなってしまう。また、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルの共重合体としては、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルのモル比が、およそ80:20であり、平均分子量が100,000〜1,000,000程度のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の5%水溶液が市販されており、これらの市販品(日本油脂社製;Lipidure−PMBシリーズ)を入手して使用することも可能であり、好ましい。糖残基を有する生体成分類似高分子としては、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシドが例示でき、このものは市販品(日本精化株式会社製「P−GEMA−S」)があるので、これを入手して使用することが可能であり、好ましい。また、その平均分子量は、10,000〜1,000,000のものが好ましい。アミノ酸残基を有する生体成分類似高分子としては、メタクリル酸やアクリル酸にアミノ酸がアミド結合をしたものを構成単量体とした重合体が挙げられる。このようなアミノ酸の例としては、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニンなどのアミノ酸やペプチド類が挙げられるが、これらの中では、メタクリル酸に塩基性アミノ酸であるL−リジンが結合したメタクリロイル−L−リジンの重合体であるポリメタクリロイル−L−リジン(岐阜セラック製造所製)が例示でき、好ましい。また、その平均分子量は1,000〜200,000のものが好ましい。これらの生体成分類似高分子の皮膚外用剤中での含有量は、0.0001重量%〜5重量%が好ましく、0.001重量%〜1重量%が更に好ましく、0.002重量%〜0.3重量%が特に好ましい。
【0012】
(製造例)
ポリメタクリロイル−L−リジンの製造例
炭酸水素カリウム5.51gを蒸留水100mlに溶解し、これにL−リジン塩酸塩9.13gを溶解し、さらにメタノール80mlを加えた。氷冷下、激しく撹拌しながら、メタクリル酸クロリド5.23gを約10分で滴下し、そのまま約2時間激しく撹拌した。反応液を濃塩酸でpH1〜2にした後、食塩を加え飽和させ、酢酸エチル100mlで3回抽出・洗浄した。洗浄後の水溶液に窒素ガスを30分通気した後、過硫酸カリウム100mgを加え溶解させ、3時間加熱環流した。室温まで冷却した後、メタノール中に注ぎ、沈殿を析出させた。静置後、上澄をデカンテーションにて捨て、析出物に水を加えて再度溶解した。これを、再度メタノール中に注ぎ込み、析出物を濾取した。この操作をもう一度繰り返して、析出物を濾取、乾燥し、目的重合体を白色粉末として得た(4.00g)。
【0013】
(2)本発明の必須成分であるコエンザイムQ10
本発明に使用されるコエンザイムQ10は、ユビキノン類(2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノン)の側鎖のイソプレン単位が10のユビキノン類であり、ユビデカレノン又は補酵素Q10とも呼ばれている。このものは、日本薬局方に記載されており、黄色〜橙色の粉末であり、鐘淵化学工業(株)や日清ファルマ(株)よりコエンザイムQ10の名称で販売されており、このような市販品を購入して使用することができる。このような、コエンザイムQ10は、外用剤中に0.001〜5質量%含有することが好ましく、0.01〜3質量%含有することがより好ましい。
【0014】
(3)本発明の皮膚外用剤。
本発明の皮膚外用剤は、前記生体成分類似高分子とコエンザイムQ10を必須成分として含有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の皮膚外用剤は、これら上記の成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を含有することができる。任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類などが好ましく例示できる。これらの中では、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどの抗菌性多価アルコールを1〜5質量%含有させる形態である。この様な形態を取ることにより、パラベンなどの刺激感を誘起する可能性のある成分の配合量を低下、乃至は、無配合とすることが出来るためである。これらの抗菌性多価アルコールを1〜5質量%含有し、パラベンを実質的に含有しない形態は特に好ましい。これらを常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤は製造することが出来る。
【0016】
尚、本発明の皮膚外用剤は、コエンザイムQ10を含有する皮膚外用剤に関するものであるが、コエンザイムQ10は、その抗酸化作用、を生かして医薬品の成分になっている様な成分であり、化粧料に適用した場合に、グリチルリチン酸ジカリウムのようなグリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸ステアリルのようなグリチルレチン酸エステル類などの抗炎症成分、アルコルビン酸リン酸エステル類、アスコルビン酸グルコシド、アルブチンなどの美白成分と組み合わせて医薬部外品として使用することも、本発明の効果的な使用法である。この場合の美白成分などの好ましい含有量は、美白効果が発現すると認められる濃度範囲が好ましく、アスコルビン酸リン酸エステル類であれば、3〜7.5質量%が好ましく、アスコルビン酸グルコシドであれば、3〜5質量%が好ましく、アルブチンであれば、2〜4質量%が好ましい。又、抗炎症成分の好ましい含有量は、グリチルリチン酸であれば、0.05〜0.1質量%、グリチルレチン酸ステアリルであれば、0.05〜0.1質量%が好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより得ることができる。本発明の皮膚外用剤の剤形は、特に限定されるものではないが、具体的には、クリーム、乳液、ローション、軟膏、パック、水性ゲル、浴用剤などが例示できる。皮膚貯留性を目的とすることを考慮すると、クリーム、乳液、パックなどが好ましい剤形といえる。
【0018】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
以下に示す処方に従って、皮膚外用剤を作成した。即ち、イ)、ロ)、ハ)の各成分を混合し、80℃に加熱した。撹拌下イ)に、徐々にロ)を加えて乳化し、さらにハ)を加えて、撹拌しながら冷却して、実施例1の乳液を得た。この実施例1において、Lipidure−HMを水に置換したものを比較例1、カーボポール940(ポリカルボキシビニルポリマー;BFGoodrich社製)に置換したものを比較例2とした。
【0020】
イ)
ベヘニルアルコール 0.5 質量%
スクワラン 10.0 質量%
ジメチコン 2.0 質量%
ソルビタンセスキステアレート 1.5 質量%
POE(45)ステアリン酸 1.0 質量%
グリチルレチン酸ステアリル 0.1 質量%
コエンザイムQ10 0.5 質量%
ロ)
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
1,2−オクタンジオール 0.5 質量%
グリセリン 5.0 質量%
Lipidure−HM(日本油脂製) 0.5 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.3 質量%
