説明

皮膚状態改善または歯周疾患の治療効能を有するペプチド

本発明は、bFGF由来のペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物に関するものである。本発明のペプチドは、効能に優れるだけではなく、安定性が天然bFGFと比較して非常に高く、皮膚透過度に非常に優れている。したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、皮膚状態の改善または歯周疾患を治療するに、非常に優れた効能を発揮する。また、本発明のペプチドは、医薬、化粧品、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物に非常に有利に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性繊維芽細胞成長因子由来のペプチドを有効成分として含む皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維芽細胞と内皮細胞において、有糸分裂促進因子として繊維芽細胞成長因子が作用する。牛の脳または脳下垂体組織由来の繊維芽細胞成長因子(FGF)は、1974年Gospodarowicz(Nature 249: 123-127(1974))により最初に紹介された。脳から分離された有糸分裂促進因子は、脳下垂体から分離されたものと異なるものであることが追って報告された。これらは、類似した生物学的活性を有するが、アミノ酸配列及び等電点が相異なるため、これらの二つの因子に対し、それぞれ酸性FCFと塩基性FCFと命名した。酸性FGF(aFGF)及び塩基性FGF(bFGF)は、内皮細胞、平滑筋細胞、副腎皮質細胞、前立腺及び網膜上皮細胞、乏突起神経膠細胞、星状細胞、軟骨細胞、筋原細胞及び造骨細胞を含む、多数の中胚葉−及び神経外胚葉−由来細胞の一般的な増殖能力に影響を及ぼす一種のヘパリン結合成長因子(heparin binding growth factor) グループに属するものと分類されている(Burgess and Maciag, Ann. Rev. Biochem. 58:584(1989))。
【0003】
FGFは、細胞増殖を刺激する有糸分裂促進反応を誘導するだけではなく、大多数の細胞類型を刺激し、非有糸分裂促進方式で反応したりもする。これらの活性は、傷部位への細胞移動促進(走化性)、新しい血管形成の開始(脈管形成)、神経再生の調節(向神経性)、特定細胞蛋白質の発現、細胞外基質生成、及び治癒過程で重要な細胞生存の刺激または抑制を含む(Burgess, W.H., and Maciag, T. Ann. Rev. Biochem. 58:584-588(1989))。細胞成長促進作用と共に、これらの性質は、傷治癒を促進するための治療、血栓症、動脈硬化症などに対する治療などにおいて、繊維芽細胞成長因子の使用に関する根拠を提供する。したがって、FGFは、外傷の治癒を促進するために(Davidson, J. M., et al. J. Cell Bio. 100:1219-1227(1985))、心臓疾患及び外科手術で心筋層損傷を最小化するために(米国特許第4,378,347号)、並びに神経単位生存及び軸索拡大を増加させるために(Walicke, P., et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 83:3012-3016(1986))、提示された。
【0004】
bFGFは、分子量約18kDaに達する塩基性蛋白質(pI 9.58)であって、脳下垂体から主に分泌されて、多様な中胚葉由来細胞の成長を促進すると知られている。また、これは、血管内膜細胞及び平滑筋細胞の成長を促進する蛋白質であって、外傷治療及び脈管形成に著しい効能を奏し、コラーゲンとエラスチンの合成を増加させることにより、皮膚の弾力を維持し、正常的な細胞の成長を助け、傷の回復を促進して、その治癒作用を行うと知られている(Pilcher BK., et al. J. Biol Chem. 272(29):18147-18154(1997))。さらに、bFGFは、頭皮内の血液循環と毛根細胞を活性化すると報告されている(Kristen L. Mueller. et al. J. Neurosci. 22(2):9368-9377(2002))。
【0005】
しかしながら、このような血液及び組織に存在するポリペプチド成長因子の場合、その体内半減期が数分程度で極めて短いと知られており、特にbFGFの場合、その構造上に二硫化結合を形成しない4個のシステイン残基を有するため、特にその安定性に大きい影響を受けるという問題点がある。
【0006】
また、bFGFは、生物学的に不安定で、且つ物理化学的にも不均質であるため、治療効果が低下する場合があり、皮膚内透過率も非常に低いという問題点がある。
【0007】
したがって、bFGFの安定性及び透過率を高めて、生体外剤形として活用できる方法が切実に要求される実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、皮膚状態を改善し、歯周疾患を治療できるペプチド物質を開発するために、多様な種類のヒトbFGF由来ペプチドを製造及びスクリーニングして、その中、上述した効能に優れて且つ安定性にも優れているペプチドを選別することにより、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、bFGF由来ペプチドを含む皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、皮膚状態の改善または歯周疾患を治療する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物を製造するためのbFGF由来ペプチドの用途を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、安定性が改善された、変形されたbFGF由来ペプチドを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一様態によると、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の様態によると、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む、皮膚状態を改善または歯周疾患を治療する方法を提供する。
【0016】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物を製造するための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの用途を提供する。
【0017】
本発明者らは、皮膚状態を改善し、歯周疾患を治療できるペプチド物質を開発するために、多様な種類のヒトbFGF由来ペプチドを製造及びスクリーニングして、その中、上述した効能に優れて且つ安定性にも優れているペプチドを選択した。さらに、選択したヒトbFGF由来ペプチドのアミノ酸配列を変形し、熱、酸及びアルカリなどの物理化学的因子に対する安定性がより増加された変形ペプチドを開発した。
【0018】
本発明の組成物において、有効成分として利用されるペプチドは、bFGF由来の配列番号1のアミノ酸配列を含む。好ましくは、本発明におけるペプチドは、必須的に配列番号1のアミノ酸配列から構成されている。最も好ましくは、本発明におけるペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列から構成されている。
【0019】
本明細書において用語‘ペプチド’は、ペプチド結合により、アミノ酸残基がお互い結合されて形成された線形の分子を意味する。
【0020】
