説明

皮膚外用剤

【課題】
(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と、(b)カチオン性高分子とを組み合わせることにより、べたつきの原因となる親水性界面活性剤を配合せず、またぬるつきや皮膜感の原因となる水溶性高分子の配合量が少ない、低粘度でも水と油とが安定に含有された使用感の良い水中油型乳化組成物を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】
(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と、(b)カチオン性高分子と、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤と、(d)油と、(e)水とを含有する水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関するものであり、より詳細には、なじみが良く、非常にさっぱりとした使用感触をもちながら、比較的低粘度でも水と油とを安定に保持することができる水中油型乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚に適当な潤いを与えるために、水と油とを安定に含有する化粧料が求められている。通常の化粧料においては、乳化安定性を保たせるために、界面活性剤を用いて乳化粒子を細かくしたうえ、外相をポリアクリル酸や増粘多糖類等の水溶性高分子や水膨潤性の粘土鉱物などで増粘させる技術が用いられることが多い。
【0003】
化粧料は、肌に塗布した際の使用感触が大きく嗜好評価を左右するため、べたつかず、さっぱりした感触を付与させるために様々な工夫がなされている。安全性などの面から、ノニオン型界面活性剤は化粧品、食品などの分野で広く使われているが、水中油型乳化組成物の調製に用いられる親水性のノニオン性界面活性剤は、分子内にEO鎖やショ糖などを有するため特有のべたつきがある。また増粘剤として用いる水溶性高分子も、ぬるつきや乾燥間際のぺたぺた感を引き起こすため、これらの親水性界面活性剤、高分子をできるだけ減量、あるいは全く配合しない試みがなされている。
【0004】
界面活性剤を減量する試みとしては、アルキル変性ポリマーを界面活性剤の代わりに用いたり、両親媒性の粉末を用いたりする技術(特許文献1および2)がある。また、水溶性高分子増粘剤を減量する試みとしては、高分子の代わりに粘土鉱物を用いるのが一般的であるが、粘土鉱物のみでは経時で離水するなどの問題があり、通常ポリアクリル酸やキサンタンガムを粘土と併用して用いる。
【0005】
界面活性剤、高分子の両方を減量または抜去した乳化物を調製する試みとしては、外水相に合成膨潤性層状ケイ酸塩を配合し、内油相に油膨潤性または疎水化した粘土鉱物を配合して水中油型乳化組成物を調製する方法などが報告されている(特許文献3〜6)。しかし、水膨潤性粘土鉱物、油膨潤性粘土鉱物には界面活性能が乏しいため、油滴の合一や離水に対する安定性が不充分であり、製剤の安定性を保つには系の粘度を高くすることが必須であり、乳液状の製剤を調製することは困難であった。
【0006】
また、油相と水相の両方をそれぞれ固形油分、半固形の保湿剤で固化させることで、界面活性剤を用いずに安定な油水混合物を調製する技術も紹介されているが(特許文献7)、製剤が固化されているために硬い軟膏のような感触のクリームに限定される。
【0007】
また、有機変性層状ケイ酸塩粉体を用いることで、実質上界面活性剤を含まず、さらに外相を増粘することなしに、安定な巨大エマルションを調製する試みがなされている(特許文献8)。しかしながらこの系では、外相を増粘していないために効率良く粒子を微細化することができず、粒径が0.5mm〜10mmのエマルションに限定されている。
【0008】
このように、親水性界面活性剤、水溶性高分子の配合量が少なく、かつ乳液状の水中油型乳化組成物を調製する技術は未だ確立されていなかった。ここでいう「乳液状」とは、容器を傾けると流れる程度の粘度を有する製剤のことで、より具体的には25℃において、粘度1000〜13000mPa・sの製剤を指す。
【0009】
水膨潤性層状ケイ酸塩に高分子を併用して乳化を行なう方法としては、ノニオン性の高分子あるいはアニオン性の高分子と併用するのが一般的である。具体的には、水膨潤性粘土+キサンタンガム等(特許文献9)、ベントナイト+特定の(メタ)アクリル酸共重合体(特許文献10)、粘土鉱物+アクリル酸系吸水性ポリマー(許文献11)、その他(特許文献12〜14)などである。ノニオン性あるいはアニオン性高分子と水膨潤性層状ケイ酸塩とは相互作用がほとんどないため、増粘効果としては相加効果しかなく、乳化安定性を保つためには相応の配合量を確保しなくてはならず、高分子のぬめり感の少ない製剤を調製するには到らなかった。
【0010】
水膨潤性層状ケイ酸塩にカチオン性の高分子を併用する例も少ないが存在する。具体的には、水膨潤性粘土とカチオン性高分子である水溶性キチンを併用することにより、両者の配合量が比較的少なくても安定性の良いゲルが得られることが示されている(特許文献15)。しかしながら、界面活性剤量を減量できるかどうかについては触れていない。また、水膨潤性粘土と特定の4級アンモニウムポリマーを併用した増粘組成物の検討(特許文献16)では、界面活性剤量を減量した乳化物が調製できるかどうかについては触れていない。
【特許文献1】特表2001−518111号公報
【特許文献2】特開平8−169808号公報
【特許文献3】特開2002−47121号公報
【特許文献4】特開2002−370917号公報
【特許文献5】特開2003−34609号公報