水 50.0 質量%
ハ)
水 22.5 質量%
水酸化カリウム 0.6 質量%
【実施例2】
【0021】
実施例1において、Lipidure−HMを、Lipidure−PMBに置換したものを実施例2とした。
【実施例3】
【0022】
実施例1において、Lipidure−HMを、P−GEMA−Sに置換したものを実施例3とした。
【実施例4】
【0023】
実施例1において、Lipidure−HMを、製造例で作成したポリメタクリロイル−L−リジンに置換したものを実施例4とした。
【0024】
(試験例1)
ヘアレスマウスの背部皮膚を採取し、余分な皮下組織を除去後、約3cmφにカットし、これを拡散セル(開口部直径2cm)に固定した。拡散セルのリザーバーにはtriton-xを添加したPBSを満たし、37℃の水槽内に置き、リザーバー内に入れた、マグネチックスターラーにて撹拌した。この拡散セルの上側である皮膚部分に、各種サンプル(実施例1,実施例2、実施例3、実施例4、および比較例1)を1gづつ載せ、開放系にて放置した。48時間後に、拡散セルより皮膚を外し、皮膚表面に残存している外用剤を拭い取った。皮膚を細かく裁断後、ホモジナイズし、クロロホルム/メタノール=1/1にて抽出、クロロホルム層を採取後、窒素ガスを吹き付けて乾燥後、一定量のメタノールでメスアップして、液体クロマトグラフィー(ODSカラム 4.6mm×150mm、カラム温度35℃、溶出溶媒;メタノール/エタノール(99.5%)=8/2、流速1ml/min、紫外部検知 275nm)にて定量し、皮膚中に貯留していたコエンザイムQ10の量を定量した。なお定量は、絶対検量線法にて行ない、製剤へのコエンザイムQ10の仕込量に対する皮膚貯留量の割合で評価した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
比較例1、比較例2に比べて、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4何れもコエンザイムQ10の皮膚貯留量が増大し、本発明の生体成分類似高分子と共存させることにより、コエンザイムQ10の皮膚貯留量増大効果が認められた。
【実施例5】
【0027】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様の方法で、実施例5の皮膚外用剤を作成した。
イ)
ベヘニルアルコール 0.5 質量%
スクワラン 10.0 質量%
ジメチコン 2.0 質量%
ソルビタンセスキステアレート 1.5 質量%
POE(45)ステアリン酸 1.0 質量%
グリチルレチン酸ステアリル 0.1 質量%
コエンザイムQ10 0.05質量%
ロ)
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.5 質量%
グリセリン 5.0 質量%
Lipidure−HM(日本油脂製) 2.0 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.3 質量%
水 50.0 質量%
ハ)
水 21.45質量%
水酸化カリウム 0.6 質量%
【実施例6】
【0028】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様の方法で、実施例6の皮膚外用剤を作成した。
イ)
ベヘニルアルコール 0.5 質量%
スクワラン 10.0 質量%
ジメチコン 2.0 質量%
ソルビタンセスキステアレート 1.5 質量%
POE(45)ステアリン酸 1.0 質量%
グリチルレチン酸ステアリル 0.1 質量%
コエンザイムQ10 2.0 質量%
ロ)
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.5 質量%
グリセリン 5.0 質量%
Lipidure−HM(日本油脂製) 0.02質量%
カルボキシビニルポリマー 0.3 質量%
水 50.0 質量%
ハ)
水 21.48質量%
水酸化カリウム 0.6 質量%
【実施例7】
【0029】
以下の処方に従って、実施例7の皮膚外用剤を作成した。イ)、ロ)、ハ)をそれぞれ、80℃に加温しておく、イ)に撹拌下ロ)を加え、さらにハ)を添加した。これをホモジナイザーにより、乳化粒子を整え、徐々に冷却して、乳化物を得た。
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
コエンザイムQ10 3.0 質量%
ロ)
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.5 質量%
ペミレンTR−2 1.0 質量%
トリメチルグリシン 0.5 質量%
グリチルリチン酸 0.1 質量%
水 50.0 質量%
ハ)
水酸化カリウム 0.6 質量%
水 21.3 質量%
【0030】
(試験例2)
試験例1と同様の方法で、実施例5、実施例6、実施例7に関して、皮膚貯留性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2の結果より、本発明の実施例5、実施例6、実施例7の皮膚外用剤のコエンザイムQ10の皮膚貯留効果は高いことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記一般式(I)で表される化合物をその構成単量体として、重合又は共重合することによって得られる生体成分類似高分子と(2)コエンザイムQ10を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【化1】

一般式(I)
(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Rは−(OC)−R、又はアミノ酸残基。Rはホスホリルコリン基、又は糖残基を表す。)
【請求項2】
前記生体成分類似高分子が、下記一般式(II)で表される部分構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】

一般式(II)
(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Rは−(OC)−R又は、アミノ酸残基。Rはホスホリルコリン基、又は糖残基を表す。)
【請求項3】
前記生体成分類似高分子が、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルとの共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシド、ポリメタクリロイル−L−リジンから選ばれる1種乃至2種以上である請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキルとの共重合体、におけるメタクリル酸アルキルのアルキル基がn−ブチル基であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
コエンザイムQ10の皮膚内貯留性を向上させることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
化粧料乃至は医薬部外品であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−219450(P2006−219450A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35969(P2005−35969)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】