説明

皮膚洗浄料組成物

【課題】殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防する水溶性の有効成分を安定に配合でき、洗い流しやすく、かつ、洗浄後の保湿感に優れた皮膚洗浄料組成物の提供。
【解決手段】第4級アンモニウム塩型殺菌剤等の成分(A成分)と、HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)と、HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)と、40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)と、40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/sである流動パラフィン(D2成分)と、水(E成分)と、を含み、前記E成分の皮膚洗浄料組成物における含有量が0.1質量%〜3質量%であり、前記D1成分及び前記D2成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量との和(D1+D2)が70質量%〜90質量%であり、次式、0.5≦D1/(D1+D2)≦0.9、の関係を満たすこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手及び身体の洗浄料に好適に用いられる皮膚洗浄料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄分野において、従来、洗浄料組成物の洗浄成分として、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが用いられている。
しかしながら、高い洗浄力を有する洗浄成分を用いると、皮膚の汚れとともに、天然保湿因子(NMF)、細胞間脂質、皮脂などの皮膚の保湿に必要な成分も除去される問題がある。一方、低刺激性の洗浄力の低い洗浄成分を用いると、汚れ落ちが不十分である問題がある。皮膚の保湿に必要な成分が除去されると肌荒れを生じることから、十分な汚れ落ちが得られるとともに、洗浄、乾燥した後も保湿感が得られる必要がある。
こうした問題を解決するために、非イオン性界面活性剤と多量の油成分を含有する皮膚洗浄組成物が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この場合、油分特有の洗い流しにくさと乾燥後にべたつきを生ずる問題がある。
【0003】
マスカラの除去などのために用いられるクレンジング組成物の分野においては、HLB値の異なる2種類の非イオン性界面活性剤と液状油を用いて、すすぎ性を向上させるクレンジング組成物が提案されている(特許文献2参照)。また、洗浄力とすすぎ性を向上させるため、非イオン性界面活性剤と2種類の液状油を用いるクレンジング組成物が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、これらの油成分の多いクレンジング組成物においては、手及び身体の皮膚洗浄料組成物とする場合、殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防するための有効成分が水溶性で、保管環境によっては安定化しないことがあり、特に低温保管時に該有効成分が析出する問題がある。
したがって、皮膚洗浄料組成物としては、殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防する水溶性の有効成分を安定に配合でき、洗浄後の保湿感に優れたものが存在しないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−15021号公報
【特許文献2】特開2008−184415号公報
【特許文献3】特開2007−217302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防する水溶性の有効成分を安定に配合でき、洗い流しやすく、かつ、洗浄後の保湿感に優れた皮膚洗浄料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 第4級アンモニウム塩型殺菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム及びオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種(A成分)と、HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)と、HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)と、40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)と、40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/sである流動パラフィン(D2成分)と、水(E成分)とを含み、前記E成分の皮膚洗浄料組成物における含有量が0.1質量%〜3質量%であり、前記D1成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量と前記D2成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量との和(D1+D2)が70質量%〜90質量%であり、次式、0.5≦D1/(D1+D2)≦0.9、の関係を満たすことを特徴とする皮膚洗浄料組成物である。