【特許文献6】特開2006−1913号公報
【特許文献7】特許第3648249号公報
【特許文献8】特開2004−2275号公報
【特許文献9】特開昭61−194014号公報
【特許文献10】特開昭56−47477号公報
【特許文献11】特開平11−188253号公報
【特許文献12】特開平10−45565号公報
【特許文献13】特開2002−191959号公報
【特許文献14】特開2006−241152号公報
【特許文献15】特開昭63−275507号公報
【特許文献16】特表平4−500522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、べたつきの原因となる親水性界面活性剤を配合せず、またぬるつきや皮膜感の原因となる水溶性高分子の配合量が少ない、低粘度でも水と油とが安定に含有された使用感の良い水中油型乳化組成物を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記従来の問題点を解決すべく鋭意研究をした結果、
(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と、(b)カチオン性高分子と、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤と、(d)油と、(e)水とを組み合わせることによって、低粘度でも乳化安定性が良好で、べたつかず、なじみのよい使用性を有する水中油型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、組成物全量に対し、(a)水膨潤性層状ケイ酸塩を0.5〜5.0質量%と、(b)カチオン性高分子を0.01〜0.5質量%と、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤を0.05〜0.7質量%と、(d)油を1.0〜30質量%と、(e)水とを含有する水中油型乳化組成物に関する。
【0014】
また本発明は、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤の配合量が、(d)油の配合量の5質量%以下である前記水中油型乳化組成物に関する。
【0015】
また本発明は、25℃において、粘度が1000〜13000mPa・Sである前記水中油型乳化組成物に関する。
【0016】
また本発明は、(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と(b)カチオン性高分子の配合重量比が、100:1〜10:1であるである水中油型乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水中油型乳化組成物は、低粘度でも乳化安定性が良好で、べたつかず、なじみのよい使用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の水中油型乳化組成物は、(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と、(b)カチオン性高分子と、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤と、(d)油と、(e)水とを必須成分として含有する。
【0019】
本発明の水中油型乳化組成物に用いる(a)水膨潤性層状ケイ酸塩は、膨潤性すなわち水中で結晶層間に水が侵入して膨潤する性質を有するものであり、天然物でも合成により得られるものでも構わない。なお、水膨潤性層状ケイ酸塩は、水中で薄片状の微結晶となって分散する。本発明において用いられる水膨潤性層状ケイ酸塩としては、一般に、天然または合成のNa型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物およびバーミキュライトやヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイテライト、モンモリナイト、ノントロナイト、ベントナイト等のスメクタイト族粘土鉱物、またはこれらの置換体や誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。なお、前記置換体には、層間イオンのNaあるいはLiイオンの一部がKイオン置換されているもの、四面体シートのSiイオンの一部がMg2+イオンで置換されているものが含まれる。
【0020】
市販品としては、ソマシフME−100(コープケミカル(株)製の合成膨潤性雲母)、SUBMICA E(仏国、LCW社製の合成膨潤性雲母)、ルーセンタイトSWN(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、ルーセンタイトSWF(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、ダイモナイト(トピー工業(株)製の合成膨潤性雲母)、ラポナイトXLG(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、ラポナイトRD(英国、ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)、サーマビス(独国、ヘンケル社製合成ヘクトライト類似物質)、スメクトンSA−1(クニミネ工業(株)サポナイト類似物質)、ベンゲル(豊順洋行(株)販売の天然モンモリロナイト)、クニピアF(クニミネ工業(株)販売の天然モンモリロナイト)、ビーガム(米国、バンダービルト社製の天然サポナイト)、ベントンEW(米国、エレメンティス社の天然ヘクトライト)等が挙げられる。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物における前記(a)の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.5〜5.0質量%であり、好ましくは1.0〜3.0質量%である。0.5量%未満では、乳液としての充分な粘度を得られず、また5.0質量%を越えて配合すると、水膨潤性粘土特有のきしみ感が感じられるようになり、外観もクリーム状となる。