本発明のペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)により製造できる(Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))。
【0021】
従来開発されたbFGF由来ペプチドは、bFGFの拮抗剤の用途として開発された(例えば、米国特許第7,009,036号)。しかしながら、本発明のペプチドは、生体に適用時、天然bFGFと同一な機能または作用をする。即ち、従来のbFGF由来ペプチドは、生体に適用時、抗bFGF作用をするのに対し、本発明のペプチドは、bFGF作用を真似て生体内でbFGF作用をするという側面から、従来開発されたペプチドと異なっている。
【0022】
本発明の組成物は、皮膚状態の改善の効能または活性を有する。特に、本発明の組成物で有効成分として利用されるペプチドは、天然bFGFより分子量が遥かに少ないため、皮膚浸透率に非常に優れている。したがって、本発明の組成物を局所的に皮膚に塗布する場合、皮膚状態の改善を大きく達成することができる。より好ましくは、本発明の組成物による皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であり、最も好ましくは、シワの改善、皮膚弾力の改善、または皮膚老化の防止である。
【0023】
例えば、本発明で有効成分として利用されるペプチドは、繊維芽細胞または角質細胞の増殖を促進し、これらの細胞からプロコラーゲン、ラミニン、ヒアルロン酸及びフィブロネクチンの合成増加を誘導し、皮膚の角質細胞層、上皮層及び真皮層を再生または成長させることにより、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止または皮膚保湿の改善の治療効能を奏する。
【0024】
また、本発明で有効成分として利用されるペプチドは、天然bFGF(Kristen L. Mueller. et al. J. Neurosci. 22(2):9368-9377(2002))と同様に、頭皮内の血液循環と毛根細胞を活性化させて、毛髪周期において成長期を維持し、脱毛防止または発毛促進作用をする。
【0025】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、歯周疾患の治療効能を有して、前記組成物は、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物である。本明細書において用語‘歯周疾患治療用組成物’は、‘口腔保護用組成物(composition for tooth and mouth care)’または‘口腔清浄用組成物(composition for tooth and mouth cleaning)’に代替することができる。
【0026】
本発明のペプチドは、歯茎組織の繊維芽細胞の生理活性を促進して、迅速な歯茎傷の治癒を通じて、損傷された歯茎組織を再生することにより、歯周疾患を治療または予防することができる。
【0027】
本発明のペプチドは、それ自体が天然bFGFより非常に優れた安定性を示すが、ペプチドのアミノ酸残基を変形させることで、より一層安定性を向上させることができる。本発明の好ましい具現例によると、 配列番号1のアミノ酸配列において、少なくとも一つのアミノ酸は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール、最も好ましくは、アセチル基の保護基が結合されている。
【0028】
本明細書において用語‘安定性’は、インビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。上述の保護基は、生体内の蛋白質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0029】
より好ましくは、前記保護基が結合されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列において、N−末端またはC−末端、最も好ましくは、N−末端にあるTyr残基である。また、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列でC−末端にあるTyr残基の−COOHは、−OHまたは−NH2に変形させて、ペプチドの安定性を増加させることができる。
【0030】
本発明によるペプチド、好ましくは、保護基が結合された変形ペプチドは、N−末端及び/またはC−末端が保護されているため、37℃温度で優れた熱安定性を示し、また、酸とアルカリなどの物理化学的因子に対する安定性に優れている。したがって、本発明のペプチドは、長期保存性に優れているため、医薬品、医薬外品、化粧品及び口腔用品のような、長期間貯蔵が要求される製品に有利に適用できる。
【0031】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物と化粧品組成物として製造できる。
【0032】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である。
【0033】
本明細書において用語‘薬剤学的有効量’は、上述のペプチドの効能または活性を達成するに十分な量を意味する。
【0034】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合する薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0035】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口、好ましくは、非経口で投与でき、非経口投与である場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与できる。
【0036】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々である。一方、本発明の薬剤学的組成物の好ましい投与量は、1日当たり、0.0001〜100μgである。
【0037】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0038】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの化粧品学的有効量、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物である。
【0039】
本明細書において用語‘化粧品学的有効量’は、上述の本発明の組成物の皮膚改善効能を達成するに十分な量を意味する。
【0040】
本発明の化粧品組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造することができる。
【0041】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、または酸化亜鉛などが利用できる。
【0042】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、またはポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体をさらに含むことができる。
【0043】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用されて、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、またはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0044】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが利用できる。