<2> HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)が、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、及びジオレイン酸ポリエチレングリコールから選択される1種以上であり、HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)が、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、及びトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルから選択される1種以上である前記<1>に記載の皮膚洗浄料組成物である。
<3> 第4級アンモニウム塩型殺菌剤が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムの少なくともいずれかを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の皮膚洗浄料組成物である。
<4> オリゴ糖が、マルトテトラオースである前記<1>から<3>のいずれかに記載の皮膚洗浄料組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防する水溶性の有効成分を安定に配合でき、洗い流しやすく、かつ、洗浄後の保湿感に優れた皮膚洗浄料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の皮膚洗浄料組成物は、第4級アンモニウム塩型殺菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム及びオリゴ糖から選択される少なくとも1種(A成分)と、HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)と、HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)と、動粘度が異なる2種の流動パラフィン(D1成分及びD2成分)と、水(E成分)とを含み、必要に応じて、その他の成分を含んでなる。前記2種の流動パラフィンは、40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)と、40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/s(D2成分)とからなる。
【0009】
−A成分−
前記第4級アンモニウム塩型殺菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム及びオリゴ糖から選択される少なくとも1種(A成分)である。該A成分は、水溶性であるため、前記D1成分、及び前記D2成分への溶解度は低く、40℃における前記D1成分100mL、前記D2成分100mLに対する溶解度が各々1g未満である成分である。
ただし、前記皮膚洗浄料組成物の組成によると、理由は定かでないが、水(E成分)の含有量が少なくても、特に低温保管時の安定性が向上し、前記A成分の析出等が生じることを抑制することができる。即ち、本発明は、水(E成分)の含有量が少なくても、前記D1成分、及び前記D2成分(油性成分)に対する溶解度が低い前記A成分を安定に配合できるものである。
【0010】
前記第4級アンモニウム塩型殺菌剤は、手及び身体の洗浄において、殺菌作用を付与するために用いられる。また、グリチルリチン酸ジカリウムは、手及び身体の洗浄において、皮膚の荒れを改善又は予防するために用いられる。また、オリゴ糖は、手及び身体の洗浄において、皮膚の保湿又は皮膚の荒れを改善するために用いられる。前記A成分としては、目的に応じて1種又は2種以上を適宜選択して配合することができる。
【0011】
前記第4級アンモニウム塩型殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。これらの中でも、水溶性の成分として目的の配合効果を得る観点から、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが特に好ましい。
前記オリゴ糖は、2〜10個の単糖がグリコシド結合によって結合した化合物である。前記オリゴ糖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、アカルボース、スタキオース、グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロース等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、乾燥後のしっとり感、痒み抑制、肌荒れ回復の点で、マルトテトラオース及びマルトペンタオースなどの4〜5糖のマルオリゴ糖がより好ましく、水溶性の成分として目的の配合効果を得る観点から、マルトテトラオースが特に好ましい。
前記オリゴ糖の市販品としては、例えば、トレハ(林原化学研究所製)、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)、テトラップH(林原化学研究所製)、マルトトリオース(和光純薬工業社製)、マルトテトラオース(和光純薬工業社製)、マルトペンタオース(和光純薬工業社製)などが挙げられる。
【0012】
前記A成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量としては、成分の種類により最適濃度は異なるが、0.05質量%〜0.5質量%が好ましい。
【0013】
−B成分−
前記HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)は、前記C成分とともに、洗浄時に加わる水を取り込んでO/Wに転相し、自己乳化を起こすことで、洗い流し易さ、すすぎ易さを向上させる成分として用いられる。
【0014】