本発明の水中油型乳化組成物中には、水膨潤性層状ケイ酸塩の1種、又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物に用いる(b)カチオン性高分子は、具体的には、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性ポリマー[市販品としては、マーコート(ナルコ社製)等]、ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体カチオン性ポリマー[市販品としては、マーコート550(ナルコ社製)等]、また第4級窒素含有セルロースエーテル[市販品としては、ポリマーJR -400、ポリマーJR-125、ポリマーJR-30M(ダウケミカル社製)、カチナールHC-200、カチナールLC‐200(東邦化学工業株式会社製)等]、また第4級窒素含有ローカストビーンガム、第4級窒素含有グアガム、またはポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン、タロイルアミンの共重合体[市販品としては、ポリコートH(西独ヘンケル社製)等]、ポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、ヤシ油アルキルアミン、ジプロピレントリアミンの縮合物[市販品としては(ポリコートNH)(西独ヘンケル社製)等]、またはビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物[市販品としては、ガフコート755、ガフコート734(米国GAF社製)等]等が挙げられる。これらのうち、本発明においては、第4級窒素含有セルロースエーテルが好ましく用いられる。窒素含有率が高いほど水膨潤性ケイ酸塩との相互作用が強く、高すぎると離水の原因となることがある。望ましくは0.1〜数%である。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物における前記(b)の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.01〜0.5質量%であり、好ましくは0.02〜0.2質量%である。0.01量%未満では、水膨潤性層状ケイ酸塩との相互作用が弱く、増粘効果が低い。また0.5量%より多く配合すると、高分子の皮膜感が感じられるようになり、好ましくない。
本発明の水中油型乳化組成物中には、カチオン性高分子の1種、又は2種以上を組み合わせて配合することができる。本発明では、分子量が数万〜数100万程度のカチオン性高分子が好ましく用いられる。
【0024】
水膨潤性層状ケイ酸塩(以下、粘土鉱物と記載する場合がある)は、表面部と端面部に電荷を有している。一般的に端面は低pH〜中性領域では正に、高pHでは正に帯電しているが、表面部は常に負に帯電しており、粘土粒子のゼータ電位は負である。従ってカチオン性高分子と混合すると、水膨潤性層状ケイ酸塩との静電的相互作用により凝集が起こり複合体を形成して、その結果増粘する。水膨潤性層状ケイ酸塩とカチオン性高分子とが相互作用により複合体を形成していることは、IRによっても確認できるが、もっと簡便には外観が白く濁ることによっても確認できる。水膨潤性層状ケイ酸塩とカチオン性高分子との相互作用については古くから土壌改良の分野で利用されてきたが、化粧品や食品などに応用された例はほとんどない。このような水膨潤性層状ケイ酸塩と高分子の相互作用は、ノニオン性高分子、またはアニオン性高分子では全くないか、非常に弱く、混合しても増粘効果はほとんどないか少ない。従って、水膨潤性層状ケイ酸塩とカチオン性高分子の混合物を用いることによって、両者ともに少ない配合量で目的の粘度のゲルを作ることが可能である。
【0025】
(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と(b)カチオン性高分子の配合比は(a):(b)=100:1〜10:1であることが好ましい。100:1よりもカチオン性ポリマーの配合比が少なくても、10:1より多くても、混合することによる増粘の相乗効果が弱くなる。
【0026】
水膨潤性層状ケイ酸塩とカチオン性高分子との相互作用により得られた複合体は、弱い界面活性能を有するため、界面活性剤を配合しなくとも、粗大な粒子の水中油型乳化組成物を調製することができる。しかしながら、界面活性剤を配合しないものは、シェアにより容易に乳化破壊されるため安定性が悪く、また油浮きも見られる。
【0027】