【0045】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0046】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのペプチドと担体成分の他に、化粧料組成物に通常的に利用される成分を含むが、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常的な補助剤を含むことができる。
【0047】
本発明の他の様態によると、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸の少なくとも一つのアミノ酸がアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基と結合されており、天然塩基性繊維芽細胞成長因子より安定性が高いペプチドを提供する。
【0048】
本発明の保護化ペプチドは、上述の本発明の組成物で有効成分として利用されて詳細に説明されているため、その説明を省く。
【0049】
本発明で有効成分として利用されるペプチドは、ヒトbFGFと同様な機能または作用をすることができて、その生理活性度も天然bFGFとほぼ等しい水準である。また、本発明のペプチドは、安定性が、天然bFGFと比べ、非常に優れており、皮膚透過度が非常に高い。したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、皮膚状態の改善または歯周疾患を治療するに非常に優れた効能を発揮する。また、本発明のペプチドは、医薬、化粧品、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物に非常に有利に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0051】
実施例1:
Fmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)-Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-Rinkアミドレジンの合成
Fmoc-Rinkアミドレジン(Nova Biochem Cat No. 01-64-0013)1.42g(1mmole)を正確に測量して反応容器に入れ、メチレンクロライド(MC)10mlを加えて3分間攪拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れて、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、DMFで2回、MCで1回、再びDMFで3分間1回洗浄した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc-Tyr(tbu)-OH(Nava Biochem, USA) 2mmole、HoBt 2mmole、及びBop 2mmoleを入れた後、攪拌してよく溶解させた。反応器に4mmoleのDIEA(N,N’-Diisopropyl ethylamine)を分画で2回にかけて入れて、全ての固体が溶解されるまで少なくとも5分間攪拌した。溶解されたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンが入っている反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で5分間ずつ3回攪拌し、未反応残留物を除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Ninhydrine test)を利用して反応程度を点検した。脱保護溶液で上記と同様に2回脱保護反応し、Tyr(tbu)-Rinkアミドレジンを製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再びカイザーテストを行った後、上記と同様にアミノ酸付着実験を行った。図1のように選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc-Trp(Boc), Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Tyr(tBu), Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Arg(pbf), Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Arg(pbf)、及びFmoc-Tyr(tBu)の順に連鎖反応を行った。製造されたペプチジルレジンをDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、P25下で真空に減圧して完全に乾燥し、Fmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)-Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-Rinkアミドレジンを製造した。
【0052】
実施例2:
Fmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)-Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)- Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinの合成
クロロトリチルクロライドレジン(Chloro trityl chloride resin:CTL resin, Nova Biochem Cat No. 01-64-0021)700mgを反応容器に入れて、メチレンクロライド(MC)10mlを加えて3分間攪拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れて、Fmoc-Tyr(tBu)-OH 200mmole及びDIEA 400mmoleを入れた後、攪拌してよく溶解し、1時間攪拌しながら反応させた。反応後洗浄して、メタノールとDIEA(2:1)をMCに溶解してレジンと10分間反応させた後、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去してDMFを10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れて、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、DMFで2回、MCで1回、再びDMFで3分間1回洗浄して、Tyr-(tBu)-CTLレジンを製造した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc-Trp(Boc)-OH(Novabiochem, USA) 200mmole、HoBt 200mmole、及びBop 200mmoleを入れた後、攪拌してよく溶解させた。反応器に400mmoleのDIEAを分画で2回にかけて入れて、全ての固体が溶解されるまで少なくとも5分間攪拌した。溶解されたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンが入っている反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応させた。反応液を除去して、DMF溶液で5分間ずつ3回攪拌し、未反応溶媒を除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Ninhydrine test)を利用し反応程度を点検した。脱保護溶液で上記と同様に2回脱保護反応して、Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTLレジンを製造した。DMFとMCで十分洗浄して、再びカイザーテストを行った後、上記と同様にアミノ酸付着実験を行った。即ち、図1のように選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Thr(tBu), Fmoc-Tyr(tBu), Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Arg(pbf), Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Arg(pbf)及び Fmoc-Tyr(tBu)の順に連鎖反応を行った。製造されたペプチジルレジンをDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、P25下で真空に減圧して完全に乾燥し、Fmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)-Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTLレジンを製造した。