前記HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値;5〜8)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値;5〜8)、ジオレイン酸ポリエチレングリコール(HLB値;5〜8)が好ましく、その中でも、前記ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値;5〜8)がより好ましい。また、前記HLB値としては、6〜8が好ましい。
前記HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)の入手可能な市販品としては、例えば、日本エマルジョン社製のジイソステアリン酸PEG−8の400di−ISEX(HLB値;6)、ジイソステアリン酸PEG−12の600di−ISEX(HLB値;8)が挙げられる。
前記B成分は、前記C成分と併用して、洗浄時に加わる水を取り込んで転送して自己乳化する成分であり、併用することを条件として前記B成分のHLB値が5未満及び8を超える場合、自己乳化が起きにくく、洗い流し易さの点において不十分となる。
なお、前記HLB値は、界面活性剤を構成している親水基と疎水基の強さのバランスを示す値であり、その算出法は、小田、寺村らの有機性・無機性の各値から求められる下記式による。
HLB値=Σ無機性/Σ有機性×10
前記有機性・無機性の各値については、「界面活性剤の合成とその応用」(1957年、槇書店発行、小田、寺村著)に詳しく記載されている。
【0015】
前記B成分の前記皮膚洗浄料組成物に対する含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1質量%〜10質量%が好ましく、2質量%〜6質量%がより好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、洗い流し易さ、べたつきのなさの点において不十分となることがあり、10質量%を超えると、しっとり感の点において不十分となることがある。
【0016】
−C成分−
前記HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)は、前記B成分とともに、洗浄時に加わる水を取り込んでO/Wに転相し、自己乳化を起こすことで、洗い流し易さ、すすぎ易さを向上させる成分として用いられる。
【0017】
前記HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(HLB値;10〜16)、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(HLB値;10〜14)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(HLB値;10〜13)が好ましく、その中でも、HLB値が10〜12であるトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルがより好ましい。
前記HLB値が10〜12のトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルの入手可能な市販品としては、例えば、日本エマルジョン社製のトリイソステアリン酸PEG−30グリセリルのGWIS−330(HLB値;10)、トリイソステアリン酸PEG−40グリセリルのGWIS−340(HLB値;11)、トリイソステアリン酸PEG−50グリセリルのGWIS−350(HLB値:12)、が挙げられる。
前記C成分は、前記B成分と併用して、洗浄時に加わる水を取り込んで転送して自己乳化する成分であり、併用することを条件として前記C成分のHLB値が10未満及び16を超える場合、自己乳化が起きにくく、洗い流し易さの点において不十分となることがある。
【0018】
前記C成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4質量%〜23質量%が好ましく、乾燥後のしっとり感の点で、8質量%〜18質量%がより好ましい。
前記含有量が、4質量%未満であると、洗い流し易さやべたつきのなさの点において不十分になることがあり、23質量%を超えると、しっとり感の点において不十分になることがある。
【0019】
−D1成分−
前記40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)は、前記A成分を安定化させ、特に低温環境下においても析出・分離することがない高い安定性を付与するとともに、前記D2成分と併用することで、乾燥後のしっとり感を付与する成分として用いられる。
【0020】
前記D1成分としては、前記動粘度を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動パラフィン40−S(動粘度3.4mm/s〜5.4mm/s)、55−S(動粘度7.0mm/s〜9.0mm/s)、60−S(動粘度8.5mm/s〜10.5mm/s)、70−S(動粘度11.7mm/s〜13.7mm/s)、80−S(動粘度12.8mm/s〜14.8mm/s)、以上、三光化学工業社製、などが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
−D2成分−
前記40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/sである流動パラフィン(D2成分)は、乾燥後のしっとり感を付与する成分として用いられる。
【0022】
前記D2成分としては、前記動粘度を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動パラフィン、150−S(動粘度23.4mm/s〜27.4mm/s)、260−S(動粘度46.0mm/s〜52.0mm/s)、350−S(動粘度64.0mm/s〜70.0mm/s)、以上、三光化学工業社製、などが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記D1成分及び前記D2成分の動粘度としては、JIS K2283に基づいて測定することができ、具体的には、一定容量(25mL)の試料が、40℃の条件下でウベローデ型粘度計の毛細管を自然流下するのに要した時間(秒)を測定した値を前記動粘度の値とすることができる。