そこで、油水界面張力を下げる目的で油相中にノニオン性の界面活性剤を少量配合した結果、微細な乳化粒子が得られ、安定な水中油型乳化組成物を調製できることを見出した。水膨潤性層状ケイ酸塩とカチオン性高分子の複合体が、弱い親水性界面活性剤としての機能を有しているため、親水性界面活性剤や親水性のノニオン性界面活性剤ではなく、よりべたつきの少ない疎水性であるHLB8以下のノニオン性界面活性剤を用いて安定な水中油型乳化組成物が調製できるのである。また、弱い親水性界面活性剤としての機能を有することで、油水界面に複合体が吸着し、低粘度でも乳化粒子を合一から防ぐ役割を果たしている。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物に用いる(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤の具体的なものとしては、ポリオキシエチレン付加(以下POEと略す)オレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEラウリルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE−デシルペンタデシルエーテル、POE−デシルテトラデシルエーテル、POE−デシルテトラデシルエーテル、POE−オクチルデシルエーテル等のエーテル型活性剤、およびPOE(硬化ヒマシ油、POE脂肪酸モノエステル、POE脂肪酸ジエステル、POEソルビタン脂肪酸エイテル等のエステル型活性剤、更にPOEグルセリルモノイソステアレート、POEグルセリルトリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤、及びデカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、テトラグリセリルジイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノオレート等のグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エーテル型界面活性剤、ショ糖テトラエルカ酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル、ノニオン変性シリコーン活性剤、例えば下記式(I)で示されるジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等の変性シリコーン、
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表し;mは平均で1〜150の数を表し;nは平均で1〜50の数を表し;a、bは平均で0〜35の数を表す)
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物における前記(c)の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して0.05〜0.7質量%である。0.05%未満では乳化安定性を向上する効果がなく、また0.7質量%より多く配合すると、親水性界面活性剤ほどではないにせよべたつきが感じられるようになり、場合によっては油中水型乳化組成物が調製されてしまう。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物に用いる(d)油は、通常化粧料中に配合される油分であれば、特に限定されない。例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−エチルヘキサン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート等が挙げられる。また、天然油として、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体等のポリエーテル変性シリコーン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン、高重合ジメチルシロキサンメチル(アミノプポピル)シロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン等の各種誘導体を含むシリコーン類などが挙げられる。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物における(d)成分の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して1.0〜30質量%である。1質量%より少ないと油分の保湿効果が得られず、また30質量%より多いと油っぽい感触となる上に油浮きが見られるようになり、場合によっては油中水型乳化組成物が調製されてしまう。本発明の乳化組成物は水膨潤性ケイ酸塩を含んでいるために、通常の乳化組成物と比較して油分のあぶらっぽさは軽減される傾向にある。
【0032】
本発明に配合される(c)成分は(d)成分の5質量%以下であることが好ましい。5質量%よりも多く配合しても、界面活性効果は向上しないばかりか、界面活性剤のべたつき感が感じられるようになる。
【0033】
本発明に配合される(e)水は、通常、皮膚外用剤や化粧料中に配合される水であれば、特に限定されない。本発明の水中油型乳化組成物における(e)成分の配合量は、乳化組成物全量に対して、50〜99質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の水中油型乳化組成物は、(a)水膨潤性層状ケイ酸塩及び(b)カチオン性高分子を用いて(e)水を増粘した外相に、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤と(d)油を混合した油相を加えて乳化させることによって得られる。25℃における粘度は、1000〜13000mPa・Sであることが好ましい。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物は、皮膚外用剤、化粧料、毛髪化粧料、洗浄料、毛髪洗浄料、メイク落し、医薬品、医薬部外品に好ましく用いられる。使用形態としては、例えば、乳液や、美容液、日焼け止め、洗浄料、クリーム、パック等、任意の形態で使用できる。
【0036】