【0053】
実施例3:Fmoc-デカペプチド(Fmoc-YRSRKYTSWY-NH2)の合成
上記実施例1で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-RinkアミドレジンからFmocを除去しなかった状態で脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]30mlを入れた後、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のFmoc−デカペプチド(Fmoc-YRSRKYTSWY-NH2)1.18gを収得した(収率70.6%)。分子量測定器(Perseptive Pioneer DE-STR ABI, USA)を利用して測定時、分子量1631.5(理論値1630.84)が得られた。
【0054】
実施例4:Ac−デカペプチド(Ac-YRSRKYTSWY-NH2)の合成及び精製
前記実施例1で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-RinkアミドレジンでFmoc−保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。新しい反応器に無水酢酸2ml、HoBt 2mmole、及びBop 2mmoleを入れて、4mmoleのDIEAを分画で2回にかけて入れた後、十分に攪拌した。レジン反応器に予め混合した無水酢酸溶液を投入した後、30分間反応を維持した。DMF、MC及びメタノールの順に3回ずつ洗浄した後、完全に乾燥した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジンを入れた。予め調製した脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前アセチル−デカペプチド(Ac-YRSRKYTSWY-NH2)0.93gを収得した(収率62.3%)。大容量高性能液体クロマトグラフィを利用して、精製前のペプチドを分取して、主ペプチドのみを集めて蒸留し、アセトニトリルを除去した後、凍結乾燥により、精製された合成ペプチドが得られた。最終結果物のペプチドは、高性能液体クロマトグラフィを利用して分析した時(図1)、92%の純度を示して、最終収率は、48%であった。さらに、主ピーク部位を選定して分子量測定器で測定した結果、分子量1451.3(理論値1450.63)が得られ、所望のペプチドのAc-YRSRKYTSWY-NH2が効果的によく合成されたことを確認することができた(図2)。
【0055】
実施例5:ホルミル‐デカペプチド(Formyl-YRSRKYTSWY-NH2)の合成
前記実施例1で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-Rinkアミドレジンにおいて、Fmoc−保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。新しい反応器にホルム酸2mmol、HoBt 2mmole、及びBop 2mmoleを入れて、4mmoleのDIEAを分画で2回にかけて入れた後、十分に攪拌した。レジン反応器に予め混合した無水酢酸溶液を投入し、30分間反応を維持した。DMF、MC及びメタノールの順に3回ずつペプチジルレジンを洗浄した後、完全に乾燥した。丸底フラスコに完全に乾燥したペプチジルレジンを入れた。予め調製した脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のホルミルデカペプチド(Formyl-YRSRKYTSWY-NH2)1.03gを収得した(収率69.7%)。分子量測定器を利用して測定時、分子量1437.3(理論値1436.6)が得られた。
【0056】
実施例6:パルミトイル−デカペプチド(Palmitoyl-YRSRKYTSWY-NH2)の合成
前記実施例1で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-Rinkアミドレジンにおいて、Fmoc−保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。パルミトイルクロライド(Sigma-Aldrich)1.5mmolをDMF 5mlに溶解して膨らましたレジンが入っている反応容器に入れた後、DIPEA 1.56mlを入れて、35℃で1時間反応を維持した。DMF 30mlで3回、DCM 30mlで4回洗浄し、窒素下で乾燥させた後、五酸化リン(P2O5)を利用して、減圧状態で乾燥し、側鎖がパルミトイル基で保護されたデカペプチドを製造した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジン1gを入れた。予め調製した脱漏溶液[TEA 81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]10mlを入れて、常温で時々振りながら1時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のパルミトイル−デカペプチド(palmitoyl-YRSRKYTSWY-NH2)1.25gを収得した(収率73.4%)。分子量測定器で測定した結果、分子量1663.9(理論値1663.01)が得られた。
【0057】
実施例7〜8:ミリスチル‐デカペプチド(Myristyl-YRSRKYTSWY-NH2)及びステアリル‐デカペプチド(Stearyl-YRSRKYTSWY-NH2)の合成
前記実施例1で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-Rinkアミドレジンを二つのバッチに製造して、Fmoc−保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。容器にそれぞれミリスチルクロライド(Sigma-Aldrich)1.5mmol(ミリスチルデカペプチドの場合)と、ステアリルクロライド(Sigma-Aldrich)1.5mmol(ステアリルデカペプチドの場合)をDMF 5mlに溶解した後、膨らました各バッチのレジンが入っている各反応容器に入れて、DIPEA 1.56mlを入れた後、35℃で1時間反応を維持した。DMF 30mlで3回、DCM 30mlで4回洗浄し、窒素下で乾燥させた後、五酸化リン(P2O5)を利用して減圧状態で乾燥し、側鎖がミリスチル基またはステアリル基でそれぞれ保護されたデカペプチドを製造した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジン1gを入れた。予め調製した脱漏溶液[TEA 81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]10mlを入れて、常温で時々振りながら1時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のミリスチルデカペプチド(myristyl-YRSRKYTSWY-NH2)1.26g(収率75.2%)と、ステアリルデカペプチド(stearyl-YRSRKYTSWY-NH2)1.34g(収率77.4%)を収得した。