【0024】
前記D1成分は低動粘度の流動パラフィンであり、前記D2成分は高動粘度の流動パラフィンであるが、前記D1成分及びD2成分のいずれかに代えて、前記D1成分の動粘度と前記D2成分の動粘度との間の動粘度を有する流動パラフィン(例えば、40℃における動粘度が14.8mm/sを超え23.4mm/s未満である流動パラフィン)を用いても、前記皮膚洗浄料組成物の低温安定性の向上が図れない。前記皮膚洗浄料組成物を安定的に配合することができ、しっとり感を得るためには、前記低動粘度のD1成分と前記高動粘度のD2成分とを所定の質量比で併用することが必要である。
このような結果が得られる理由は定かではないが、本発明は、実験を通じて得られた前記結果に基づくものであり、従来技術からは予期できない構成及び有利な効果である。
【0025】
また、前記D1成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量と、前記D2成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量との和(D1+D2)は、70質量%〜90質量%であり、75質量%〜85質量%が好ましい。
前記D1+D2(質量%)が、70質量%未満であると、しっとり感の点において不十分になることがあり、90質量%を超えると、洗い流し易さの点において不十分になることがある。
【0026】
また、前記皮膚洗浄料組成物において、前記D1成分の含有量(D1:質量%)と前記和(D1+D2:質量%)とは、次式、0.5≦D1/(D1+D2)≦0.9、の関係を満たし、更に、該D1/(D1+D2)の値は、0.6〜0.8の範囲にあることが好ましい。
前記D1/(D1+D2)の値が、0.5未満であると、低温安定性が悪くなることがあり、0.9を超えると、乾燥後のしっとり感の点において不十分になることがある。
【0027】
−水(E成分)−
前記水は、前記皮膚洗浄料組成物の安定性と外観透明性を向上させる成分である。
前記水の前記皮膚洗浄料組成物における含有量としては、0.1質量%〜3質量%であり、0.1質量%〜2質量%が好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であると、外観透明性が低く、分離を生じて安定性が悪くなることがあり、3質量%を超えると、外観透明性が低く、分離を生じて安定性が悪くなることがある。
【0028】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限はなく、皮膚洗浄料組成物に通常用いられている成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量を配合することができる。
前記その他成分としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、無機粉体、有機粉体等の水不溶性粉体、高分子化合物、保湿剤、ビタミン類、アミノ酸類、紫外線吸収剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、消臭剤、防腐剤、包接化合物、溶剤、多価アルコール等が挙げられる。
【0029】
−皮膚洗浄料組成物の製造方法−
前記皮膚洗浄料組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、皮膚洗浄料組成物の常法に準じて調製することができる。
前記皮膚洗浄料組成物を調製する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、剪断力と全体混合できる複数の攪拌羽根、例えば、プロペラ、タービン、ディスパーなどを備えた攪拌装置が好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0031】
(実施例1〜33及び比較例1〜16)
下記表1〜表8に示す組成に基づき、下記に示す製造方法により、実施例1〜33及び比較例1〜16における皮膚洗浄料組成物を製造した。
得られた実施例1〜33及び比較例1〜16における皮膚洗浄料組成物を下記の方法で評価した。その結果を下記表1〜表8に併せて示す。
下記表1〜表8において、ポリオキシエチレン鎖をPEGと表記した。即ち、B成分に関し、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)のポリエチレングリコールを、「ジイソステアリン酸PEG−4」のように表記し、また、C成分に関し、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(30E.O.)のポリオキシエチレングリセリルを、「トリイソステアリン酸PEG−30グリセリル」のように表記した。なお、各表中に示される各組成の単位は、いずれも質量%である。
【0032】
<製造方法>
約40℃の温度条件下で、HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)と、HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)と、40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)と、40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/sである流動パラフィン(D2成分)と、共通成分としての香料とを所定量ビーカーに添加後、パドルミキサーで攪拌し、B成分、C成分、D1成分及びD2成分からなる組成液Aを調製した。