さらに、本発明による水中油型乳化組成物には、前述した必須成分に加え、必要に応じて他の成分を、本発明の所期の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。
【0037】
適宜配合される他の成分として、例えばカルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン等の保湿剤、エタノール等の低級アルコール、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤等が挙げられる。
【0038】
また、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチヂン等のアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩と塩酸塩、アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル(塩)、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、4−メトキシサリチル酸塩、セフォラチン、プラセンタエキ等の各種薬剤等が挙げられる。しかしながら、塩類は水膨潤性ケイ酸塩の凝集を促進するので、配合量は数%以下に留めることが望ましい。
【0039】
さらに、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の有機溶媒、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコール等で抽出した天然エキス、色素、中和剤、酸化防止剤、香料、精製水等が挙げられる。
【0040】
さらに、水溶性高分子、油溶性高分子も配合が可能であるが、本発明の特長であるさっぱり感が失われるため多量の配合は望ましくない。また、なじみ感などの使用性を向上させる意味で、アニオン性界面活性剤や、高HLBのノニオン性界面活性剤などの各種親水性を少量配合することも可能である。また、水膨潤性ケイ酸塩以外の各種粉末や顔料を配合することも可能である。
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。配合量は全て、組成物全量に対する質量%で表す。
【0042】
<実施例1〜3、比較例1〜6の製造方法>
表1に示す処方に基づき、水膨潤性ケイ酸塩を水に分散した後に、1.0質量%に調製した高分子水溶液を加えてホモミキサーで撹拌してゲル(水相)を得た。次に、ゲルの状態、使用性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
<ゲル状態の評価基準>
各試料の調製1日後の状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:特に問題なくなめらかなゲルが調製できた
△:ゲルが調製できたが離水、またはやや不均一な状態(ママコ状)であった
×:ゲルができなかった(粘度が出なかった)、著しく離水した
【0044】
<各種使用性の評価基準>
[使用性(ぬるつきのなさ)]
各試料の使用性(ぬるつきのなさ)を専門パネル1名の実使用試験によって評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価)
◎: 全くぬるつきを感じないと評価した
○: わずかにぬるつきを感じるが、使用上問題のない程度であると評価した
△: ややぬるつくと評価した
×: 著しくぬるつくと評価した
【0045】
[使用性(べたつき感のなさ)]
各試料の使用性(べたつき感のなさ)を専門パネル1名の実使用試験を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価)
◎: 全くべたつきを感じないと評価した
○: わずかにべたつきを感じるが、使用上問題のない程度であると評価した
△: ややべたつくと評価した
×: 著しくべたつくと評価した
【0046】
【表1】

【0047】
(*1)クニピアF(クニミネ工業社製)
(*2)ポリマーJR−400(ダウケミカル社製)
表1の結果より、水膨潤性ケイ酸塩とカチオン性高分子と適当な比率で混合したときのみに、離水のない安定で使用性に優れた低粘度のゲルが調製できることがわかる。
【0048】
<実施例4〜6、比較例7〜15の製造方法>
表2・3に示す処方に基づき、水膨潤性ケイ酸塩を水に分散した後に、1.0質量%に調製した高分子水溶液を加えてホモミキサーで撹拌して水相を調製し、これに、予めノニオン性界面活性剤と油を混合した油相を加えてホモミキサーで攪拌して乳化させることによって水中油型乳化組成物を得た。次に、経時の乳化安定性、使用性を評価した。結果を表2・3に示す。
【0049】
<経時の乳化安定性の評価基準>
各試料を40℃で3ヶ月間保存後に肉眼及び顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:乳化粒子の大きさ、外観ともに調製直後と変化なし
○:乳化粒子にやや変化があるものの、水または油の解離には至っていない
△:一部に水または油の解離がみられる
×:完全に水と油が解離している
【0050】
[使用性(しっとり感)]
各試料の使用性(しっとり感)を専門パネル1名の実使用試験により評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価)
◎: しっとりすると評価した
○: ややしっとりする評価した
△: あまりしっとりしないと評価した
×: しっとりせずむしろかさつくと評価した
【0051】
【表2】

(*1)スメクトンSA−1(クニミネ工業(株))
(*2)ポリマーJR−400(ダウケミカル社製)