【0058】
分子量測定器を利用して測定時、ミリスチルデカペプチドの場合は、1634.9(理論値1634.96)が、ステアリルデカペプチドの場合は、1692.2(理論値1691.1)が得られた。
【0059】
実施例9:Fmoc-デカペプチド(Fmoc-YRSRKYTSWY-OH)の合成
前記実施例2で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinを、TFA:TIS:水(95:2.5:2.5)で構成された溶液で1時間反応させた後、フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、十分量の冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。窒素雰囲気下で十分乾燥して、精製前のFmoc-デカペプチド(Fmoc-YRSRKYTSWY-OH)1.3gを収得した(収率77.7%)。分子量測定器を利用して測定時、1632.5(理論値1631.84)が得られた。
【0060】
実施例10:アセチル‐デカペプチド(Ac-YRSRKYTSWY-OH)の合成
前記実施例2で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinをDMFで十分膨らました後、溶液を除去し、20%ピペリジン/DMF溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄し、保護されたFmocを除去した。新しい反応器に無水酢酸2ml、HoBt 610mg、及びBop 1.77gを入れて、1.56mlのDIEAを分画で2回にかけて入れた後、十分に攪拌した。レジン反応器に予め混合した無水酢酸溶液を投入し、30分間反応を維持した。DMF、MC及びメタノールの順に3回ずつペプチジルレジンを洗浄した後、完全に乾燥した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジンを入れた。予め調製した脱漏溶液[TFA 95%、蒸留水2.5%、及びチオアニソール2.5%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のアセチル−デカペプチド(Ac-YRSRKYTSWY-OH) 0.98gを収得した(収率65.7%)。
【0061】
精製前のペプチドを、大容量高性能液体クロマトグラフィを利用して分取し、主ペプチドのみを集め蒸留して、アセトニトリルを除去した後、凍結乾燥により、精製された合成ペプチド0.72gを得た。最終結果物のペプチドは、高性能液体クロマトグラフィを利用して分析した時、96%の純度を示し、最終収率は70.9%で、非常に優れた結果を示した。さらに、主ピーク部位を選定して分子量測定器で測定した結果、1452.6(理論的計算時1451.63)が得られ、所望のペプチドのAc-YRSRKYTSWY-OHが効果的によく合成されたことを確認することができた。
【0062】
実施例11:ホルミル‐デカペプチド(Formyl-YRSRKYTSWY-OH)の合成
前記実施例2で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinをDMFで十分膨らました後、溶液を除去して、20%ピペリジン/DMF溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して、保護されたFmocを除去した。新しい反応器に無水酢酸2ml、HoBt 610mg、及びBop 1.77gを入れて、1.56mlのDIEAを分画で2回にかけて入れた後、十分に攪拌した。レジン反応器に予め混合した無水酢酸溶液を投入し、30分間反応を維持した。DMF、MC及びメタノールの順に3回ずつペプチジルレジンを洗浄した後、完全に乾燥した。丸底フラスコに完全に乾燥したペプチジルレジンを入れた。予め調製した脱漏溶液[TFA 95%、蒸留水2.5%、及びチオアニソール2.5%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のホルミル−デカペプチド(Formyl-YRSRKYTSWY-OH)1.28gを収得した(収率86.6%)。分子量測定器を利用して測定時、1438.1(理論値1437.6)が得られた。
【0063】
実施例12:パルミトイル‐デカペプチド(Palmitoyl-YRSRKYTSWY-OH)の合成
前記実施例2で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinをDMFで十分膨らました後、溶液を除去して、20%ピペリジン/DMF溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して、保護されたFmocを除去した。パルミトイルクロライド1.5mmolをDMF 5mlに溶解した後、膨らましたレジンが入っている反応容器に入れて、DIPEA 1.56mlを入れた後、35℃で1時間反応を維持した。DMF 30mlで3回、DCM 30mlで4回洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥した後、五酸化リン(P2O5)を利用して減圧状態で乾燥し、側鎖がパルミトイル基で保護されたデカペプチドを製造した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジン1gを入れた。予め調製した脱漏溶液[TEA 95%、蒸留水2.5%、及びチオアニソール2.5%]30mlを入れて、常温で時々振りながら1時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のパルミトイル−デカペプチド(palmitoyl-YRSRKYTSWY-OH)1.33gを収得した(収率73.4%)。分子量測定器を利用して測定時、1664.7(理論値1664.01)が得られた。
【0064】
実施例13〜14:ミリスチルデカペプチド(Myristyl-YRSRKYTSWY-OH)及びステアリルデカペプチド(Stearyl-YRSRKYTSWY-OH)の合成
前記実施例2で製造されたFmoc-Tyr(tBu)-Arg(pbf)-Ser(tBu)-Arg(pbf)- Lys(Boc)-Tyr(tBu)-Thr(tBu)-Ser(tBu)-Trp(Boc)-Tyr(tBu)-CTL-resinを二つのバッチ反応器にそれぞれ入れて、DMFで十分膨らました後、溶液を除去し、20%ピペリジン/DMF溶液で10分間ずつ2回反応させた後、よく洗浄して、保護されたFmocを除去した。容器にそれぞれミリスチルクロライド1.5mmol(ミリスチルデカペプチドの場合)とステアリルクロライド1.5mmol(ステアリルデカペプチドの場合)をDMF 5mlに溶解した後、膨らました各バッチのレジンを各反応容器に入れて、DIPEA 1.56mlを入れた後、35℃で1時間反応を維持した。DMF 30mlで3回、DCM 30mlで4回洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥した。五酸化リン(P2O5)を利用して減圧状態で乾燥し、側鎖がそれぞれミリスチル基、ステアリル基で保護されたデカペプチドを製造した。丸底フラスコに、完全に乾燥したペプチジルレジン1gを入れた。予め調製した脱漏溶液[TEA 81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT 2.5%及びTIS 1%]10mlを入れて、常温で時々振りながら1時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のミリスチルデカペプチド(myristyl-YRSRKYTSWY-OH) 1.52g(収率90.6%)と、ステアリルデカペプチド(stearyl-YRSRKYTSWY-NH2)1.35g(収率77.9%)を収得した。分子量測定器を利用して測定時、ミリスチルデカペプチドの場合は、1637.1(理論値1635.96)が、ステアリルデカペプチドの場合は、1692.8(理論値1692.07)が得られた。