また、別のビーカーにおいて、第4級アンモニウム塩型殺菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム及びオリゴ糖から選択される1種又は2種以上の成分(A成分)と、水(E成分)とを所定量添加後、パドルミキサーで攪拌し、A成分及びE成分からなる組成液Bを調製した。
攪拌しながら、所定ビーカーに前記組成液A及び前記組成液Bを添加し、パドルミキサーで十分攪拌することで、実施例1〜33及び比較例1〜16における皮膚洗浄料組成物を得た。
【0033】
(評価方法)
−皮膚洗浄料組成物の保存安定性−
高さ8cm、口径3cmの硬質透明ガラス瓶(容量55mL)に、実施例1〜33及び比較例1〜16における皮膚洗浄料組成物を50mL充填し、25℃、−5℃の各環境下において4週間保存した後、25℃における外観を観察し、下記判断基準に基づき、皮膚洗浄料組成物の保存安定性を評価した。
<判定基準>
◎:透明で、均一な状態
◎〜○:微濁で、均一な状態(観察時に黒を背景として初めて、微濁であることが認識できる)
〇:微濁で、均一な状態(観察時に黒を背景としなくとも微濁であることが認識できる)
×:沈殿物が発生、または相分離が発生
【0034】
−「洗い流し易さ」及び「乾燥後のしっとり感」−
洗い流し易さ、乾燥後のしっとり感は、専門評価パネラー5名が、実施例1〜33及び比較例1〜16の皮膚洗浄料組成物を使用して評価した。
洗い流し易さの評価方法としては、2mLを両手に延ばし、水ですすいだ時の洗い流し易さを評価した。
乾燥後のしっとり感の評価方法としては、タオルドライ後、手に残った水分を風乾し、乾燥後のしっとり感を評価した。
評価は、下記に示す評価基準に基づき5段階の評点を付け、各サンプルの評点の平均値をとり、下記判定基準に基づいて行った。
ここでいう、「洗い流し易さ」とは、すすぎ時の皮膚洗浄料組成物の流れ落ち易さのことをいう。また、「乾燥後のしっとり感」とは、タオルドライ後に手を揉み合わせ指先で触った際に感じた肌がうるおった状態のことをいう。
【0035】
−評価基準−
洗い流し易さ、乾燥後のしっとり感の各評価基準は、以下の通りである。
(評点):(評価)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:どちらともいえない
2点:悪い
1点:非常に悪い
【0036】
また、前記評価基準に基づく、流し易さ、乾燥後のしっとり感の各判定基準は、以下の通りである。
(判定基準):(評点の平均点)
◎:4.5点以上〜5点以下
◎〜〇:4.0点以上〜4.5点未満
○:3.0点以上〜4.0点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0点未満
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

【0044】
【表8】

【0045】
なお、上記表1〜表8に示される成分の詳細は、以下の通りである。
<A成分>
・塩化ベンザルコニウム 日油社製、ニッサンカチオンF2−50E
・塩化ベンゼトニウム ロンザジャパン社製、ハイアミン1622
・塩化セチルピリジニウム 和光純薬社製、塩化セチルピリジニウム
・グリチルリチン酸ジカリウム 丸善製薬社製、グリチルリチン酸二カリウム
・マルトテトラオース 林原商事製、テトラップ
<A’成分(比較成分)>
・ピロリドンカルボン酸ナトリウム 味の素株式会社製、PCAソーダ
・L−セリン 協和発酵バイオ株式会社製
<B成分>
・ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(6E.O.) HLB値5
日本エマルジョン社製、EMALEX 300di−ISEX
・ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(8E.O.) HLB値6
日本エマルジョン社製、EMALEX 400di−ISEX
・ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(12E.O.) HLB値8
日本エマルジョン社製、EMALEX 600di−ISEX
・ジステアリン酸ポリエチレングリコール(8E.O.) HLB値6
日本エマルジョン社製、EMALEX 400di−S
・ジオレイン酸ポリエチレングリコール(8E.O.) HLB値6
日本エマルジョン社製、EMALEX 400di−O
<B’成分(比較成分)>
・ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.) HLB値4
日本エマルジョン社製、EMALEX 200di−ISEX
・ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(5E.O.) HLB値9
日本エマルジョン社製、EMALEX GM−5
・ジステアリン酸ポリエチレングリコール(150E.O.) HLB値17
日本エマルジョン社製、EMALEX 6300di−ST
<C成分>
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(30E.O.)HLB値10
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−330
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(50E.O.)HLB値12
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−350
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(60E.O.)HLB値13
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−360
・イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(10E.O.) HLB値10
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−110
・ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.) HLB値10
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−220EX
・イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(60E.O.) HLB値16
日本エマルジョン社製、EMALEX GWIS−160EX
<D1成分>
・流動パラフィン(40−S、動粘度3.4mm/s)
三光化学工業社製、40−S
・流動パラフィン(60−S、動粘度9.3mm/s)
三光化学工業社製、60−S
・流動パラフィン(70−S、動粘度12.5mm/s)
三光化学工業社製、70−S
・流動パラフィン(80−S、動粘度14.8mm/s)
三光化学工業社製、80−S
<D2成分>
・流動パラフィン(150−S、動粘度23.4mm/s)
三光化学工業社製、150−S
・流動パラフィン(260−S、動粘度50.0mm/s)
三光化学工業社製、260−S
・流動パラフィン(350−S、動粘度70.0mm/s)
三光化学工業社製、350−S
<D’成分(比較成分)>
・流動パラフィン(100−S、動粘度18.2mm/s)
三光化学工業社製、100−S
【0046】
(実施例34:殺菌用ゲル組成物の調製)
下記の組成に従い、皮膚洗浄料組成物の一態様としての殺菌用ゲル組成物を常法により調製した。
塩化ベンザルコニウム(50%水溶液)*1 0.1質量%
グリチルリチン酸ジカリウム*2 0.1質量%
ジイソステアリン酸PEG−8(HLB6)*3 2.0質量%
トリイソステアリン酸PEG−30グリセリル(HLB10)*4 13.0質量%
流動パラフィン(動粘度3.4mm/s〜5.4mm/s)*5 61.8質量%
流動パラフィン*6 20.6質量%
(動粘度64.0mm/s〜70.0mm/s)
ビタミンE*7 0.1質量%
ポリエチレン末*8 0.3質量%
精製水 2.0質量%
合計 100.0質量%
D1+D2=82.4質量%
D1/(D1+D2)=0.75
*1:ニッサンカチオンF2−50E(日油社製)
*2:グリチルリチン酸二カリウム(丸善製薬社製)
*3:EMALEX 400di−ISEX(日本エマルジョン社製)
*4:EMALEX GWIS−330(日本エマルジョン社製)
*5:流動パラフィン40−S(三光化学工業社製)
*6:流動パラフィン350−S(三光化学工業社製)
*7:dl-αトコフェロール(DSMニュートリションジャパン社製)
*8:フロービーズCL−8007(住友精化社製)
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の皮膚洗浄料組成物は、殺菌性又は皮膚の荒れを改善及び予防する水溶性の有効成分を安定に配合でき、洗い流しやすく、かつ、洗浄後の保湿感に優れるため、例えば、ハンドソープなどの手洗用洗浄料、ボディソープなどの身体洗浄料などに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第4級アンモニウム塩型殺菌剤、グリチルリチン酸ジカリウム及びオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種(A成分)と、
HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)と、
HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)と、
40℃における動粘度が3.4mm/s〜14.8mm/sである流動パラフィン(D1成分)と、
40℃における動粘度が23.4mm/s〜70mm/sである流動パラフィン(D2成分)と、
水(E成分)とを含み、
前記E成分の皮膚洗浄料組成物における含有量が0.1質量%〜3質量%であり、
前記D1成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量と前記D2成分の前記皮膚洗浄料組成物における含有量との和(D1+D2)が70質量%〜90質量%であり、次式、0.5≦D1/(D1+D2)≦0.9、の関係を満たすことを特徴とする皮膚洗浄料組成物。
【請求項2】
HLB値が5〜8である非イオン界面活性剤(B成分)が、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、及びジオレイン酸ポリエチレングリコールから選択される1種以上であり、
HLB値が10〜16である非イオン界面活性剤(C成分)が、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、及びトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルから選択される1種以上である請求項1に記載の皮膚洗浄料組成物。
【請求項3】
第4級アンモニウム塩型殺菌剤が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムの少なくともいずれかを含む請求項1から2のいずれかに記載の皮膚洗浄料組成物。
【請求項4】
オリゴ糖が、マルトテトラオースである請求項1から3のいずれかに記載の皮膚洗浄料組成物。

【公開番号】特開2011−173862(P2011−173862A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275108(P2010−275108)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】