【0052】
【表3】

(*1)ラポナイトXLG(英国、ラポート社製)
(*2)SUBMICA E(仏国、LCW社製)
(*3)SUBMICA N(仏国、LCW社製、非膨潤性合成雲母)
(*4)カチナールLC−200(東邦化学工業株式会社製)
【0053】
以上の結果より、水膨潤性ケイ酸塩とカチオンポリマーと適当な比率で混合し、さらに疎水性のノニオン性界面活性剤と油分量を適正配合したときのみに、安定でかつべたつき感やぬるつきのない、しかもしっとりするといった使用性に優れた低粘度の乳液が調製できることが示された。また、シリコーン油などを配合する場合には、ノニオン性のシリコーン系界面活性剤を用いればよいことが示された。
【0054】
以上のように、水膨潤性ケイ酸塩とカチオンポリマーと適当な比率で混合し、さらに疎水性のノニオン性界面活性剤と油分量を適正配合したときのみに、安定でかつべたつき感やぬるつきのない、しかもしっとりするといった使用性に優れた低粘度の水中油型乳化組成物が調製できることが示された。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の水中油型乳化組成物の実施例を示す。配合量は全て、組成物全量に対する質量%である。水膨潤性ケイ酸塩を水に分散した後に、1.0質量%に調製した高分子水溶液を加えてホモミキサーで撹拌して水相を調製し、これに、予めノニオン性界面活性剤と油を混合した油相を加えてホモミキサーで攪拌して乳化させることによって各水中油型乳化組成物が得られる。
【0056】
実施例7:水中油型保湿乳液
精製水 to100
グリセリン 5.0
水膨潤性ケイ酸塩(クニピアF:クニミネ工業社製) 3.0
カチオン性高分子(ポリマーJR−400:ダウケミカル社製) 0.05
流動パラフィン 10.0
ワセリン 3.0
ホホバオイル 2.0
ジイソステアリン酸ジグリセリン 0.4
N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.1
リン酸三ナトリウム 0.01
防腐剤 適量
【0057】
実施例8:日中用水中油型保湿乳液
精製水 to100
1,3−ブチレングリコール 8.0
カチオン性高分子(カチナールHC−200:東邦化学工業株式会社製) 0.05
キサンタンガム 0.05
水膨潤性ケイ酸塩(ラポナイトXLG:ラポート社製合成ヘクトライト類似物質)2.0
2エチルヘキサン酸エチル 8.0
オクチルメトキシシンナメート 5.0
ジメチコン 5.0
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.0
POE(8)グルセリルモノイソステアレート 0.5
酸化チタン 2.0
金属封鎖剤 適量
防腐剤 適量
100.0
【0058】
実施例9:水中油型美白乳液
精製水 to100
ジプロピレングリコール 5.0
水膨潤性ケイ酸塩(スメクトンSA−1:クニミネ工業(株)サポナイト類似物質) 1.5
カチオン性高分子(マーコート550:ナルコ社製) 0.1
アルブチン 2.0
ワセリン 3.0
スクワラン 5.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 3.0
ステアリルアルコール 0.5
ショ糖モノステアリン酸エステル 0.05
金属封鎖剤 適量
防腐剤 適量
【0059】
実施例10:水中油型メーククレンジング乳液
精製水 65.0
ポリエチレングリコール400 5.0
ジプロピレングリコール 3.0
POE14・POP7ランダム共重合体 3.0
カチオン性高分子(カチナールLC‐200:東邦化学工業株式会社製) 0.1
水膨潤性ケイ酸塩(ビーガム:バンダービルト社製) 2.5
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5.0
エチルヘキサン酸エチル 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 8.0
POE・POBブロック共重合体 1.0
ポリエチレン粉末 1.0
pH緩衝剤 適量
防腐剤 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全量に対し、(a)水膨潤性層状ケイ酸塩を0.5〜5.0質量%と、(b)カチオン性高分子を0.01〜0.5質量%と、(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤を0.05〜0.7質量%と、(d)油を1.0〜30質量%と、(e)水とを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
(c)HLB8以下のノニオン性界面活性剤の配合量が、(d)油の配合量の5質量%以下である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
25℃において、粘度が1000〜13000mPa・Sである請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
(a)水膨潤性層状ケイ酸塩と(b)カチオン性高分子の配合重量比が、100:1〜10:1である、請求項1乃至3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。

【公開番号】特開2009−62311(P2009−62311A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231022(P2007−231022)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】