【0065】
実施例15:アセチル‐デカペプチドの塩基性繊維芽細胞成長因子受容体に対する結合能力の分析
精製されたアセチルデカペプチドの塩基性繊維芽細胞成長因子受容体に対する結合能力を確認するために、Bairdらの方法(Baird, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2324-2328(1988))を参照し、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, the Korean Cell Line Bank)を利用して、同位元素(125I)で標識化されたbFGF(Amersham)との結合競争能力を測定した。細胞を48組織培養用平板容器に培養した後、0.2%のゼラチンが含有された、冷蔵されたHam’s F12培地(Sigma-Aldrich)で洗浄した。125I-bFGF 200fmol及び1-100nmolのアセチルデカペプチドを200μlの緩衝溶液に溶解した後、細胞に添加し、2時間培養した。培養後、遠心分離を通じて細胞のみを取って、0.1% Triton X-100を利用して細胞膜のみを分離し、その分画を、ガンマ計数器(gamma scintillation counter)(Packard, U.S.A)を使用して、細胞膜受容体に結合されている125I-bFGF放射能を測定した(図3)。
【0066】
図3から分かるように、本発明のアセチルデカペプチドの場合、bFGFと競争的にbFGF受容体に結合するということが分かって、bFGF受容体に対する高い結合能力を有していることが分かる。
【0067】
実施例16:アセチルデカペプチドの生理活性度の測定
精製されたアセチルデカペプチドの生理活性度は、Rizzinoらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res., 48:4266(1988))を参照し、3T3繊維芽細胞株(The Korean Cell Line Bank)を利用した[3H]-thymidineの吸収率で測定した。3T3繊維芽細胞株を、100% FBS (fetal bovine serum)が含有されたEMEM(Eagle's minimal essential media, Gibco, U.S.A.)が入っている250ml容量の組織培養用フラスコを利用して培養した。培養された3T3繊維芽細胞株を、0.25%トリプシン溶液で培養容器の底から取り外した後、遠心分離して細胞沈殿物のみを集めた。これを、FBSが含有されていないEMEM培養液に再び懸濁した後、24ウェル組織培養用平板に、各ウェル当たり2×104細胞/0.3ml培養液になるように入れて、24時間37℃、7%CO2条件下で培養した。本発明のアセチルデカペプチドを、0.2%牛血漿アルブミン(w/v)が含有されたEMEM培養液で2ng/mlの濃度から2倍ずつ連続的に希釈し、各ウェルに0.3mlずつ添加した後、37℃、7%CO2条件下でさらに6時間培養した。その後、各ウェルに0.5μ Ciの[3H]-thymidine(Amersham, TRK 686, 68 Ci/mmol)を入れて、一晩中培養した。培養が完了した後、培養上清液を除去して、PBS(phosphate buffered saline)で1回洗浄した。各ウェルに0.25%トリプシン溶液0.1mlずつを入れて、37℃で5分間放置した後、細胞を培養板から分離した。10%FBSが含有されたEMEM培養液0.5mlずつを各ウェルに添加して、細胞捕集器(12 well cell harvester, Millipore, U.S.A.)を使用して、細胞をガラス繊維フィルタに付着させた。フィルタを1mlの蒸留水で1回、1mlのエタノールで1回洗浄した後、60℃で30分間放置して乾燥した。乾燥されたフィルタを、2mlの閃光カクテル(scintillation cocktail)と共に閃光バイアル(scintillation vial)に入れて、30分間常温で放置した後、閃光計数器(Beckman, U.S.A)で細胞内に吸収された放射能量を測定した。
【0068】
図4から分かるように、本発明のアセチルデカペプチドは、チミジンの繊維芽細胞への挿入を濃度依存的に促進させていることが分かる。従って、本発明のアセチルデカペプチドは、bFGFと同様に、高い生理活性度(biological activities)を有していることが分かる。
【0069】
実施例17:アセチルデカペプチドの安定性の評価
精製されたアセチルデカペプチドの安定性を確認するために、10μg/mlとなるように、デカペプチドとアセチルデカペプチドを50 mM Tris-HCl (pH 8.0)緩衝溶液に溶解した。対照群として、1μg/mlの濃度で大腸菌から生産された組換えbFGF(Sigma-Aldrich)を同一緩衝溶液に用意した。用意した溶液をガラスバイアルに入れて、37℃で静置した。37℃で静置された溶液を、0、1、10、25、50、75、そして100日目にサンプリングして、NIH-3T3 cell (Korean Cell Line Bank)に対するMTT分析(Scudiero, D. A., et al. Cancer Res. 48:4827-4833(1988))を行って、残っているペプチドとbFGFの活性を測定した(図5)。この時、0日のサンプル活性を100%と基準した。
【0070】
図5から分かるように、組換えbFGFの場合、時間が経過するにつれて、活性度が急激に減少するが、本発明によるデカペプチドの場合は、活性度が長く持続されることを確認することができた。特に、N−末端がアセチル基で保護されたアセチルデカペプチドは、非常に優れた安定性を示す。
【0071】
実施例18:ナノ化ペプチドの製造
前記実施例から得られたアセチルデカペプチド50mgを正確に秤量した後、蒸留水500mlで十分に攪拌して溶解した。ペプチド溶液を、レシチン5g、オレイン酸ナトリウム(sodium oleate)0.3ml、エタノール50ml及び少量のオイルと共に混合した後、総量が1Lとなるように蒸留水で調節した後、マイクロ流動化装置(microfluidizer)を利用して高圧で乳化し、大きさ100nm程度のナノソームを製造した。製造されたナノソームは、最終濃度が約50ppmで、化粧品製造用として使用された。
【0072】
剤形例1:柔軟化粧水
前記実施例18で製造されたアセチルデカペプチドナノソームを含み、下記組成からなる柔軟化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【0073】
【表1】

【0074】
剤形例2:栄養クリーム
前記実施例18で製造されたアセチルデカペプチドナノソームを含み、下記組成からなる栄養クリームを、一般的な栄養クリームの製造方法により製造した。
【0075】
【表2】

【0076】
剤形例3:栄養化粧水
前記実施例18で製造されたアセチルデカペプチドナノソームを含み、下記組成からなる栄養化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【0077】
【表3】

【0078】
剤形例4:エッセンス
前記実施例18で製造されたアセチルデカペプチドナノソームを含み、下記組成からなるエッセンスを、一般的なエッセンス製造方法により製造した。
【0079】
【表4】

【0080】
剤形例5:口腔清浄剤
前記実施例で製造されたアセチルデカペプチドを含み、下記組成からなる口腔清浄剤を、一般的な口腔清浄剤の製造方法により製造した。
【0081】
【表5】

【0082】
剤形例6:歯磨き
前記実施例で製造されたアセチルデカペプチドを含み、下記組成からなる歯磨き剤を、一般的な歯磨き剤の製造方法により製造した。
【0083】
【表6】

【0084】
実施例19:本発明のペプチドのHaCaT角質細胞成長能力の分析
本発明のペプチドに対する角質細胞の成長効果を分析するために、Rizzinoらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res., 48:4266(1988))などを参照し、HaCaT角質細胞株を利用したSRB(Sulforhodamine B)の比色法を利用して測定した。HaCaT角質細胞株(The Korean Cell Line Bank)を、100%FBS(fetal bovine serum)の含有されたEMEM(Eagle's minimal essential media, Gibco, U.S.A.)が入っている250ml容量の組織培養用フラスコを利用して培養した。培養されたHaCaT角質細胞株を、0.25%トリプシン溶液で培養容器の底から取り外した後、遠心分離して細胞沈殿物のみを集めた。これを、FBSが含有されていないEMEM培養液に再び懸濁した後、96ウェル組織培養用平板に、各ウェル当たり4×103細胞となるように入れて、24時間37℃、7%CO2条件下で培養した。24時間後、血清を完全に排除した同一な培養液で培地を入れ替えた後、標準を取るための空試料、ヒトのbFGF、アセチル‐デカペプチドを、水と10%DMSOに滅菌状態で溶解した後、10ngと1,000ngの濃度で72時間、上記の同一条件で培養した。培養が完了した後、培養上清液を除去して、PBSで1回洗浄した。洗浄溶液を除去した後、比色SRB溶液(Sigma-Aldrich)で処理し、PBSで十分洗浄した後、顕微鏡で細胞を観察して、生存細胞の状態を観察し、紫外線590nmで吸光度を測定して、細胞の生存状態を測定した(図6)。また、図7は、細胞にペプチド処理後、72時間後の細胞の生存状態を顕微鏡で検鏡した図である。
【0085】
一方、6日間、本発明のアセチルデカペプチド(1μg/ml)をHaCaT細胞株に処理して、皮膚シワ改善の標識因子であるプロコラーゲンの量の変化を観察した(図8)。プロコラーゲンの量は、Procollagen ELISAキット(Takara)を利用して測定した。また、72時間本発明のアセチルデカペプチド5μmoleをHaCaT細胞株に処理して、皮膚シワ改善のまた他の標識因子であるラミニン及びヒアルロン酸の濃度を測定した(図9)。ラミニン及びヒアルロン酸の濃度は、Laminin ELISAキット(CHEMICON, USA)及びHyaluronic acid ELISAキット(Echelon Biosciences Inc, USA)を利用して測定した。
【0086】
図6及び7で分かるように、本発明のペプチドは、対照群に比べ、高い細胞生存率を示すことが分かる。本発明のペプチドをHaCaT角質細胞株に処理した場合、細胞内プロコラーゲンの含量が処理時間に依存的に増加することが分かる(図8)。また、本発明のペプチドは、ラミニンとヒアルロン酸の量も大きく増加させる作用をするということが分かる(図9)。
【0087】
したがって、本発明のペプチドは、非常に優れた皮膚改善効能を奏することが分かる。
【0088】
実施例20:本発明のペプチドによる皮膚厚さの変化の測定
本発明のペプチドの化粧品としての有用性と生体内効能を調べるために、上記の剤形例2で製造した栄養クリームをマウス皮膚に適用させた。
【0089】
実験に使用したBalb Cマウス(Central Lab. Animal, Inc., Korea)は、6週齢の雄で、購入後、一週間の安定期を経た後、背中部位を、チオグリコール酸含有クリームを利用して部分除毛した。除毛後、マウスを二つのグループに分け、一つのグループは、剤形例2のアセチルデカペプチドを含有したナノソームを含むクリームで、他のグループは、ペプチドの入っていない空クリームで、朝8時30分と夜6時30分に、100mgずつを除毛した部位に塗布した。5日間クリームを処理後、動物を頚椎脱骨で致死させた後、皮膚の組織を切断してパラフィンで固定し、microtombにより8μm厚の薄片試料を作った後、スライドに固定し、ヘマトキシリン・エオシン染色をして、光学顕微鏡で検鏡した(図10)。
【0090】
図10から分かるように、本発明のアセチルデカペプチドを含有するナノソーム化粧品は、マウスの角質細胞層及び上皮細胞層を成長させることができることが明確に分かる。したがって、本発明のペプチドを化粧品として皮膚に適用すると、優れた皮膚シワ改善及び弾力改善効能を奏することが分かる。
【0091】
実施例21:発毛効能の分析
Balb Cマウスの背中部位を除毛し、脱毛誘発物質のジヒドロテストステロン(DHT, TCI Inc.)を8日間処理して、ケラチノサイトが増殖する前の成長期になるように誘発した。その後、本発明で製造した剤形例2を10日間、1日1回除毛部位に塗布し、毛髪の成長程度を観察した。
【0092】
実験動物を除毛した後、19日が経過してから観察した結果、除毛のみを施した群では、正常的に毛が育つことを確認し、DHTを8日間処理してから10日が経過した群は、時間が経っても毛がほとんど育たなかった。DHTを8日間処理した後、本発明の剤形例2を処理した群では、時間が経過するにつれて、正常群とほぼ等しく毛が育つことが観察された。したがって、本発明のペプチドは、動物モデル実験からも、発毛促進効果に非常に優れていることが分かる。
【0093】
実施例22:歯周疾患(歯茎疾患)に対する治療効能の分析
本発明のペプチドが、歯周疾患に対して治療効能があるかどうかを調べた。まず、本発明のアセチルデカペプチドを含む口腔清浄剤を次のような組成比で製造した:ペプチド(0.01wt%)、グリセロール(12wt%)、ソルビトール(10wt%)、プロピレングリコール(2.8wt%)、SDS−SLS(0.4wt%)、NaF(0.06wt%)、及び水(to 100wt%)。
【0094】
次いで、歯周疾患を有する成人20名を二つのグループに分けて、それぞれのグループに、本発明のペプチド含有口腔清浄剤(実験例)、ペプチド非含有口腔清浄剤(比較例)を適用した。口腔清浄剤による口腔の洗浄は、一日3回、それぞれ1回ずつするようにして、それを30日間適用した。30日が経過した後、歯周疾患(歯茎疾患)の程度が分かる、歯茎出血指数(sulcus bleeding index)を決定した。
【0095】
【表7】

【0096】
上記表(表7)から確認できるように、本発明の口腔清浄剤は、歯茎出血の程度を示す歯茎出血指数を大きく減少させていることが分かる。このような効果は、本発明のペプチドによる、歯茎傷の効果的な治療により達成されるものと判断される。したがって、本発明の口腔清浄剤は、歯周疾患(歯茎疾患)を有する人の口腔衛生を増進させることができる。
【0097】
本発明のペプチドは、効能に優れるだけではなく、安定性が天然bFGFに比べ非常に高く、皮膚透過度に非常に優れている。したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、皮膚状態の改善または歯周疾患を治療するに、非常に優れた効能を発揮する。また、本発明のペプチドは、医薬、化粧品、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物に非常に有利に適用できる。
【0098】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドに対する高性能液体クロマトグラフィ分析結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドを、質量分析器を利用して分析した結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドの塩基性繊維芽細胞成長因子受容体に対する結合度を測定した結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドの生理活性度を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドの安定性を測定した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドを処理したヒト角質細胞の細胞成長速度を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドの、ヒト角質細胞の成長を促進する作用を示す顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドを利用した細胞培養時、プロコラーゲン生成量の増加を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドを利用した細胞培養時、ラミニン及びヒアルロン酸の生成量の増加を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例により製造されたアセチルデカペプチドを含む化粧品組成物を適用したBalbCマウスの皮膚厚さの変化を示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの化粧品学的有効量、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、歯周疾患の治療効能を有して、前記組成物は、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記配列番号1のアミノ酸配列において、少なくとも一つのアミノ酸は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコールからなる群から選択される保護基が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記保護基が結合されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列において、N−末端にあるTyr残基であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドは、天然塩基性繊維芽細胞成長因子より安定性が高いことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
配列番号1のアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸の少なくとも一つのアミノ酸がアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基と結合されており、天然塩基性繊維芽細胞成長因子より安定性が高いペプチド。
【請求項10】
前記保護基が結合されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列において、N−末端にあるTyr残基であることを特徴とする、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
前記保護基は、アセチル基であることを特徴とする、請求項9に記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む組成物を対象に投与する段階を含む、皮膚状態を改善または歯周疾患を治療する方法。
【請求項13】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの化粧品学的有効量、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、歯周疾患の治療効能を有して、前記組成物は、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記配列番号1のアミノ酸配列において、少なくとも一つのアミノ酸は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコールからなる群から選択される保護基が結合されていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記保護基が結合されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列において、N−末端にあるTyr残基であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドは、天然塩基性繊維芽細胞成長因子より安定性が高いことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
皮膚状態の改善または歯周疾患の治療用組成物を製造するための、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの用途。
【請求項21】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物であることを特徴とする、請求項20に記載の用途。
【請求項22】
前記組成物は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの化粧品学的有効量、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物であることを特徴とする、請求項20に記載の用途。
【請求項23】
前記皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であることを特徴とする、請求項20に記載の用途。
【請求項24】
前記組成物は、歯周疾患の治療効能を有して、前記組成物は、歯磨き、口腔清浄用組成物または口腔保護用組成物であることを特徴とする、請求項20に記載の用途。
【請求項25】
前記配列番号1のアミノ酸配列において、少なくとも一つのアミノ酸は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコールからなる群から選択される保護基が結合されていることを特徴とする、請求項20に記載の用途。
【請求項26】
前記保護基が結合されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列において、N−末端にあるTyr残基であることを特徴とする、請求項25に記載の用途。
【請求項27】
前記ペプチドは、天然塩基性繊維芽細胞成長因子より安定性が高いことを特徴とする、請求項20に記載の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−512684(P2009−512684A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536521(P2008−536521)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004350
【国際公開番号】WO2007/049904
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508119046)ケアジェン シーオー エルティーディー (5)
【氏名又は名称原語表記】CAREGENE CO.,LTD
【Fターム(参考)】